JP2005227096A - イムノアッセイ分析装置、チップ電極、および検査チップ - Google Patents

イムノアッセイ分析装置、チップ電極、および検査チップ Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、イムノアッセイを電気化学的に分析するイムノアッセイ分析装置、並びに、そのイムノアッセイ分析装置に用いるチップ電極および検査チップに関し、POCT(point of care testing)に適するとともに、ランニングコストを安価に抑える。
【解決手段】 イムノアッセイを行う検査チップ10と電気化学検出を行うチップ電極10を分離して作製し、それらをチップホルダー40により高精度に位置決めして重ね合わせて分析を行ない、白金や金などの貴金属をスパッタリングしたチップ電極を何度でも繰り返し使用可能とし、簡便で安価に作製可能な検査チップを使い捨てにする。
【選択図】 図10

Description

本発明は、イムノアッセイを電気化学的に分析するイムノアッセイ分析装置、並びに、そのイムノアッセイ分析装置に用いるチップ電極および検査チップに関する。
これまで、医療分野において患者や健常者から採取した血液、尿、その他の体液などのサンプルを分析する際に、病院検査室や外注検査センターに委託することが常套手段であった。それに対し、診断―看護等の医療現場で実施する簡易検査や、患者自身が在宅で実施する自己検査の必要性が提唱されている。これらに加え、外来での診療中において瞬時に結果が得られる簡易・迅速検査、入院患者のベットサイドでリアルタイムに健康状態を経常的にモニターする検査などを包含する概念としてpoint of care testing(POCT)の重要性が認識されつつある。さらに、食品の安全性や環境モニタリングなど非医療分野においても、フィールドや現場における検査の重要性が叫ばれつつある。
抗原抗体反応の高選択性と高親和性を利用するイムノアッセイは、生体試料中の微量物質(タンパク質、ホルモン等)の分析法として幅広く活用されており、医療診断や生化学研究などの分野において不可欠な分析法である。現在では、96ウェルプレートを用いて、アッセイされた成分を固定化し個々をアドレス化する方法が確立されている。しかしながら、煩雑な操作と長い反応時間を要するため改良が求められており、ハイスループットスクリーニングを目的とし貴重なサンプルの消費量の低減と反応場の微小化が検討されている。複数サンプルの同時分析のために、ガラス基板上の微小空間にタンパク質のマイクロアレイを集積化した研究が数多くなされている(非特許文献1など)。
さらには、複数種のタンパク質を同時に配列・反応させるためにマイクロ流路を利用したマイクロモザイクイムノアッセイも報告されている(非特許文献2)。
現時点では、主に蛍光など光学的手法がプロテインマイクロアレイのイメージング(検出)に用いられている。しかし、装置の小型化が容易で、操作が簡便な電気化学検出法に注目が集められ精力的に研究されている。ガラス基板上に作製した微小な凹凸の上に複数の抗体をスポット固定し、サンプル抗原および酵素標識抗体を用いてサンドイッチ構造を作製し、酵素反応を電気化学顕微鏡(SECM)で検出する研究が報告されている(非特許文献3)。
さらに簡便な操作を目指し、微細加工技術を駆使して基板上に作製した小孔に、電気化学計測に必要な作用極、参照極および対極を組み込んだ構造が提案された(Z.P.Aguilar,etal.,Anal.Chem.2002,74,3321−3329)。抗体を固定化した高分子膜をアレイ電極上に配置した電気化学デバイスを用いた多項目同時分析システムの構築も試みられている(非特許文献4)。
G. MacBeath and S.L.Schreiber,Science,2000,289,1760−1763;P.Angenendt,et al., Anal.Chem.,2003,75,4368−4372 A. Bernard, t al.,Anal.Chem.,2001,73,8−12 H.Shiku,Anal.Chem.,1996,68,1276−1278;H.Shiku,J.Electroanal.Chem.,1997,438,187−190;S.Kasai,et al.,Anal.Chem.2000,72,5761−5765 K.Kojima,etal.,Anal.Chem. 2003,75, 1116−1122
現在の研究中心の一つである光化学検出法を利用した免疫測定は、同一種類複数または多種類の抗体をアレイ状に配列して固定化したプロテインマイクロアレイを利用して、タンパク質(抗原)を任意の位置に捕捉させ、さらに標識抗体を反応させることにより、抗体―抗原―標識抗体と反応して固定されたサンドイッチ構造を構築し、微弱光検出システムを用いて得られる光の位置情報と強度から捕捉された抗原を定量的に多試料または多項目を一括で分析する方法である。この他にも、免疫計測において、抗原検出を目的とした競合法がある。競合法では、抗体固相化法と抗原固相化法が知られている。上記、背景技術に示した技術があるが、微弱な化学発光を検出するためには、超高感度発光検出システム、特殊な暗室を必要とする。装置は、かなり高額であるとともに、汎用性が低く問題となっている。
一方、電気化学的手法を用いた免疫測定も行われている。
しかしながら、電気化学的手法を用いた免疫計測では、抗体―抗原―標識抗体のサンドイッチ構造を電極表面上に構築していることが多い。この構造を構築するためには、タンパク質の固定化領域を既定する必要がある。この既定するために、微細加工技術を利用している。すなわち、微細加工技術を利用してマイクロメートルスケールの金電極を作製し、その金電極表面に抗体等のタンパク質を固定化している。しかしながら、電極上にタンパク質を固定化すると、使用後の完全な剥離が困難であるため再利用が難しい。電極材料として金や白金などの貴金属を用いる必要があり、貴金属を利用しているので、検出電極を使い捨てることは経済的であるといいがたく、電極を再利用できることが望ましい。
また、電気化学計測に必要な3つの電極(作用極、対極、参照極)をすべて組み込んだチップも作製されている。しかし、このチップは、製造工程が数段階以上から構成され複雑であり、作製に熟練者の技術と高コストを要する。この種のチップも再利用が困難であり、経済的といえない。
一方、電極上でなく、高分子やガラスのチップ上に抗体―抗原―標識抗体のサンドイッチ構造を作製し微小電極を近接させて電気化学的に検出した例もある。これは、電気化学顕微鏡(SECM)と呼ばれる手法を応用しているものであり、基板上の所定の領域に固定化された物質から放出または吸収される化学物質を、近傍に設置した微小な針型の電極(マイクロ電極)で電気化学的に検出する手法である。また、SECMでは、マイクロ電極を2次元に操作することにより、化学反応の拡がりをイメージとして得ることができる。その検出の際、電極電位を目的とする電気化学活性種を検出できる電位に設定しておく。免疫計測の際には、微小な特定領域に抗体―抗原−標識抗体のサンドイッチ構造を作製しマイクロ電極を近接させて標識抗体から生成される電気化学活性種やメディエータを介して標識酵素反応を検出する。捕捉された標識酵素抗体の活性から、サンプル抗原の量を決定できる。固定化された酵素の活性を電気化学的に電流情報として捕らえ、電流情報の位置と強度により、定性的および定量的に多項目または多検体を一括で検出する。しかし、酵素活性の評価にあたり、電流情報を得るための針型マイクロ電極のマイクロメートルオーダーでの位置制御を行う必要がある。SECMの検出系は、針型マイクロ電極、針型マイクロ電極の位置を制御するための3次元ステージ、光学顕微鏡、CCD検出器、ポテンショスタットおよび電流情報を画像イメージに変換するソフトウェアで構成されており、かなり高額であるとともに、取り扱いに訓練を必要とする。
