JP2005231459A - テザーに連結された機器の姿勢制御方式 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】テザー1の先端に連結され、回転関節13によって互いに揺動可能に連結された中間部材12と先端部材11とを備えた機器において、中間部材12を先端部材11に対して揺動させることによって先端部材11の姿勢を制御する姿勢制御方式であって、回転関節13が、その中心が先端部材11の質量中心と一致するように配設されており、姿勢制御方式が、先端部材11の姿勢が変化したときに、テザー1に発生する張力によって機器に回転力が加わると、回転関節13に対して、回転力の回転軸周りの減衰回転力が加わるように、中間部材12を先端部材11に対して揺動させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、かかるテザーの先端に連結された機器の姿勢制御方式に関する。
なお、テザーとは、一般的には宇宙空間で用いられるケブラー繊維(du Pont社)によって形成されたひも状の部材を示すが、本明細書では、前述したいわゆるテザーだけでなく、地上で使用される一般的なひもやロープ、ワイヤー等、可撓性を有するひも状の部材を全て含む概念である。
しかし、吊り下げられた物体の高精度な姿勢制御は、軌道上の重力傾斜、または地上における重力を利用した受動的制御では困難である。
宇宙空間であれば、噴射装置やリアクションホイールを使用すれば、ある程度は能動的に姿勢制御はできるものの(特許文献1,2参照)、噴射装置では高精度な姿勢制御が困難であるし、リアクションホイールはホイールに蓄積できる角運動量に限界があるため制御範囲が狭いという問題がある。
このため、テザー先端に連結された機器によって物体の観測や運搬程度の作業は行うことはできても、ロボットを先端機器として使用する場合のように、高精度の姿勢制御が必要とされる作業は困難であった。
従来例1の技術では、先端部材を中間部材に対して揺動させることによって、先端部材に加わる外力をテザーの内部の引張応力として蓄積放出させることができるから、外力による先端部材の姿勢の変化を、能動的かつ連続的に制御することができ、先端部材の姿勢を一定の姿勢に高精度に保つことができる。
この問題を解決する方法として、先端部材や中間部材の相対的な位置や相対的な角度を時系列的に計測し、かつ、移動開始から現在の状態までの全てのデータを利用してフィードバック制御する方法があるが、姿勢角検出に必要とするデータ量が非常に多くなるし、検出するための作業工数も多くなるため、リアルタイムで姿勢を制御するには、非効率的であり、機器に設けられたセンサから得られる情報のみによって、機器の姿勢を効率的かつ高精度に制御できる方法が望まれている。
第2発明のテザーに連結された機器の姿勢制御方式は、第1発明において、前記中間部材の質量が、前記揺動手段によって前記回転関節に対して回転力を加えたときに、テザーを伸展している場所に固定された座標系に対し、該中間部材の軸方向がなす角度は変化するが、前記先端部材の軸方向がなす角度は一定に保たれる重さに調整されていることを特徴とする。
第3発明のテザーに連結された機器の姿勢制御方式は、第1または2発明において、前記回転関節が、前記テザーが直線状に伸展し、かつ該回転関節の中心が前記テザーの軸方向の延長線上に位置した状態において、該テザーの軸方向と直交する前記先端部材に固定された2軸を有しており、該先端部材に固定された座標系における現在の先端部材の姿勢角変化速度に基づいて、前記先端部材の角速度ベクトルを算出し、該角速度ベクトルの前記先端部材に固定された直交する2軸方向の成分から、該回転関節の各軸周りに前記中間部材を揺動させる角度を算出することを特徴とする。
第2発明によれば、中間部材の質量が先端部材に対して非常に小さくなるので、中間部材の動作反力による先端部材の姿勢変化を非常に少なくすることができる。このため、中間部材の揺動前、つまり姿勢制御される前の先端部材の姿勢と、中間部材の揺動直後、つまり姿勢制御を開始直後の姿勢のズレが非常に少なくなるから、先端部材の姿勢の制御効率を良くすることができる。しかも、揺動手段によって回転関節の制御、つまり、中間部材を先端部材に対して揺動させる角度の制御を、単純なD制御とすることができ、中間部材を先端部材に対して揺動させる角度の計算時間を短くすることができる。
第3発明によれば、中間部材の回転関節の各軸周りにおける揺動角度を、回転関節の各軸周りにおける先端部材の角速度を利用してフィードバック制御をしているので、各軸周りにおける先端部材の揺動角度の測定誤差に起因する制御誤差を少なくすることができ、先端部材の姿勢を高精度に制御することができる。
本発明は、テザーの先端に連結された、複数の部材からなる機器の姿勢制御を行う姿勢制御方式である。
テザー先端機器としては、例えば、(i)衛星捕獲・メンテナンス用ロボット、(ii)宇宙機外観検査用カメラ搭載ロボット、(iii)衝撃スラスタ(他宇宙機に衝突し他宇宙機の姿勢制御を行う)、(iv)月・惑星着陸機のテザーを用いた姿勢制御、(v)クレーンなどによる荷物の運搬、(vi)水中探査ロボット等が挙げられるが、以下には単純化したモデルとして、テザー先端機器が、中間部材と先端部材の2つの部材から構成された場合を説明する。なお、先端部材の数は2以上でもよく、各先端部材と中間部材とが以下の関係にあれば本方式の採用が可能である。
