上記従来の車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造においては、ドアを最大限開いたときにおいても、これにワイヤハーネスが追随できるようスプール筐体内に収容されるワイヤハーネスの輪部の径が設定され、これに伴って、ワイヤハーネスの輪部を収容する部分のスプール筐体の大きさが決まっている。
しかしながら、ワイヤハーネスの輪部をスプール筐体に収容する際、ワイヤハーネスを設定の径よりも小さい径で輪状に屈曲させて輪部が形成されてしまうおそれもあり、このような径のワイヤハーネスの輪部がケース内に収容された状態でワイヤハーネスがハーネスプロテクタとスプール筐体に固定されてしまうおそれもある。このようにスプール筐体に収容されているワイヤハーネスの輪部が設定の径よりも小径のものであった場合、ドアを開けた際に、ワイヤハーネスの断線のおそれがある。
また、このようにワイヤハーネスの輪部の径が設定の径よりも小径になってしまうことを防止するため、ワイヤハーネスの輪部を収容する部分のスプール筐体の大きさを必要以上に大きく設計する必要があるという問題点もある。
また、ドアを閉めるときには、スプール筐体から引き出されたワイヤハーネスが筐体内に戻りワイヤハーネスの輪部が縮径するが、このときにワイヤハーネスの輪部がスプール筐体内の内壁に引っ掛かってスムーズに縮径しないおそれがあった。
本発明の目的は、ワイヤハーネスの断線を確実に防止でき信頼性を高めるとともに、ワイヤハーネスの輪部をスムーズに縮径させることができる車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、スプール筐体内に、ハーネスプロテクタをスライド自在に係合させ、該ハーネスプロテクタの一端からワイヤハーネスがプロテクタ内部に挿入されて他端から引き出され前記スプール筐体内に導出され、スプール筐体内に導出されたワイヤハーネスを輪状に屈曲させて収容し、該ワイヤハーネスの輪部を拡径及び縮径させて収縮自在とした車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造であって、
前記スプール筐体内のワイヤハーネスの輪部に沿って取り付けた弾性を有する帯状の輪部形成板を備えて形成したことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の前記輪部形成板及び前記ハーネスプロテクタを、一体に形成したことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の前記輪部形成板及び前記ハーネスプロテクタを被破壊部を介して一体に形成し、該被破壊部を破壊して分離した前記輪部形成板及び前記ハーネスプロテクタを前記スプール筐体内に収容したことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の前記輪部形成板と板状のプロテクタ部材とを連接してなる板部材を有し、前記プロテクタ部材は、前記ワイヤハーネスを固定する底板部と該底板部にプロテクタ側折り曲げ部を介して並列に連接された蓋部とで構成され、前記板部材の前記底板部及び前記輪部形成板に前記ワイヤハーネスを固定し、前記プロテクタ側折り曲げ部で折り返して前記ワイヤハーネスを固定した底板部と前記蓋部とを係合させて前記プロテクタ内部を形成して前記底板部のワイヤハーネスを覆うことにより前記ハーネスプロテクタを形成して該ハーネスプロテクタを前記スプール筐体内にスライド自在に係合させ、また、前記ワイヤハーネスを固定した輪部形成板を輪状に屈曲させて前記スプール筐体内に収容して形成したことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の前記板部材を、前記輪部形成板の一端側の側縁部に、前記ハーネスプロテクタを形成するプロテクタ部材を折り曲げ部を介して連接して形成し、該折り曲げ部で折り曲げて前記輪部形成板に対して垂直に立ち上げた前記ハーネスプロテクタを有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の前記板部材を、前記輪部形成板と前記プロテクタ部材とを被破壊部を介して連接して形成し、該被破壊部を破壊して前記輪部形成板と前記プロテクタ部材とを分離して、前記プロテクタ部材から形成した前記ハーネスプロテクタと前記輪部形成板とを前記スプール筐体内に収容したことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の前記ハーネスプロテクタを、前記ワイヤハーネスを固定するハーネス固定板と該ハーネス固定板を覆うプロテクタカバーとで構成し、前記ハーネス固定板と前記輪部形成板とを連接して形成した板部材を有し、該板部材の前記ハーネス固定板と前記輪部形成板にワイヤハーネスを固定した後、前記ハーネス固定板に前記プロテクタカバーを被せて前記ハーネスプロテクタを形成して該ハーネスプロテクタを前記スプール筐体内にスライド自在に係合させるとともに、前記輪部形成板を輪状に屈曲させて前記スプール筐体内に収容して形成したことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の前記板部材を、前記輪部形成板と前記ハーネス固定板とを被破壊部を介して連接して形成し、該被破壊部を破壊して前記輪部形成板と前記ハーネス固定板とを分離して、前記ハーネス固定板を有して形成した前記ハーネスプロテクタと前記輪部形成板とを前記スプール筐体内に収容したことを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に記載の前記輪部形成板は、輪部形成板側折り曲げ部を介して並列に連接された第1ハーネス固定部と第2ハーネス固定部とを有して構成される輪部形成板部材により構成され、前記第1ハーネス固定部と前記第2ハーネス固定部のそれぞれに前記ワイヤハーネスを構成する電線を固定し、該ワイヤハーネスを構成する電線を固定した前記第1ハーネス固定部と前記第2ハーネス固定部とを前記輪部形成板側折り曲げ部で折り返して係合させて前記輪部形成板を形成したことを特徴とする。
上記請求項1に記載の発明によれば、前記ワイヤハーネスの輪部に沿って弾性を有する帯状の輪部形成板が取り付けられており、輪状に形成された輪部形成板は、その弾性力により元に戻ろうとする。これにより、輪部形成板を取り付けたワイヤハーネスの輪部は拡径方向に力が作用し、スプール筐体内にワイヤハーネスの輪部を収容したときに、その径が規定の径よりも小さくなることはない。したがって、ワイヤハーネスの断線を確実に防止することができ、信頼性の高い車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造を得ることができる。
また、スプール筐体内から引き出されたワイヤハーネスが、ドアを閉めるときにスプール筐体内に戻ってワイヤハーネスの輪部が縮径するとき、ワイヤハーネスの輪部には前記弾性を有する帯状の輪部形成板が取り付けられていることから、スムーズな縮径が可能である。
請求項2に記載の発明によれば、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタとが一体に形成されていることから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。
請求項3に記載の発明によれば、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタとが被破壊部を介して一体に形成されており、該被破壊部を破壊して組み立てを行うことから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。また、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタは、分離してスプール筐体内に収容されていることから、スプール筐体内における輪部形成板とハーネスプロテクタの組付けの方向を自由に設定することができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記ハーネスプロテクタを簡単に形成することができ、また、ハーネスプロテクタと前記輪部形成板は一体であることから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。
