JP2005222860A - 電気光学装置の製造方法、電気光学装置、及び電子機器 - Google Patents

電気光学装置の製造方法、電気光学装置、及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造プロセス中に起こる発光層の劣化を防止することができる電気光学装置の製造方法及び電気光学装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】 基体200上に、第1電極23と、第2電極50と、第1電極23と第2電極50との間に挟持される電気光学層110を有する電気光学装置1の製造方法において、第2電極50を覆う発光材料保護層65を真空蒸着法により形成する工程と、発光材料保護層65を覆う電極保護層55をプラズマ成膜法により形成する工程とを有する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、及び電子機器に関するものである。
電気光学装置の分野では、酸素や水分等に対する耐久性向上が課題となっている。例えば、上記電気光学装置の一例である有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)表示装置では、発光層(電気光学層)を構成する電気光学材料(有機EL材料,正孔注入材料,電子注入材料等)の酸素や水分等による劣化や、陰極の酸素や水分等による抵抗値上昇等により、ダークスポットと呼ばれる非発光領域が発生してしまい、発光素子としての寿命が短くなるという課題がある。
このような課題を解決するために、表示装置の基板にガラスや金属の蓋を取り付けて水分等を封止する方法が採られてきた。そして、近年では、表示装置の大型化及び軽薄化に対応するために、発光素子上に透明でガスバリア性に優れた珪素窒化物、珪素酸化物、金属酸化物、セラミックス等の陰極保護層やガスバリア層を高密度プラズマ成膜法(例えば、イオンプレーティング、ECRプラズマスパッタ、ECRプラズマCVD、表面波プラズマCVD、ICP−CVD等)により成膜させる薄膜封止と呼ばれる技術が用いられている。
特に、陰極側から発光光を取り出すトップエミッション構造を用いる場合、金属からなる陰極材料だけでは透明性が不足するため極力薄くしなければならず、陰極抵抗が上昇してしまう。そこで、ITO(インジウム錫酸化物)などの金属酸化物からなる透明かつ導電性を付与できる陰極保護層を陰極の上に形成することで、陰極の抵抗を下げることができる。これらの材料は、有機発光層に影響を与えないよう低温下で低抵抗かつガスバリア性に優れた緻密な層を形成する必要があり、高密度プラズマ成膜法により成膜する必要がある。
特開2001−284041号公報
しかしながら、陰極保護層やガスバリア層を高密度プラズマ成膜法などのプラズマ成膜法により形成すると、発生したプラズマ中のイオン及び電子のエネルギーが導電性であるゆえに陰極を伝達してしまい、発光層を形成する有機EL材料に悪影響を与え、発光層を劣化させてしまうという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、製造プロセス中に起こる発光層の劣化を防止することができる電気光学装置、その製造方法及び電子機器を提供することを目的とする。
本発明に係る電気光学装置の製造方法、電気光学装置、及び電子機器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明は、基体(200)上に、第1電極(23)と、第2電極(50)と、第1電極と第2電極との間に挟持される電気光学層(110)を有する電気光学装置(1)の製造方法において、第2電極を覆う発光材料保護層(65)を真空蒸着法により形成する工程と、発光材料保護層を覆う電極保護層(55)をプラズマ成膜法により形成する工程とを有するようにした。この発明によれば、製造プロセス中においても、電極保護層により第2電極の抵抗を下げるとともに、発光材料保護層により高密度プラズマによる電気光学層の劣化が防止されるので、鮮やかに発光する電気光学装置を得ることができる。
また、基体(200)上に、第1電極(23)と、第2電極(50)と、第1電極と第2電極との間に挟持される電気光学層(110)を有する電気光学装置に(1)の製造方法において、電気光学層を覆う発光材料保護層(65)を真空蒸着法により形成する工程と、発光材料保護層を覆う第2電極を形成する工程と、第2電極を覆う電極保護層(55)をプラズマ成膜法により形成する工程とを有するようにした。この発明によれば、製造プロセス中においても、電極保護層により第2電極の酸化が防止されるとともに、発光材料保護層により電気光学層の劣化が防止されるので、鮮やかな輝度にて表示する電気光学装置を得ることができる。
また、第2電極(50)と電極保護層(55)と発光材料保護層(65)とを覆うガスバリア層(30)を形成する工程を更に有するものでは、製造プロセス後に、陰極や電気光学層への酸素等の浸入を長時間に渡り防止することができる。発光材料保護層(65)を用いることにより、ガスバリア層(30)の形成時における電気光学層の劣化を防止することができる。
また、第2電極(50)は、真空蒸着法により形成されるものでは、電気光学層へのダメージが殆どなく、また第2電極と発光材料保護層とを同一の成膜装置により形成することができるので、製造工程の複雑化を防ぐとともに、製造コストを抑えることができる。
第2の発明は、基体(200)上に、第1電極(23)と、第2電極(50)と、第1電極と第2電極との間に挟持される電気光学層(110)を有する電気光学装置に(1)おいて、第2電極を保護する電極保護層(55)と、電極保護層の形成時における電気光学層の劣化を防止する絶縁性の発光材料保護層(65)と、を備えるようにした。この発明によれば、製造プロセス中においても、第2電極の酸化と電気光学層の劣化が防止されるので、鮮やかに発光する電気光学装置を得ることができる。
例えば、第2電極(50)上に発光材料保護層(65)が配置されると共に、発光材料保護層上に電極保護層(55)が配置されるように形成することができる。
また、電気光学層(110)と第2電極(50)との間に発光材料保護層(65)が配置されると共に、第2電極上に電極保護層(55)が配置されるように形成することができる。
