本発明では、(Ma-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(ただしMはCa、Sr、Baのうちの少なくとも1種)で示される蛍光体を、略球形状の粒子が得られやすい水溶液合成法、水熱合成法、噴霧合成法あるいは加水分解合成法によって作製している。すなわち、蛍光体原料から蛍光体の前駆体を作製し、この前駆体を用いて1000℃〜1400℃の高温で熱処理をして焼結させても、蛍光体の前駆体が略球形状であるため焼結時に粒子同士が合体しにくく略球形状を保ったままの蛍光体が得られる。なお、ここでいう「略球形状」とは、ほとんどの蛍光体粒子の軸径比(短軸径/長軸径)が、例えば0.9以上1.0以下となるように定義されるものであり、必ずしも蛍光体粒子の全てがこの範囲に入る必要はない。
したがって蛍光体を粉砕処理することが少なくてすむため、欠陥の少ない輝度の高い蛍光体を得ることができる。また、従来のZn2SiO4:Mnのように、ZnOを蛍光体組成中に含まないため、1000℃〜1400℃の高温で焼成しても特定の原料が選択的に昇華することがなく、蛍光体の組成ずれが起こらない。そのため寿命特性の良好な緑色蛍光体を得ることができる。
また、本発明にかかる製造方法により形成される蛍光体は、粒径が小さく、粒度分布が均一であり、さらに結晶性が良好であるため、蛍光体層を形成する際の蛍光体粒子の充填密度が向上する。したがって、実質的に発光に寄与する蛍光体粒子の発光面積が増加し、さらに放電による劣化も少ない。したがって、高精細画像を表示するPDPのように放電空間が狭くなっても高輝度を得ることができる。
ここで、蛍光体の具体的な製造方法としての4種の方法について、緑色蛍光体を例に説明する。
まず、水溶液合成法について述べる。蛍光体原料としては、硝酸バリウムBa(NO3)2、硝酸カルシウムCa(NO3)2、硝酸ストロンチウムSr(NO3)2、硝酸マグネシウムMg(NO3)2、酸化珪素SiO2(コロイダルシリカ)やエチルシリケートSi(O・C2H5)4および硝酸ユーロピウムEu(NO3)3、硝酸テルビウムTb(NO3)3を用いる。この蛍光体原料を水性媒体に溶解して水和混合液を作製する(混合液作製工程)。次に、この水和混合液に、超音波を印加しながらO2(酸素)、O3(オゾン)あるいはO2−N2(酸素−窒素)を用いてバブリングし、アルカリ性(塩基性)水溶液を加えて混合することにより蛍光体の前駆体である水和物を作製する(水和物作製工程)。次に、この水和物作製工程で得られた蛍光体の前駆体を含む溶液を空気中において700℃〜900℃の温度で熱処理して蛍光体の前駆体粉体を得る(熱処理工程)。その後、蛍光体の前駆体粉体を還元雰囲気中において1000℃〜1400℃の温度で焼成する(焼成工程)ことにより、略球形状の粉体である緑色蛍光体を作製することができる。
次に、噴霧合成法について述べる。水溶液合成法において説明した混合液作製工程と水和物作製工程とを行う。次に、水和物作製工程によって得られた蛍光体の前駆体を含むアルカリ性水溶液の液滴を、1000℃〜1500℃の温度に加熱された炉に噴霧する(噴霧工程)ことにより蛍光体の前駆体粉体を作製する。その後、この蛍光体の前駆体粉体を還元雰囲気中において1000℃〜1400℃の温度で焼成することにより、略球形状の粉体である緑色蛍光体を作製することができる。
次に、水熱合成法について述べる。水溶液合成法において説明した混合液作製工程と水和物作製工程とを行う。その後、水和物作製工程によって得られた蛍光体の前駆体を含むアルカリ性水溶液を高圧容器に入れて、100℃〜300℃の温度で0.2MPa〜10MPaの圧力を加えて水熱合成反応を行う(水熱合成工程)ことにより、蛍光体の前駆体粉体を作製する。その後、この蛍光体の前駆体粉体を還元雰囲気中において1000℃〜1400℃の温度で焼成することにより、略球形状の粉体である緑色蛍光体を作製することができる。
次に、加水分解合成法について述べる。蛍光体原料としてCa、Sr、Ba、Mg、Si、Eu、Tbの各元素を含有する有機化合物(金属アセチルアセトン、金属アルコキシド)を用いる。この蛍光体原料とアルコールおよび水とを混合し、その混合物から加水分解反応を用いて蛍光体の前駆体を作製する。次にこの蛍光体の前駆体を700℃〜900℃の温度で熱処理して蛍光体の前駆体粉体を得る。その後、この蛍光体の前駆体粉体を還元雰囲気中において1000℃〜1400℃の温度で焼成することにより、略球形状の粉体である緑色蛍光体を作製することができる。
以上のような水溶液合成法、水熱合成法、噴霧合成法、あるいは加水分解法では、蛍光体の前駆体は略球形状である。そのため、その前駆体から得られる緑色蛍光体粒子も略球形状となり、粒径が0.05μm〜3μmと小さく、さらに粒度分布も良好である。そのため、蛍光体層を形成する蛍光体粒子の充填密度が向上し、実質的に発光に寄与する蛍光体粒子の発光面積が増加する。したがって、PDPの放電空間体積が従来の1/3で、しかも蛍光体の膜厚が従来の1/3であっても、プラズマディスプレイ装置の輝度が向上するとともに、輝度劣化が抑制されて輝度特性に優れたプラズマディスプレイ装置を得ることができる。