図1および図2において、符号1はテザーを示しており、符号10は、テザー1の先端に連結されたテザー先端機器を示している。
図1に示すように、テザー先端機器10は、一端がテザー1の先端に揺動自在に取付けられた中間部材12と、この中間部材12の他端に揺動自在に取付けられた先端部材11を備えている。中間部材12の他端と先端部材11は、回転関節13によって互いに揺動可能に連結されており、この回転関節13は、先端部材11の質量中心に配置されている。
このため、テザー1が伸展し、かつ、テザー1の軸方向と中間部材12の軸方向が一致、つまり、中間部材12とテザー1の連結位置と回転関節13の中心とを結ぶ直線と一致していれば、先端部材11の質量中心は必ずテザー1の軸方向の延長線上に配置されることになるから、先端部材11の中間部材12に対する揺動角度にかかわらず、テザー、中間部材12および先端部材11からなるシステム全体が平衡状態となる。つまり、テザー1が伸長し、かつテザー1の軸方向と中間部材12の軸方向を一致させるだけで、システム全体を安定な形状とすることができるから、先端部材11を、伸長されたテザー1の軸方向に対して所望の姿勢、言い換えれば、所望の角度θで静止させることができる(図2(A)、(B))。
そして、中間部材12は、その質量が、揺動手段22によって回転関節13に対して回転力を加えて揺動させたときに、テザー1を伸展している場所に固定された座標系に対し、中間部材12の軸方向がなす角度は変化するが、先端部材11の軸方向がなす角度は一定に保たれる重さに調整されている。言い換えれば、中間部材12が揺動したときの動作反力によって先端部材11がほとんど動作しない程度の重さに調整されている。
このため、揺動手段22によって回転関節13の軸周りに先端部材に対して中間部材12を揺動させる角度の制御を、単純なD制御とすることができ、中間部材を先端部材に対して揺動させる角度の計算時間を短くすることができるが、詳細は後述する。
図4は本発明の姿勢制御方式による先端部材11の姿勢制御を行う手順の説明図である。図4において、符号13a,13bは、システムが安定状態(例えば、図4(A)の状態)となったときに、テザー1の軸方向(図4(A)では上下方向)と直交する2軸を示しており、軸13aは図4(A)において紙面と垂直な軸であり、軸13bでは図4(A)において左右方向の軸である。
なお、中間部材12と先端部材11は、軸13a、軸13bの両軸周りに揺動可能であるが、説明をわかりやすくするために、図4には、左右方向の揺動、軸13a周りの揺動のみ示している。
すると、テザー1には張力Tが発生し、このテザー1の張力Tによって、先端部材11には元の状態、つまり、先端部材11を基準座標に対して元の姿勢角に戻すように、軸13a、軸13bまわり(図4(B)において軸13aまわりでは矢印aの方向)に回転される。
このとき、テザー1の張力Tに起因する回転力、言い換えれば、先端部材11を元の姿勢に戻そうとする復元力が先端部材11に働いており、大気中や重力が作用する空間では、先端部材11や中間部材12に特別な動作をさせなくても、空気抵抗や重力によって復元力が減衰され、やがて先端部材11は停止するが、その停止までの時間は長くなるし、宇宙空間などでは、そのような抵抗がないため、先端部材11は回転振動することになる。そこで、以下のごとく、中間部材12を先端部材11に対して揺動させれば、中間部材12の揺動によって復元力を減衰させることができる。
このとき、中間部材12の質量が先端部材に対して非常に小さいので、中間部材11の動作反力による先端部材11の姿勢変化を考慮しなくていよい。すると、中間部材11の揺動によって減衰力のみが発生すると考えられるから、以下の式によって軸13aと軸13bの各軸周りに中間部材12を揺動させる角度φx、φyをそれぞれ算出することができる。
なお、以下の式おいて、システムが安定状態(図4(A)の状態)となったときに、テザー1の軸方向(図4(A)では上下方向)と一致する方向が、座標系Σのz軸であり、図4(A)における左右方向、つまり軸13bの方向がy軸、図4(A)おける紙面に垂直な方向、つまり軸13aの方向がx軸、各軸周りの先端部材11の姿勢角が、z軸回り:θz,y軸回り:θx,x軸回り:θy,であり、x軸およびy軸周りの先端部材11の姿勢角の変化速度は、言い換えれば、x軸およびy軸方向の速度成分は、それぞれθy / dt,θx / dtである。
φx = - kd ( dθx / dt )
φy = - kd ( dθy / dt )
そして、座標系Σにおいて、中間部材12に、先端部材11の角速度ベクトルにおける軸13aと軸13bの軸方向の成分と同じ向きの回転角度が発生するように、揺動手段22によって中間部材12が、先端部材11に対して軸13aと軸13bの各軸周りに角度φx、φyだけ、それぞれ揺動される。
