JP2005206542A - 新規なポリペプチド及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 病原体感染の危険性や好ましくない副作用がなく、安全性の高い生体材料又は生体適合材料、例えば、生体硬組織の補てん、修復、再生に有用な新規なポリペプチドを提供する。
【解決手段】 本発明の新規なポリペプチドは、下記式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットと、下記式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットとを含有する。
-Pro-X-Gly- (1)
-Y-Z-Gly- (2)
(式中、X及びZは同一又は異なってPro又はHypを示し、Yはカルボキシル基を有するアミノ酸残基(Asp、Glu、Glaなど)を示す)
前記ペプチドユニット(1)とペプチドユニット(2)との割合(モル比)は、(1)/(2)=99/1〜1/99程度である。前記ポリペプチドには、アパタイト類を担持してもよい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、病原体感染の危険性や好ましくない副作用がなく、アパタイト類の核形成を促進するのに有用な新規ポリペプチド及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、安全性の高い生体材料又は生体適合材料、特に、生体硬組織の補てん、修復及び/又は再生に有用な新規ポリペプチド(アパタイト類が担持されたポリペプチドも含む)及びその製造方法に関する。
コラーゲンは、あらゆる多細胞動物にみられる繊維状蛋白質であり、皮膚や骨の主成分として哺乳類では全蛋白質の25%を占める。典型的なコラーゲン分子は、3本のコラーゲンポリペプチド鎖が三重らせん構造と呼ばれるロープ状の超らせん構造をとる。コラーゲンには、プロリン(Pro)とグリシン(Gly)とが特に多く含まれ、両アミノ酸残基とも安定な3重らせん構造の形成に重要である。
コラーゲンの生体材料としての利用方法には、例えば、ブタの皮膚組織をそのままあるいは凍結乾燥した後、火傷などによる皮膚の損傷部位に移植する方法、酵素処理などによって細胞成分を除去して用いる方法、酸性溶液や酵素処理によって可溶化したコラーゲンを、所望の形態に再構成して用いる方法がある。一般的なコラーゲンの調製方法および定性方法は、「Methods Enzymol., Vol.82」(非特許文献1), pp33-64, 1982に記載されている。
コラーゲンの利用について種々の提案がなされている。例えば、特開平08−027192号公報(特許文献1)には、皮膚に潤いを与え、かつ皮膚をなめらかにするため、コラーゲンを含有する動物組織をアルコールでエステル化して修飾した後、修飾コラーゲンを抽出するコラーゲン誘導体の製造方法、およびそれを用いた化粧品基剤が提案されている。
特開平07−097454号公報(特許文献2)には、可溶性コラーゲンを、メチレン鎖の両端にイミドエステル基を有するアルキレンジイミデート二価性架橋試薬で架橋処理することにより、熱変性後における三重らせん構造の再生率が高く、水に可溶性の架橋コラーゲンの製造方法が記載されている。
特開平08−053548号公報(特許文献3)には、コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成し、さらにコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ポリペプチドなどと反応させることにより、免疫原性が低く、種々の医療用途で使用される生体適合性移植物の調製に有用なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスが記載されている。
特開平07−278312号公報(特許文献4)には、pH7で実質的に非繊維形態である化学的修飾コラーゲンと共有結合した親水性合成ポリマーを含む結合体が記載されている。この文献には、前記結合体が、特に眼科用デバイスにおいて有用であり、光学的に透明で生体適合性を有することが記載されている。
特開平05−000158号公報(特許文献5)には、コラーゲンマトリックスを砕断し、この砕断マトリックスを高遠心場で遠心し、沈殿を均質化してペーストとし、該ペーストを注型し、注型したペーストを37℃以下の温度で乾燥するコラーゲン膜状物質の製法が記載されている。このコラーゲン膜状物質は、生体適合性で非炎症性、かつ人工移植物として組織の修復に有用であることも記載されている。
特開平05−125100号公報(特許文献6)には、魚鱗をそのまま若しくは脱灰した後、ペプシン処理することにより、高純度の可溶性魚鱗コラーゲンとその製造方法が記載されている。
特開平06−228506号公報(特許文献7)には、70〜90%エタノール媒質中に、コラーゲン溶液をノズルより吐出して、糸状物あるいは膜状物を生成し、乾燥した後、裁断又は粉砕することにより、粒状又は粉状の可溶性コラーゲン乾燥物を製造する方法が記載されている。
特開平08−276003号公報(特許文献8)には、未焼成のヒドロキシアパタイト単結晶を、低抗原性化したコラーゲン線維の少なくとも一部に付着させ、骨などの生体硬組織を修復する材料として用いることが記載されている。
特開平08−041425号公報(特許文献9)には、動物又は人間由来のコラーゲン中のプリオンを除去するために、コラーゲン溶液中の細胞および組織の断片を除去し、アルカリ処理する方法およびこの方法により得られるコラーゲンが記載されている。
また、コラーゲン類似物の化学合成の方法に関し、Pro-Ser-Glyのp-ニトロフェニルエステル、あるいはPro-Ala-Glyのp-ニトロフェニルエステルをジメチルホルムアミドに溶解し、トリエチルアミンを加えて24時間静置することにより、分子量が16,000〜21,000の可溶性ポリアミドが得られることが報告されている(「J. Mol. Biol., Vol.63」(非特許文献2)、pp.85-99, 1972)。これらの可溶性ポリアミドは円二色性スペクトルから3重らせん構造をとることが推定されているが、得られたポリマーの性質に関する記述はない。
エラスチン由来のVal-Pro-Gly-Val-Gly配列を含む50量体のペプチドをジメチルスルホキシドに溶解し、2当量の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドと1当量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、および1.6当量のN−メチルモルフォリンを加えて14日間静置した後、分子量カットオフが5万の透析膜で透析してポリアミドを得る方法も報告されている(「Int. J. Peptide Protein Res., Vol.46」(非特許文献3), pp.453-463, 1995)。
また、特開2003−321500号公報(特許文献10)には、下記式(1)〜(3)で表されるペプチドユニットで構成されているポリペプチドがコラーゲン組織を形成可能であることが開示されている。
[-(OC-(CH2)m-CO)p-(Pro-Y-Gly)n-]a (1)
[-(OC-(CH2)m-CO)q-(Z)r-]b (2)
[-HN-R-NH-]c (3)
(式中、mは1〜18の整数、p及びqは同一又は異なって0又は1、YはProまたはHypを表し、nは1〜20の整数を表す。Zは1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を表し、rは1〜20の整数を表し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。aとbとの割合はa/b=100/0〜30/70(モル比)であり、p=1及びq=0であるときc=a、p=0及びq=1であるときc=bであり、p=1及びq=1であるときc=a+bであり、p=0及びq=0であるときc=0である。)
