JP2005226142A - 耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板 - Google Patents

耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融亜鉛めっき鋼板を下地鋼板とするクロムフリー化成処理皮膜を有する表面処理鋼板であって、優れた耐白錆性と外観が得られる化成処理皮膜構造を有する表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】溶融亜鉛系めっき鋼板の表面に有機樹脂、Zn及びPを含み、且つCrを含まない化成処理皮膜を有する表面処理鋼板であって、前記化成処理皮膜中に、Zn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有されており、好ましくは、化成処理皮膜が、Zn、P及びOを含有する非晶質化合物層と、その上層の厚さ400〜800nmの有機樹脂マトリックス層とからなり、この有機樹脂マトリックス層中に前記非晶質化合物が分散状態で含有されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車、家電製品、建材などの用途に最適な表面処理鋼板であって、特に製造時および製品中にCrなどの重金属を全く含まない環境適応型表面処理鋼板に関するものである。
自動車、家電製品、建材には、従来から亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的でクロム酸、重クロム酸又はその塩類を主成分とする処理液で処理した鋼板が幅広く用いられている。この所謂クロメート処理は耐食性の改善効果に優れ、比較的簡便に行える経済的な処理である。
クロメート処理は公害規制物質である6価Crを使用するものであるが、工業的には密閉系で行われるため、通常6価Crが処理工程で自然界に放出されることはない。また、製品においても有機皮膜シーリングなどの工夫によって、クロメート皮膜中からの6価Cr溶出は殆ど無視できるレベルまで抑制されている。したがって、実際にはクロメート処理によって環境や人体が汚染される危険性は極めて低い。しかしながら、最近の地球環境問題から、6価Crを含めた重金属の使用を自主的に削減する動きや、廃棄製品のシュレッダーダストを投棄した場合にも環境を汚染しないよう、製品中の重金属の量を規制しようとする動きが強まっている。
このような背景から、亜鉛系めっき鋼板の耐食性の向上、特に、亜鉛めっきの白錆の発生を抑制するため、クロメート処理に依存しない化成処理技術、所謂クロムフリー化成処理技術が注目されている。この種の技術としては、例えば、無機化合物、有機化合物、有機高分子材料、あるいは、これらを組み合わせた溶液を用い、浸漬、塗布、電解処理などの方法によって薄膜を生成させる方法などが知られている。
しかしながら、これらの公知技術で達成可能な耐食性のレベルと従来のクロメート処理で得られていたそれとのギャップは、未だに大きいと言わざるをえないのが実情である。このような現状レベルに留まっている理由の一つは、従来知見がいずれも製法に関するものばかりで、耐白錆性に優れた化成処理皮膜の構造上の要件に関する知見が殆どないことである。クロムフリー化成処理技術に関する製品特許として開示されている知見は、単に文言上の工夫で実際には製法特許であるもの、あるいは、製法から容易に類推できる構造上の知見ばかりであり、耐食性の向上に寄与する化成処理皮膜の構造上の具体的な要件は殆ど知られていない。
さらに、溶融亜鉛系めっき鋼板を下地鋼板として化成処理を行う場合、樹脂系の化成処理皮膜では干渉色が生じやすいという別の課題も考慮する必要がある。しかしながら、干渉色を抑制して溶融亜鉛系めっき鋼板としての良好な外観を維持しつつ優れた耐食性が得られるようなクロムフリー皮膜の構造上の具体的な要件については、全く知られていない。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、溶融亜鉛めっき鋼板を下地鋼板とし、クロムフリー化成処理皮膜を有する表面処理鋼板であって、優れた耐白錆性と外観が得られる化成処理皮膜構造を有する表面処理鋼板を提供することにある。
本発明者らは、まず初めに、亜鉛系めっき鋼板の腐食を抑制するための腐食抑制原理について、以下のような検討を行った。