また、電極保護層(55)は、導電性かつ透明性を有する金属酸化物からなるものでは、所謂、トップエミッション構造のEL表示装置を得ることができる。
また、発光材料保護層(65)は、金属弗素物からなるものでは、比較的低温で昇華するので、電気光学層に悪影響を与えずに薄膜を形成することができる。そして、この膜により、製造プロセス時に電気光学層をプラズマから保護することができる。例えば、金属弗化物として、弗化リチウム、弗化亜鉛、弗化鉄、弗化バナジウム、弗化コバルトなどを用いることができる。特にイオン結合により形成されている金属弗化物はバンドギャップが3eV以上であり良好な絶縁性を有している。したがって、例えば電極保護層(55)をプラズマ成長法にて形成する場合、発光材料保護層(65)をイオン結合により形成されている金属弗化物にて形成することにより、プラズマ中の電子、あるいは、イオンによる電気光学層(110)の劣化を防止することができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属の弗化物は、セラミックなどの絶縁材料と比較して低温により蒸発もしくは昇華することができるため、電気光学層を劣化させることなく発光材料保護層(65)を形成することができる。特にアルカリ金属、アルカリ土類金属の弗化物は、光の透過性が高いため、トップエミッション構造に最適である。
また、第2電極(50)と電極保護層(55)と発光材料保護層(65)とを覆うガスバリア層(30)を更に備えるものでは、製造プロセス後に、陰極や電気光学層への水分等の浸入を長時間に渡り防止することができる。発光材料保護層(65)を用いることにより、ガスバリア層(30)の形成時における電気光学層の劣化を防止することができる。
第3の発明は、電子機器(1000,1100,1200,1300)が、第1の発明の電気光学装置(1)或いは第2の発明の製造方法により得られた電気光学装置(1)を備えるようにした。この発明によれば、製造プロセス中における第2電極や電気光学層の劣化等が防止されるので、鮮やかな画像を長時間表示することができる電子機器を得ることができる。
以下、本発明の電気光学装置の製造方法、電気光学装置、及び電子機器の実施形態について図を参照して説明する。電気光学装置としては、電気光学物質の一例である電界発光型物質、中でも有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料を用いたEL表示装置について説明する。
図1は、EL表示装置1の配線構造を示す図である。EL表示装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型のEL表示装置である。
EL表示装置(電気光学装置)1は、図1に示すように、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101と信号線102の各交点付近に画素領域Xが設けられる。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続される。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続される。
さらに、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(第1電極)23と、この画素電極23と陰極(第2電極)50との間に挟み込まれた電気光学層110とが設けられる。画素電極23と陰極50と電気光学層110により、発光素子(有機EL素子)が構成される。
このEL表示装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から画素電極23に電流が流れ、さらに電気光学層110を介して陰極50に電流が流れる。電気光学層110に含まれる有機発光層60(図3参照)は、これを流れる電流量に応じて発光する。
次に、EL表示装置1の具体的な構成について図2〜図5を参照して説明する。
EL表示装置1は、図2に示すように電気絶縁性を備えた基板20と、スイッチング用TFT(図示せず)に接続された画素電極が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素電極域(図示せず)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線(図示せず)と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とを具備して構成されたアクティブマトリクス型のものである。
なお、本発明においては、基板20と後述するようにこれの上に形成されるスイッチング用TFTや各種回路、及び層間絶縁膜などを含めて、基体と称している。(図3、4中では符号200で示している。)
画素部3は、中央部分の実表示領域4(図2中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画される。
実表示領域4には、それぞれ画素電極を有する表示領域R、G、BがA−B方向およびC−D方向にそれぞれ離間してマトリックス状に配置される。
また、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80、80が配置される。これら走査線駆動回路80、80は、ダミー領域5の下側に配置されたものである。
さらに、実表示領域4の図2中上側には、検査回路90が配置される。この検査回路90は、EL表示装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。なお、この検査回路90も、ダミー領域5の下側に配置されたものである。
走査線駆動回路80および検査回路90は、その駆動電圧が、所定の電源部から駆動電圧導通部310(図3参照)および駆動電圧導通部340(図4参照)を介して、印加されるよう構成される。また、これら走査線駆動回路80および検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、このEL表示装置1の作動制御を行う所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部320(図3参照)および駆動電圧導通部350(図4参照)を介して、送信および印加される。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
