特許文献5〜7に記載された装置は、車両上で橋体モジュールを連結し、その連結体を対岸に差し伸べて行く。長大な橋体モジュール連結体をカンチレバー式に突き出すことになり、容易なことでは橋体モジュール連結体の質量がなすモーメントを支えきれない。そこで、地面を支えとする支持台を車両前方に張り出させ、この支持台から橋体モジュール連結体を繰り出したり(特許文献5、6)、2台の車両を前後にタンデム配置して前方車両の後部に設けられたマニピュレータを後方車両に係合させ、前方車両の後部が浮こうとするのを後方車両の質量により抑える(特許文献7)といった工夫がなされている。
上記のような工夫をこらしたにせよ、長大な橋体モジュール連結体をカンチレバーとして突き出すという工法に不安定さがつきまとうのは避けられない。また、特許文献5、6に記載された装置では、架設機構の構造上、橋体モジュールの道床面の中央に隙間を設ける必要がある。そのため、両側の道床面間隔に自身のトレッド幅が一致する大型車両はこの仮設橋を渡ることができるが、トレッド幅の狭い小型車両は渡れないという制約がある。
一方特許文献1には上記と異なるアプローチの仮設橋架設装置が記載されている。すなわち、道床部に先立って案内梁を対岸に渡し、この案内梁の上に道床部のモジュールを順次吊り下ろして連結し、前方に押し出すという作業を繰り返すことにより、道床部連結体を対岸に届かせるものである。この工法によれば、カンチレバーとして突き出すのが道床部よりも軽量な案内梁なので、案内梁の長さが長くても安定性が損なわれにくいというメリットがある。
しかしながら特許文献1記載の装置にもいくつかのデメリットがある。
第1のデメリットは、クレーンを備えた架設車と、資材を運ぶ運搬車の役割が明確に分かれていて、これらがペアにならないかぎり作業を進められないという点である。すなわち、短い仮設橋を架ければ済む場合でも、最低2台の車両を出動させねばならず、機材と人件費のコストがかかる。
第2のデメリットは、案内梁と道床部が全くの別体であるという点である。作業手順から考えれば、道床部の方を先に運搬車に積んでおき、その上に案内梁を積むことになる。あるいは、案内梁と道床部を別々の運搬車に積むことになる。いずれにせよ、大きな運搬容量を必要とし、運搬コスト増大要因となる。
第3のデメリットは、クレーンを操って道床部を案内梁の上に吊り下ろさねばならないという点である。このことによって、作業要員には一定の玉掛技能が必要となる。また、この装置が戦闘地域で用いられる場合など、背の高いクレーンによって敵対勢力に発見されやすくなるという問題もある。
第4のデメリットは、架設車と運搬車の構造が全く別なので、機動性を一致させにくいという点である。2台の車両の機動性が一致しなければ、性能の低い方の車両に合わせて行動する必要が生じ、活動の効率化の妨げとなる。
本発明は上記のような従来の仮設橋架設装置の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、仮設橋架設作業を無理なく安定して、しかも能率良く行うことのできる架設装置及びこの装置を用いる仮設橋架設方法を提供することにある。また、単数の架設車が架設作業を行うか、複数の架設車が協働して架設作業を行うかに関わらず、仮設橋架設作業を無理なく安定して、しかも能率良く行うことのできる架設装置及び架設方法を提供することにある。
上記目的の達成のため、本発明では、仮設橋の架設装置及び架設方法を次のように構成する。
(1)仮設橋の架設装置は、架設車と、前記架設車に複数段積み重ねて搭載される橋体モジュールと、橋体モジュール長手方向にスライドできるよう前記橋体モジュールの各々に格納されるとともに、橋体モジュールからの繰り出し及び離脱が可能なガイドビームモジュールと、前記架設車の前部から突き出す架設用ブームと、前記架設車上において、前記搭載位置にある橋体モジュールを持ち上げてその下に別の橋体モジュールを受け入れる空間を形成し、また複数段積み重ねた橋体モジュールの内、最下段以外のものを持ち上げて最下段の橋体モジュールのみの前記架設用ブームへの搭載を可能とするリフト装置と、前記ガイドビームモジュール又はその連結体を前記架設用ブームから繰り出すガイドビーム繰り出し装置と、単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールを前記架設用ブームから繰り出し、先端が着地した単体の、若しくは連結された前記ガイドビームモジュールにこの橋体モジュールの支持を委ねる橋体繰り出し装置と、先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールの後端を着地させる着地装置とを備える。
(2)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記架設車が自走能力を有する。
(3)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記架設車は自走能力を有する他の車両に連結される。
(4)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記架設用ブームが前記着地装置の機能を果たす。
(5)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記ガイドビーム繰り出し装置又は橋体繰り出し装置が、単体の、若しくは連結された前記ガイドビームモジュール又は単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールを前記架設車に引き上げるのに用いられる。
(6)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、着地状態にある単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールの一端を持ち上げて前記架設用ブームに搭載するマニピュレータを備える。
(7)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記橋体モジュールは断面二次モーメント増大方向に変形可能であるとともに、その変形に要する動力が架設車側の動力源より供給される。
(8)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記橋体モジュールは断面二次モーメント増大方向に変形可能であるとともに、その変形に要する動力が橋体モジュール側の動力源より供給される。
(9)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記動力源がエネルギ貯蔵型のものである。
(10)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記橋体モジュールは、幅全体が道床となった全床路の形態を備える。
(11)前記のように構成される仮設橋の架設装置において、前記架設車に、繰り出される橋体モジュールのアラインメント調整機構を設ける。
(12)前記のような架設装置を使用し、下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(ア)仮設橋架設場所に架設車を配置するステップ
(イ)複数段積み重ねられた前記橋体モジュールの内、当該時点で必要とされる数を前記架設用ブームに搭載し、その数が複数である場合は、橋体モジュール同士の連結と、前記ガイドビームモジュール同士の連結を行うステップ
(ウ)単体の、若しくは連結された前記ガイドビームモジュールを前記架設用ブームから繰り出し、先端を着地させるステップ
(エ)単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールを前記架設用ブームから繰り出し、先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された前記ガイドビームモジュールにこの橋体モジュールの支持を委ねるステップ
(オ)先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールの後端を着地させるステップ。
(13)前記(7)〜(9)のいずれかに記載された架設装置を使用し、上記(ア)〜(オ)のステップに続き、さらに下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(カ)前記動力源より動力を供給して、前記橋体モジュールを断面二次モーメント増大方向に変形させるステップ。
(14)前記のような架設装置において、架設車を2台使用し、下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(ア−1)仮設橋架設場所に、2台の架設車を前後にタンデム配置するステップ
(イ−1)複数段積み重ねられた前記橋体モジュールの内、当該時点で必要とされる数をそれぞれが属する架設車の前記架設用ブームに搭載し、その数が複数である場合は、橋体モジュール同士の連結と、前記ガイドビームモジュール同士の連結を行うステップ
(ウ−1)単体の、若しくは連結された前記ガイドビームモジュールを前方の架設車の架設用ブームから繰り出し、先端を着地させるステップ
(エ−1)単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールを前方の架設車の架設用ブームから繰り出し、先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された前記ガイドビームモジュールにこの橋体モジュールの連結体の支持を委ねるステップ