また、SECMでは、1チップを評価するために10分から60分程度の時間を必要とする。1チップにおける検査項目数または検査検体数を増やすと、さらに長時間の分析時間を必要となる。さらに、各サンプルを順番に計測するため、計測時間が少し異なる。
本発明は、上記事情に鑑み、POCTに適するとともにランニングコストが安価なイムノアッセイ分析装置、およびそのイムノアッセイ分析装置に用いるチップ電極、検査チップを提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明のイムノアッセイ分析装置は、イムノアッセイを電気化学的に分析するイムノアッセイ分析装置であって、
分析対象の抗原と特異的に反応する抗体が固定化された凹部が形成されてなる検査チップと、
イムノアッセイが行なわれた後の検査チップに、上記凹部が形成された側の面に接するように重ね合わされた状態で用いられる、検査チップに形成された凹部に対面する位置に露出した検出電極を有するとともに、上記凹部および検出電極よりなる分析部に分析用の溶液を流入させる溶液導入流路が形成されてなるチップ電極と、
検査チップとチップ電極を重ね合わせた状態で装抜自在に装着するとともに分析用の溶液を収容する測定セルと、
測定セルに収容され溶液導入流路を通って分析部に流入した溶液とその分析部の標識酵素との間の反応を電気化学的に分析するポテンシュスタット部とを備えたことを特徴とする。
本発明のイムノアッセイ分析装置は、イムノアッセイを行う検査チップと電気化学検出を行うチップ電極を分離して作製し、それらを重ね合わせて分析を行うものである。これまでの検査チップやチップ電極に相当するものは、全てを使い捨てにすることを前提に作製されているが、本発明では、白金や金などの貴金属をスパッタリングしたチップ電極を何度でも繰り返し使用可能であり、簡便で安価に作製可能な検査チップを使い捨てにできる。このように、抗体が固定化された検査チップとその検出部であるチップ電極を別々に作製し重ね合わせることによりアドレス化し検出する方法は報告がない。さらに、本発明によれば、診断項目に応じた検査チップを作製することにより、多種類のタンパク質や小分子等、多種類の分析対象に対応可能である。
ここで、本発明のイムノアッセイ分析装置において、検査チップとチップ電極とを重ね合わせた状態に保持するチップホルダを備え、測定セルは、検査チップとチップ電極を保持したチップホルダを装抜自在に装着することにより、検査チップとチップ電極を装抜自在に装着するものであることが好ましい。
チップホルダを導入することにより、検査チップの凹部と検査電極を正確に位置決めすることができ、高精度の分析が可能となる。
また、本発明のイムノアッセイ分析装置において、検査チップは、上記凹部を複数配列してなるものであり、チップ電極は、検査チップに重ね合わされた状態におけるその検査チップに配列された複数の凹部それぞれに対面する位置にそれぞれ露出した、相互に独立な複数の検出電極を有するとともに、相互に対応する凹部と検出電極からなる複数の分析部それぞれに、分析用の溶液を、各分析部ごとに独立に流入させる複数の溶液導入流路が形成されたものであることが好ましい。
本発明のイムノアッセイ分析装置は、小型化に適し複数の分析部を並べることができる。また、相互に独立な溶液導入流路を形成することにより、溶液中に介在するメディエータ分子が各分析部間を行き来するクロストーク現象を十分に低いレベルに抑えることができ、複数の分析部において相互に影響を与えることなく独立した分析が可能である。
また、上記目的を達成する本発明のチップ電極は、分析対象の抗原と特異的に反応する抗体が固定化された凹部が形成されイムノアッセイが行なわれた後の検査チップに、凹部が形成された側の面に接するように重ね合わされた状態で用いられる、凹部に対面する位置に露出した検出電極を有するとともに、凹部および検出電極よりなる分析部に分析用の溶液を流入させる溶液導入流路が形成されてなることを特徴とする。
ここで、このチップ電極は、上記凹部が複数配列された検査チップと重ね合わされた状態で用いられるものであって、この検査チップに重ね合わされた状態におけるこの検査チップに配列された複数の凹部それぞれに対面する位置にそれぞれ露出した、相互に独立な複数の検出電極を有するとともに、相互に対応する凹部と検出電極からなる複数の分析部それぞれに、分析用の溶液を、各分析部ごとに独立に流入させる複数の溶液導入流路が形成されたものであることが好ましい。
また、上記目的を達成する本発明の検査チップは、分析対象の抗原と特異的に反応する抗体が固定化された凹部が形成され、イムノアッセイが行なわれた後に、その凹部に対面する位置に露出した検出電極を有するとともにその凹部および検出電極よりなる分析部に分析用の溶液を流入させる溶液導入流路が形成されてなるチップ電極にその凹部が形成された側の面が接するように重ね合わされて、溶液導入流路を通って分析部に流入してきた溶液とその分析部の標識酵素との間の反応の電気化学的分析に用いられることを特徴とする。
ここで、この検査チップは、検出電極および溶液導入流路が複数配列されたチップ電極に重ね合わされるものであって、チップ電極に配列された複数の検出電極それぞれに対面する位置それぞれ形成され対面する検出電極とのペアからなる複数の分析部を形成する複数の凹部が配列されたものであることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、POCTに適するとともに、ランニングコストを安価に抑えることができる。
以下では、先ず、本発明の構成が有効であることの基礎的な検証実験について説明し、その後本発明の実施の形態について説明する。
(1)タンパク質および溶液
C反応性タンパク質抗原(r−CRP)、マウス単クローン性抗CRP抗体(CRP抗体)、マウス単クローン性抗ペプシノゲン1抗体(PG1抗体)、マウス単クローン性抗ペプシノゲン2抗体(PG2抗体)、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウス単クローン性抗CRP抗体(HRP標識CRP抗体)、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウス単クローン性抗ペプシノゲン1抗体(HRP標識PG1抗体)および西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウス単クローン性抗ペプシノゲン2抗体(HRP標識PG2抗体)は、第一化学薬品工業製を用いた。ペプシノゲン1抗原(PG1)、ペプシノゲン2抗原(PG2)は、栄研製を用いた。抗原溶液および抗体溶液は、いずれもリン酸緩衝液(PBS;8.1mMNa2HPO4、1.5mMKH2PO4、2.7mMKCl、1.4MNaCl、pH7.4)で調整した。50%(v/v)の牛血清を含むPBS溶液を用いて調整したPG2抗原溶液も使用した。測定には、リン酸緩衝液(0.1MNa2HPO4、0.1MNaH2PO4、0.1MKCl)で調節した0.5mM フェロセンメタノール(FcOH、 pH6.8)水溶液を用いた。FcOHは、酵素反応と電極反応のメディエータとして作用する。
(2)プロテインマイクロアレイおよび棒型作用電極を組み合わせたC反応性タンパク質の検出
(2−1)棒型作用電極の作製
ここでは抗体を固定化した分析用基板(後述する図1参照)を「プロテインマイクロアレイ」と称する。このプロテインマイクロアレイ上に構築した抗体−抗原−標識抗体のサンドイッチ構造を電気化学的に検出するために、棒型作用電極を作製した。銅リード線を溶接した直径300μmの金線を樹脂管(Strip Styrene 217 SA、evergreen scale models社製)に挿入し、エポキシ樹脂(エポキシ樹脂Epok812、応研商事社製)を樹脂管の内部に充填して封入した。オーブン(60℃)中で12時間焼成してエポキシ樹脂を固化させ、片端をダイヤモンドグラインダー(EG−400、Narishige社製)で削り出し、金線の表面を露出させた。
