JP2005202149A - 平版印刷版原版の製版方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 支持体上に、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層と、保護層と、を順次積層してなる平版印刷版原版を、750nm〜1400nmの波長で露光処理をした後、実質的に加熱処理及び水洗処理を経ることなく、現像処理工程を行う平版印刷版原版の製版方法において、該現像処理工程で使用される現像液が、芳香族アニオン界面活性剤と、アセチレンアルコール及びアセチレングリコールから選択される少なくとも1種の化合物と、を含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
このような加熱処理は、露光工程で残存したラジカルを再反応させる効果があるが、版材の全域にわたって均一に熱を供給することが困難であり、画像ムラ、特に網点ムラを生じる問題がある。また、熱を供給する際の温度としては100℃以上で特に熱供給の均一化が困難になり、高温ほど困難度は増大する。既存のプレヒート工程は100〜150℃の温度で熱を供給しており、連続処理したとき網点ムラが生じ、耐刷性が悪化するという問題がある。
このため、現像処理における画像ムラの発生、網点領域における耐刷性の低下の双方が抑制され、版の全面にわたり均一で高い画質の画像を形成することができる優れた平版印刷版原版が熱望されていた。
ここで、「順次積層する」とは、支持体上に感光層、保護層がこの順に設けられることを指し、中間層、バックコート層など、目的に応じて設けられる、これ以外の任意の層の存在を否定するものではない。
また、本発明においては、前記現像液のpHが10.0〜12.5であることが好ましい。
また、本発明においては、前記現像液が前記芳香族アニオン界面活性剤を1.0質量%〜10.0質量%含有することが好ましい。
また、本発明においては、前記現像液が2価金属に対するキレート剤を含有することが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の製版方法においては、画像露光後の加熱処理を行なうことなく現像処理工程を実施するため、不均一な加熱の影響により生じる感光層硬化反応の局所的なバラツキが抑制され、網点や細線などの画像であっても、均一で鮮鋭度の高い画像が形成され、網点や細線部分の耐刷性の低下も抑制されるものと推測される。
また、本発明の製版方法によれば、現像処理を長期間連続して行った場合に生じる感光層成分や保護層成分の現像槽への浮遊、あるいは沈殿に起因する現像阻害や画像欠陥を抑制することができる。これは、本発明に用いられる現像液に含まれる芳香族アニオン界面活性剤が、現像液中に溶出した感光層成分及び保護層成分を安定に分散するため、問題の浮遊あるいは沈殿物による現像阻害が抑制され、網点や細線などの画像であっても、均一で鮮鋭度の高い画像が形成され、網点や細線部分の耐刷性の低下が抑制されることによるものと推測される。更には、不安定要因である加熱処理及び水洗処理を必要としないため、現像処理速度が1.25m/分以上の高速処理においても、均一で鮮鋭度の高い画像が形成され、網点や細線部分の耐刷性の低下も抑制されるものと推測される。
本発明に用いられる平版印刷版原版は、支持体上に、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、バインダーを含有する感光層と、保護層と、を順次積層してなることを特徴とする。以下、本発明に係る平版印刷版原版を構成する各部材について説明する。
本発明に係る平版印刷版原版の感光層は、必須成分として、重合開始剤、重合性化合物(付加重合性化合物ともいう)、バインダーポリマー、赤外線吸収剤、を含有し、更に必要に応じて、着色剤、他の任意成分を含む重合性ネガ型の感光層である。
ラジカルの生成機構としては、1.赤外線吸収剤の光熱変換機能により発生した熱が、後述する重合開始剤(例えば、スルホニウム塩)を熱分解しラジカルを発生させる、2.赤外線吸収剤が発生した励起電子が、重合開始剤(例えば、活性ハロゲン化合物)に移動しラジカルをさせる、3.励起した赤外線吸収剤に重合開始剤(例えば、ボレート化合物)から電子移動してラジカルが発生する、等が挙げられる。そして、生成したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部となる。
以下に、本発明に係る平版印刷版原版の感光層を構成する各成分について説明する。
本発明に用いられる重合開始剤は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有し、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギーを付与することでラジカルを生成させるものであればいかなる化合物を用いてもよい。例えば、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが挙げられる。これらは併用してもよい。本発明ではオニウム塩が好ましく、中でも、スルホニウム塩が特に好ましい。
本発明における他のオニウム塩としては、下記一般式(2)及び(3)で表されるオニウム塩が挙げられる。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合の含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
また、重合開始剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
本発明に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
また、本発明に係る平版印刷版原版では、後述の支持体や保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。更に、本発明に係る平版印刷版原版では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
