JP2005221344A - 穀類の食品物性値を表示する糊化特性測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 穀類の食品物性値を直接表示するための方法、プログラム及び装置、並びに穀類の食品物性値を表示する糊化特性測定装置の提供。
【解決手段】 穀類試料の糊化特性値を測定するための手段、
前記糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から前記穀類試料の食品物性値を得るための手段、及び
前記糊化特性値及び/又は食品物性値を表示するための手段、
を含み、穀類の食品物性値を表示することを特徴とする糊化特性測定装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は、穀類の食品物性値を表示するための方法、プログラム及び装置、並びに糊化特性測定装置に関する。
従来、米飯の食味や小麦の製パン性などの穀類の食品物性(品質評価)は、実際にコメを炊飯したり、小麦からパンを試作した後に、それらの製品を試食したり、テクスチュロメーター等の物性測定装置で測定することにより評価していた。
最近、穀類の物理化学的特性を利用して穀類の食品物性を推定することが試みられている。例えば、米飯の食味は、主として、その硬さや粘り等の物理化学的特性によって決まるとされており(非特許文献1)、テクスチュロメーターによって測定される米飯の粘り、硬さ、又はバランス度(粘り/硬さ)(非特許文献1)、あるいはテンシプレッサーによって測定される米粒表層の付着量(非特許文献2)などが食味と高い相関を示すことが報告されている。
一方、穀類の物理化学的特性の1種である、穀類粉末や穀類デンプンの糊化特性は、ブラベンダー社製のアミロビスコグラフ(アミログラフ又はビスコグラフと呼ぶこともある)やマイクロビスコアミログラフ、ニューポートサイエンティフィック社製ラピッドビスコアナライザー(RVA)、ベーリン社製のレオメーター、ハーケ社製の回転粘度計、ハーケ社製のレオメーター、ハーケ社性のマイクロビスコ等を用いて測定することができる(例えば特許文献1参照)。これらは、穀類粉末又は穀類粉末から調製した穀類デンプンを水中に懸濁し、一定温度で又は加熱・冷却しながら攪拌し、それに対する抵抗値を測定して、ブラベンダーユニット、RVU、センチポアズ又はパスカル秒等の単位で糊化特性を数値として表示するものである。
これらの装置では、デンプンが糊化を開始した温度を粘度上昇開始温度として検知し、糊化が十分に進行して液の粘度が最高に達したときの粘度(最高粘度)、攪拌による物理的破壊とデンプン粒の膨張破裂とによって粘度が低下した時の粘度(最低粘度)、冷却によって糊化デンプンの老化が進行して再び粘度が上昇して測定を終了するときの温度(最終粘度)等を測定し、表示するものである。また、最高粘度と最低粘度の差をブレークダウン、最終粘度と最高粘度の差をセットバック、最終粘度と最低粘度の差をコンシステンシーと呼び、これらの値は併せて「糊化特性値」と称されて穀類粉末又は穀類デンプンの物理化学的特性値として用いられてきた。
しかしながらこれらの糊化特性値は、あくまで個別の物理化学的測定値とその算術的変換値である。そのため、上述のように穀類の物理化学的性質と食品物性との間に何らかの関係があることが知られていたが、糊化特性値のみからでは穀類の食品物性を簡便に予測することができなかった。そのためユーザーは、これらの糊化特性値とユーザーが求める穀類の品質評価との間の関係について知るには、改めて作図したり、各測定値を相互に比較したり、最終的にはユーザーの経験や蓄積資料に基づく推察や算術変換を別途行うことによって、当該試料の食品物性を推定するにとどまっていた。すなわち、糊化特性値から直接穀類の食品物性を得ることは不可能であった。
以上の点から、高度な知識や経験を要することなく、簡便かつ直接的に穀類の食品物性を得る手法が望まれていた。
国際公開WO87/01198号パンフレット 竹生新治郎、米飯の食味、米の科学、朝倉書店、p.117-137、1995年 岡留博司ら、食科工、第45巻第7号、p.398-407、1998年
そこで、本発明は、穀類の食品物性値を直接表示するための方法、プログラム及び装置、並びに穀類の食品物性値を表示する糊化特性測定装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、穀類の物理化学的特性の1種である糊化特性値に着目し、この糊化特性値を解析することによって、穀類試料の食品物性値を簡便かつ直接的に推定することが可能であることを見出し、本発明を想到するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)以下のステップを含む穀類の食品物性値の表示方法:
穀類試料の糊化特性値を糊化特性値測定手段において測定するステップ、及び
測定した糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から該穀類試料の食品物性値を得るステップ
上記食品物性値の表示方法において、糊化特性値は、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、ブレークダウン、最終粘度、セットバック、及びコンシステンシーからなる群より選択される少なくとも1つの糊化特性値とすることができる。
また、上記食品物性値の表示方法において、食品物性値としては、限定するものではないが、飯としての硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接及び膨張容積;製パンにおける比容積及び生地硬度;製麺における麺の弾性、硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接、引張り強度、及び破断強度;製菓における比容積、生地硬度;並びにデンプン収率及び老化性などが挙げられ、これらの食品物性値のうち1つ以上を表示するものである。
上記食品物性値の表示方法において、解析は、例えば多変量解析、具体的には、線形回帰分析、非線形回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析及び分散分析などとすることができる。