(2−2)C反応性タンパク質(CRP)検出用チップの調整
図1に、構築したサンドイッチイムノアッセイ構造の概念図を示す。
ここでは、ポリスチレンの基体11上にポリエステルフィルム12が貼付されることにより分析用基板10が構成されている。ポリエステルフィルム12には貫通孔が形成されており、これによりその分析用基板10に窪み(分析部13)が形成されている。
この図1には、その窪み(分析部13)に、一次抗体1−抗原2−HRP標識二次抗体3のサンドイッチイムノアッセイ構造が模式的に示されている。
ここでは、500μg/ml固相用一次抗体(CRP抗体)0.8μlを分析用基板の窪み(分析部13)に滴下し、室温で30分間感作した。Tween20を体積比で0.05%(v/v)含むリン酸緩衝液(PBST)で分析用基板10を3回洗浄し、非特異吸着を抑制するため10mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)−を1mlリットルあたり10mg含むPBST溶液2μlを窪み(分析部13)に滴下して室温で2時間ブロッキング処理した。さらに、PBSTで3回洗浄を行った。
リン酸緩衝液(PBS)で任意に希釈した測定サンプル(抗原、r−CRP)0.8μlをプロテインマイクロアレイの窪み(分析部)に滴下し、室温で10分間反応させた。反応後、PBSTで3回洗浄し、381.2μO.D./ml標識抗体(HRP標識CRP抗体)溶液を5,000倍に希釈し、0.8μlを窪みに滴下し、室温で10分間反応させた。最後にPBSTで3回洗浄した。図1には窪み(分析部13)が1つのみ示されているが、分析用基板10には複数の分析部13が配列されており、各分析部13のr−CRPの濃度を、それぞれ、0ng/ml、10ng/ml、100ng/ml、1,000ng/ml、10、000ng/mlとした。
(2−3)棒型作用電極の位置制御
プロテインマイクロアレイ上に構築した抗体−抗原−標識抗体のサンドイッチ構造を、棒型作用電極を検出プローブとして利用した電気化学顕微鏡(SECM)で評価した。図2に、評価法の説明図を示す。図2(B)は部分拡大図である。まず、0.5mM FcOH水溶液21で満たされた細胞培養用のプラスチックシャーレ22にプロテインマイクロアレイ10を挿入した。プロテインマイクロアレイに形成させた分析部(窪み)13の位置を光学顕微鏡(TMD300、Nikon社製)観察下で確認した。三極式の電気化学計測法を採用し、参照電極23としてAg/AgCl電極、対極24として白金電極を用いた。それぞれの電極をポテンショスタット(HA1010mM8、北斗電工社製)25に接続した。任意のバルク溶液中でサイクリックボルタンメトリーを行い、さらに、サーボモーター駆動のXYZ自動ステージ26に装着された棒型作用電極27を分析部13の真上に移動させて上方から押し付け、再度、サイクリックボルタンメトリーを行った。
図3に、0.5mM FcOH溶液中におけるサイクリックボルタモグラムを示す。図3(a)は、バルク溶液中で計測されたボルタモグラムである。Ag/AgClからなる参照電極を用いその参照電極の電位を基準として棒状作用電極に初期電位として0.0Vを与えた(ここでは、これを「0.0Vvs.Ag/AgCl」と表記する。以下同様)。その後、電位を0Vから正の方向へ速度50mV/sで挿引し、0.5Vで負の方向に折り返して挿引した。0.0Vvs.Ag/AgClから電位を正方向に挿引するとFcOHの酸化反応に起因した酸化電流が観測され、0.27Vにピークを有する軌跡を描いた。挿引方向の折り返し後、酸化反応により電極表面で生成されたFcIIIOHの還元反応が観測され、酸化反応と同様にピーク(ピーク電位、0.2V)を有する波形となった。
図3(b)は、棒型作用電極を分析部の上方から分析部に押し付けた際に計測されたボルタモグラムである。電極高さを降下させる、つまり、電極表面−プロテインマイクロアレイ間距離が小さくなると電極反応物質であるFcOHの電極表面への拡散による供給が妨害されるため、酸化電流は減少した。さらに、電極反応により生成されたFcIIIOHの分析部および電極により定義された微小空間からの拡散放出が妨害されるため還元電流は増加した。棒型作用電極を分析部の上方から分析部に押し付けた際、プロテインマイクロアレイの分析部と棒型作用電極で定義された空間は、完全に外部溶液と遮断されておらず、わずかな液絡が生じているため電気化学計測が可能である。棒型電極の押さえつけ強度に依存して、外部から分析空間内に拡散するFcOHの量が変化することによりFcOHの酸化還元電流波形が変化し、その波形や電流量から棒型作用電極のz方向位置情報を得ることができ、高精度にタンパク質検出を行うために棒型電極の押さえつけ強度を一定にすることができる。すなわち、サイクリックボルタモグラムの波形およびピーク電流値を一定にすることによって、電極の配置を決定した。今回、電極を押さえつけた際のボルタモグラムにおける酸化電流ピークをバルクにおけるそれの50%である40nAに設定した。
(2−4)棒型作用電極を用いたプロテインマイクロアレイ上におけるC反応性タンパク質の電気化学的評価
免疫計測を行う電極位置を上記の手法を用いて決定した後、標識酵素(HRP)の基質である過酸化水素溶液(最終濃度0.10mM)を添加し、溶液をピペッティングにより攪拌し、4.5分間静置した。この際、プロテインマイクロアレイの分析部内に過酸化水素を十分供給するために、電極位置決定後、電極を1mm上昇させ保持した。再度、電極を決定位置に配置し、30秒後にアンペロメトリー計測を行った。電極電位を、0.16Vvs.Ag/AgClまたは0.12Vvs.Ag/AgClに設定した。図4(A)に、r−CRPを(a)0ng/ml、(b)10ng/ml、(c)100ng/ml、(d)1000ng/mlおよび(e)10、000ng/mlの濃度で反応させた各分析部を対象とした際のアンペログラムを示す。ここで、r−CRPを反応させた後、381.2μO.D./mlのHRP標識CRP抗体をPBSで5000倍に希釈したHRP標識CRP抗体を用いて反応させている。電位を、時間0秒で開回路電位から0.16Vvs.Ag/AgClへステップさせた。すべての分析部における計測で、電位ステップ直後にスパイク状に電流の増加が観測され徐々に減少して定常電流を得た。電流が酸化側(プラス側)に増加しているのは、分析チップ内に存在するFcOHが経常的に酸化されているためである。免疫反応により分析部に固定化された一次抗体(CRP抗体)に抗原(r−CRP)および標識二次抗体(HRP標識CRP抗体)が捕捉されサンドイッチ構造が構築されていると、HRP標識CRP抗体の酵素により過酸化水素の還元反応およびFcOHの酸化反応が進行するため、酵素によりFcOHは消費されるとともに生成されたFcIIIOHは電極表面に到達し還元される。図4(B)に、r−CRP抗原濃度に対する電流変化量を示す。この電流変化は、図4(A)で得られた各アンペログラムの300−400秒に得られた電流値を平均して算出した値から、図4(A)aから得られた値を差し引いている。すなわち、図4(A)aで得られた値はr−CRPを反応させていないので、バックグラウンド電流を差し引いていることになる。プロテインマイクロアレイに作用させたr−CRP抗原濃度を増加させると観測される電流変化量が増加した。これは、チップに固定化された一次抗体に特異的に反応したr−CRP抗原量に依存している。r−CRP抗原濃度が濃いと固定化一次抗体との反応量が増加し捕捉量が増加する。さらには、標識二次抗体の反応量も増加しその捕捉量も増加する。すなわち、酵素反応によって消費されるFcOHの量が増加し、生成されるFcIIIOHの量も増加するため電流変化量の増加につながる。図4(B)をCRP抗原の検量線として使用することができ、未知の抗原濃度サンプルをプロテインマイクロアレイに作用させ、得られた還元電流応答からサンプル中に含まれていた抗原量を決定できる。