特に、輝度劣化が大きかったZn2SiO4:Mnの緑色蛍光体に代えて、化学式が(Ma-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(MはCa、Ba、Srのうちの少なくとも1種)で示される緑色蛍光体を用いることで各種の劣化が大きく改善できる。
ここで、これら緑色蛍光体の蛍光体粒子の平均粒径としては、0.1μm〜3μmの範囲が好ましい。また粒度分布は最大粒径が8μm以下であり、最小粒径が平均粒径の1/4以上が好ましい。蛍光体粒子において紫外線が到達する領域は、粒子表面から数百nm程度と浅く、ほとんど表面しか発光しない。そのため、蛍光体粒子の平均粒径が3μm以下になれば発光に寄与する粒子の表面積が増加し、蛍光体の発光効率は高い状態に保たれる。また、蛍光体粒子の平均粒径が3μmを超えると、蛍光体層の厚みを20μmよりも大きくする必要があり放電空間が十分確保できない。一方、蛍光体粒子の平均粒径が0.1μmより小さくなると欠陥が生じやすく輝度が向上しない。
以下、本発明の一実施の形態にかかるプラズマディスプレイ装置について、図面を参照しながら説明する。
図1はPDP100における前面ガラス基板101を取り除いた概略平面図であり、図2は、PDP100の図1に示す画像表示領域123における一部分を示す斜視図である。なお、図1においては表示電極103、表示スキャン電極104、アドレス電極107の本数などについては分かりやすくするため一部省略して図示している。図1、図2を参照しながらPDP100の構造について説明する。
図1に示すように、PDP100は、前面ガラス基板101(図示せず)と、背面ガラス基板102と、N本の表示電極103と、N本の表示スキャン電極104(n本目を示す場合はその数字nを括弧書きで示す)と、M本のアドレス電極107(m本目を示す場合はその数字mを括弧書きで示す)と、斜線で示す気密シール層121などを有している。各電極103、104、107による3電極構造の電極マトリックスを有しており、表示電極103および表示スキャン電極104とアドレス電極107との交点に放電セルが形成されている。
図2に示すように、PDP100は、前面ガラス基板101の一主面上に表示電極103、表示スキャン電極104、誘電体ガラス層105、保護層106が配設された前面パネルと、背面ガラス基板102の一主面上にアドレス電極107、誘電体ガラス層108、隔壁109および赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bが配設された背面パネルとが張り合わされて構成されている。前面パネルと背面パネルとの間に形成される放電空間122内には、例えばネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などからなる放電ガスが封入されている。
図3は本発明の一実施の形態にかかるプラズマディスプレイ装置のブロック図である。図3に示すようにプラズマディスプレイ装置160はPDP100にPDP駆動装置150を接続して構成されている。PDP駆動装置150は、表示電極103を駆動する表示ドライバ回路153、表示スキャン電極104を駆動する表示スキャンドライバ回路154、アドレス電極107を駆動するアドレスドライバ回路155、およびこれらの回路を制御するコントローラ152によって構成されている。プラズマディスプレイ装置160の駆動時にはコントローラ152の制御に従い、点灯させようとする放電セルにおいて表示スキャン電極104とアドレス電極107にパルス電圧を印加することによりその間でアドレス放電を行った後、表示電極103と表示スキャン電極104との間にパルス電圧を印加して維持放電を行う。この維持放電によって放電セルにおいて紫外線が発生し、紫外線により励起された蛍光体層が発光することで放電セルが点灯する。このようにして、各色の蛍光体層が形成された放電セルの点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
次に、上述したPDP100について、その製造方法を図1および図2を参照しながら説明する。
前面パネルは、前面ガラス基板101上にまず、各N本の表示電極103および表示スキャン電極104(図2においては各2本のみ表示している)を交互かつ平行にストライプ状に形成した後、表示電極103および表示スキャン電極104を覆うように誘電体ガラス層105を形成し、さらに誘電体ガラス層105の表面に保護層106を形成することによって作製される。
