JP2005194188A - 30sリボソームの結晶構造およびその使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】原核生物の30Sリボソームサブユニットの高分解能結晶構造、およびこの構造の薬物探索への使用を提供する。
【解決手段】a=401.375Å、b=401.375Å、c=175.887Åの単位格子サイズをもつ正方晶系の空間群P41212を有する30Sサブユニットの結晶。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原核生物の30Sリボソームサブユニットの高分解能結晶構造の提供、およびこの構造の薬物探索への使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
構造遺伝学への尽力およびコンピュータ技術の進歩により利用可能になった大量の情報から、構造に基づく薬物設計が医化学における有益な手段となった。従来は、ハイスループット法と組み合わせたコンビナトリアルケミストリーが、より一層の構造に基づく方法から注意をそらしていた。大規模なタンパク質構造決定は、タンパク質構造から着手してそれを用いて新規のリガンドを同定および設計することにより、薬物探索過程を逆転させつつある。構造に基づく方法、仮想的スクリーニング、およびコンビナトリアルケミストリーの集積が、将来のより効果的な薬物設計の基礎を提供し、薬物設計サイクルの期間、および市場に出る薬物の単価を顕著に低減するであろう。すでに、AIDS、関節炎、および癌、ならびに高血圧の治療(例えば、カプトリル(captril))において顕著な進歩が達成されている。
【0003】
遺伝暗号の翻訳は2つのサブユニットからなる大きな核タンパク質複合体であるリボソーム上で起こる。細菌では、この2つのサブユニットは、30Sおよび50Sと記される。50Sサブユニットはペプチジルトランスフェラーゼ活性の触媒部位を含み、一方の30Sサブユニットは、メッセンジャーRNAの解読に重要な役割を担っている。タンパク質合成は、開始、伸長、および終結の主な段階それぞれにおいて、数種の外因性GTP-加水分解性タンパク質性因子を必要とする複雑な多段階プロセスである。ここ数十年にわたる研究にもかかわらず、このプロセスの分子的な詳細はあまり解っておらず、翻訳機構の解明は、現在、分子生物学の基本的な課題の一つである。最近の論文を集約したものにより、本技術分野の解明の状況が概説されている[1]。
【0004】
Yonathおよびその共同研究者らが、この課題に大きく貢献した。彼らは、ほぼ10年の研究の後、50Sリボソームサブユニットという大きな構造が3Åより優れた分解能の回折を有する結晶を形成することを示した[2]。元来、これほど大きな非対称の1つの単位から、位相情報が高分解能に至るまで得られることが明らかではなかったが、明るく、波長の調整可能なシンクロトロン放射線源、大型で精密な位置検出器、結晶学のコンピュータ解析の多大な進歩、および低温結晶解析の出現の全てが、リボソームの構造研究をより容易にするのに役立った。本発明者らの研究では、ランタニド系およびオスミウムのLIIIエッジからの異常な散乱を用いることも、位相を得るのに重要な役割を演じた。
【0005】
Thermus thermophilus由来の30Sリボソームサブユニット(本明細書中では以下30Sと称する)は、最初、Trakhanovらにより、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)中で結晶化され[3]、その後すぐにYonathとその共同研究者らにより、エチルブタノールおよびエタノールの混合液中で結晶化された[4]。2つのグループが続いて行った研究により、MPD結晶型は分解能が約9〜12Åまでの回折を有することが示された[5,6]。これらの結晶の回折限界は、ほぼ10年間で7Åより優れた分解能には向上しなかったが[7,8]、最近になって、Yonathとその共同研究者ら[7,8]、および本発明者ら[9]は、顕著な回折の向上を示すMPD型の結晶を得た。しかし、本発明者らの得た結晶は、Yonathのグループにより得られた結晶[6]とは異なり、高分解能の回折を得るために、タングステンのクラスター中への浸漬、または熱処理を必要としない。
【0006】
本発明者らは以前、5.5Å分解能での30Sの構造を記載した[9]。本発明者らは、当時構造が分かっていた7つのタンパク質全てについて掲載でき、S20タンパク質の構造が3つのヘリックスの束であることを推定し、16Sの完全なドメインの折り畳み構造を精査して、30Sの解読部位を含む境界面上に長いRNAヘリックスを特定することができた。S5およびS7タンパク質は、Yonathとその共同研究者により得られた30Sの電子密度地図にも掲載された。
【0007】
30Sリボソームサブユニットは、抗生物質の重要な標的である。30Sの構造は原核生物間で広く保存されており、広域抗生物質の可能性があるため、リボソームは抗生物質の有用な標的となる。しかしながら、現存する抗生物質に対する耐性は、現在、医学分野における重要な課題である。現在のところ、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの伝染が広範に拡大しつつある強力な耐性菌の処置に利用できる新規な抗生物質は非常に少ない。
【0008】
抗生物質とリボソームとの相互作用を分子レベルで解明することは、2つの理由により重要である。第1の理由は、抗生物質は、リボソーム機能の種々の局面を妨害することにより作用することである。従って、抗生物質とリボソームの相互作用を理解することは、翻訳に関与する機構を解明する助けとなるであろう。第2の理由は、抗生物質とリボソームとの相互作用に関する詳細な知見は、抵抗性が増している細菌株に対する新規薬物の開発に役立ちうることである。抗生物質は数十年前に特性解析されたが、その作用機構の詳細な知見には、一般に、抗生物質とリボソームとの複合体の3次元構造が必要である。
【0009】
上述の低分解能(3Åより大きい分解能)の結晶構造は、30Sの結晶構造の有用なモデリングにとって十分に詳細な分解能を提供せず、従って、新規の治療薬の開発に有効に利用可能な高分解能構造が必要とされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、ここに、30Sの構造を3Å分解能で解明し、リファイン(refine)した。該構造は、16S RNAの順序づけられた領域の全ておよび20個の会合するタンパク質を含み、そして、RNA配列の99%以上、およびタンパク質配列の95%を含んでおり、RNAまたはポリペプチド鎖の末端にのみ欠損箇所があるにすぎない。本発明者らは、30Sサブユニットの全体の構造、および主要な構造的特徴を本明細書に記載する。
【0011】
本明細書に示す30Sのリファインされた原子分解モデルは、30Sの機能に関する膨大な量の生化学的データの詳細な構造的見地からの解釈を与える。該構造は、電子顕微鏡またはX線結晶解析による種々の機能状態の、より低い分解能のモデルの分子的見地からの解釈の基礎としても役立つだろう。30Sの構造は、リボソーム機能の種々の局面に対する試験可能なモデルの作製に役立つだろう。
【0012】