請求項5に記載の発明によれば、前記輪部形成板と一体のハーネスプロテクタを、前記輪部形成板に対して垂直に立ち上がった状態で前記スプール筐体内に収容することができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタを形成するプロテクタ部材とが被破壊部を介して一体に形成されており、該被破壊部を破壊して組み立てを行うことから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。また、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタは、分離してスプール筐体内に収容されていることから、スプール筐体内における輪部形成板とハーネスプロテクタの組付けの方向を自由に設定することができる。
請求項7に記載の発明によれば、前記ハーネスプロテクタを簡単に形成することができるとともに、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタを構成するハーネス固定板とが一体に形成されていることから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。
請求項8に記載の発明によれば、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタを構成するハーネス固定板とが被破壊部を介して一体に形成されており、被破壊部を破壊して組み立てを行うことから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。また、前記輪部形成板と前記ハーネス固定板とを分離し、分離した前記ハーネス固定板を有して形成した前記ハーネスプロテクタと、前記輪部形成板とがスプール筐体内に収容されていることから、スプール筐体内における輪部形成板とハーネスプロテクタの組付けの方向を自由に設定することができる。
請求項9に記載の発明によれば、前記輪部形成板に固定されるワイヤハーネスの電線の本数を、輪部形成板の幅を広げることなく多くすることができる。
以下、図面を参照して本発明に係る車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造の実施の形態の一例について詳細に説明する。
図1は本発明に係る車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造の実施の形態の一例を示す概要図、図2は図1に示すスプール筐体を示す正面図、図3は図2のA−A線断面図、図4はスプール筐体を構成する筐体本体の一部拡大斜視図、図5は図4を下側から見た平面図、図6は本例の板部材を示す斜視図、図7は図6のB−B線断面図、図8乃至図11は組み立て工程の説明図である。
図1において、先ず車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造の概要を説明する。この構造は、ドアインナパネル1にワイヤハーネスの輪部収容部2を有する合成樹脂製のスプール筐体3を設け、ワイヤハーネス4をワイヤハーネスの輪部収容部2内に輪状に屈曲させて収容するとともに、スプール筐体3に係合してドア5の開閉に伴いスライド移動するハーネスプロテクタ6を車両ボディ本体7に設けられた回動支持体8に支持するようになっている。そして、ワイヤハーネス4の伸縮をワイヤハーネスの輪部9(図2参照)の拡径及び縮径により吸収させるようになっている。
また、ドアインナパネル1はドアトリム10が接合され、ドアインナパネル1とドアトリム10との間にスプール筐体3が配置される構成となっている。
図2に拡大して示すように、前記スプール筐体3は、ドアインナパネル1への固定時にドアインナパネル1側となる蓋体11(蓋体11はドアインナパネル1と一体成形されていてもよい)と筐体本体12とから構成され、これら蓋体11と筐体本体12とを適宜係止手段で係合させ合うことにより構成される。なお、図2において、スプール筐体3は、図1とは反対側から見た状態で示され、蓋体11と筐体本体12とを係合させる前の状態で示されている。
スプール筐体3は、前記蓋体11と筐体本体12とを係合させることにより、内部空間を有して構成され、前記車両ボディ本体7側から順に、ハーネスプロテクタ6に対する矩形筒状のスライドガイド部13(図2には、筐体本体12側のスライドガイド部13aが示されている)と、ワイヤハーネスの輪部9に対する前記ワイヤハーネスの輪部収容部2(図2には、筐体本体12側のワイヤハーネスの輪部収容部2aが示されている)とを有して構成されている。