表示電極103および表示スキャン電極104は、ITO(インジウムスズ酸化物)からなる透明電極と銀などの金属材料からなるバス電極とから構成される電極である。例えば、スパッタリング法により前面ガラス基板101上の略全面にITO膜を形成した後、エッチングでパターニングして所定のパターン(ストライプ状)の透明電極を形成し、次に、バス電極用の銀ペーストをスクリーン印刷により塗布した後、焼成することによって形成される。
誘電体ガラス層105は、鉛系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷で塗布した後、所定温度、所定時間(例えば560℃で20分)焼成することによって、所定の層の厚み(約20μm)となるように形成する。鉛系のガラス材料を含むペーストとしては、例えば、PbO(70wt%)、B2O3(15wt%)、SiO2(10wt%)、およびAl2O3(5wt%)と有機バインダとの混合物が使用される。ここで、有機バインダとは有機溶媒に樹脂を溶解したもので、例えばα−ターピネオールに10%のエチルセルローズを溶解したものである。エチルセルローズ以外に、樹脂としてアクリル樹脂、有機溶媒としてブチルカービトールなども使用することができる。さらに、こうした有機バインダに分散剤として、例えばグリセルトリオレエートなどを混入させてもよい。
保護層106は、酸化マグネシウム(MgO)からなるものであり、例えばスパッタリング法やCVD法(化学蒸着法)によって所定の厚み(約0.5μm)となるように形成される。
背面パネルは、まず背面ガラス基板102上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し、その後、焼成することによってM本のアドレス電極107が形成される。そのアドレス電極107を覆うように鉛系のガラス材料を含むペーストがスクリーン印刷法で塗布されて誘電体ガラス層108が形成され、同じく鉛系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布した後、焼成することによって隔壁109が形成される。この隔壁109によって、放電空間122が表示電極103および表示スキャン電極104に平行な方向に一つの放電セル(単位発光領域)毎に区画される。
図4は、PDP100の一部断面図である。図4に示すように、隔壁109の間隙寸法Wが32インチ〜50インチのHD−TVに合わせて130μm〜240μm程度に規定される。そして、隔壁109と隔壁109の間の溝に、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各蛍光体粒子と有機バインダとからなるペースト状の蛍光体インキを塗布する。これを400℃〜590℃の温度で焼成して有機バインダを焼失させ、各蛍光体粒子よりなる赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bが形成される。
この赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bのアドレス電極107上における積層方向の厚みLは、各色蛍光体粒子の平均粒径のおよそ8倍〜25倍程度に形成することが望ましい。すなわち、蛍光体層に一定の紫外線を照射したときの輝度(発光効率)を確保するためには、放電空間において発生した紫外線を透過させないように、蛍光体粒子が最低でも8層、好ましくは20層程度積層された厚みを保持することが望ましい。一方、蛍光体粒子が25層を超える厚みとなれば蛍光体層の発光効率はほとんど飽和してしまうとともに、放電空間122の大きさを十分に確保できなくなる。
また、水溶液合成法、水熱合成法、噴霧合成法、加水分解合成法などにより蛍光体の前駆体を用いて作製した蛍光体粒子のように、その粒径が十分小さく、かつ略球形状のものであれば、略球形状でない粒子を使用する場合と比べ、積層段数が同じ場合であっても蛍光体粒子の充填度が高まる。したがって、蛍光体粒子の総表面積が増加するため、蛍光体層における実際の発光に寄与する蛍光体粒子表面積が増加してさらに発光効率が高まる。
このようにして作製された前面パネルと背面パネルとは、パネル封着工程において、前面パネルの表示電極103および表示スキャン電極104と背面パネルのアドレス電極107とを直交するように重ね合わせる。そのとき、パネル周縁に封着用ガラスを介挿させて450℃程度で10分間〜20分間焼成して気密シール層121(図1)を形成することにより封着される。その後、一旦放電空間122内を高真空(例えば、1.1×10-4Pa)に排気した後、放電ガス(例えば、Ne−Xe系、He−Xe系の不活性ガス)を所定の圧力で封入することによってPDP100が作製される。
図5は、赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bを形成する際に用いるインキ塗布装置の概略構成図である。
