JP2005224237A - 欠陥干渉粒子、ポリオウイルス欠損変異RNA、cDNAおよびプラスミド - Google Patents

欠陥干渉粒子、ポリオウイルス欠損変異RNA、cDNAおよびプラスミド Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、細胞毒性が低く安全性が高いウイルスベクターとして好適に利用しうる欠陥干渉粒子、該欠陥干渉粒子の製造に利用できるポリオウイルス欠損変異RNA、cDNAおよびプラスミドを提供することを目的とする。
【解決手段】 ゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有するポリオウイルス欠損変異RNAを有し、該ゲノムRNAの構造遺伝子に由来しないキャプシド構造タンパク質によりパッケージされてウイルス粒子となることを特徴とする欠陥干渉粒子、および、ゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を有し、キャプシド構造タンパク質の干渉により、欠陥干渉粒子を産生可能であることを特徴とするポリオウイルス欠損変異RNA。
【選択図】 なし

Description

外来遺伝子を導入して培養細胞、実験動物またはヒトに感染させることにより、宿主細胞において該遺伝子を発現させるウイルスベクターとして利用できる欠陥干渉粒子に関する。
今日、遺伝子治療の臨床研究が種々の疾病に関して進行しており、本治療法は今世紀の先端医療の要となると考えられている。遺伝子治療の成否を握るのは、安全に効率よく標的細胞へ遺伝子を導入できる遺伝子導入ベクターの開発である。
これまでの遺伝子治療用ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、そしてアデノ随伴ウイルスなどが主に利用されてきた。しかしながら、特異的な組織や細胞に遺伝子導入を行えるようなベクターについての開発は十分ではなく、また、細胞毒性や免疫反応の誘導、中和抗体による不活化等の問題もあった。
これに対して、ポリオウイルスは希少な運動神経向性を有するウイルスであり、これをウイルスベクターとして用いることができれば運動神経特異的なウイルスベクターとして用いることができるため、大変有望である。ポリオウイルスはピコルナウイルス科エンテロウイルス属のRNAウイルスであり、急性灰白髄炎(小児まひ)の病因として知られている。ポリオウイルスには小児まひの原因となる強毒株と、小児まひ予防のワクチンとして高い安全性が認められている弱毒株(経口生ポリオワクチン)がある。
ポリオウイルスは唯一の自然宿主であるヒトに対して経口感染する。そしてポリオウイルス強毒株は扁桃腺やパイエル板といった局所リンパ節を介して血中に移行し、ウイルス血症を生じると考えられている。血中のウイルスは、血液脳関門(blood brain barrier)を通過して中枢神経系に侵入すると考えられている。ポリオウイルス強毒株は主に脊髄前角運動神経細胞で増殖するため、運動神経が脱落し、手足に麻痺が生じる(図1)。
ポリオウイルスには1型、2型および3型の3種類の血清型が存在している。それぞれに、1型Mahoney株、2型Lansing株、3型Leon株に代表される強毒株があり、それらに対する弱毒株(1型Sabin1株、2型Sabin2株、3型Sabin3株)が開発された。経口生ポリオワクチンとして実際に投与されているものには、これら3つの型の弱毒株が特定の比率で混合されており、このワクチンを経口投与すると、全型に対する抗体価を上昇させることができる。これらの弱毒株は、消化管では強毒株同様に増殖することができるため、腸管粘膜上に抗ポリオウイルス分泌型IgA抗体を誘導することができる。ところが、弱毒株はウイルス血症を起こさず、中枢神経系に侵入したとしてもほとんど増殖できないため神経病原性を示さない。この弱毒株の神経非病原性が、安全性の高いワクチンとして用いるためには非常に重要なため、弱毒株の神経病原性についてはサルおよびポリオウイルス感受性マウスを用いてきわめて厳格な評価が行われている。
ポリオウイルスの感染経路としては、上記のような経口からの感染経路以外に逆行性軸索輸送経路(Neural Pathway)と呼ばれる経路が存在することが知られている(図1)。この逆行性軸索輸送経路では、筋肉内接種されたポリオウイルスが、筋肉へ投射している運動神経細胞に取り込まれ、軸索内を逆行性に輸送されて細胞体へ到達すると考えられている。この経路は、1955年にアメリカでポリオウイルス強毒株の不完全な不活化ワクチンをヒトに筋肉内接種したCutter Incidentと呼ばれる事件によって明らかになった。さらに、この逆行性軸索輸送経路は血中に存在する抗ポリオウイルス抗体の影響を受けないことがポリオウイルス感受性マウスを用いた実験から明らかにされている(非特許文献1)。このことは、ポリオウイルスをウイルスベクターとして用いる場合、ポリオワクチンにより血中抗ポリオウイルス抗体価が上がっていても、筋肉内注射することで血中免疫システムに影響されずにウイルスを直接中枢神経系へ導入できることを示唆する。
ポリオウイルス粒子の構造および感染初期過程についても種々の研究が行われている。ゲノムは1本のプラス鎖RNAからなり、全長は約7500塩基である。直径が約30nmのエンベロープを持たない粒子であり、ゲノムRNAが4種類のキャプシドタンパク質60組に包まれた二十面体構造をしている(非特許文献2)。感染性ポリオウイルス粒子は、細胞膜上に存在するポリオウイルス受容体(PVR)との結合により、構造変化を起こし、RNAゲノムが細胞質内に放出されると考えられている。細胞質内に放出されたゲノムRNAはmRNAとしても機能し、ウイルスタンパク質合成が行われる。また、ゲノムRNAからRNA複製が行われ、複製されたゲノムRNAがキャプシドタンパク質にパッケージングされることにより、子ウイルス粒子が形成される。ゲノムRNAの5’末端には、キャップ構造が存在せず、VPgというウイルスタンパク質が共有結合している(非特許文献3)。また、5’末端から約750塩基までは、タンパク質をコードしていない非翻訳領域となっており、この部分に、キャップ非依存的な翻訳開始機構に関わるシスエレメントIRES(Internal ribosome entry site)が存在する。また、ゲノムRNAの3’末端側にはポリAが存在している(非特許文献4および5)(図2A)。
ウイルスタンパク質は、前記IRESから一つの大きな融合タンパク質として翻訳され、その後、ウイルスタンパク質であるプロテアーゼ2Aと3Cによって切断され、個々のウイルスタンパク質として機能するようになる(非特許文献6および7)。ウイルスタンパク質は、キャプシド構造タンパク質と、ウイルスのプロテアーゼなどの非構造タンパク質に分けられる。構造タンパク質は5’末端側に、非構造タンパク質はそれに続く下流にコード領域がまとまって存在している(図2A)。
ポリオウイルスの神経病原性、すなわち、強毒・弱毒の差は、主に中枢神経系におけるウイルスの増殖効率の違いに起因すると考えられている。この強毒・弱毒株ゲノムの間には全ゲノム領域にわたって56の点突然変異が存在し、その結果21のアミノ酸変異に至っている(図2B)(非特許文献8)。強毒株と弱毒株の組み換えウイルスを作製し、サルおよびポリオウイルス感受性マウスにおいて点突然変異と神経病原性の関係を調べた研究からは、神経病原性に影響を与える変異は全ゲノム領域に散在している一方、主なものはIRES領域内に存在することが明らかになった(非特許文献9)。IRES内の変異の中でも、ポリオウイルス1型では塩基番号480が、2型では塩基番号481が、3型では塩基番号472が特に重要であった。一方、該IRESにPTB(Poly-pyrimidine tract binding protein)が結合すると、IRESからの翻訳開始が効率的に行われることが示されている(非特許文献10)。例えば3型の強毒株では、この塩基番号472番目付近にPTBが効率よく結合するが、弱毒株ではこの部分に変異が入っているため立体構造が変化し、PTBが結合しにくくなると考えられる。したがって、PTBの存在量が少ない中枢神経系のような組織では、弱毒株のIRESにPTBが結合しにくいためIRES活性が低下し、ウイルス複製効率が低下すると考えられる。一方、強毒株のIRESにはPTBが効率よく結合しIRES活性が維持され、ウイルス複製効率が良いと考えられる。