化成処理皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板の初期の腐食は以下の過程で進行する。
化成処理皮膜中に腐食因子(酸素、水素、塩素イオン、水分など)が侵入して、これらが化成処理皮膜/めっき層界面に拡散し、化成処理皮膜/めっき層界面における以下のような酸化還元反応によって亜鉛が溶解する。
(1) カソード反応:2HO+O+4e → 4OH
(2) アノード反応:2Zn → 2Zn2++4e
したがって、亜鉛系めっき鋼板の耐食性、特に耐白錆性を向上させるには、上記(1)、(2)の両方の反応の進行を抑制することが不可欠であり、そのためには、
(a) 腐食因子の拡散障壁となってカソード反応を抑制するためのバリア層
(b) 化成処理皮膜形成時の化学反応等を利用してめっき層の表層に形成した、アノード反応を抑制するための緻密な不活性層(難溶層)
を有する皮膜構造とすることが効果的であり、また、
(c) 上記不活性層の欠損部分(若しくは破損部分)と反応してこれを修復し、同部分から溶出しようとするZnイオンを捕捉・難溶化する自己補修物質
を化成処理皮膜中に含有する皮膜構造とすることが、さらに効果的である。
本発明者らは先に、このような皮膜構造を実現させること、具体的には、化成処理皮膜の上部に樹脂成分を含むバリア層(上記(a))を形成し、さらに、亜鉛めっき層の表層をリン酸亜鉛系の不活性皮膜(上記(b))で被覆することにより、両者の相乗効果で耐白錆性に優れたクロムフリー系表面処理鋼板が得られることを見出し、この知見に基づく提案を行った(特許文献1、特許文献2)。また、Znイオンとの反応性を備えたリン酸亜鉛系化合物を化成処理皮膜中に析出させることで、上記不活性皮膜の欠損部分の修復と、溶出しようとするZnイオンの捕捉・不活性化(上記(c))を可能にすることによって、耐白錆性を格段に向上させたクロムフリー系表面処理鋼板が得られることについても、上記特許文献において提案した。
特開2003−105554号公報 特開2003−105555号公報
しかし、その後、本発明者らが検討を重ねた結果、上記方法を溶融亜鉛系めっき鋼板に適用すると、耐白錆性は改善されるものの、外観を損ねる干渉色が生じやすいことが判った。そして、その原因について調査した結果、干渉色が生じやすいのは、主に溶融亜鉛系めっき鋼板の表面形状に起因していること、すなわち、電析結晶特有の微細凹凸を有する電気亜鉛めっき鋼板とは異なり、金属光沢を有する(表面が平滑な)溶融亜鉛めっき鋼板の上では、化成処理皮膜の表裏面の平滑度が高いため、可視光の干渉条件が成立しやすいためであることが判った。そこで、本発明者らは上述したリン酸亜鉛系化合物に注目し、これを化成処理皮膜中に適度に析出させて化成処理皮膜中での可視光の屈折・散乱を促進させる方法を種々検討し、その結果、耐食性を犠牲にすることなく干渉色を抑制できる化成処理皮膜の皮膜構成を見出したものである。この皮膜構成によれば、溶融亜鉛系めっき鋼板特有の光沢感を維持しながら干渉色を抑制することが可能であり、また、特別な添加剤を加えることなく得られる皮膜構成であるため、コスト的にも有利であり、耐食性をはじめとする他の諸特性に対する配慮も殆ど不要である。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1] 溶融亜鉛系めっき鋼板の表面に有機樹脂、Zn及びPを含み、且つCrを含まない化成処理皮膜を有する表面処理鋼板であって、前記化成処理皮膜中に、Zn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有されていることを特徴とする耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
[2] 上記[1]の表面処理鋼板において、化成処理皮膜が、Zn、P及びOを含有する非晶質化合物層と、その上層の厚さ400〜800nmの有機樹脂マトリックス層とからなり、該有機樹脂マトリックス層中にZn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有されていることを特徴とする耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