また上記食品物性値の表示方法において、穀類試料としては、コメ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、モロコシ、キビ、ライムギ、及びソバ、穀類の製粉、並びに穀類を含む加工品などが挙げられる。
(2)以下の手段を含むことを特徴とする、穀類の食品物性表示装置:
穀類試料の糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から前記穀類試料の食品物性値を得るための手段、及び
前記糊化特性値及び/又は食品物性値を表示するための手段
上記食品物性表示装置において、糊化特性値は、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、ブレークダウン、最終粘度、セットバック、及びコンシステンシーからなる群より選択される少なくとも1つの糊化特性値とすることができる。
また、上記食品物性表示装置において、食品物性値としては、限定するものではないが、飯としての硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接及び膨張容積;製パンにおける比容積及び生地硬度;製麺における麺の弾性、硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接、引張り強度、及び破断強度;製菓における比容積、生地硬度;並びにデンプン収率及び老化性などが挙げられ、これらの食品物性値のうち1つ以上を表示するものである。
上記食品物性表示装置において、解析は、例えば多変量解析、具体的には線形回帰分析、非線形回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析及び分散分析などとすることができる。
また上記食品物性表示装置において、穀類試料としては、コメ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、モロコシ、キビ、ライムギ、及びソバ、穀類の製粉、並びに穀類を含む加工品などが挙げられる。
(3)以下の手段を含み、穀類の食品物性値を表示することを特徴とする糊化特性測定装置:
穀類試料の糊化特性値を測定するための手段、
前記糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から前記穀類試料の食品物性値を得るための手段、及び
前記糊化特性値及び/又は食品物性値を表示するための手段
上記糊化特性測定装置において、糊化特性値は、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、ブレークダウン、最終粘度、セットバック、及びコンシステンシーからなる群より選択される少なくとも1つの糊化特性値とすることができる。
また、上記糊化特性測定装置において、食品物性値としては、限定するものではないが、飯としての硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接及び膨張容積;製パンにおける比容積及び生地硬度;製麺における麺の弾性、硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接、引張り強度、及び破断強度;製菓における比容積、生地硬度;並びにデンプン収率及び老化性などが挙げられ、これらの食品物性値のうち1つ以上を表示するものである。
上記糊化特性測定装置において、解析は、例えば多変量解析、具体的には線形回帰分析、非線形回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析及び分散分析などとすることができる。
また上記糊化特性測定装置において、穀類試料としては、コメ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、モロコシ、キビ、ライムギ、及びソバ、穀類の製粉、並びに穀類を含む加工品などが挙げられる。
(4)以下の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム:
糊化特性値測定手段から受け取った穀類試料の糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から該穀類試料の食品物性値を得る手順、
前記糊化特性値及び/又は食品物性値を表示手段に表示する手順
上記プログラムは、前記糊化特性値測定手段において穀類試料の糊化特性値を測定する手順をさらに含むものであってもよい。
本発明により、糊化特性値から簡便かつ直接的に穀類の食品物性値を得ることができる。かかる穀類の食品物性値は、食品工場や食品販売分野で実際に使用することができかつ容易に理解することができる指標であるため、穀類の流通や品質評価に有用である。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
本発明に係る穀類の食品物性値の表示方法(以下、「本方法」ともいう)は、穀類試料の糊化特性値を用いた解析を行うことにより、当該穀類試料の食品物性値を推定し、表示することを特徴とする。このように表示される食品物性値は、個々の穀類試料の物理化学的特性とは異なり、穀類の食品としての利用性を表すものであるため、一般のユーザーでも高度な知識を要することなく容易に穀類の性質を理解することができる。
1.穀類の食品物性値の表示方法
本方法は、以下のステップ:
穀類試料の糊化特性値を糊化特性値測定手段において測定するステップ、及び
測定した糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から該穀類試料の食品物性値を得るステップ、
を含むものである。
本方法においては、まず穀類試料の糊化特性値を測定する。
対象となる穀類試料としては、特に限定されるものではないが、コメ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、モロコシ、キビ、ライムギ、ソバなどが挙げられる。また、穀類試料は、穀類の製粉(例えば米粉、小麦粉等)、穀類を含む加工品(例えばパン、麺類、菓子類等)などであってもよい。
穀類試料は、糊化特性値を測定する前に、糊化特性の測定に適した形態となるよう前処理を行ってもよい。例えば、ラピッドビスコアナライザー(RVA)を用いる場合には、穀類試料を予め粉末化しておくことが好ましい。