(オ)先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールの後端を着地させるステップ。
(15)前記(7)〜(9)のいずれかに記載された架設装置を使用し、前記(ア−1)〜(オ)のステップに続き、さらに下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(カ)前記動力源より動力を供給して、前記橋体モジュールを断面二次モーメント増大方向に変形させるステップ。
(16)前記(6)に記載された架設装置を使用し、前記(ア−1)のステップと(イ−1)のステップの間で下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(ア−2)後方の架設車の前記マニピュレータで前方の架設車の後部をつかみ、架設車同士のアラインメントを調整するステップ。
(17)前記(11)に記載された架設装置を使用し、前記(ア−1)のステップと(イ−1)のステップの間で下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(ア−3)前方の架設車及び後方の架設車の前記アラインメント調整装置の一方又は双方を用いて、前方の架設車から繰り出される橋体モジュールと後方の架設車から繰り出される橋体モジュールとのアラインメントを調整するステップ。
(18)架設車と、前記架設車に複数段積み重ねて搭載される橋体モジュールと、前記架設車の前部から突き出す伸縮式ガイドビームとを備える架設装置を使用し、下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(ア)仮設橋架設場所に架設車を配置するステップ
(イ)前記伸縮式ガイドビームを所定の長さにするステップ
(ウ)複数段積み重ねられた前記橋体モジュールの内、当該時点で必要とされる数を前記伸縮式ガイドビームに搭載し、その数が複数である場合は、橋体モジュール同士の連結を行うステップ
(エ)前記伸縮式ガイドビームの先端を着地させるステップ
(オ)単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールを架設車から繰り出し、先端が着地状態にある前記伸縮式ガイドビームにこの橋体モジュールの支持を委ねるステップ
(カ)先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールの後端を着地させるステップ。
(キ)前記伸縮式ガイドビームを架設車に格納するステップ。
(19)前記(18)のように構成される仮設橋の架設方法において、前記架設車が自走能力を有する。
(20)前記(18)のように構成される仮設橋の架設方法において、前記架設車は自走能力を有する他の車両に連結される。
(21)架設車と、前記架設車に複数段積み重ねて搭載される橋体モジュールと、前記架設車上に起倒可能に設けられ、先端に滑車を有するゲートと、単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールを前記架設車の外に繰り出す橋体繰り出し装置と、前記架設車に設置されるものにして、繰り出し及び巻き取り可能なワイヤを備え、このワイヤを前記支柱の滑車を介して前記繰り出されようとする単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールに連結し、単体の、若しくは連結された橋体モジュールの姿勢を制御するウィンチとを備える架設装置を使用し、下記のステップを遂行して仮設橋を架設する。
(ア)仮設橋架設場所に、2台の架設車を前後にタンデム配置するステップ
(イ)前方の架設車においては前記ゲートを倒伏状態にし、後方の架設車においては前記ゲートを起立状態にするステップ
(ウ)後方の架設車に搭載された前記橋体モジュールの内、当該時点で必要とされるものを、前記起立状態のゲートをくぐらせて前記倒伏状態のゲートに載置するステップ
(エ)前方の架設車に搭載された前記橋体モジュールと後方の架設車に搭載された前記橋体モジュールの内、当該時点で必要とされるもの同士の連結を行うステップ
(オ)単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールに、前記起立状態のゲートの滑車を介して、後方の架設車の前記ウィンチのワイヤを連結するステップ
(カ)前方の架設車の前記橋体繰り出し装置及び後方の架設車の前記ウィンチを制御して、単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールを、姿勢を制御しつつ前方の架設車から繰り出すステップ
(キ)単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールの先端を着地させるステップ
(ク)単体の、若しくは連結された前記橋体モジュールの後端を着地させ、前記ワイヤを外すステップ。
(22)前記(21)のように構成される仮設橋の架設方法において、前記架設車が自走能力を有する。
(23)前記(21)のように構成される仮設橋の架設方法において、前記架設車は自走能力を有する他の車両に連結される。
(1)架設車に橋体モジュールを複数段積み重ねて搭載するから、架設車を1台出動させるだけでも異なる長さの仮設橋を架設することが可能である。各橋体モジュールには、橋体モジュール長手方向にスライドできるよう格納され、橋体モジュールからの繰り出し及び離脱が可能なガイドビームモジュールを設けたから、最初にガイドビームモジュールを繰り出して対岸に届かせることにより、そのガイドビームモジュールを伝う形で橋体モジュールをカンチレバー状態に陥らせることなく対岸に届かせることができる。これにより、橋体モジュールを無理なく安定して架設できる。ガイドビームモジュールはカンチレバー状態で突き出されるが、こちらの方は橋体モジュールに比べ軽量なので、架設車を不安定にすることがない。
またガイドビームモジュールは橋体モジュールに入れられた状態で運搬されるから、橋体モジュールとガイドビームモジュールを合わせた運搬物の総体積を絞ることができる。これにより、架設車の全高を低くし、トンネルやガードをくぐり抜けやすくできる、あるいは資材運搬に必要とされる車両数を増やさずに済むといったメリットがもたらされる。
架設車には、搭載位置にある橋体モジュールを持ち上げてその下に別の橋体モジュールを受け入れる空間を形成し、また複数段積み重ねた橋体モジュールの内、最下段以外のものを持ち上げて最下段の橋体モジュールのみ架設用ブームに搭載することを可能とするリフト装置と、単体の、若しくは連結されたガイドビームモジュールを架設用ブームから繰り出すガイドビーム繰り出し装置と、単体の、若しくは連結された橋体モジュールを架設用ブームから繰り出す橋体繰り出し装置とが設けられているから、モジュール同士を連結する作業、あるいは単体の、若しくは連結されたモジュールを繰り出す作業を能率良く行うことができる。ガイドビーム繰り出し装置及び橋体繰り出し装置の動作方向を逆転させれば、ガイドビームモジュール及び橋体モジュールを架設車に引き上げ、モジュール同士が連結されていれば連結を解除するといった作業を能率良く行うことができる。
また、先端が着地した橋体モジュール又はその連結体の後端を着地装置で着地させるから、着地作業を安全に遂行することができる。
(2)架設車が自走能力を有するから、架設車のみで作業チームを編成し、自由に移動することができる。また、機動性の相等しい架設車同士でチームを編成することにより、活動の効率化を図ることができる。
(3)架設車は自走能力を有する他の車両に連結されるものであるから、自身は走行用のエンジンを持たない、スリムな構成とすることができる。また、架設車同士を連結することにより、1台の自走車両で複数の架設車を移動させることも可能である。
(4)架設用ブームが着地装置の機能を果たすから、架設用ブームには大質量を支えるために強大なパワーが付与されていることを利用して、先端が着地した単体の、若しくは連結されたガイドビームモジュール又は単体の、若しくは連結された橋体モジュールの後端を安全かつ確実に着地させることができる。
(5)ガイドビーム繰り出し装置又は橋体繰り出し装置が、単体の、若しくは連結されたガイドビームモジュール又は単体の、若しくは連結された橋体モジュールを架設車に引き上げるのに用いられるから、仮設橋の撤収作業を能率良く行うことができる。
(6)着地状態にある単体の、若しくは連結された橋体モジュールの一端を持ち上げて架設用ブームに搭載するマニピュレータを備えるから、力仕事をマニピュレータにまかせ、少ない人員で効率良く仮設橋の撤収作業を進めることができる。
(7)橋体モジュールは断面二次モーメント増大方向に動力で変形させることができるから、橋体モジュールの両端を着地させた後、橋体モジュールを変形させて断面二次モーメントを増大させ、通行する車両の質量に耐え得るようにすることができる。また変形に要する動力は架設車側の動力源より与えられるから、大動力の確保が容易であり、橋体モジュールを容易且つ速やかに所期の形状にすることができる。