前記特許文献9に記載されているように、ヒツジの振戦病やウシの海綿状脳症の原因物質がプリオンと呼ばれる伝染性蛋白質であり、この伝染性タンパク質がヒトのクロイツフェルドーヤコブ病伝染の原因の一つと言われている。プリオンは、蛋白質であり、通常の滅菌、殺菌方法では失活し難く、しかも種を越えて感染することが指摘されている(「Nature Review, Vol.2」(非特許文献4)、 pp.118-126, 2001)。
一般に、医療用具や医薬品、化粧品ではウシやブタ由来のコラーゲンを原料として用いることが多い。そのため、通常の滅菌、殺菌方法では除去できないプリオンなどの病原体(又は病原性因子)の感染(又は伝達)の危険性が常に存在している。
また、天然のコラーゲン中には種々の細胞接着サイトが含まれているため、用途に応じた細胞選択性が発揮できない。例えば、神経の軸索誘導材料としてコラーゲンを用いると、軸索の伸長速度より周囲の繊維芽細胞の遊走、増殖速度が大きく瘢痕組織化して軸索が伸長することができない。このため、繊維芽細胞の遊走を防ぐ材料でコラーゲンの周囲を覆うことなどの措置が必要となる。
一方、生体内において、ある種のセラミックス(例えば、生体活性ガラスとしてのBioglass(登録商標)や、結晶化ガラスA−W(Cerabone(登録商標)A−W)など)が骨と結合することが知られている。このセラミックスと骨との結合は、生体内(又はヒトの体液に近いイオン濃度を有する水溶液中)で、前記セラミックス表面においてヒドロキシアパタイト層が形成されることに起因している。その結合メカニズムは、先ず、前記セラミックス表面に形成されたケイ酸イオンやシラノール基が、生体内や水溶液中のカルシウム及びリン酸イオンと反応してヒドロキシアパタイトの核を形成し、この核をベースに生体内又は水溶液中の過飽和なカルシウム及びリン酸イオンを取り込んで成長するものと考えられている。
特開平5−103829号公報(特許文献11)には、板状、棒状、線維状、粒状など各種の形状の金属、セラミックスなどの基材に、液状のシリカヒドロゾル又はゲルをコーティングし、乾燥し加熱処理してシリカゲルを基材に結合させた後、ヒドロキシアパタイトに対して過飽和となる量のカルシウムとリン酸イオンとを含む水溶液(疑似体液)に浸漬することにより、基材表面にヒドロキシアパタイト層をコーティングする生体活性層のコーティング方法が提案されている。この文献には、アパタイト被覆材料は、人工骨、生体埋込材料、生体埋込医療機器、器具などへ利用できることも記載されている。しかし、このような無機系の生体材料では、細胞接着性などの生体適合性が不十分である。
また、生体材料としての有機無機複合材料も検討されている。例えば、特開2003−190271号公報(特許文献12)には、平均繊維長が60μm以上のハイドロキシアパタイトとコラーゲン(哺乳動物、鳥類、魚類などから得られるコラーゲン又はコラーゲン様蛋白、遺伝子組み替えコラーゲンなど)とを含む複合体で構成された有機無機複合生体材料が開示されている。また、この文献には、前記複合材料が、反応容器内におけるカルシウムイオン及びリン酸イオンを、例えば、出発物質濃度や送液速度を制御することなどにより、特定の濃度に維持し、得られた複合体を加圧成形することにより製造できることも記載されている。また、「Chem. Mater. 15」, pp3221-3226, 2003(非特許文献5)には、0.1MのCaCl2及び0.1MのNaH2PO4存在下、酸で可溶化したラット尾腱由来のコラーゲンを中和することにより、コラーゲンとヒドロキシアパタイトとを複合化する方法が記載されている。
しかし、このような複合体においても、コラーゲンとして、天然コラーゲンを用いたのでは、病原体(又は病原性因子)の感染(又は伝達)の危険性がある。
なお、特開2003−154001号公報(特許文献13)には、セリシンを有するベースに、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む水溶液を接触させ、前記ベースにアパタイト類を沈着させ複合体の製造方法が開示されている。
特開平08−027192号公報 特開平07−097454号公報 特開平08−053548号公報 特開平07−278312号公報 特開平05−000158号公報 特開平05−125100号公報 特開平06−228506号公報 特開平08−276003号公報 特開平08−041425号公報 特開2003−321500号公報(請求項1、段落番号[0043]) 特開平5−103829号公報(請求項1) 特開2003−190271号公報(請求項1,4及び6、段落番号[0014]) 特開2003−154001号公報(請求項1) 「Methods Enzymol., Vol.82」, pp33-64, 1982 「J. Mol. Biol., Vol.63」, pp.85-99, 1972 「Int. J. Peptide Protein Res., Vol.46」, pp.453-463, 1995 「Nature Review, Vol.2」,pp.118-126, 2001 「Chem. Mater. 15」, pp3221-3226, 2003
従って、本発明の目的は、病原体の感染や病原性因子の伝達を生じる危険性や好ましくない副作用の虞がなく、安全性の高い生体材料又は生体適合材料として有用な新規ポリペプチド及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、生体硬組織を補てん、修復、及び/又は再生するのに有用なポリペプチドを提供することにある。
本発明者は前記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定のアミノ酸配列を含むペプチド成分を縮合して得られるコラーゲン様ポリペプチド(繊維状集合体)が、生体内又は生体類似環境下において、前記ポリペプチドにヒドロキシアパタイトを析出することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の新規なポリペプチドは、下記式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニット(1)と、下記式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットとを含んでいる。
-Pro-X-Gly- (1)
-Y-Z-Gly- (2)
(式中、X及びZは同一又は異なってPro又はHypを示し、Yはカルボキシル基を有するアミノ酸残基(例えば、α−アミノ酸残基など)を示す)
前記式(2)において、YはAsp又はγ位にカルボキシル基を有していてもよいGluであってもよい。
前記ペプチドユニット(1)とペプチドユニット(2)との割合(モル比)は、(1)/(2)=99/1〜1/99程度であってもよい。
本発明のポリペプチドは、円二色性スペクトルにおいて、波長220〜230nmに正のコットン効果を示し、波長195〜205nmに負のコットン効果を示す。このことは、ポリペプチドの少なくとも一部(一部または全部)が、3重らせん構造を形成していることを示している。前記ポリペプチドは、分子量5×103〜500×104の範囲にピークを示してもよい。また、前記ポリペプチドは、コラーゲン組織(コラーゲン様の繊維状集合体)を形成可能である。前記ポリペプチドには、アパタイト類(ヒドロキシアパタイトなど)が担持されていてもよい。