しかし、各濃度の抗原を作用させた分析部に対し、電極を測定ごとに分析部へと移動させ、正確な位置制御を行う必要がある。また、この手法を用いて複数のサンプルを検出する際には、各分析部を順番に計測するため測定時刻に時差が発生する。抗原の検出には標識酵素(HRP)の酵素反応により生成される酸化型メディエータの電極による還元反応を利用しているので、基質である過酸化水素を添加した後に進行する酵素反応の進行程度の時間による相違から正確な測定が困難になる。
(3)プロテインマイクロアレイおよび棒型作用電極を組み合わせたペプシノゲン1(PG1)およびペプシノゲン2(PG2)の検出
(3−1)ペプシノゲン1(PG1)およびペプシノゲン2(PG2)検出用チップの調整
ペプシノゲン1およびペプシノゲン2検出用のチップ作製方法は同じである。まず、5μg/ml固相用一次抗体(PG1抗体、またはPG2抗体)0.8μlを分析用基板の窪み(貫通孔部分)に滴下し、室温で30分間感作した。チップを0.05%(v/v)Tween20を含むリン酸緩衝液(PBST)で3回洗浄し、非特異吸着を抑制するためブロックエース(BA、大日本製薬社製)2μlを窪み(分析部13)(図1参照)に滴下して室温で2時間ブロッキング処理した。さらに、PBSTで3回洗浄を行った。
PBSで任意に希釈した測定サンプル(抗原、PG1またはPG2)0.8μlをプロテインマイクロアレイの窪み(分析部)に滴下し、室温で30分間反応させた。反応後、PBSTで3回洗浄し、1μg/ml標識二次抗体(HRP標識PG1抗体、またはHRP標識PG2抗体)溶液0.8μlを窪みに滴下し、室温で30分間反応させた。最後にPBSTで3回洗浄した。PG1の濃度を、それぞれ、0ng/ml、1.3ng/ml、2.5ng/ml、5.0ng/ml、10.1ng/mlとした.また、PG2の濃度を、それぞれ、0ng/ml、1.3ng/ml、2.5ng/ml、5.1ng/ml、10.2ng/mlとした。
(3−2)棒型作用電極を用いたプロテインマイクロアレイ上におけるペプシノゲン1およびペプシノゲン2の電気化学的評価
測定に用いた電極は、(2−1)で作製した棒型電極を用いた。棒型電極の位置制御は、(2−3)と同様に行った。電気化学顕微鏡システムを用いて、上記手法に基づいて棒型作用電極をPG1検出用チップの分析部に配置し、アンペロメトリー(PSCA)計測を試みた。図5(A)に、PG1を(a)0ng/ml、(b)1.3ng/ml、(c)2.5ng/ml、(d)5.0ng/mlおよび(e)10.1ng/mlの濃度で反応させた分析部を対象とした際のアンペログラムを示す。ここで、PG1を反応させた後、1μg/mlHRP標識PG1抗体および1μg/mlHRP標識PG2抗体をそれぞれ反応させている。電位を、時間0秒で開回路電位から0.12Vvs.Ag/AgClへステップさせた。すべての分析部における計測で、電位ステップ直後にスパイク状に電流の増加が観測され徐々に減少して定常電流を得た。免疫反応により分析部に固定化された一次抗体(PG1抗体)に抗原(PG1)および標識二次抗体(HRP標識PG1抗体)が捕捉されサンドイッチ構造が構築されていると、HRP標識PG1抗体の酵素により過酸化水素の還元反応およびFcOHの酸化反応が進行するため、酵素によりFcOHは消費されるとともに生成されたFcIIIOHは電極表面に到達し還元される。図5(C)に、PG1抗原濃度に対する還元電流を示す。この還元電流値は、図5(A)で得られた各アンペログラムの200−300秒に得られた電流値を平均して算出した値から、図5(A)aから得られた値を差し引いている。すなわち、図5(A)aで得られた値はHRP標識PG1抗体を反応させていないので、バックグラウンド電流を差し引いていることになる。プロテインマイクロアレイに作用させたPG1抗原濃度を増加させると観測される還元電流が増加した。これは、チップに固定化された抗体に特異的に反応したPG1抗原量に依存している。PG1抗原濃度が濃いと固定化一次抗体との反応量が増加し捕捉量が増加する。さらには、標識二次抗体の反応量も増加しその捕捉量も増加する。すなわち、酵素反応によって消費されるFcOHの量が増加し、生成されるFcIIIOHの量も増加するため電流変化量の増加につながる。図5(C)をPG1抗原の検量線として使用することができ、未知の抗原濃度サンプルをプロテインマイクロアレイに作用させ、得られた還元電流応答からサンプル中に含まれていた抗原量を決定できる。
PG2を用いて上記と全く同様の計測を試みた。図5(B)に、PG2の濃度を、それぞれ、(a)0ng/ml、(b)1.3ng/ml、(c)2.5ng/ml、(d)5.1ng/mlおよび(e)10.2ng/mlの濃度で反応させた分析部を対象とした際のアンペログラムを示す。PG1の場合と比較して、ほぼ同様の結果が得られ、作製したPG2検出用チップを用いるとPG2抗原が電気化学的に検出可能であることが示された。
図5(D)に、PG2抗原濃度に対する還元電流を示す。図5(D)をPG1抗原の検量線として使用することができ、未知の抗原濃度サンプルをプロテインマイクロアレイに作用させ、得られた還元電流応答からサンプル中に含まれていた抗原量を決定できる。
しかし、各濃度の抗原を作用させた分析部に対し、電極を測定ごとに分析部へと移動させ、正確な位置制御を行う必要がある。また、この手法を用いて複数のサンプルを検出する際には、各分析部を順番に計測するため測定時刻に時差が発生する。抗原の検出には標識酵素(HRP)の酵素反応により生成される酸化型メディエータの電極による還元反応を利用しているので、基質である過酸化水素を添加した後に進行する酵素反応の進行程度の時間による相違から正確な測定が困難になる。そこで、複数の分析部アレイを有するプロテインマイクロアレイと、その分析部アレイと同配列を有するチップ電極を組み合わせた一括同時分析システムを構築した。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(4)プロテインアレイチップおよびチップ電極を組み合わせたマルチイムノアッセイシステム
(4−1)ガラスチップ上アレイ電極(チップ電極)の作製
図6(同図(A)上面図、(B)X軸(i−i)断面図、(C)Y軸(ii−ii)断面図)に、8個の正方形金電極(500μm×500μm)の検出電極31(上面図の左から検出電極をE1、E2、E3、E4、E5、E6、E7およびE8と、それぞれ称す)、8本の金リード線32と8個のボンディング部33、その検出電極31を定義しさらに金リード線32を絶縁被服するためのポリイミド34およびポリイミドで定義された検出電極31(さらには、分析部)に測定溶液を導入するための溶液導入流路35を有する検出用基板を示し、次に、その作製方法を説明する。ここで、作製した検出用基板を「チップ電極」30と称す。ボンディング部33は外部回路との接続部位である。
洗浄済みガラス基板39(41mm×26mm、厚さ1mm、松浪社製)にフォトリソグラフィーを利用して8個の独立して作動する金電極をアレイ状に配置した。まず、ガラス基板上にプライマー(OAP、東京応化社製)およびポジティブフォトレジスト(OFPR−5000、東京応化社製)を順にスピンコートした。次に、基板をオーブン(90℃)中で30分間プレベークし、その上に予め作製したマスクパターンを密着させ、水銀ランプ(500W)を用いて紫外光を照射(25mJ/cm2)した。マスクには、検出電極31、金リード線32およびボンディング部33に相当する部分に照射された紫外光が到達するパターンがデザインされている。現像液(NMD−W2.38%、東京応化社製)中で100秒間現像し、検出電極31、金リード線32およびボンディング部33に相当する感光部分を溶出させた。蒸留水中で15秒間ずつ2回洗浄し、130℃で30分間ポストベークした。ガラス基板上にチタン(厚さ10nm)および金(厚さ200nm)を順にスパッタ蒸着し、アセトン溶液中に浸漬することによりフォトレジストおよびフォトレジスト上のチタンおよび金薄膜をリフトオフしアレイ電極を得た。検出電極31の幅は500μmであり、隣接する検出電極どうしの間隔は3.5mm(検出電極中心間距離は4mm)である。ボンディング部33の大きさは10mm×2.5mmで、それぞれのボンディング部の間隔は1.5mmである。また、検出電極31とボンディング部33を接続する金リード線32は、長さ9.9mm、幅1.5mmおよび0.3mmである。図7に検出電極、金リード線、およびボンディング部33の形状を示す。