第1の態様において、本発明は、Thermus thermophilusの30Sサブユニットの結晶を提供する。該結晶は、a=401.375Å、b=401.375Å、c=175.887Å、またはより一般的には、a=401.4Å、b=401.4Å、c=175.9Å、好ましくは、a=401.4Å+4.0Å、b=401.4Å+4.0Å、c=175.9Å+5.0Åである、単位格子サイズを持つ正方晶系の空間群P41212をとる。該構造の有利な特徴は、3Åより優れた分解能で回折することである。この構造のさらなる特徴は、重原子(例えば、タングステンまたはタンタル)のクラスターへの結晶の浸漬、または熱活性化を含まない方法で得られることである。さらに、特に16S RNAの885〜888/910〜912の塩基対合が確認されることである。これらの特徴は全て、単独でおよび組み合わされて、本発明の有利な特徴に寄与する。
【0013】
第2の態様では、本発明は、30Sリボソームの3次元原子座標を有する30Sの結晶も提供する。表1Aは、30Sリボソームの原子座標の1セットを提供する。表1Bは、表1Aの座標に基づくセットであるが、本発明者らのデータからさらにリファインされたものを提供する。本明細書での「表1」への言及は、表1Aまたは1Bのいずれか(文脈から可能であるならば、双方)への言及である。すなわち、例えば、本発明は「記録された表1の原子座標データ」を含むコンピュータ読取可能な媒体をさすと記載されている場合、該媒体はそこに記録された表1Aのデータもしくは表1Bのデータのいずれかまたはその双方を含む。
【0014】
30Sの結晶はS1サブユニットタンパク質を含有しないことも、本発明者らにより確認された。本発明者らの研究では、結晶化の前にこのタンパク質を選択的に取り除くことにより、本明細書に記載の分解能の向上が得られていたことがわかった。下記の表1に示す原子座標により、当業者は30Sの結晶化を行う必要性を回避できるが、この結晶化法は、なお、本発明の更なる態様をも形成する。
【0015】
従って、30Sサブユニットの高分解能構造を得るための30Sサブユニットの結晶化法が提供され、該方法は、30Sサブユニットを提供すること、30SサブユニットからS1サブユニットを選択的に除去すること、および30Sを結晶化することを含む。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、
a. 30S、または30Sの少なくとも1つのサブドメインの3次元構造を用いて、少なくとも1つの活性部位を特性決定すること、ただし、該3次元構造は表1の原子座標データにより規定されること;および
b. 該活性部位との相互作用について化合物を設計するかまたは選択することにより、潜在的インヒビターを同定すること;
を含む、30Sの潜在的インヒビターの同定方法を提供する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、(a) コンピュータ読取可能な媒体に記録された、30Sまたは30Sの少なくとも1つのサブドメインの3次元構造を規定する表1の原子座標データ、または(b) 上記の媒体に記録された、表1の原子座標データから誘導できる30Sの構造因子データ、のいずれかを含むコンピュータ読取可能な媒体を提供する。
【0018】
【課題を解決するための手段】
定義
用語「サブドメイン」とは、以下のものを含む:
(a) 以下のものから選択されるエレメント:
2次構造の少なくとも1つの完全なエレメント、即ち、αヘリックスもしくはβシート、またはRNAヘリックス(詳細については後述する);
互いに相互作用する2つ以上の上記エレメントのグループ;
少なくとも1つのサブユニットタンパク質;
サブユニットタンパク質のサブグループ、例えば、互いに相互作用することが認められている2つ以上のタンパク質を含むグループ;
タンパク質またはそのエレメントである上記のいずれかであって、上記エレメントまたはタンパク質と会合した16S RNA構造の全てもしくは一部分と共に用いられるもの;
(b) 対象の特定の原子(例えば、抗生物質への結合に関与する原子)のいずれか1つの周囲の領域を規定する容積の空間であり、該容積は、完全な結晶の正方晶系の空間の総容積より小さい。例えば、約500〜15,000Å3の容積内にある原子の座標を、本発明のために選択して使用できる。かかる空間は、対象の1点に中心がある直径約10Å〜約30Åの球でありうる;そして、
(c) 表1の座標により規定される少なくとも10個、例えば、少なくとも25個、あるいは少なくとも50個、より好ましくは少なくとも100個、さらに好ましくは少なくとも500個の原子、最も好ましくは少なくとも1000個の原子の集合体であって、その集合体の該原子の少なくとも2個、好ましくは該原子の少なくとも50%が、互いに50Å以内に位置する集合体。
【0019】
30Sの「活性部位」とは、tRNAもしくはmRNAの結合、因子の結合、またはトランスロケーションに関与する30Sの構造の任意の部分である。これは、開始因子、伸長因子G、もしくは終結因子との結合に関与する領域、補因子による制御、リン酸化、またはアセチル化の標的部位となる領域、および50Sリボソームとの相互作用に関与する領域を含む。また、これには、トランスロケーションまたはタンパク質合成の際に立体構造を変化させる領域、特に16S RNAのヘリックス18、27、34、および44のうちの1つ以上も含まれる。
【0020】
30Sの特定の領域には、抗生物質結合領域が含まれる。他の領域には、3つのtRNA結合部位、即ちアミノアシル(A)、ペプチジル(P)、および(出口)E部位が含まれる。他の活性部位は、tRNAのAからP部位へおよびPからE部位へのトランスロケーションの際に移動する部位である。さらに領域には、実施例中の個々に特定されたサブユニットタンパク質のいずれかを含む、S2〜S20およびTHXのサブユニットタンパク質のうちのいずれか1つが含まれる。
【0021】
用語「適合させる(fitting)」は、自動的または半自動的な手段により潜在的インヒビター分子の1つ以上の原子と30Sの1つ以上の原子もしくは結合部位との間の相互作用を決定し、その相互作用がどの程度安定なものであるかを算出することを意味する。様々なコンピュータに基づく適合方法が、本明細書中にさらに記載されている。
【0022】
用語「平均二乗偏差の平方根」は、平均からの偏差の2乗の算術平均の平方根を意味することとする。
【0023】
用語「コンピュータ読取可能な媒体」とは、コンピュータで読取ることができ、直接アクセスできる任意の媒体をいう。このような媒体には、限定しないが、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体および磁気テープなどの磁気記憶媒体;光ディスクまたはCD-ROMなどの光学記憶媒体;RAMおよびROMなどの電子記憶媒体;ならびに磁気/光学記憶媒体のような上記分類の混成品が含まれる。
【0024】
用語「コンピュータシステム」とは、本発明の原子座標データの解析に用いる、ハードウェア手段、ソフトウェア手段、およびデータ記憶手段をいう。本発明のコンピュータに基づくシステムの最低限のハードウェア手段は、セントラルプロセシングユニット(CPU)、入力手段、出力手段、およびデータ記憶手段を含む。モニターにより、構造データを可視化できることが望ましい。データ記憶手段は、RAMまたは本発明のコンピュータ読取可能な媒体に接続するための手段でよい。このようなシステムの例としては、Silicon Graphics IncorporatedおよびSun Microsystemsから入手可能な、Unixに基づくオペレーティングシステム、Windows NT もしくはIBM OS/2オペレーティングシステムが機能するマイクロコンピュータワークステーションが挙げられる。
【0025】
表1