測定する糊化特性値は、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、最終粘度、ブレークダウン、セットバック、及びコンシステンシーから選ばれる少なくとも1つの糊化特性値である。糊化測定値は、求めようとする食品物性値により異なるが、好ましくは上記糊化測定値のうち3以上を測定する。
「糊化開始温度」とは、デンプン粒の形が壊れて全体が半透明なコロイド状態(糊)となる糊化現象が、最初の粒において起こる温度をいい、穀類デンプンの種類により異なる。また「最高粘度」とは、糊化が十分に進行して液の粘度が最高に達したときの粘度をいい、「最低粘度」とは、攪拌による物理的破壊とデンプン粒の膨張破裂とによって粘度が低下した時の粘度をいう。「最終粘度」とは、冷却によって糊化デンプンの老化が進行して再び粘度が上昇して測定を終了するときの温度をいう。さらに「コンシステンシー」とは、最終粘度から最低粘度を減じて算出される値をいい、「セットバック」とは、最終粘度から最高粘度を減じて算出される値をいい、「ブレークダウン」とは、最高粘度と最低粘度を減じて算出される値をいう。
糊化特性値の測定手法は、当業者に周知である。例えば、穀類粉末溶液又は懸濁液に、円筒状又は円錐状の測定回転機を浸漬して回転させ、そのときの抵抗値から粘度を測定する手法、穀類粉末溶液又は懸濁液に羽根やピンを浸漬し、加熱・冷却をしながら攪拌し、回転に対する抵抗値から粘度を算出する手法、あるいは、平行板や円錐状測定板(コーンプレート)と試料台との間に穀類粉末溶液又は懸濁液をセットし、平行板や円錐状板を回転させ、その時に回転板と試料台との間に働く力を測定して粘度を算出する手法などが挙げられる。
糊化特性値は、一般的には、市販の糊化特性測定装置を用いて測定される。糊化特性測定装置としては、ブラベンダー社製のアミロビスコグラフ(アミログラフ、ビスコグラフとも称される)又はマイクロビスコアミログラフ、ニューポートサイエンティフィック社製ラピッドビスコアナライザー(RVA)、ベーリン社製のレオメーター、ハーケ社製の回転粘度計、ハーケ社製のレオメーター、ハーケ社製のマイクロビスコ等を挙げることができる。本方法においては、このような市販に入手可能な糊化特性測定装置を糊化特性値測定手段として用いることができる。
糊化特性値は、その測定条件によって変動する。例えば、糊化特性値には、試料の濃度、測定温度、撹拌速度、クリアランス(試料液と測定容器壁との間隙)などの条件が関与していることが知られている。従って、糊化特性値の測定時には、その測定条件を、穀類試料の種類、求める食品物性値などに応じて設定することが好ましい。具体的には、例えばラピッドビスコアナライザー(RVA;ニューポートサイエンティフィック社製)を使用して精白米の粘度特性を測定する場合には、50℃にて1分間保持、4分間で50〜93℃に昇温、93℃にて7分間保持、4分間で93℃〜50℃に降温、及び50℃にて3分間保持からなる合計19分間の測定条件を使用することができる。
続いて、上記のように測定した糊化特性値を用いて解析を行い、穀類の食品物性値を算出する。
「穀類の食品物性値」とは、穀類試料を食品として使用した場合の食味、食感、利用可能性などの、食品としての物性を意味する。かかる食品物性値としては、限定されるものではないが、飯としての硬さ、粘り(stickiness)、付着性、凝集性(形態を構成する内部的結合に要する力を表す)、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接及び膨張容積;製パンにおける比容積及び生地硬度;製麺における麺の弾性、硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接、引張り強度、及び破断強度;製菓における比容積、生地硬度;並びにデンプン収率及び老化性などが挙げられる(詳細については非特許文献2参照)。
さらに、穀類の食品物性値には、加工後の飯、パン、麺、菓子などの製品を試食して、外観、味、香り、粘り又は硬さの評価、及びこれらの総合評価を行う試食試験、すなわち官能検査によって評価されるものも含む。
上記「老化性」とは、炊飯、製パン又は製麺後に冷却保管等によって穀類試料中のデンプンが老化する程度を意味し、これは、冷却保管等によって穀類試料中のデンプンが老化した後に測定した物性測定値、及び/又は老化前と老化後の物性測定値との算術変換値などによって表すことができる。
続いて、上述の通り測定した糊化特性値を、適当な解析を行うことによって穀類の食品物性値に変換する。
糊化特性値から食品物性値を求めることが可能な解析手法は、特に限定されるものではなく、例えば、糊化特性値に係数を乗ずる方法、複数の糊化特性値を加減乗除する方法、糊化特性値を用いて多変量解析する方法などのいずれの解析手法であってもよい。ここで、多変量解析とは、多数の統計的変量の、相互依存関係や従属的関係の解析を目的とする統計的手法を指し、n個の対象のおのおのについてp種類の変数の値が観察されている形式を基本とする多変数データを実際的に解析するために種々の手法がある。本方法に従って糊化特性値を変数として多変量解析を行う手法は、当業者であれば容易に理解することができる。例えば、線形回帰分析、非線形回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析、分散分析等の任意の多変量解析を利用することができる。
本方法においては、具体的には、例えば下記式I:
y=a×x (I)
〔式中、yは食品物性値、aは変換係数、xは糊化測定値である。〕
で表されるように、糊化測定値に一定の係数を乗じて食品物性値を得ることができる。また、下記式II:
y=a1×x1+a2×x2−a3×x3+a0 (II)
〔式中、yは食品物性値、a1、a2及びa3は変換係数、a0は定数項、x1、x2及びx3はそれぞれ糊化測定値である。〕
で表されるように、複数の糊化測定値を加減乗除することにより食品物性値を得ることができる。さらに、下記式III:
y=a1×x1+a2×x2+a3×x3+a0 (III)
〔式中、yは食品物性値、a1、a2及びa3は偏回帰係数、a0は定数項、x1、x2及びx3はそれぞれ糊化特性値であり、a1やa2等の偏回帰係数は、最小2乗法により、実測値と推定理論値の差の総和を示す残差2乗和を最小にするように決定される。〕