また、EL表示装置1は、図3、図4に示すように基体200上に画素電極23と有機発光層60と陰極50とを備えた発光素子(有機EL素子)を多数形成したものである。
更に、陰極50上には、発光材料の劣化を防止する発光材料保護層65と、陰極50の酸化を防止する陰極保護層55が形成される。そして、さらにこれらを覆ってガスバリア層30等が形成される。
電気光学層110の、主要な層としては有機発光層60(エレクトロルミネッセンス層)であるが、挟まれる2つの電極との間に正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層(ホールブロック層)、電子阻止層(エレクトロンブロック層)を備えるものであってもよい。
基体200を構成する基板20としては、いわゆるトップエミッション型のEL表示装置の場合、この基板20の対向側であるガスバリア層30側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
また、いわゆるボトムエミッション型のEL表示装置の場合には、基板20側から発光光を取り出す構成であるので、基板20としては、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック板、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。なお、本実施形態では、ガスバリア層30側から発光光を取り出すトップエミッション型とする。
また、基板20上には、画素電極23を駆動するための駆動用TFT123などを含む回路部11が形成されており、その上に発光素子(有機EL素子)が多数設けられる。発光素子は、図5に示すように、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、電気光学物質の一つである有機EL物質を備える有機発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されたものである。
このような構成のもとに、発光素子はその有機発光層60において、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが結合することにより発光する。
画素電極23は、本実施形態ではトップエミッション型であることから透明である必要がなく、したがって適宜な導電材料によって形成される。
正孔輸送層70の形成材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液などが用いられる。
有機発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。
また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、上述した高分子材料に代えて、従来公知の低分子材料を用いることもできる。
また、必要に応じて、このような有機発光層60の上にカルシウムやマグネシウム、リチウム、ナトリウム、ストロンチウム、バリウム、セシウムを主成分とした金属又は金属化合物からなる電子注入層を形成してもよい。
また、本実施形態において正孔輸送層70と有機発光層60とは、図3〜図5に示すように基体200上にて格子状に形成された親液性制御層25と有機バンク層(バンク構造体)221とによって囲まれて配置され、これにより囲まれた正孔輸送層70および有機発光層60は単一の発光素子(有機EL素子)を構成する素子層となる。
なお、有機バンク層221の開口部221aの各壁面の基体200表面に対する角度θが、110度以上から170度以下となっている(図5参照)。このような角度としたのは、正孔輸送層70及び有機発光層60をウエットプロセスにより形成する際に、開口部221a内に配置されやすくするためである。
陰極50は、図3〜図5に示すように、実表示領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されたもので、有機発光層60と有機バンク層221の上面、さらには有機バンク層221の外側部を形成する壁面を覆った状態で基体200上に形成されたものである。なお、この陰極50は、図4に示すように有機バンク層221の外側で基体200の外周部に形成された陰極用配線202に接続される。この陰極用配線202にはフレキシブル基板203が接続されており、これによって陰極50は、陰極用配線202を介してフレキシブル基板203上の図示しない駆動IC(駆動回路)に接続される。
陰極50を形成するための材料としては、本実施形態はトップエミッション型であることから光透過性である必要があり、したがってカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の薄膜金属層(または合金層)が好適とされる。
陰極50の上層部には、発光材料保護層65が設けられる。発光材料保護層65は、絶縁性であることが条件であり、製造プロセス時に、有機発光層60がプラズマ中のイオン及び電子による高エネルギーの伝達により劣化されてしまうことを防止するために設けられる層である。
発光材料保護層65を形成する材料としては、金属弗化物が好適とされる。具体的には、弗化リチウム、弗化マグネシウム、弗化ナトリウムが挙げられる。
このように、有機発光層60を金属弗化物により形成した発光材料保護層65で覆うことにより、有機発光層60へ高密度なプラズマエネルギーの伝達を抑え、有機発光材料の劣化を良好に防止することができる。なお、発光材料保護層65は、約1〜30nm程度の厚みに形成される。
発光材料保護層65の上層部には、陰極保護層55が設けられる。陰極保護層55は、製造プロセス時に、陰極50が腐食されてしまうことを防止するために設けられる層であるとともに、薄膜化された陰極50の導電性を補助する層でもある。発光材料保護層65を陰極50上に形成する構成であれば、陰極50から有機発光層60への電子の注入を阻害することなく、有機発光層60の劣化を防止することが可能である。
