JP2005226132A - 金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 金属帯の進行速度変動をも含め安定した電解エッチングが可能な、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置を提供する。
【解決手段】 金属帯のエッチング面と相対向して配設された電極の間に、電解液を充填し、コンダクターロールを金属帯のエッチング面と反対の面に接触させ、(I)時間M=3〜10msecの間の、コンダクトロール側を陰極とし電極側を陽極とする電圧印加と、(II)時間N=4M〜20Mmsecの間の、コンダクトロール側を陽極とし電極側を陰極とする電圧印加とを交互に繰り返し、コンダクターロールと電極の間に電圧を印加しない時間を挿み、さらに、金属帯の進行速度を検出して、(I)及び(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)及び(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持する。
【選択図】 図3
【解決手段】 金属帯のエッチング面と相対向して配設された電極の間に、電解液を充填し、コンダクターロールを金属帯のエッチング面と反対の面に接触させ、(I)時間M=3〜10msecの間の、コンダクトロール側を陰極とし電極側を陽極とする電圧印加と、(II)時間N=4M〜20Mmsecの間の、コンダクトロール側を陽極とし電極側を陰極とする電圧印加とを交互に繰り返し、コンダクターロールと電極の間に電圧を印加しない時間を挿み、さらに、金属帯の進行速度を検出して、(I)及び(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)及び(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置に関し、特に、金属帯の進行速度の所定基準速度からの変動時にも安定した電解エッチングを行うことのできる、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置に関するものである。
鋼帯などの金属帯に、電気絶縁性のエッチングマスク(エッチングレジスト)を選択的に(エッチングパターンを付与して)形成し、電解エッチングにより連続して溝加工することにより、金属帯の材料特性を改善する従来技術の例としては、特許文献1や特許文献2等で開示されている、変圧器その他の電気機器の鉄心としての用途に好適な低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法の発明の例がある。
従来の金属帯の直接通電式連続電解エッチング装置の概略を、特許文献3で開示されている発明を例にして、以下に説明する。すなわち、当該装置は、図8に示すように、片面に電気絶縁性のエッチングレジストが施された金属帯1の電解エッチング装置であって、電解エッチング槽2と、陽極であるコンダクターロール15、16と、当該コンダクターロール15、16と金属帯1を介在して相接するように配設されたバックアップロール17、18と、電解エッチング槽2の電解液3に浸漬された陰極5′と、金属帯1を電解液3に浸漬するための浸漬用ロール13、14とを有し、金属帯1のエッチングレジスト面が下向きに通板され、当該金属帯1のエッチングレジスト面側と相対向して陰極5′が上向きに、かつ当該エッチングレジスト面と陰極間距離が所定間隔となるように配設され、コンダクターロール15、16が金属帯1のエッチングレジストが施されていない面に、バックアップロール17、18が金属帯1のエッチングレジスト面にそれぞれ当接されるように配設されている。コンダクターロール15、16(陽極)と陰極5′は直流電源装置7に接続され、金属帯1への直接通電により、電解エッチングが施される。また、コンダクターロール15、16は、電解エッチング槽2の電解液3の外側に配設され、短絡電流の発生が防止されている。
特開昭63−042332号公報
特公平08−006140号公報
特開平10−204699号公報
上記従来技術のような、片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に電解エッチングにより連続して溝加工する方法、特に、珪素鋼板の片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクを形成し、電解エッチングにより連続して溝加工を施した、トランスの鉄心等に利用される歪取り焼鈍後に鉄損が劣化しない低鉄損一方向性珪素鋼板の製造方法、については、様々な製造方法が提案されているが、全て、コンダクターロール(金属帯)側を陽極、電極側を陰極として、電圧印加している。
本発明者らは、このような従来の直接通電式電解エッチングによる、トランスの鉄心等に利用される歪取り焼鈍後に鉄損が劣化しない低鉄損一方向性珪素鋼板の特性改善に取り組むうちに、エッチング溝の断面の幾何学形状のバラツキが磁性(鉄損)のバラツキを引き起こし、磁性の良好な製品を安定して製造することの障害になっていることを見出した。そして、ここで新たに問題となったエッチング部の溝形状の安定性の問題は、エッチング部での陽極反応による電解液の淀み(電解沈殿物)が原因であることも突き止めた。さらに検討を重ねた結果、この電解液の淀みは極短期間の陰極反応によるH2ガスを周期的に発生させれば解消することができ、ひいてはエッチング部の溝の幅、溝の深さをより均一とすることができることを知見して、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置に関する発明を完成させるとともに、その発明につき先に特願2003−207619号にて特許出願した。
しかしながら、上記の特願2003−207619号で開示された発明は、金属帯の進行速度が所定の基準速度(許容範囲を含む。)内である定常状態での電解エッチングを前提とするものであって、電解エッチングの開始時や終了時、ないし操業トラブル時等で金属帯の進行速度が変動する場合等の非定常状態での電解エッチングの課題やその解決手段までは開示されていなかった。