本発明では、前記式(1)に対応するアミノ酸やペプチドフラグメントと、前記式(2)に対応するアミノ酸やペプチドフラグメントとを少なくとも含むアミノ酸成分やペプチドフラグメント成分を縮合させることにより、前記ポリペプチドを得ることができる。前記ポリペプチドは、例えば、(a)前記式(1)及び(2)で表される双方のアミノ酸配列を有するペプチドを少なくとも含むペプチド成分を縮合する方法や、(b)式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを少なくとも含むペプチド成分を縮合する方法により製造してもよい。
前記ポリペプチド(特にその繊維状集合体)は、例えば、体液類似環境下において、アパタイト類(ヒドロキシアパタイトなど)を析出し、ポリペプチドとアパタイト類との複合体(ハイブリッド体)を形成可能である。本発明では、前記ポリペプチドと、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む水溶液とを接触させて、アパタイト類を前記ポリペプチドに沈着させ、前記アパタイト類が担持されたポリペプチドを製造できる。本発明には、このような製造方法により得られるアパタイト類が担持されたポリペプチドも含まれる。
本発明の新規なポリペプチドは、特定のアミノ酸配列を有するため、細胞親和性や生体適合性に優れるにも拘わらず、病原体の感染や病原性因子の伝達を生じる危険性や好ましくない副作用の虞がなく、安全性が高い。また、前記ポリペプチド(特にポリペプチドの繊維状集合体)は、生体内又は生体類似環境下(体液類似環境下など)において、アパタイト類を沈着又は析出して、生体硬組織を補てん、修復、及び/又は再生するのに有用なポリペプチドとアパタイト類との複合体を形成可能である。このようなポリペプチドや複合体は、生体材料又は生体適合材料に適している。
本発明においては各種アミノ酸残基を次の略号で記述する。
Ala :L−アラニン残基
Arg :L−アルギニン残基
Asn :L−アスパラギン残基
Asp :L−アスパラギン酸残基
Cys :L−システイン残基
Gln :L−グルタミン残基
Glu :L−グルタミン酸残基
Gly :グリシン残基
His :L−ヒスチジン残基
Hyp :L−ヒドロキシプロリン残基
Ile :L−イソロイシン残基
Leu :L−ロイシン残基
Lys :L−リジン残基
Met :L−メチオニン残基
Phe :L−フェニルアラニン残基
Pro :L−プロリン残基
Sar :サルコシン残基
Ser :L−セリン残基
Thr :L−トレオニン残基
Trp :L−トリプトファン残基
Tyr :L−チロシン残基
Val :L−バリン残基
また、本明細書においては、常法に従って、N末端のアミノ酸残基を左側に位置させ、C末端のアミノ酸残基を右側に位置させて、ペプチド鎖のアミノ酸配列を記述する。
[新規ポリペプチド]
本発明の新規なポリペプチドは、-Pro-X-Gly-(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットを含むことが必要である。-Pro-X-Gly-で表される配列は、3重らせん構造の安定性に寄与するため、この配列の割合が少ないと3重らせん構造の安定性が減少する。さらに、このユニットは、3重らせん構造の安定性の点から、ポリペプチド中において、-(Pro-X-Gly)n-で表される繰返し構造(オリゴ又はポリペプチドユニット構造)を形成してもよい。この配列の繰返し数nは、例えば、1〜5000、好ましくは2〜3000程度である。Xは、ProまたはHypのいずれであってもよいが、3重らせん構造の安定性からHypであるのがより好ましい。なお、Hypは、通常、4Hyp(例えば、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン)残基である。
また、本発明のポリペプチドは、-Y-X-Gly-(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットを含むことが必要である。このようなペプチドユニット(2)を有することにより、ポリペプチドにアパタイト類(ヒドロキシアパタイトなど)を効率よく析出又は担持させることができる。
前記式(2)において、Yはカルボキシル基を有するアミノ酸残基(例えば、カルボキシル基を有するα−アミノ酸残基など)であってもよい。このようなアミノ酸残基としては、例えば、Glu及びAspなどが挙げられる。Gluはγ位にカルボキシル基を有していてもよい。γ位にカルボキシル基を有するGluは、γ−カルボキシグルタミン酸残基Glaで表される。また、前記式(2)において、ZはPro又はHypのいずれであってもよい。
さらに、得られるポリペプチドの物理的および生物学的性質を損なわない限り、本発明のポリペプチドは他のアミノ酸残基やペプチド残基(ユニット)を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドが有用な物理的および生物学的性質を発揮するためには、例えば、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、His、Ala、Val、Leu、Arg、Pro、Tyr、Ile、Thr、及びCysから選択された少なくとも一種のアミノ酸残基又はペプチド残基、特に、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、Arg、Pro、Valから選択された少なくとも一種のアミノ酸残基又はペプチド残基を有している場合が多い。具体的には、例えば、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、Arg-Gly-Asp、Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg、Ile-Lys-Val-Ala-Val、Val-Pro-Gly-Val-Gly、Asp-Gly-Glu-Ala、Gly-Ile-Ala-Gly、His-Ala-Val、Glu-Arg-Leu-Glu、Lys-Asp-Pro-Lys-Arg-Leu、Arg-Ser-Arg-Lysで示されるアミノ酸残基やペプチド残基を含むのが好ましい。
本発明のポリペプチドは、生理学的又は薬理学的に許容される塩であってもよく、例えば、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)、有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸など)、金属(ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなど)、有機塩基(トリメチルアミン、トリエチルアミン、t−ブチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなど)との塩であってもよい。これらの塩形成化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩は、通常の塩形成反応によって得ることができる。
本発明のポリペプチドにおいて、前記ペプチドユニット(1)と前記ペプチドユニット(2)との割合(モル比)は、(1)/(2)=99/1〜1/99、好ましくは98/2〜2/98、さらに好ましくは95/5〜5/95程度である。
前記ペプチドユニット(1)および前記ペプチドユニット(2)の合計量と、他のペプチドユニットとの割合(モル比)は、前者/後者=100/0〜50/50、好ましくは100/0〜60/40、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。
このようなポリペプチドは、環化により6員環を形成することなく、鎖状のポリペプチドを形成しており、溶媒(水、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの親水性溶媒又はそれらの混合溶媒)に可溶または部分的に可溶である。本発明のポリペプチドは、水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、球状蛋白質換算で、例えば、分子量5×103〜500×104、好ましくは分子量1×104〜300×104、好ましくは3×104〜200×104、さらに好ましくは5×104〜100×104程度の範囲にピークを示す。