陰極保護層55を形成する材料としては、EL表示装置1がトップエミッション型であることから光透過性である必要があり、したがって透明導電材料が用いられる。具体的には、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)が好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー(登録商標))、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、酸化錫等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いるものとする。これらの材料は、低温下で緻密な低抵抗の膜にする必要があるため高密度プラズマ成膜法を用いて成膜される。
このように、陰極50を金属酸化膜である陰極保護層55で覆うことにより、陰極50への酸素や水分、有機材料等の接触による腐食を良好に防止することができる。なお、陰極保護層55は、10nmから300nm程度の厚みに形成される。
更に、陰極50、発光材料保護層65、陰極保護層55の上には、ガスバリア層30が設けられる。
ガスバリア層30は、その内側に酸素や水分が浸入するのを防止するためのもので、これにより陰極50や有機発光層60への酸素や水分の浸入を防止し、酸素や水分による陰極50や有機発光層60の劣化等を抑えるようにしたものである。
また、ガスバリア層30は、例えば無機化合物からなるもので、好ましくは珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物、珪素酸化物などを高密度プラズマ成膜法によって形成される。ただし、珪素化合物以外でも、例えばアルミナや酸化タンタル、酸化チタン、さらには他のセラミックスなどからなっていてもよい。ガスバリア層30を陰極保護層55と同様にプラズマ成膜法により形成する場合、発光材料保護層65を用いることにより、ガスバリア層30の形成時における電気光学層の劣化を防止することができる。
また、有機発光層60と陰極50との間に、発光材料保護層65において記述した材料からなる層をさらに形成してもよい。このようにすることにより、ガスバリア層30もしくは陰極保護層55の形成時における電気光学層の劣化をさらに防止することができる。
また、ガスバリア層30としては、例えば有機樹脂層と珪素化合物の2層構造やITOと珪素酸窒化物など、珪素化合物を含みつつ異なる材料によって積層した構造としてもよい。このように無機化合物からなる下地層を形成することで、密着性を向上させたり、応力を緩和したり、珪素化合物からなるガスバリア層の緻密性を向上させたりすることができる。
このようなガスバリア層30の厚さとしては、10nm以上、500nm以下であるのが好ましい。10nm未満であると、膜の欠陥や膜厚のバラツキなどによって部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、500nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
また、本実施形態ではトップエミッション型としていることから、ガスバリア層30は透光性を有する必要があり、したがってその材質や膜厚を適宜に調整することにより、本実施形態では可視光領域における光線透過率を例えば80%以上にしている。
更に、ガスバリア層30の外側には、ガスバリア層30を覆う保護層204が設けられる(図8(h)参照)。この保護層204は、ガスバリア層30側に設けられた接着層205と表面保護層206とからなる。
接着層205は、ガスバリア層30上に表面保護層206を固定させ、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有するもので、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系などの樹脂からなり、後述する表面保護層206より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されたものである。なお、このような接着剤には、シランカップリング剤またはアルコキシシランを添加しておくのが好ましく、このようにすれば、形成される接着層205とガスバリア層30との密着性がより良好になり、したがって機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。
また、特にガスバリア層30が珪素化合物で形成されている場合などでは、シランカップリング剤やアルコキシシランによってこのガスバリア層30との密着性を向上させることができ、したがってガスバリア層30のガスバリア性を高めることができる。
表面保護層206は、接着層205上に設けられて、保護層204の表面側を構成するものであり、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能の少なくとも一つを有してなる層である。具体的には、ガラス基板や最表面にDLC(ダイアモンドライクカーボン)層、珪素酸化物層、酸化チタン層などがコーティングされたプラスチックフィルムなどによって形成されるものである。
なお、この例のEL表示装置においては、トップエミッション型にする場合に表面保護層206、接着層205を共に透光性のものにする必要があるが、ボトムエミッション型とする場合にはその必要はない。
上述の発光素子の下方には、図5に示したように回路部11が設けられる。この回路部11は、基板20上に形成されて基体200を構成するものである。すなわち、基板20の表面には下地としてSiOを主体とする下地保護層281が形成され、その上にはシリコン層241が形成される。このシリコン層241の表面には、SiOおよび/またはSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成される。
また、シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされる。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線101の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiOを主体とする第1層間絶縁層283が形成される。