本発明は、上記の問題を有利に解決して、金属帯の進行速度が変動する場合等の非定常状態をも含めて安定して電解エッチングを行うことのできる、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記の問題を有利に解決して、金属帯の進行速度が変動する場合等の非定常状態をも含めて安定して電解エッチングを行うことのできる、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置を提供することを目的とするものである。
まず、本発明に至るまでの予備的な検討について説明する。
すなわち、金属帯の直接通電式連続電解エッチングについて基礎的なデータを収集するために、上記特許文献3に記載の発明に類似の、片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、進行速度一定で、電解エッチングにより連続して溝加工する予備実験を行った。
すなわち、金属帯の直接通電式連続電解エッチングについて基礎的なデータを収集するために、上記特許文献3に記載の発明に類似の、片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、進行速度一定で、電解エッチングにより連続して溝加工する予備実験を行った。
図6は、実験装置の概略を長手方向垂直断面図で示すものである。主たる構成は、連続して通板される片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成された金属帯1の残る片側の導電体である表面に接触したコンダクターロール15、16と、電解槽2内で金属帯1と相対向して配設された電極5′の間に、電解液3を充填し、コンダクターロール15、16と電極5′の間に、コンダクターロール側を陽極、電極側を陰極として、直流電源装置7を配置している。直流電源装置7とコンダクターロール15、16の間には、開閉器9が、直流電源装置7と電極5′の間には抵抗21が設置されている。この開閉器9を閉にすることにより、コンダクターロール15、16と電極5′の間でコンダクターロール側に正の電圧を印加する。また、開閉器9を開とすることにより、電圧印加を中断する。また、上記抵抗21を増加・減少させることにより、コンダクターロール15、16と電極5′の間でコンダクターロール側15、16に印加する正の電圧を増加・減少させる。なお、コンダクターロール15、16が金属帯1に当接する、金属帯1のエッチングレジスト面側には、バックアップロール17、18が配設されている。また、金属帯1の搬送ロールとして、電解槽2の入出側には、リンガーロール(図示省略)が設置され、電解液3の槽外への流出を抑制しており、槽内には、シンクロール13、14が設置され、電極5′と金属帯1の距離を一定に保持している。
図7に、上記予備実験での、コンダクターロール15、16と電極5′の間のコンダクターロールへの電圧印加例を示す。なお、金属帯1と電極5′との間に一定の電解電流が流れるように調整されている。電極5′は、いわゆるカソードであり、SUS316からなる電極が採用されている。
このような状態においては、電流は、コンダクターロール15、16から金属帯1へ流れ、更に、電解液3を通して、電極5′へと流れる。
このような状態においては、電流は、コンダクターロール15、16から金属帯1へ流れ、更に、電解液3を通して、電極5′へと流れる。
以上のような図6に示した装置を用いて、本発明者らは、金属帯1を一定の進行速度で通板し、コンダクターロールと電極の間に、図7に示した電圧印加を行い、エッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成された金属帯の電解エッチングによる溝加工を行い、その溝の形状(幾何学形状、溝の幅、溝の深さ)を観察した。
なお、実験に用いた金属帯1は、フォルステライト(Mg2SiO4)被膜を表面に有しない、仕上焼鈍され、その片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成された方向性珪素鋼板である。また、電解液3はNaClの水溶液である。
なお、実験に用いた金属帯1は、フォルステライト(Mg2SiO4)被膜を表面に有しない、仕上焼鈍され、その片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成された方向性珪素鋼板である。また、電解液3はNaClの水溶液である。
図5に、本発明の目標とする電解エッチングで形成される溝形状(イ)と、本実験の電解エッチングで形成された溝形状の観察結果例(ロ)〜(ニ)を示す。ここで観察された電解エッチングの溝形状は、(ロ)傾斜型、(ハ)幅拡がり型、(ニ)局部エッチング型と分類できるように、幾何学形状が非常に不安定であり、溝の幅、溝の深さも大きく変動しやすいことが判明した。
このような問題に対し、本発明者らは、金属帯の鋼種を変更し、あるいは、電解条件(NaCl濃度、電解液温度、溝部の実効電流密度)を変更して、諸々の条件における溝の形状を調査したが、溝の形状を安定させ、溝の深さ、溝の幅のばらつきを大幅に減少させることはできなかった。本発明者らは、さらに、鋭意検討を重ねるうちに、エッチッグ溝形状の不安定さは、エッチング部での陽極反応による電解液の淀み(電解沈殿物)が主原因であることを突き止めた。そこで、この電解液の淀みの解消についてさらに検討した結果、極短期間の陰極反応によるH2ガスを周期的に発生させればエッチング部の電解液の淀みを解消することができ、ひいてはエッチング部の溝の幅、溝の深さをより均一とすることができることを知見した。
以上の知見は、金属帯が一定の進行速度で通板されている場合(定常状態)での電解エッチングを前提とするものであるが、実際の連続電解エッチング処理ラインによる溝加工では、エッチング設備の上流ないし下流設備の影響(例えば、処理する複数の金属帯のエッチング設備の上流での接合、エッチング設備の下流設備での金属帯の分割等)による金属帯の進行速度の減速(速度変化)が避けられない。さらには、操業トラブル時等での金属帯の進行速度の変動等も想定される。