生ポリオワクチン投与により、抗ポリオウイルス抗体が非常に効率よく誘導される性質を利用して、ポリオウイルスをウイルスベクターとして利用して、目的タンパク質をポリオウイルスベクターによって発現させ、その目的タンパク質に対する抗体も同時に誘導する研究が行われている。すなわち、ポリオウイルスに対するワクチネーションは、ポリオウイルス弱毒生ワクチン株を舌の上に置くだけでよく、非常に簡便である。経口投与されたポリオウイルス弱毒株は、咽頭および腸に到達し、そこで増殖することにより抗ポリオウイルス抗体が誘導される。特定の抗原を発現するポリオウイルスベクターを開発すれば、ポリオウイルスに対する抗体を誘導するのと同様に、ベクターを経口投与するだけで特定抗原に対する抗体を誘導し、様々な疾患の予防や治療に利用できると期待される。
また、ポリオウイルスの運動神経向性を利用して、運動神経細胞特異的に目的遺伝子を発現させるベクターの開発の研究も行われている。
ポリオウイルスベクターとしては、自己複製能力を保持したままの増殖型ベクターと、ウイルス遺伝子の一部を欠損させて自己複製能力を無くした非増殖型ベクターとが知られている。
増殖型ポリオウイルスベクターとしては、ポリオウイルスゲノムのオープンリーディングフレーム(ORF)にインフレームで159塩基から1089塩基の数種類の外来遺伝子を導入し、外来遺伝子の前後はポリオウイルス特異的プロテアーゼで切断されるように設計したものが報告されている(非特許文献11)。挿入部位としては、図2Bの黒三角で表される4カ所への挿入が可能であり、いずれの外来タンパク質も、ウイルスベクター感染培養細胞での発現が認められている。また、このウイルスベクターを投与されたポリオウイルス感受性マウス、サルでは各外来タンパク質に対する抗体の誘導が確認されたことから、ウイルスベクターによって各外来タンパク質が発現したと考えられている。
また、発明者らはBrain derived neurotrophic factor(BDNF)(423塩基)をポリオウイルス1型強毒Mahoney株ORFのC末端側に挿入した増殖型ベクターを発表した(非特許文献12)。このウイルスベクターを感染させたAfrican green monkey kidney(AGMK)細胞では、ポリオウイルスおよびBDNFの抗原が確認された。
一方、非増殖型ベクターは、ポリオウイルスが、自然界における複製過程で、構造遺伝子領域にインフレームで欠損を生じた欠陥干渉粒子 (Defective Interfering (DI) particle)を生じることが知られていることを利用したものである。欠陥干渉粒子自体は構造遺伝子領域を欠損しているため、自己複製能を持たない。しかし、RNA複製は行うことができるため、ヘルパーウイルス等を同一細胞に重感染させて構造タンパク質を供給することにより、欠陥干渉粒子の子孫ウイルスを産生することができる。このようにして産生された非増殖型ベクターは、最初に感染した細胞でしかベクターウイルスが複製しないため、周囲の細胞に感染拡大することがなく、安全性の観点から優れている。現在のところ、ポリオウイルスと分離可能なワクシニアウイルスをヘルパーウイルスとして用いる方法が一般的に行われている(非特許文献13)。
遺伝子の欠損部位については自然界では構造遺伝子領域の欠損株しか見つからなかった(非特許文献14)。このことから、非構造遺伝子領域には欠陥干渉粒子の複製に有利な領域が含まれている可能性が示唆された。
構造遺伝子領域のほぼ全域を欠損させ、そこへcarcinoembryonic antigen (CEA)(約2400塩基)遺伝子を挿入したベクターがMorrowらにより報告されている(非特許文献15)。CEAは主要なヒトの癌抗原として知られている。MorrowらはCEA発現ベクターをモデルマウスに3回にわたって筋肉内注射し、CEAに対する抗体価の上昇を確認したところ、抗体価の上昇が認められた。同時に、ポリオウイルスに対する抗体価も上昇した。実際にベクターによって誘導された抗CEA抗体によって癌組織が縮小するのかどうかについては報告がないが、約2400塩基程度の比較的大きな遺伝子であっても、欠陥干渉粒子に組み込むことで実際に個体内で発現させることが可能であることが初めて示された。
しかし、前記のようなポリオウイルスベクターは、非増殖型のポリオウイルスベクターを含めて、細胞毒性が強いという実用化に対する大きな障害がある。より安全なポリオウイルスベクターの開発のためには、該細胞毒性を下げることが要請されている。
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本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、細胞毒性が低く安全性が高いウイルスベクターとして好適に利用し得る欠陥干渉粒子、該欠陥干渉粒子の製造に利用できるポリオウイルス欠損変異RNA、cDNAおよびプラスミドを提供することを目的とする。
発明者らは、ポリオウイルスゲノムRNAの2A領域を欠損させても、ポリオウイルスの外殻形成が可能で、レプリコン活性のある欠陥干渉粒子が産生できるとの新規な知見に基づき、本発明に至った。すなわち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> ゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有するポリオウイルス欠損変異RNAを有し、該ゲノムRNAの構造遺伝子に由来しないキャプシド構造タンパク質によりパッケージされてウイルス粒子となることを特徴とする欠陥干渉粒子である。
<2> ポリオウイルス欠損変異RNAが、ポリオウイルス1型強毒株、ポリオウイルス2型強毒株、ポリオウイルス3型強毒株、ポリオウイルス1型弱毒株、ポリオウイルス2型弱毒株、および、ポリオウイルス3型弱毒株のいずれかのRNAの欠損変異体である前記<1>に記載の欠陥干渉粒子である。
<3> キャプシド構造タンパク質が、プラスミドのコトランスフェクション、および、ヘルパーウイルスの重感染のいずれかにより供給された前記<1>および<2>のいずれかに記載の欠陥干渉粒子である。
<4> ヘルパーウイルスが、ポリオウイルス、ワクシニアウイルス、ヒト水疱性口内炎ウイルス(VSV)-Gシュードレンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス (HSV)、センダイウイルスおよびバキュロウイルスから選択されるいずれかである前記<3>に記載の欠陥干渉粒子である。
<5> 細胞に感染可能である前記<1>から<4>のいずれかに記載の欠陥干渉粒子である。
<6> ウイルスベクターである前記<1>から<5>のいずれかに記載の欠陥干渉粒子である。
<7> ポリオウイルスゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有し、キャプシド構造タンパク質にパッケージされて、欠陥干渉粒子を産生可能であることを特徴とするポリオウイルス欠損変異RNAである。
<8> 配列番号1のポリオウイルスRNAにおいて第746番目から第3817番目までの塩基配列を欠損させたRNA、および、
該欠損RNAの塩基配列において1若しくは数個の塩基配列が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるRNAのいずれかである前記<7>に記載のポリオウイルス欠損変異RNAである。
<9> 前記<7>および<8>のいずれかに記載のポリオウイルス欠損変異RNAおよび該ポリオウイルス欠損変異RNAに相補的なRNAの少なくともいずれかを転写可能なことを特徴とするcDNAである。
<10> 前記<9>に記載のcDNAを含むことを特徴とするプラスミドである。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、細胞毒性が低く安全性が高いウイルスベクターとして好適に利用しうる欠陥干渉粒子、該欠陥干渉粒子の製造に利用できるポリオウイルス欠損変異RNA、cDNAおよびプラスミドを提供することができる。
本発明の欠陥干渉粒子は、ゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有するポリオウイルス欠損変異RNAを有し、該ゲノムRNAの構造遺伝子に由来しないキャプシド構造タンパク質によりパッケージされてウイルス粒子となること以外は特に制限はない。