さらに、本発明のポリペプチドは、円二色性スペクトルにおいて、波長220〜230nmに正のコットン効果を示し、波長195〜205nmに負のコットン効果を示す。そのため、ポリペプチドの少なくとも一部(すなわち、一部または全部)が3重らせん構造を形成可能であり、コラーゲン様ポリペプチドを形成する。なお、コットン効果とは、旋光性物質において特定の波長で左右の円偏光に対する吸収係数が異なるために起こる現象をいう。
本発明のポリペプチドは、コラーゲン様の繊維状集合体構造を形成可能である。上記3重らせん構造を形成したポリペプチド鎖が自己集合して、数nm〜数十nmの原線維状構造を形成し、さらにこれらの原線維が配列して数μm〜数十μmの繊維構造を形成することができる。これらは、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、あるいは原子間力顕微鏡により観察することができる。
前記ポリペプチドは、体液又は体液類似環境(又は生体類似環境)下において、前記ポリペプチド(特に繊維状集合体)にアパタイト類(ヒドロキシアパタイトなど)を析出可能である。
前記ポリペプチドには、アパタイト類を担持してもよい。このようなポリペプチド(ポリペプチドとアパタイト類との複合体(以下、単に複合体と称する場合がある))も本発明のポリペプチドに含まれる。
前記アパタイト類の代表的な化合物はヒドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)であるが、前記アパタイト類は、リン酸カルシウム系化合物、例えば、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸カルシウム(Ca3(PO42)なども包含する。
アパタイト類の担持量は、用途に応じて、広い範囲、例えば、ポリペプチド100重量部に対して、例えば、0〜5000重量部程度の範囲から選択でき、好ましくは0.1〜3000重量部、さらに好ましくは1〜1000重量部程度であってもよい。
前記ポリペプチド又は複合体におけるポリペプチドは、必要により架橋剤により架橋してもよい。前記架橋剤としては、例えば、グリオキザール、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒドなどなどのジアルデヒド類、デキストランジアルデヒド、アルデヒドデンプンなどの生理学的に許容可能な架橋剤が例示できる。架橋剤の割合は、ポリペプチド100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部程度であってもよい。
本発明のポリペプチド(複合体も含む)は、純粋な試薬から化学的に合成されるため、病原体や病原性因子[例えば、病原性に転化したタンパク質(例えば、異常型プリオンなど)など]の感染や伝達の危険性がない。そのため、本発明のポリペプチドは、安全性が高い。また、細胞親和性や生体適合性にも優れている。そのため、生体材料又は生体適合材料、例えば、人工コラーゲンなどとして有用である。
前記ポリペプチドは、例えば、骨や軟骨などの硬組織の欠損部の補てん、修復、再生において有効に利用できる。このような用途において、前記ポリペプチドは、ポリペプチドを、例えば、繊維状集合体の状態でそのまま用いてもよく、また、体液類似環境下において、前記ポリペプチド(繊維状集合体)とアパタイトとの複合体を予め形成し、この複合体の状態で用いてもよい。
本発明のポリペプチド(複合体も含む)は、被検体(被験体)の組織(例えば、骨や軟骨など)へ適用できる。被検体としては、ヒトおよび非ヒト動物(例えば、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどの非ヒト動物)が例示できる。
本発明において、前記ポリペプチド(複合体も含む)の利用形態は、特に制限されず、例えば、液状(溶液又は懸濁液など)、粉粒状、一次元的形状の基材(繊維状又は糸状基材、線状基材、ロッド状基材など)、二次元的形状の基材(フィルム(又はシート)又は板状基材など)、三次元的形状の基材(チューブ状基材など)などであってもよい。また、固体状のポリペプチド(複合体も含む)は、非多孔質であってもよく多孔質(例えば、粉粒状多孔質体、不織布や織布などの二次元的多孔質体、円筒状などの三次元的多孔質体)などであってもよい。
前記ポリペプチド(複合体も含む)は、用途に応じて、慣用の方法により成形することにより所望の形態にできる。例えば、ポリペプチド(又は複合体)の溶液又は懸濁液を、剥離性基材(例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)シートなど)上に流延して、乾燥し、前記基材から剥離することによりポリペプチドや複合体のシート又はフィルムを得ることができる。また、ポリペプチドや複合体に対する貧溶媒(又は高濃度の塩を含む溶液など)中に、ポリペプチドや複合体の溶液又は懸濁液をノズルから押出すことにより繊維状物を得ることができる。さらに、ポリペプチド又は複合体の水溶液又は懸濁液を静置したり、必要により多価架橋性試薬(グルタルアルデヒドなど)を添加して静置することによりゲル状物を得ることができる。さらに、生成したゲル状物を凍結乾燥することによりスポンジ状の多孔質体を得ることができる。さらには、ポリペプチド又は複合体の水溶液又は懸濁液に撹拌などにより泡立て(発泡させて)、乾燥することによっても多孔質体を得ることもできる。
さらに、前記ポリペプチド(複合体も含む)は被覆剤として利用してもよい。例えば、前記ポリペプチド(又は複合体)の溶液又は懸濁液を、基材の表面に塗布又は散布した後、乾燥することにより、基材の表面を被覆してもよい。前記基材としては、種々の材料、例えば、金属、セラミックス、高分子(合成又は天然高分子など)などで形成された成形体などが挙げられる。なお、高分子成形体などの基材は、生分解性又は生体内分解性を有していてもよい。
成形体の形態は、特に制限されず、粉粒状、一次元的形状の基材(繊維状又は糸状基材、線状基材、ロッド状基材など)、二次元的形状の基材(フィルム(又はシート)又は板状基材など)、三次元的形状の基材(チューブ状基材など)などであってもよい。さらに基材は、非多孔質体であってもよく多孔質体(例えば、粉粒状多孔質体、セルロース繊維紙、不織布や織布などの二次元的多孔質体、円筒状などの三次元的多孔質体)であってもよい。このような多孔質性基材では、ポリペプチド又は複合体の溶液又は懸濁液を含浸させ、ポリペプチド又はそのアパタイトとの複合体を保持させてもよい。なお、前記基材は、必要であれば、表面処理剤(例えば、生理学的に許容可能な表面処理剤)で表面処理してもよい。
前記ポリペプチド(複合体も含む)は、必要に応じて、殺菌又は滅菌して用いてもよい。特に、医療用途などにおいては、通常、ポリペプチド又は複合体に殺菌又は滅菌を施す場合が多い。殺菌及び滅菌方法としては、慣用の方法、例えば、湿熱蒸気滅菌、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、薬剤殺菌、紫外線殺菌などが利用できる。これらの方法のうち、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌は、滅菌効率及び材料に与える影響が少ない点で好ましい。
(ポリペプチドの製造方法)