そこで、本発明者らは、更に、金属帯の進行速度が変化しても、電解エッチングにより形成される溝の形状の安定化を図ることを鋭意研究した。その結果、エッチング部での陽極反応のための電圧印加と、同部での陰極反応によるH2ガス発生(電解液の淀み解消)のための極短期間の電圧印加の両条件を固定し、両電圧印加の間に電圧印加をしない時間を挟むとともに、金属帯の進行速度の変動(減速)をこの電圧を印加しない時間の増減(増加)で吸収すれば、電解エッチング部での陽極反応および陰極反応には進行速度変動の影響が及ぶことはないので、電解エッチングの溝の形状のバラツキの発生を有利に回避できることを見出した。
本発明は、以上の新知見に基づき更に検討を進めてはじめて完成されたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1) 片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、直接通電式電解エッチングにより連続的に溝加工する、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法であって、前記金属帯のエッチング面と相対向して配設された電極の間に、電解液を充填し、コンダクターロールを金属帯のエッチングマスクが形成されていないもう一方の表面に接触させ、
(I)時間M=3〜10msecの間の、前記コンダクトロール側を陰極とし、前記電極側を陽極とする電圧印加と、
(II)時間N=4M〜20Mmsecの間の、前記コンダクトロール側を陽極とし、前記電極側を陰極とする電圧印加と
を交互に繰り返し、
前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際に時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際に時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない時間の区間を挿み、
さらに、金属帯の進行速度を検出して該進行速度が所定の基準速度から変動した場合には、その速度変動に応じて前記電圧を印加しない時間(α、β)の長さを調整することにより、前記(I)および(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)および(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持することを特徴とする、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法。
(2) 片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、直接通電式電解エッチングにより連続的に溝加工する、金属帯の直接通電式連続電解エッチング装置であって、
(a)電解エッチング槽と、
(b)コンダクターロールと、
(c)前記電解エッチング槽の電解液に浸漬され、前記金属帯のエッチング面と相対向する電極と、
(d)前記金属帯を前記電解エッチング槽の電解液に浸漬するためのシンクロールと、
(e)前記コンダクターロールと前記電極の間で、(I)所定のM時間、前記コンダクトロール側を陰極とし、前記電極側を陽極とする電圧制御と、(II)所定のN(N>M)時間、前記コンダクトロール側を陽極とし、前記電極側を陰極とする電圧制御と、(III)前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際の時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際の時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない電圧制御と、(IV)金属帯の進行速度が所定の基準速度から変動した場合には、その速度変動に応じて前記電圧を印加しない時間(α、β)の長さを調整することにより、前記(I)および(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)および(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持する電圧制御を行う電源装置と
を有することを特徴とする、金属帯の直接通電式連続電解エッチング装置。
(1) 片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、直接通電式電解エッチングにより連続的に溝加工する、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法であって、前記金属帯のエッチング面と相対向して配設された電極の間に、電解液を充填し、コンダクターロールを金属帯のエッチングマスクが形成されていないもう一方の表面に接触させ、
(I)時間M=3〜10msecの間の、前記コンダクトロール側を陰極とし、前記電極側を陽極とする電圧印加と、
(II)時間N=4M〜20Mmsecの間の、前記コンダクトロール側を陽極とし、前記電極側を陰極とする電圧印加と
を交互に繰り返し、
前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際に時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際に時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない時間の区間を挿み、
さらに、金属帯の進行速度を検出して該進行速度が所定の基準速度から変動した場合には、その速度変動に応じて前記電圧を印加しない時間(α、β)の長さを調整することにより、前記(I)および(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)および(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持することを特徴とする、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法。
(2) 片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、直接通電式電解エッチングにより連続的に溝加工する、金属帯の直接通電式連続電解エッチング装置であって、
(a)電解エッチング槽と、
(b)コンダクターロールと、
