JP2012214963A - 新聞用紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定の粘度測定器による特定の粘度特性を有する澱粉由来の高分子化合物を原紙に比較的多量に塗工することにより、紙中灰分が多い場合であっても、新聞用紙の引張強度や曲げこわさを向上させることができる。好ましくは、填料に軽質炭酸カルシウムを用いる。更に好ましくは、軽質炭酸カルシウムの含有量が5〜30重量%。
【選択図】図1
Description
さらに、新聞印刷の主流であるオフセット印刷においては、比較的タックの強い印刷インキを使用するため、用紙としては表面強度の強いことも要求される。特に表面強度の低下は、印刷機のブランケットに堆積する紙粉量や刷版の摩耗を増加させ、文字・罫線のカスレを引き起こしたり、ベタ面のガサツキ(着肉不良)などインキ着肉性にも悪影響を及ぼす。表面強度低下の問題への対応として、原紙の表面に澱粉、PVA、ポリアクリルアミドなどを主成分とする表面処理剤を塗布することが一般的であった。
(1) 澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m2以上塗工し、坪量が43g/m2未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙であって、澱粉系高分子として、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を用いる、上記新聞用紙。
(2) 原紙坪量が40.3g/m2以下である、請求項1に記載の新聞用紙。
(3) 填料として軽質炭酸カルシウムを用いる、請求項1または2に記載の新聞用紙。(4) 前記軽質炭酸カルシウムの含有量が5〜30重量%である、請求項3に記載の新聞用紙。
(5) 澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m2以上塗工し、坪量が43g/m2未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙の製造方法であって、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を原紙上に塗工することを含む、上記方法。
本発明の新聞用紙は、原紙の片面または両面に、特定の粘度特定を有する澱粉系高分子を含むクリア塗工液を塗布し、クリア(透明)塗工層を有する。本発明においてクリア塗工とは、例えば、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコータ、ロッドメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。
澱粉化合物は、通常、水中に懸濁し加熱すると、デンプン粒は吸水して次第に膨張する。加熱を続けると最終的にはデンプン粒が崩壊し、ゲル状に変化する。この現象を糊化(こか)という。このとき、デンプン懸濁液は白濁した状態から次第に透明になり、急激に粘度を増す。粒子が最大限吸水した時粘度が最大となり、粒子の崩壊により粘度は低下する。本発明においては、蒸煮により粘度が最大となった後、温度を下げて静置した時の粘度が一定の範囲のものを用いる。
澱粉系高分子化合物を、クリア塗工液に含有させる場合は、高分子化合物を溶解させるための加熱、蒸煮を必要とする。よって、一定条件で蒸煮した後のスラリーの粘度が重要となる。
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、蒸煮した後のスラリーの粘度が低いため、スラリーを高濃度化することができる。
また、例えばα化澱粉などに代表される、冷水可溶澱粉もスラリー粘度は低いが、それらの冷水可溶澱粉は、冷水に溶けるように処理されており、デキストリンなどの方が表面強度の発現性が高く有利である。
本発明の粘度を満足する澱粉系高分子としては、例えば、低粘度のヒドロキシエチル澱粉(HES)、酸化アセチル化タピオカ澱粉、デキストリンなどがある。これらの澱粉系高分子は、低粘度で粘度安定性があり、強度も優れている。
デキストリンとは、澱粉を加水分解して得られる澱粉系高分子であり、α-グルコースがグリコシド結合によって重合しており、糊精(こせい)とも呼ばれる。通常の澱粉は分子量が大きいが、デキストリンは澱粉の加水分解の工程で生ずる中間性生物であり、オリゴマー(グルコースが数個〜20個程度が結合したもの)程度の分子量しかないとされている。白色デキストリンをさらに加水分解するといわゆる黄色デキストリンとなるが、黄色デキストリンだと安定性が低く、クリア塗工層が着色するおそれがあるため、本発明においては白色デキストリンの使用が好ましい。
クリア塗工する表面塗工剤の種類として、上述した澱粉由来の高分子化合物以外にも各種の水溶性高分子を併用できる。澱粉由来の高分子化合物以外の各種の水溶性高分子の配合量は、表面塗工剤全固形分中の10重量%以下が好ましい。水溶性高分子物質としては、上述した澱粉由来の高分子化合物以外の、生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉などの澱粉;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどの変性アルコール;スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどを適宜1種以上使用できる。また、紙に吸水抵抗性を付与するために、前記の水溶性高分子物質の他に、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物、アルキル(メタ)アクリレート系化合物など一般的な表面サイズ剤を併用塗布することができるが、中性抄紙の場合、サイズ剤のイオン性がカチオン性であるものを塗布することが好ましい。