[3] 上記[1]又は[2]の表面処理鋼板において、Zn及びPを含む非晶質化合物中のZnとPのモル比[Zn]/[P]が1.4以下であることを特徴とする耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの表面処理鋼板において、Zn及びPを含む非晶質化合物が、さらにシラン化合物を含有することを特徴とする耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかの表面処理鋼板において、化成処理皮膜の膜厚断面での膜厚中心線に沿った1μm以上の任意の長さ範囲における非晶質化合物の占有率が30%以上であることを特徴とする耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれかの表面処理鋼板において、有機樹脂がエポキシ系樹脂からなることを特徴とする耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
本発明によれば、化成処理皮膜中にCrなどの重金属を加えることなく、耐白錆性と製品外観が優れた、自動車、家電製品、建材用途に最適な表面処理鋼板を提供することができる。
以下、本発明の詳細とその限定理由について説明する。
本発明の表面処理鋼板は、溶融亜鉛系めっき鋼板の表面に有機樹脂、Zn及びPを含み、且つCrを含まない化成処理皮膜を有するとともに、この化成処理皮膜中に、Zn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有されたものである。
本発明者らは、化成処理皮膜の成分を系統的に変化させたクロムフリー系表面処理鋼板の耐白錆性とその皮膜構造の関係を明らかにするため、マイクロサンプリング機構を備えた集束イオンビーム加工装置、透過電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析装置などを用いてこれらの皮膜構造を徹底的に調査し、得られた知見を塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)で評価した耐白錆性と照合した。その結果、有機樹脂とリン酸を含む化成処理液とZnとを化学反応させて、めっき表面に有機樹脂、Zn及びPを含む化成処理皮膜を形成し、且つこの皮膜中にZn及びPを含む非晶質化合物を析出させた場合に優れた耐白錆性が得られること、また、この非晶質化合物を皮膜中に適度に分散させることにより、溶融亜鉛めっき鋼板を下地鋼板とした場合に生じやすい干渉色が抑制されることを見出した。このような優れた耐白錆性と外観が得られる理由は、化成処理皮膜中に分散状態で析出した非晶質化合物が、(1)腐食環境での化成処理皮膜の補修、(2)可視光の屈折・散乱の促進、という二つの作用を有するためであると推定される。このため本発明は、溶融亜鉛系めっき鋼板の表面に、有機樹脂、Zn及びPを含み、且つCrを含まない化成処理皮膜であって、Zn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有された化成処理皮膜を形成するものである。なお、皮膜中に分散状態で存在(析出)する上記化合物や、後述するめっき面上に形成される化合物層が非晶質であることは、それらの電子回折パターンにより確認することができる。
また、以上のような化成処理皮膜の皮膜構造のなかでも、化成処理皮膜が、めっき面上に形成されるP、Zn及びOを含有する非晶質化合物層と、その上層の厚さ400〜800nmの有機樹脂マトリックス層とからなる皮膜構造(擬似二層的な皮膜構造)を有し、且つその有機樹脂マトリックス層中に上記Zn及びPを含む非晶質化合物が分散状態に含有される場合に、特に優れた耐白錆性が得られることが判った。
有機樹脂マトリックス層が可視光の波長程度、すなわち上記400〜800nm程度の膜厚の場合には原理的に干渉色を生じやすいが、このような膜厚でも非晶質化合物が有機樹脂マトリックス層中に分散した状態では、上述したような散乱・屈折効果によって干渉色の発生が抑制され、優れた外観を維持できることが判った。また、この膜厚の範囲では良好な耐白錆性が確保できる。したがって本発明では、化成処理皮膜が、Zn、P及びOを含有する非晶質化合物層と、その上層の厚さ400〜800nmの有機樹脂マトリックス層とからなり、この有機樹脂マトリックス層中に上記Zn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有されたものであることが好ましい。
