JP2005209478A - 鉛蓄電池及びその製造方法 - Google Patents

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圭一 和田
Yoshifumi Yamada
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Abstract

【課題】 Sbを用いずに寿命特性を向上させることができる鉛蓄電池を得る。
【解決手段】 鉛合金からなる集電体を用いる。集電体の表面に密度が7.0g/cm以上の酸化物層を設ける。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鉛蓄電池及びその製造方法に関するものである。
鉛蓄電池用の格子体(集電体)としては、従来Pb−Sb系合金が用いられてきたが、この合金を用いた鉛蓄電池は、過充電時の電解液減少、格子体から溶出したSbによる自己放電の問題があるため、近年はPb−Ca−Sn系合金を格子体に用いた鉛蓄電池が広く使用されるようになってきている。
Pb−Ca−Sn系合金は、Pb−Sb系合金に比べ電解液の減少を抑制できるが、過放電放置後の充電受け入れ性や深い放電を行うサイクル寿命特性に問題があることが知られている。
これらの原因として、正極格子体と活物質との界面に不働態層が生成する、格子体/活物質間の密着性がPb−Sb系合金を用いた場合よりも弱いことなどがあげられている。
これらの問題を解決するために、正極格子体の表面にSnやSbを多く含む層を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2001−307740号公報
しかしながら、このような方法でも、集電体の表面のみとはいえSbを用いているために、Sbが電解液に溶出して負極に析出し、水素過電圧を低下させるため、Pb−Ca系合金集電体と同等に自己放電や減液を抑えることができないという問題点があった。
本発明の目的は、寿命特性を向上させることができる鉛蓄電池を提供することにある。
本発明の他の目的は、Sbを用いずに寿命特性を向上させることができる鉛蓄電池を提供することにある。
本発明は、鉛合金からなる集電体を用いた鉛蓄電池を対象とする。
本発明に係る鉛蓄電池では、前記集電体の表面に密度が7.0g/cm以上の酸化物層が形成されていることを特徴とする。
この場合、前記酸化物層がPb及びSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、前記酸化物層中のSn濃度は前記集電体のSn濃度よりも大きいことが好ましい。
また、本発明は、鉛合金からなる集電体を用いた鉛蓄電池の製造方法を対象とする。
本発明に係る鉛蓄電池の製造方法では、前記鉛蓄電池を組み立てた後に過充電を行うことにより、前記集電体の表面に密度が7.0g/cm以上の酸化物層を形成することを特徴とする。
この場合、前記集電体はSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含み、前記酸化物層はPb及びSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含むことが好ましい。
本発明の鉛蓄電池は、集電体の表面に密度が7.0g/cm以上の酸化物層を形成したので、寿命のサイクル特性を延ばすことができる。酸化物層の密度が7.0g/cm より小さいと、寿命サイクル特性が悪くなって好ましくない。
この場合、酸化物層がPb及びSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含んでいると、酸化物層の密度を集電体格子中のSrあるいはBaの量で制御することができる。
また、酸化物層中のSn濃度を集電体のSn濃度よりも大きくしていると、活物質との密着性を更に良くすることができる。
本発明に係る鉛蓄電池の製造方法では、鉛蓄電池を組み立てた後に過充電を行うことにより、集電体の表面に密度が7.0g/cm以上の酸化物層を形成するので、集電体の表面に対する密度が7.0g/cm以上の酸化物層の形成を容易に行うことができる。
この場合、集電体中にSrあるいはBaが存在すると、金属組織が微細化し、微細組織から生成した酸化物層を緻密にすることができる。そのため集電体中から溶出したSnが電解液中に溶け出しにくくなることに加え、SrあるいはBaはSnと金属間化合物を形成し、この金属間化合物はSn単体に比べ電解液への溶出がしずらく、高濃度でSnを酸化物層に残すことができるる。また、酸化物層がPb及びSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含んでいると、酸化物層の密度を集電体格子中のSrあるいはBaの量で制御することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例レベルで比較例と対比しつつ説明する。