で表されるように、食品物性値を目的変数とし、糊化特性値を説明変数として重回帰分析を行うことにより、食品物性値を各糊化特性値の線形回帰式として表現することができる。
本方法において利用可能な解析式を例示目的で以下説明する。下記式IVの解析式により、3種の糊化特性値(最高粘度、最低粘度及び最終粘度)を用いて、穀類の食品物性値として米飯表層の付着量(L3)を表示することができる。
L3=1.945+0.00007×VMAX+0.00042×VMIN−0.0006×VFIN (IV)
〔式中、VMAXは最高粘度、VMINは最低粘度、VFINは最終粘度(単位:RVU)である。〕
また、下記式Vの解析式により、3種の糊化特性値(最高粘度、最低粘度及び最終粘度)を用いて、穀類の食品物性値として耐老化性を表示することができる。
RI=−0.105−0.0081×VMAX−0.0025×VMIN+0.035×VFIN (V)
〔式中、RIは老化性指標、VMAXは最高粘度、VMINは最低粘度、VFINは最終粘度(単位:RVU)である。〕
さらに、下記式VIの解析式により、3種の糊化特性値(最高粘度、最終粘度及びブレークダウン)を用いて、穀類の食品物性値として米飯の表層の硬さを表示することができる。
SHC=13.4+2.69×VMAX−0.92×VFIN−2.83×BD (VI)
〔式中、SHCは冷却後の表層硬さ、VMAXは最高粘度、VFINは最終粘度、BDはブレークダウン(最高粘度−最低粘度)を表す。〕
さらに、下記式VIIの解析式により、3種の糊化特性値(最高粘度、最低粘度及び最終粘度)を用いて、穀類の食品物性値としてうどんの硬さを表示することができる。
HU=1.54+0.12×(VMAX−VMIN)−0.03×(VFIN−VMAX)(VII)
〔式中、HUはうどんの硬さ、VMAXは最高粘度、VMINは最低粘度、VFINは最終粘度を表す。〕
以上のようにして、本方法により、穀類の食品物性値を直接的かつ簡便に表示することが可能となる。すなわち、従来は穀類試料の複数の物理化学的物性から高度な知識に基づいて求められていた穀類の食品物性値が、本方法により、穀類試料の糊化特性値から直接的かつ簡便に食品物性値を表示することが可能となる。
2.装置及びプログラム
上述した方法は、例えば図1Aに示す穀類の食品物性値を表示する糊化特性測定装置1(以下、「本糊化特性測定装置」ともいう)、及び図1Bに示す穀類の食品物性値を表示するための装置9(以下、「本食品物性表示装置」ともいう)によって実施することができる。本糊化特性測定装置1及び本食品物性表示装置9は、詳細を後述するプログラムに従って、糊化特性値測定手段2で測定した糊化特性値を用いて解析を行い、解析対象の穀物試料の食品物性値を得ることができる。
図1Aに示す本糊化特性測定装置1は、糊化特性値測定手段2と、装置全体の動作制御を司るCPU3と、食品物性値等を表示する表示手段4と、各種測定条件等を入力する入力手段5と、データやプログラム等を入出力する送信/受信手段6と、データやプログラム等を格納するメモリ7とを備える。また、本糊化特性測定装置1は、例えば穀物の食品物性値に関する既知の情報が穀物試料の種類毎に蓄積されたデータベース8を備えるものであっても良い。
糊化特性値測定手段2は、糊化特性値を測定可能な手段であれば特に限定されず、前項「1.穀類の食品物性値の表示方法」に記載したような市販の糊化特性測定装置を用いることができる。
また、CPU3は、メモリ7に記憶されているプログラム又は送信/受信手段6により通信回線網を通じて利用可能なプログラムに従って、本糊化特性測定装置1全体を制御し、後述する解析処理を実行する。メモリ7は、穀類の糊化特性値の解析及び穀類の食品物性値の表示に必要な処理を命令するプログラム等を格納し、また当該処理を実行する上で必要なデータを一時的に格納する。入力手段5は、キーボードやマウス等であり、処理を実行する上で必要な条件を入力するとき等に操作される。送信/受信手段6は、CPU3の命令に基づいて、通信回線網を介してサーバ等との間でプログラムやプログラムの実行に必要なデータの送受信処理を実行する。表示手段4は、入力手段5から入力された各種条件、糊化特性値測定手段2から得られた糊化特性値、解析された穀類の食品物性値等を、CPU3からの命令に基づいて表示処理を実行する。なお、表示手段4としては、コンピュータのディスプレイ又はプリンターなどが例示される。表示形式は、数値、グラフ、色、記号などであり、特に限定されるものではない。またCPU3は、入力手段5などから受け取ったデータを表示手段4に供給するとともに、それらのデータに基づいて糊化特性値測定手段2の機能を制御する。場合により、CPU3は、プログラムに従って、得られた糊化特性値及び/又は食品物性値とデータベース8から受け取ったデータを用いてデータ比較を実行し、その比較結果を表示手段4で表示させる。データベース8とは、穀類の食品物性値などの情報を蓄積したものをいう。
本糊化特性測定装置は、限定するものではないが、図2に示すように、穀類の食品物性値を装置前面パネルに表示することが可能な糊化特性測定装置として具現化することができる。本糊化特性測定装置により、糊化特性値測定手段から得られた糊化特性値から種々の解析を行ったり、他の測定値を求めることなく、穀類の食品物性値が直接表示される。
また、図1Bに示すように、穀類の食品物性値を表示するための装置9としては、糊化特性値測定手段2を含まず、CPU3と表示手段4と入力手段5と送信/受信手段6とメモリ7とを備える構成とすることができる。この場合、図1Bに示すように、糊化特性値測定手段2は、インターネットやイントラネット等の通信回線網を介して食品物性表示装置9と接続されている。すなわち、図1Bに示す食品物性表示装置9においては、糊化特性値測定手段2で測定した糊化特性値を通信回線網を介して受信し、受信した糊化特性値を用いて食品物性値を得、それを表示することができる。
以上のように構成された糊化特性測定装置1及び食品物性表示装置9は、以下のプログラムに従って糊化特性値測定手段2で測定した糊化特性値から食品物性値を得ることができる。本プログラムによる糊化特性測定装置1又は食品物性表示装置9の制御例を、図3にフローチャートとして示す。