(c)前記電解エッチング槽の電解液に浸漬され、前記金属帯のエッチング面と相対向する電極と、
(d)前記金属帯を前記電解エッチング槽の電解液に浸漬するためのシンクロールと、
(e)前記コンダクターロールと前記電極の間で、(I)所定のM時間、前記コンダクトロール側を陰極とし、前記電極側を陽極とする電圧制御と、(II)所定のN(N>M)時間、前記コンダクトロール側を陽極とし、前記電極側を陰極とする電圧制御と、(III)前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際の時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際の時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない電圧制御と、(IV)金属帯の進行速度が所定の基準速度から変動した場合には、その速度変動に応じて前記電圧を印加しない時間(α、β)の長さを調整することにより、前記(I)および(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)および(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持する電圧制御を行う電源装置と
を有することを特徴とする、金属帯の直接通電式連続電解エッチング装置。
本発明によれば、従来の直接通電式電解エッチングでは達成することのできなかった電解エッチングによる溝形状のバラツキの問題に対し、金属帯の進行速度が安定した定常状態のみならず進行速度が変動する場合等の非定常状態をも含めて有利に解決して、電解エッチングにより形成される溝の形状を安定させ、溝の幅、溝の深さをより均一とすることができる。特に、電源トランスの鉄心等に利用される歪取り焼鈍後に鉄損が劣化し難い低鉄損一方向性電磁鋼板の製造に好適な、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法および直接通電式連続電解エッチング装置を提供することができるため、その効果は絶大である。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1に、本発明に係る、片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に電解エッチングにより連続して溝加工する設備の構成図を、長手方向垂直断面図で模式的に示す。
主たる構成は、片面に前記エッチングマスクが形成された金属帯1の残る片側の導電体の表面に接触したコンダクターロール15、16と、金属帯1と電解槽2の電解液3を介して相対向して配設された電極5と、コンダクターロール15、16と電極5の間に直流電源装置7、8とを配置している。直流電源装置7、8とコンダクターロール15、16の間には、それぞれ、開閉器9、10が設置されており、また、直流電源装置7、8と電極5の間には、それぞれ、抵抗22、23、開閉器9′、10′が設置されている。開閉器9、9′を閉にし、開閉器10、10′を開にすることにより、コンダクターロール15、16と電極5の間でコンダクターロール15、16に正の電圧を印加し、また、開閉器9、9′を開にし、開閉器10、10′を閉とすることにより、コンダクターロール15、16と電極5の間でコンダクターロール15、16に負の電圧を印加する。なお、開閉器9、9′10、10′をすべて、開とすることにより、電圧印加を中断する。また、上記抵抗22、23を増加・減少させることにより、コンダクターロール15、16と電極5の間でコンダクターロール15、16に印加する正負の電圧を増加・減少させる。ここでは、電解エッチングの電気回路の電気抵抗が変化しない場合は、単位時間あたりの通電量の制御は電圧制御で代替できることを前提としている。
図1に、本発明に係る、片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に電解エッチングにより連続して溝加工する設備の構成図を、長手方向垂直断面図で模式的に示す。
主たる構成は、片面に前記エッチングマスクが形成された金属帯1の残る片側の導電体の表面に接触したコンダクターロール15、16と、金属帯1と電解槽2の電解液3を介して相対向して配設された電極5と、コンダクターロール15、16と電極5の間に直流電源装置7、8とを配置している。直流電源装置7、8とコンダクターロール15、16の間には、それぞれ、開閉器9、10が設置されており、また、直流電源装置7、8と電極5の間には、それぞれ、抵抗22、23、開閉器9′、10′が設置されている。開閉器9、9′を閉にし、開閉器10、10′を開にすることにより、コンダクターロール15、16と電極5の間でコンダクターロール15、16に正の電圧を印加し、また、開閉器9、9′を開にし、開閉器10、10′を閉とすることにより、コンダクターロール15、16と電極5の間でコンダクターロール15、16に負の電圧を印加する。なお、開閉器9、9′10、10′をすべて、開とすることにより、電圧印加を中断する。また、上記抵抗22、23を増加・減少させることにより、コンダクターロール15、16と電極5の間でコンダクターロール15、16に印加する正負の電圧を増加・減少させる。ここでは、電解エッチングの電気回路の電気抵抗が変化しない場合は、単位時間あたりの通電量の制御は電圧制御で代替できることを前提としている。
なお、コンダクターロール15、16が金属帯1に当接する、金属帯1のエッチングレジスト面側には、バックアップロール17、18が配設されている。また、金属帯1の搬送ロールとして、電解槽2の入出側には、リンガーロール(図示省略)が設置され、電解液3の槽外への流出を抑制しており、槽内には、シンクロール13、14が設置され、電極5と金属帯1の距離を一定に保持している。
図2に、本発明による金属帯が一定速度で進行するときのコンダクターロール15、16と電極5の間でのコンダクターロール15、16への電圧印加例を示す。