(8)橋体モジュールは断面二次モーメント増大方向に動力で変形させることができるから、橋体モジュールの両端を着地させた後、橋体モジュールを変形させて断面二次モーメントを増大させ、通行する車両の質量に耐え得るようにすることができる。また変形に要する動力は橋体モジュール側の動力源より与えられるから、架設車がその場を離れたとしても、橋体モジュールを容易且つ速やかに所期の形状にすることができる。
(9)動力源がエネルギ貯蔵型のものであるから、橋体モジュールの変形作業を動力発生用あるいは発電用のエンジン音を立てることなく静粛に遂行することができる。
(10)橋体モジュールは、幅全体が道床となった全床路の形態を備えるから、小型車両や歩行者でも安全に通行することができる。
(11)架設車に、繰り出される橋体モジュールのアラインメント調整機構を設けたから、2台の架設車を前後にタンデム配置する場合、橋体モジュールの進路が前後でくい違わないように調整し、前後の架設車間での橋体モジュールの乗り移りをスムーズに進めることができる。
(12)前記のような架設装置を使用し、仮設橋架設場所に架設車を配置するステップと、複数段積み重ねられた橋体モジュールの内、当該時点で必要とされる数を架設用ブームに搭載し、その数が複数である場合は、橋体モジュール同士の連結と、ガイドビームモジュール同士の連結を行うステップと、単体の、若しくは連結されたガイドビームモジュールを架設用ブームから繰り出し、先端を着地させるステップと、単体の、若しくは連結された橋体モジュールを架設用ブームから繰り出し、先端が着地状態にある単体の、若しくは連結されたガイドビームモジュールにこの橋体モジュールの支持を委ねるステップと、先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された橋体モジュールの後端を着地させるステップを順次遂行することにより、仮設橋の架設作業を無理なく安全に進めることができる。
(13)前記(7)〜(9)のいずれかに記載された架設装置を使用し、前記(12)のステップに続き、動力源より動力を供給して橋体モジュールを断面二次モーメント増大方向に変形させるステップを遂行することにより、仮設橋の耐荷重性能をさらに高めることができる。
(14)前記のような架設装置において、架設車を2台使用し、仮設橋架設場所に、2台の架設車を前後にタンデム配置するステップと、複数段積み重ねられた橋体モジュールの内、当該時点で必要とされる数をそれぞれが属する架設車の架設用ブームに搭載し、その数が複数である場合は、橋体モジュール同士の連結と、ガイドビームモジュール同士の連結を行うステップと、単体の、若しくは連結されたガイドビームモジュールを前方の架設車の架設用ブームから繰り出し、先端を着地させるステップと、単体の、若しくは連結された橋体モジュールを前方の架設車の架設用ブームから繰り出し、先端が着地状態にある単体の、若しくは連結されたガイドビームモジュールにこの橋体モジュールの支持を委ねるステップと、先端が着地状態にある単体の、若しくは連結された橋体モジュールの後端を着地させるステップを順次遂行することにより、仮設橋の架設作業を無理なく安全に進めることができる。また2台分の橋体モジュールを連結することにより、長い仮設橋を形成することができる。
(15)前記(7)〜(9)のいずれかに記載された架設装置を使用し、前記(14)のステップに続き、動力源より動力を供給して橋体モジュールを断面二次モーメント増大方向に変形させるステップを遂行することにより、仮設橋の耐荷重性能をさらに高めることができる。
(16)前記(6)に記載された架設装置を使用し、前記(14)のステップの中で、後方の架設車のマニピュレータで前方の架設車の後部をつかみ、架設車同士のアラインメントを調整するステップを遂行することにより、ガイドビームモジュール又は橋体モジュールの進路が前後でくい違わないように調整し、前後の架設車間でのモジュールの乗り移りをスムーズに進めることができる。
(17)前記(11)に記載された架設装置を使用し、前記(14)のステップの中で、前方の架設車及び後方の架設車のアラインメント調整装置の一方又は双方を用いて、前方の架設車から繰り出される橋体モジュールと後方の架設車から繰り出される橋体モジュールとのアラインメントを調整するステップを遂行することにより、橋体モジュールの進路が前後でくい違わないように調整し、前後の架設車間でのモジュールの乗り移りをスムーズに進めることができる。
(18)架設車に橋体モジュールを複数段積み重ねて搭載するから、架設車を1台出動させるだけでも異なる長さの仮設橋を架設することが可能である。架設車は伸縮式ガイドビームを有するから、この伸縮式ガイドビームを伸ばして対岸に届かせることにより、伸縮式ガイドビームを伝う形で、橋体モジュールをカンチレバー状態に陥らせることなく対岸に届かせることができる。これにより、橋体モジュールを無理なく安定して架設できる。伸縮式ガイドビームはカンチレバー状態で突き出されるが、こちらの方は橋体モジュールに比べ軽量なので、架設車を不安定にすることがない。
また伸縮式ガイドビームは使用しないときは縮めておけるから、橋体モジュールと伸縮式ガイドビームを合わせた運搬物の総体積を絞ることができる。これにより、架設車の全高を低くし、トンネルやガードをくぐり抜けやすくできる、あるいは資材運搬に必要とされる車両数を増やさずに済むといったメリットがもたらされる。
(19)前記(18)において、架設車が自走能力を有するから、架設車のみからなる最小限の編成で作業グループを構成し、自由に移動することができる。また、機動性の相等しい架設車同士でチームを編成することにより、活動の効率化を図ることができる。
(20)前記(18)において、架設車は自走能力を有する他の車両に連結されるものであるから、自身は走行用のエンジンを持たない、スリムな構成とすることができる。また、架設車同士を連結することにより、1台の自走車両で複数の架設車を移動させることも可能である。
(21)架設車に橋体モジュールを複数段積み重ね、この架設車を2台一組で使用するから、2台分の橋体モジュールを連結して、長い仮設橋を形成することができる。また前後にタンデム配置した2台の架設車のうち、後方の架設車のゲートを起立状態にし、このゲートの先端の滑車を介して、後方架設車のウィンチのワイヤを橋体モジュールに連結し、ウィンチを制御して単体の、若しくは連結された橋体モジュールを、姿勢を制御しつつ前方の架設車から繰り出すものであるから、橋体モジュールを安全に支持しつつ繰り出すことができ、複数の橋体モジュールを連結して長大化した仮設橋であっても、問題なく架設することができる。
(22)前記(21)において、架設車が自走能力を有するから、架設車のみからなる最小限の編成で作業グループを構成し、自由に移動することができる。また、機動性の相等しい架設車同士でチームを編成することにより、活動の効率化を図ることができる。
(23)前記(21)において、架設車は自走能力を有する他の車両に連結されるものであるから、自身は走行用のエンジンを持たない、スリムな構成とすることができる。また、架設車同士を連結することにより、1台の自走車両で複数の架設車を移動させることも可能である。
以下、図1〜58に基づき本発明の各実施形態を説明する。
第1実施形態に係る架設装置を図1〜5に示す。図1は架設車の斜視図、図2は橋体モジュール搭載状態の架設車の斜視図、図3は橋体モジュールの斜視図、図4はガイドビームモジュール同士の連結手段例を示す斜視図、図5は橋体モジュール同士の連結手段例を示す模型図である。
図1に示す架設車1は、本体10の左右に無限軌道11を備え、自走能力を有する。本体10の前部中央には、前後方向に水平に延びる形で架設用ブーム20が設けられている。架設用ブーム20は垂直面内で回動するステー21を介して本体10に支持され、前後運動(図1の矢印A方向)と、前後方向におけるティルティング(同じく矢印B方向)が可能である。
架設用ブーム20の左右に油圧シリンダ22が配置される。油圧シリンダ22は本体10と架設用ブーム20を連結し、架設用ブーム20に対し主として前後方向の動きを与える。
架設用ブーム20の前部下面(ステー21よりも前の位置)には油圧シリンダ23が配置される。油圧シリンダ23は本体10と架設用ブーム20を連結し、架設用ブーム20に主としてティルティングの動きを与える。
架設用ブーム20の後方には水平なレール25が配置される。レール25は正面から見た断面が架設用ブーム20とほぼ同じであり、架設用ブーム20の後部に整列して、架設用ブーム20とともに1個の連続した軌道を形成する。レール25は本体10に固定されている。
架設用ブーム20及びレール25の左右側面には複数ずつのピニオン30が配置される。ピニオン30は前後方向に所定間隔で並び、後述する橋体モジュールを繰り出す橋体繰り出し装置としての役割を果たす。ピニオン30を回転させるモータ、及びモータ動力を各ピニオン30に伝達する動力伝達機構は図示しない。
また架設用ブーム20及びレール25には、各々のセンターライン上に位置する形で複数ずつのピニオン31が配置されている。ピニオン31は後述するガイドビームモジュールを繰り出すガイドビーム繰り出し装置としての役割を果たす。ピニオン31を回転させるモータ、及びモータ動力を各ピニオン31に伝達する動力伝達機構は図示しない。
本体10にはリフト装置40が配置される。リフト装置40は、本体10の側面から張り出し可能な左右一対のアウトリガビーム41と、アウトリガビーム41の上面に平行リンク機構42で連結されたエレベータビーム43からなる。
アウトリガビーム41は本体10の側方に突き出す前後1対のスライドビーム44によって水平に支持されている。スライドビーム44には、図示しないモータ又は油圧機構により、左右方向(図1の矢印C方向)の動きが与えられる。