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造を形成する。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続される。このソース電極243は、上述した電源線103(図1参照、図5においてはソース電極243の位置に紙面垂直方向に延在する)の一部として構成される。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続される。
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層は、例えば珪素窒化物や珪素酸化物、珪素酸窒化物などのガスバリア性を有する珪素化合物を主体とする第2層間絶縁層284によって覆われている。この第2層間絶縁層284は、例えば、珪素窒化物(SiN)や珪素酸化物(SiO)などの珪素化合物の単独膜でも、アクリル樹脂などの配線平坦化層と組み合わせて用いることもできる。そして、ITOからなる画素電極23が、この第2層間絶縁層284の表面上に形成されるとともに、第2層間絶縁層284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続される。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続される。
なお、走査線駆動回路80および検査回路90に含まれるTFT(駆動回路用TFT)、すなわち、例えばこれらの駆動回路のうち、シフトレジスタに含まれるインバータを構成するNチャネル型又はPチャネル型のTFTは、画素電極23と接続されていない点を除いて駆動用TFT123と同様の構造とされる。
画素電極23が形成された第2層間絶縁層284の表面には、画素電極23と、上述した親液性制御層25及び有機バンク層221とが設けられる。親液性制御層25は、例えばSiOなどの親液性材料を主体とするものであり、有機バンク層221は、アクリル樹脂やポリイミドなどからなるものである。そして、画素電極23の上には、親液性制御層25に設けられた開口部25a、および有機バンク層221に囲まれてなる開口部221aの内部に、正孔輸送層70と有機発光層60とがこの順に積層される。なお、本実施形態における親液性制御層25の「親液性」とは、少なくとも有機バンク層221を構成するアクリル樹脂やポリイミドなどの材料と比べて親液性が高いことを意味するものとする。
以上に説明した基板20上の第2層間絶縁層284までの層が、回路部11を構成する。
ここで、本実施形態のEL表示装置1は、カラー表示を行うべく、各有機発光層60が、その発光波長帯域が光の三原色にそれぞれ対応して形成される。例えば、有機発光層60として、発光波長帯域が赤色に対応した赤色用有機発光層60R、緑色に対応した緑色用有機発光層60G、青色に対応した青色用有機発光層60Bとをそれぞれに対応する表示領域R、G、Bに設け、これら表示領域R、G、Bをもってカラー表示を行う1画素が構成される。また、各色表示領域の境界には、金属クロムをスパッタリングなどにて成膜した図示略のBM(ブラックマトリクス)が、例えば有機バンク層221と親液性制御層25との間に形成される。
次に、本実施形態に係るEL表示装置1の製造方法の一例を、図6〜8を参照して説明する。図6〜8に示す各断面図は、図2中のA−B線の断面図に対応した図である。
なお、本実施形態においては、電気光学装置としてのEL表示装置1がトップエミッション型である場合であり、また、基板20の表面に回路部11を形成させる工程については、従来技術と変わらないので説明を省略する。
まず、図6(a)に示すように、表面に回路部11が形成された基板20の全面を覆うように、画素電極23となる導電膜を形成され、更に、この透明導電膜をパターニングすることにより、第2層間絶縁層284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する画素電極23を形成すると同時に、ダミー領域のダミーパターン26も形成する。
なお、図3、4では、これら画素電極23、ダミーパターン26を総称して画素電極23としている。ダミーパターン26は、第2層間絶縁層284を介して下層のメタル配線へ接続しない構成とされる。すなわち、ダミーパターン26は、島状に配置され、実表示領域に形成されている画素電極23の形状とほぼ同一の形状を有する。もちろん、表示領域に形成されている画素電極23の形状と異なる構造であってもよい。なお、この場合、ダミーパターン26は少なくとも駆動電圧導通部310(340)の上方に位置するものも含むものとする。
次いで、図6(b)に示すように、画素電極23、ダミーパターン26上、および第2層間絶縁膜上に絶縁層である親液性制御層25を形成する。なお、画素電極23においては一部が開口する態様にて親液性制御層25を形成し、開口部25a(図3も参照)において画素電極23からの正孔移動が可能とされている。逆に、開口部25aを設けないダミーパターン26においては、絶縁層(親液性制御層)25が正孔移動遮蔽層となって正孔移動が生じないものとされている。続いて、親液性制御層25において、異なる2つの画素電極23の間に位置して形成された凹状部に不図示のBM(ブラックマトリックス)を形成する。具体的には、親液性制御層25の凹状部に対して、金属クロムを用いスパッタリング法にて成膜する。
そして、図6(c)に示すように、親液性制御層25の所定位置、詳しくは上述したBMを覆うように有機バンク層221を形成する。具体的な有機バンク層の形成方法としては、例えばアクリル樹脂、ポリイミドなどのレジストを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、スリットダイコート法などの各種塗布法により塗布して有機層を形成する。なお、有機層の構成材料は、後述するインクの溶媒に溶解せず、しかもエッチングなどによってパターニングし易いものであればどのようなものでもよい。
更に、有機層をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングし、有機質層に開口部221aを形成することにより、開口部221aに壁面を有した有機バンク層221を形成する。ここで、開口部221aを形成する壁面について、基体200表面に対する角度θを110度以上から170度以下となるように形成する。
なお、この場合、有機バンク層221は、少なくとも駆動制御信号導通部320の上方に位置するものを含むものとする。