表1の座標は、原子の位置を測定したものを、オングストロームで、小数点以下3桁まで示している。本発明の態様であると本明細書に記載した目的のためにこれらの表にある情報を利用するには、これらの座標は、+1.0オングストロームまで、例としては+0.7オングストロームまで、より好ましくは+0.5オングストローム以下まで変えてよく、これは本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0026】
さらに、該構造の原子の相対的な原子位置を変えて、16S RNAまたはS2〜S20タンパク質の骨格原子の平均二乗偏差の平方根が、表1に示すこれらの構造についての座標に重ねた場合に、1.5Å未満(好ましくは、1.0Å未満、そして、より好ましくは、0.5Å未満)にすることは、一般に、30Sリガンドの構造に基づく薬物設計についてその構造特徴および効力の双方の点で、表1の構造と実質的に等しい構造をもたらすことになるであろう。
【0027】
従って、本発明の態様であると本明細書に記載する目的のためには:
表1の座標が異なる起点および/または軸に対して転移される;該構造の原子の相対的原子位置が、保存された残基骨格原子の平均二乗偏差の平方根を、表1に示す保存された残基骨格原子の座標に重ねた場合、1.5Å未満(好ましくは1.0Å未満、より好ましくは0.5Å未満)となるように変えられる;ならびに/または、水分子の数および/もしくは位置が変えられる;場合には、本発明の範囲内である。従って、表1の座標の使用への言及は、上記のような方法で表の個々の値の1つ以上を変更した座標の使用を含む。
【0028】
表1は、202個の同定されていない他のイオンとともに2つの亜鉛イオンの座標を含む。これらの他のイオンは、何らかの理論によって説明づけようとするものではないが、コバルトおよびマグネシウムから選択されると考えられる。これらのイオンのいくつかまたは全ては、場合によっては、データを用いる場合表1から削除してもよい。該表はまた、26アミノ酸のペプチドであるThx、ならびに6ヌクレオチドのmRNA断片であるNNNUCU(分子Xとして示す)の座標も列挙している。これら2つの分子の座標は双方とも、場合によっては同様に削除してよく、即ち、16S RNAおよびタンパク質S2〜S20の座標のみをモデリングして本発明の適用法に用いてよい。
【0029】
S2〜S20タンパク質のN末端またはC末端のわずかな配列は、16S RNAの5'および3'末端のいくつかの残基とともに、表1の構造の中では解析されていない。これらは、本発明の目的のために必須ではないが、補完するために表2に列挙してある。当業者であれば、所望により、表1の座標により提供された構造を、表2にある1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをモデリングすることにより、適応させたいと考えるかもしれない。
【0030】
本方法論は、T. thermophilusの30Sの結晶を提供する手段を当業者に提供する。原核生物間(例えばブドウ球菌(Staphylococcus spp)などのヒト病原体である原核生物間)における、リボソーム構造の保存、特にその機能に不可欠な構造の領域の保存のため、本明細書中の構造は一般的に抗菌剤の提供に役立つものとなる。従って、該構造を利用して、分子置換技術により30Sサブユニットを解明することができる。このような方法で、別の種(例えば、ヒトに対して病原性のある細菌種)に由来する30Sサブユニットの結晶からX線回折データが得られる。表1の座標を用いて、結晶中の未知の分子の配向性を見出し、電子密度地図を算出することができる。その後、これらの電子密度地図は対象の種の配列を用いて解釈され、本発明者らの30Sの構造の座標はこの解釈を支援し、この解釈を迅速化することができる。このように、本発明者らの30Sの構造は、30Sサブユニットならびに他の生物に由来する全リボソームの構造の決定を容易にする。
【0031】
従って、本発明は、T. thermophilus以外の種に由来する細菌の30Sの構造を決定する方法を提供し、該方法は、
(a) 上記の種の30Sを結晶化し、結晶を得ること;
(b) 該結晶についてX線結晶解析を実施して、X線回折データを得ること;
(c) 表1の構造データを提供すること;
(d) 分子置換を用いて、30Sの電子密度地図を算出すること;
を含む。
【0032】
このような方法では、本明細書に記載するように、30SはS1サブユニットを除去することにより作製できる。
【0033】
その後、得られた電子密度地図を用いて、30Sの原子座標データを算出できる。このようにして得られた原子座標データは、本明細書に記載するように、30Sに対する新規の特異的リガンドの設計および分析に用いることができる。
【0034】
30S 結晶構造
本明細書において提供される高分解能の構造は、付属の表において少数第3位(すなわちa=b=401.375、c=175.887Å)まで示される単位格子サイズを有する結晶を提供する。しかしながら、本明細書に記載の結晶化を再現してこのような結晶を得ようとする当業者は、ある程度の実験による変化可能性および誤差により、本発明の結晶が、このサイズの範囲内であるがこの大きさに正確には一致しない単位格子サイズで得られる場合もあることを理解するであろう。このように、本発明の結晶は一般に、以下の単位格子サイズを有するものと定義される:a=401.4±4.0Å、b=401.4±4.0Å、c=175.9±5.0Å、好ましくはa=401.4±1.0Å、b=401.4±1.0Å、c=175.9±2.0Å、好ましくはa=401.4±0.7Å、b=401.4±0.7Å、c=175.9±1.4Å、そしてより好ましくはa=401.4±0.2Å、b=401.4±0.2Å、c=175.9±0.4Åである。これらの単位格子サイズは、新規、かつ以前に当技術分野で可能であったものよりも高い分解能の単位格子サイズであると考えられる。
【0035】
結晶の作製
本発明の結晶を取得するためには、S1サブユニットタンパク質の選択的な除去が有利であることが見出された。S1サブユニットタンパク質の選択的な除去のために好適な方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(poros-ET)の使用によるものである。S1サブユニットを欠失した30Sリボソームサブユニットは、20mM HEPES、pH 7.5および10mM酢酸を含む1.5Mから0.5Mへの硫酸アンモニウム逆勾配でカラムを通過させて、S1サブユニットを含有する30Sリボソームから好適に分離される。S1サブユニットを欠失した30Sサブユニットが最初に溶出し、第一の主要ピークを与える。30Sピークの溶出の間の硫酸アンモニウム濃度は一定レベルに維持する。30Sピークの溶出後、次いで硫酸アンモニウム濃度をさらに減少させ、30S+S1画分を溶出させる。
【0036】
S1サブユニットタンパク質の選択的除去のための別の方法は、調製用ゲル電気泳動によるものである。好適には、ゲル電気泳動は、まず3%アクリルアミドと0.5%アガロース円筒形ゲルとを調製、混合し、このゲルをBioRad Prep Cell中に注ぐことにより行う。次いで30Sリボソームサブユニットをゲル上にロードし、それらはゲルの他方の末端から現れる際に、連続的に溶出される。S1サブユニットを欠失した30S画分が最初に溶出し、第一の主要ピークを与える。30S+S1画分が引き続いてのピーク(すなわちショルダー)を与えるが、このピークは廃棄してよい。
【0037】