平行リンク機構42の中の回動リンクとなる各リンクは、アウトリガビーム41との連結点を中心として、前後方向に平行な垂直面内で矢印D方向に回動する。これによりエレベータビーム43は水平を保ちつつ平行移動して高さを変えることになる。平行リンク機構42は、一方の回動リンクに連結したコネクティングロッド45をアウトリガビーム41に設置した油圧シリンダ46で押し引きすることにより矢印D方向に動く。
エレベータビーム43には、本体10のセンターライン方向を向く側面に張り出し部43aが形成されている。適宜の高さのところで左右のアウトリガビーム41を接近させると、後述する橋体モジュールの下に張り出し部43aが入り込む。その状態で平行リンク機構42を立てると橋体モジュールは持ち上がる。平行リンク機構42を寝かせて行って橋体モジュールを下ろし、左右のアウトリガビーム41を外側に押し出せば張り出し部43aは橋体モジュールから外れる。このようにして、アウトリガビーム41の左右方向の動きと平行リンク機構42の垂直方向の動きを組み合わせることにより、任意の橋体モジュールを持ち上げたり、下ろしたりすることができる。
なお、図1において、本体10の進行方向右側においてはスライドビーム44が外側に進出し、且つ平行リンク機構42がエレベータビーム43を差し上げた状態が描かれ、進行方向左側においてはスライドビーム44が内側に引っ込み、且つ平行リンク機構42が倒れてエレベータビーム43を下降させた状態が描かれているが、これはあくまでも説明のためであって、実際には左右のエレベータビーム43は同期動作する。すなわち左右のエレベータビーム43は水平方向に関し同期して左右対称的に動くとともに、垂直方向に関しては同期して昇降する。
本体10の前部には接地して本体10を支えるアウトリガ50が設けられる。アウトリガ50は左右方向に延びる棒状の部材であり、左右一対の油圧シリンダ51を介して本体10に連結される。左右の油圧シリンダ51は互いに独立に制御され、本体10の左右の傾きを調整できるようになっている。
アウトリガ50に加えて、本体10の前部には1対のマニピュレータ60が設けられる。マニピュレータ60は垂直多関節型のロボットアームであり、油圧で動作する。マニピュレータ60は橋体モジュールを持ち上げるのに用いられるが、他の架設車1の本体10をつかむのにも用いられる。この目的のため、各架設車1の本体10の後部には、他の架設車のマニピュレータ60によってつかまれるグリップバー12が固定されている。
架設車1には、本体10とほぼ同じ幅の橋体モジュール70が2個、2段に積み重ねて搭載される。橋体モジュール70は例えば、アルミ合金、鋼板等の金属材料や、樹脂を含む複合材料等により構成される平箱状の構造体であり、幅全体が道床となった全床路の形態を備え、下面にはセンターラインに沿う形で下向きの溝71が設けられている。溝71は架設用ブーム20及びレール25を受け入れるものであり、側縁にはピニオン30にかみ合うラック72が形成されている。
溝71の中にはガイドビームモジュール80が挿入される。ガイドビームモジュール80は1個の橋体モジュール70につき1個配置される。ガイドビームモジュール80の正面から見た断面形状は矩形で、上面左右よりフランジ81が張り出した構成になっている。溝71の内部には、フランジ81の下面に係合してガイドビームモジュール80を支えるローラ73と、ガイドビームモジュール80の上面に当たって橋体モジュール70自身を支えるニードル状のローラ74が設けられている。このような支持構造により、ガイドビームモジュール80は橋体モジュール70の長手方向にスライド可能であるととともに、橋体モジュール70からの離脱も可能になっている。ガイドビームモジュール80の下面にはピニオン31にかみ合うラック(図示せず)が形成される。
なお橋体モジュール70とガイドビームモジュール80の質量は架設用ブーム20又はレール25によって支えられるものであり、ピニオン30、31は荷重支持には関わらない。
橋体モジュール70は橋体モジュール同士で、ガイドビームモジュール80はガイドビームモジュール同士で、それぞれ連結する必要がある。連結構造の一例を図4に示す。これは各ガイドビームモジュール80の両端からジョイント片82を突出させ、自身のジョイント片82を他のガイドビームモジュールに挿入するとともに、自身も他のガイドビームモジュールのジョイント片82を受け入れ、ジョイント片82が抜けないようにラッチ機構で拘束するというものである。
橋体モジュール70同士の連結には図5に示す連結機構75を用いることができる。連結機構75はリング76とその中に入り込むバー77からなる。リング76の一部にはバー77を通す開放部78が形成され、開放部78にはバー77の脱出を阻止するストッパ79が設けられている。ストッパ79は図示しないばねによりリング76の内側から実線位置に付勢されており、破線位置に押し込むことができる。バー77とストッパ79を押し付け合えばバー77はストッパ79を押しのけてリング76の中に入る。バー77が通過した後、ストッパ79は実線位置に戻り、以後ストッパ79を破線位置に押し込まないかぎりバー76がリング77から脱出することはない。
ガイドビームモジュール80同士、また橋体モジュール70同士の連結には、上記のような連結機構の他、機械装置で一般的に用いられている他の連結機構を用いることができる。必要な強度を備えねばならないことは当然であるが、その条件を満たすかぎり、特殊工具を用いないで簡単に着脱できる構造であることが望ましい。
無限軌道や車輪が橋体モジュール70に乗り上げるのを容易にするため、橋体モジュール70の両端に側面形状三角形の斜面ブロック90を取り付ける(図3参照)。橋体モジュール70と斜面ブロック90とはヒンジ部91で連結され、折り畳み可能である。橋体モジュール70の両端には斜面ブロック90を受け入れる切除部92が形成される。切除部92の側面断面形状は三角形であり、このため斜面ブロック90を折り畳んだ状態の橋体モジュール70は平たい直方体形状となる。
橋体モジュール70を地面の上に置き、斜面ブロック90を外側に開くと、斜面ブロック90の斜面と切除部92の斜面とが一つの連続した斜面を形成する。この斜面から、無限軌道又は車輪を橋体モジュール70に容易に乗り上げさせることができる。
また橋体モジュール70は、特許文献5に記載された橋体モジュールと同様、断面二次モーメント増大方向に変形可能となっている。変形は橋体モジュール70に内蔵した油圧シリンダや電動ジャッキなどの動力式アクチュエータによってもたらされる。橋体モジュール70の変形に必要な動力は本体10側の動力源から供給される。
続いて、第1実施形態に係る架設装置を用いた仮設橋の架設方法につき説明する。
最初に、図6〜14に基づき、1台の架設車1を用いて行う架設作業の説明を行う。図6〜14は一連の作業を説明する側面図である。
まず、2個の橋体モジュール70を上下2段に積んだ架設車1を仮設橋架設場所に配置する(図6)。架設車1の配置場所は河川又は地隙の一方の岸101であり、ここから他方の岸102に向けて仮設橋を架ける。岸101、102間の間隔は、橋体モジュール70を2個連結した長さよりも短い。なお図において、説明の便宜のため、2個の橋体モジュール70には識別符号「1」「2」が付されている。
架設車1の位置を決めたら、走行中は引き上げていたアウトリガ50を下ろして接地させ、架設車1が前のめりにならないための、また左右に傾かないための支えとする。それから油圧シリンダ22、23を制御して、架設用ブーム20を水平を保ちつつ前方に押し出す。
続いてリフト装置40で上段側橋体モジュール70をガイドビームモジュール80もろとも持ち上げる(図7)。エレベータビーム43の張り出し部43aを上段側橋体モジュール70(識別符号「2」)の下に差し込んで平行リンク機構42を回動させることにより、上段側橋体モジュール70を差し上げることができる。
上段側橋体モジュール70が下段側橋体モジュール70(識別符号「1」)から離れたら、橋体繰り出し装置及びガイドビーム繰り出し装置(ピニオン30及び31)により、下段側橋体モジュール70及び下段側ガイドビームモジュール80を架設用ブーム20の上に送り出す。行きすぎると橋体モジュール70及びガイドビームモジュール80が架設用ブーム20から転落するので、転落する手前で一旦止める。橋体モジュール70及びガイドビームモジュール80の位置をセンサで監視し、行きすぎそうになったらピニオン30、31の回転を強制的に止めるようにするとよい。
下段側橋体モジュール70及び下段側ガイドビームモジュール80の動きが止まった時点で、下段側橋体モジュール70及び下段側ガイドビームモジュール80の後端は上段側橋体モジュール70及び上段側ガイドビームモジュール80の前端よりも前進した位置にある。ここでリフト装置40を操作し、上段側橋体モジュール70及び上段側ガイドビームモジュール80を下段側橋体モジュール70及び下段側ガイドビームモジュール80の後ろに下ろす(図8)。そして前後の橋体モジュール70同士、前後のガイドビームモジュール80同士を連結する。
続いてガイドビームモジュール80の連結体をガイドビーム繰り出し装置(ピニオン31)により橋体モジュール70の連結体から繰り出す(図9)。ガイドビームモジュール80の連結体はカンチレバー状態で突き出されるが、橋体モジュール70に比べ軽量なので、架設車1を不安定にすることはない。