(比較例1)
本比較例の鉛蓄電池は、次のようにして製造した。最初に負極板を作った。まず、鉛粉と、該鉛粉に対して13質量%の希硫酸(比重1.26:20℃)と、該鉛粉に対して12質量%の水とを混練して負極活物質ペーストを作った。次に、この負極活物質ペースト73gをPb−Ca0.05質量%−Sn0.6質量%のカルシウム合金のエキスパンド格子体からなる集電体に充填してから、温度50℃、湿度95%中に18時間放置して熟成した後に、温度110℃中に2時間放置して乾燥して未化成負極板を作った。
次に、正極板を作った。まず、鉛粉と、該鉛粉に対して15質量%の希硫酸(比重1.26:20℃)と、該鉛粉に対して12質量%の水とを混練して正極活物質ペーストを作った。次に、この正極活物質ペースト85gをPb−Ca0.06質量%−Sn1.3質量%のカルシウム合金のエキスパンド格子体からなる集電体に充填してから、温度50℃、湿度95%中に18時間放置して熟成した後に、温度60℃中に24時間放置して乾燥して未化成正極板を作った。
次に、未化成負極板8枚と未化成正極板7枚とをガラス繊維からなるセパレータを介して積層して各極板群を作った。そして、各極板群を電槽内に配置してから、電槽内に電解液を注液して各未化成鉛蓄電池を作った。なお、電解液は比重1.26(20℃)の希硫酸である。
次に、この未化成鉛蓄電池を22.5Aで12時間化成して鉛蓄電池を完成した。
(比較例2)
本比較例の鉛蓄電池は、厚み15mmのPb−Ca0.06質量%−Sn1.3質量%合金シートの両面に、厚み0.5mmのPb−Sb10質量%−Sn10質量%合金シートを重ね合わせ、圧延ローラを用いて圧延し厚さ1.1mmのシートを作成した。これにより、両面にそれぞれ厚さ50μmのPb、Sb及びSn合金層を有する圧延シートを作成した。これにエキスパンド加工を施しエキスパンド格子の集電体とした。このエキスパンド格子の集電体を用いて比較例1と同様の方法で正極板を作成した。その他は、比較例1と同様と同様に比較例2の鉛蓄電池を完成させた。
(実施例1)
本実施例の鉛蓄電池は、次のようにして製造した。最初に負極板を作った。負極板は比較例1と同様の方法で作成した。
次に、正極板を作った。まず、鉛粉と、該鉛粉に対して15質量%の鉛丹、13質量%の希硫酸(比重1.26:20℃)、12質量%の水を混練して正極活物質ペーストを作った。次に、この正極活物質ペースト85gをPb−Sr0.2質量%−Sn2.0質量%のストロンチウム合金のエキスパンド格子体からなる集電体に充填してから、温度50℃、湿度95%中に18時間放置して熟成した後に、温度60℃中に24時間放置して乾燥して未化成正極板を作った。
次に、未化成負極板8枚と未化成正極板7枚とをガラス繊維からなるセパレータを介して積層して各極板群を作った。そして、各極板群を電槽内に配置してから、電槽内に電解液を注液して各未化成鉛蓄電池を作った。なお、電解液は比重1.24(20℃)の希硫酸である。
次に、この未化成鉛蓄電池を22.5Aで12時間化成して鉛蓄電池を完成した。
その後、10Aで24時間充電し、集電体の表面に約7.5g/cmの酸化物層を形成し、実施例1の鉛蓄電池を完成させた。
この酸化物層は、PbとSrとSnとを含んで構成されている。また、酸化物層中のSn濃度は、集電体中のSn濃度よりも大きい。
(実施例2)
本実施例の鉛蓄電池は、次のようにして製造した。最初に負極板を作った。負極板は比較例1と同様の方法で作成した。
次に、正極板を作った。まず、鉛粉と、該鉛粉に対して15質量%の鉛丹、13質量%の希硫酸(比重1.26:20℃)、12質量%の水を混練して正極活物質ペーストを作った。次に、この正極活物質ペースト85gをPb−Ba0.1質量%−Sn2.0質量%のバリウム合金のエキスパンド格子体からなる集電体に充填してから、温度50℃、湿度95%中に18時間放置して熟成した後に、温度60℃中に24時間放置して乾燥して未化成正極板を作った。
次に、未化成負極板8枚と未化成正極板7枚とをガラス繊維からなるセパレータを介して積層して各極板群を作った。そして、各極板群を電槽内に配置してから、電槽内に電解液を注液して各未化成鉛蓄電池を作った。なお、電解液は比重1.24(20℃)の希硫酸である。
次に、この未化成鉛蓄電池を22.5Aで12時間化成して鉛蓄電池を完成した。
その後、10Aで24時間充電し、集電体の表面に約8g/cmの酸化物層を形成し、実施例2の鉛蓄電池を完成させた。
この酸化物層は、PbとBaとSnとを含んで構成されている。また、酸化物層中のSn濃度は、集電体中のSn濃度よりも大きい。