S1を除去した後、好適な条件を用いて結晶を形成させ得る。この条件には、50〜150mM(例えば約100mM)のカコジル酸ナトリウムもしくはカリウム、またはMES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)中、pH 6.0〜7.5(例えばpH約6.3〜6.7、pH 6.5など)で、200〜300mM(例えば約250mM)のKCl、50〜100mM(例えば約75mM)の塩化アンモニウム、15〜30mM(例えば約15または約25mM)のMgCl2の存在下で13〜17%(v/v)メチル-2,4-ペンタンジオールを使用することを含む。
【0038】
特定の態様においては、この条件には、沈殿剤として13〜17%のMPDを有する、pH 6.5の0.1 Mカコジル酸カリウムまたは0.1 M MES(2-N-モルホリノエタンスルホン酸)中の、250mM KCl、75mM NH4Cl、25mM MgCl2、6mM 2-メルカプトエタノールの使用を含み得る。
【0039】
結晶は当業者に知られた好適な方法のいずれにより成長させてもよい。好適には、結晶は約4℃で4〜8週間の期間にわたり成長させ得る。このように取得した結晶の構造を解析できるが、少なくとも3Åの分解能まで解析される結晶を選択する。かかる方法により得られる、少なくとも3Åの分解能まで解析される結晶は、本発明のさらなる一態様である。
【0040】
表1の構造の使用
30Sの3次元構造の決定により、30Sに対する新規かつ特異的リガンドの設計のための基礎が提供される。例えば、30Sの3次元構造を知ることにより、コンピューターモデリングプログラムを使用して、30Sの潜在的活性部位もしくは確認済の活性部位(結合部位など)、または30Sの他の構造的もしくは機能的特徴と相互作用することが期待される種々の分子を設計できる。
【0041】
表1に示された30Sの高分解能モデルは、このリボソームサブユニットをターゲットとすることが判明している抗生物質の結合を試験および測定するために使用し得る。このような抗生物質にはパロモマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、パクタマイシンおよびハイグロマイシンBが含まれる。
【0042】
候補リガンド、特にインヒビター分子として機能するものは、入手し得る任意の化合物でよい。市販されている多数の化合物構造ライブラリーが入手可能であり、そのような例には、ケンブリッジ構造データベースが挙げられる。このようなライブラリーを使用して、リボソームの活性部位と相互作用する能力を有する化合物を同定するために、多数の化合物に関して、コンピューターに基づくハイスループットのスクリーニングが可能となる。
【0043】
より具体的には、30S活性をモジュレートする能力を有する潜在的リガンドを、GRAM、DOCKまたはAUTODOCKなどのドッキングプログラム(Waltersら、Drug Discovery Today, Vol.3, No.4, (1998), 160-178、およびDunbrackら、Folding and Design, 2, (1997), 27-42を参照されたい)を用いるコンピューターモデリングの使用を通して試験し、30Sの潜在的リガンドを同定し得る。この手順には、潜在的リガンドを30Sまたはそのサブドメインに対してコンピューターによって適合させ、その潜在的リガンドの形状および化学的構造がどの程度酵素に結合するかを確認することを含んでもよい。
【0044】
同様に、コンピューターに補助された、30Sの活性部位構造の手動での試験も行い得る。プログラム、例えば種々の官能基を有する分子と酵素表面との間の、予測される相互作用部位を決定するプログラムであるGRID (Goodford, J. Med. Chem., 28, (1985), 849-857)などのプログラムを使用して活性部位を分析し、その部位に対するリガンドの部分的構造を予測することも可能である。
【0045】
コンピュータープログラムを用いて、2つの結合パートナー(30Sおよび潜在的リガンドなど)の引力、反発力、および立体障害を評価できる。一般に、適合が密であるほど、立体障害は少なくなり、また引力は大きくなり、潜在的リガンドはより強力となる。なぜなら、これらの特性はより密な結合定数に一致するからである。さらに、潜在的リガンドの設計において特異性が高いほど、リガンドが他のタンパク質とも相互作用する可能性が少なくなる。このことは、他のタンパク質との望ましくない相互作用に起因する潜在的な副作用を最小とするであろう。
【0046】
潜在的結合リガンドを設計または選択し、次いでこれらを活性に関してスクリーニングできる。当然の帰結として、この方法は好ましくは、下記の工程:
該潜在的リガンドを取得または合成すること、および、
該潜在的リガンドを30Sと接触させ、該潜在的リガンドの30Sと相互作用する能力を測定すること、
をさらに含むのが好ましい。
【0047】
より詳細には、後者の工程においては、例えば無細胞(cell free)翻訳系において、潜在的リガンドの機能を測定し得る条件下で該潜在的リガンドを30Sと接触させる。
【0048】
このようなアッセイに代えて、またはこのようなアッセイに加えて、本方法はさらなる工程:
前記潜在的リガンドを取得または合成すること、
30Sと該潜在的リガンドとの複合体を形成すること、および、
該複合体をX線結晶解析により解析し、該潜在的リガンドの30Sと相互作用する能力を測定すること、
を含み得る。これにより、その潜在的リガンドの30Sへの結合について、より詳細な構造情報が提供され、またこの情報に基づき、例えば活性部位への結合の改善などの、該潜在的リガンドの構造および機能に対する調整を行い得る。工程c.〜e.を反復し、必要に応じて再反復してもよい。
本発明の別の態様には、本発明の上記の態様の方法により30Sのリガンドとして同定された化合物が含まれる。
【0049】
30Sの本発明による高分解能構造により、抗生物質の結合位置、ならびに該位置における30Sと抗生物質との相互作用を決定する手段が提供される。このような抗生物質には、パロモマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、パクタマイシンおよびハイグロマイシンBが含まれる。表1の高度な構造を用いて、これらの、他の抗生物質および他のリガンドの30Sに対する結合をモデリングすることができる。このように、別の態様においては、本発明は30S-リガンド(ここで、「リガンド」には抗生物質も含まれるものとする)複合体の解析方法であって、下記の工程:
(i) 30Sをリガンドと共に結晶化するか、またはリガンドを30Sの結晶内に取り込む(soaking)こと、
(ii) X線結晶学的回折データを30S-リガンド複合体の結晶から集めること、および、
(iii) 表1の30Sの3次元構造または少なくとも1つのそのサブドメインを使用して、該30S-リガンドの示差フーリエ電子密度地図を作製すること、および
(iv) 該示差フーリエ電子密度中で該リガンドをモデリングすること、
を含む前記方法である。
【0050】
従って、30S-リガンド複合体を結晶化し、X線回折法(例えばGreerら、J. of Medicinal Chemistry, Vol. 37, (1994), 1035-1054に記載の方法)を用いて解析することが可能であり、また、リガンドを取り込むかまたはリガンドと共に結晶化した30SのX線回折パターンと、複合体化されていない30Sの解析された構造に基づいて、示差フーリエ電子密度地図を算出できる。続いてこれらの地図を用いて、30Sに結合したリガンドの構造、および/または30Sのコンホメーション変化を決定し得る。