図5に示すように、インキ塗布装置200は、サーバ210、加圧ポンプ220、ヘッダ230などを備え、蛍光体インキを蓄えるサーバ210から供給される蛍光体インキは、加圧ポンプ220によりヘッダ230に加圧されて供給される。ヘッダ230にはインキ室230aおよびノズル240が設けられており、加圧されてインキ室230aに供給された蛍光体インキは、ノズル240から連続的に吐出されるようになっている。このノズル240の口径Dは、ノズルの目詰まり防止のため30μm以上、かつ塗布の際の隔壁からのはみ出し防止のため隔壁109間の間隔W(約130μm〜240μm)以下にすることが望ましく、通常30μm〜130μmに設定される。
ヘッダ230は、図示しないヘッダ走査機構によって直線的に駆動されるように構成されており、ヘッダ230を走査させるとともにノズル240から蛍光体インキ250を連続的に吐出することにより、背面ガラス基板102上の隔壁109間の溝に蛍光体インキが均一に塗布される。ここで、使用される蛍光体インキの粘度は25℃において、1500CP〜30000CP(センチポアズ)の範囲に保たれている。
なお、サーバ210には図示しない攪拌装置が備えられており、その攪拌作用によって蛍光体インキ中の蛍光体粒子の沈殿が防止される。またヘッダ230は、インキ室230aやノズル240の部分も含めて一体成形されたものであり、金属材料を機械加工ならびに放電加工することによって作製されたものである。
また、蛍光体層を形成する方法としては、上記方法に限定されるものではなく、例えば、フォトリソ法、スクリーン印刷法、および蛍光体粒子を混合させたフィルムを配設する方法など、種々の方法を利用することができる。
蛍光体インキは、各色の蛍光体粒子、バインダおよび溶媒を混合して、1500CP〜30000CPとなるように調合したものであり、必要に応じて、界面活性剤、シリカ、分散剤(0.1wt%〜5wt%)などを添加してもよい。
この蛍光体インキに調合される赤色蛍光体としては、(Y、Gd)1-xBO3:Euxまたは(Y1-x)2O3:Euxで表される化合物が用いられる。
青色蛍光体としては、Ba1-xMgAl10O17:EuxまたはBa1-x-ySryMgAl10O17:Euxで表される化合物が用いられる。
緑色蛍光体としては、(Ma-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(MはCa、Sr、Baのうちの少なくとも1種)で表される化合物が用いられ、その母体材料を構成するM(Ca、Sr、Ba)元素の一部を緑色の発光を得るためにEu、Tbに置換した化合物である。
蛍光体インキに調合されるバインダとしては、エチルセルローズやアクリル樹脂を用い(蛍光体インキの0.1wt%〜10wt%を混合)、溶媒としては、α−ターピネオール、ブチルカービトールを用いることができる。なお、バインダとして、PMA(ポリアクリル酸メチル)やPVA(ポリビニルアルコール)などの高分子を用いることができ、溶媒として、ジエチレングリコール、メチルエーテルなどの有機溶媒を用いることもできる。
本実施の形態においては、蛍光体は、水溶液合成法、水熱合成法、噴霧合成法または加水分解合成法により製造されたものが用いられ、各色蛍光体の具体的な製造方法について以下に説明する。
まず緑色蛍光体について述べる。最初にMがCaの場合の(Caa-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2の合成について述べる。
この蛍光体は、上述した蛍光体組成を化学式で表すとaCaO・xEuO・yTbO・MgO・2SiO2となる。ここではa=2の場合について説明する。
まず、混合液作製工程において、蛍光体原料となる、硝酸カルシウムCa(NO3)2、硝酸マグネシウムMg(NO3)2、酸化珪素SiO2(コロイダルシリカ)、硝酸ユーロピウムEu(NO3)3、硝酸テルビウムTb(NO2)3の各材料を上記の化学式において、モル比がa:1:2:x:y(a=2、0.02≦x≦0.2、0≦y≦0.05)となるように混合し、これを水性媒体に溶解して混合液(水和混合液)を作製する。この水性媒体としては、イオン交換水や純水が不純物を含まない点で好ましいが、これらに非水溶媒(メタノール、エタノールなど)が含まれていても使用することができる。
次にこの水和混合液にアルカリ性(塩基性)溶液(例えば水酸化カリウム)を加えることで球形状の水和物(蛍光体の前駆体)を作る。これを金あるいは白金などの耐食性、耐熱性を持つものからなる容器に入れ、例えばオートクレーブなどの加圧しながら加熱することができる装置で水熱合成反応を行う。水熱合成反応は、高圧容器中で所定温度(例えば100℃〜300℃)、所定圧力(例えば0.2MPa〜10MPa)の条件下で、還元剤としてアルミやグラファイト粉末を入れて12時間〜20時間の処理を行い、略球形状の蛍光体の前駆体粉体を作製する。
また、オートクレーブを使用せずに前述の水和混合液を直接加圧ノズルから、超音波を印加しながら1000℃〜1500℃に加熱された炉に噴霧させることにより、略球形状の蛍光体の前駆体粉体を作製する噴霧合成法を用いてもよい。