欠陥干渉粒子は、構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を有し、自己のゲノムRNAの構造遺伝子に由来しないキャプシド構造タンパク質によりパッケージされるウイルス粒子である。すなわち、自己のウイルスゲノムRNAにおいてキャプシド構造タンパク質をコードする領域である構造領域の少なくとも一部を欠損しており、欠陥干渉粒子自体はその欠損のため、自己複製能を持たない。しかし、RNA複製は行うことができるため、ヘルパーウイルスを同一細胞に重感染させる等の方法により、キャプシド構造タンパク質を供給することにより、該キャプシド構造タンパク質を自己のゲノムRNAから翻訳した酵素によりプロセシングし、欠陥干渉粒子の子孫ウイルスを産生することができる。この欠陥干渉粒子は、細胞に感染することができる。
この欠陥干渉粒子は、ベクターとして用いた場合に、最初に感染した細胞でしかベクターウイルスが複製しない非増殖型ベクターとなるため、周囲の細胞に感染拡大することがなく、安全性の観点から優れている。また、強毒株型の骨格を持っているベクターであっても、非増殖型なら中枢神経系において感染拡大することがないので、安全性が高い。
ゲノムRNAの2A領域とは、ポリオウイルスのゲノムRNAの2Aプロテアーゼをコードする領域をいう。2Aプロテアーゼは宿主細胞に対して、特に強い毒性を有する。一方で、2Aプロテアーゼは3Cプロテアーゼ等と共に、IRESから一つの大きな融合タンパク質として翻訳されたウイルスタンパク質を切断し、個々のウイルスタンパク質として機能するタンパク質にプロセシングするときに働くことが知られており、RNA複製活性、および、粒子形成活性には欠かせない部分と考えられていた。前述のように、遺伝子の欠損部位については自然界では構造遺伝子領域の欠損株しか見つからなかったことからも、この考え方は支持されていた。しかし、本発明において、発明者らは、ポリオウイルスゲノムRNAの2A領域を欠損させても、ポリオウイルスの外殻形成が可能で、レプリコン活性のある欠陥干渉粒子が産生できることを実証した。
2Aプロテアーゼとポリオウイルスの複製との関係は未知の部分も多いが、2Aプロテアーゼが欠損していてもRNAの複製および外殻形成が可能であることから、図3のように2Aプロテアーゼおよび3Cプロテアーゼが働いていると推察される。図3中黒の三角は3Cプロテアーゼの切断部位、白の三角は2Aプロテアーゼの切断部位を表す。
2A領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有するポリオウイルス欠損変異RNAとは、2A領域の全部を欠損したポリオウイルス欠損変異RNAの他、2A領域の一部を欠損したポリオウイルス欠損変異RNAも含む。欠損と共に置換等の変異を含んでいてもよい。欠損はインフレームで欠損させることが複製活性を落とさない観点から好ましい。また、該ポリオウイルス欠損変異RNAは、更に、構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有する。これは、欠陥干渉粒子のゲノムRNAの特徴であるが、構造領域の大部分または全域を欠損していることが、より大きな外来遺伝子を導入可能である観点、および、非構造領域との切り離しができないことによる影響が少ない観点などから好ましい。欠損はIRES領域よりも下流で開始することが好ましく、構造領域と2A領域とはひとつづきで欠損させることができる。また、欠損が2A領域を超えて下流に達していても欠陥干渉粒子を産生できる限り本発明に含まれる。このような欠損変異RNAとしては、例えばPV1型強毒Mahoney株(配列番号1)において、746〜3817番目の塩基配列を欠損させた塩基配列からなる欠損変異RNA、または、該欠損変異RNAにおいて1若しくは複数、好ましくは1若しくは数個の塩基配列が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなる欠損変異RNAが挙げられる。
ポリオウイルス欠損変異RNAは、前記の種々のポリオウイルス株のcDNAクローンに、公知の方法により前記のような欠損を含む変異を導入することにより作製することができる。ポリオウイルス株のcDNAは、市販品や、ポリオウイルス株のRNAから公知の方法で得ることができる(例えば、1型Mahoney株のcDNAであるpT7PVM[pT7PV1-5]は、American Type Culture Collection (ATCC)より入手可能)。また、Cello J等の方法により人工合成することもできる(Cello J, Paul AV, Wimmer E.Chemical synthesis of poliovirus cDNA: generation of infectious virus in the absence of natural template. Science. 2002 Aug 9;297(5583):1016-8. Epub 2002 Jul 11.)。
ポリオウイルス欠損変異RNAは、ポリオウイルス1型強毒株、ポリオウイルス2型強毒株、ポリオウイルス3型強毒株、ポリオウイルス1型弱毒株、ポリオウイルス2型弱毒株、および、ポリオウイルス3型弱毒株のいずれかのRNAに欠損を含む変異を導入した欠損変異体であることが好ましい。ポリオウイルス1型強毒株としては例えば、1型Mahoney株である配列番号1で表される塩基配列からなる遺伝子を有する株(配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する)または配列番号3で表される塩基配列からなる遺伝子を有する株等が挙げられ、2型強毒株としては2型Lansing株(配列番号4)等が挙げられ、3型強毒株としては3型Leon株(配列番号5)等が挙げられ、1型弱毒株としては1型Sabin1株である配列番号6で表される塩基配列からなる遺伝子を有する株(配列番号7で表されるアミノ酸配列を有する)または配列番号8で表される塩基配列からなる遺伝子を有する株等が挙げられ、2型弱毒株としては2型Sabin2株である配列番号9または配列番号10で表される塩基配列からなる遺伝子を有する株等が挙げられ、3型弱毒株としては3型Sabin3株である配列番号11または配列番号12で表される塩基配列からなる遺伝子を有する株等が挙げられる。
欠陥干渉粒子のキャプシド構造タンパク質は、プラスミドのコトランスフェクションや、ヘルパーウイルスの重感染により供給することができる。プラスミドを用いる方法としては、T7 promoterに続いてポリオウイルス構造タンパク質をコードしたプラスミド、およびそのプラスミドからRNAを合成するためのT7 polymeraseをコードしたプラスミドをDIのRNAとコトランスフェクションする方法等が挙げられる。ヘルパーウイルスを用いる方法としては、他のポリオウイルスや、ポリオウイルス構造タンパク質を組み換えた、ワクシニアウイルス、ヒト水疱性口内炎ウイルス(VSV)-Gシュードレンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、センダイウイルスおよびバキュロウイルス等を、ヘルパーウイルスとして宿主細胞に感染させる方法が挙げられる。このなかでも、ワクシニアウイルスを用いる方法が好ましい。ワクシニアウイルスとしては、例えば、ATCCより入手されるWR (NIH TC-adapted) 株(VR-1354)等を用いることができる。プラスミドやヘルパーウイルスへのポリオウイルスキャプシド構造タンパク質の導入は、特に制限はなく公知の方法から選択することにより行うことができる。(David C. et al. 1991. Coinfection with Recombinant Vaccinia Viruses Expressing Poliovirus P1 and P3 Proteins Resμlts in Polyprotein Processing and Formation of Empty Capsid Atructures J. Virol. 65:2088-2092Ansardi, D.C.et al. 1993. Complementation of a poliovirus defective genome by a recombinat vaccinia virus which provides poliovirus P1 capsid precursor in trans. J. Virol. 67:3684-3690.