原紙
[原料パルプ]
本発明で製造される新聞用紙のパルプ原料としては、特に限定されるものではなく、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、一般的に抄紙原料として使用されているものであればよい。中でも、環境面から脱墨パルプの使用が多いほど望ましい。具体的には、全パルプ固形分に対し脱墨パルプを50重量%、好ましくは60重量%、さらに70重量%以上であることがより好ましい。もちろん、脱墨パルプを100重量%使用することが最も好ましい。
本発明の紙に使用される填料は、紙中灰分が紙の絶乾重量に対し、10〜30重量%であり、好ましくは12〜25%、さらに好ましくは14〜20%である。本発明で原紙に含有される填料としては、抄紙時に、用紙中に含有される灰分が上記の範囲となるように添加する。また、本願によれば、澱粉系高分子の塗工量を多くすることができるため、灰分を20重量%以上、さらには25重量%以上としても、新聞用紙のこわさや印刷適性を効果的に向上させることができる。灰分の上限は特にないが、紙の強度や操業性を考慮すると、40重量%以下であることが好ましい。一般に灰分は、紙に含まれる無機物の量を示すため、基本的に紙中に含まれる填料の量を反映する。紙の灰分は、紙料に添加されるフレッシュな填料に由来するものと、DIP(古紙パルプ、脱墨パルプ)などのパルプ原料によって持ち込まれるもので構成される。DIPによって持ち込まれる灰分としては、炭酸カルシウムが比較的多いが、炭酸カルシウム以外の無機成分も含まれ、炭酸カルシウムと他の無機成分との割合は、新聞古紙や雑誌古紙などの古紙の種類や回収状況などによって異なる。本発明において灰分は、JIS P 8251に規定される紙および板紙の灰分試験方法に準拠し、燃焼温度を525±25℃に設定した方法で測定される。
本発明においては、内添用として、公知の製紙用添加剤を使用することができる。製紙用薬品は、特に制限されず、種々の薬品を単独または組み合わせて用いることができる。例えば、例えば、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、填料、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの製紙用薬品を用いることができる。中でも、短時間で紙料との混合ができるという本発明の効果を大きく享受できる点で、製紙用薬品として歩留剤を添加することが特に好ましい。歩留剤の他、本発明の製紙用薬品として好適に使用できるものとしては、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添乾燥紙力増強剤;ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などの内添湿潤紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;などを挙げることができる。
[抄紙方法・抄紙機]
上記のようにして製紙用薬品を混合された紙料は、ヘッドボックスに送られ、ヘッドボックスからワイヤーに噴射されて抄紙される。本発明は、種々の抄紙機や抄紙法に適用することができる。抄紙機としては例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できるが、特に地合が悪化しやすいツインワイヤー抄紙機でも、本発明の効果を有意に発揮させることができる。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。
本発明の原紙の坪量は低坪量であることが好ましく、具体的には40g/m2以下が好ましいが、39g/m2以下がさらに好ましく、38g/m2以下がより一層好ましい。ただし、過度に低坪量とすると抄紙機で断紙が多発するため、より好ましくは30〜40g/m2、更に好ましくは35〜40g/m2である。本発明によれば、低坪量でありながら引っ張り強度や曲げこわさを良好とすることができる。したがって、原紙が低坪量であるほど、本発明の効果は顕著となる。
本発明において、原紙表面に表面処理剤を塗工する場合、例えば、プレドライヤーとアフタードライヤーの間に設置された表面塗工装置を利用することができる。塗工装置は、一般に使用されるもの用いることができ、新聞用紙用の抄紙機ではゲートロールサイズプレスなどのフィルムトランスファー型のサイズプレスが一般的に用いられ、本発明においても好ましく用いることができる。
本発明においては、オンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより塗工前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくこともできる。
本発明のオフセット印刷用新聞用紙は、顔料塗工により顔料塗工層を設けることもできる。本発明の印刷用紙における顔料塗工層は、単層であっても多層であってもよい。本発明において塗工方法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。もちろん、本発明においては、このような顔料塗工を施さなくてもよい。顔料塗工を施した場合、紙の灰分は、顔料塗工層に含まれる無機物により高くなるため、本発明のある態様において、10重量%〜40重量%程度が好ましく、12重量%〜35重量%程度がより好ましい。
本発明において、塗工液の調製方法は特に限定されず、コータの種類によって適宜調整できる。ブレード方式のコータを用いる場合は、塗工液の固形分濃度は40〜70重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%である。塗工液粘度は60rpmで測定したB型粘度が500〜2000mPa・sの範囲であることが好ましい。