本発明に用いられるバインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。中でも、本発明において好適なバインダーポリマーとしては、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーである。以下、一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーを、適宜、特定バインダーポリマーと称し、詳細に説明する。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meg/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
前記特定バインダーポリマーと併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。
そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CH2Z)=CH2、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
かかるバインダーポリマー中のラジカル重合性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度や保存性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
バインダーポリマーのガラス転移点を高めるため手段としては、その分子中に、アミド基やイミド基を含有することが好ましく、特に、メタクリルアミドメタクリルアミド誘導体を含有することが好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版の感光層には、エネルギー移動機能(電子移動)や光熱変換機能などの発現を目的にして、赤外線吸収剤を含有する。
赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、前述の重合開始剤に作用して、該重合開始剤に高感度で化学変化を生起させてラジカルを生成させるのに有用である。
本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長750nmから1400nmに吸収極大を有する染料又は顔料であり、中でも、カチオン性染料であることが好ましい。赤外線吸収剤として対イオンを有する構造の化合物(カチオン性染料)を用いる場合には、該対イオンがハロゲンイオンでないものを選択することが好ましい。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、本発明における赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願2001−6326、特願2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
また、特に好ましい他の例として更に、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
但し、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
但し、本発明における赤外線吸収剤の添加量は、対イオンを有する構造の赤外線吸収剤であり、該対イオンがハロゲンイオンある場合には、感光層中における均一性や感光層の耐久性や感度と、感光層中のハロゲンイオンの濃度と、を考慮して調整する必要がある。
更に、本発明に係る平版印刷版原版の感光層には、その着色を目的として、染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料があり、中でも、カチオン性染料が好ましい。
着色剤としての染料及び顔料の添加量は、全感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
着色剤として対イオンを有する構造の化合物(カチオン性染料)を用いる場合には、該対イオンがハロゲンイオンでないものを選択することが好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版の感光層においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
更に、本発明に係る平版印刷版原版の感光層には、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、バインダーポリマーと付加重合性化合物との合計質量に対し一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。
また、本発明に係る平版印刷版原版の感光層において、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
本発明における支持体としては、アルミニウム支持体を用いることが好ましい。アルミニウム支持体は寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できる。また、特公昭48−18327号に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートを用いてもよい。
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。このようなアルミニウム支持体には、後述の支持体表面処理が施され、本発明における、感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaが0.2〜0.7μmの範囲である支持体が作製される。
以下、本発明における支持体の中心線平均粗さRaを制御するための手段について説明する。
以下に、粗面化処理の例示的一態様を示す。
機械的粗面化処理としては、所望の毛径を有する回転するナイロンブラシロールと、支持体表面に供給される研磨剤を含むスラリー液により、アルミニウム支持体表面を機械的に粗面化処理することができる。研磨剤としては公知の物が使用できるが、珪砂、石英、水酸化アルミニウム又はこれらの混合物が好ましい。この処理方法は、特開平6−135175号公報、特公昭50−40047号公報に詳しく記載されている。
この他にも、スラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いた方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状を金属基体表面に転写する方式などを用いてもよい。この中でも、表面形状を転写する方式としては、例えば、特開平7−205565号公報のの段落番号[0004]に記載の方法を用いることができる。これらの機械的粗面化処理は、単独或いは組み合わせて用いることもできる。
