JP2005215652A - 感光性組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
即ち、本発明の感光性組成物は、(A)下記一般式(1)で表される構造単位とフェノール性水酸基とを有する樹脂、(以下、適宜「変性フェノール樹脂」と称する)、(B)赤外線吸収剤、及び、(C)ノボラック樹脂を含有することを特徴とする。
本発明の感光性組成物に含まれる変性フェノール樹脂は、その分子の末端基として、非共有電子対結合部位と水素結合可能な水素原子とを有し、熱的に可逆な2以上の水素結合を形成しうる置換基(以下、適宜「特定置換基」と称する)を有するため、これら特定置換基同士が、後に詳述する特徴的な水素結合を形成する。このような感光性組成物を感光層として用いた平版印刷版原版は、耐薬品性に優れるとともに、アルカリ水溶液に対しても高耐性(耐アルカリ性)を発現するものと考えられる。また、この水素結合は、熱的に可逆であることから、画像形成時の露光により容易に解除され、現像により露光部(非画像部)が除去される。
さらに、本発明の感光性組成物は、分子内にフェノール性水酸基を有するノボラック樹脂を併用することで、溶解ディスクリが大幅に向上する。これは、未露光部(画像部)においては、前記特定置換基同士の相互作用に加えて、フェノール性水酸基同士、或いは該フェノール性水酸基と組成物中に共存する溶解抑止能を有する成分とが相互作用を形成し、耐アルカリ性に優れた膜が形成され、一方、露光部(非画像部)においては、前記各相互作用は速やかに解除されてフェノール性水酸基を有する樹脂本来の優れたアルカリ溶解性が発現されるためと考えられる。
以下、このような感光性組成物に含まれる各成分を順次詳細に説明する。
本発明に用いられる変性フェノール樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位とフェノール性水酸基とを有することを特徴とする。
Xは、2価の連結基を表し、好ましくは、下記式からなる群より選ばれる部分構造を、少なくとも1つ有する2価の連結基を表す。ここで「部分構造を少なくとも1つ有する」とは、Xで表される連結基が、(1)下記部分構造のいずれか1つのみからなるものであってもよく、(2)下記部分構造を複数個連結させた連結基であってもよく、或いは、(3)上記(1)又は(2)の連結基と他の炭化水素基等とを連結させた連結基であってもよい。なお、上記(2)においては、複数存在する部分構造のそれぞれが、同種であっても異種であってもよく、連結の順序についても任意である。また、下記部分構造の表記は、連結基の連結方向を規定するものではない。
ここで、非共有電子対結合部位とは、後述の水素結合可能な水素原子と水素結合を形成しうる部位を指し、具体的には、=O、=N−、=S、=P−、などが挙げられ、中でも、水素原子とより強い水素結合を形成する観点からは、=O、=N−が好ましい。
このように、本発明に係る特定置換基は、他の特定置換基との間に2以上の水素結合が形成されるため、分子の回転運動が起こらない安定した相互作用が形成され、優れた耐薬品性の向上効果が得られるものと考えられる。なお、この水素結合は、熱的に可逆であるため、本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の感光層として用いた場合、画像形成時のレーザー露光等で容易に解除され、現像により露光部(非画像部)が除去される。
特に、以下の如き、前記一般式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位とから構成される樹脂であることが最も好ましい。
また、変性フェノール樹脂は、構造単位(1)、構造単位(2)以外の共重合成分を有していてもよい。
以下に、本発明に係る変性フェノール樹脂の構造単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る特定フェノール樹脂の合成方法は特に限定されるものではないが、例えば、水酸基の一部を特定置換基に置換するためのフェノール樹脂を、溶媒中で、Sn金属を触媒として、イソシアネート基と共に反応(求核付加反応)させて、ウレタン結合を形成することにより製造することができる。
即ち、水酸基の一部を特定官能基に置換するためのノボラック型フェノール樹脂の総重量を、濃度20〜80質量%(好ましくは30〜70質量%)になるよう溶媒に溶解し、これに当該ノボラック型フェノール樹脂が有する水酸基の総モル数に対して、イソシアネート基含有化合物をそのモル比率が特定官能基に置換したいモル比率になるように加え、更にSn金属を触媒としてイソシアネート基含有化合物のモル数に対するモル比率が0.5〜5.0%(好ましくは1.0〜2.5)になるように10℃〜200℃の範囲の温度条件下で加え、その温度範囲に維持しながら数時間撹拌することにより行うことができる。なお、反応温度は、20℃〜150℃の範囲であることが好ましく、20℃〜100℃の範囲であることがより好ましい。
このとき、上記反応に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメトルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルエーテル(DME)、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられ、中でも、テトラヒドロフラン(THF)を用いることが好ましい。
また、上記Sn金属としては、ジブチルスズジラウレート(dibutyltin dilaurate)を用いることが好ましい。
なお、本発明においては、前記変性フェノール樹脂の1種または2種以上を適宜混合して用いることができる。
本発明の感光性組成物に含まれる赤外線吸収剤は、700nm以上、好ましくは750〜1200nmの赤外域に光吸収域を有し、この範囲の波長域の光により、光/熱変換能を発現する物質を指す。具体的には、上記波長域の光を吸収し熱を発生する種々の染料または顔料を用いることができる。
本発明の感光性組成物に含まれるノボラック樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−/p−混合、m−/o−混合およびo−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。またノボラック樹脂の代わりにノボラック樹脂誘導体を用いてもよく、これについては上述したノボラック樹脂の誘導体が挙げられる。
このようなノボラック樹脂を併用することで、未露光部におけるフェノール性水酸基に起因する溶解抑止能と、露光部における優れたアルカリ溶解性の機能により、溶解ディスクリが大幅に向上するものと考えられる。
また、本発明においては、バインダー樹脂として、上述した(A)変性フェノール樹脂及び(C)ノボラック樹脂以外の水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂を併用してもよい。
本発明の感光性組成物には、更に必要に応じて以下に挙げるような種々の添加剤を添加することができる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩及び4級アンモニウム塩が特に好ましい。特に、ジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。また4級アンモニウム塩としては、特開2002−229186号公報に記載[化5]、[化6]中の(1)〜(10)に示される4級アンモニウム塩が好ましい。