本発明の新聞用紙の紙質は、下記に規定される方法に準じて測定した。
(1)坪量:ISO536
(2)紙中灰分:ISO1762
(3)引張り強さ(MD):JIS P 8113
(4)ISO曲げこわさ(MD):ISO2493に則り、MD方向(抄紙方向)の曲げこわさを測定した
(5)操業性:ゲートロールコーターで塗工中にボイリング、ミストの発生状況を目視にて次の基準により3段階で評価した。○:良好、△:やや悪い。×:悪い
実施例1
DIP(カナダ標準濾水度180ml)80部、TMP(濾水度100ml)15部、及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、濾水度600ml)5部を混合離解して調製したパルプスラリーに、対パルプ固形分に対し有姿0.5%の液体硫酸バンドを添加し、製品灰分が15%になるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)を添加し、対パルプ固形分350ppmの歩留まり向上剤を添加した後、このスラリーを1%まで希釈して紙料を調成した。
実施例2
原紙坪量を38.0g/m2とし、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉の塗工量を2.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
接着剤を白色デキストリン(Roquette社製Stabilys A040、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度100mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
接着剤を低粘度尿素燐酸エステル化澱粉(日本食品加工社製MS4600、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度2000mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
接着剤を低粘度酸化澱粉(敷島スターチ社製マーメイド210、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度2500mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
原紙坪量を34.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:37.0g/m2)。
製品灰分が20%となるように軽質炭酸カルシウムを添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
原紙坪量を39.2g/m2とし、ゲートロールコーターでの塗工量を0.8g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
原紙坪量を42.0g/m2とし、接着剤をヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度8000mPa・s以上)に変更し、澱粉塗工量を0.8g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:42.8g/m2)。なお、現在一般的な超軽量新聞用紙(SL、42.8g/m2)においては、42g/m2程度の原紙に両面で0.8g/m2程度の表面塗工を行うことが一般的である。
接着剤をヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度8000mPa・s以上)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
接着剤を白色デキストリン(Roquette社製Stabilys A020、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度6000mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
原紙坪量を39.2g/m2とし、ゲートロールコーターでの塗工量を0.8g/m2とし、製品灰分が20%となるように軽質炭酸カルシウムを添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m2)。
Claims (5)
- 澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m2以上塗工し、坪量が43g/m2未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙であって、
澱粉系高分子として、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を用いる、上記新聞用紙。 - 原紙坪量が40.3g/m2以下である、請求項1に記載の新聞用紙。
- 填料として、軽質炭酸カルシウムを用いる、請求項1または2に記載の新聞用紙。
- 上記軽質炭酸カルシウムの含有量が、5〜30重量%である、請求項3に記載の新聞用紙。
- 澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m2以上塗工し、坪量が43g/m2未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙の製造方法であって、
固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を原紙上に塗工することを含む、上記方法。
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