ガイドビームモジュール80の連結体の先端が岸102の上に達したらピニオン31の回転を止める(図10)。そして油圧シリンダ23を制御して架設用ブーム20を傾け、ガイドビームモジュール80の連結体の先端を岸102に着地させる(図11)。
続いて橋体繰り出し装置(ピニオン30)により橋体モジュール70の連結体をガイドビームモジュール80の連結体の上に送り出す。最終的には、ガイドビームモジュール80の連結体に橋体モジュール70の連結体の支持を委ねる。ガイドビームモジュール80の連結体は、岸102と架設用ブーム20に両端を支えられているので、橋体モジュール70の連結体の質量を十分支え得る。橋体モジュール70の連結体はガイドビームモジュール80の連結体に沿って、先端が岸102に着地するまで前進する(図12)。
複数並んだピニオン30は後方のものから順に橋体モジュール70の連結体から外れ、複数並んだピニオン31も後方のものから順にガイドビームモジュール80の連結体から外れるが、架設用ブーム20の先端は最後までガイドビームモジュール80の連結体及び橋体モジュール70の連結体と係合を維持している。ここで油圧シリンダ22、23を制御して架設用ブーム20を更に傾け、橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体の後端を岸101に着地させる(図13)。
架設用ブーム20に着地装置の役割を果たさせることには次のようなメリットがある。すなわち架設用ブーム20には大質量を支えるために強大なパワーが付与されている。そのため、橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体の質量に負けて急激に先端が下がるようなことがなく、橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体を衝撃を与えずに着地させることができる。従って着地時の衝撃で橋体モジュール70やガイドビームモジュール80に不具合が生じるということがない。
橋体モジュール70の連結体が岸101、102間に架け渡されたら、架設車1側の動力源から油圧や電力などの動力を供給して橋体モジュール70を断面二次モーメント増大方向に変形させる(図14)。動力供給は架設用ブーム20から行うのが便利であるが、本体10から油圧ホースや電力ケーブルを引き出して行うようにしても構わない。このように架設車1側の動力源から動力を供給することにより、大きな動力の供給が可能になり、橋体モジュール70を容易且つ速やかに所期の形状にすることができる。
橋体モジュール70が所定形状に変形したら動力供給を止める。変形用の動力式アクチュエータには、動力供給が止まってもその時点の姿勢を維持できるものを選ぶ。
動力供給部を橋体モジュール70から切り離した後、橋体モジュール70の連結体の前後端の斜面ブロック90を外側に開き、無限軌道や車輪を乗り上げることのできる斜面を形成する。これをもって仮設橋200が完成する。この後、架設車1及び岸102に渡る必要のある車両は順次仮設橋200を通って岸102に渡る。橋体モジュール70は幅全体が道床となった全床路の形態を備えるから、小型車両や歩行者も安全に渡ることができる。なお、斜面ブロック90を外側に開く操作は、人力で行っても良いし、もしくは、架設車1側の動力源から供給される動力により、遠隔で行っても良い。この場合には、橋体モジュール70側に、斜面ブロック展開用として油圧、モータ等のアクチュエータを用いた展開駆動機構を搭載することとする。
続いて図15〜18に基づき仮設橋200の撤収作業の説明を行う。図15〜18は一連の作業を説明する側面図である。
まず、架設車1を仮設橋200に接近させる(図15)。架設車1の向きは架設のときと逆である。
架設車1を所定位置に位置決めし、アウトリガ50を接地させる。仮設橋200の側では前後に張り出した斜面ブロック90を畳む。そして架設用ブーム20を手前側の橋体モジュール70に連結する(図16)。架設用ブーム20から橋体モジュール70変形用の動力が供給されるという設定である。動力式アクチュエータを逆操作し、橋体モジュール70を変形前の状態に戻す(図17)。なお、斜面ブロック90を畳む操作は、人力により行っても良いし、前述の展開駆動機構に架設車1側の動力源から動力を供給して、遠隔で行っても良い。
橋体モジュール70が平らになったらマニピュレータ60により橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体の先端を持ち上げ、架設用ブーム20に搭載する(図18)。人力で橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体を持ち上げるとなると多数の人員が必要となるが、このようにマニピュレータ60を使って持ち上げることとすれば、一人か二人のオペレータがいれば済む。
橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体を架設用ブーム20に搭載する際、橋体モジュール70のラック72がピニオン30にかみ合い、ガイドビームモジュール80のラックがピニオン31にかみ合うようにする。こうしておいてピニオン30、31を回転させると、橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体は架設用ブーム20に引き上げられる。このように橋体繰り出し装置(ピニオン30)及びガイドビーム繰り出し装置(ピニオン31)の動力を利用することにより、引き上げを能率良く進めることができる。
橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体を引き上げつつ、架設用ブーム20の角度を水平に戻して行き、橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体がレール25によっても支えられるようにする。
橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体が所定位置に来たらピニオン30、31の回転を止める。そして橋体モジュール70同士の連結とガイドビームモジュール80同士の連結を外し、1個の橋体モジュール70に1個のガイドビームモジュール80が格納された状態にする。ガイドビームモジュール80が不用意にとび出さないよう、橋体モジュール70とガイドビームモジュール80を適宜の固定手段で固定しておくとよい。
その後、上段側となるべき橋体モジュール70(識別符号「1」)をガイドビームモジュール80もろともリフト装置40で持ち上げ、この橋体モジュール70の下に、下段側となるべき橋体モジュール70(識別符号「2」)を受け入れる空間を形成する。こうしておいてピニオン30、31を駆動し、上段側橋体モジュール70の下に下段側橋体モジュール70及びガイドビームモジュール80を送り込む。そして上段側橋体モジュール70を下ろして下段側橋体モジュール70の上に積み重ねる。2個の橋体モジュールの上下関係は前と逆転することになる。
前進位置にあった架設用ブーム20を引き戻し、アウトリガ50を引き上げ、次の目的地に向けて架設車1を発進させる。
岸101、102の間隔が、1個の橋体モジュール70でカバーできる程度に狭ければ、1個の橋体モジュール70と、その中の1個のガイドビームモジュール80を使用して、上記と同じように仮設橋200の架設及び撤収が行われる。
さて、1台の架設車に2個の橋体モジュールを搭載するという構成では、仮設橋の架設対象とできる河川や地隙がある程度幅の狭いものに限定されてしまう。かと言って、長い仮設橋を可能とすべく1台の架設車に多くの橋体モジュールを搭載すると、今度は架設車1の機動性が犠牲になる。
そこで、複数の架設車を使用し、各架設車に搭載した橋体モジュールを連結することにより長い仮設橋を得るとともに、個々の架設車に搭載する橋体モジュールの数はあまり多くせず、架設車の機動性を確保できるようにした架設方法につき説明する。ここでは橋体モジュール70を2個搭載した架設車1を2台組み合わせて用いるものとする。実用上も、この組み合わせが効率的であると考えられる。図19〜33の側面図に作業手順を示す。
まず、2個の橋体モジュール70を上下2段に積んだ架設車1を2台、仮設橋架設場所に配置する(図19)。架設車1の配置場所は河川又は地隙の一方の岸101であり、ここから他方の岸102に向けて仮設橋を架ける。岸101、102間の間隔は、橋体モジュール70を4個連結した長さよりも短い。なお図において、説明の便宜のため、計4個の橋体モジュール70には識別符号「1」「2」「3」「4」が付されている。
2台の架設車1は前後にタンデム配置する。後方の架設車1から前方の架設車1に橋体モジュール70及びガイドビームモジュール80を送り込むので、後方の架設車1の架設用ブーム20と、前方の架設車1のレール25が一直線上に並んでいる必要がある。運転者の操縦技量のみに頼って前後の架設車1を整列させるのは困難なことが多いので、マニピュレータ60を使って架設車1同士のアラインメント調整を行う。すなわち後方の架設車1のマニピュレータ60で前方の架設車1のグリップバー12をつかむ(図20)。それからマニピュレータ60を伸縮させ、2台の架設車1が正しく前後に揃うようにする。
2台の架設車1の位置を決めたら、それぞれの架設車1のアウトリガ50を接地させる。そして前方の架設車1の架設用ブーム20を水平を保ちつつ前方に押し出す。後方の架設車1の架設用ブーム20も前進させ、前方の架設車1のレール25に連続させる(図21)。