次に、蛍光体の前駆体粉体を還元雰囲気下(例えば水素を5%、窒素を95%含む雰囲気)で、所定温度、所定時間(例えば、800℃〜1400℃で2時間)の条件下で焼成し、次にこれを分級することにより所望の緑色蛍光体(Ca2-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(Ca2MgSi2O6:Eu、Tb)を得ることができる。
ここでは、M=Ca、a=2の場合の(Ca2-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2で表される緑色蛍光体を得る方法について説明したが、M=Caでa=1の場合の(Ca1-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2で表される緑色蛍光体を得るには0≦x≦0.1、0.01≦y≦0.2とする。また、M=Caでa=3の場合の(Ca3-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2で表される緑色蛍光体を得るには0≦x≦0.1、0.01≦y≦0.2とする。このように、蛍光体原料の混合比率を変えて上記と同じ方法を用いるCaの組成比率の異なる緑色蛍光体を得ることができる。
また、M=Srの場合には、蛍光体原料としてCa(NO3)2の代わりに硝酸ストロンチウムSr(NO3)2を用いればよく、M=Baの場合には、蛍光体原料としてCa(NO3)2の代わりに硝酸バリウムBa(NO3)2を用いればよい。
いずれにしても、水熱合成法や噴霧合成法を用いることにより得られる蛍光体粒子は、形状が略球形状となり、かつ粒径が従来の固相反応から作製されるものと比べて小さく形成される。
次に、MがCa、Sr、Baが混合された場合の(Ca、Sr、Ba)a-x-yEuxTby〕O・MgO・2SiO2の合成方法について述べる。
この蛍光体は、上述した蛍光体組成を化学式で表すと、a(Ca、Sr、Ba)O・xEuO・yTbO・MgO・2SiO2となる。ここで上記化学式において(Ca、Sr、Ba)Oとあるのは、Caの一部をSrあるいはBaで置き換えた(Ca/Sr、Baの比0.1〜1)のみである。ここではa=2の場合の加水分解法について説明する。
蛍光体原料として、カルシウムのアルコキシドCa(O・R)2、ストロンチウムのアルコキシドSr(O・R)2、バリウムのアルコキシドBa(O・R)2〔(Ca/Sr、Baの比)0.1〜1.0〕、マグネシウムのアルコキシドMg(O・R)2、珪素のアルコキシドSi(O・R)4、ユーロピウムのアルコキシドEu(O・R)3、テルビウムのアルコキシドTb(O・R)3(ただしRはアルキル基)を用いる。上記化学式において、モル比がa:1:2:x:y(a=2、0.02≦x≦0.2、0≦y≦0.05)となるように混合する。ここで、モル比aは、Ca(O・R)2とSr(O・R)2とBa(O・R)2の合計量を表すもので、以降のモル比は上記の蛍光体原料の記載順に対応しており、Mg(O・R)2のモル比が1、Si(O・R)4のモル比が2、Eu(O・R)3のモル比がx、Tb(O・R)3のモル比がyである。そして、上記のように混合したアルキル基を有する蛍光体原料に水またはアルコールを添加して加水分解させた略球形状の前駆体を900℃〜1300℃で焼成する。次にこれを還元雰囲気、例えば水素が5%、窒素が95%の雰囲気で所定温度、所定時間の条件(例えば1000℃〜1400℃で2時間)で焼成した後、空気分級機によって分級することによって加水分解法で緑色蛍光体が得られる。
なお、Ca、Sr、Baのaの値は1、2、3と任意に選択が可能であり、それぞれの場合にその母体結晶構造にはあまり変化は見られない。しかしながら、蛍光体の温度特性、すなわちPDP製造過程での温度履歴に対する蛍光体特性の劣化は、aが大きいほど小さくなる。また、前述の各種の合成法における焼成工程での焼成温度は、aの値が大きいほど高くする必要がある。したがって、aの値は蛍光体の製造プロセス条件やPDP製造プロセス条件によって任意に選択することが可能となる。
さらに、Ca、Sr、Baは単独で用いても、あるいはそれらを混合して用いてもよいが、単独で用いる場合には温度履歴に対する蛍光体特性の劣化は、Baが一番小さく、次に小さいのがSrとなり、Caの劣化が一番大きい。したがって、これらの材料も選択もPDP製造プロセス条件などよって任意に選択することが可能となる。
次に、青色蛍光体について述べる。青色蛍光体として、Ba1-xMgAl10O17:Eux、あるいはBa1-x-ySryMgAl10O17:Euxの合成方法について述べる。
青色蛍光体の具体的な製造方法としては、例えば蛍光体原料として、Ba(NO3)2、Sr(NO3)2、Mg(NO3)2、Al(NO3)3およびEu(NO3)3を用い、緑色蛍光体の合成と同様にしてこれら蛍光体原料の水溶液から球形状の蛍光体の前駆体を作製する。その後、これを用いた水熱合成工程においては、100℃〜300℃の温度、0.2MPa〜10MPaの圧力が加えられた状態で水熱合成反応を行い、その後、得られた粉体をH2−N2中で熱処理し、その後、分級すれば青色蛍光体が得られる。