本発明の欠陥干渉粒子は、ウイルスベクターとして利用することができる。ポリオウイルスベクターには前述のように運動神経向性があり、筋萎縮性側索硬化症などの運動神経細胞の変性疾患治療および予防に好適に使用できる。
ウイルスベクターに導入する外来遺伝子としては、3100塩基以下の外来遺伝子であることが好ましく、2400塩基以下であることがより好ましい。具体的には、green fluorescent protein(GFP)およびその変異体、red fluorescent protein(RFP)およびその変異体、Kaedeおよびその変異体、Renilla luciferase、Firefly luciferase、Chloramphenicol acetyl transferase(CAT)、β-galactosidase、および、前記レポータータンパク質と他のタンパク質との融合タンパク質等が挙げられる。また、nerve growth factor(NGF)、brain derived neurotrophic factor(BDNF)、Glial cell derived neurotrophic factor (GDNF)、Ciliary neurotrophic factor (CNTF)、NT-3、NT-4、NT-5、Neurturin、Bcl2、Bcl-xL、Bcl-w、Hiap-1、Hiap-2、Superoxide dismutase 1、HGF(hepatocyte growth factor)、XIAP(X-linked inhibitor of apoptosis protein)等も挙げられる。
外来遺伝子は欠損変異体RNAの欠損部分に組み換えることが好ましい。組み換えは公知の方法により行うことができ、例えば前記PV1型強毒Mahoney株OM1(配列番号1)の746〜3817番目の塩基配列を欠損した欠損変異体RNAの場合には、PCR反応と制限酵素により、KpnI(pOM1:nt66)とBstPI(pOM1:nt3925)の位置に組み換えることができる。
本発明のポリオウイルス欠損変異RNAは、ポリオウイルスゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有し、キャプシド構造タンパク質にパッケージされて、欠陥干渉粒子を産生可能であること以外は特に制限はない。このようなポリオウイルス欠損変異RNAとしては、前述の欠陥干渉粒子のポリオウイルス欠損変異RNAとして説明したものが挙げられる。例えばPV1型強毒Mahoney株(配列番号1)において、746〜3817番目の塩基配列を欠損させたRNA、または、該欠損RNAにおいて1若しくは数個の塩基配列が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるポリオウイルスゲノムRNAが挙げられる。前記ポリオウイルスゲノムRNAは、本発明の欠陥干渉粒子の製造に使用することができる。
本発明のcDNAは、本発明のポリオウイルス欠損変異RNAおよび該ポリオウイルス欠損変異RNAに相補的なRNAの少なくともいずれかを転写可能であること以外は特に制限はない。具体的には、後述のpOM1ΔP1Δ2A等が挙げられる。また、本発明のプラスミドは、前記本発明のcDNAを含むこと以外は特に制限はない。前記cDNAおよび前記プラスミドは本発明の欠陥干渉粒子の製造に使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
(細胞)
ヒト子宮頚癌由来HeLa単層培養細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞由来(African green monkey kidney(AGMK))単層培養細胞は、5%ウシ新生児血清(NCS(MITSUBISHI KASEI))、0.11%炭酸水素ナトリウム(和光純薬)、0.1mg/ml硫酸カナマイシン(明治製菓)を含むDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM(GIBCO BRL))培地を用い、37℃、5%CO2の条件下、炭酸ガス培養器内で培養した。
HeLa浮遊培養細胞はRPMI1640(GIBCO BRL)に、3%NCS、0.22%炭酸水素ナトリウム、0.1mg/ml硫酸カナマイシンを加えた培地を用いて、スピナーフラスコで37℃培養器内で培養した。
(ウイルス)
増殖型ポリオウイルス(PV)としては、PV1型強毒Mahoney株の感染性cDNAクローンであるpOM1(Shiroki et al., 1995)由来ウイルスを使用した(配列番号1及び2を参照)。
PV構造タンパク質(P1)を発現する組換えウイルスとしては、組換えワクシニアウイルス(VV-P1(C.D.Morrow et al.,1991))を使用した。
(ウイルス液の調製)
PVについて
10cmプラスティックディッシュあたり4×106細胞のAGMK単層培養細胞を使用した。無血清DMEMで洗った後、multiplicity of infection(m.o.i.)が10となるように、無血清DMEMで希釈したPV液を1ml加え、全体へ行き渡らせた。37℃、5%CO2炭酸ガス培養器で30分間加温した後、ウイルス液を除いた。DMEM培地5mlを加え、37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ、2日間加温した。-80℃と室温で凍結融解を3回繰り返し、4℃、3000rpmで10分間遠心し、上清を回収した。
PVを増やす場合には、プラスティックボトル(175cm2)あたり1×107細胞のAGMK単層培養細胞を用意し、無血清DMEMで洗った後、無血清DMEMでm.o.i.が10となるように希釈した上記ウイルス液10mlを加え、全体に行き渡らせた。室温で20分間静置し、この間5分ごとに溶液を細胞全体に行き渡らせ、次いで37℃、5%CO2炭酸ガス培養器で20分間加温後20mlのDMEM培地を加え、37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ、2日間加温した。-80℃と室温で凍結融解を3回繰り返し、4℃、3000rpmで10分間遠心し、上清を回収した。
VV-P1について
プラスチックボトル(175cm2)あたり2×107細胞のHeLa単層培養細胞を用意し、無血清DMEMで洗った後、無血清DMEMでm.o.i.が1となるように希釈したVV-P1ウイルス液7.5mlを加え、全体に行き渡らせた。室温で1時間静置し、この間5分ごとに溶液を細胞全体に行き渡らせ、7.5mlのDMEM培地を加え、37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ、2日間加温した。-80℃と室温で凍結融解を3回繰り返し、15秒超音波破砕15秒冷却を20回繰り返し超音波処理した。次いで、4℃、3000rpmで10分間遠心し、上清を回収しVV-P1液とした。
(ポリオウイルスの大量培養とその精製)
4×105細胞/mlのHeLa浮遊培養細胞、3Lを4℃、1000rpm、5分間遠心し沈殿に無血清RPMI(RPMI1640(GIBCO BRL)に、0.22%炭酸水素ナトリウム、0.1mg/ml硫酸カナマイシンを加えた培地)を150ml加え浮遊させた。これにPVをm.o.i.10で感染させ、室温で20分間、次いで37℃温浴で20分間ゆっくり撹拌した。これに、滅菌したスターラーバーと10%NCS RPMI(RPMI1640(GIBCO BRL)に、10%NCS、0.22%炭酸水素ナトリウム、0.1mg/ml硫酸カナマイシンを加えた培地)を300mlまで加え、37℃温浴で6時間40分間撹拌しつつ加温した。この時、培養器の蓋は少しゆるめておいた。加温後、4℃、1000rpmで5分間遠心し細胞を1回無血清RPMIで洗った。これに、RSB+Mg2+(10mM NaCl、10mM Tris-HCl(pH7.35)、1.5mM MgCl2)を10ml加え、氷上に10分間静置し、氷上でTight dounce homogenizerを用いて上下に10往復して細胞を破砕し、細胞が破砕されたかどうか顕微鏡で確認した。細胞が壊れたら4℃、3000rpmで10分間遠心し上清を回収した(上清1)。残りの沈殿に、5ml RSB+Mg2+をさらに加え、再び遠心し上清を回収した(上清2)。上清1と上清2を合わせたものをTYPE45の遠心管へ移し全量で15mlにし、終濃度0.1M NaCl、5mM EDTA、1%Sodium Dodecyl Sulfate(SDS)になるように添加し室温で溶液が透明になるまで放置した。