通常、コンダクターロール15、16と電極5との間でコンダクターロール15、16に、すなわち、金属帯1に、正の電圧印加、負の電圧印加のそれぞれを行うことにより、所定の電解電流が流れるよう調整されている。例えば、コンダクターロール15、16への電圧印加が正の電圧印加(陽極となる)の場合は、所定の電解電流が、コンダクターロール15、16より、金属帯1の導電性を維持した表面を経て金属帯1に流れ、さらに、電極5に相対する金属帯1のエッチングパターン部(陽極となる)、電解液3を経て電極5(陰極となる)へと流れる。この電解電流により、電極5に相対する側の金属帯1のエッチングパターン部では、陽極反応
Me→Me++e−(金属帯が鋼帯の場合、Fe→Fe2++2e−)
により電解エッチングが進行することになる。逆に、コンダクターロール15、16への電圧印加が負の電圧印加(陰極となる)の場合は、上記の場合と逆向きに所定の電流が流れることになるが、上記の電極5(陽極となる)に相対する側の金属帯1のエッチングパターン部(陰極となる)では、陰極反応(電子受容反応)
2H++2e−→H2↑
により発生したH2ガスにより、電解エッチング中に発生したエッチングパターン部近傍の電解液の淀み(溶解沈殿物)を減少させることができる。
なお、本発明では、電極5は、陽極になる場合と陰極になる場合があることから、陽極の場合に電極自身が電解エッチングされることのないように例えばPt系等の不溶性材料から製作するのがよい。
通常、コンダクターロール15、16と電極5との間でコンダクターロール15、16に、すなわち、金属帯1に、正の電圧印加、負の電圧印加のそれぞれを行うことにより、所定の電解電流が流れるよう調整されている。例えば、コンダクターロール15、16への電圧印加が正の電圧印加(陽極となる)の場合は、所定の電解電流が、コンダクターロール15、16より、金属帯1の導電性を維持した表面を経て金属帯1に流れ、さらに、電極5に相対する金属帯1のエッチングパターン部(陽極となる)、電解液3を経て電極5(陰極となる)へと流れる。この電解電流により、電極5に相対する側の金属帯1のエッチングパターン部では、陽極反応
Me→Me++e−(金属帯が鋼帯の場合、Fe→Fe2++2e−)
により電解エッチングが進行することになる。逆に、コンダクターロール15、16への電圧印加が負の電圧印加(陰極となる)の場合は、上記の場合と逆向きに所定の電流が流れることになるが、上記の電極5(陽極となる)に相対する側の金属帯1のエッチングパターン部(陰極となる)では、陰極反応(電子受容反応)
2H++2e−→H2↑
により発生したH2ガスにより、電解エッチング中に発生したエッチングパターン部近傍の電解液の淀み(溶解沈殿物)を減少させることができる。
なお、本発明では、電極5は、陽極になる場合と陰極になる場合があることから、陽極の場合に電極自身が電解エッチングされることのないように例えばPt系等の不溶性材料から製作するのがよい。
本発明では、コンダクターロール15、16と電極5の間で、(I)時間M=3〜10msecの間の、前記コンダクトロール側を陰極とし、前記電極側を陽極とする電圧印加と、(II)時間N=4M〜20Mmsecの間の、前記コンダクトロール側を陽極とし、前記電極側を陰極とする電圧印加とを交互に繰り返すことが必要である。
上記(I)のコンダクターロールを陰極、電極を陽極とする場合、Mを電圧印加時間(msec)とするとき、3msec未満の時間の電圧印加では、エッチングで形成された溝部の表面でのH2ガスの発生が溝の中の電解液(沈殿物)の淀みを除去するのに充分でなく、一方、Mが10msec超の時間の電圧印加では、電解エッチングの電流効率の低下を招くからである。
また、上記(II)のコンダクターロールを陽極、電極を陰極とする場合、Nを電圧印加時間(msec)とするとき、4Mmsec未満の電圧印加では、電解エッチングの電流効率の低下を招き、一方、20Mmsec超の電圧印加では、電解エッチングで形成された溝の中の淀み(沈殿物)が大きくなりすぎ、溝のなかの電解液(沈殿物)の淀みを除去するのが困難になるからである。
上記(I)のコンダクターロールを陰極、電極を陽極とする場合、Mを電圧印加時間(msec)とするとき、3msec未満の時間の電圧印加では、エッチングで形成された溝部の表面でのH2ガスの発生が溝の中の電解液(沈殿物)の淀みを除去するのに充分でなく、一方、Mが10msec超の時間の電圧印加では、電解エッチングの電流効率の低下を招くからである。
また、上記(II)のコンダクターロールを陽極、電極を陰極とする場合、Nを電圧印加時間(msec)とするとき、4Mmsec未満の電圧印加では、電解エッチングの電流効率の低下を招き、一方、20Mmsec超の電圧印加では、電解エッチングで形成された溝の中の淀み(沈殿物)が大きくなりすぎ、溝のなかの電解液(沈殿物)の淀みを除去するのが困難になるからである。
なお、金属帯を高速で電解エッチング処理する手段としては、電解槽を複数設置することも有効である。
また、前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際に時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際に時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない時間の区間を挿むことも電解エッチングを安定して行うためには有効である。実際の電解エッチング設備では、電解電源装置とコンダクターロールとの間、電解電源装置と電極との間、あるいは、電極と金属帯との間にそれぞれ電気的な、いわゆるLC回路が形成され、印加電圧の陽極、陰極の切替のときに生じる時間遅れが問題となる場合があるからである。このLC回路による時間遅れの問題は、設備規模が大きくなるほど顕在化することになる。
ただし、金属帯が一定速度で進行する定常状態のときは、αまたはβが10msec超となる長い電圧印加しない時間を採用すると、電解エッチング速度の低下、あるいは、電解エッチング設備(電解槽)の長大化を招くので好ましくなく、また、αまたはβが1msec未満では、上記のLC回路による時間遅れの問題の有効な解決手段とはなりえないため、αまたはβは1〜10msecの範囲にするのが望ましい。