例えば、上記ナイロンブラシロールと、研磨剤を含むスラリー液と、を用いて機械的粗面化を行う方法では、該ナイロンブラシロールの毛の直径や毛長などを調整する、又は、研磨剤の粒径を調整することにより、支持体表面の中心線平均粗さRaを制御することができる。より具体的には、アルミニウム支持体の表面を、ナイロンブラシロールと、研磨剤を含むスラリー液と、を用いて機械的に粗面化する場合、ナイロンブラシロールの毛の直径が0.15〜0.45mmの範囲であることが好ましく、また、研磨剤の平均粒径が15〜50μmの範囲であることが好ましい。これらの条件は、少なくとも一方がこの範囲内であれば、中心線平均粗さRaを上記の範囲に制御することが可能であるが、研磨剤の平均粒径を調整することで中心線平均粗さRaを制御する方が好ましく、いずれの条件もこの範囲内であることが更に好ましい。
なお、機械的粗面化後に、電解研磨処理や化学エッチング処理を施す場合、電気化学的粗面化処理を施す場合には、粗面化状態がそれぞれ変化するため、機械的粗面化においては、その変化を考慮して中心線平均粗さRaを制御することが好ましい。
上記の機械的粗面化によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解し、滑らかなうねりを持つ表面を得て、汚れ性能がよい印刷版を得る目的でおこなう。このときの金属基体の溶解量は3〜20g/m2が好ましい。
エッチング方法は浸漬でもよいし、スプレーでエッチング液を吹き付けてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。
電解研磨処理又は化学的エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないために、また、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するためにニップローラーによる液切りとスプレーによる洗浄を行うことが好ましい。スプレーによる洗浄には、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等の酸が用いられる。
平均直径約0.5〜20μmのクレーター又はハニカム状のビットを金属基体表面に30〜100%の面積率で生成する目的で行われる。かかる処理は、印刷版の非画像部の汚れにくさと耐刷力を向上する作用を有する。
この方法に適する陽極時電気量は50C/dm2〜400C/dm2の範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
なお、電気化学的粗面化処理において、使用電気量の調整によっても、支持体表面の中心線平均粗さRaを制御することができる。
上記の電気化学的粗面化で生成した、スマット成分の除去と、生成したビットのエッジ部分を滑らかにし、印刷版としたときの汚れ性能を良化させる目的で行われる。好ましくは、特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法、及び、特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。支持体の溶解量は、0.05〜5g/m2の範囲であることが好ましく、0.1〜3g/m2の範囲であることがより好ましい。
さらに、作製された支持体を平版印刷版原版に用いる場合、以下に示す陽極酸化処理がなされることが好ましい。
陽極酸化処理は、硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には、第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度が好ましい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/m2の範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲であり、好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/m2の範囲に入るように処理条件が選択されるこ
とが好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に、感光層および保護層を設け、更に必要に応じて、下塗り層等を設けてなる。かかる平版印刷版原版は、上述の各種成分を含む塗布液を、それぞれ、適当な溶媒に溶かして、支持体上に塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、感光層塗布液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
なお、本発明に係る感光層の物性としては、25℃におけるpHが10〜12.5のアルカリ現像液に対する未露光部の現像速度が80nm/sec以上、かつ、該アルカリ現像液の露光部における浸透速度が50nF/sec以下であることが好ましい。
なお、ここで、pH10〜12.5のアルカリ現像液による現像速度とは、感光層の膜厚(μm)を現像に要する時間(sec)で除した値であり、アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記感光層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
以下に、本発明における「アルカリ現像液に対する現像速度」及び「アルカリ現像液の浸透速度」の測定方法について詳細に説明する。
ここで、感光層のアルカリ現像液に対する現像速度とは、感光層の膜厚(μm)を現像に要する時間(sec)で除した値である。
本発明における現像速度の測定方法としては、図1に示すように、アルミニウム支持体上に未露光の感光層を備えたものをpH10〜12.5の範囲の一定のアルカリ現像液(25℃)中に浸漬し、感光層の溶解挙動をDRM干渉波測定装置で調査した。図1に、感光層の溶解挙動を測定するためのDRM干渉波測定装置の概略図を示す。本発明においては、640nmの光を用い干渉により膜厚の変化を検出した。現像挙動が感光層表面からの非膨潤的現像の場合、膜厚は現像時間に対して徐々に薄くなり、その厚みに応じた干渉波が得られる。また、膨潤的溶解(脱膜的溶解)の場合には、膜厚は現像液の浸透により変化するため、きれいな干渉波が得られない。