【0051】
30Sに結合したリガンドから得られたデータを用いて、例えば、官能基の付加もしくは除去、基の置換、またはその形状の変更によって該リガンドを改善し、改善された候補物を得ることができる。次いで、このような候補物をスクリーニングし、本明細書において記載したように反復工程において複合体中で解析し得る。
【0052】
電子密度地図はCCP4 computing package(Collaborative Computational Project 4。CCP4 1式:Programs for Protein Crystallography, Acta Crystallographica, D50, (1994), 760-763)からのプログラムなどを用いて算出できる。地図の視覚化およびモデル確率のために、「O」(Jonesら、Acta Crystallography, A47, (1991), 110-119)などのプログラムを用いることができる。
【0053】
このような、コンピュータ読取可能な媒体を提供することにより、原子座標データに慣例的にアクセスし、30Sまたはそのサブドメインをモデリングし得る。例えば、RASMOLは公的に入手し得るコンピュータソフトウェアパッケージであり、これにより構造決定および/または合理的な薬物設計のための原子座標データのアクセスおよび解析が可能となる。
【0054】
他方、原子座標データから誘導可能な構造因子データ(例えば、Blundellら、Protein Crystallography, Academic Press, New York, LondonおよびSan Francisco, (1976)を参照されたい)は、例えば示差フーリエ電子密度地図を算出するのに特に有用である。
【0055】
別の態様においては、本発明は、30Sまたは30Sリガンド複合体について構造を作製し、および/または合理的薬物設計を行うこと意図するシステム(特にコンピュータシステム)を提供する。このようなシステムは、(a)30Sもしくは30Sの少なくとも1つのサブドメインの3次元構造を規定する表1の原子座標データ、または(b)表1の原子座標データから誘導可能な30Sの構造因子データ、のいずれかを含むものである。
【0056】
これらの抗生物質の作用に対して耐性を有する変異株は、30Sにおけるタンパク質サブユニットの変異を通して、16S RNAにおける変異もしくは改変(例えば2’ O-メチル化)を通して、または抗生物質の修飾(例えばアセチル化)により生じ得る。いくつかの場合には、変異部位が公知であるか、または同定し得る。このような部位が、例えば一次配列データを通して同定される場合には、本発明により該変異体の構造をモデリングするための手段が提供される。
【0057】
このように、表1の30Sリボソームの構造を提供すること、該構造の1アミノ酸または1ヌクレオチドを変化させて30S変異体を提供すること、および、該30S変異体の構造をモデリングして該変異体の構造を提供すること、を含んでなる方法が提供される。該変異体は、野生型に対して前述の方法、例えばコンピュータ読取可能形態で保存し、リガンド提供のためにモデリングする等の方法で使用し得る。モデリングは、本明細書において提供されたモデルにおける、変更されたアミノ酸の原子と該原子を取り巻く原子との相互作用に基づく、変更されたアミノ酸原子の予測された挙動に基づくものであってもよい。
【0058】
本方法は、30S構造内へ逐次的な変異(例えば2,3,4または5〜10の変異)をもたらすために反復的であってもよい。
【0059】
本発明のこの態様の対象となり得る30Sの領域には、リボソーム機能に関与している30Sの領域として、後述の実施例において同定された領域を含む。
【0060】
さらなる態様においては、本発明は、70Sリボソーム全体の電子密度地図を低分解能または高分解能で解析または解釈し、それにより70Sリボソーム全体の構造を解析するための手段を提供する。
【0061】
特に本発明は、細菌の70Sリボソームの構造を決定するための方法を提供する。該方法は、
(a) 上記種の70Sを結晶化し、結晶を得ること、
(b) 該結晶についてX線結晶解析を行い、X線回折データを得ること、
(c) 表1の構造データを提供すること、および
(d) 分子置換を用いて、該70Sの電子密度地図を算出すること、
を含んでなる。
【0062】
本発明を、後述の実施例、それらに付属の図面および表によって以下に説明する。表1において、各列には、原子番号、元素のタイプ、残基(アミノ酸、ヌクレオチドなど)、分子内の番号(タンパク質についてはN末端からC末端の方向、核酸については5’末端から3’末端の方向)、X,YおよびZ座標、占有率(occupancy)、B因子(Å2)、および30Sのメンバーの識別子(identifier;例えば、「ASn」というフォーマット内にあるサブユニットについては、Aは任意の文字であって各メンバーによって異なり、Sは該サブユニットであり、nは該サブユニットの番号である。16Sの識別子は「A16S」である)。
【0063】
付随の実施例を通して、本発明者らはE. coli 16S RNAについてのナンバリングシステム、ならびに二次構造エレメント[19]に関しては、H1-H45と表記した標準ヘリックス(standard helix)ナンバリングを、図1に示した若干の変更を加えて用いた。E. coliの配列とT. thermophilusの配列との間の最も重要な差異は、より短いH6およびH10であり、またH9およびH33a中の挿入であった。E. coliと比較してのT. thermophilusにおける挿入はいずれも、tRNAについての様式に従い、ヌクレオチド番号の後の挿入文字により座標中に示す。
【0064】
材料と方法
30S の結晶化
30Sの結晶がリボゾームタンパク質S1を完全に欠いていることが観察されたので、結晶化に先立って30Sから選択的にS1を除去するために特別な注意を払った。結晶はTrakhanovらによって報告されている塩およびマグネシウムの条件下の広範なpHで13-17% MPD中で得られた[3]。0.1M カコジル酸塩もしくはMESバッファー中でpH 6.5のときに最も大きくかつ最も再現よく結晶が得られた。結晶は最大の大きさにまで成長するのに4℃で6週間かかった。最大の結晶、それは高分解能のデータを得るために必要とされるものであるが、80-100 80-100 200-300ミクロンに成長した。ポリ(U)誘導性タンパク質合成における再溶解した結晶の活性は、新たに単離した30Sサブユニットの活性と同等であった。
【0065】
データ収集
結晶を26%MPDへ蒸気拡散によって6日間かけて2ステップで移した。全ての結晶(オスミウムヘキサミンもしくはオスミウムペンタミンに浸漬したものを除く)は凍結防止剤中の1mMコバルトヘキサミンをも含有していた。結晶を液体窒素中に沈めることによって急速に冷却し、データの収集は極低温流中60-100 Kで行った。
【0066】
結晶の多数のものをDaresbury LaboratoriesのSRSでビームライン9.6もしくは14.1で、少なくとも40度の間隔をおいた2回の短時間の露光を用いてスクリーニングした。次いでこれらの結晶の回折限界、単位格子サイズおよびモザイク幅を分析した。類似の単位格子サイズを有し適切なモザイク幅を持つ結晶のみをデータ収集に用いた。
【0067】