前記蓋体11は、板状に形成されており、また、前記筐体本体12は、底板14と底板14の両側から立設される側壁15,15とを有する断面コ字形状に形成されている。筐体本体12の側壁15,15には、4つの固定部16が設けられ、図示しないボルトにより前記ドアインナパネル1に緩衝部材17(図1参照)を介して締め付け固定できるようになっている。また、筐体本体12は、底板14がワイヤハーネスの輪部収容部2において内側から外側に向かって窪んでおり、このように窪んだ部分の底板14には、ワイヤハーネスの輪部9を収容したときに、該ワイヤハーネスの輪部9の内側に位置する円柱状のピン18が突設されている。
ワイヤハーネスの輪部収容部2において、筐体本体12の前記側壁15の一部は、円弧状に形成された周壁部15aとなっており、この周壁部15aに沿って前記ワイヤハーネス4及びこのワイヤハーネス4に取り付けられた後述の輪部形成板が収容されるようになっている。
前記スライドガイド部13とワイヤハーネスの輪部収容部2とを有する前記スプール筐体3は、ワイヤハーネスの輪部収容部2よりも後端側(スライドガイド部13の反対側)に、矩形筒状の部分を有しており、この矩形筒状の部分の筐体本体12の側壁15には、図3乃至図5に示すように、後述の輪部形成板の係止部を係止させるための被係止部19が形成されている(なお、この被係止部19は、図2においては図示省略されている)。なお、図3は、図2のA−A線断面部分のみを示し、奥行き部分に見えるものについては図示省略しており、また、後述の輪部形成板及び係止部は仮想線で示されている。
被係止部19は、両端部が筐体本体12の内部に向かって開口するようにして前記側壁15に形成した断面コ字状の溝によって構成されており、底板14側の開口部19aに、後述の係止部の係止突起が係止するようになっている。なお、この被係止部19の幅は、後述の係止突起を遊びを持った状態で係止させるために該係止部の幅よりも大きく形成されていることが好ましい。
以上のように構成されるスプール筐体3の筐体本体12側に、前記ハーネスプロテクタ6とワイヤハーネスの輪部9とが収容されている(図2参照)。ワイヤハーネスの輪部9には、該ワイヤハーネスの輪部9に沿って、弾性を有する帯状の輪部形成板20が取り付けられている。この輪部形成板20と前記ハーネスプロテクタ6は一体に成形されていて、図6に示す板部材21から形成されるようになっている。以下、この板部材21からハーネスプロテクタ6を形成してこれをスプール筐体3に収容するとともに、前記ワイヤハーネスの輪部9に沿って取り付けられた輪部形成板20をスプール筐体3に収容する工程について説明する。
先ず、板部材21について詳しく説明すると、この板部材21は、弾性を有し湾曲自在な合成樹脂等で形成され、前記帯状の輪部形成板20と前記ハーネスプロテクタ6を形成するための板状のプロテクタ部材22とを一体に有して形成されている。
前記プロテクタ部材22は、前記帯状の輪部形成板20の一端側の側縁部に、ヒンジ等で構成される折り曲げ部23を介して連接されている。そして、このプロテクタ部材22は、輪部形成板20側の底板部24とこの底板部24にヒンジ等で構成されるプロテクタ側折り曲げ部25を介して並列に連接された板状の蓋部26とで構成されている。
底板部24と蓋部26は、帯状に形成され、その側縁部において前記プロテクタ側折り曲げ部25を介して互いに連接されている。そして、底板部24には、輪部形成板20との連接部(折り曲げ部23)とは長手方向反対側の部分の両側縁部に、切欠部27,27が形成されている。この切欠部27,27は、テープ等(後述)によって、底板部24の上にワイヤハーネス4を構成する各電線を固定するためのものである。また、蓋部26は、プロテクタ側折り曲げ部25で折り返してハーネスプロテクタ6を形成したときに外面となる側に向かって凸状に湾曲するようにして形成されている。
一方、前記輪部形成板20にも、前記プロテクタ部材22との連接部(折り曲げ部23)とは長手方向反対側の部分の両側縁部に、切欠部28,28が形成されている。この切欠部28,28も、テープ等(後述)によって輪部形成板20の上にワイヤハーネス4を構成する各電線を固定するためのものである。