続いて前方の架設車1において、リフト装置40で上段側橋体モジュール70(識別符号「2」)をガイドビームモジュール80もろとも持ち上げる(図22)。上段側橋体モジュール70が下段側橋体モジュール70(識別符号「1」)から離れたら、下段側橋体モジュール70及び下段側ガイドビームモジュール80を架設用ブーム20の上に送り出す。それから上段側橋体モジュール70及び上段側ガイドビームモジュール80を下段側橋体モジュール70及び下段側ガイドビームモジュール80の後ろに下ろし、前後の橋体モジュール70同士、前後のガイドビームモジュール80同士を連結する(図23)。この橋体モジュール70の連結体(識別符号「1」「2」)及びガイドビームモジュール80の連結体を少し前方に送り、後方の架設車1の橋体モジュール70及びガイドビームモジュール80を受け入れる余地をつくる。
後方の架設車1においても、リフト装置40で上段側橋体モジュール70(識別符号「4」)をガイドビームモジュール80もろとも持ち上げ、下段側橋体モジュール70(識別符号「3」)及び下段側ガイドビームモジュール80を架設用ブーム20の上に送り出す。下段側橋体モジュール70(識別符号「3」)及び下段側ガイドビームモジュール80は架設用ブーム20を通って前方の架設車1に進入し、前方の橋体モジュール70連結体(識別符号「1」「2」)及びガイドビームモジュール80連結体の後に続く。その後へ上段側橋体モジュール70(識別符号「4」)及び上段側ガイドビームモジュール80を下ろす。計4個ずつの橋体モジュール70及びガイドビームモジュール80が一直線に揃ったら、前後の橋体モジュール70同士、前後のガイドビームモジュール80同士をすべて連結する(図24)。
続いて、4個の橋体モジュール70の連結体及び4個のガイドビームモジュール80の連結体を前方に送る。橋体モジュール70の連結体ガイドビームモジュール80の連結体が前方の架設車1の架設用ブーム20から転落しないよう、転落する手前で一旦送りを止める(図25)。
そして、4個のガイドビームモジュール80の連結体を橋体モジュール70の連結体の中から繰り出す(図26)。
ガイドビームモジュール80の連結体の先端が岸102の上に達したところでガイドビームモジュール80の送りを止める(図27)。そして前方の架設車1の架設用ブーム20を傾け、ガイドビームモジュール80の連結体の先端を岸102に着地させる(図28)。
こうしておいて橋体モジュール70の連結体をガイドビームモジュール80の連結体の上に送り出す(図29)。橋体モジュール70の連結体はガイドビームモジュール80の連結体に沿って、先端が岸102に着地するまで前進する(図30)。
橋体モジュール70の連結体の先端が岸102に着地したら、前方の架設車1の架設用ブーム20を更に傾け、橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体の後端を岸101に着地させる(図31)。
橋体モジュール70の連結体が岸101、102間に架け渡されたら、前方の架設車1側の動力源から油圧や電力などの動力を供給して橋体モジュール70を断面二次モーメント増大方向に変形させる(図32)。
橋体モジュール70が所定形状に変形したら動力供給を止める。動力供給部を橋体モジュール70から切り離した後、橋体モジュール70の連結体の前後端の斜面ブロック90を外側に開き、無限軌道や車輪を乗り上げることのできる斜面を形成する。これをもって仮設橋200が完成する(図33)。後方の架設車1は前方の架設車1からマニピュレータ60を離す。この後、架設車1及び岸102に渡る必要のある車両や歩行者は順次仮設橋200を通って岸102に渡る。なお、斜面ブロック90を外側に開く操作は、人力で行っても良いし、もしくは、架設車1側の動力源から供給される動力により、遠隔で行っても良い。この場合には、橋体モジュール70側に、斜面ブロック展開用として油圧、モータ等のアクチュエータを用いた展開駆動機構を搭載することとする。
続いて図34〜38に基づき仮設橋200の撤収作業の説明を行う。図34〜38は一連の作業を説明する側面図である。
まず、2台の架設車1を仮設橋200に接近させる(図34)。架設車1の向きは架設のときと逆である。
2台の架設車1は前後にタンデム配置する。そして後方の架設車1のマニピュレータ60で前方の架設車1のグリップバー12をつかみ、架設車1同士のアラインメント調整を行う。2台の架設車1の位置を決めたら、それぞれアウトリガ50を接地させる。また後方の架設車1の架設用ブーム20を前進させて前方の架設車1のレール25に連続させる。仮設橋200の側では前後に張り出した斜面ブロック90を畳む。それから前方の架設車1の架設用ブーム20を手前側の橋体モジュール70に連結する(図35)。そして動力式アクチュエータを逆操作し、橋体モジュール70を変形前の状態に戻す(図36)。なお、斜面ブロック90を畳む操作は、人力により行っても良いし、前述の展開駆動機構に架設車1側の動力源から動力を供給して、遠隔で行っても良い。
橋体モジュール70が平らになったら、前方の架設車1のマニピュレータ60により橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体の先端を持ち上げ(図37)、前方の架設車1の架設用ブーム20に搭載する(図38)。それから橋体モジュール70の連結体及びガイドビームモジュール80の連結体を引き上げる。途中で、橋体モジュール70同士、ガイドビームモジュール80同士の連結を外し、1個の橋体モジュール70の中に1個のガイドビームモジュール80が格納された状態にする。そして各架設車1に上下2段ずつ橋体モジュール70を積み上げる。
その後、前方の架設車1をつかんでいた後方の架設車1のマニピュレータ60を解放状態にするとともに、前後各々の架設車1において、前進させていた架設用ブーム20を引き戻し、アウトリガ50を引き上げる。そして次の目的地に向けて各架設車1を発進させる。
上記の説明では4個の橋体モジュール70をすべて使用して仮設橋200を形成したが、岸101、102の間隔によっては、橋体モジュール70を3個だけ使用して仮設橋を形成することもできる。
これまでの図では、橋体モジュール70を断面二次モーメント増大方向に変形させるにあたり、橋体モジュール70がトラス橋形状に変形するものとして図示した。これは特許文献5に記載された方式と同じやり方であるが、別の方式で橋体モジュールの変形を実現することもできる。それを図39〜41に示す。
図39は橋体モジュールの斜視図、図40は橋体モジュールの部分拡大斜視図で、一部を切除して内部機構を示したものである。断面二次モーメント増大方向に変形させる機構の概要を示すことだけが目的なので、ガイドビームモジュール及びその受入構造は省略して描いてある。
図39に示す橋体モジュール110は、下部ユニット111と、それにかぶさる上部ユニット112を有する。下部ユニット111の外側面には垂直なリブ113が所定間隔で複数形成され、上部ユニット112の内側面にはリブ113を受け入れる溝114が所定間隔で複数形成される。リブ113と溝114を係合させることにより、下部ユニット111と上部ユニット112は上下方向に相互スライド可能に結合される。
上部ユニット112の両端には折り畳み可能な斜面板120が取り付けられる。他方下部ユニット111の上面には、センターラインに沿う形でシャフト130が配置される。シャフト130は軸受131に回転自在に支持され、その端は上部ユニット112に形成した垂直方向の長穴115から外に突き出す。シャフト130の端にはスプライン継手132が固定される。スプライン継手132は、シャフト130の一端においてはオス側、他端においてはメス側となっている。斜面板120にはスプライン継手132を露出させる窓121が設けられている。
下部ユニット111の内部において、シャフト130にはウォーム133が固定される。ウォーム133にはウォームギヤ134がかみ合う。ウォームギヤ134は、下部ユニット111に支持された垂直なジャッキシャフト135に上下の動きを与えるものである。ジャッキシャフト135の上端は上部ユニット112に連結しており、シャフト130を回転させれば上部ユニット112が昇降する。上部ユニット112が上昇し、橋体モジュール110の背が高くなると、橋体モジュール110の断面二次モーメントが増大する。
複数の橋体モジュール110を連結する場合には、一方の橋体モジュール110のオス側スプライン継手132を他方の橋体モジュール110のメス側スプライン継手132に嵌合するようにして連結して行く。橋体モジュール110の連結機構としては、橋体モジュール70で用いたのと同様の機構を採用できる。
架設車1には動力軸を設け、その端にスプライン継手を固定する。このスプライン継手をシャフト130の列の一番端のスプライン継手132に連結することにより、架設車1から橋体モジュール110への動力供給が可能となる。
別のジャッキ機構の例を図41に示す。図41はジャッキ機構の骨格のみを示す斜視図である。
図41のジャッキ機構は、橋体モジュール110の長手方向に沿って並ぶ複数のジャッキブロック140を備える。各ジャッキブロック140は、左右1対のリンク141により下部ユニット111に連結されている。ジャッキブロック140は隣接するもの同士を2個1組として用いる。1本のスクリューシャフト142が全てのジャッキブロック140を貫く。スクリューシャフト142の両端にはスプライン継手132が固定される。