重原子同型置換体の可能性のあるものについてはBrookhaven National LaboratoryのNSLSでビームラインX25、およびESRF(Grenoble)のBM-14でスクリーニングした。約4.5オングストロームまでのデータがX25から得られた。高分解能データはArgonne National LaboratoryのAPSのSBC ID-19、およびESRFのID14-4で収集した。全ての場合において、重原子同形置換体データは異常散乱差を最大とするためにLIIIエッジの蛍光のピークで収集した。X25およびSBC ID-19では、小さな異常散乱差が正確に測定されるように鏡面の周囲を正確に回転させるためにκゴニオスタットを用いた。各結晶は典型的には3-10度のデータを示した。データはHKL-2000をもちいてまとめ、スケーリングした[10]。
【0068】
構造決定
あらかじめ定めた5.5オングストロームでの位相を異常散乱差フーリエ図を用いて重原子部位の位置を定めるために用いた。最初に、それらの部位はSOLVEプログラム[11]を用いて3.35オングストロームの位相決定のために用い、次いで電子密度図の改良をSHARPで行われた方法を用いて[13]、SOLOMON[12]で行った。翻訳可能なマップを得るためにはこの方法での種々のパラメーターの最適化が必要であった。RNAおよびいくつかのタンパク質をSOLVEマップを用いて構築した。この構造を構築するためにThermus thermophilusの16S RNAの配列[14]を用いた。タンパク質については、既に公表されている配列およびGottingen Thermusゲノム配列プロジェクトから得られた新たな配列を組み合わせて用いた。3.2オングストロームの実験的位相をSHARPを用いて計算し、次いで電子密度図の改良およびDMで3.05オングストロームへの位相の延伸(phase extention)[15]を行って、改良されたマップを得た。改良されたマップによってその構造の配列された部分を全て構築することができた。そのモデルはプログラムOを用いて構築し[16]、CNSプログラム[17]を用いて改良した。最尤改良法(Maximum likelihood refinement)を用い、最初は振幅と実験的位相確率分布を3.35オングストロームの分解能に用い、次いで振幅を3.05オングストロームの分解能に用いた。
【0069】
結果
Thermus thermophilusから得た30Sサブユニットは1522個のヌクレオチドを有する16SリボゾームRNA[14]およびそれに関連した21個のタンパク質からなっており、そのうちの20個については相当するタンパク質が大腸菌中で知られている。タンパク質S21はThermus thermophilus中には存在せず、タンパク質S1は我々の実験では結晶化の前に30sから除去されている。さらに、26個の残基を有するペプチドであるThxがThermus thermophilusの30Sサブユニット中に存在する[18]。実験的に位相を定めたマップでは、RNAとタンパク質の主鎖の密度、個々の塩基(それらはしばしばプリンとピリミジンとを区別するために十分な質を有していた)、およびタンパク質の側鎖で大きな良く整列したものが明瞭に示されていた。これらのマップを16S RNAおよびこれまでに知られていなかったタンパク質S2、S3、S9、S10、S11、S12、S13、S14、およびThxを構築するために用いた。さらに、単離された構造物中では整列していない領域もしくは顕著な変化を示した領域も構築した。このようなものはしばしばそのタンパク質のN末端部およびC末端部の大きな部分からなり、ときには単離の際に広げられたドメイン全体を含んでいる。S16およびS17などの小さなコアと長いループを有するタンパク質は、それらのループは液体NMR構造では通常整列していないため、実質的に再構築しなければならなかった。最後に、第1回目の改良の後に全構造を再構築した。我々の現在のモデルはThermus thermophilus16S RNAのヌクレオチド5-1511(これは大腸菌16S RNAの5-1534に対応する)およびそれに関連した20個のタンパク質の整列している領域の全てからなる。現在得られているモデルは、3.05オングストロームのデータに対して、従来のR因子を0.213、free R因子を0.256、適切な幾何学的配置にして改良したものである。それらのタンパク質については、残基の94%はコアもしくはラマチャンドランプロットの許容領域にあり、3.9%は十分に許容しうる領域、1.8%は非許容領域にあった。
【0070】
16S RNA
16S リボゾームRNAの2次構造には短い1重鎖セグメントによって連結された45個の二重らせんが含まれている。ここで得られた結晶構造においてはこれらのヘリックスの多くはそのヘリックスに隣接するヘリックスと同軸上で積み重ねられている。16S RNA中には同軸上で積み重ねられた13群のヘリックスと23個の重なっていないヘリックスがあり、合計36個のヘリックス状のエレメントがある。ヘリックス-ヘリックスのパッキング(packing)には3種類の異なるタイプがある。ヘリックス状のエレメントの大多数は副溝−副溝の様式で詰め込まれており、そのためしばしば2つのヘリックスのうちの一方は標準的なA型らせん配置からのひずみを必要とされる。内部ループもしくはヘアピンループのアデノシンは、しばしば、パッキングを安定化させている塩基−2' OHおよび2'OH−2'OH間の水素結合の密なネットワークにより、A型二重らせんへの連結を仲介する。頻度はより少ないが、ヘリックス−ヘリックスパッキングは、リン酸の隆起部(ridge)をもう一方のヘリックスの相補的副溝中への挿入させることによって、異なる様式でも生ずる。このパッキング様式は、リン酸の酸素の隆起部と、2'OHおよびグアニン塩基のNH基の層との間の水素結合によって安定化される。これらのグアニンNH基はG-Uペアの配置によって、より一層接近しやすくなり、これによりこの部分をワトソン−クリックペアよりもより副溝の内部へ位置させることとなる。最後に、まれに見られるエンド−オン様式では一方のヘリックスの副溝に対してもう一方のヘリックスを垂直にパッキングするために、ヘリックス間のパッキングにプリン塩基を用いている。ヘリックス−ヘリックスパッキングの3種の様式は全て、さらに二重らせんRNAおよび短い非ヘリックス性RNAセグメントの間の固有の相互作用によって安定化されている。1ないし3ヌクレオチドの小隆起がヘリックス間もしくはヘリックスの主溝中にパッキングされていることがしばしば認められる。
【0071】
5' ドメイン (fpd)
16S RNAのfpdは19個の二重らせんを含んでおり、7群は同軸上で積み重ねられたヘリックス、5個は積み重ねられていないヘリックスで、合計12個の二重ヘリックス状のエレメントが互いに緊密にパッキングされている。その結果得られたものはRNAのくさび型の塊で、そのドメインの頂上に近い二重らせんの単層に向かって次第に細くなっている。他のドメインと同様に、fpdは垂直方向に比べてサブユニットの界面に沿う側がより長くなっている。fpdは3つのサブドメインに分けられ、大まかにはfpdの2次構造の上部、下部、および中央部の3分の1ずつに対応している。これらのサブドメインは50S側から見て本体のそれぞれ上部の左側、中央、および下部の右側を形作っている。上部サブドメインは4個のヘリックス状のエレメント(H16/H17、H4/H15、H1/H3、およびH18)のほぼ平面の配置である。H16/H17の積なりは50S側から見て本体の左側の境界を形成している。この重なりはほぼ120オングストロームの長さであり、H16はそのサブユニットの頭部に接し、H17はサブユニットの底部に達している。双方のヘリックス中の内部ループはS−ターンを含んでおり、それらはH17の場合にはリン酸骨格の位置を調節するために用いられ、H16の場合にはヘリックス−ヘリックス間連結のための拡張された副溝表面を創るために用いられている。H4/H15の重なり部はこのサブユニットの底部を向いており、H15はH17に接して十分にパッキングされている。H1/H3の重なりは31の位置で保存されている隆起によって曲げられており、その結果、近位端が水平となり末端部は頭部に向いている。第4のヘリックス状のエレメントはH18で、これは、積み重ねられていないヘリックスである505-507/524-526(H18.2)および521-522/527-528(H18.1)によって定義される530 シュードノットを収めるためにシャープに曲げられている。H18は上部サブドメインの別の2つの上向きのエレメントであるH1/H3とH16の間に十分にパッキングされている。530 シュードノットは、H18.1-H1界面の中央シュードノットに接してパッキングされている。