さらに、このアレイ電極基板に感光性ポリイミドプレポリマー(フォトニースUR−3140、東レ社製)をスピンコートした。オーブン(77℃)中で85分間プレベークし、その上に予め作製したマスクパターンを密着させ、水銀ランプ(500W)を用いて紫外光を照射(6000mJ/cm2)した。マスクには、ボンディング部周辺および流路部に相当する部分に照射された紫外光が到達しないパターンがデザインされている。現像液(TORAYフォトニース、東レ社製)中で15分間現像し、感光部分以外を溶出させた。2−プロパノール中で1分間ずつ2回洗浄し、100℃、200℃、300℃の順で、それぞれ30分間ポストベークした。ポリイミド薄膜の厚さは8μmであり、金リード線の絶縁および検出電極への溶液導入流路の定義の役割を担う構成となっている。ポリイミドで定義された溶液導入流路35は、長さ6.15mm、幅0.6mmであり、流路の端点に検出電極31が配置されている。
(4−2)分析用基板の作製
図8(同図(A)上面図、(B)i−i断面図)に、8個の正方形(1mm×1mm)の窪みで定義された分析部を有する分析基板10を示し、次に、その作製方法を説明する。洗浄済みポリスチレン製基板11(35mm×11mm)上に、ポリスチレン製基板(厚さ1.7mm)と同サイズの8個の正方形(1mm×1mm)の貫通孔を有する接着性ポリエステルフィルム12(TL−85−25、厚さ50μm、リンテック社製)を接着させた。8個の貫通孔はレーザー加工機(WIN−LASER、Scottsdale社製)を用いて作製され、孔の位置はチップ電極30の8個の検出電極31(図6参照)と同じ配置に配列されており、孔中心間距離もチップ電極の検出電極と同じ4mmとした。上面図(図8(A))の右から分析部13をA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7およびA8と、それぞれ称す。このポリエステルフィルムで定義された貫通孔の底面のポリスチレン基板表面を抗体固定化相として利用した。
(4−3)プロテインマイクロアレイの作製およびプロテインマイクロアレイ上における免疫反応
図1に、構築したサンドイッチイムノアッセイ構造の概念図を示す。作製した分析用基板のポリエステルフィルム12で定義された分析部13の底面のポリスチレン基板11表面上に、サンプル中に存在する分析対象物質(抗原)と特異的に反応する抗体(一次抗体)を固定化した。固定化には、物理吸着を利用している。この抗体を固定化した分析用基板10を「プロテインマイクロアレイ」と称する。プロテインマイクロアレイ上に固定された抗体1に、抗原2およびHRP標識二次抗体3を順に反応させて抗体−抗原−HRP標識抗体のサンドイッチ構造を構築した。
(4−4)チップホルダーの作製
重ね合わせたチップ電極30(図6参照)およびプロテインマイクロアレイ10(図8参照)を保持するために、チップホルダーを作製した。図9に、チップホルダーの部品図を示す(同図(A)部品a、(B)部品b、(C)部品c、(D)部品d、(E)部品eおよび(F)チップ電極保持基板)。チップホルダーは、5個の部品で構成されており、そこにチップ電極およびプロテインマイクロアレイが組み込まれる。部品a、b、cおよびeは厚さ1mmのアクリル基板(アクリサンデー板、アクリサンデー社製)、部品dは厚さ1.7mmのポリスチレン基板をレーザー加工機で加工して作製されている。まず、切り出した部品a、bおよびcをアクリル樹脂用接着剤(アクリサンデー、アクリサンデー社製)で貼り合わせ、電極保持基板43(図8F)を作製した。電極は、チップ電極保持基板43の部品bおよびcで定義された部分(図8Fにハッチングで示したチップ電極保持部41)に嵌め込まれる。部品dは、プロテインマイクロアレイと同様にポリスチレン製であり同じ厚さである。また、部品dの中央には、プロテインマイクロアレイをはめ込むための35mm×11mmの孔42が準備されている。このサイズは、プロテインマイクロアレイと同じ大きさである。
(4−5)チップホルダーの組み立て
部品a、bおよびcを用いて作製した電極保持基板43(図9F参照)に、チップ電極を組み込んだ。電極保持基板43および部品eを用いて、プロテインマイクロアレイをはめ込んだ部品dを挟み込みチップホルダー40(図10参照)を組み立てた。これによりプロテイン同時分析チップ50が完成した。図10(同図(A)上面図、(B)X軸(i−i)断面図、(C)(B)の拡大図)および(図11)に、電極チップ30およびプロテインマイクロアレイ10を組み込んだチップホルダー40、すなわち、プロテイン同時分析チップ50の概略図を示す。
(4−6)測定セルの作製
図12に測定セルの部品図、図13に組み立てた状態の測定セルの構成を示す。この測定セル60は、下方(10mm)が液絡したスペーサ61を含む直方体(20.7mm×70.0mm×28.6mm)構造である。測定セル60の上面図下方の入口62(4.7mm×61mm)から、組み立てたチップホルダー40すなわちプロテイン同時分析チップ50(図10,図11参照)を挿入し、上面図上方の入口63から、14mlの測定溶液を注入した。構成部品を、それぞれ、レーザー加工機を用いて作製したアクリル基板をアクリル樹脂用接着剤で固定して組み立てた。
(4−7)マルチチャンネルプロテイン同時分析装置
図14に、POCTを目的としたプロテインマイクロアレイの携帯型8チャンネル同時分析装置の構成図を示す。装置は、測定部70とマルチポテンショスタット部80から構成されている。測定部70には、測定セル60(図13参照)に組み込まれたプロテイン同時分析チップ50、参照電極71および対極72が収納される。測定部全体をノイズ低減のためアルミニウム板製のシールドボックスで覆う。測定部70に収納されたプロテイン同時分析チップ50のチップ電極30、参照電極71および対極72をそれぞれコネクタ(図示せず)に接続し、測定電流をプリアンプ73により増幅する。マルチポテンショスタット部80は、マルチポテンショスタット(メインアンプ)81、電位をコントロールするDAコンバータ82、測定電流をデジタル信号に変換するADコンバータ83、それぞれを制御するCPU84、および記録メモリ85から構成されている。さらに、外部コンピュータ90によりインターフェース86を介してチップ電極30の電位を制御し、測定結果を処理し出力表示する。すでに、この装置は、携帯可能なサイズにまで小型化(サイズ:W15cm×D22cm×H10cm)されている。
(4−8)マルチチャンネルプロテイン同時分析システムの評価
上記で組み立てられたチップ電極30およびプロテインマイクロアレイ10を含むチップホルダー40(プロテイン同時分析チップ50)を測定セル60に組み込み、マルチチャンネルプロテイン同時分析システムを構築して電気化学的に評価した。チップ電極30にカードエッジコネクタ(図示せず)を取り付け、測定セル60(図13参照)に挿入された参照電極71および対極72とともに8チャンネルマルチポテンショスタットに接続した。
(4−9)マルチチャンネル測定システムの構築と電気化学的基礎評価
作製されたチップ電極およびプロテインマイクロアレイをチップホルダーに組み込み、測定セルに挿入し、マルチチャンネルプロテイン同時分析システムを構築して電気化学的に評価した。プロテイン分析システムにおいて、検出電極E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7およびE8は、それぞれ窪み(分析部)A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7およびA8と対応して配列された。測定溶液(0.5mMFcOH)をセルに注入すると、溶液は電極チップおよびプロテインマイクロアレイで定義された溶液導入流路を通って検出電極および分析部に到達することを確認した。