また、輪部形成板20の側縁部には、切欠部28,28よりも前記折り曲げ部23側に、輪部形成板20をスプール筐体3に係止して固定するための係止部29が一体に形成されている。
この係止部29は、本例では、図6及び図7に示すように、輪部形成板20と一体に形成された断面略7の字形状となっていて、前記筐体本体12の側壁15に形成された溝状の被係止部19に嵌入して係止させるようになっている。この係止部29の先端部分には、被係止部19の底板14側の開口部19aに係止する係止突起29aが形成されている。なお、係止部29の形状は前記のような形状に限られるものではなく、筐体本体12に係止できるものであればどのような形状となっていてもよい。
以上のように構成された板部材21の前記輪部形成板20と前記底板部24の上に、図8に示すように、輪部形成板20及び底板部24の長手方向に沿ってワイヤハーネス4を構成する各電線をフラット状に並べて配置し、これを前記切欠部27,27及び切欠部28,28においてテープ30(或いはテープ30の代わりに固定バンドを用いてもよい)を巻き付けて固定する。このようにして板部材21の上に固定されたワイヤハーネス4は、クランク状に配索されている。
次に、図9に示すように、前記プロテクタ部材22の蓋部26をプロテクタ側折り曲げ部25で折り返して蓋部26と底板部24とを係合させる。このとき、蓋部26と底板部24は、図示しない係止手段等で互いに係止させ合う。これによりワイヤハーネス4を覆うプロテクタ内部が形成されている。そして、ワイヤハーネス4は、このプロテクタ内部に一端側から挿入され他端側から輪部形成板に向かって引き出された状態となっている。
次に、図10に示すように、前記折り曲げ部23で折り曲げて前記ワイヤハーネス4を覆うプロテクタ内部が形成されているプロテクタ部材22を輪部形成板20に対して垂直に立ち上げる。以上により、ハーネスプロテクタ6が形成される。
次に、図11に示すように、ワイヤハーネス4が固定された状態の輪部形成板20を輪状に屈曲させる。これにより、ワイヤハーネスの輪部9が形成される。そして、このようにして輪状に形成され、ワイヤハーネス4が固定された輪部形成板20(ワイヤハーネスの輪部9)を、輪部の内側に前記ピン18が位置するようにして筐体本体12側のワイヤハーネスの輪部収容部2aに、周壁部15aに沿わせるようにして収容して、前記輪部形成板20の係止部29を筐体本体12の被係止部19に嵌入して、係止突起29aを被係止部19の開口部19aに係止させるとともに、前記ハーネスプロテクタ6を、筐体本体12側のスライドガイド部13aにスライド自在に係合させる(図2参照)。このとき、ハーネスプロテクタ6は、スライドガイド部13aの底板14上をスライドするようにして係合させる。これにより、ハーネスプロテクタ6がスライドガイド部13aをスライドするときには、ハーネスプロテクタ6に対して垂直に形成された前記輪部形成板20のハーネスプロテクタ6側の部分が前記スライドガイド部13の側壁15上をスライドするようになっている。
以上のようにしてワイヤハーネス4が固定された輪部形成板20とハーネスプロテクタ6とを収容した筐体本体12と蓋体11とを係合させてスプール筐体3が形成される。
このような本例の車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造において、図2に示すようにワイヤハーネスの輪部9の径が最大となっている状態は、ドア5が閉められた状態であり、ドア5を開けることにより、ハーネスプロテクタ6が車両ボディ本体7側にスライドしてワイヤハーネス4がスプール筐体3から引き出されてワイヤハーネスの輪部9が縮径する。そして、ドア5を閉めることにより、ハーネスプロテクタ6がスプール筐体3の中に向かってスライドしてスプール筐体3から引き出されたワイヤハーネス4がスプール筐体3内に戻り、ワイヤハーネスの輪部9が拡径する。