本発明の新規なポリペプチドは、アミノ酸やペプチドフラグメント(又はセグメント)を縮合反応に供する慣用の方法により得ることができ、最終的にペプチドユニット(1)とペプチドユニット(2)とがポリペプチド中に含まれている限り特に制限されず、例えば、構成アミノ酸の縮合反応や、ペプチドフラグメントとアミノ酸との縮合反応を利用して得てもよいが、予め、式(1)及び/又は(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを調製し、このペプチドを含むペプチド成分を縮合する方法により得るのが好ましい。
予め調製したペプチド成分を縮合する方法において、ペプチド成分のペプチド鎖の合成は、通常のペプチド合成方法に従って行うことができる。ペプチドは、例えば、固相合成法または液相合成法によって調製できるが、固相合成法が操作上簡便である[例えば、日本生化学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学(下)」(昭和62年5月20日 株式会社東京化学同人発行)、第641−694頁参照]。ペプチド合成には、慣用の方法、例えば、縮合剤を用いるカップリング方法、活性エステル法(p−ニトロフェニルエステル(ONp)、ペンタフルオロフェニルエステル(Opfp)などのフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(ONSu)などのN−ヒドロキシジカルボン酸イミドエステル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル(Obt)など)、混合酸無水物法、アジド法などが利用できる。好ましい方法では、少なくとも縮合剤(好ましくは後述する縮合剤、特に後述する縮合剤と縮合助剤との組合せ)を用いる場合が多い。
さらに、ペプチドの合成では、アミノ酸又はペプチドセグメントの種類に応じて、アミノ基、カルボキシル基、他の官能基(グアニジノ基、イミダゾリル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、ω−カルボキシル基など)の保護基による保護と、接触還元や強酸処理(無水フッ化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など)による保護基の脱離・除去とが繰り返し行われる。例えば、アミノ基の保護基には、ベンジルオキシカルボニル基(Z)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基(Z(OMe))、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、t−ブトキシカルボニル基(Boc)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル基(Npys)などが利用でき、カルボキシル基の保護基には、ベンジルオキシ基(OBzl)、フェナシルオキシ基(OPac)、t−ブトキシ基(OBu)、メトキシ基(OMe)、エトキシ基(OEt)などが利用できる。なお、ペプチド合成には自動合成装置を利用してもよい。
より具体的には、前記ペプチド鎖の固相合成法による調製は、慣用の方法で行うことができる。固相樹脂(又は担体)としては、反応溶媒に不溶性の重合体、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂などが利用できる。
固相合成法では、通常、(i)前記重合体(樹脂)に対して、目的とするペプチドのC末端からN末端の方向に向かって、遊離のα−COOH基を有するとともに官能基(少なくともN末端のα−アミノ基など)が保護基で保護されたアミノ酸又はペプチド断片を結合させる操作と、(ii)結合したアミノ酸又はペプチド断片のうちペプチド結合を形成するα−アミノ基の保護基を除去する操作と、(iii)上記結合操作と除去操作とを順次繰り返すことにより、ペプチド鎖を伸長させて目的ペプチドに対応するペプチド鎖を形成する工程と、(iv)ペプチド鎖を重合体(樹脂)から脱離させ、かつ保護されている官能基から保護基を除去することにより、目的とするペプチドを生成させ、生成したペプチドを精製することにより、ペプチドを製造できる。前記アミノ酸又はペプチド断片を結合させる操作(i)では、前記ペプチド鎖のC末端に対応し、かつ遊離のα−COOH基を有するとともに少なくともN末端が保護基で保護されたアミノ酸(例えば、Fmoc−アミノ酸、Boc−アミノ酸など)が使用される。なお、ペプチド鎖の重合体からの脱離および保護基の除去は、トリフルオロ酢酸を用いて同時に行うのが副反応を抑制する観点から好ましい。また、生成したペプチドの精製は、逆相液体クロマトグラフィーやゲルパーミエーションクロマトグラフィーなどの分離精製手段を利用して行うことができる。
このようにして合成されたペプチドを含むペプチド成分を縮合する方法には、(a)式(1)及び(2)で表される双方のアミノ酸配列を有するペプチドを少なくとも含むペプチド成分を縮合する方法と、(b)式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと、式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドとを少なくとも含むペプチド成分を縮合する方法とが含まれる。
前者の方法(a)において、式(1)及び(2)で表される双方のアミノ酸配列を有するペプチド(すなわち、式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニツトと式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットとの双方のユニットを含むペプチド)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、この方法において、ペプチド成分としては、前記双方のユニットを含むペプチドに加え、目的のポリペプチドに応じて他のペプチドを用いてもよい。他のペプチドとしては、例えば、前述の他のアミノ酸残基やペプチド残基を含むペプチドなどが挙げられる。これらの他のペプチドも、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、この方法において、式(1)又は(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを共縮合することにより、ユニット(1)とユニット(2)との割合を容易に調整することができる。
後者の方法(b)においても、式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチド(オリゴ又はポリペプチドユニット)(1)、式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチド(2)は、それぞれ、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、この方法においても、ペプチド成分としては、これらのペプチド(1)及びペプチド(2)に加え、目的のポリペプチドに応じて他のペプチド、例えば、前述の他のアミノ酸残基やペプチド残基を含むペプチドなどを用いてもよい。これらの他のペプチドも、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのペプチドの縮合反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒は、上記ペプチド成分および化合物を溶解又は懸濁(一部または全部を溶解)可能であればよく、通常、水及び/又は有機溶剤が使用できる。溶媒としては、例えば、水、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホロアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、窒素含有環状化合物(N−メチルピロリドン、ピリジンなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、およびこれらの混合溶媒が例示できる。これらの溶媒のうち、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが繁用される。