(未露光部の)現像速度=[感光層厚(μm)/記録完了時間(sec)]
また、アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記感光層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
本発明における浸透性の目安となる静電容量の測定方法としては、図2に示すように、pH10〜12.5の範囲の一定のアルカリ現像液(25℃)中にアルミニウム支持体上に所定の露光量にて露光を行ない、硬化した感光層を備えたものを一方の電極として浸漬し、アルミニウム支持体に導線をつなぎ、他方に通常の電極を用いて電圧を印加する方法が挙げられる。電圧を印加後、浸漬時間の経過に従って現像液が支持体と感光層との界面に浸透し、静電容量が変化する。
(露光部の)現像液浸透速度(nF/sec)=
[静電容量(nF)/静電容量変化が一定になるまでに要する時間(sec)]
一方、露光部の現像液浸透速度は好ましくは0〜50nF/sec、より好ましくは0〜10nF/secである。
上述の特定バインダーポリマーを使用することで、感光層の現像速度、現像液の浸透速度を容易に上記の好ましい範囲に調製することができる。
本発明に係る平版印刷版原版には、感光層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層(下塗り層)を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特願平8−225335号、特願平8−270098号、特願平9−195863号、特願平9−195864号、特願平9−89646号、特願平9−106068号、特願平9−183834号、特願平9−264311号、特願平9−127232号、特願平9−245419号、特願平10−127602号、特願平10−170202号、特願平11−36377号、特願平11−165861号、特願平11−284091号、特願2000−14697号等に記載のものを挙げることができる。
本発明に係る平版印刷版原版の感光層は熱重合性ネガ型感光層であるため、通常、露光を大気中で行うために、感光層の上に、更に、保護層(オーバーコート層とも呼ばれる。)を設ける必要がある。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光を可能とする。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3、458、311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。
従って、本発明においては、接着力、感度、不要なカブリの観点から、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを併用することが好ましい。添加量比(質量比)は、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンが3/1以下であることが好ましい。塗布重量としては、1.0g/m2〜3.0g/m2であることが好ましい。
〔現像液〕
本発明に用いられる現像液は、芳香族アニオン界面活性剤と、アセチレンアルコール及びアセチレングリコールから選択される少なくとも1種の化合物と、を含有することを特徴とする。以下、このような現像液の組成物について詳細に説明する。
本発明に用いられる現像液の必須成分である芳香族アニオン界面活性剤は、現像促進効果、重合性ネガ型の感光層成分及び保護層成分の現像液中での分散安定化効果があり、現像処理安定化には必須素材である。中でも、本発明に用いられる芳香族アニオン界面活性剤としては、下記一般式(I−A)又は一般式(I−B)で表される化合物であることが好ましい。
m、nはそれぞれ、1〜100から選択される整数を表し、中でも、1〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、mが2以上の場合、複数存在するR3は同一でも異なっていてもよい。同じく、nが2以上の場合、複数存在するR5は同一でも異なっていてもよい。
p、qはそれぞれ、0〜2から選択される整数を表す。Y1、Y2は、それぞれ単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、エチレン基が好ましく、特に単結合が好ましい。
(Z1)r+、(Z2)s+はそれぞれ、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、あるいは無置換又はアルキル基で置換されたアンモニウムイオンを表し、具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜20のアルキル基・アリール基、アラルキル基が置換した2級〜4級のアンモニウムイオンなどが挙げられ、特にナトリウムイオンが好ましい。r、sはそれぞれ、1又は2を表す。
以下に、具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
これらその他の界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1から10質量%が好ましい。
本発明に用いられる現像液には、現像液の消泡剤として、アセチレンアルコール及びアセチレングリコールから選択される少なくとも1種の化合物を添加する必要である。これらの化合物は単独で使用してもよいし、双方を併用しても良い。
アセチレンアルコールとは、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和アルコールである。また、アセチレングリコールとは、アルキンジオールとも呼ばれ、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和グリコールである。
具体的には、以下の一般式(II)、(III)で示されるものが挙げられる。
以下に、具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
現像液中の消泡剤の添加量は、消泡効果および耐刷性の観点から、0.0001質量%以上であることが好ましく、特に好ましくは、0.0005〜0.1質量%である。