次に、赤色蛍光体について述べる。赤色蛍光体として(Y、Gd)1-xBO3:Euxの合成方法について述べる。
混合液作製工程において、蛍光体原料である水酸化イットリウムY(OH)3と水酸化ガドリミウムGd(OH)3とホウ酸H3BO3と水酸化ユーロピウムEu(OH)3とを混合し、モル比が(Y(OH)3+Gd(OH)3):H3BO3:Eu(OH)3=1−x:1:x(0.05≦x≦0.20)(YとGdの比は65対35)となるように、イオン交換水に溶解して混合液を作製する。次に、水和物作製工程において、この混合液に対して塩基性水溶液(例えば、アンモニア水溶液)を添加し、水和物を作る。
その後、水熱合成工程において、この水和物とイオン交換水を白金や金などの耐食性、耐熱性を持つものからなる容器中に入れ、例えばオートクレーブを用いて高圧容器中で所定温度(例えば100℃〜300℃)、所定圧力(例えば0.2MPa〜10MPa)の条件下で、所定時間(例えば3時間〜12時間)で水熱合成反応を行う。この水熱合成工程により、得られる蛍光体は、粒径が0.1μm〜2.0μm程度となり、その形状が球形状となる。次にこれを空気中において800℃〜1200℃で2時間熱処理し、その後、分級すれば赤色蛍光体が得られる。
次に赤色蛍光体として(Y1-x)2O3:Euxの合成方法について述べる。
混合液作製工程において、原料である硝酸イットリウムY(NO3)3と硝酸ユーロピウムEu(NO3)3を混合し、モル比が2(1−x):x(0.05≦x≦0.30)となるようにイオン交換水に溶解して混合液を作製する。次に、水和物作製工程において、この水溶液に対して塩基性水溶液(例えば、アンモニア水溶液)を添加し、水和物を形成させる。
その後、水熱合成工程において、この水和物とイオン交換水を白金や金などの耐食性、耐熱性を持つものからなる容器中に入れ、例えばオートクレーブを用いて高圧容器中で温度100℃〜300℃、圧力0.2MPa〜10MPaの条件下で、3時間〜12時間の水熱合成を行う。その後、得られた化合物の乾燥を行い、所望の(Y1-x)2O3:Euxが得られる。
次に、この蛍光体を空気中で800℃〜1200℃、2時間のアニール処理を行った後、分級して赤色蛍光体とする。この水熱合成工程により得られる蛍光体は、粒径が0.1μm〜2.0μm程度となり、かつその形状が球形状となる。この粒径、形状は発光特性に優れた蛍光体層を形成するのに適している。
上記各蛍光体粒子は、いずれも水溶液中で合成した球形状の前駆体を用いて水熱合成法、噴霧合成法、加水分解法によって生成されるため、上述のように、形状が球形状かつ粒径の小さな粒子(平均粒径が0.1μm〜2.0μm程度)に形成される。
このように、従来の固相反応させる固相反応法よりも球形状の前駆体を用いて作製した蛍光体粒子は、焼成工程で蛍光体粒子の融着による合体が抑えられるため、粒度分布が均一になる。なお、出発原料として硝酸化合物、水酸化化合物を用いたが、それ以外の化合物、例えば金属のアルコキシドM(O・R)2やアセチルアセトンM(C5H7O)2(ただしMは金属)を用いても作製は可能である。
なお、上述したPDP100の赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bには、全ての蛍光体層に水熱合成法で作製した蛍光体粒子を使用したが、水溶液中合成法、噴霧合成法でも作製しても水熱合成法と同等の蛍光体層の作製が可能である。
R、G、B3色のうち、特に従来のZn2SiO4:Mn構造の緑色蛍光体は、他の蛍光体と比べて輝度が低く、また放電による輝度劣化も大きかったので3色同時に発光した場合の白色の色温度は低下する傾向があった。そのため、プラズマディスプレイ装置においては、回路的に緑色以外の蛍光体(赤、青)が形成された放電セルの輝度を下げることにより白表示の色温度を改善していた。しかしながら、本発明にかかる製造方法(水溶液中で蛍光体の前駆体を作製した方法)により製造された(Ma-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(MはCa、Sr、Baのうちの少なくとも1種)で表される緑色蛍光体を使用すれば、緑色放電セルの輝度が高まり、赤色放電セルおよび青色放電セルの輝度を意図的に下げることが不要となる。したがって、全ての色の放電セルの輝度を最大限使用することができるので、白表示の色温度を高い状態を保ちつつ、プラズマディスプレイ装置の輝度を上げることができる。
以下、本発明のプラズマディスプレイ装置の性能を評価するために、上記実施の形態に基づくサンプルを作製し、そのサンプルについて性能評価実験を行った。