以上説明した本例の車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造によれば、ワイヤハーネスの輪部収容部2に輪部形成板20が取り付けられたワイヤハーネスの輪部9を収容したとき、該ワイヤハーネスの輪部9に沿って取り付けられ輪状に形成された輪部形成板20は、その弾性力により元に戻ろうとする。これにより、輪部形成板20を取り付けたワイヤハーネスの輪部9は、拡径方向に力が作用し、常にワイヤハーネスの輪部収容部2の周壁部15aに沿ってスプール筐体3内に収容される。したがって、ワイヤハーネスの輪部収容部2の大きさを、必要以上に大きくすることなく、ワイヤハーネスの輪部9が規定の径で収容されるような大きさで形成しておくことにより、ワイヤハーネスの輪部9が規定の径よりも小さくなることはない。これにより、ワイヤハーネス4の断線を確実に防止することができ、信頼性の高い車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造を得ることができる。
また、スプール筐体3内から引き出されたワイヤハーネス4が、ドア5を閉めるときにスプール筐体3内に戻ってワイヤハーネスの輪部9が縮径するとき、ワイヤハーネスの輪部9には前記弾性を有する帯状の輪部形成板20が取り付けられているので、ワイヤハーネスの輪部9のスムーズな縮径が可能である。
また、本例においては、ハーネスプロテクタ6と輪部形成板20とが一体に形成されていることから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理が容易である。
なお、上記実施の形態の一例において、前記輪部形成板20とプロテクタ部材22とをミシン目等で構成される被破壊部を介して連接して板部材を形成し、前記被破壊部を破壊して前記輪部形成板20及びプロテクタ部材22を分離して、前記輪部形成板20及びプロテクタ部材22から形成され輪部形成板20とは分離されているハーネスプロテクタ6をスプール筐体内に収容してもよい(不図示)。この場合には、折り曲げ部23を形成せずとも、スプール筐体3内のハーネスプロテクタ6を輪部形成板20に対して垂直な向きとすることが可能であり、輪部形成板20に対するハーネスプロテクタ6の組み付け方向を自由に設定することができる。
なお、本発明においては、板部材21に、前記折り曲げ部23或いは前記被破壊部を形成せず、前記スプール筐体3内の前記ハーネスプロテクタ6を、輪部形成板20に対して垂直に立ち上げられた状態としなくてもよい。なお、この場合には、輪部形成板20とハーネスプロテクタ6が同一平面状に位置するようにスプール筐体3内に収容されることから、スプール筐体3のスライドガイド部13をこれに対応した形状に形成することはいうまでもない。
前記被破壊部を形成した場合、又はスプール筐体3内のハーネスプロテクタ6を輪部形成板20に対して垂直に立ち上げられた状態としない場合等にあっては、前記底板部24を前記輪部形成板20の一端側の端部(切欠部28とは反対側の端部)に連接して形成してもよい。
また、前記輪部形成板20及び底板部24にワイヤハーネス4を固定するための固定手段は、前記テープ30(或いは固定バンド)等に限られるものではなく、どのようなものであってもよい(例えば、後述の実施の形態の他例で説明するような略L字形状の弾性片であってもよい)。
次に、図12乃至図18に基づき、本発明に係る車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造の実施の形態の他例について説明する。
本例の車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造においても、上記実施の形態の一例と同様の構成を有するスプール筐体3を有しており、このスプール筐体3の筐体本体12内に、本例のハーネスプロテクタ40が収容されてスライド自在に係合しているとともに、輪部形成板41が取り付けられたワイヤハーネスの輪部9が収容されている(図12参照)。なお、図12において、前記固定部16は図示省略されている。以下、筐体本体12内へのハーネスプロテクタ40及び輪部形成板41が取り付けられたワイヤハーネスの輪部9の収容の工程について詳しく説明する。
前記ハーネスプロテクタ40は、ワイヤハーネス4を固定する矩形状のハーネス固定板42とこのハーネス固定板42を覆うプロテクタカバー43とで構成されている。本例において、プロテクタカバー43は、ハーネス固定板42とは別体で形成され、略六角形の内部空間を有する筒状に形成されている(図16参照)。