次に、完成させた各鉛蓄電池に対して深放電での耐久性を確認した。試験条件は、25℃の周囲温度で11Aで5.2時間放電(実容量の80%)した後に、11Aで7.8時間充電(放電容量の150%)する充放電サイクルとし、図1に各サイクルの放電末期電圧変化を示した。
実施例1,2は、比較例1,2に比べ、サイクル中の放電末期電圧の低下が遅く、特に実施例1の電圧低下が遅くなっている。これは格子体−活物質界面に生成した酸化物層中のSnの濃度が高く、格子体と活物質の密着性を良くしたためと考えられる。
EPMA(電子線プローブマイクロアナライザー)を用いて酸化物層の観察を行ったところ、図2に示す結果が得られた。ここで、図2の実施例1の(a)はSEM(走査型電子顕微鏡)写真、(b)はSnの分布のEPMA写真、図2の比較例1の(a)はSEM写真、(b)はSnの分布のEPMA写真である。図示のように、実施例1には高濃度のSnが分布し、比較例1にはほとんどSnの分布は見られない。これは、格子体中にSrあるいはBaが存在した場合、金属組織が微細化し、微細組織から生成した酸化物層は緻密になる。そのため格子体中から溶出したSnが電解液中に溶け出しにくくなることに加え、SrあるいはBaはSnと金属間化合物を形成する。この金属間化合物は、Sn単体に比べ電解液への溶出がしずらいため高濃度で酸化物層に残ったと考えられる。図1に示した充放電サイクル試験は放電が実容量の80%と深いため、サイクル中に活物質の深部まで放電が進行する。比較例1,2のように格子体−活物質界面の密着性が十分とれていないものは、格子体−活物質界面に硫酸が入り込み易く界面での放電が起き易くなる。このため図1に示したように、格子体−活物質界面の密着性の良好な実施例1,2に比べ比較例1,2は早期に容量が低下した。
次に、酸化物層の密度と寿命サイクル数について調べた。酸化物層の密度は、集電体格子中のSrあるいはBaの量で制御することができる。表1に示すように、Sr量を増やすことで組織が細かくなり、酸化物層は密になる。
Figure 2005209478
表1に示すSr量の合金組成を持つエキスパンド正極格子体を用い、その他は実施例1と同様の方法で作成した鉛蓄電池についてそれぞれ深放電での耐久性を確認した。
酸化物層密度に対して寿命サイクル数をプロットしたものを図3に示す。図3から酸化物層密度が7.0g/cm以下になると、極端に寿命サイクル特性が悪くなることが分かる。このことから酸化物層密度は7.0g/cm以上で深放電性能に優れた鉛蓄電池を得ることができる。
本実施例では、鉛合金からなる集電体の表面に、Pb及びSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含む酸化物層を、その密度が7.0g/cm以上となるように鉛蓄電池を過充電することにより形成する。酸化物層中のSn濃度は、集電体のSn濃度よりも大きくする。高濃度のSnを含む酸化物層は、活物質との密着性が良く、長期にわたりその密着性を維持することができる。また、充放電サイクルにおいて、格子体−活物質界面における不導体不働態層の生成を抑制することができる。
実施例1,2と比較例1,2の鉛蓄電池における充放電サイクルに対する放電末期電圧の特性図である。 実施例1と比較例1の鉛蓄電池における酸化物層中のSn分布のSEM写真とEPMA写真の比較図である。 本発明の鉛蓄電池における酸化物層密度と寿命サイクル数との関係を示す特性図である。

Claims (5)

  1. 鉛合金からなる集電体を用いた鉛蓄電池であって、前記集電体の表面に密度が7.0g/cm以上の酸化物層が形成されていることを特徴とする鉛蓄電池。
  2. 前記酸化物層がPb及びSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記酸化物層中のSn濃度は前記集電体のSn濃度よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の鉛蓄電池。
  4. 鉛合金からなる集電体を用いた鉛蓄電池の製造方法であって、前記鉛蓄電池を組み立てた後に過充電を行うことにより、前記集電体の表面に密度が7.0g/cm以上の酸化物層を形成することを特徴とする鉛蓄電池の製造方法。
  5. 前記集電体はSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含み、前記酸化物層はPb及びSnの他に、SrまたはBaの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4に記載の鉛蓄電池の製造方法。
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