これらのペプチドの反応は、通常、少なくとも脱水剤(脱水縮合剤)又は縮合剤の存在下で行うことができ、脱水縮合剤と縮合助剤との存在下で反応させると、二量化や環化を抑制しつつ、円滑にポリペプチドを生成できる。
脱水縮合剤は、前記溶媒中で脱水縮合を効率よく行える限り特に制限されず、例えば、カルボジイミド系縮合剤[ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC=WSCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(WSCI・HCl)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など]、フルオロホスフェート系縮合剤[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩(BOP)など]、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)などが例示できる。これらの脱水縮合剤は単独で又は二種以上組み合わせて混合物として使用できる。好ましい脱水縮合剤は、カルボジイミド系縮合剤[例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩]である。
縮合助剤は、上記縮合剤の反応を促進する限り特に制限されず、例えば、N−ヒドロキシ多価カルボン酸イミド類[例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド(HONSu)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド(HONB)などのN−ヒドロキシジカルボン酸イミド類]、N−ヒドロキシトリアゾール類[例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などのN−ヒドロキシベンゾトリアゾール類]、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOObt)などのトリアジン類、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステルなどが例示できる。これらの縮合助剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい縮合助剤は、N−ヒドロキシジカルボン酸イミド類[HONSuなど]、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール又はN−ヒドロキシベンゾトリアジン類[HOBtなど]である。
前記脱水縮合剤と縮合助剤とは適当に組み合わせて使用できる。前記脱水縮合剤と縮合助剤との組合せとしては、例えば、DCC-HONSu(HOBt又はHOObt)、WSCI-HONSu(HOBt又はHOObt)などが例示できる。
脱水縮合剤の使用量は、前記ペプチドの総量1モルに対して、通常、水を含まない非水系溶媒を用いる場合0.7〜5モル、好ましくは0.8〜2.5モル、さらに好ましくは0.9〜2.3モル(例えば1〜2モル)程度である。水を含む溶媒(水系溶媒)においては、水による脱水縮合剤の失活があるので、脱水縮合剤の使用量は、前記ペプチドの総量1モルに対して、通常、2〜500モル(例えば、2〜50モル)、好ましくは5〜250モル(例えば、5〜25モル)、さらに好ましくは10〜125モル(例えば、10〜20モル)程度である。縮合助剤の使用量は、溶媒の種類に関係なく、前記ペプチドの総量1モルに対して、例えば、0.5〜5モル、好ましくは0.7〜2モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モル程度である。
本発明の縮合反応において、反応系のpHを調節してもよく、反応に関与しない塩基を添加してもよい。pHの調節は、通常、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、有機塩基、無機酸(塩酸など)や有機酸を用いて行うことができ、通常、反応溶液が中性付近(pH=6〜8程度)にpH調整される。前記反応に関与しない塩基としては、第三級アミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、ピリジンなどの複素環式第三級アミン類などが例示できる。このような塩基の使用量は、通常、ペプチドの総モル数の1〜2倍程度の範囲から選択できる。
本発明のポリペプチドが3重らせん構造を形成することは、通常、ポリペプチドの溶液について、円二色性スペクトルを測定することにより立証できる。特に、円二色性スペクトルにおいては、3重らせん構造を形成する天然のコラーゲンおよびペプチド鎖が、波長220nm〜230nmに正のコットン効果、および波長195nm〜205nmに負のコットン効果を特徴的に示すことが報告されている(J. Mol. Biol., Vol.63 pp.85-99, 1972)。
本発明では、前記ポリペプチドと、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む水溶液(又は疑似体液)とを接触させることにより、前記ポリペプチド(特に繊維状集合体)にアパタイト類を担持(沈着又は析出)させ、前記ポリペプチドとアパタイト類との複合体を形成してもよい。
このような方法において、前記カルシウムイオンは、種々のカルシウム化合物を用いることにより水溶液に導入できる。カルシウム化合物としては、例えば、ハロゲン化カルシウム(塩化カルシウムなど)、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、無機酸塩(硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムなど)、有機酸塩(酢酸カルシウムなど)などが例示できる。これらのカルシウム化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
また、リン酸イオンも、種々のリン酸成分を用いることにより水溶液に導入できる。このようなリン酸成分としては、例えば、オルトリン酸又はその塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのリン酸アルカリ金属塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなどのリン酸水素アルカリ金属塩;リン酸水素カルシウム(リン酸二水素カルシウムなど)などのリン酸水素アルカリ土類金属塩;リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウムナトリウムなどのアンモニウム塩など)などが例示できる。これらのリン酸成分も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記水溶液のカルシウムイオン及びリン酸イオンの濃度は、アパタイト類の担持(析出又は沈着)効率が低下しない限り特に制限されないが、本発明では、カルシウムイオン及びリン酸イオンの濃度が低い水溶液中であっても、アパタイト類を効率よくポリペプチドに担持させることができる。前記水溶液は、リン酸カルシウムに対して過飽和量のカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む(すなわち、リン酸カルシウムの溶解度を越える濃度でカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む)ことが好ましい。なお、水溶液ではリン酸カルシウムが析出しないことが好ましいが、水相が過飽和である限り、リン酸カルシウムが析出していてもよい。