本発明に係る現像液には、例えば、硬水に含まれるカルシウムイオンなどによる影響を抑制する目的で、2価金属に対するキレート剤を含有させることが好ましい。2価金属に対するキレート剤としては、例えば、Na2P2O7、Na5P3O3、Na3P3O9、Na2O4P(NaO3P)PO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができ、中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度およびその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
たとえは炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いても良い。
本発明に係る現像液に用いられるアルカリ剤としては、たとえば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、および同リチウムなどの無機アルカリ剤および、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いてもよいし、もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の有機溶剤;この他、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
ここで、導電率を調整するための導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類等を添加することが好ましい。
次に、本発明の平版印刷版原版の製版方法について説明する。本発明の平版印刷版原版の製版方法は、支持体上に、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層と、保護層と、を順次積層してなる平版印刷版原版を、750nm〜1400nmの波長で露光処理をした後、実質的に加熱処理及び水洗処理を経ることなく、芳香族アニオン界面活性剤と、アセチレンアルコール及びアセチレングリコールから選択される少なくとも1種の化合物と、を含有する現像液を用いて現像処理を行うことを特徴とする。なお、本発明においては、上記現像処理における平版印刷版原版の搬送速度が1.25m/分以上の条件であることが好ましい。
この製版方法は、赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性化合物を含有し、750nm〜1400nmの波長の露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が低下する重合性ネガ型感光層を備えた平版印刷版原版のいずれにも好適に適用できる。具体的には、本発明に係る平版印刷版原版の感光層の構成の欄で説明した「赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性化合物」の各成分を含有する感光層であればよく、バインダーポリマーとしては公知のものを含んでいてもよいし、含まなくてもかまわない。また、前記した特定のバインダーポリマーを含む本発明に係る平版印刷版原版の製版にも好適であることはいうまでもない。
感光層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対するアルカリ現像液の浸透速度の制御は、常法により行うことができるが、代表的なものとしては、前記特定バインダーポリマーを使用する方法の他、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加手段が有用である。
露光処理工程に用いられる光源としては、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられ、また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。
本発明においては、波長750nmから1400nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。記録材料に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。露光のエネルギーが低すぎると画像記録層の硬化が十分に進行しない。また、露光のエネルギーが高すぎると画像記録層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することがある。
現像処理工程における処理速度、即ち、現像処理工程における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることが好ましく、さらに好ましくは、1.35m/分以上である。搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じるおそれがある。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来より知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
〔実施例1〜6、比較例1〜3〕
(支持体の作製)
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRaは0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)であった。
次に、このアルミニウム支持体に下記下塗り層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/m2であった。
・下記構造の高分子化合物A 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
次に、下記感光層塗布液[P−1]を調整し、上記のアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行い、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.3g/m2であった。
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.074g
・重合開始剤(OS−12) 0.280g
・添加剤(PM−1) 0.151g