この溶液を24℃、35krpmで2.5時間遠心し、素早く上清を捨て1ml 0.1Mリン酸バッファー(5.2g NaH2PO4・2H2O、23.8g Na2HPO4・12H2Oを1Lの超純水へ溶かして2N NaOHでpH7.35に合わせたもの)を加え、沈殿を溶かし4℃で一晩静置した。このウイルス液を平衡化済みのDEAE-Sepharose CL-4B(Amersham Biosciences)充填カラム(Econo-Pac Disposable Chromatography columns No.732-1010(Bio-Rad))にのせ、1mlずつ回収し10倍希釈して吸光度260nmおよび280nmを測定した。測定値よりウイルスが存在しているピークをまとめ、TYPE70.1Tiローターで15℃、35krpmで2.5時間遠心した。上清を素早く捨て、ウイルス粒子を2ml 0.1Mリン酸バッファー(pH7.35)に溶かし込んだ。このウイルス液に等量のTE(Tris-EDTA、10mM Tris(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0))飽和フェノールを加えウイルスタンパク質を変性させ、次いでフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール抽出、クロロホルム・イソアミルアルコール抽出したものをイソプロパノール沈殿し、PV粒子由来のPV RNAを得た。
(ウイルスの力価測定 プラークアッセイ法)
PVについて
無血清DMEM培地でウイルス液の10倍希釈系列をつくった。感染時に10〜103PFU/mlとなる三段階の希釈ウイルス液を用いた。6cmプラスティックディッシュあたり8〜8.5×105個のAGMK単層培養細胞を用意し、無血清DMEM培地で洗った後、ウイルス液をそれぞれ1ml加え、全体に行き渡らせた。室温で20分間静置し、この間5分ごとに溶液を細胞全体に行き渡らせ、次いで37℃、5%CO2炭酸ガス培養器で30分間加温した。ウイルス液を除き、5mlの寒天入りDMEM培地を加え、しばらく室温に静置し、寒天が固まり次第37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ、2日間加温した。プラークが形成されたら、10%HCHOを3〜5ml加え、室温で一晩放置した。寒天を剥離し軽く水洗い後、1%crystal violetを適量加えて細胞を染色し、軽く水洗い後プラークを計数した。PV大量調製後の力価は、平均的には3.5×109PFU/ml(PFU:プラークフォーミングユニット)程度であった。また、大量調製時でない場合にも10PFU/mlのオーダーの力価があった。
VV-P1 について
無血清DMEM培地でウイルス液の10倍希釈系列をつくった。感染時に10〜103 PFU /mlとなる三段階の希釈ウイルス液を用いた。6cmプラスティックディッシュあたり8〜8.5×105個のAGMK単層培養細胞を用意し、無血清DMEM培地で洗った後、ウイルス液をそれぞれ1ml加え、全体に行き渡らせた。室温で1時間静置し、この間5分ごとに溶液を細胞全体に行き渡らせ、ウイルス液を除き、5mlの寒天入りDMEM培地を加え、しばらく室温に静置し、寒天が固まり次第37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ、4日間加温した。プラークが形成されたら、10%HCHOを3〜5ml加え、室温で一晩放置した。寒天を剥離し軽く水洗い後、1%crystal violetを適量加えて細胞を染色し、軽く水洗い後プラークを計数した。この場合も10PFU/mlのオーダーの力価があった。
(RNAトランスフェクション)
6cmプラスティックディッシュあたり8〜8.5×105細胞のAGMK単層培養細胞を使用して、DEAE-dextran法(Diethyl aminoethyl-dextran法(Van Der Werf et al., 1986. Synthesis of infectious poliovirus RNA by purified T7 RNA polymerase. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2330-2334.)で前記合成RNAを1〜3μg/ディッシュでトランスフェクションした。
RNAを1×HBSS(1×HEPES-baffered salin、全て細胞培養用(和光純薬)、10.5mM HEPES、68.5mM NaCl、2.5mM KCl、0.4mM NaH2PO4、0.05% Dextroseを2M NaOHでpH7.05に合わせたもの)に溶かしたもの100μlと1mg/mlDEAE-dextranとなるように1×HBSSに溶かしたもの100μlを混合し、氷上に15分置いた。細胞をPBS(-)(Phosphate-buffered saline、137mM NaCl、8.1mM Na2HPO4、2.68mM KCl、1.47mM KH2PO4)で一度洗浄した。その後、このRNAとDEAE-dextranの混合液を細胞に加え、37℃、30分間、5%CO2炭酸ガス培養器で加温した。この間5分ごとに溶液を細胞全体に行き渡らせた。RNAとDEAE-dextran混合液を取り除いてから無血清DMEM培地(0.11%炭酸水素ナトリウム、0.1mg/ml硫酸カナマイシンを含むDulbecco’s Modified Eagle Medium)で細胞を2回洗い、5mlのDMEM培地を加え、37℃、5%CO2炭酸ガス培養器で2〜3日間加温した。全ての細胞が細胞変性効果を示した後、-80℃と室温で凍結融解を3回繰り返し、4℃、3000rpmで10分間遠心した上清をウイルス液とした。
トランスフェクション効率を調べる場合は、RNAとDEAE-dextranの混合液を取り除いてから無血清DMEM培地で細胞を2回洗い終わった後、5mlの寒天入りDMEM培地(DMEM培地に1%Agar Noble(GIFCO Laboratories)を含む)を加え、しばらく室温に静置し、寒天が固まり次第37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ、2日間加温した。プラークが形成されたら、10%HCHO(一級(和光純薬)、37%ホルムアルデヒド液を4倍に希釈したもの)を3〜5ml加え、室温で一晩放置した。寒天を剥離し軽く水洗い後、1%crystal violet(特級(和光純薬)、80%エタノール(和光純薬)溶液に溶かしたもの)を適量加えて細胞を染色し、軽く水洗い後プラークを計数した。インビトロ合成OMRNAおよびPVビリオンより抽出したRNAについて、それぞれ10-3μg、10-4μg、10-5μgRNAを3.2×106cell/6cmdishでDEAE-dextran法によりトランスフェクションした結果、インビトロ合成OMRNAは約1×105PFU/μg、PV粒子由来RNAは約1×106PFU/μgであった。
(実施例1)
実験1:
ポリオウイルス欠損変異体プラスミドの構築およびそのRNAの合成は以下のように行った。なお、全てのクローニング酵素、反応バッファーはNew England BiolabsかTakara Ltd. Co.(Japan)のものを添付マニュアルに従って使用した。
(ポリオウイルス欠損変異体プラスミドの調製)
6種類のPV欠損変異体プラスミド、pOM1ΔP1、pOM1ΔP1Δ2A、pOM1Δ0.8、pOM1Δ1.8、pOM1Δ1.8-2A-HA、pOM1Δ0.8-2A-HAを以下の手順で作製した。図4にポリオウイルス欠損変異体の構造を表した。上段は、ウイルスゲノムのRNAとそのRNAがコードするタンパク質を示し、下段は、野生型(OM1)および作成した欠損変異体ウイルスゲノムを示す。また、図5にポリオウイルス欠損変異体の作成に使用したプライマーを表した。上段にウイルスゲノムのRNAとそのRNAがコードするタンパク質を示し、PV欠損変異体作製に使用したプライマーの位置をゲノム上に示した。
pOM1ΔP1はPCR(Polymerase Chain Reaction)によって作製した。なお、使用したプライマーの配列は表1に列挙した。ポリオウイルス(PV)1型強毒Mahoney株のcDNAクローンであるpOM1を鋳型とし、センスプライマー01とアンチセンスプライマー02またはセンスプライマー03とアンチセンスプライマー04をそれぞれ組にして使用しPCRを行った。次に、この両PCR反応から得られたPCR産物を用いて、2つのPCR断片を鋳型にセンスプライマー01とアンチセンスプライマー04を使いさらにPCRを行った。PCR断片はKpnI制限酵素部位(pOM1:nt66、3660)で切り出し、同じ酵素で切断したpOM1へ挿入した。