前記ハーネス固定板42と前記輪部形成板41は、図13に示す板部材44から形成される。この板部材44は、弾性を有し湾曲自在な合成樹脂製で、ハーネス固定板42と前記輪部形成板41を形成するための輪部形成板部材45とが被破壊部46を介して連接されて構成されている。
前記被破壊部46は、ミシン目47,47を介してハーネス固定板42及び輪部形成板部材45に両端部が連接された切取片48によって構成されており、ハーネス固定板42と輪部形成板部材45を互いに捻ることにより、この切取片48がミシン目47,47で簡単に切り取られるようになっている。
前記輪部形成板41を形成するための輪部形成板部材45は、並列に連接された第1ハーネス固定部49と第2ハーネス固定部50とで構成されている。
前記第1ハーネス固定部49は、帯状に長く形成された帯板部51を備え、この帯板部51上に、長手方向に所定の間隔を有して複数の略L字形状の弾性片52を一体に設けることにより構成されている。
前記帯板部51は、前記被破壊部46を構成する切取片48を介して前記ハーネス固定板42と連接されている。この帯板部51には、図示しないが、ワイヤハーネスの輪部収容部14よりも後端側(スライドガイド部13の反対側)の筐体本体12に係止して輪部形成板41を固定するための係止部が設けられている。
前記略L字形状の弾性片52は、帯板部51との間にワイヤハーネス4を固定するためのものであり、その基端部が帯板部51の第2ハーネス固定部50側の幅方向端部に設けられ第2ハーネス固定部50側とは反対側が開口してここからワイヤハーネス4を入れることができるようになっている。
前記第2ハーネス固定部50は、帯板部51の側縁に長手方向に沿って所定の間隔を有して複数設けられた矩形板部53を備え、各矩形板部53上に略L字形状の弾性片54を一体に設けることにより構成されている。
前記矩形板部53は、ヒンジ部で構成される輪部形成板側折り曲げ部55を介して前記帯板部51に連接されている。また、前記略L字形状の弾性片54は、矩形板部53との間にワイヤハーネス4(後述の大径電線)を固定するためのものであり、その基端部が矩形板部53の第1ハーネス固定部49側の幅方向端部に設けられ第1ハーネス固定部49側とは反対側が開口してここからワイヤハーネス4(後述の小径電線)を入れることができるようになっている。
前記ハーネス固定板42には、前記第1ハーネス固定部49の前記弾性片52によって固定されるワイヤハーネス4を固定するための弾性片56,56と、前記第2ハーネス固定部の前記弾性片54によって固定されるワイヤハーネス4を固定するための弾性片57,57とが設けられている。
前記弾性片56,56及び弾性片57,57は、略L字形状に形成され、ハーネス固定板42との間にワイヤハーネス4を固定することができるようになっている。そして、弾性片56,56と弾性片57,57は、互いに対向するようにして設けられ、それぞれの基端部は隣り合う弾性片57側或いは弾性片56側に設けられ、ハーネス固定板42の端部側が開口してここからワイヤハーネス4を入れてハーネス固定板42との間で固定することができるようになっている。
このように構成された板部材44から、前記ハーネス固定板42と前記輪部形成板41を形成するには、先ず、図14に示すように、第2ハーネス固定部50と前記ハーネス固定板42に、ワイヤハーネス4を構成する小径電線4aを固定する。具体的には、小径電線4aを、第2ハーネス固定部50の弾性片54と矩形板部53との間、及びハーネス固定板42と弾性片57との間に、その開口側から入れ、弾性片54及び弾性片57で小径電線4aを固定する。これにより、小径電線4aは、第2ハーネス固定部50及びハーネス固定板42に長手方向に沿って配索されて固定される。
次に、図15に示すように、第1ハーネス固定部49と前記ハーネス固定板42に、ワイヤハーネス4を構成する大径電線4bを固定する。具体的には、大径電線4bを、第1ハーネス固定部49の弾性片52と帯板部51との間、及びハーネス固定板42と弾性片56との間に、その開口側から入れ、弾性片52及び弾性片56で小径電線4bを固定する。これにより、大径電線4bは、第1ハーネス固定部49及びハーネス固定板42に長手方向に沿って配索されて固定される。