次いで、有機バンク層221の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成する。具体的には、プラズマ処理を、予備加熱工程と、有機バンク層221の上面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、親液性制御層25の上面をそれぞれ親液性にする親インク化工程と、有機バンク層221の上面および開口部221aの壁面を撥液性にする撥インク化工程と、冷却工程とで構成する。
すなわち、基材(バンクなどを含む基板20)を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、次いで親インク化工程として大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(Oプラズマ処理)を行う。次いで、撥インク化工程として大気雰囲気中で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CFプラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
なお、このCFプラズマ処理においては、画素電極23の電極面23cおよび親液性制御層25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび親液性制御層25の構成材料であるSiO、TiOなどはフッ素に対する親和性に乏しいため、親インク化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70の形成を行う。この正孔輸送層形成工程では、例えばインクジェット法等の液滴吐出法や、スリットダイコート法などにより、正孔輸送層材料を電極面23c上に塗布し、その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。正孔輸送層材料を例えばインクジェット法で選択的に塗布する場合には、まず、インクジェットヘッド(図示略)に正孔輸送層材料を充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを親液性制御層25に形成された開口部25a内に位置する電極面23cに対向させ、インクジェットヘッドと基材(基板20)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を電極面23cに吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、正孔輸送層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔輸送層70を形成する。
ここで、吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面23c上にて広がり、親液性制御層25の開口部25a内に満たされる。その一方で、撥インク処理された有機バンク層221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からはずれて有機バンク層221の上面に吐出されたとしても、該上面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が親液性制御層25の開口部25a内に転がり込む。
なお、この正孔輸送層形成工程以降は、正孔輸送層70および有機発光層60の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うのが好ましい。
次いで、発光層形成工程によって有機発光層60の形成を行う。この発光層形成工程では、例えばインクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機バンク層221に形成された開口部221a内に有機発光層60を形成する。この発光層形成工程では、正孔輸送層70の再溶解を防止するため、発光層形成材料に用いる溶媒として、正孔輸送層70に対して不溶な無極性溶媒を用いる。
なお、この発光層形成工程では、インクジェット法によって例えば青色(B)の発光層形成材料を青色の表示領域に選択的に塗布し、乾燥処理した後、同様にして緑色(G)、赤色(R)についてもそれぞれその表示領域に選択的に塗布し、乾燥処理する。
また、必要に応じて、上述したようにこのような有機発光層60の上にカルシウムやマグネシウム、リチウム、ナトリウム、ストロンチウム、バリウム、セシウムを主成分とした金属又は金属化合物からなる電子注入層を蒸着法等で形成してもよい。
次いで、図7(d)に示すように、陰極層形成工程によって陰極50の形成を行う。この陰極層形成工程では、抵抗加熱式等の真空蒸着法により、アルミニウム、マグネシウム、銀、カルシウムなどの金属又は合金を単層或いは2層に成膜して、陰極50とする。このとき、この陰極50については、有機発光層60と有機バンク層221の上面を覆うのはもちろん、有機バンク層221の外側部を形成する壁面についてもこれを覆った状態となるように形成する。
抵抗加熱式真空蒸着法は薄膜作製法のひとつで、略真空中で薄膜化しようとする物質を加熱ボートまたはルツボ内で200〜1000℃程度の比較的低温で加熱蒸発させ、その蒸気を基板面上に付着させる方法である。処理温度が低い為、発光材料への影響が少なく、特にプラズマや電子線等が発生しないので、有機発光材料の劣化が抑えられる。
次いで、図7(e)に示すように、発光材料保護層65の形成を行う。この工程においても抵抗加熱式真空蒸着法により、弗化リチウム、弗化マグネシウム、弗化ナトリウム、弗化亜鉛、弗化鉄、弗化バナジウム、弗化コバルト等の金属弗化物を成膜して、発光材料保護層65とする。陰極50の形成と同様に、抵抗加熱式真空蒸着法により発光材料保護層65を形成するので、発光材料の劣化が抑えられる。そして、同一の成膜装置を用いることができるので、製造工程が複雑化せず、また製造コストを抑えることができる。
特にイオン結合により形成されている金属弗化物はバンドギャップが3eV以上であり良好な絶縁性を有している。アルカリ金属、アルカリ土類金属の弗化物は、酸化珪素、アルミナなどのセラミック絶縁材料と比較して低温により蒸発もしくは昇華することができるため、電気光学層を劣化させることなく発光材料保護層65を形成することができる。特にアルカリ金属、アルカリ土類金属の弗化物は、光の透過性が高いため、トップエミッション構造に最適である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の弗化物としては、弗化リチウム、弗化マグネシウム、弗化ナトリウムなどを例示できる。