・重合性化合物(AM−1) 1.00g
・バインダーポリマー(BT−1) 1.00g
・エチルバイオレット(C−1) 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.4g
上記の感光層表面に、ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)と、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビスコールK−30)と、の混合水溶液をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させた。なお、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンの含有量は4/1質量%であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は2.30g/m2であった。
下記成分を水に溶解し、KOHでpH=11.95(25℃)になるように現像液を調整した。
・界面活性剤 表1に記載の化合物、添加量
・本発明に係る消泡剤:オルフィンAK−02 0.08質量%
・エチレンジアミンテトラ酢酸4Na塩 0.16質量%
・炭酸カリウム 0.16質量%
上記現像液にエチレンジアミンテトラ酢酸4Na塩を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして平版印刷版を作製した。
上記現像液のpHを13.0(25℃)に調整した以外は、実施例2と同様にして平版印刷版を作製した。
上記現像液のpHを9.5(25℃)に調整した以外は、実施例2と同様にして平版印刷版を作製した。
(1)感度評価
得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter3244にて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数150rpm、出力0〜8Wの範囲でlogEで0.15ずつ変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。露光後、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像処理工程の前には加熱工程、水洗工程は有しない処理である。現像液は下記表1に示したものを用い、フィニッシャーは富士フイルム(株)社製GN−2Kの1:1水希釈液を用いた。
現像して得られた平版印刷版の画像部濃度をマクベス反射濃度計RD−918を使用し、該濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定した。測定した濃度が0.8を得るのに必要な露光量の逆数を感度の指標とした。なお、評価結果は、実施例1で得られた平版印刷版の感度を100とし、他の平版印刷版の感度はその相対評価とした。値が大きいほど、感度が優れていることになる。結果を表1に示す。
得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter3244にて、解像度2400dpiで80%平網画像を、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cm2で露光した。露光後、上記感度評価と同様に現像処理を行なった。得られた平版印刷版の平網ムラを目視評価した。評価は1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
画質評価で使用した平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷し、非画像部の汚れと耐刷性能を評価した。非画像部の汚れは、1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
画質評価で使用した平版印刷版を同条件で露光した版を、現像液45Lに対して3000m2相当を処理した後、全面非画像の版(未露光版)を処理して、版上に付着するカスを目視評価した。評価は1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
以上の結果を表1に示す。
これに対し、本発明に係る界面活性剤を含有しない現像液で現像処理した比較例1〜3は現像性が不充分で画像ムラが悪化傾向であり、連続処理適性が極めて低く、実用上問題のあることがわかった。
前記感光層塗布液[P−1]における重合性化合物(AM−1)を下記エチレン性不飽和結合含有化合物(M−1)に、バインダーポリマー(BT−1)を下記ポリウレタン系バインダー(P−2)に変更した他は、実施例2と同様にして平版印刷版原版を得て、実施例2と同様の評価を行った。
Claims (6)
- 支持体上に、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層と、保護層と、を順次積層してなる平版印刷版原版を、750nm〜1400nmの波長で露光処理をした後、実質的に加熱処理及び水洗処理を経ることなく現像処理工程を行う平版印刷版原版の製版方法において、該現像処理工程で使用される現像液が、芳香族アニオン界面活性剤と、アセチレンアルコール及びアセチレングリコールから選択される少なくとも1種の化合物と、を含有することを特徴とする平版印刷版原版の製版方法。
- 前記現像液含有の芳香族アニオン界面活性剤が、下記一般式(I−A)又は(I−B)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版の製版方法。
- 前記現像処理工程における平版印刷版原版の搬送速度が、1.25m/分以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版の製版方法。
- 前記現像液が、pH10.0〜12.5であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
- 前記現像液が、前記芳香族アニオン界面活性剤を1.0質量%〜10.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
- 前記現像液が、2価金属に対するキレート剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090908 |