また、前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際に時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際に時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない時間の区間を挿むことも電解エッチングを安定して行うためには有効である。実際の電解エッチング設備では、電解電源装置とコンダクターロールとの間、電解電源装置と電極との間、あるいは、電極と金属帯との間にそれぞれ電気的な、いわゆるLC回路が形成され、印加電圧の陽極、陰極の切替のときに生じる時間遅れが問題となる場合があるからである。このLC回路による時間遅れの問題は、設備規模が大きくなるほど顕在化することになる。
ただし、金属帯が一定速度で進行する定常状態のときは、αまたはβが10msec超となる長い電圧印加しない時間を採用すると、電解エッチング速度の低下、あるいは、電解エッチング設備(電解槽)の長大化を招くので好ましくなく、また、αまたはβが1msec未満では、上記のLC回路による時間遅れの問題の有効な解決手段とはなりえないため、αまたはβは1〜10msecの範囲にするのが望ましい。
本発明者らは、図1に示した設備のコンダクターロールと電極の間に、図2に示した電圧印加を行い、エッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成された金属帯を一定速度で進行させ、電解エッチングによる溝加工を行い、その溝の形状(幾何学形状、溝の幅、溝の深さ)を観察した。その結果、本発明による電解エッチングで形成された溝の形状は非常に安定化し、全て、図5の(イ)のような凹型の形状となり、溝の幅、溝の深さはより均一となり、バラツキは大幅に改善されていることを確認した。
なお、実験に用いた金属帯1は、フォルステライトを表面に有しない仕上焼鈍された方向性珪素鋼板であり、その片側の表面にエッチングパターンを付与したエッチングマスクが形成されている。また、電解液3は、NaClの水溶液を用いた。
なお、実験に用いた金属帯1は、フォルステライトを表面に有しない仕上焼鈍された方向性珪素鋼板であり、その片側の表面にエッチングパターンを付与したエッチングマスクが形成されている。また、電解液3は、NaClの水溶液を用いた。
また、前記(I)の電圧印加のときの単位時間あたりの通電量(電流密度)を、前記(II)の電圧印加のときの単位時間あたりの通電量以下とすることも、電解エッチングを効率的に行うことに有効であり望ましい実施の形態である。前記(I)の電圧印加のときの単位時間あたりの通電量が前記(II)の電圧印加のときの単位時間あたりの通電量を超えると、電解エッチング速度の低下、あるいは、電解エッチング設備(電解槽)の長大化を招くので好ましくないからである。
一方、前記(I)の電圧印加のときの単位時間あたりの通電量を、10A/dm2以上とすることも、電解エッチングを安定して行うことに有効である。10A/dm2未満では、発生H2ガスの噴出力が小さく、電解エッチングで形成された溝の中の淀みを除去する効率が悪くなり好ましくないからである。
一方、前記(I)の電圧印加のときの単位時間あたりの通電量を、10A/dm2以上とすることも、電解エッチングを安定して行うことに有効である。10A/dm2未満では、発生H2ガスの噴出力が小さく、電解エッチングで形成された溝の中の淀みを除去する効率が悪くなり好ましくないからである。
実際の電解エッチング処理ラインによる溝加工では、エッチング設備の上流ないし下流設備の影響、例えば、処理する複数の金属帯のエッチング設備の上流での接合、エッチング設備の下流設備での金属帯の分割等、による金属帯の進行速度の減速(速度変化)が避けられない。本発明者らは、更に、金属帯の進行速度が変化しても、電解エッチングにより形成される溝の形状の安定化を図ることを研究した。
図4は、従来の電解エッチングにおいて、一般的に採用されているのと類似の、金属帯の進行速度が変化するときのコンダクターロールと電極の間でのコンダクターロールへの電圧印加例であり、金属帯単位面積あたりの電解電流を一定にするよう進行速度に応じて、上記(I)、(II)の印加電圧を減少させている。しかるに、電解エッチングによる溝加工では、前記(I)の電圧印加のときの単位時間あたりの通電量を、10A/dm2以上とすることが、電解エッチングを安定して行うことに有効であり、単位時間あたりの通電量をこの数値未満にするような(I)の印加電圧は好ましくないので、この方法は採用できない。
このような問題を解決するための本発明による金属帯の進行速度が変動するときのコンダクターロールと電極の間でのコンダクターロールへの電圧印加例を、図3に示す。この場合、前記(I)、(II)の印加電圧(E(I)0、E(II)0)は、金属帯の所定の基準速度、減速速度に関わらず一定となるよう制御される。一方、前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際の前記コンダクターロールと電極の間に電圧を印加しない時間αmsec(α>0)、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際の前記コンダクターロールと電極の間に電圧を印加しない時間βmsec(β>0)は、金属帯の単位面積あたりの上記(I)、(II)の電圧印加時間(M0、N0)が一定となるように変更される。
いま、金属帯の進行の基準速度をV0、そのときの(I)、(II)の電圧印加時間をM0msec、N0msec、電圧印加をしない時間をα0msec、β0msec、一方、金属帯の減速速度をVv、そのときの(I)、(II)の電圧印加時間をMv msec、Nv msec、電圧印加をしない時間をαv msec、βv msecとするとき、以下の関係が成り立つ。
{Mv/(Mv+Nv+αv+βv)}/{M0/(M0+N0+α0+β0)}
={Nv/(Mv+Nv+αv+βv)}/{N0/(M0+N0+α0+β0)}
= Vv/V0
加えて、本発明による方法では、金属帯の進行速度の変化(減速)(V0→Vv)に対し、電圧印加をしない時間αmsec、βmsecのみを変更(増加)(α0→αv、β0→βv)し、前記(I)、(II)のコンダクターロールと電極の間のコンダクターロールへの印加電圧(E(I)0、E(II)0)および印加時間(M0=Mv、N0=Nv)を変えないよう制御するので、印加電圧と通電量の間に連続な関係が成り立たなくても、金属帯の進行速度の変化による電解エッチングの溝形状のバラツキが生じることはない。