なお、本プログラムは、記録媒体に記録されて提供されてもよいし、又は通信回線網を通じて提供されてもよいし、あるいは通信回線網を通じて機能提供型のASP(Application Service Provider)としてその機能のみが利用されてもよい。記録媒体はコンピュータ読み取り可能であり、フロッピーディスク(FD)、磁気光ディスク(MO)、CD−ROM、ハードディスク、ROM、RAM等が含まれる。
本プログラムでは、先ず、ステップ1(図3中「S1」と表記する。以下のステップも同様。)で穀物試料の糊化特性値を測定する。すなわち、ステップ1では、上述したように、糊化特性値測定手段2において測定対象の穀物試料における糊化特性値を測定する。
具体的には、ステップ1において、上述したように、穀物試料における糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、ブレークダウン、最終粘度、セットバック及びコンシステンシー等の各種糊化特性値を測定する。測定された糊化特性値は、測定対象の穀物試料毎に割り振られた固有ナンバーとともにメモリ7に格納される。本プログラムにおいて、穀物試料毎に固有ナンバーを割り振ることによって、複数の穀物試料を順次測定する場合や、糊化特性値の測定の直後に後述する解析を行わない場合などにおいてデータの管理を確実に行うことができる。なお、固有ナンバーは、本プログラムによって割り振られても良いが、操作者が任意に設定しても良い。
また、本プログラムのステップ1においては、糊化特性値を測定に先だって、操作者が穀物試料の種類、糊化特性値の測定条件を入力することもできる。例えば、本プログラムは、予め登録してある穀物種類を表示手段4に選択可能に表示することができる。穀物試料の種類を入力する際には、表示手段4に表示された穀物種類を操作者が入力手段5を用いて選択する。選択された穀物試料の種類は、固有ナンバーに関連づけてメモリ7に格納される。また本プログラムは、予め登録されている各種条件(例えば、米飯、版、麺などの食品の種類、付着性、老化性、膨張容積、引っ張り強度などの食品物性値)を操作者が入力可能なように、表示手段4にダイアログとして表示することができる。糊化特性値の測定条件を入力する際には、表示手段4に表示されたダイアログに、操作者が入力手段5を用いて入力する。入力された各種条件は、固有ナンバーに関連づけられてメモリ7に格納される。ステップ1において選択した穀物試料の種類及び糊化特性値の測定条件は、糊化特性値測定手段2における糊化特性値の測定時に反映される。
なお、穀物試料の種類及び糊化特性値の測定条件がデフォルトと同一である場合には、これら穀物試料の種類及び糊化特性値の測定条件を設定する必要はない。
あるいは、ステップ1は省略することができ、かかる場合には、穀類試料の糊化特性値は通信回線網により受信して取得し、その後ステップ2に進む。
次に、ステップ2では、ステップ1で測定され(あるいは通信回線網により取得され)、メモリ7に格納された糊化特性値を解析する。ステップ2においては、メモリ7から固有ナンバーとともに糊化特性値を読み出し、例えば、上述した式(I)〜(VII)のうちいずれかの式に代入することで、結果として食品物性値を算出する。
本プログラムでは、上述した式(I)〜(VII)のうちいずれかの式が予め設定されていても良いが、操作者が選択した式(I)〜(VII)を用いて食品物性値を算出しても良い。また、本プログラムにおいては、上述した式(I)〜(VII)のうち単一の式を用いて唯一の食品物性値を算出しても良いが、複数の式を用いて複数の食品物性値を算出しても良い。複数の食品物性値を算出する場合、本プログラムは、例えば表示手段4に複数の選択可能な食品物性値を表示する。そして、操作者が表示手段4に表示された複数の食品物性値を選択すると、本プログラムは、選択された食品物性値を上記固有ナンバーに関連づけてメモリ7に格納する。ステップ2では、メモリ7から固有ナンバーとともに糊化特性値を読み出すに際して、当該固有ナンバーに関連づけられた単一あるいは複数の食品物性値も読み出し、上述した式(I)〜(VII)のうち適当な式を選択する。
次に、ステップ3では、ステップ2において得られた穀物試料の食品物性値を表示手段4に表示する。ステップ2では、食品物性値とともにステップ1で測定した糊化特性値、穀物試料毎の固有ナンバー等の情報を併せて表示してもよい。
また、糊化特性測定装置1又は食品物性表示装置9がデータベース8を有する場合には、ステップ3において、データベース8に蓄積された情報とステップ2で得られた食品物性値とを比較して、その結果として得られた情報を表示手段4に表示してもよい。
具体的には、ステップ2で得られた食品物性値とデータベース8に蓄積された食品物性値に関する情報とが一致するか否か、或いは、蓄積された物性値の範囲内又は範囲外に位置しているか、蓄積された物性値のどのグレード(格付け順位)に位置するか等をステップ3において検出し、その結果を表示することができる。これによって、既知の穀類の食品物性値を基準として、穀類試料の品質を評価することが可能となる。具体的には、穀類試料が飯、製パン、製麺又は製菓に適しているか否か、高品位格付け原料又は低品位格付け原料であるか、あるいは規格外原料であるか、炊きたて米飯向け又は低温保管米飯向け原料であるのか、などを評価することができる。
さらにまた、本プログラムは、通信回線網により受信された穀類試料の糊化特性値を解析し、算出された食品物性値を通信回線網から送信するものであってもよい。すなわち、算出された食品物性値やその他の情報は、操作者の装置の表示手段に表示され、プログラムを実行する装置(すなわち、食品物性解析装置)の表示手段には表示されない。このような食品物性解析装置は、糊化特性値測定手段2及び表示手段4を含まず、CPU3と送信/受信手段6とメモリ7とを備える構成とすることができる。また操作者の装置は、少なくとも送信/受信手段6及び表示手段4を備え、場合によっては、糊化特性値測定手段2を備えるか又は通信回線網を介して操作者の装置と接続されている。そして、食品物性解析装置と操作者の装置は、インターネットやイントラネット等の通信回線網を介して互いに接続されている。