さらに、化成処理皮膜中に分散状態で存在する上記非晶質化合物のZnとPのモル比[Zn]/[P]が1.4以下の場合、耐白錆性の改善効果が特に顕著であることが判った。このような条件を満足する場合に耐白錆性の改善効果が特に顕著になる理由は必ずしも明らかではないが、上記非晶質化合物は第1リン酸亜鉛(Zn(HPO・HO)若しくは第2リン酸亜鉛(ZnHPO・2HO)に近い組成を有していることから、これが化成処理皮膜の欠損部分から溶出しようとするZnイオンと反応して難溶化する自己補修機能を果たしているものと推定される。以上の理由から、上記非晶質化合物中のZnとPのモル比[Zn]/[P]は1.4以下であることが望ましい。
さらに、上記非晶質化合物がシラン化合物を含有する場合、上記モル比[Zn]/[P]は1.0未満になり、格段に優れた耐白錆性が得られることが判った。この理由も必ずしも明らかではないが、上記非晶質化合物が水溶性の高い第1リン酸亜鉛(Zn(HPO・HO)に近い組成になることで、自己補修機能が著しく高められるためであると推定される。なお、非晶質化合物がシラン化合物を含有することは、X線吸収微細構造法、透過電子顕微鏡法、エネルギー分散型X線分析法、電子エネルギー損失分光法を複合的に用いることで確認することができる。以上の理由から、上記非晶質化合物はシラン化合物を含有することが好ましい。
干渉色の抑制効果は化成処理皮膜中に析出する非晶質化合物の分散の程度によって変化するが、この分散の程度は、同皮膜の膜厚断面中央部での非晶質化合物の占有率で表わすことができる。ここで言う占有率とは、化成処理皮膜断面の透過電子顕微鏡像から評価される値であり、図3に示すように、化成処理皮膜の膜厚断面(膜厚方向断面)の膜厚中心線(膜厚方向中心点を結ぶ線)に沿った1μm以上の任意の長さ範囲において非晶質化合物が占めるトータルの長さ割合を示す(図3において、非晶質化合物を通過する太線の長さの合計が、測定長さLに対して占める割合)。可視光が非晶質化合物で屈折・散乱される頻度は上記占有率が大きいほど高いため、化成処理皮膜の表裏で反射した可視光の位相の乱れもそれに追従して大きくなり、干渉色の発生は抑制される。干渉色の程度と非晶質化合物の占有率を比較した結果、同占有率が30%以上において特に著しい抑制効果が得られることが判った。以上の理由から、有機樹脂マトリックス層の膜厚断面中央部での非晶質化合物の占有率は30%以上であることが好ましい。
化成処理皮膜のバリア層の構成要素である有機樹脂には、エポキシ系樹脂が好適である。本発明者らは、種々の有機樹脂だけを亜鉛めっき鋼板に塗布・焼付けして作成した表面処理鋼板の耐食性を比較することで各有機樹脂のバリア性を評価し、その結果、各種の有機樹脂の中でもエポキシ系樹脂が最もバリア性に優れるという結果を得た。
本発明の表面処理鋼板の下地鋼板となる溶融亜鉛系めっき鋼板は、通常の溶融亜鉛めっき鋼板のほか、Zn−Ni系、Zn−Fe系、Zn−Cr系、Zn−Mn系、Zn−Co系、Zn−Co−Cr系、Zn−Cr−Ni系、Zn−Cr−Fe系、Zn−5%Al系、Zn−55%Al系、Zn−Mg系、Zn−Al−Mg系などのZnを含む種々の合金系溶融めっき鋼板、さらには、これらのめっき皮膜中に金属酸化物などを分散した亜鉛系複合溶融めっき鋼板など含む。
本発明の表面処理鋼板は、有機樹脂(例えば、水分散性樹脂、水溶性樹脂の1種以上)とリン酸を含有し、さらに必要に応じてシラン化合物を含有する特定の化成処理液を溶融亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布し、乾燥することにより得ることができる。化成処理皮膜中に分散状態で含有されるZn及びPを含む非晶質化合物やZn、P及びOを含む非晶質化合物層は、処理液中のリン酸と下地亜鉛めっきの亜鉛とが反応して生成するものであり、適量のリン酸を含有する弱酸性の処理液により亜鉛が溶出し、処理液中のリン酸と反応して非晶質化合物が生成する。このため化成処理は、リン酸の比率が有機樹脂100質量部に対して10〜50質量部(固形分の割合)、pH2〜4程度の処理液を用いて行うことが好ましい。処理液中のリン酸の比率が有機樹脂100質量部に対して10質量部未満では十分な量の非晶質化合物が生成せず、一方、50質量部を超えると皮膜が不均一になり、外観ムラを起こすことがある。また、処理液のpHを2〜4に調整するのは、酸性から中性の領域では亜鉛の溶出速度はpHが低いほど起こりやすいが、生成した非晶質化合物の再溶解も起こりやすくなり、結果的にpH2〜4の領域で皮膜中に残存する非晶質化合物の量が多くなるからである。なお、処理液の最適条件は、処理液中に含まれる他の成分等に応じて多少変化するが、上記の範囲において適宜調整すればよい。