作製した各プラズマディスプレイ装置は、42インチの大きさであり(隔壁109の間隙寸法W=150μmのHD−TV仕様)、誘電体ガラス層105の厚みが20μm、保護層106の厚みが0.5μm、対となる表示電極103と表示スキャン電極104との間の距離が80μmとなるように作製した。また、放電空間に封入される放電ガスは、ネオン(Ne)を主体とするガスにキセノン(Xe)ガスを10%混合したガスであり、73kPaの放電ガス圧で封入している。
実施例としてのプラズマディスプレイ装置に用いる各色蛍光体は、水溶液合成法、水熱合成法、噴霧合成法または加水分解合成法で作製した球形状の前駆体を用いて作製した。緑色蛍光体として(Ma-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(MはCa、Sr、Baのうちの少なくとも1種、aは1、2または3)を用い、青色蛍光体としてBa1-xMgAl10O17:EuxまたはBa1-x-ySryMgAl10O17:Euxを用い、赤色蛍光体として(Y、Gd)1-xBO3:Euxまたは(Y1-x)2O3:Euxを用いた。この各色蛍光体を用いて蛍光体層を形成する際に使用した蛍光体インキは、本実施の形態で示すような混合比で蛍光体、樹脂、溶剤、分散剤を混合して作製した。蛍光体インキの粘度(25℃)について測定した結果、いずれも粘度が1500CP〜30000CPの範囲に保たれていた。また、形成された蛍光体層を観察したところ、いずれも隔壁壁面に均一に蛍光体インキが塗布されており、蛍光体層の膜厚は20μmである。
また比較例としてのプラズマディスプレイ装置に用いる各色蛍光体には、赤色蛍光体として水熱合成法で作製した(Y0.85)2O3:Eu0.15(平均粒径2μm)を用い、青色蛍光体として水熱合成法で作製したBa0.8MgAl10O17:Eu0.2(平均粒径3μm)を用い、緑色蛍光体として固相反応法で作製したZn2SiO4:Mn(平均粒径3.2μm)を用いた。そして、実施例としてのプラズマディスプレイ装置と同様の条件で蛍光体インキを用いて蛍光体層(膜厚20μm)を形成した。
これらの蛍光体を用いて以下のような実験を行った。
このような実施例および比較例の試料について、パネルの製造工程において、パネル封着工程(温度450℃)での緑色蛍光体の輝度変化率を計測した。また、パネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率、アドレス放電時のアドレスミスの有無および緑色全面点灯時のパネル輝度を計測した。
パネル封着工程での緑色蛍光体の輝度変化率は次のようにして測定した。すなわち、蛍光体層を形成した後でパネル封着前の背面ガラス基板の一部分を所定の大きさ(例えば約20mm×10mm)に切り出す。その後、一部分を切り出した後の背面ガラス基板を用いてパネル封着を行い、パネル封着後の背面ガラス基板の一部分を所定の大きさ(例えば約20mm×10mm)に切り出す。そして、パネル封着の前後で切り出した背面ガラス基板片を真空チャンバー中にセットし、エキシマランプ(真空紫外線146nm)を照射させ蛍光体層を発光させる。その発光を輝度計で計測し、パネル封着の前後での緑色成分の輝度から輝度変化率r1を次式により求めた。
r1=(BG1−BG0)/BG0×100
ここで、BG0はパネル封着前の緑色成分の輝度であり、BG1はパネル封着後の緑色成分の輝度である。
なお、プラズマディスプレイ装置のパネル輝度の測定については、パネルに電圧150V、周波数30kHzの放電維持パルスを印加し、緑色の放電セルのみを点灯させた状態で行った。パネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率の測定は、プラズマディスプレイ装置に電圧200V、周波数100kHzの放電維持パルスを100時間連続して印加することにより加速寿命試験を行い、その加速寿命試験の前後におけるパネル輝度を測定し、そのパネル輝度から輝度変化率r2を次式により求めた。
r2=(B1−B0)/B0×100
ここで、B0は加速寿命試験を行う前のパネル輝度であり、B1は加速寿命試験を行った後のパネル輝度である。
なお、本実験においては、各色蛍光体層に均等に放電を行っており、白表示したときの色温度を調整するために赤色、緑色の放電セルの輝度を抑えるという制御は行っていない。
また、アドレス放電時のアドレスミスについては画像を見てちらつきがあるかないかで判断し、1ヶ所でもあれば「あり」としている。
以下に、緑色蛍光体として(M1-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(MはCa、Sr、Baのうちの少なくとも1種)を用いたときの各色蛍光体の組成と合成条件を表1に示し、各実験測定結果を表2に示す。また、緑色蛍光体として(M2-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(MはCa、Sr、Baのうちの少なくとも1種)を用いたときの各色蛍光体の組成と合成条件を表3に示し、各実験測定結果を表4に示す。さらに、緑色蛍光体として(M3-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(MはCa、Sr、Baのうちの少なくとも1種)を用いたときの各色蛍光体の組成と合成条件を表5に示し、各実験測定結果を表6に示す。