pOM1ΔP1Δ2Aも上記と同様に、センスプライマー01とアンチセンスプライマー05またはセンスプライマー06とアンチセンスプライマー07をそれぞれ組にしてPCRを行い、次いでセンスプライマー01とアンチセンスプライマー07を使いPCRにより作製した。
pOM1Δ1.8は、pOM1とpOM1Δ1.8-2A-HAをBstPI(pOM1:nt3235、3925)で酵素切断し、両断片を組み換えて作製した。
pOM1Δ0.8は、pOM1とpBluescriptII KS(+)-del ma2をNruI制限酵素部位(pOM:nt1172)とSnaBI制限酵素部位(pOM:nt2954)で酵素切断し、両断片を組み換えて作製した。
ここで、pBluescriptII KS(+)-del ma2は、ポリオウイルス(PV)1型強毒Mahoney株のcDNAクローンであるpOM1の1662塩基から2479塩基の間を除去したBanIIフラグメントをpBluescriptII KS(+)にサブクローニングして作製した。
即ち、pOMを鋳型として、センスプライマー12(N-BanIIs primer)とアンチセンスプライマー13(INS-Dias primer)または、センスプライマー14(INS-Dis primer)とアンチセンスプライマー15(C-BanIIas primer)を使用して、PCRを行った。PCRにより得られた二つのPCR産物のみを用いて一段階目のPCRを行った後、センスプライマー12(N-BanIIs primer)とアンチセンスプライマー15(C-BanIIas primer)を反応液に加えて、二段階目のPCRを行い、目的とするPV1型強毒Mahoney株の1662塩基から2479塩基の間を除去したpOMのBanIIフラグメントを得た。このPCR産物をpBluescriptII KS(+)(Stratageneより購入)のNotIとSalIサイトに導入してクローニングを行い、塩基配列を確認した。これがpBluescriptII KS(+)-del ma2である。
pOM1-2A-HAの作製については、まず、センスプライマー08とアンチセンスプライマー09またはセンスプライマー10とアンチセンスプライマー11を使用して、pOMを鋳型としてPCRを行った。両PCR反応から得られたPCR産物を用いてさらにPCRを行うことにより、pOM1の2Aコード領域の3’末端にHAタグと3C切断部位を導入したBstPI断片を得た。次に、この断片をSacIとSalIで切断したものをpBluescriptIIKS(+)(Stratageneより購入)のSacIとSalI部位に導入してクローニングを行った。最後に、pOM1の二つのBstPI部位の間のフラグメントを除去し、ここにクローニングした前記BstPI断片を導入してpOM1-2A-HAを得た。
pOM1Δ0.8-2A-HA も、pOM1Δ0.8と同様に、pOM1-2A-HAとpBluescriptII KS(+)-del ma2をNruI制限酵素部位(pOM:nt1172)とSnaBI制限酵素部位(pOM:nt2954)で酵素切断し作製した。
pOM1Δ1.8-2A-HAは、pOM1-2A-HAをNruI制限酵素部位(pOM:nt1172)とSnaBI制限酵素部位(pOM:nt2954)で酵素切断し、自己ライゲーションして作製した。
(塩基配列の決定)
PCR産物に由来する配列については、Applied Biosystems Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Ver.3)(Applied Biosystems)を用いて、キットのプロトコールに従いダイデオキシ法の反応を行った後、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)により塩基配列決定を行った。
(ウイルスcDNAからのRNA合成)
前記PV欠損変異体プラスミドおよびpOM1をPvuI制限酵素部位(pOM1:nt12164)で切断し、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1)抽出、クロロホルム・イソアミルアルコール(クロロホルム:イソアミルアルコール=24:1)抽出したものをエタノール沈殿し、各々RNA合成の鋳型とした。RNA合成は、T7Ф10 promoterを用いてAmpli ScriptTM T7 High Yield Transcription Kit(EPICENTRE)で行った。方法はキットのプロトコールに従いRNA合成を行った。
実験2
(Slot blot法による解析)
実験1により作製したpOM1ΔP1、pOM1ΔP1Δ2A、pOM1Δ0.8、pOM1Δ1.8 を、HeLa 単層培養細胞の6穴プレートへ DEAE-dextran法でこのRNAを1穴あたり2μgずつRNAトランスフェクションした。1穴あたり4.4×105細胞でまいて約16時間経過したものを培養細胞としてトランスフェクションに使用し、前記の方法で行った。
トランスフェクション2および8時間後にトータルRNAをISOGEN(日本ジーン)を用いて、添付マニュアルに従って抽出した。1穴あたり1mlのISOGENを加え室温で5分間、次いでクロロホルム200μlを加え15秒間、激しく撹拌した。室温で2分間静置した後、4℃、12k×gで15分間遠心し上清を回収した。この上清に500μlイソプロパノールを加え室温で5分間静置し、イソプロパノール沈殿を行った。
得られたRNA沈殿を40μlの超純水に溶かしたものを全量とし、4分の1の10μlのRNA溶液をBio-Dot SF装置(BIO-RAD)を使って、ナイロンフィルター Hybond-N(Amersham Pharmacia Biotech)に添付プロトコールに従いブッロティングし、UV CROSSLINKER(UV Stratalinker1800 STRATAGENE)を用いてAUTOCROSSLINK MODEで固定した。RNAの変性には、30μlのRNA denaturation溶液(660μl formamide、210μl 37%formaldehyde、130μl 10×MOPS(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid)buffer(200mM MOPS(pH7.0)、50mM sodium acetate、10mM EDTA)))を加え65℃で5分間加熱変性し氷上で急冷した後、等量の20×SSC(333mM NaCl、333mM C6H5O7Na3・2H2O(和光純薬))を加えサンプル溶液とし、アスピレーターにより5分間かけて徐々に吸引しフィルターにブロッティングした。AlkPhos Direct(Amersham Pharmacia Biotech)の添付プロトコールに従って、ラベルしたPVのIRES(Internal ribosome entry site)領域(pOM1:nt1-742)に相当するDNAプローブと、内部標準としてハウスキーピングRNAであるGAPDH(Glycerol-3-phosphate dehydrogenase)mRNAのexon7領域に相当するDNAプローブ(Yagagiya and Nomoto, unpublished.)を作製した。
両プローブを用い、上記フィルターのハイブリダイゼーションを下記の通りに行った。フィルターをハイブリダイゼーションバッファー(0.5M NaCl、4%(w/v)Blocking reagent(キット添付品))中で55℃、2時間加熱してプレハイブリダイゼーションし、これに200ngのプローブを加え、さらに55℃、16時間加熱してハイブリダイゼーションを行った。その後フィルターを一次洗浄バッファー(2M Urea、0.1% SDS、50mMリン酸バッファー(pH7.0)、150mM NaCl、10mM MgCl2、0.2% Blocking reagent)で55℃、10分間2回、次いで二次洗浄バッファー(50mM Tris-HCl base、100mM NaCl、2mM MgCl2)を用い室温で、5分間2回洗浄した。このフィルターをCDP-Star(Amersham Pharmacia Biotech)を用いた化学発光によりX線フィルムHyperfilm MP(Amersham Biosciences)に露光し欠損変異体の複製したRNAを検出した。フィルムの現像は、自動現像機SRX-101(Konica)で行った。結果を図6の中央にRNA複製活性として示した。