スクリューシャフト142には雄ねじ、ジャッキブロック140には雌ねじが形成されるが、ねじの螺旋の方向は2個1組となったジャッキブロック140のそれぞれについて反対になっている。すなわち一方のジャッキブロック140では左ねじであり、他方のジャッキブロック140では右ねじである。このため、スクリューシャフト142を回転させると、その回転方向によって、図41の矢印のように2個のジャッキブロック140が互いに接近したり、あるいはその反対に互いに離れたりする。
2個のジャッキブロック140が接近すれば、それらに属するリンク141のなす角度が鋭角化する。すなわちジャッキブロック140は上昇する。
2個のジャッキブロック140が離れれば、それらに属するリンク141のなす角度が鈍角化する。すなわちジャッキブロック140は下降する。
上部ユニット112はジャッキブロック140に支持されているので、スクリューシャフト142を回転させることにより、上部ユニット112を昇降させることができる。
橋体モジュール70を断面二次モーメント増大方向に変形させるための動力源として、その場で動力を発生させるタイプの動力源(エンジン、又はエンジンによって駆動される油圧ポンプや発電機)でなく、エネルギ貯蔵型の動力源を用いることもできる。エネルギ貯蔵型の動力源の例としては、トーションバー、リーフスプリング、コイルスプリングなどのように機械的にエネルギを蓄積するもの、コンデンサのように電気的にエネルギを蓄積するもの、電池のように電気化学的にエネルギを蓄積するものなどが挙げられる。圧縮空気を充填したボンベなども採用可能である。
動力源を上記のようなエネルギ貯蔵型のものにすれば、橋体モジュール70の変形作業を動力発生用あるいは発電用のエンジン音を立てることなく静粛に遂行することができる。
橋体モジュール70を断面二次モーメント増大方向に変形させるための動力源を、架設車1の側でなく、橋体モジュール70自身の側に配置することも可能である。このようにすれば、架設車1がその場を離れたとしても、橋体モジュール70を容易且つ速やかに所期の形状にすることができる。
続いて、架設装置のその他の実施形態につき説明する。
第2実施形態に係る架設装置を図42、43に示す。図42は橋体モジュール搭載状態の架設車の斜視図、図43は図42の架設車を正面寄りから見た斜視図である。
仮設橋架設場所の地形は様々であり、2台の架設車を前後にタンデム配置する場合、マニピュレータによるアラインメント調整だけでは不十分な場合がある。図42、43には、前後のアラインメント調整の幅を広げた架設車が示されている。アラインメント調整機構の概要を示すことだけが目的なので、架設用ブーム、レール、リフト装置、アウトリガ、マニピュレータといった付属品は省略して描いてある。
図42、43に示す架設車300は、自走式の本体301の上に左右にシフト可能なスライドテーブル302を置いている。スライドテーブル302はティルティングテーブル303を支持し、ティルティングテーブル303の上に橋体モジュール304が搭載されている。ティルティングテーブル303はスライドテーブル302に対しピッチ角とロール角を変えることができる。第1の油圧シリンダ305がピッチ角を変え、第2の油圧シリンダ306がロール角を変える。スライドテーブル302は図示しないアクチュエータにより左右にシフトする。スライドテーブル302の動きとティルティングテーブル303の動きを組み合わせることにより、橋体モジュール304に様々な姿勢をとらせることができる。
スライドテーブル302に架設用ブームを設け、スライドテーブル302がシフトしても橋体モジュール304と架設用ブーム整列状況に影響がないようにする。また架設用ブームはロール角可変にする。
上記の架設車300を2台、前後にタンデム配置すれば、地面の起伏により前後の架設車300の本体301同士の姿勢が揃わなかったとしても、後方の架設車300の橋体モジュール304を、前方の架設車300の橋体モジュール304とのアラインメントが成立するように前方の架設車300へ送り込むことができる。
第3実施形態に係る架設装置を図44に示す。図44は橋体モジュール搭載状態の架設車の斜視図である。第2実施形態と同様、架設用ブーム、レール、リフト装置、アウトリガ、マニピュレータといった付属品は省略して描いてある。
図44に示す架設車310は、自走式の本体311の上に6自由度(X、Y、Z及びφX、φY、φZ)のパラレルリンク機構312を介してティルティングテーブル313を支持し、このティルティングテーブル313に第2実施形態と同様形状の橋体モジュール304を搭載している。架設用ブームも同様にパラレルリンク機構で支持し、6自由度を与える。
上記の架設車310を2台、前後にタンデム配置すれば、地面の起伏により前後の架設車310の本体311同士の姿勢が揃わなかったとしても、後方の架設車310の橋体モジュール304を、前方の架設車310の橋体モジュール304とのアラインメントが成立するように前方の架設車310へ送り込むことができる。パラレルリンク機構を用いることにより、アラインメントの微調整は容易であり、微調整に要する時間も大幅に短縮できる。
第2実施形態及び第3実施形態ではアラインメント調整機構を自由度の多い構成としていたが、サイズその他の制約を考慮して、もっと自由度の低い機構(例えばφX、φY、φZのどれか一つだけを制御対象とする、あるいはXZスライドテーブルを用いる)とすることも可能である。
そのような自由度の低い機構の一例を、第4実施形態として図45〜49に示す。図45は橋体モジュール搭載状態の架設車の斜視図、図46〜49は一連のアラインメント調整手順を示す正面図である。架設用ブーム、レール、リフト装置、マニピュレータといった付属品は省略して描いてある。
第4実施形態の架設車320は、自走式の本体321の上に第2実施形態と同様形状の橋体モジュール304を搭載する。本体321の左側面からは前後1対のアウトリガ322Lが突出する。本体321の右側面からは前後1対のアウトリガ322Rが突出する。アウトリガ322L、322Rはそれぞれ支脚323を下方に伸ばすことができる。また左のアウトリガ322Lの出し入れと右のアウトリガ322Rの出し入れ、及び左のアウトリガ322Lにおける支脚323の伸縮と右のアウトリガ322Rにおける支脚323の伸縮は独立して制御される。
2台の架設車を前後にタンデム配置し、一方の架設車を横にシフトさせて他方の架設車とのアラインメントをとりたい場合、第4実施形態の架設車320では次のようにしてシフトを実現することができる。
図46において、架設車320を右方にシフトさせたいものとする。アウトリガ322L、322Rを本体321の横に突き出し、支脚323を接地させるが、この時、アウトリガ322Lをアウトリガ322Rよりも大きく張り出させる。
ここで支脚323を伸ばし、本体321を持ち上げる(図47)。
それから、アウトリガ322Rをより多く本体321の外に突き出し、アウトリガ322Lは逆に本体321の中に引っ込める。これにより、本体321は地面に対し右にシフトすることになる(図48)。
最後に、支脚323を縮め、本体321を地面に下ろす(図49)。
第4実施形態の場合、本体321に特別な左右スライド機構を搭載する必要がないため、部品点数が多くならない。また、本体321と橋体モジュール304の間に左右スライド機構が介在しないので、架設車320の全高を低く抑えることができる。
また第4実施形態の場合、地面が左右に傾いている場合には、アウトリガ322Lとアウトリガ322Rとで支脚323の出具合を異ならせ、傾きを補正することも可能である。前後のアウトリガ322L間及び前後のアウトリガ322R間でも支脚323の出具合を異ならせることができるものとすれば、地面が前後に傾いている場合の傾き補正も可能である。
第2、第3、第4実施形態のように、橋体モジュールのアラインメント調整機構を備えた架設車を、前後に2台タンデム配置してアラインメント調整を行う場合、前後どちらかアラインメント調整機構のみを用いてアラインメント調整を行うこともできるし、前後のアラインメント調整機構を両方とも用いてアラインメント調整を行うこともできる。そのアラインメント調整のステップは、2台の架設車を前後にタンデム配置するステップの後、橋体モジュールを架設用ブームに搭載するステップの前に遂行される。
第5実施形態に係る架設装置を図50、51に示す。図50は橋体モジュール搭載状態の架設車の側面図、図51は上面図である。機構の概要を示すことだけが目的なので、リフト装置、アウトリガ、マニピュレータなどの付属品は省略して描いてある。
第5実施形態の架設車330は、自走式の本体331の上にティルティングテーブル332を備える。ティルティングテーブル332は後端を支点として前傾可能である。ティルティングテーブル332の上には伸縮式ガイドビーム333が設けられる。伸縮式ガイドビーム333はパンタグラフ構造となっている。この架設車330に2個の橋体モジュール334を上下2段に搭載する。橋体モジュール334は第1実施形態の橋体モジュール70からガイドビームモジュール80を取り去った構造のものである。
架設車330を用いての仮設橋架設作業は次のようになる。まず、2個の橋体モジュール334を上下2段に積んだ架設車330を仮設橋架設場所に配置する。この時は伸縮式ガイドビーム333は縮小状態にある。架設車330の位置を決めた後、走行中は引き上げていたアウトリガを下ろして接地させ、架設車330が前のめりにならないための、また左右に傾かないための支えとする。