{Mv/(Mv+Nv+αv+βv)}/{M0/(M0+N0+α0+β0)}
={Nv/(Mv+Nv+αv+βv)}/{N0/(M0+N0+α0+β0)}
= Vv/V0
加えて、本発明による方法では、金属帯の進行速度の変化(減速)(V0→Vv)に対し、電圧印加をしない時間αmsec、βmsecのみを変更(増加)(α0→αv、β0→βv)し、前記(I)、(II)のコンダクターロールと電極の間のコンダクターロールへの印加電圧(E(I)0、E(II)0)および印加時間(M0=Mv、N0=Nv)を変えないよう制御するので、印加電圧と通電量の間に連続な関係が成り立たなくても、金属帯の進行速度の変化による電解エッチングの溝形状のバラツキが生じることはない。
本発明に使用する電解電源装置は、上記の直流電源装置と開閉器による切り替えシステムに限定されるものではなく、上記の電圧印加サイクルをとれるものであれば、方式を問わない。いわゆる、6相半波整流波形の、トランジスター方式でも、インバータ方式でも有効である。また、抵抗も必ずしも単独に設置する必要はなく、上記の(I)の電圧印加のときの通電量を制御できるものであれば、方式は問わず、勿論、直流電源方式と組み合わせたものでかまわない。
本発明は、片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に連続して、電解エッチングにより安定して溝加工する場合のすべてに対して有効である。特に、表面にエッチングマスクが形成された仕上焼鈍された珪素鋼板に電解エッチングを施した、歪取り焼鈍による鉄損劣化がない耐歪取り焼鈍低鉄損一方向性珪素鋼板については、特にその効果は大きい。これは、電解エッチングで形成される溝形状のバラツキが磁性のバラツキとなって特に顕著に問題が顕在化するからである。
もちろん、冷延板の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成された方向性珪素鋼板でもその効果は有効である。
もちろん、冷延板の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成された方向性珪素鋼板でもその効果は有効である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
電解エッチング前の金属帯は、下記条件下で、最終板厚まで冷間圧延され、脱炭焼鈍された後、MgOからなる焼鈍分離材が両側の表面に塗布・乾燥処理され、さらに、仕上焼鈍され、仕上焼鈍中に両表面に生成したフォルステライト(Mg2SiO4)被膜が除去され、その片側の表面に張力付与型被膜(燐酸系の絶縁被膜)が塗布された後、焼き付けられ、さらに、その張力付与型被膜の焼き付けられた片側の表面がレーザ光線により張力付与型被膜が選択的に除去されて地鉄が露出したエッチングパターンが形成されている方向性珪素鋼板である。なお、この張力付与型被膜は、電気絶縁性被膜であるため、エッチングマスクとして利用することとした。
上記のような前処理が施された方向性珪素鋼板に、図1または図6に示す直接通電式連続電解エッチング装置を用いて、電解エッチング処理を施した。
[方向性珪素鋼板] 板厚 0.22mm、板幅 1000mm
[エッチングマスク] 板長手方向に直角な方向(板幅方向)に、5mmピッチ、
幅0.20mmのエッチングパターンを有する。
[電解液] 組成500g−NaCl/l、液温 50℃
[目標溝深さ] 0.02mm
[電解電流] 200C/dm2
[帯鋼の進行速度] 基準速度に対し20%、40%、60%、80%、100%の加減
速を一定時間で繰り返す。
電解エッチング前の金属帯は、下記条件下で、最終板厚まで冷間圧延され、脱炭焼鈍された後、MgOからなる焼鈍分離材が両側の表面に塗布・乾燥処理され、さらに、仕上焼鈍され、仕上焼鈍中に両表面に生成したフォルステライト(Mg2SiO4)被膜が除去され、その片側の表面に張力付与型被膜(燐酸系の絶縁被膜)が塗布された後、焼き付けられ、さらに、その張力付与型被膜の焼き付けられた片側の表面がレーザ光線により張力付与型被膜が選択的に除去されて地鉄が露出したエッチングパターンが形成されている方向性珪素鋼板である。なお、この張力付与型被膜は、電気絶縁性被膜であるため、エッチングマスクとして利用することとした。
上記のような前処理が施された方向性珪素鋼板に、図1または図6に示す直接通電式連続電解エッチング装置を用いて、電解エッチング処理を施した。
[方向性珪素鋼板] 板厚 0.22mm、板幅 1000mm
[エッチングマスク] 板長手方向に直角な方向(板幅方向)に、5mmピッチ、
幅0.20mmのエッチングパターンを有する。
[電解液] 組成500g−NaCl/l、液温 50℃
[目標溝深さ] 0.02mm
[電解電流] 200C/dm2
[帯鋼の進行速度] 基準速度に対し20%、40%、60%、80%、100%の加減
速を一定時間で繰り返す。
電解エッチング後、鋼板板幅方向における電解エッチングで形成された溝の形状パターン、溝の深さのばらつきを評価した。
表1に、図1または図6に示す装置に、図2〜4、図7のいずれかの電圧印加をしたときの試験条件と結果を示す。
No.1〜5に示される本発明例では、溝の形状は全て凹型(イ)で安定しており、その結果、溝の深さのバラツキ(%)((溝の深さの標準偏差)/(溝の深さの平均値)×100)は、極めて小さいことが分かる。さらに、進行速度変化をさせたNo.1〜4は、基準速度で速度変化のないNo.5と比べ、溝形状および溝の深さのバラツキ(%)は遜色なく良好なこともわかる。
表1に、図1または図6に示す装置に、図2〜4、図7のいずれかの電圧印加をしたときの試験条件と結果を示す。
No.1〜5に示される本発明例では、溝の形状は全て凹型(イ)で安定しており、その結果、溝の深さのバラツキ(%)((溝の深さの標準偏差)/(溝の深さの平均値)×100)は、極めて小さいことが分かる。さらに、進行速度変化をさせたNo.1〜4は、基準速度で速度変化のないNo.5と比べ、溝形状および溝の深さのバラツキ(%)は遜色なく良好なこともわかる。
一方、コンダクターロールへの負の電圧印加時間が短い比較例のNo.6、および、正の電圧印加時間/負の電圧印加時間の比率が20を超える比較例のNo.7、8では、溝の形状は、一部凹型(イ)が認められるものの、依然として、溝の形状が、傾斜型(ロ)、幅拡がり型(ハ)、局部エッチング型(ニ)が混在しており、その結果、溝の深さのバラツキは大きく、満足できる品質ではなかった。