本発明の表面処理鋼板は、以上のような処理液を通常行われる塗布、浸漬、スプレー等の方法でめっき鋼板に付着させ、樹脂成分に応じて最適な温度で焼付乾燥させることによって得られる。
発明例及び比較例の表面処理鋼板を作成するための化成処理用組成物は、水分散性エポキシ系樹脂、リン酸、シラン化合物を表1に記載の比率で配合した後、塗料用攪拌機(ホモミキサー)を用いて所定時間攪拌して調製した。化成処理する亜鉛めっき鋼板にはめっき付着量60g/mの溶融亜鉛めっき鋼板を使用した。この溶融亜鉛めっき鋼板をアルカリ脱脂、水洗、乾燥させた後、その表面に上記化成処理用組成物をバーコーターで所定量塗布してから5秒間若しくは10分間放置した後、誘導加熱炉を用いて到達板温140℃、若しくは熱風炉を用いて到達板温60℃のいずれかの条件で加熱乾燥し、表1に記載した5種類の表面処理鋼板を作成した。化成処理皮膜の付着量は、化成処理用組成物の固形分(加熱残分)と塗布条件(バーコーターの番手など)により1.0g/mに調整した。
得られた表面処理鋼板の耐白錆性は、同鋼板に塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を行い、白錆発生面積率が5%になるまでの時間で評価した。その評価基準は以下の通りである。
◎:72時間以上
○:48時間以上、72時間未満
△:24時間以上、48時間未満
×:24時間未満
また、外観は目視での干渉色の程度から評価した。その評価基準は以下の通りである。
◎:均一なブライト外観
○:外観上無視できる軽微な干渉色
×:外観上無視できない干渉色
透過電子顕微鏡観察用の断面試料の作成は日立製作所製の集束イオンビーム加工装置(FIB)FB2000Aに付設したマイクロサンプリング機構を用いて行った。なお、FIB加工に先立って、断面試料を作成する表面処理鋼板の試料片の表面には、試料加工時のGaイオンビーム照射によるダメージからこれを保護するため、Cの保護膜を200nm前後の厚さになるようにフラッシュ蒸着した。FIB加工装置に導入した供試材の断面試料切り出し部分の表面には、FIB装置の化学気相蒸着(CVD)機構を用いて更にC保護膜を500nm前後の厚さに被覆した上で、断面試料の切り出し加工を行った。マイクロサンプリング機構を用いて取り出した断面試料はMo製の半月板状特殊メッシュの直線部分にCVD機構を利用して固定した上で、透過電子顕微鏡観察に適する100nm前後の膜厚まで仕上げた。
このようにして作成した断面試料の組成分析には、電界放出型電子銃を搭載したPhilips社製の透過電子顕微鏡CM20FEGと、これに付設した、Super−UTW型検出器を備えたEDAX社製のエネルギー分散型X線分析装置Phoenixを用いた。なお、顕微鏡像観察及び元素分析時の加速電圧はいずれも200kVとした。
本発明例に関して、化成処理皮膜中に分散状態で析出した化合物及びめっき表面に析出した化合物層は、それらの電子回折パターンにより非晶質であることを確認した。また、これらの非晶質化合物の組成は、これらの位置から収集したスペクトルデータからバックグラウンド除去・ピーク分離・定量補正計算を行って求めた。その際、バックグラウンド処理を自動で行うと軽元素域での正味の強度(ネット強度)が適切に計算されない場合があるため、ピークが出現しないエネルギー位置をマニュアルで指定し、これを結ぶマニュアルバックグラウンド方式で処理(除去)した。ピーク分離では、断面試料の支持台として使用するMoメッシュに起因するMo、FIB加工に起因するGaなどの特性X線も考慮した。定量計算はいずれも化成処理皮膜に含まれる各元素のK系列の特性X線を用いて行った。なお、補正計算は薄膜近似で行い、補正因子(いわゆるKAB因子)にはZaluzecのモデルを使用した。表1に記載の非晶質化合物のZnとPのモル比は、このようにして求めたZnとPの原子濃度の比として求めた。また、有機樹脂マトリックス層の膜厚断面中央部での非晶質化合物の占有率(図3)は、化成処理皮膜断面の透過電子顕微鏡像から求めた。