例えば、温度36.5℃において、前記水溶液中のカルシウムイオン濃度は、2〜50mM(mmol/L)程度の範囲から選択でき、通常、2.5mM以上(例えば、2.5〜30mM程度)、好ましくは2.5〜20mM、さらに好ましくは3〜10mM程度であってもよい。また、温度36.5℃において、前記水溶液中のリン酸イオンの濃度は、0.5〜50mM(mmol/L)程度の範囲から選択でき、通常、1mM以上(例えば、1〜30mM程度)、好ましくは1〜20mM、さらに好ましくは1.2〜10mM程度であってもよい。
なお、水溶液は、他のイオン種、例えば、金属イオン[アルカリ金属イオン(ナトリウム、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオンなど)、遷移金属イオン(チタンイオン、ジルコニウムイオン、コバルトイオンなど)、ケイ素イオンなど]、ハロゲンイオン(臭素アニオン、塩素アニオン、フッ素アニオンなど)、無機酸イオン(例えば、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオンなど)などを含んでいてもよい。これらのイオン種は、リン酸カルシウム系化合物の組成や結晶構造に対応させて、単独で又は二種以上組み合わせて選択可能である。
カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む水溶液は、緩衝剤によりpH調整してもよい。緩衝剤としては、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)緩衝剤、リン酸系緩衝剤、ホウ酸系緩衝剤、炭酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤、酢酸系緩衝剤などが利用できる。水溶液のpHは、通常、6〜8程度である。
代表的な水溶液としては、以下の組成を有する溶液が例示できる:
(1)Na+ 142mM、K+ 5mM、Ca2+ 2.5mM、Mg2+ 1.5mM、C1- 148.8mM、HCO3 - 4.2mM、HPO4 2- 1mM、SO4 2- 0.5mMを含み、トリス緩衝剤でpHを7.4に調整した水溶液、
(2)Na+ 213mM、K+ 7.5mM、Ca2+ 3.8mM、Mg2+ 2.3mM、Cl- 223.3mM、HCO3 - 6.3mM、HPO4 2- 1.5mM、SO4 2- 0.75mMを含み、トリス緩衝剤でpHを7.4に調整した水溶液。
本発明のポリペプチドと前記水溶液とを接触させる方法は、ポリペプチドをアパタイト類(リン酸カルシウム系化合物)で被覆できる方法であればよく、噴霧、含浸、塗布などであってもよいが、水溶液中で接触させる方法が簡便である。
ポリペプチドと水溶液との接触温度(例えば、浸漬温度)は、被覆するアパタイト類(リン酸カルシウム系化合物)に応じて、10〜100℃の範囲から適宜選択でき、通常、10〜60℃、好ましくは20〜50℃、さらに好ましくは25〜45℃(例えば、30〜39℃)程度である。接触時間(例えば、浸漬時間)はアパタイト類の種類、目的とする沈着量に応じて選択でき、通常、10日以内(特に7日以内)である。なお、水溶液中でポリペプチドと接触させる場合、通常、緩やかに撹拌するが、静置してアパタイトを沈着させてもよい。
本発明のポリペプチド及び複合体は、人工骨、人工歯根、骨修復剤、骨充填剤等の生体埋植材料、硬組織用の組織工学用の担体又は支持体、再生医療用の担体又は支持体等の医療用材料、医薬品の製剤素材(例えば、基剤、添加剤など)、化粧品の素材(例えば、基剤、添加剤など)、食品添加剤、被覆剤などに利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
式:H-(Pro-Hyp-Gly)4-Glu-Hyp-Gly-(Pro-Hyp-Gly)5-OH(配列番号:1)で示されるペプチド鎖を、ペプチド自動合成装置を用いて固相合成法により合成した。すなわち、4−(Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン)−オキシメチル−フェノキシ−メチル基を0.65mmol/g(樹脂)の割合で含むスチレン−ジビニルベンゼン共重合体[スチレンとジビニルベンゼンとの構成モル比=99:1]で形成された粒状樹脂[米国アプライド・バイオシステムズ社製、HMPグリシン]0.1mmolを用い、目的とするペプチドのカルボキシル末端からアミノ末端に向かって順次対応するアミノ酸を結合させた。結合反応において、アミノ酸として、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−プロリン[Fmocプロリン]、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン[Fmocグリシン]、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−γ−t−ブチルオキシ−L−グルタミン酸[Fmocグルタミン酸]、バッケム社製のNα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−t−ブチル−L−ヒドロキシプロリン[Fmocヒドロキシプロリン]を、各結合ステップについてそれぞれ1mmolずつ用いた。
得られたペプチド樹脂を、5%の水を含むトリフルオロ酢酸10mLで3時間処理した。得られた溶液をジエチルエーテルに加えて生じる沈殿をさらに数回ジエチルエーテルで洗浄して、ペプチドの脱保護と樹脂からの脱離を行った。粗生成物を、PD10カラム(アマシャム・バイオサイエンス(株)製)で精製してペプチドを得た。得られた精製ペプチドをアマシャム・バイオサイエンス(株)製「AKTA explorer10XT」[カラム:ミリポア(株)製「ノバパックC18」 3.9mmφ×150mm、移動相:トリフルオロ酢酸を0.05容量%含有するアセトニトリルと水の混合溶媒(アセトニトリル濃度を30分間で5容量%から50容量%に直線的に変化させた)、流速1.0mL/分]に付したところ、リテンションタイム11.4分に単一のピ−クが示された。FAB法マススペクトルにより求めた精製ペプチドの分子量は2722であった(理論値:2722.9)。
2.5mg(0.0009mmol)のH-(Pro-Hyp-Gly)4-Glu-Hyp-(Pro-Hyp-Gly)5-OHを0.25mLの10mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)に溶解し、室温で撹拌した。この混合液に、0.12mg(0.0009mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1.7mg(0.0092mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で2日間撹拌を続けた。得られた反応溶液を水で10倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去し、本発明のポリペプチドを得た。ペプチドユニット(1)と(2)の割合((1)/(2))は90/10(モル比)であった。
得られたポリペプチドをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/分、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が10万〜200万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、225nmに正のコットン効果、197nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