上記制御を行えば、先端部材11の角速度ベクトルの大きさが0となり、システム全体が安定な状態、つまり、テザー1、中間部材12および先端部材11が一直線に並んだ状態で先端部材11を停止させることができる。
しかも、中間部材12を先端部材11に対して揺動させる角度の制御を、単純なD制御とすることができるから、回転関節13の各軸周りにおける中間部材12の揺動角の計算時間を短くすることができる。そして、回転関節13の各軸周りにおける中間部材12の揺動角を、回転関節13の各軸周りにおける先端部材11の角速度、つまり先端部材11の姿勢角変化速度を利用してフィードバック制御をしているので、各軸周りにおける先端部材11の揺動角度の測定誤差に起因する制御誤差を少なくすることができ、先端部材11の姿勢を高精度に制御することができる。
なお、揺動手段22によって中間部材12を先端部材11に対して揺動させることによる、テザー1からテザー先端機器10に加わるテザー1の張力による回転力が、特許請求の範囲にいう減衰回転力である。
φx = -θdx - kd ( dθx / dt )
φy = -θdy - kd ( dθy / dt )
この場合も、上記のごとく、先端部材11の姿勢角変化速度が0となるまで、フィードバック制御を行えば、先端部材11を、固定座標における目標とする姿勢にすることができる。
シミュレーションでは、重力はゼロとしテザーに張力を与え、先端部材が回転運動を行うように、初期外乱を設定している。そして、中間部材の重量は、中間部材が揺動したときの動作反力によって先端部材がほとんど動作しない重さ、つまり、質量≒0としている。テザー張力 T = 0.3 [N],目標姿勢 θd = 0 [rad]とし,次の制御パラメータを設定した。
(a) 制御無し kp (P) = kd (D) = 0
(b) P 制御 kp (P) = 1, kd (D) = 0
(c) D 制御 kp (P) = 0, kd (D) = 1
(d) PD 制御 kp (P) = kd (D) = 1
なお、本実施例では、空間3次元モデルを用いて計算しており、テザー1は有限要素法により柔軟性を考慮したモデル化を行っている。
一方、(c) D 制御のみや、(D) PD 制御の場合には、制御を開始してからすぐに先端部材の姿勢角が目標姿勢角(0度)に向かって収束し、先端部材の運動が停止することが確認できる。つまり、D制御またはPD制御によって中間部材の揺動角度を制御すれば、中間部材を揺動させることによって、テザーの張力に起因して先端機器に作用する回転力および先端部材の姿勢を制御できる。
そして、前述の通り制御精度の観点からP制御による高精度制御は困難であり、PD制御よりもD制御のほうが高い制御精度が期待でき、上記のシミュレーション結果よりD制御のみでも十分な制御効果が得られることから、D制御のみを採用して中間部材の揺動角度を制御することが、テザー先端機器の高精度の姿勢制御に有効であることが確認できる。
10 テザー先端機器
11 先端部材
12 中間部材
13 回転関節
22 揺動手段
Claims (3)
- テザーの先端に連結された複数の部材からなる機器において、該機器が、中間部材と先端部材とを有しており、前記中間部材が、前記テザーの先端と前記先端部材とを連結する連結部材となっており、前記テザーの先端と前記中間部材が互いに揺動自在に連結されており、かつ該中間部材と前記先端部材が、回転関節によって互いに揺動可能に連結されており、前記機器が、前記先端部材を前記中間部材に対して相対的に揺動させる揺動手段を備えており、前記揺動手段が前記中間部材を前記先端部材に対して揺動させることによって前記先端部材の姿勢を制御する姿勢制御方式であって、
前記回転関節が、その中心が前記先端部材の質量中心と一致するように配設されており、
該姿勢制御方式が、
前記先端部材の姿勢が変化したときに、テザーに発生する張力によって前記機器に回転力が加わると、前記回転関節に対して、前記回転力の回転軸周りの減衰回転力が加わるように、前記揺動手段によって前記中間部材を前記先端部材に対して揺動させる
ことを特徴とするテザーに連結された機器の姿勢制御方式。 - 前記中間部材の質量が、
前記揺動手段によって前記回転関節に対して回転力を加えたときに、前記テザーを伸展している場所に固定された座標系に対し、該中間部材の軸方向がなす角度は変化するが、前記先端部材の軸方向がなす角度は一定に保たれる重さに調整されている
ことを特徴とする請求項1記載のテザーに連結された機器の姿勢制御方式。 - 前記回転関節が、
前記テザーが直線状に伸展し、かつ該回転関節の中心が前記テザーの軸方向の延長線上に位置した状態において、該テザーの軸方向と直交する前記先端部材に固定された2軸を有しており、
該先端部材に固定された座標系における現在の先端部材の姿勢角変化速度に基づいて、前記先端部材の角速度ベクトルを算出し、
該角速度ベクトルの前記先端部材に固定された直交する2軸方向の成分から、該回転関節の各軸周りに前記中間部材を揺動させる角度を算出する
ことを特徴とする請求項1または2記載のテザーに連結された機器の姿勢制御方式。
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