2A領域を欠損させたRNA(pOM1ΔP1Δ2Aから合成したRNA)についても、2A領域を有するRNAに比べてやや活性は落ちるものの、RNA複製活性が認められた。なお、内部標準のGAPDHに対するプローブについては、いずれの場合も同程度にバンドが検出されたことから、細胞からのRNA回収等の実験系自体は問題がないことが確認された(結果は図示せず)。
(実施例2)
(欠陥干渉粒子作製)
PV欠損変異体RNAから欠陥干渉(Defective interfering ; DI)粒子が生成するために必要なPV構造タンパク質を供給するヘルパーウイルスとしてVV-P1を使用した。HeLa単層培養細胞にm.o.i.5でVV-P1を感染させた。感染二時間後、前記実施例1実験1で得られた欠損変異体cDNAから合成したRNAをDEAE-dextran法で実施例1実験1と同様にRNAトランスフェクションした。この細胞を37℃、24時間、5%CO2炭酸ガス培養器で加温し、-80℃と室温で凍結融解を3回繰り返した。次いで4℃、14k×g、20分で遠心しVV-P1と細胞上清を分離し、細胞上清(Pass.0)を回収した。この上清を-80℃に保存した。
細胞上清中に存在しているDI粒子を増幅させるために、上記と同様にVV-P1感染6cmプラスティックディッシュHeLa単層培養細胞(1ディッシュあたり1.6×106細胞でまいて約16時間経過したもの)に、Pass.0を2ml添加し、37℃、16時間、5%CO2炭酸ガス培養器で加温し同様に細胞上清(Pass.1)を回収した。
さらにHeLa単層培養細胞を10cmプラスチックディッシュ(1ディッシュあたり2.5×106でまいて約16時間経過したもの)でPass.2、Pass.2の2倍量の10cmプラスチックディッシュでPass.3を行い、必要な量だけ増幅させ細胞上清を回収し-80℃で保存した。図7に組換えワクシニアウイルスによるポリオウイルス欠損変異RNAゲノムの欠陥干渉粒子の形成を模式的に表した。
(欠陥干渉粒子感染細胞の免疫組織染色)
欠損変異体RNAのDI粒子形成が行われているかどうかの指標として、HAタグを発現する欠損変異体RNA(pOM1Δ0.8-2A-HAから合成したRNA)を細胞にトランスフェクション後、粒子形成のために3代継代した細胞上清を感染させた細胞を抗HA抗体を用いて免疫染色し、DI粒子の増幅が行われているかどうか確認した。8穴細胞培養用カルチャースライド(8ウェル細胞培養用カルチャースライド、Falcon)1穴あたり2×105細胞のHeLa単層培養細胞を用意し、回収した細胞上清Pass.3を添加し37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ5時間加温した。添加5時間後に、PBS(-)で細胞を2回洗い2%PFA (paraformaldehyde, powder (nacalai tesque))を含むPBS(-)を用いて、室温10分間で細胞を固定した。次いで、PBS(-)で細胞を室温で5分間4回洗い、100mM glycineを含むPBS(-)を用いて室温で20分間、細胞の透過性を上げるために0.5%Tritonを含むPBS(-)を用いて氷上で5分間、細胞を処理した。細胞をPBS(-)を用いて2回洗浄後、ブロッキング溶液(10%ヤギ血清になるようにPBS(-)に溶かしたもの)を用いて室温で30分間ブロッキングした。100μg/ml Anti HA high affinity monoclonal antibody (Roche)抗体液を300分の1にAntibody dilution buffer(0.1% Bovine serum albumin、0.02%アジ化ナトリウムをPBS(-)に溶かしたもの)で希釈した抗体希釈液を細胞に加え、37℃、1時間加温した。細胞をPBS(-)を用いて室温で5分間4回洗浄後、2mg/ml Alexa Fluor 488 goat anti-rat IgG(Molecular Probes)抗体液を300分の1にAntibody dilution bufferで希釈した抗体希釈液を細胞に加え、室温で1.5時間反応させた。細胞をPBS(-)を用いて室温で5分間4回洗浄後、染色が終了した細胞は80%(v/v)グリセロール液でマウントして、共焦点レーザー顕微鏡Axiovert 100M(ZEISS)を用いて、HA発現欠損変異体のDI粒子由来のHA融合タンパク質を検出した。免疫組織染色の結果を表す写真を図8に示した。
これにより、HA発現欠損変異体については粒子形成され、継代されていることが示され、粒子形成および継代の実験系は正常に行われていることが確認された。
(欠陥干渉粒子の精製)
2.5で得られた細胞上清に終濃度1%になるよう10%SDSを加え、室温で溶液が透明になるまで放置した。TYPE45ローターで24℃、35krpmで2.5時間遠心し、すばやく上清を捨てた。沈殿を10ml 0.1Mリン酸バッファー(pH7.35)で洗い、再びTYPE45ローターで15℃、35krpmで2.5時間遠心し、すばやく上清を捨てた。沈殿に1ml無血清DMEM培地を加え、0.22μmフィルターで濾過滅菌した後、精製細胞上清液を-80℃で保存した。
この精製細胞上清液中に、欠損変異体のDI粒子が含まれているかどうかを検討した。無血清DMEM培地で精製細胞上清液の10倍希釈系列をつくり、HeLa単層培養細胞の6穴プレート(1穴あたり4.4×105細胞でまいて約16時間経過したもの)へ添加した。室温で20分間静置し、この間5分ごとに溶液を細胞全体に行き渡らせ、次いで37℃、5%CO2炭酸ガス培養器で30分間加温した。細胞上清を除き、2mlのDMEM培地を加え、37℃、5%CO2炭酸ガス培養器に入れ加温した。
精製細胞上清液添加2および8時間後にトータルRNAを抽出し、実施例1実験2と同様にSlot Blot法を行い、PV RNAを検出した。結果を図6の右に示す。このことからも、2A領域を欠損したゲノムRNAであっても、DI粒子を形成できることが明らかになった。
(実施例3)
新たに、P1、2A領域と共に2B領域を欠損した欠損変異RNA(OM1ΔP1Δ2AΔ2B)、前記P1領域、又は、前記P1領域及び2A領域を欠損した欠損変異RNAに外来の導入遺伝子EGFP−N1を組換えた欠損変異RNA(OM1_EGFP-N1ΔP1及びOM1_EGFP-N1ΔP1Δ2A)を合成し、該RNAを含む欠損干渉粒子を作成した(図9及び図10)。図9の矢印が、本実施例で新たに構築したコンストラクトである。
(欠損変異RNAの合成とRNA複製活性の評価)
ポリオウイルス欠損変異体プラスミドの調製について、以下のように作成したことを除いて、実施例1と同様に欠損変異RNA合成を行い、RNA複製活性を評価した。また、実施例1で作製した欠損変異RNAについても再度評価した。
全てのクローニング酵素及び反応バッファーは、New England BiolabsまたはTakara Ltd. Co.(Japan)の製品を添付マニュアルに従って使用した。
(pOM1ΔP1Δ2AΔ2B(欠損長3360塩基)の作製)
pOM1ΔP1Δ2AΔ2BはPCR(Polymerase Chain Reaction)によって作製した。使用したプライマーは表2に記載した。pOM1を鋳型とし、センスプライマー01とアンチセンスプライマー02またはセンスプライマー03とアンチセンスプライマー04をそれぞれ組にして使用し、PCRを行った。次に、この両PCR反応から得られたPCR産物を用いて、2つのPCR断片を鋳型にセンスプライマー01とアンチセンスプライマー04を使いさらにPCRを行った。PCR断片はKpnI制限酵素部位(pOM1:nt66、3064、3660)とBglII(pOM1:nt5601)で切り出し、同じ酵素で切断したpOM1へ挿入した。なお、表2中、下線及びイタリックはプライマー中の制限酵素部位を表し、二重下線はOMのATGを表す。
(pOM1_EGFP-N1ΔP1(欠損長1899塩基)の作製)