続いて伸縮式ガイドビーム333を所定長さに伸ばす。長さは対岸までの距離に基づき決められる。
橋体モジュール334を2個とも使用する場合は、まず下段側の橋体モジュール334を伸縮式ガイドビーム333に搭載して押し出し、続いて上段側の橋体モジュール334を伸縮式ガイドビーム333に搭載する。そして両橋体モジュール334を連結する。
次にティルティングテーブル332を傾け、先端を着地させる。それから橋体モジュール334の連結体を送り出し、伸縮式ガイドビーム333に橋体モジュール334の連結体の支持を委ねる。この状態で橋体モジュール334の連結体を前進させ、その先端を着地させる。
橋体モジュール334の連結体の先端が着地したら、伸縮式ガイドビーム333を縮める。伸縮式ガイドビーム333の先端が橋体モジュール334の連結体から抜けかかっとところで、ティルティングテーブル332の前傾を深め、橋体モジュール334の連結体の後端を着地させる。それから伸縮式ガイドビーム333をさらに縮め、橋体モジュール334から完全に引き抜く。後、橋体モジュール334を断面二次モーメント増大方向に変形させたり、橋体モジュール334の連結体両端の斜面ブロックを外側に倒したりする手順は第1実施形態と同様である。
橋体モジュール334を1個だけ用いて仮設橋を形成することも当然可能である。また伸縮式ガイドビーム333の伸縮構造としては、パンタグラフ式でなく、望遠鏡式を採用してもよい。
第6実施形態に係る架設装置を図52〜55に示す。図52は仮設橋架設作業状況を示す側面図、図53は橋体モジュールの側面図、図54は架設車に設けられるゲートの正面図、図55は倒伏状態のゲートに橋体モジュールを載置した状態を示す上面図である。機構の概要を示すことだけが目的なので、リフト装置などは省略して描いてある。
第5実施形態の架設車340は、自走式の本体341の上面の一方の端にゲート350を有する。ゲート350は垂直面内で回動可能であり、直立状態と倒伏状態のいずれかの状態にできる。油圧シリンダ351がゲート350を回動させる。架設車340の他方の端には後述する橋体モジュールを送り出す橋体繰り出し装置342及びアウトリガ343が設けられる。
1台の架設車340に2個の橋体モジュール360が搭載される。橋体モジュール360はガイドビームモジュールを有しない点を除き第1実施形態の橋体モジュール70と同様の構造であり、両端に斜面ブロック361を備えている(図53参照)。
ゲート350には橋体モジュール360を通す開口352が形成される(図54参照)。開口352の両側には、左右2個ずつの整列用ローラ353が設けられる。またゲート350の先端には左右1対の滑車354が取り付けられる。滑車354は、本体341の上に設けたウィンチ344から延びるワイヤ345を誘導するためのものである。
架設車340を用いての仮設橋架設作業は次のようになる。まず、2個の橋体モジュール360を上下2段に積んだ架設車340を2台、仮設橋架設場所に配置する。2台の架設車340は前後にタンデム配置するが、この時、前方の架設車340にあってはゲート350を後にし、後方の架設車340にあってはゲート350を前にする。つまりゲート350同士が向き合うようにする。そうしておいて、後方の架設車340のゲート350は直立状態のままにしておくが、前方の架設車340のゲート350は倒伏状態にする。また前方の架設車340からアウトリガを下ろして接地させる。
前後の架設車341に計4個の橋体モジュール360が搭載されているが、そのすべてを連結して仮設橋を形成するものとする。まず後方の架設車340のウィンチ344からワイヤ345を繰り出し、これを直立しているゲート350の滑車354に掛ける。そしてこのワイヤ345を前方の架設車340の下段側の橋体モジュール360に連結する。ワイヤ345の連結箇所は、図52では下段側の橋体モジュール360の先端部に設定してあるが、必ずしもここに限定される訳ではない。橋体モジュール360の中央付近を連結箇所としても構わない。
ワイヤ345を連結した橋体モジュール360を前方に送り出し、その後に上段側の橋体モジュール360を下ろす。そして前後の橋体モジュール360を連結する。
橋体モジュール360の連結体を前方に送ると、この連結体は前方の架設車340の前端からカンチレバー状態で突き出すことになる。しかしながらワイヤ345がこれを吊っているので架設車340から落下することはない。
後方の架設車340からは、直立したゲート350の開口352を通じて前方の架設車340に橋体モジュール360を送り込む。橋体モジュール360は倒伏状態のゲート350で受け止められ、ローラ353によって向きを正される(図55参照)。送り込んだ橋体モジュール360を先の連結体に連結し、さらに前方に送るという作業を繰り返して、最終的には4個の橋体モジュール360をすべて連結する。
橋体モジュール360の連結体の長さが増し、前方の架設車340からの突き出し量が増すのに応じてウィンチ344からのワイヤ345の繰り出し量を制御し、橋体モジュール360の連結体が常にほぼ水平状態を保つようにする。
4個の橋体モジュール360の連結体が十分に突き出したらワイヤ345の繰り出し量を多くし、連結体の先端を着地させる。連結体の後端は図示しないマニピュレータにより着地させる。そして橋体モジュール360からワイヤ345を外す。次の作業に備え、ワイヤ345はウィンチ344に巻き取る。
後、橋体モジュール360を断面二次モーメント増大方向に変形させたり、橋体モジュール360の連結体両端の斜面ブロック361を外側に倒したりする手順は第1実施形態と同様である。
4個の橋体モジュール360をすべて用いることなく、3個、2個、あるいは1個だけ用いて仮設橋を形成することも可能である。
第1〜第6実施形態の架設車はいずれも自走能力を有していたが、架設車自身は自走能力を有しないものとし、これを自走能力を有する他の車両に連結して移動させる構成とすることも可能である。そのような構成例を第7実施形態として図56〜58に示す。図56は架設車及び牽引車の斜視図、図57は1台の架設車を用いて行う仮設橋架設作業状況を示す側面図、図58は2台の架設車を用いて行う仮設橋架設作業状況を示す側面図である。
第7実施形態の架設車1aは、第1実施形態と同じ橋体モジュール架設機構を備える。説明の重複を避けるため、第1実施形態と共通の構成要素には第1実施形態の説明で用いたのと同じ符号を付し、説明は省略する。
第1実施形態の架設車1と異なり、架設車1aは自走能力を備えない。本体10aを支えるのは、前部に設けられた車輪13と、後部に設けられたアウトリガ52である。アウトリガ52は本体10aの左右側面に設けられ、左右同期して対称的な動きをする。アウトリガ52の支脚53は走行時には引き上げられる。
自走能力を有する牽引車400が後ろ向き状態の架設車1aを牽引する。牽引車400の本体410は、左右に無限軌道411、前部に排土板412、後部に連結アーム413を、それぞれ備える。排土板412はブルドーザで用いられているものと同様のものであり、油圧により上げ下げする。
架設車1aの後部には連結アーム413に連結する連結アーム54が設けられている。また架設車1aの前部からは連結アーム413と同様の連結アーム55が引き出せるようになっている(図58参照)。
架設車1aは牽引車400に牽引されて後ろ向き移動する。牽引車400がバックすれば、架設車1aは前向きに移動することになる。図57には、1台の架設車1aが仮設橋架設場所に配置された状況が示されている。この状態では、架設車1aは車輪13及びアウトリガ50、52によって安定して支持されている。この後の架設手順は第1実施形態において1台の架設車を用いて行う架設手順と同じである。なお牽引車400の排土板412は、架設車1aの配置場所を地均しするのに用いることができる。
図58には、2台の架設車1aが仮設橋架設場所に配置された状況が示されている。後方の架設車1aからは連結アーム55が引き出され、これに前方の架設車1aの連結アーム54が連結されている。連結アーム54、55の連結だけでは前後の架設車1aのアラインメントを確保することができないので、第1実施形態と同様、後方の架設車1aのマニピュレータ60で前方の架設車1aのグリップバー12をつかんでアラインメント調整を行う。この後の架設手順は第1実施形態において2台の架設車を用いて行う架設手順と同じである。
図58のように複数の架設車1aを連結した場合には、連結した架設車1aのすべてを1台の牽引車400で牽引して移動させることができる。工場、物流拠点、空港などで用いられている運搬車両と同じように、架設車1aのステアリング機構に連結アーム54を連結し、先行する架設車1aの軌跡をなぞる形で後続の架設車1aが走行するようにしておくとよい。
なお、牽引車400の走行手段は無限軌道411に限定されない。車輪を採用することも可能である。通常のトラックあるいはトレーラー牽引用のトラクターを牽引車に転用してもよい。
このように、架設車には自走能力を持たせず、自走能力を有する他の車両に連結して移動させるというスタイルは、第1実施形態の架設車に限らず、第2〜第6のいずれの実施形態の架設車にも適用可能である。
また、第1〜第7実施形態の全てについて、「油圧シリンダ」としたところは、これと同等の動作が可能な、液圧、電動等の一般的なアクチュエータで代替することが可能である。
以上本発明の各実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。