まず、7チャンネル同時に電極電位を挿引し、7チャンネル同時サイクリックボルタンメトリーを行った。図15に、7チャンネル同時に計測したボルタモグラムを示す。電位を0Vから正の方向へ速度20mV/sで挿引し、0.5Vで負の方向に折り返して挿引した。電位を0Vvs.Ag/AgClから正方向に挿引すると、FcOHの酸化反応に起因した酸化電流が観測され始め、0.26Vにピークを有する軌跡を描いた。挿引方向の折り返し後、酸化反応により電極表面で生成されたFcIIIOHの還元反応が観測され、酸化反応と同様にピーク(0.19V)を有する波形となった。全ての電極において得られたボルタモグラムはほぼ同じ波形であり、ピーク電流値もほぼ等しい。これは、セルに組み込んで構築したプロテイン分析チップの各検出電極部は、ほぼ同等のレイアウトであり、さらに、ほぼ同等の環境下にあることが示された。
(4−10)プロテイン同時分析システムを用いたPG2の6チャンネル同時検出
8チャンネルのプロテイン同時分析システムを用いて6種類の濃度の異なるPG2サンプルの同時検出を試みた。分析部A2、A3、A4、A5、A6およびA7に、それぞれ0ng/ml、0.95ng/ml、1.9ng/ml、3.8ng/ml、15.3ng/ml、30.5ng/mlのPG2抗原を作用させた。さらにHRP酵素標識抗体を作用させた後、プロテイン同時分析システムを組み上げ、測定セルに挿入し、0.10mM過酸化水素を含む0.5mMFcOH溶液14mlを測定セルに注入した。5分間静置後、これらの測定部に対応する検出電極E2、E3、E4、E5、E6およびE7に0.12VvsAg/AgClの電位を同時に印加し、それぞれの分析部内においてHRP酵素反応により酸化された酸化型FcOHをアンペロメトリックに同時計測した。この電位は、免疫反応により分析部に固定化された標識二次抗体のHRP酵素反応にともない生成されるFcIIIOHを検出電極で十分還元できる電位である。図16(A)に、それぞれの検出電極における還元電流応答を示す。還元電流値は、電位印加後200−300秒の間に得られた還元電流を平均し、さらに、抗原を作用させなかった(濃度0ng/ml)分析部A1において検出された電流応答との差を算出した。プロテインマイクロアレイに作用させたPG2抗原濃度が濃い場合には、観測される還元電流が増加した。これは、チップに固定化された抗体に特異的に反応したPG2抗原量に依存している。PG2抗原濃度が濃いと固定化抗体との反応量が増加し、さらには、標識二次抗体の反応量も増加する。よって、酵素反応によって生成される酸化型FcOHの量も増加し大きな還元電流が観測される。以上より、プロテイン同時分析システムを用いたPG2の6チャンネル同時検出が可能であるとが示された。このプロテイン同時分析システムに抗原濃度が既知のサンプルと抗原濃度が未知のサンプルを同時に作用させ、そして、同時に上記手法を用いて計測することにより、一括で既知のサンプルの結果から検量線を得るとともに未知のサンプル内に含まれていた抗原濃度を検出することが可能である。ここで行った、濃度1−30ng/mlのPG2抗原の検出は、現在、実際の疾患診断が要求している感度を満たしており、プロテインマイクロアレイを用いた電気化学計測法による免疫化学測定の有用性が実証された。また、電気化学測定に有した時間は5分程度とかなり短く、実用化に不可欠な迅速性も達成された。
さらに、PBS中50%(v/v)の牛血清溶液で調整した測定サンプル(抗原、PG2)で作製したチップを用いて6種類の濃度の異なるPG2サンプルの同時検出を試みた。PG2濃度を、それぞれ、0g/ml、1.6ng/ml、3.1ng/ml、6.3ng/ml、12.5ng/ml、50.0ng/mlとした。上記と全く同じ方法を用いて計測を行ったところ、PG2濃度に依存して検出された還元電流が変化した。図16(B)に、それぞれの検出電極における還元電流応答を示す。結果も上記と同じで、プロテインマイクロアレイに作用させたPG2抗原濃度が濃い場合には、観測される還元電流が増加した。以上より、測定対象物質であるPG2以外のタンパク質がサンプル内に含まれていた場合でも、プロテイン同時分析システムを用いることによりPG2を6チャンネル同時に検出可能であることを示している。しかし、牛血清溶液で調整したサンプルを作用させた際に検出された還元電流は、バッファー溶液で調整したサンプルを作用させた場合の還元電流と比較して約30%に減少した。これは、牛血清溶液に含まれる測定対象物質以外のタンパク質がプロテインマイクロアレイの抗体固定化領域に非特異的に吸着し、測定対象物質であるPG2の反応部位を大きく減少させたことに起因する。
(4−11)マルチチャンネルプロテイン同時分析システムを用いたクロストークの検証
分析部内の溶液(溶液内に存在する基質である過酸化水素およびメディエータであるFcOHとその酸化体FcIIIOH)が、隣接する分析部へ移動し高精度計測に影響を及ぼすクロストーク現象を調査するために、クロストーク探索用PG2チップを作製した。分析用基板上の窪み(分析部)A3およびA5に10μg/mlHRP標識PG2抗体0.8μLを滴下して室温で2時間感作し、HRP標識PG2抗体を固定化相に直接、物理的吸着を利用して固定した。
分析部内の溶液(溶液内に存在する分析対象物質およびメディエータであるFcOH)が、隣接する分析部へ移動し高精度計測に影響を及ぼすクロストーク現象の調査を試みた。プロテインマイクロアレイの分析部A3およびA5にHRP標識PG2抗体を物理吸着により固定した。分析部A2およびA4は無処理のままである。このプロテインマイクロアレイをチップホルダーに装着し、セルに組み込んでプロテイン分析システムを構築した。検出電極E2、E3、E4およびE5に0.12VvsAg/AgClの電位を印加し、HRP酵素反応により酸化された酸化型FcOHをアンペロメトリックに同時計測した。図17に、それぞれの分析部におけるアンペログラム(A)およびそれぞれの検出電極における還元電流応答(B)を示す。還元電流値は、電位印加後200−300秒の間に得られた還元電流を平均して算出した。HRP標識PG2抗体を固定化した分析部の検出電極部であるE3およびE5において大きな還元電流応答の増加が観測された。一方、E2とE4における還元電流値は、ほぼバックグラウンド電流値と同等であった。従って、分析部A3およびA5に固定化されたHRP酵素反応によって生成されたFcIIIOHは、拡散現象により隣接する検出電極E2およびE4へ到達しない。すなわち、隣接する電極間でのクロストーク現象の影響は無視できると結論付けた。よって、プロテイン同時分析システムを用いると電気化学的な免疫反応の同時分析が可能である。さらに、分析部間の距離を小さくした場合においても、分析部を電極チップによって押さえつけているため、分析部間におけるメディエータの相互作用はほとんど無視できる。