pOM1_EGFP-N1ΔP1はPCR(Polymerase Chain Reaction)によって作製した。使用したプライマーは表3にあるものを使用した。pOM1を鋳型とし、センスプライマー01とアンチセンスプライマー02(PCR産物をフラグメント1とする)またはセンスプライマー05とアンチセンスプライマー06(PCR産物をフラグメント2とする)、pEGFP-N1(BD Bioscience社製)を鋳型とし、センスプライマー03とアンチセンスプライマー04(PCR産物をフラグメント3とする)をそれぞれ組にして使用し、PCRを行った。次に、このPCR反応から得られたPCR産物フラグメント1をKpnIとXhoI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったpBluescriptIISK(+)へ挿入した。次に、このプラスミドをMunIとSmaI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったフラグメント2を挿入した。次に、このプラスミドをSmaIとSpeI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったフラグメント3を挿入した。次に、このプラスミドをKpnI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったpOM1と組み換えた。
(pOM1_EGFP-N1ΔP1Δ2A(欠損長2346塩基)の作製)
pOM_EGFP-N1ΔP1Δ2AはPCR(Polymerase Chain Reaction)によって作製した。使用したプライマーは表3にあるものを使用した。pOM1を鋳型とし、センスプライマー01とアンチセンスプライマー02(PCR産物をフラグメント1とする)またはセンスプライマー07とアンチセンスプライマー06(PCR産物をフラグメント2とする)、pEGFP-N1を鋳型とし、センスプライマー03とアンチセンスプライマー04(PCR産物をフラグメント3とする)をそれぞれ組にして使用し、PCRを行った。次に、このPCR反応から得られたPCR産物フラグメント1をKpnIとXhoI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったpBluescriptIIKS(+)へ挿入した。次に、このプラスミドをMunIとSmaI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったフラグメント2を挿入した。次に、このプラスミドをSmaIとSpeI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったフラグメント3を挿入した。次に、このプラスミドをKpnIとSpeI制限酵素部位で切り出し、同じ酵素で切ったpOM1と組み換えた。なお、表3中、下線及びイタリックはプライマー中の制限酵素部位を表し、二重下線はOMのATGを表す。
RNA複製活性の評価結果を図11及び図12に表す。2Aに加えて2B領域を欠損させたRNA(OM1ΔP1Δ2AΔ2B)については、RNA複製活性が認められなかった。このことは、2B領域を全部削除すると、RNA複製活性がなくなり、ベクターとして利用できなくなることを示す。それに対して、P1領域のみ削除して外来の導入遺伝子を組換えたOM1_EGFP-N1ΔP1はRNA複製活性があり、P1領域と共に2A領域を削除して外来の導入遺伝子を組換えたOM1_EGFP-N1ΔP1Δ2Aも、OM1_EGFP-N1ΔP1に比べてやや活性は落ちるものの、RNA複製活性が認められた。なお、内部標準として使用したGAPDHに対するプローブについては、いずれの場合も同程度にバンドが検出されたことから、細胞からのRNA回収等の実験系自体は問題がないことが確認された。
(DI粒子作製とDI粒子感染細胞のGFP発現)
次に、OM1_EGFP-N1ΔP1、OM1_EGFP-N1ΔP1Δ2AのDI粒子を作製した。DI粒子は、前記欠損変異RNAを用いて、実施例2と同様の方法で作製した。
次に、DI粒子感染細胞のGFP発現を調べた。8 well chamberに実験当日60% confluentになるようにHeLa細胞を蒔いた。DI粒子のHeLa細胞への感染は実施例2と同じ方法を用いた。感染24時間後にGFPの発現を観察した。蛍光顕微鏡LEICA DMIRE2及びCCDカメラLEICA DFC 350 FXで撮影した。位相差レンズ(対物レンズ)倍率x20を用いた。
その結果、OM1_EGFP-N1ΔP1、OM1_EGFP-N1ΔP1Δ2AはGFPを発現することが判明した(図13)
。なお、図13の左側のBFは、透過光像であり、右側のGFPは、BFと同一視野を水銀ランプ光源によりGFP観察用のフィルターを用いて取得したGFP蛍光像である。このことから、本発明の2A領域の少なくとも一部を欠損した欠損変異RNAを有する欠陥干渉粒子は、ウイルスベクターとして外来の遺伝子を導入することができることが分かった。
本発明の欠陥干渉粒子は、外来遺伝子を導入して培養細胞、実験動物またはヒトに感染させることにより、宿主細胞において該遺伝子を発現させるウイルスベクターとして利用できる。また、本発明のポリオウイルス欠損変異RNA、cDNAおよびプラスミドは該欠陥干渉粒子の製造に利用できる。
図1は、ヒトにおけるポリオウイルス体内伝播経路を表す。 図2Aは、ポリオウイルスRNAゲノムおよびそのRNAがコードするタンパク質を表し、図2Bは、弱毒株における点突然変異と該突然変異のサル神経毒性への影響を表す。 図3は、ポリオウイルスRNAゲノムの基本構造とウイルスタンパク質の切断を表す。 図4はポリオウイルス欠損変異RNAの構造を表す。 図5は、ポリオウイルス欠損変異RNA作製に使用したプライマーを表す。 図6は、ポリオウイルス欠損変異RNAのRNA複製活性と粒子形成活性を表す。 図7は、組換えワクシニアウイルスによるポリオウイルス欠損変異RNAゲノムの欠陥干渉粒子形成を表す。 図8は、欠陥干渉粒子感染細胞の免疫組織染色を表す。 図9は、ポリオウイルス欠損変異RNAの構造を表す。 図10は、新たに作製したコンストラクトを表す。 図11は、ポリオウイルス欠損変異RNAの複製活性を表す。 図12は、ポリオウイルス欠損変異RNAの複製活性を表す。 図13は、DI粒子感染細胞のGFP発現を表す。

Claims (10)

  1. ゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有するポリオウイルス欠損変異RNAを有し、該ゲノムRNAの構造遺伝子に由来しないキャプシド構造タンパク質によりパッケージされてウイルス粒子となることを特徴とする欠陥干渉粒子。
  2. ポリオウイルス欠損変異RNAが、ポリオウイルス1型強毒株、ポリオウイルス2型強毒株、ポリオウイルス3型強毒株、ポリオウイルス1型弱毒株、ポリオウイルス2型弱毒株、および、ポリオウイルス3型弱毒株のいずれかのRNAの欠損変異体である請求項1に記載の欠陥干渉粒子。
  3. キャプシド構造タンパク質が、プラスミドのコトランスフェクション、および、ヘルパーウイルスの重感染のいずれかにより供給された請求項1および2のいずれかに記載の欠陥干渉粒子。
  4. ヘルパーウイルスが、ポリオウイルス、ワクシニアウイルス、ヒト水疱性口内炎ウイルス(VSV)-Gシュードレンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、センダイウイルスおよびバキュロウイルスから選択されるいずれかである請求項3に記載の欠陥干渉粒子。
  5. 細胞に感染可能である請求項1から4のいずれかに記載の欠陥干渉粒子。
  6. ウイルスベクターである請求項1から5のいずれかに記載の欠陥干渉粒子。
  7. ポリオウイルスゲノムRNAの2A領域の少なくとも一部と構造遺伝子領域の少なくとも一部に欠損を含む変異を有し、キャプシド構造タンパク質にパッケージされて、欠陥干渉粒子を産生可能であることを特徴とするポリオウイルス欠損変異RNA。
  8. 配列番号1のポリオウイルスRNAにおいて第746番目から第3817番目までの塩基配列を欠損させたRNA、および、
    該欠損RNAの塩基配列において1若しくは数個の塩基配列が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるRNAのいずれかである請求項7に記載のポリオウイルス欠損変異RNA。
  9. 請求項7および8のいずれかに記載のポリオウイルス欠損変異RNAおよび該ポリオウイルス欠損変異RNAに相補的なRNAの少なくともいずれかを転写可能なことを特徴とするcDNA。
  10. 請求項9に記載のcDNAを含むことを特徴とするプラスミド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2013095119A1 (en) * 2011-12-14 2013-06-27 De Staat Der Nederlanden, Vert. Door De Minister Van Vws Identification of poliovirus strains
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