また、従来の金属帯に対する電圧印加方法(図4)に類似の比較例のNo.9では、溝の形状は、凹型(イ)は殆ど認められず、傾斜型(ロ)、幅拡がり型(ハ)、局部エッチング型(ニ)が大半であり、その結果、溝の深さのばらつきは大きいものであった。
さらに、また、従来の電圧印加法による比較例のNo.10、11は、溝の形状は、凹型(イ)は認められず、傾斜型(ロ)、幅拡がり型(ハ)、局部エッチング型(ニ)が混在しており、その結果、溝の深さのばらつきはさらに大きいものであった。加えて、進行速度を変化させたNo.10は、基準速度で速度変化のないNo.11と比べ、溝の深さのバラツキ(%)は、一層悪いこともわかる。
また、従来の金属帯に対する電圧印加方法(図4)に類似の比較例のNo.9では、溝の形状は、凹型(イ)は殆ど認められず、傾斜型(ロ)、幅拡がり型(ハ)、局部エッチング型(ニ)が大半であり、その結果、溝の深さのばらつきは大きいものであった。
さらに、また、従来の電圧印加法による比較例のNo.10、11は、溝の形状は、凹型(イ)は認められず、傾斜型(ロ)、幅拡がり型(ハ)、局部エッチング型(ニ)が混在しており、その結果、溝の深さのばらつきはさらに大きいものであった。加えて、進行速度を変化させたNo.10は、基準速度で速度変化のないNo.11と比べ、溝の深さのバラツキ(%)は、一層悪いこともわかる。
1 金属帯
2 電解(エッチング)槽
3 電解液
5、5′ 電極
7、8 直流電源(整流電源)装置
9、9′、10、10′ 開閉器
13、14 シンクロール(浸漬用ロール)
15、16 コンダクターロール
17、18 バックアップロール
21、22、23 抵抗
2 電解(エッチング)槽
3 電解液
5、5′ 電極
7、8 直流電源(整流電源)装置
9、9′、10、10′ 開閉器
13、14 シンクロール(浸漬用ロール)
15、16 コンダクターロール
17、18 バックアップロール
21、22、23 抵抗
Claims (2)
- 片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、直接通電式電解エッチングにより連続的に溝加工する、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法であって、前記金属帯のエッチング面と相対向して配設された電極の間に、電解液を充填し、コンダクターロールを金属帯のエッチングマスクが形成されていないもう一方の表面に接触させ、
(I)時間M=3〜10msecの間の、前記コンダクトロール側を陰極とし、前記電極側を陽極とする電圧印加と、
(II)時間N=4M〜20Mmsecの間の、前記コンダクトロール側を陽極とし、前記電極側を陰極とする電圧印加と
を交互に繰り返し、
前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際に時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際に時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない時間の区間を挿み、
さらに、金属帯の進行速度を検出して該進行速度が所定の基準速度から変動した場合には、その速度変動に応じて前記電圧を印加しない時間(α、β)の長さを調整することにより、前記(I)および(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)および(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持することを特徴とする、金属帯の直接通電式連続電解エッチング方法。 - 片側の表面にエッチングパターンを付与してエッチングマスクが形成され、残る片側の表面が導電体である金属帯に、直接通電式電解エッチングにより連続的に溝加工する、金属帯の直接通電式連続電解エッチング装置であって、
(a)電解エッチング槽と、
(b)コンダクターロールと、
(c)前記電解エッチング槽の電解液に浸漬され、前記金属帯のエッチング面と相対向する電極と、
(d)前記金属帯を前記電解エッチング槽の電解液に浸漬するためのシンクロールと、
(e)前記コンダクターロールと前記電極の間で、(I)所定のM時間、前記コンダクトロール側を陰極とし、前記電極側を陽極とする電圧制御と、(II)所定のN(N>M)時間、前記コンダクトロール側を陽極とし、前記電極側を陰極とする電圧制御と、(III)前記(I)の電圧印加から前記(II)の電圧印加への移行の際の時間αmsec(α>0)間、および、前記(II)の電圧印加から前記(I)の電圧印加への移行の際の時間βmsec(β>0)間、前記コンダクターロールと前記電極の間に電圧を印加しない電圧制御と、(IV)金属帯の進行速度が所定の基準速度から変動した場合には、その速度変動に応じて前記電圧を印加しない時間(α、β)の長さを調整することにより、前記(I)および(II)の電圧印加の大きさ、ならびに金属帯単位面積あたりの(I)および(II)の電圧印加時間の長さをほぼ一定に保持する電圧制御を行う電源装置と
を有することを特徴とする、金属帯の直接通電式連続電解エッチング装置。
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CN102181915A (zh) * | 2011-04-11 | 2011-09-14 | 常州正成机电科技有限公司 | 对金属板进行电解蚀刻的方法及其装置 |
-
2004
- 2004-02-13 JP JP2004036928A patent/JP2005226132A/ja not_active Withdrawn
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CN102181915B (zh) * | 2011-04-11 | 2013-04-10 | 常州正成机电科技有限公司 | 对金属板进行电解蚀刻的方法及其装置 |
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