電極および分析部を微小化・集積化した際のクロストークについて検討を行った。電極として3つの白金マイクロ電極アレイを用いた。電極は100μm×100μmの正方形であり、それぞれ独立して作動する。電極のリード部分はネガティブフォトレジスト(SU−8、厚さ10μm)で被服されており、電極活性部位を定義づけてある。3つの電極は、一列に配列されており、ギャップ間距離は100μmである。左から電極A、BおよびCと名づける。電極A、B間のギャップは100μm、電極A、C間のギャップは300μmとなる。2つの電極を選択し、ジェネレータ/コレクタモードでアンペロメトリーを試みた。溶液には、4mMフェロシアン化カリウムを用いた。フェロセンメタノールおよびフェロシアンイオンの拡散係数は、それぞれ6.5×10-6cm2/s、7.0×10-6cm2/sとほぼ同じである(Yasukawaetal.Biochim.Biophys.Acta,1998,1369,152−158.)。ジェネレータ電極の電位をフェロシアンイオンが十分に酸化される0.5VvsAg/AgClに、コレクタ電極の電位を生成されたフェリシアンイオンが十分に還元・捕捉される0.05vsAg/AgClに設定した。ジェネレータ電極にて酸化反応を開始し、5分後にコレクタ電極にて捕捉を開始した。捕捉率をコレクタ電極で観測された還元電流値をジェネレータ電極で観測された酸化電流で割った値と定義して算出した。酸化・還元電流値は、それぞれ捕捉電位印加後200秒から300秒の値を平均して求めた。バルク溶液中における計測と電極デバイスの表面をカバーガラスでカバーした場合の捕捉率を比較検討した。この測定では、ジェネレータ電極での酸化・生成反応が、酵素によるフェロセンメタノールの酸化反応に対応している。
まず、電極Aをジェネレータ電極、電極Bをコレクタ電極として使用し、アンペロメトリーを行った。図18にジェネレータ/コレクタモードで検出した酸化還元電流応答を示す。図18(A)はバルク溶液中、図18(B)はカバーガラスでカバーした際のアンペログラムである。カバーをするとジェネレータ電流は減少し、コレクタ電流は増加した。ジェネレータ電流の減少は、カバーによるフェロシアンイオンの供給が阻害されるためである。コレクタ電流の増加は、ジェネレータ電極により生成されたフェリシアンイオンの散逸がカバーにより阻害されるためである。バルク溶液中での捕捉率は3.5±0.2%、カバー時の捕捉率は16.0±0.2%であった。バルク溶液中では、ジェネレータ電極にて生成されたフェリシアンイオンは、横方向だけでなく上方へも拡散し散逸される。しかし、カバー時では、フェリシアンイオンは上方に拡散できず隣の電極に到達し捕捉されるため捕捉率の増加が観測された。カバー時において、幾何学的には12%程度の捕捉率であると考えられる。幾何学的な計算と比較して計測値が大きい原因は、コレクタ電極近傍によるフェリシアンイオンの消費に伴う拡散の増加にある。次に、電極Aをジェネレータ電極、電極Cをコレクタ電極として使用し、アンペロメトリーを行った。バルク溶液中での捕捉率は0.7±0.3%、カバー時の捕捉率は7.0±0.5%であった。電極間ギャップを300μmと大きくすると捕捉されるフェリシアンイオンの量が減少する。カバー時において、幾何学的には4.4%程度の捕捉率であると考えられる。幾何学的な計算と比較して計測値が大きい原因は、コレクタ電極近傍によるフェリシアンイオンの消費に伴う拡散の増加にある。
カバーをした場合、生成されたフェリシアンイオンは全て横方向に拡散してしまう。しかし、この状態においても電極間距離300μmでの捕捉率は7%と小さい。実際に採用している測定系では溶液導入用の流路を設けてあるため、生成された酸化型メディエータのほとんどは流路を介して拡散すると考えられ捕捉率は低下する。よって、デバイスの全体サイズを微小化し電極および分析部を集積化した際において、導入流路を作製することによって捕捉率の低減を実現できる。さらには、分析部への導入流路の構築またはチップ電極上への多重リソグラフィーによる3次元流路構造の構築により、測定溶液または新たに準備したバッファー溶液と接続することが可能になり、ほとんどの拡散の方向は流路方向に限定され、クロストークの影響を抑制する。図19に、多重フォトリソグラフィーを用いた3次元微小流路構造の概念図を示す。これは本発明のチップ電極の第2の実施形態に相当する。ガラス基板39上に形成した一段目のポリイミド34を用いて検出電極31および溶液導入流路35を定義し、二段目のポリイミド38を用いて一段目の流路と反対側に、および一段目のポリイミドの上に段差をつけて流路37を作製する。この方法を用いると、金リード線32(図6、7参照)上にあるポリイミド上に流路を作製することが可能であるため、溶液が金リード線32と接触することなく流路37を作製できる。
この流路37を形成すると溶液導入流路35内の空気は流路37を通って流れるため、制御しきれない微小な隙間を通って流出する事態が防止され、したがって分析部の溶液が隣接する分析部に入り込むことが一層確実に抑制されクロストークの一層の低減化が図られる。デバイスを微小化した際には、検出電極31および流路の形成において2次元的に十分なスペースを確保することが困難であるため、図17に示すように3次元構造を利用することが望ましい。また、分析部を定義しているポリエステルフィルム12の分析部近傍に両面接着性ポリエステルフィルムを採用することにより、分析部近傍とチップ電極に強固な接着が達成されクロストークの影響をさらに低く抑えることができる。プロテインアレイチップの材料にポリジメチルシロキサンなどの柔らかい高分子を使用することによる接着性の向上も期待できる。
以上の実施形態の説明をまとめると以下のとおりとなる。
分析対象物質(抗原)に特異的に反応する抗体を固定配列した複数の微小孔分析部を有するプロテインマイクロアレイと、分析部に構築された抗体―抗原―標識抗体のサンドイッチ構造によって発生する信号を電気化学的に検出する複数の微小電極が配列されたチップ電極を分離して作製する。
両者を分離して作製することにより、検出用チップ電極を再利用し、プロテインマイクロアレイのみを使い捨てる。
両者を別途作製したチップホルダーに組み込んで各チップに配列した分析部および電極を高精度で一括した配列・配置を達成する。
プロテインマイクロアレイの抗原捕捉部位(微小孔分析部)とチップ電極の検出電極部に同じ配列構造を有するプロテインマイクロアレイとチップ電極をチップホルダーに組み込むことにより、毎回、抗原捕捉部と検出微小電極の間の位置合わせを再現性よく高精度で簡便に実現する。
それぞれのチップの分析部および検出電極は、チップホルダーに組み込まれた際に空間的に高精度で一致してペアを形成するように配列され、溝構造を有するチップホルダーに挿入することにより、分析部である孔表面と検出電極部である電極表面の正確な距離制御を実現可能にする。
さらに、チップホルダーを測定セルに挿入した際に、プロテインマイクロアレイの各分析部とチップ電極の各電極間の空間には毛細管現象により測定溶液が充填されるシステムを採用している。
上記を達成するために、チップ電極の各電極から測定セルの溶液間を貫通する流路をチップ電極上に配置しておく。
各分析部において捕捉されたサンプルと反応して分析部に捕捉された酵素標識抗体により進行する酵素反応は、それぞれの分析部においてお互いの分析部に影響を与えることなく独立して進行することが正確な計測のために必要不可欠である。
測定溶液中に介在させたメディエータ分子が各分析部間を行き来するクロストーク現象が存在すると、正確なサンプルの計測を阻害する。
すなわち、本システムにおいて、分析部において捕捉されたサンプルは、酵素標識抗体の酵素反応により生成される酸化型メディエータあるいは還元型メディエータを電極で電気化学的に検出することによって測定されているため、各分析部で生成された酸化型メディエータあるいは還元型メディエータが目的の電極で検出されず、近傍の分析部に拡散した場合は、測定誤差となり正確な計測が行えない。
この、目的としている分析部外へのメディエータの流出を抑制し、各分析部において独立して正確に分析するために、プロテインマイクロアレイおよびチップ電極をチップホルダーに組み込み、同サイズの測定セルに挿入することによりプロテインマイクロアレイとチップ電極との間に印加される圧力を両者が接触している領域全域にわたって一定にし各分析部間の溶液の流れを抑制する。
また、酵素標識抗体の酵素反応により生成された酸化型メディエータまたは還元型メディエータ分子の中で、電極により検出されなかったメディエータのほとんどが他の分析部に拡散しないように、それぞれの分析部に微小流路構造を構築し、その流路部分に拡散できる構成を採用する。