次に、図16に示すように、帯板部51と矩形板部53とを輪部形成板側折り曲げ部55で折り返して重ね合わせて係合させる。このとき、帯板部51と矩形板部53は、図示しない係止手段等によって互いに係止させる。これにより、小径電線4aと大径電線4bとが重ね合わされた状態のワイヤハーネス4が固定された帯状の輪部形成板41が形成される。
また、帯板部51と矩形板部53とを重ね合わせるときに、帯板部51を捻ることにより、前記ミシン目47,47で前記切取片48を切り取って被破壊部46を破壊し、帯板部51とハーネス固定板42を分離する。このようにして帯板部51と分離されたハーネス固定板42には、図16及び図17に示すようにしてプロテクタカバー43を被せ、図示しない適宜固定手段によりプロテクタカバー43とハーネス固定板42とを固定する。これにより、ハーネスプロテクタ40が形成される。
次に、図18に示すように、ワイヤハーネス4が固定された状態の輪部形成板41を輪状に屈曲させる。そして、このようにして輪状に形成され、ワイヤハーネス4が固定された輪部形成板41を、輪部の内側に前記ピン18が位置するようにして筐体本体12側のワイヤハーネスの輪部収容部2aに収容して、図示しない係止部を筐体本体12に係止させて固定するとともに、前記ハーネスプロテクタ40を筐体本体12側のスライドガイド部13aにスライド自在に係合させる(図12参照)。このとき、筐体本体12内のハーネスプロテクタ40は輪部形成板41に対し、垂直な向きとなっている。
以上のようにしてワイヤハーネス4が固定された輪部形成板41とハーネスプロテクタ40とを収容した筐体本体12と蓋体11(図12においては不図示)とを係合させてスプール筐体3が形成される。
このような本例の車両のドアヒンジ部におけるワイヤハーネスの配索構造によっても、上記実施の形態の一例と同様の作用・効果を奏する。また、本例によれば、輪部形成板41に固定されるワイヤハーネス4を構成する電線の本数を、輪部形成板41の幅を広げることなく多くすることができる。なお、第1ハーネス固定部49と第2ハーネス固定部50のそれぞれには、同じ径の電線を固定してもよい。
さらに、本例によれば、輪部形成板部材45とハーネスプロテクタ40を構成するハーネス固定板42とが一体に形成されており、組み立て工程においてこれら輪部形成板部材45とハーネス固定板42とを分離して輪部形成板41とハーネスプロテクタ40を形成することから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。
なお、上記実施の形態の他例において、前記被破壊部46は形成されていなくてもよく、輪部形成板41とハーネス固定板42とが一体となった状態で前記スプール筐体3内に収容されていてもよい。なお、この場合には、スプール筐体3内のハーネスプロテクタ40は、輪部形成板41に対して垂直とはならないことから、これに合わせてスプール筐体3のスライドガイド部13の形状を形成することはいうまでもない。
また、上記実施の形態の他例の変形例として、前記ハーネス固定板42に、折り曲げ部(プロテクタ側折り曲げ部)を介して上記実施の形態の一例に示すような蓋部を連接し、この蓋部を前記折り曲げ部で折り曲げて前記ハーネス固定板42と係合させることによりハーネスプロテクタを形成してもよい(不図示)。この場合には、プロテクタカバー43が不要となり、組み立てが容易となる。
さらに、本発明は、上記各実施の形態で説明したものに限られるものではなく、ワイヤハーネスの輪部収容部2に収容されたワイヤハーネスの輪部9に、弾性を有する帯状の輪部形成板が取り付けられているものであれば、上記各実施の形態を適宜変更してもよい。
例えば、ハーネスプロテクタとしては、従来公知の構成のものであってもよい。この場合、前記輪部形成板をハーネスプロテクタと一体に形成してもよく、これにより、本発明の目的を達成することができるのは勿論のこと、前記輪部形成板と前記ハーネスプロテクタとが一体に形成されていることから、組み立てが容易であり、また、部品点数を減らすことができ、これにより製造コストを低減することができるとともに、部品管理も容易である。さらに、前記輪部形成板とハーネスプロテクタとを被破壊部を介して一体に形成しておき、スプール筐体3内への収容時にこれらを分離すれば、輪部形成板とハーネスプロテクタの組付けの方向を自由に設定することができる。