表面処理鋼板の化成処理皮膜の断面構造を解析した結果について説明する。また、解析結果の一部と耐白錆性、外観の評価結果を表1に併せて示す。
比較例1の化成処理皮膜にはPが含有されておらず、大きなシラン化合物の凝集体を除くと非晶質状の析出化合物らしきものは認められなかった。この皮膜はある程度の耐白錆性を備えていたが、干渉色の抑制効果は殆どなかった。
比較例2の化成処理皮膜にはZn、Pが含有されておらず、非晶質状の析出化合物は全く認められなかった。この皮膜は、耐白錆性が全く不十分で干渉色の抑制効果もなかった。
これに対して、発明例1の化成処理皮膜中には有機樹脂に加えてZn及びPが含有されており、Zn及びPを含む非晶質化合物が分散した状態で析出していた。この非晶質化合物の[Zn]/[P]のモル比は1.4であったが、占有率は30%未満であった。また、Znめっきの表層にはP、Zn及びOを含有する非晶質化合物層が認められた。この皮膜の耐白錆性と外観は共に比較的良好であった。
発明例2の化成処理皮膜中には有機樹脂に加えてZn及びPが含有されており、Zn、P及びSi(シラン化合物)を含む非晶質化合物が分散した状態で析出していた。この非晶質化合物の[Zn]/[P]のモル比は1.0を下回っており、その占有率は30%を超えていた。このため、この皮膜は耐白錆性、外観がともに非常に良好であった。図1に、この発明例2の化成処理皮膜断面の電子顕微鏡写真(明視野像)を示す。この写真中、矢印で示してあるのはいずれも非晶質化合物である。この写真でもZnめっきの表層にP、Zn及びOを含有する非晶質化合物層が認められる(なお、写真中央部のZnめっきの表層の泡状コントラストは電子線照射で生じたダメージである。)。
発明例3の化成処理皮膜中には有機樹脂に加えてZn及びPが含有されており、発明例2とほぼ同様の組成・モル比を持った非晶質化合物が分散した状態で析出していた。この皮膜の耐白錆性は優れており、比較例1、2と較べると判るように、干渉色の抑制効果も認められた。但し、この皮膜は非晶質化合物の占有率が30%未満であるため、外観上問題にならない程度の軽微な干渉色が認められた。図2に、この発明例3の化成処理皮膜断面の電子顕微鏡写真(明視野像)を示す。この写真中、矢印で示してあるのはいずれも非晶質化合物である。この写真でもZnめっきの表層にP、Zn及びOを含有する非晶質化合物層が認められる。
Figure 2005226142
実施例における発明例2の化成処理皮膜断面の電子顕微鏡拡大写真 実施例における発明例3の化成処理皮膜断面の電子顕微鏡拡大写真 有機樹脂マトリックス層の膜厚断面中央部での非晶質化合物の占有率の求め方を示す説明図

Claims (6)

  1. 溶融亜鉛系めっき鋼板の表面に有機樹脂、Zn及びPを含み、且つCrを含まない化成処理皮膜を有する表面処理鋼板であって、前記化成処理皮膜中に、Zn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有されていることを特徴とする耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
  2. 化成処理皮膜が、Zn、P及びOを含有する非晶質化合物層と、その上層の厚さ400〜800nmの有機樹脂マトリックス層とからなり、該有機樹脂マトリックス層中にZn及びPを含む非晶質化合物が分散状態で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
  3. Zn及びPを含む非晶質化合物中のZnとPのモル比[Zn]/[P]が1.4以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
  4. Zn及びPを含む非晶質化合物が、さらにシラン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
  5. 化成処理皮膜の膜厚断面での膜厚中心線に沿った1μm以上の任意の長さ範囲における非晶質化合物の占有率が30%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
  6. 有機樹脂がエポキシ系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐白錆性と外観が優れた表面処理鋼板。
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