以上より、サンプル溶液に含まれている測定対象物質をプロテインマイクロアレイで捕捉し、多項目同時分析および多検体同時分析を高感度で迅速に定性的におよび定量的に分析可能な、新規な高感度同時分析電気化学プロテインマイクロアレイ分析システムが提供される。
このように、上述の実施形態によれば、細胞チップを利用した電気化学的診断システムに関する基盤技術が確立できる。実際にヒトから採取した極微少量血液等の体液をサンプルとして計測することにより、疾病の早期発見や疾病の進行程度の経常的なモニタリングシステムを提供できる。極少量の試料を短時間で簡便に計測可能であり、多検体同時計測および多項目同時計測システムへの可能性を有している。さらに、8チャンネル同時分析システムを用いるとサンプル計測と同時に検量線を作成することも可能であるため、チップ間の誤差による測定誤差を解消できる。
さらに、プロテインマイクロアレイの効率的計測技術の開発は、医療、環境、食品等の実用面においても飛躍的なインパクトを与えるため、広く利用されることになる。チップ等の一部を変更すると、健康モニタリング、医療診断、医薬品開発におけるスクリーニング、環境モニタリングなど幅広い用途があり波及効果は極めて大きい。このように、汎用性のある高感度で小型な簡易分析デバイスが実現可能である。
上述の実施形態は、このような従来の電気化学検出法の課題を解決するものであり、複数の抗体を固定化した分析部に捕捉された極微量の抗原を一括して同時にそして簡便に計測することができる。
構築したサンドイッチイムノアッセイ構造の概念図である。 図1に示すサンドイッチイムノアッセイ構造の評価法の説明図である。 0.5mM FcOH溶液中におけるサイクリックボルタモグラムを示す図である。 棒状作用電極を用いた各分析部におけるアンペログラム(A)、およびr−CRP濃度に対する還元電流応答を示す図である。 棒状作用電極を用いた各分析部におけるアンペログラム(A:PG1、B:PG2)、および各濃度に対する還元電流応答(C:PG1、D:PG2)を示す図である。 チップ電極を示す図である。 検出電極、金リード線、およびボンディング部の形状を示す図である。 分析基盤(プロテインマイクロアレイ)を示す図である。 チップホルダーの部品図である。 プロテインマイクロアレイ、チップ電極、およびチップホルダーの組立状態を示す図である。 プロテインマイクロアレイ、チップ電極、およびチップホルダーの組立状態を示す分解斜視図である。 測定セルの部品図である。 組み立てた状態の測定セルの構成を示す図である。 POCTを目的としたプロテインマイクロアレイの携帯型8チャンネル同時分析装置の構成図である。 7チャンネル同時に計測したボルタモグラムを示す図である。 それぞれの検出電極における還元電流応答を示す図である。 それぞれの分析部におけるアンペログラム(A)およびそれぞれの検出電極における還元電流応答(B)を示す図である。 ジェネレータ/コレクタモードで検出した酸化還元電流応答を示す図である。 多重フォトリソグラフィーを用いた3次元微小流路構造の概念図を示す図である。
符号の説明
1 一次抗体
2 抗原
3 HRP標識二次抗体
10 分析用基板
11 基体
12 ポリエステルフィルム
13 窪み
20 Tween
21 FcOH水溶液
22 プラスチックシャーレ
23 参照電極
24 対極
25 ポテンショスタット
26 XYZ自動ステージ
27 棒型作用電極
30 チップ電極
31 検出電極部
32 金リード線
33 ボンディング部
34 ポリイミド
37 流路
38 ポリイミド
39 洗浄済みガラス基板
40 チップホルダー
41 電極保持部
42 孔
43 電極保持基板
50 プロテイン同時分析チップ
60 測定セル
61 スペーサ
62 上面図下方の入口
63 上面図上方の入口
70 測定部
71 参照電極
72 対極
73 プリアンプ
80 マルチポテンショスタット部
81 マルチポテンショスタット(メインアンプ)
82 DAコンバータ
83 ADコンバータ
84 CPU
85 記録メモリ
86 インターフェース
90 外部コンピュータ

Claims (7)

  1. イムノアッセイを電気化学的に分析するイムノアッセイ分析装置において、
    分析対象の抗原と特異的に反応する抗体が固定化された凹部が形成されてなる検査チップと、
    イムノアッセイが行なわれた後の検査チップに、前記凹部に形成された側の面に接するように重ね合わされた状態で用いられる、前記検査チップに形成された凹部に対面する位置に露出した検出電極を有するとともに、前記凹部および前記検出電極よりなる分析部に分析用の溶液を流入させる溶液導入流路が形成されてなるチップ電極と、
    前記検査チップと前記チップ電極を重ね合わせた状態で装抜自在に装着するとともに分析用の溶液を収容する測定セルと、
    前記測定セルに収容され前記溶液導入流路を通って前記分析部に流入した溶液と該分析部の標識酵素との間の反応を電気化学的に分析するポテンシュスタット部とを備えたことを特徴とするイムノアッセイ分析装置。
  2. 前記検査チップと前記チップ電極とを重ね合わせた状態に保持するチップホルダを備え、
    前記測定セルは、前記検査チップと前記チップ電極を保持したチップホルダを装抜自在に装着することにより、前記検査チップと前記チップ電極を装抜自在に装着するものであることを特徴とする請求項1記載のイムノアッセイ分析装置。
  3. 前記検査チップは、前記凹部を複数配列してなるものであり、
    前記チップ電極は、前記検査チップに重ね合わされた状態における該検査チップに配列された複数の凹部それぞれに対面する位置にそれぞれ露出した、相互に独立な複数の検出電極を有するとともに、相互に対応する凹部と検出電極からなる複数の分析部それぞれに、分析用の溶液を、各分析部ごとに独立に流入させる複数の溶液導入流路が形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のイムノアッセイ分析装置。
  4. 分析対象の抗原と特異的に反応する抗体が固定化された凹部が形成されイムノアッセイが行なわれた後の検査チップに、前記凹部が形成された側の面に接するように重ね合わされた状態で用いられる、前記凹部に対面する位置に露出した検出電極を有するとともに、前記凹部および前記検出電極よりなる分析部に分析用の溶液を流入させる溶液導入流路が形成されてなることを特徴とするチップ電極。
  5. このチップ電極は、前記凹部が複数配列された検査チップと重ね合わされた状態で用いられるものであって、該検査チップに重ね合わせた状態における該検査チップに配列された複数の凹部それぞれに対面する位置にそれぞれ露出した、相互に独立な複数の検出電極を有するとともに、相互に対応する凹部と検出電極からなる複数の分析部それぞれに、分析用の溶液を、各分析部ごとに独立に流入させる複数の溶液導入流路が形成されたものであることを特徴とする請求項4記載のチップ電極。
  6. 分析対象の抗原と特異的に反応する抗体が固定化された凹部が形成され、イムノアッセイが行なわれた後に、該凹部に対面する位置に露出した検出電極を有するとともに該凹部および該検出電極よりなる分析部に分析用の溶液を流入させる溶液導入流路が形成されてなるチップ電極に前記凹部が形成された側の面が接するように重ね合わされて、前記溶液導入流路を通って前記分析部に流入してきた溶液と該分析部の標識酵素との間の反応の電気化学的分析に用いられることを特徴とする検査チップ。
  7. この検査チップは、前記検出電極および前記溶液導入流路が複数配列されたチップ電極に重ね合わされるものであって、該チップ電極に配列された複数の検出電極それぞれに対面する位置それぞれ形成され対面する検出電極とのペアからなる複数の分析部を形成する複数の凹部が配列されたものであることを特徴とする検査チップ。
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