かかる場合、操作者は、糊化特性測定手段において穀類試料の糊化特性値を測定し、その糊化特性値を、送信/受信手段6から通信回線網を介して、本プログラムが実行される装置(食品物性解析装置)に送信する。その後、通信回線網を介して送信/受信手段6において食品物性値を受信し、それを操作者の装置の表示手段4に表示することができる。
以上、説明したように、本プログラムによれば、穀類分野で広く利用されている糊化特性測定装置の表示を、従来の糊化特性値から、食品工場や食品販売分野で実際に必要とされる穀類の食品物性値(例えば米飯物性やデンプン老化性等)に変換し、「硬さ指標」、「粘り指標」、「冷やご飯指標」等として直接表示することが可能となる。これにより、糊化特性測定装置のユーザーが、糊化特性値を測定した後に他の物理化学的物性と共に計算機やコンピュータを用いて食品物性値に換算する必要がなく、糊化特性測定装置において穀類試料の糊化特性値を測定することのみで当該試料の食品物性値を得ることが可能となる。
また、糊化特性値の測定手段と食品物性の表示手段が一体化された本糊化特性測定装置は、糊化特性値から食品物性に変換するための方法やコンピュータ等を保持しないユーザーであっても、必要とする穀類の食品物性値を装置上で表示させることができるため、試験研究機関、食品工場又は穀類販売企業等による糊化特性測定装置の利用価値が高まると考えられる。
以下、実施例を用いて本発明に係る穀類の食品物性表示方法をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕米飯の付着量の解析
本実施例においては、穀類の食品物性値として、米飯の表層の物性である付着量について、コメの糊化特性値を用いて解析を行った。
表1に示す24種類の試料コメ各10gをプリンカップに秤取り、純水16mlを加え、25℃で1時間浸漬した。その後、電気炊飯器(東芝製RC183)にカップを5個ずつ並べ、75mlの純水を釜に加えて炊飯した。炊飯終了後、15分間蒸らし、各米飯をガラスシャーレに移し、ポリエチレン袋で密閉して25℃の定温器中で2時間保温した。次に、テンシプレッサーによって表層の物性(付着量:L3)を測定した。
同じコメ試料をUdy製ミルで粉砕して得た精米粉末を3g秤取し、ニューポートサイエンティフィック社製ラピッドビスコアナライザー(RVA)によって糊化特性値(最高粘度、最低粘度及び最終粘度)を測定した。測定結果を表1に示す。測定条件は、50℃にて1分間保持、4分間で50〜93℃に昇温、93℃にて7分間保持、4分間で93℃〜50℃に降温、及び50℃にて3分間保持からなる合計19分間とした。
Figure 2005221344
米飯表層の付着量(L3)は、非特許文献2に記載のように、食味官能検査の結果と高い正の相関を示すことが知られている。例えば、わが国の食味嗜好によると、米飯表層の付着量が高い場合には米飯が軟らかくて粘りの強い口当たりとなり、食味評価が高くなる。一方、付着量の低い米飯は食品評価が低くなる。
米飯表層の付着量(L3)を目的変数とし、最高粘度等の3つの糊化特性値を説明変数として重回帰分析を行った結果、下記式(IV)に示す付着量の推定式を得た。重相関係数は0.90であった。また、実際に測定した表層の付着量(L3)と、糊化特性値を用いて解析した推定値との関係を表すグラフを図4に示す。
L3=1.945+0.00007×VMAX+0.00042×VMIN−0.0006×VFIN (IV)
〔式中、VMAXは最高粘度、VMINは最低粘度、VFINは最終粘度(単位:RVU)である。〕
上記のようにして、コメの糊化特性値を測定し、その糊化特性値を用いて解析を行うことによって、コメの付着量を推定し、直接表示可能であることが示された。
〔実施例2〕米飯の耐老化性の解析
本実施例においては、穀類の食品物性値として、米飯の老化性について、コメの糊化特性値を用いて解析を行った。
表2に示す各種のコメの物理特性を、炊飯後2時間と炊飯後4℃で一晩おいた後にテンシプレッサーで測定し、両測定の米飯表層部の粘り値の比率(老化の程度)を耐老化性指標とした。また、同じ精米の粉末試料を用いて、実施例1と同様に3種類の糊化特性値(最高粘度、最低粘度及び最終粘度)をRVAにより測定した。これらの結果を表2に示す。
Figure 2005221344
また、上記の耐老化性指標を目的変数とし、上記3つの糊化特性値を説明変数として重回帰分析を行ったところ、下記式(V)に示す耐老化性の推定式を得た。相関係数は0.96であった。また、実際に測定した耐老化性指標と、糊化特性値を用いて解析した推定値との関係を表すグラフを図5に示す。
RI=−0.105−0.0081×VMAX−0.0025×VMIN+0.035×VFIN (V)
〔式中、RIは老化性指標、VMAXは最高粘度、VMINは最低粘度、VFINは最終粘度(単位:RVU)である。〕
上記のようにして、コメの糊化特性値を測定し、その糊化特性値を用いて解析を行うことによって、コメの耐老化性を推定し、直接表示可能であることが示された。
〔実施例3〕米飯の表層の硬さの解析
本実施例においては、穀類の食品物性値として、米飯の表層の硬さについて、コメの糊化特性値を用いて解析を行った。
表3に示す10種類のコメの物理特性を、炊飯後、4℃で一晩おいて糊化デンプンを老化させた後に表層の硬さをテンシプレッサーで測定した。また、同じ精米の粉末試料を用いて、実施例1と同様に3種の糊化特性値(最高粘度、最低粘度及び最終粘度)をRVAにより測定した。これらの結果を表3に示す。
Figure 2005221344
上記の米飯表層の硬さを目的変数とし、上記の3つの糊化特性値を説明変数とする重回帰分析により、下記式(VI)に示す表層の硬さの推定式を得た。相関係数は0.87であった。また、実際に測定した表層の硬さと、糊化特性値を用いて解析した推定値との関係を図6に示す。
SHC=13.4+2.69×VMAX−0.92×VFIN−2.83×BD (VI)
〔式中、SHCは冷却後の表層硬さ、VMAXは最高粘度、VFINは最終粘度、BDはブレークダウン(最高粘度−最低粘度)を表す。〕
また、表3に示した3つの糊化特性値を変数として、10品種のコメについて主成分分析を行った。具体的には、3種類の糊化特性値からなる3変数をそれぞれx1、x2及びx3とし、これらを標準化して変数z1、z2及びz3とする。ここで、zi1=(xi1−x1)/s1であり、zi2=(xi2−x2)/s2であり、zi3=(xi3−x3)/s3である(式中、iは1〜10の試料、x1、x2及びx3はそれぞれの試料各10点の平均値、s1、s2及びs3はそれぞれx1、x2及びx3の試料各10点の標準偏差を示す)。