【0072】
中央部サブドメインは本体の中央で上部サブドメインと下部サブドメインの間の層を形成する4個のヘリックス状のエレメント(H5、H6、H12/H6A、およびH13/H14)を含んでいる。このサブドメイン内ではパッキングの相互作用は比較的少なく、このドメインのヘリックスのいくつかは片側では上部サブドメインに接し、もう一方は下部ドメインに接してパッキングされている。このサブユニットの底部ではH6の保存されている根部は片側はH8(下部サブドメイン)に、もう一方の側はH15(上部サブドメイン)に接してパッキングされている。同様に、H12/H6Aの重なりはH4(上部サブドメイン)およびH7(下部サブドメイン)に接してパッキングされている。H12/H6AもH5および117ループに接してパッキングされており、これらはそれぞれ上部および下部サブドメインのエレメントに接してパッキングされている。H5はH15に接して十分にパッキングされており、117ループはH11の根部に積み重なっている。H5はまた、H13/H14の重なりに接してリン酸隆起部−副溝の様式でパッキングされている。H13/H14は下部サブドメインの2つの異なる領域と相互作用している。H14の末端のUACGヘアピンループはH8から出ている160 GAAAヘアピンに接してパッキングされているのに対して、H13の末端の大きな保存されているヘアピンはH7と相互作用する。このヘアピンループもまた中央サブドメインのエレメントと多数の相互作用を行っている。
【0073】
下部サブドメインは、本体の下部右側の角でオープンサドル型構造を形成している3個のヘリックス状のエレメントの集まりである。H8/H9の重なりはこのサブユニットの背面から前面へと延びており、保存されている160 GAAAヘアピンは50S サブユニットの方向を向いている。H8/H9の重なりはH7/H10の重なりに接してそれらを結びつけている4方向の接合点で緊密にパッキングされており、ヌクレオチド190および129の位置の挿入部の間のThermus特異的相互作用の場所にパッキングされている。またH7/H10の重なりはこのサブユニットの底部の上部サブドメインのH15およびH17と弱い相互作用を行っている。H11は2つのシャープな曲がりを含んでおり、それによってH11の保存されたヘアピンループがH7に接してパッキングできるようになっている。これらの曲がりの双方とも短距離の副溝−副溝パッキングによる接触によって安定化されている
中央ドメイン (cd)
cdはプラットホームのRNAコンポーネントである。我々が以前に行った5.5オングストロームでの構造[9]に基づくcdの折りたたみは我々の今回の構造と非常に良く一致する。cdは50S側から見てW型に折りたたまれた9個のヘリカルエレメントを含んでいる。RNAの2個の長い1重鎖セグメントである570ループと820ループも重要な構造的エレメントである。このドメインはH21/H22/H23の長い重なりが主要部分を占めており、この重なりはこのドメインのU字型の境界線を形成している。H21はWの左手アームの唯一のコンポーネントであり、一方H22とH23は右手基部を形成している。Wの右手アームはH23BおよびH24Aを含み、それらの保存されたヘアピンループは緊密にパッキングされている。この配置にはH23とH23Bとの間、およびH24とH24Aとの間のシャープな曲がりが必要である。H23/H23Bの曲がりは短距離の副溝−副溝のパッキング相互作用によって安定化されている。H24/H24Aの曲がりは、その曲がりが主溝に向いている点で独特であり、H24の主溝にH24Aリン酸の隆起部を位置させている。この主溝の曲がりは部分的にはその曲がりの主溝中の短距離の塩基−塩基および塩基−骨格相互作用によって、また部分的には曲がったH24/H24A副溝とH23の副溝との間の長距離の相互作用によって安定化されている。中央ドメインの中心部はWのより厚い中央のアームで、それは6個のヘリックス状のエレメント(H20、H19/H25、H24、H26/H26A、H27、およびH23B)ならびに570ループおよび820ループを含んでいる。そのアームの左手側ではH26/H26Aの重なりはH22、H25の基部、および570ループに接して緊密にパッキングされている。H25/H19の重なりはH20および570ループと十分にパッキングされている。Wの中央アームの右手側には、H23AがH22と十分にパッキングされ、820ループはH24上に積み重なり、H24はH27の保存されているGCAAヘアピンループと十分にパッキングされている。このアームの中央ではH23AはH26とリン酸隆起部−副溝の様式でパッキングされ、保存されているH23A GAAGヘアピンループはH20に接してパッキングされている。820ループもH20、H25、および570ループと相互作用する。
【0074】
3' メジャードメイン (tmd)
3'メジャードメイン(tpd)は30Sサブユニットの頭部のRNA成分である。50Sから見て頭部の左手側は、50S側のRNAおよび溶媒側のタンパク質から作られる突出部に向かって次第に細くなっている。他のドメインと同様に、tpdはサブユニット間に垂直の方向には比較的薄い。tpdは15個のヘリックス状のエレメントを含んでおり、fpdおよび中央ドメインでは隣接するヘリックスが広範囲に積み重なっているのに対して、tpdではその大部分は隣接するヘリックスと積み重なっていない。tpdは3つのサブドメインに分けることができ、それらはtpdの2次構造の上部、中央部、および下部の各部分に対応する。上部サブドメインは50S サブユニットからもっとも遠い位置にある頭部にある引き伸ばされた構造であり、もう一方の頭部サブドメインのRNAとは比較的少数のパッキングによる接触しかしていない。下部および中央部サブドメインはより球状で、より密に一緒にパッキングされており、その頭部の前右側および前左側の部分をそれぞれ形作っている。中央部サブドメインは突出部のRNA部分を含んでいる。
【0075】
上部サブドメインはその頭部の溶媒側で十分に分離された構造を形作っている3個のヘリックス状のエレメントを含んでいる。このサブドメインはH35-H36-H38-H39の重なりが主要部分を占めており、この重なりはこの頭部の頂点から底部まで延びている。このサブドメインの他の2個のヘリックス状のエレメントはH37およびH40であり、お互いに十分にパッキングされており、H35-H36-H38-H39の重なりとは緩くパッキングされている。H37-H40のパッキングは、H37中の近接G-Cペアを有するH40中に半保存されているGAAA hpによって仲介されている。
【0076】