表1、表3および表5における試料番号30は前述した比較例であり、表1における試料番号1〜4、表3における試料番号11〜19および表5における試料番号21〜25は実施例である。また表2、表4および表6において、項目「輝度変化率r1」は前述したパネル封着工程での緑色蛍光体の輝度変化率r1であり、項目「輝度変化率r2」は前述したパネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率r2である。
表2、表4および表6に示すように、比較サンプル30においては、パネル封着工程での輝度変化率r1は−12.7%であり、パネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率r2は−14.1%であった。また、アドレス放電時にはアドレスミスがあり、緑色全面点灯時のパネル輝度Bは275cd/m2の値を示した。さらに、蛍光体インキを塗布するためのインキ塗布装置を200時間用いる間にノズルの目詰まりが発生した。
一方、緑色蛍光体として(M1-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2を使用した試料番号1〜4のサンプルについては、表2に示すように、緑色全面点灯時のパネル輝度Bは軒並み300cd/m2を超える値を示した。また、パネル封着工程での輝度変化率r1は−1.0%〜−1.5%であり、パネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率r2は−0.5%〜−1.5%であった。また、アドレス放電時のアドレスミスはなかった。さらに、蛍光体インキを塗布するためのインキ塗布装置を200時間用いる間にはノズルの目詰まりは発生しなかった。
また、緑色蛍光体として(M2-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2を使用した試料番号11〜19のサンプルについては、表4に示すように、緑色全面点灯時のパネル輝度Bは軒並み300cd/m2を超える値を示した。また、パネル封着工程での輝度変化率r1は−0.5%〜−1.0%であり、パネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率r2は−0.7%〜−1.3%であった。また、アドレス放電時のアドレスミスはなかった。さらに、蛍光体インキを塗布するためのインキ塗布装置を200時間用いる間にはノズルの目詰まりは発生しなかった。
また、緑色蛍光体として(M3-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2を使用した試料番号21〜25のサンプルについては、表6に示すように、緑色全面点灯時のパネル輝度Bは軒並み300cd/m2を超える値を示した。また、パネル封着工程での輝度変化率r1は−1.1%〜−1.8%であり、パネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率r2は−0.8%〜−1.5%であった。また、アドレス放電時のアドレスミスはなかった。さらに、蛍光体インキを塗布するためのインキ塗布装置を200時間用いる間にはノズルの目詰まりは発生しなかった。
すなわち本発明の一実施の形態による実施例のサンプル(試料番号1〜4、11〜19、21〜25)は、比較例のサンプル(試料番号30)に比べ、緑色全面点灯時のパネル輝度、パネル封着工程での輝度変化率、パネルの加速寿命試験を行ったときの輝度変化率、アドレス放電時のアドレスミスおよびインキ塗布装置のノズルの目詰まりについて優れた特性を示すことを確認した。
すなわち、本発明による緑色蛍光体は、水溶液中合成法、水熱合成法、噴霧合成法、加水分解法を用いて作製した(Ma-x-yEuxTby)O・MgO・2SiO2(ただしMは、Ca、Sr、Baのうちの少なくとも1種)構造を有する蛍光体であり、比較的小さな略球形状の蛍光体粒子(平均粒径0.1μm〜3.0μm)が合成されているため粒子の粉砕がほとんど不要となる。また従来のZn2SiO4:MnのようにZnOが選択的に飛散(昇華)して酸素欠陥が発生して輝度劣化するということがない。そのため、本実施の形態による緑色蛍光体においては、酸素欠陥の発生が抑制されることにより、酸素欠陥を起点とした結晶性の低下が進行しにくくなり、特に緑色の輝度劣化が抑制されること、および酸素欠陥に吸収される紫外線量が少なくなることから発光中心の励起が行われやすくなるために、従来に比べて輝度が向上すると考えられる。