このように求めたzi1、zi2及びzi3を用いて合成変量fを下記式(VIII)に定義する:
f=c1z1+c2z2+c3z3 (VIII)
また、fのi番目の値fiは次の式(IX)で表現される:
fi=c1z11+c1z21+c1z31+・・・+c1z101 (IX)
ここで、ベクトルf、c及び行列Zを
f=[f1,f2,・・,f10]、c=[c1,c2,・・,c10]、Z=[z11,z21,・・z101,z12,z22,・・,z102,z13,z23,・・,z103]と定義すると、
f=Zcとして表される。
標準化変量z1、z2及びz3と合成変量fとの相関係数r1、r2及びr3は、下記式(X)に示すようになる:
j=Σ((fi−f)(zij−zj))/root(Σ(fi−f)・Σ(zij−zj)(X)
〔式中、iは1〜10の各試料、jは1〜3の各変数を表す。〕
この相関係数rの2乗和Σr をQとし、このQの最大化を、ラグランジュ未定乗数法の原理によって、下記式(XI)で表される関数Lの最大化に帰着させる:
L=cc−λ(cRc−α) (XI)
〔式中、λはラグランジュ未定乗数である。〕
Lを最大にするcは、この式をcで偏微分し、それを0とおいて得ることが出来る。すなわち、下記式(XII)で表される。
δL/δc=2Rc−2λRc=0
よってRc=λRc (XII)
さらに計算を続けると、Rc=λcとなり、重みベクトルcは、変量z1、z2及びz3の相関行列(x1、x2及びx3の相関行列)Rの固有ベクトルであり、λはそれに対応する固有値となる。固有値λは、相関係数の2乗和Qに等しく、Rの最大固有値に対応する固有ベクトルcが求める重みとなる。この最大固有値に対応する固有ベクトルによって定まる合成変量fを第一主成分と呼び、Rが2番目に大きい固有値μに対応する固有ベクトルを重みとする合成変量fを第2主成分という。上述した主成分分析の詳細については、石原辰雄ら著、多変量解析、共立出版、1990年、第124〜140頁を参照されたい。
以上の解析結果を表4及び図7に示す。
Figure 2005221344
上記のようにして、コメの糊化特性値を測定し、その糊化特性値を用いて多変量解析を行うことによって、コメの表層の硬さを推定し、表示することができることが示された。
〔実施例4〕コムギを用いて製造された生麺の硬さの解析
本実施例においては、穀類の食品物性値として、コムギ製生麺の硬さについて、コムギの糊化特性値を用いて解析を行った。
表5に示す4種類の市販小麦粉の糊化特性値(ブレークダウン及びセットバック)をブラベンタービスコグラフを用いて測定した。具体的には、水分含量13.5%換算で65.0gの小麦粉を試料とし、測定容器に秤取った。450mlの純水を加え、ブラベンダービスコグラフの所定の測定条件で粘度特性を測定した。すなわち、25℃で攪拌と粘度測定を開始し、毎分1.5℃の昇温速度で加熱しながら、攪拌抵抗粘度値を記録した。温度が95℃に到達した時点で昇温を止めて一定温度で10分間、攪拌と粘度測定とを継続し、次いで毎分1.5℃の速度で降温させ、25℃まで降温と粘度測定とを継続し、前述のブレークダウン(最高粘度−最低粘度)とセットバック(最終粘度−最高粘度)とを求めた。
また、同じ小麦粉を原料として生麺を調製した。これらの麺を沸騰水中でゆであげ、12名のパネリストによるうどんの食味の官能検査を行った。官能検査結果及び糊化特性値を表5に示す。
Figure 2005221344
表5に示す結果に基づいて、うどんの硬さを目的変数とし、ブレークダウン及びセットバックを説明変数として重回帰分析を行った結果、下記式(VII)に示すうどんの硬さの推定式を得た。重相関係数は0.90であった。
HU=1.54+0.12×(VMAX−VMIN)−0.03×(VFIN−VMAX)(VII)
〔式中、HUはうどんの硬さ、VMAXは最高粘度、VMINは最低粘度、VFINは最終粘度を表す。〕
上記のようにして、コムギの糊化特性値を測定し、その糊化特性値を用いて解析を行うことによって、コムギ製生麺の硬さを推定し、直接表示可能であることが示された。
本糊化特性測定装置の構成の一例を示すブロック図である。 本食品物性表示装置の構成の一例を示すブロック図である。 穀類の食品物性値を装置前面のパネルに表示する本糊化特性測定装置の一例を示す写真である。 本プログラムの手順の一例を示すフローチャートである。 米飯表層の付着量(L3)の実測値と3つの糊化特性値を用いて解析した推定値との関係を示すグラフである。 耐老化性指標の実測値と3つの糊化特性値を用いて解析した推定値との関係を示すグラフである。 米飯の表層の硬さの実測値と3つの糊化特性値を用いて解析した推定値との関係を示すグラフである。 3つの糊化特性値を用いた主成分分析の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 糊化特性測定装置
2 糊化特性測定手段
3 CPU
4 表示手段
5 入力手段
6 送信/受信手段
7 メモリ
8 データベース
9 食品物性表示装置

Claims (20)

  1. 穀類試料の糊化特性値を糊化特性値測定手段において測定するステップ、及び
    測定した糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から該穀類試料の食品物性値を得るステップ、
    を含む、穀類の食品物性値の表示方法。
  2. 前記糊化特性値が、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、ブレークダウン、最終粘度、セットバック、及びコンシステンシーからなる群より選択される少なくとも1つの糊化特性値であることを特徴とする請求項1記載の穀類の食品物性値の表示方法。
  3. 前記食品物性値が、飯としての硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接及び膨張容積;製パンにおける比容積及び生地硬度;製麺における麺の弾性、硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接、引張り強度、及び破断強度;製菓における比容積、生地硬度;並びにデンプン収率及び老化性、からなる群より選択される少なくとも1つ以上の食品物性値であることを特徴とする請求項1又は2記載の穀類の食品物性値の表示方法。