次いで、図7(f)に示すように、発光材料保護層65の上層部に高密度プラズマ成膜法により、陰極50上にITO等の薄膜を成膜させて陰極保護層55を形成する。
この際、既に有機発光層60の上層には、弗化リチウムの薄膜からなる発光材料保護層65が形成されているので、陰極保護層55の形成時に発生するプラズマから有機発光層60を保護し、発光材料の劣化を防止することができる。したがって鮮やかに発光する発光素子を得ることができる。
次いで、図8(g)に示すように、陰極50、発光材料保護層65、陰極保護層55を覆って、すなわち基体200上にて露出する陰極50の全ての部位を覆った状態にガスバリア層30を形成する。
ここで、このガスバリア層30の形成方法としては、高密度プラズマ成膜法により珪素酸窒化物などの珪素化合物を形成する。この際にも、発光材料保護層65によりガスバリア層30の形成時に発生するプラズマから有機発光層60を保護し、発光材料の劣化を防止することができる。したがって鮮やかに発光する発光素子を得ることができる。
なお、ガスバリア層30の形成については、上述したように珪素化合物によって単層で形成してもよく、また2層以上の珪素化合物や珪素化合物とは異なる材料と組み合わせて複数の層に積層して形成してもよく、さらには、単層で形成するものの、その組成を膜厚方向で連続的あるいは非連続的に変化させるようにして形成してもよい。
そして、図8(h)に示すように、ガスバリア層30上に接着層205と表面保護層206からなる保護層204が設けられる。接着層205は、スクリーン印刷法やスリットダイコート法などによりガスバリア層30上に略均一に塗布され、その上に表面保護層206が貼り合わされる。
このようにガスバリア層30上に保護層204を設ければ、表面保護層206が耐圧性や耐摩耗性、光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能を有していることにより、有機発光層60や陰極50、さらにはガスバリア層もこの表面保護層206によって保護することができ、したがって発光素子の長寿命化を図ることができる。
また、接着層205が機械的衝撃に対して緩衝機能を発揮するので、外部から機械的衝撃が加わった場合に、ガスバリア層30やこの内側の発光素子への機械的衝撃を緩和し、この機械的衝撃による発光素子の機能劣化を防止することができる。
なお、接着層205にも微粒子207を含有させてもよい。微粒子207を含有することにより、微粒子207がスペーサとなって、接着層205の膜厚を略均一化することができる。
以上のようにして、EL表示装置1が形成される。
ここで、表1は、発光材料保護層65の有無による有機発光層60の輝度比率及び発光効比率のデータを示す図である。
Figure 2005222860
具体的には、陰極保護層55としてECRプラズマスパッタ装置を用いてITO(インジウム錫酸化物が150nm厚)で形成した場合における、発光材料保護層65(弗化リチウムが20nm厚)の有無による赤色点灯時の輝度比率及び発光効比率のデータを示す。
表1に示すように、発光材料保護層65を形成しない場合(有機発光層60/電子注入層/陰極50/陰極保護層55の順に積層)には、明らかに発光層60の輝度比率及び発光効率比率の低下が見られる。すなわち、陰極保護層55の形成時に発生するプラズマ中のイオン及び電子のエネルギーが有機発光層60を形成する有機EL材料に悪影響を与えていることが分かる。
一方、発光材料保護層65を形成した場合(有機発光層60/電子注入層/陰極50/発光材料保護層65/陰極保護層55の順に積層)、すなわち本実施形態の場合には、発光材料保護層65が陰極保護層55の成膜時に発生するプラズマを遮断し、有機発光層60の輝度比率及び発光効率比率の低下を防いでいることが分かる。しかも、発光材料保護層65を形成した場合には、陰極保護層55を形成しない場合(有機発光層60/電子注入層/陰極50の順に積層した場合)、すなわち製造プロセス中にプラズマの発生がない状態と、略同一の輝度比率及び発光効比率を得ることができる。
なお、上述した実施形態では、電気光学層110(有機発光層60)、陰極50、発光材料保護層65、陰極保護層55の順に各膜を形成したが、電気光学層110(有機発光層60)、発光材料保護層65、陰極50、陰極保護層55の順に形成してもよい。すなわち、図9に示すように、電気光学層110(有機発光層60)上に、直接、発光材料保護層65を形成してもよい。
なお、上述した実施形態では、トップエミッション型のEL表示装置1を例にして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、ボトムエミッション型にも、また、両側に発光光を出射するタイプのものにも適用可能である。
また、ボトムエミッション型、あるいは両側に発光光を出射するタイプのものとした場合、基体200に形成するスイッチング用TFT112や駆動用TFT123については、発光素子の直下ではなく、親液性制御層25および有機バンク層221の直下に形成するようにし、開口率を高めるのが好ましい。
また、EL表示装置1では本発明における第1の電極を陽極として機能させ、第2の電極を陰極として機能させたが、これらを逆にして第1の電極を陰極、第2の電極を陽極としてそれぞれ機能させるよう構成してもよい。ただし、その場合には、有機発光層60と正孔輸送層70との形成位置を入れ替えるようにする必要がある。
また、本実施形態では、電気光学装置にEL表示装置1を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、基本的に第2電極が基体の外側に設けられるものであれば、どのような形態の電気光学装置にも適用可能である。
次に、本発明の電子機器について説明する。電子機器は、上述したEL表示装置(電気光学装置)1を表示部として有したものであり、具体的には図10に示すものが挙げられる。