上記の環状酸無水物、フェノール類、及び有機酸類の感光性組成物全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光性組成物全固形分に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
本発明においては、前記感光性組成物を、平版印刷版原版の感光層として適用することが好ましい。本発明に係る平版印刷版原版は、前記各成分を溶媒に溶かして、感光層塗布液とし、適当な支持体上に塗布することにより作製することができる。また、目的に応じて、後述する保護層、下塗層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
感光層塗布液中の前記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般に、乾燥後の塗膜量が0.5〜5.0mg/m2となる量が好ましく、0.6〜2.0mg/m2となる量がより好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフイルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフイルム等が挙げられる。
中でも、ポリエステルフイルム又はアルミニウム板が好ましく、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフイルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に前記感光層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。この下塗層を設けることで、支持体と感光層との間の下塗層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、本発明に係る感光層は、この下塗層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、赤外線レーザに対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である感光層自体が下塗層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、露光部においては、溶解抑制能が解除された感光層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの下塗層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この下塗層は有用であると考えられる。
さらに、特開2000−108538号公報、特願2002−257484号公報、特願2003−78699号公報、等に記載されているような化合物についても、必要に応じて用いることができる。
本発明に係る平版印刷版原版は熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
本発明に係る平版印刷版原版に適用することのできる現像液は、pHが9.0〜14.0の範囲、好ましくは12.0〜13.5の範囲にある現像液である。現像液(以下、補充液も含めて現像液と呼ぶ)には、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤が挙げられる。これらのアルカリ水溶液は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明に係る平版印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿を用いて整面液を平版印刷版上に塗布する方法や、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターを用いて塗布する方法などが挙げられる。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることにより、さらに好ましい結果を与える。
〔実施例1〕
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を経て処理することで支持体を作製した。
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体Aを作製した。
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Bを作製した。
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Cを作製した。
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体Dを作製した。
上記によって得られた支持体A、B、C、Dには、引き続き下記の親水処理、下塗り処理を行った。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体A〜Dを温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
・下記高分子化合物I 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
次に、上記で得られた下塗層付き支持体Aに、下記組成の感光層塗布液Aをワイヤーバーで塗布した後、乾燥装置にて140℃で70秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.4g/m2とした実施例1のポジ型平版印刷版原版を得た。
・変性フェノール樹脂A(下記構造、重量平均分子量4,000) 1.50g
・m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック樹脂 0.50g
(重量平均分子量:5,000)
・シアニン染料X(下記構造) 0.10g
・エチルバイオレット−6−ナフタレンスルホン酸 0.015g
・フッ素系界面活性剤 0.06g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 20.0g
・メチルアルコール 10.0g
実施例1において、支持体Aの代わりに支持体Bを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例2の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、支持体Aの代わりに支持体Cを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例3の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、支持体Aの代わりに支持体Dを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例4の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、下塗液に含まれる高分子化合物Iの代わりに下記高分子化合物IIを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例5の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、変性フェノール樹脂Aの代わりに、下記構造の変性フェノール樹脂B(重量平均分子量:3,000)を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例6の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、変性フェノール樹脂Aの代わりに、下記構造