  4. 前記解析が多変量解析であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の穀類の食品物性値の表示方法。
  5. 前記多変量解析が、線形回帰分析、非線形回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析及び分散分析からなる群より選択されることを特徴とする請求項4記載の穀類の食品物性値の表示方法。
  6. 前記穀類試料が、コメ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、モロコシ、キビ、ライムギ、及びソバ、穀類の製粉、並びに穀類を含む加工品からなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の穀類の食品物性値の表示方法。
  7. 穀類試料の糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から前記穀類試料の食品物性値を得るための手段、及び
    前記糊化特性値及び/又は食品物性値を表示するための手段、
    を含むことを特徴とする、穀類の食品物性値を表示するための装置。
  8. 前記糊化特性値が、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、ブレークダウン、最終粘度、セットバック、及びコンシステンシーからなる群より選択される少なくとも1つの糊化特性値であることを特徴とする請求項7記載の食品物性表示装置。
  9. 前記食品物性値が、飯としての硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接及び膨張容積;製パンにおける比容積及び生地硬度;製麺における麺の弾性、硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接、引張り強度、及び破断強度;製菓における比容積、生地硬度;並びにデンプン収率及び老化性、からなる群より選択される少なくとも1つ以上の食品物性値であることを特徴とする請求項7又は8記載の食品物性表示装置。
  10. 前記解析が多変量解析であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の食品物性表示装置。
  11. 多変量解析が、線形回帰分析、非線形回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析及び分散分析からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項10記載の食品物性表示装置。
  12. 前記穀類試料が、コメ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、モロコシ、キビ、ライムギ、及びソバ、穀類の製粉、並びに穀類を含む加工品からなる群より選択されることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の食品物性表示装置。
  13. 穀類試料の糊化特性値を測定するための手段、
    前記糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から前記穀類試料の食品物性値を得るための手段、及び
    前記糊化特性値及び/又は食品物性値を表示するための手段、
    を含み、穀類の食品物性値を表示することを特徴とする糊化特性測定装置。
  14. 前記糊化特性値が、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度、ブレークダウン、最終粘度、セットバック、及びコンシステンシーからなる群より選択される少なくとも1つの糊化特性値であることを特徴とする請求項13記載の糊化特性測定装置。
  15. 前記食品物性値が、飯としての硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接及び膨張容積;製パンにおける比容積及び生地硬度;製麺における麺の弾性、硬さ、粘り、付着性、凝集性、ガム性、粘性率、弾性率、損失正接、引張り強度、及び破断強度;製菓における比容積、生地硬度;並びにデンプン収率及び老化性、からなる群より選択される少なくとも1つ以上の食品物性値であることを特徴とする請求項13又は14記載の糊化特性測定装置。
  16. 前記解析が多変量解析であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の糊化特性測定装置。
  17. 多変量解析が、線形回帰分析、非線形回帰分析、判別分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析及び分散分析からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項16記載の糊化特性測定装置。
  18. 前記穀類試料が、コメ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、モロコシ、キビ、ライムギ、及びソバ、穀類の製粉、並びに穀類を含む加工品からなる群より選択されることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の糊化特性測定装置。
  19. 糊化特性値測定手段から受け取った穀類試料の糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から該穀類試料の食品物性値を得る手順、
    前記糊化特性値及び/又は食品物性値を表示手段に表示する手順、
    をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  20. 前記糊化特性値測定手段において穀類試料の糊化特性値を測定する手順をさらに含む、請求項19記載のプログラム。
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