図10(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10(a)において、携帯電話(電子機器)1000は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1001を備える。
図10(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図10(b)において、時計(電子機器)1100は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1101を備える。
図10(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図10(c)において、情報処理装置(電子機器)1200は、キーボードなどの入力部1202、上述したEL表示装置1を用いた表示部1206、情報処理装置本体(筐体)1204を備える。
図10(d)は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。図10(d)において、薄型大画面テレビ(電子機器)1300は、薄型大画面テレビ本体(筐体)1302、スピーカーなどの音声出力部1304、上述したEL表示装置1を用いた表示部1306を備える。
図10(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、上述したEL表示装置(電気光学装置)1を有した表示部1001,1101,1206を備えているので、表示部を構成するEL表示装置の発光素子の長寿命化が図られたものとなる。
また、図10(d)に示す電子機器は、表示部1306の面積に関係なくEL表示装置1を封止することができる本発明を適用したので、従来と比較して大面積(例えば対角20インチ以上)の表示部(電気光学装置)1306を備えるものとなる。
EL表示装置の配線構造を示す図 EL表示装置の構成を示す模式図 図2のA−B線に沿う断面図 図2のC−D線に沿う断面図 図3の要部拡大断面図 EL表示装置の製造方法を工程順に示す図 図6に続く工程を示す図 図7に続く工程を示す図 EL表示装置の変形例を示す要部拡大断面図 電子機器を示す図
符号の説明
1…表示装置(電気光学装置)、 23…画素電極(第1電極)、 30…ガスバリア層、 50…陰極(第2電極)、 55…陰極保護層(電極保護層)、 60…有機発光層、 65…発光材料保護層、 110…電気光学層、 200…基体、 210…緩衝層、 215…枠部、 221…有機バンク層(バンク構造体)、 221a…開口部、 1000…携帯電話(電子機器)、 1100…時計(電子機器)、 1200…情報処理装置(電子機器)、 1300…薄型大画面テレビ(電子機器)、 1001,1101,1206,1306…表示部(電気光学装置)


Claims (12)

  1. 基体上に、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に挟持される電気光学層を有する電気光学装置の製造方法において、
    前記第2電極を覆う発光材料保護層を真空蒸着法により形成する工程と、
    前記発光材料保護層を覆う電極保護層をプラズマ成膜法により形成する工程と、
    を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  2. 基体上に、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に挟持される電気光学層を有する電気光学装置の製造方法において、
    前記電気光学層を覆う発光材料保護層を真空蒸着法により形成する工程と、
    前記発光材料保護層を覆う前記第2電極を形成する工程と、
    前記第2電極を覆う電極保護層をプラズマ成膜法により形成する工程と、
    を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  3. 前記第2電極と前記電極保護層と前記発光材料保護層とを覆うガスバリア層を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気光学装置の製造方法。
  4. 前記第2電極は、真空蒸着法により形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
  5. 基体上に、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に挟持される電気光学層を有する電気光学装置において、
    前記第2電極を保護する電極保護層と、
    前記電極保護層の形成時における前記電気光学層の劣化を防止する絶縁性の発光材料保護層と、
    を備えることを特徴とする電気光学装置。
  6. 前記第2電極上に前記発光材料保護層が配置されると共に、前記発光材料保護層上に前記電極保護層が配置されることを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
  7. 前記電気光学層と前記第2電極との間に前記発光材料保護層が配置されると共に、前記第2電極上に前記電極保護層が配置されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の電気光学装置。
  8. 前記電極保護層は、導電性かつ透明性を有する金属酸化物からなることを特徴とする請求項5から請求項7のうちいずれか一項に記載の電気光学装置。
  9. 前記発光材料保護層は、金属弗素物からなることを特徴とする請求項5から請求項8のうちいずれか一項に記載の電気光学装置。
  10. 前記金属弗化物は、弗化リチウムであることを特徴とする請求項9に記載の電気光学装置。
  11. 前記第2電極と前記電極保護層と前記発光材料保護層とを覆うガスバリア層を更に備えることを特徴とする請求項5から請求項10のうちいずれか一項に記載の電気光学装置。
  12. 請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の電気光学装置、或いは請求項8から請求項11のうちいずれか一項に記載の製造方法により得られた電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。


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