実施例2
1.2mg(0.00045mmol)の式:H-(Pro-Hyp-Gly)10-OH(配列番号:2)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)と、1.2mg(0.00045mmol)の実施例1で得られた式:H-(Pro-Hyp-Gly)4-Glu-Hyp-Gly-(Pro-Hyp-Gly)5-OH(配列番号:1)で示されるペプチドを0.25mLの10mMリン酸塩緩衝液(pH 7.4)に溶解し、0.12mg(0.0009mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、15.7mg(0.082mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で2日間撹拌を続けた。得られた反応溶液を水で10倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去し、本発明のポリペプチドを得た。ペプチドユニット(1)と(2)の割合((1)/(2))は、95/5(モル比)であった。
得られたポリペプチドをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/分、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が14万〜200万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、224nmに正のコットン効果、196nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
比較例1
2.4mg(0.0009mmol)の式:H-(Pro-Hyp-Gly)10-OH(配列番号:2)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)を1mLのジメチルスルホキシドに懸濁し、室温で撹拌した。この混合液に、0.12mg(0.0009mmol)のジイソプロピルエチルアミン、0.12mg(0.0009mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、0.34mg(0.0018mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で2日間撹拌を続けた。得られた反応溶液を水で3倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去し、ポリペプチドを得た。ペプチドユニット(1)と(2)の割合((1)/(2))は、100/0(モル比)であった。
得られたポリペプチドをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/分、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が14万〜60万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、224nmに正のコットン効果、196nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
実施例3
実施例1〜2で得られたポリペプチド、および比較例1で得られたポリペプチドをそれぞれ約0.5mg/mlの濃度に調節した水溶液1容を、Na+ 213mM、K+ 7.5mM、Ca2+ 3.8mM、Mg2+ 2.3mM、Cl- 223.3mM、HCO3 - 6.3mM、HPO4 2- 1.5mM、SO4 2- 0.75mMを含み、トリス緩衝剤でpHを7.4に調節した水溶液2容と混合した後(最終濃度、Na+ 142mM、K+ 5mM、Ca2+ 2.5mM、Mg2+ 1.5mM、C1- 148.8mM、HCO3 - 4.2mM、HPO4 2- 1mM、SO4 2- 0.5mM)に、36.5℃で1日間浸漬した。この間、随時少量の溶液を採取し、アマシャム・バイオサイエンス社製PD-10カラムに通して塩を除去した後、リンタングステン酸でネガティブ染色し、透過型電子顕微鏡(日立、H-7600型)で観察した。
実施例1で得られたポリペプチドでは、24時間後に図1に示すように直径約10nmの繊維状集合体構造とその表面に析出したアパタイトの結晶が観察された。実施例2のポリペプチドでも同様の象が観察されたが、比較例1のポリペプチドでは、直径約10nmの繊維状集合体は観察されたが、アパタイトの析出は観察されなかった。
図1は、実施例1で得られたポリペプチドと、アパタイトとの複合体の電子顕微鏡写真である(図中のスケールバーは100nmを示す)。

Claims (13)

  1. 下記式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットと、下記式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットとを含む新規なポリペプチド。
    -Pro-X-Gly- (1)
    -Y-Z-Gly- (2)
    (式中、X及びZは同一又は異なってPro又はHypを示し、Yはカルボキシル基を有するアミノ酸残基を示す)
  2. 式(2)において、YがAsp又はγ位にカルボキシル基を有していてもよいGluである請求項1記載のポリペプチド。
  3. ペプチドユニット(1)とペプチドユニット(2)との割合(モル比)が、(1)/(2)=99/1〜1/99である請求項1記載のポリペプチド。
  4. 円二色性スペクトルにおいて、波長220〜230nmに正のコットン効果を示し、波長195〜205nmに負のコットン効果を示す請求項1記載のポリペプチド。
  5. ポリペプチドの少なくとも一部が3重らせん構造を形成可能である請求項1記載のポリペプチド。
  6. 分子量5×103〜500×104の範囲にピークを示す請求項1記載のポリペプチド。
  7. コラーゲン組織を形成可能である請求項1記載のポリペプチド。
  8. アパタイト類が担持されている請求項1記載のポリペプチド。
  9. 請求項1記載の式(1)に対応するアミノ酸又はペプチドフラグメントと、式(2)に対応するアミノ酸又はペプチドフラグメントとを少なくとも含むアミノ酸成分又はペプチドフラグメント成分を縮合させて、請求項1記載のポリペプチドを製造する方法。
  10. 請求項1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを製造する方法であって、(a)請求項1記載の式(1)及び(2)で表される双方のアミノ酸配列を有するペプチドを少なくとも含むペプチド成分、又は(b)前記式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと前記式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドとを少なくとも含むペプチド成分を縮合させる方法。
  11. 請求項1記載のポリペプチドと、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む水溶液とを接触させ、アパタイト類を前記ポリペプチドに沈着させ、前記アパタイト類が担持されたポリペプチドを製造する方法。
  12. アパタイト類がヒドロキシアパタイトである請求項11記載の製造方法。
  13. 請求項11又は12記載の製造方法によって得られるアパタイト類が担持されたポリペプチド。
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