の変性フェノール樹脂C(重量平均分子量:3,000)を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例7の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック樹脂(重量平均分子量:5,000)の代わりに、フェノール/m−クレゾール(70/30)ノボラック樹脂(重量平均分子量:8,000)を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例8の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック樹脂(重量平均分子量:5,000)の代わりに、o−クレゾール/p−クレゾール(50/50)ノボラック樹脂(重量平均分子量:3,000)を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って実施例9の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、感光層塗布液Aの代わりに、下記組成の感光層塗布液Bを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って比較例1の平版印刷版原版を得た。
<感光層塗布液B>
・m−クレゾール/p−クレゾール(60/40)ノボラック樹脂 2.50g
(重量平均分子量:5,000)
・シアニン染料X(前記構造) 0.10g
・エチルバイオレット−6−ナフタレンスルホン酸 0.015g
・フッ素系界面活性剤 0.06g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 20.0g
・メチルアルコール 10.0g
実施例1において、感光層塗布液Aの代わりに、下記組成の感光層塗布液Cを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って比較例2の平版印刷版原版を得た。
<感光層塗布液C>
・樹脂M(下記構造、重量平均分子量:4,000) 1.50g
・シアニン染料Y(下記構造) 0.10g
・着色剤 0.015g
(AIZENSPILONBLUEC−RH、保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.06g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 15.0g
・メチルアルコール 7.0g
実施例1において、感光層塗布液Aの代わりに、下記組成の感光層塗布液Dを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って比較例3の平版印刷版原版を得た。
・樹脂M(前記構造、重量平均分子量:4,000) 1.50g
・m−クレゾールノボラック(重量平均分子量:3,000) 1.00g
・シアニン染料Y(前記構造) 0.10g
・着色剤 0.015g
(AIZENSPILONBLUEC−RH、保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.06g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 20.0g
・メチルアルコール 10.0g
実施例1において、感光層塗布液Aの代わりに、下記組成の感光層塗布液Eを用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って比較例4の平版印刷版原版を得た。
<感光層塗布液E>
・変性フェノール性樹脂A 2.50g
・シアニン染料X 0.10g
・エチルバイオレット6−ナフタレンスルホン酸 0.015g
・フッ素系界面活性剤 0.06g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 20.0g
・メチルアルコール 10.0g
(現像ラチチュード)
得られた実施例1〜9、及び比較例1〜4のポジ型平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter800にて、ビーム強度10.0W、ドラム回転速度250rpmの条件でテストパターンの画像状に描き込み(露光)を行った。
次に、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2Rの水希釈(1:9)にて、電導度が37mS/cmになるまで炭酸ガスを吹き込んだ液及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFG−1の水希釈(1:1)液を仕込んだ、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−940Hを用い、液温を30度に保って現像時間12秒で現像した。その後、現像液にDT−2Rの水希釈(1:9)液を適量加え、電導度を39mS/cmに調整し、先ほどと同じくテストパターンを画像状に描き込んだ平版印刷版原版を現像した。更に同方法で電導度を2mS/cm上げ、画像の現像による膜減りが顕著に観察されるまでこの作業を続けた。
これら現像後の実施例及び比較例の版において、各電導度で現像した版を、現像不良の非画像部残膜に起因する汚れや着色がないかを50倍のルーペで確認し、良好に現像が行えた現像液の電導度を決定した。次に、実質上耐刷に影響を及ぼさない程度に現像膜減りが維持される限界の電導度、具体的には、現像前のベタ部の画像濃度をGRETAG反射濃度計D196(GretagMacbeth社製)で測定して、この画像濃度から0.10以上少ない画像濃度となるベタ部が形成された現像液の電導度を決定した。
良好に現像が行えた現像液の電導度と現像膜減りしない限界の電導度との幅を現像ラチチュードとした。この数値が大きいほど現像ラチチュードが広いことを表す。結果を表1に記す。
得られた実施例1〜9及び比較例1〜4のポジ型平版印刷版原版の未露光部にクリーナー液(富士写真フイルム(株)製:「プレートクリーナーCL2」)を滴下し、1分後の滴下部の濃度変化を目視により比較した。結果を表1に記す。ここで、○は滴下前後の濃度差が無かったものを示し、×は滴下前後で明確な濃度差がみられたものを示す。
得られた実施例1〜9及び比較例1〜4のポジ型平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter3244にて、ビーム強度10.0W、ドラム回転速度250rpmの条件でテストパターンの画像状に描き込み(露光)を行い、上記の条件で露光した平版印刷版原版を、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP−2W(1:1で希釈したもの)を仕込んだ、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−940Hを用い、液温を30℃に保ち現像時間12秒で現像した。その後、富士写真フイルム株式会社製バーニング整面液BC−7で版面をふき、バーニング装置BP−1300を用いて、230℃で3分間処理し、ハイデルKOR−D機で印刷した。印刷により正常な印刷物が得られた枚数を表1に記す。
一方、変性フェノール性樹脂を用いなかった比較例1〜3は、耐薬品性に問題があり、溶解ディスクリも実施例と比べ劣っていた。また、変性フェノール樹脂のみを用い、ノボラック樹脂を併用しなかった比較例4は、耐薬品性に問題はないものの、溶解ディスクリが著しく低下していることが確認された。
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