より小さな中央部サブドメインは伸長されており、わずかに4個のヘリックス状のエレメントH32、H33/H33A、H33B、およびH34を含有しているにすぎない。これらのうちの2個(H33/H33AおよびH33B)は突出部のY字型のRNAコンポーネントを形成する。H33/H33Aの重なりは50Sから見て左側に向いているが、一方H33Bは右側に向いており、その末端の保存されているGNRAヘアピンループはH32に接してパッキングされており、突出部と下部サブドメインとの間には共有結合による連結がある。H32はH33-H34接合点ならびに下部サブドメインの980ループに接してパッキングされている。H32との小さなパッキング相互作用を例外として、不規則なH34は長距離でやや希薄なパッキング相互作用を行っているのみである。その第1のものは下部サブドメインのH31とのもので、通常は見られないほど弱い副溝−副溝パッキングである。第2の相互作用は上部サブドメイン中のH34/H35/H38接合点の副溝との通常でないエンド−オンパッキング相互作用である。
【0077】
下部サブドメインはtpd RNAのほぼ半分を含み、球状の塊へ密にパッキングされた7個のヘリックス状のエレメント(H28/H29、H30、H31/980ループ、H41、H41A、H42、およびH43)を含んでいる。ヘリックス42および43は折りたたみの中央にほぼ平行に並んでおり、その各々は少なくとも3個の他のヘリックス状のエレメントと相互作用している。ヘリックス42および43は、それらの保存されているヘアピンループの副溝−副溝パッキングによってお互いに連結している。H42/H43ペアの溶媒側にH41はH42およびH43と共にパッキングされ、一方、H41Aの末端GCAAヘアピンループはH42に接してパッキングされている。この配置にはH41とH41Aの間のシャープな曲がりが必要で、それらの副溝はその曲がりの部分でお互いに接してパッキングされている。H43-H41のパッキングはH41内のらせん不十分な、Aに富んだ内部ループによってより拡がっている。中央のH42/H43ペアの50S側にはH29、H30、H31、および980 ループがある。H43はH29と十分にパッキングされており、H30および980ループとの相互作用はより弱いものであるが、一方H42はH30および980ループと十分にパッキングされている。H42-H30パッキングは、それに続くH42の基部の保存されたG-Aペアによって仲介されている。H43-H29パッキングは、H43の基部の保存されたSターンによって仲介されている。1つのSターンはまた、H42のH41とのパッキングをも仲介する。H31はこのサブドメインの周辺のエレメントで、H30のみと十分にパッキングされているが、中央部サブドメインからのH34ともパッキングされている。
【0078】
3' マイナードメイン
3'マイナードメインはサブユニット界面にあるわずか2つのヘリックスからなる。H44はこのサブユニット中で最も長いヘリックスで、頭部の底部から本体の底部へと延びている。これは50Sサブユニットと相互作用するために本体から著しく突き出ている。H45はH44にほぼ垂直で、その保存されたGGAAヘアピンループはH44に接してパッキングされており、大きなサブユニットとの相互作用に用いることができる。
【0079】
30S 中のタンパク質およびそれらの 16S rRNA との相互作用
ここで得られた構造はS1を除く全ての30Sのタンパク質を含んでいる。これらのタンパク質は通常は1つ以上の折りたたまれたドメインからなっており、それらのほぼ半数については単離されたタンパク質について行われた以前の研究で公知である。しかし、ほぼ全てのタンパク質には伸長された末端もしくはループがありそれらはRNAと密に相互作用し、単離された構造中では無秩序であった。大多数のタンパク質がリボソームRNAと密に接触する形をとるが、S4-S5-S8およびS3-S10-S14クラスター中に認められるようなタンパク質−タンパク質相互作用も存在する。
【0080】
中央ドメイン中のタンパク質 (S18 S11 S8 S15)
S18:30S中のS18は残基19〜88からなる。S18は2個のヘリックス、および端と端をつないで積み重ねられているこの構造物の異なる部分由来の2つの短いターンによって形成される第3のへリックス状エレメントからなる。これらのヘリックスは共に1つの疎水性コアを形成する。S18のC末端はS11と相互作用する。
【0081】
S11:S11は新たな構造で、1つのシートに接してパッキングされた2個のヘリックスからなり、多数のリボソームタンパク質に見られるタイプの折りたたみ構造である。そのシートは690 ループ(H23)の副溝に接してパッキングされており、S18のC末端の伸長および790 ループ(H24)と相互作用しているC末端の伸長を有している。従ってS11はプラットホームの折りたたみを、そのプラットホームの先端に近いH23およびH24の双方と結合することによって安定化している。
【0082】
S8:S8はH20/H21/H22の3方向接合点の近傍に結合し、H21およびH25と広範な相互作用を行う。これらの相互作用の分子的詳細が判明した。特に、S8由来の2つのループ(87〜92および112〜118)は隆起した塩基641〜642(これらはS8の高アフィニティー結合に必要とされることが知られている[20、21])の周囲を包み込む。このタンパク質のN末端も825ステム(H25)の副溝に接してパッキングされており、それにより中央ドメインの折りたたみを助けている。S8の残基K55およびRNAの残基653は、架橋から予測されたとおり[22]お互いに隣接している。Thermus S8中のループ69〜76の伸長は、対称的に結合する分子由来のS2に接してパッキングされている。
【0083】
S15:S15は3方向接合点の近傍のH20とH22の間に結合する。
5' ドメイン結合タンパク質 S17 S16 、および S20
S17:S17はもともとは5'ドメイン結合タンパク質の役割のみであると考えられていたが、S17はまたH20/H21/H22の3方向接合点の近傍にも結合する。S17のコアはNMRの結果から、長い伸長された複数のループを持つOB折りたたみを有するβ−バレルであることが知られている[23]。これらのループは溶液中では無秩序であるが、30S中のRNAと結合する。Thermusでは、RNA結合ヘリックスとして組織化されている、S17への長いC末端の伸長が存在する。このタンパク質のコアとC末端ヘリックスはH11と広範に接触し、また、H7とも接触する。C末端ヘリックスはまた、中央ドメインのH21とも接触する。2つの長いループ、ループ1(26〜36)およびループ2(60〜71)は整列しており、予測したとおり、RNAの本質的に異なるドメインと正確に相互作用する。ループ1はネアミン耐性部位を有しており、これはH21とH11の基部の高度に不規則な構造との間に挿入されている。ループ1の最先端部分はまた、16S RNAの560ループに接触している。ループ2はアッセンブリーにおいて欠陥の生じる変異体部位を含んでおり、これはH7とH11のスティッチングに関与している。このようにS17は、5'ドメインのH7、H11、および560 ループ、ならびに中央ドメインのH21と相互作用する。
【0084】
S16:S16は小さいタンパク質であるため、5'ドメイン全体にわたって広範なフットプリントを有している。全残基(1〜88)は電子密度図で見ることができ、NMRで得られた構造[24]をガイドとして再構築した。このタンパク質は2つの伸長されたループを有するN末端シート、およびC末端の2つの短いヘリックスからなっている。16S RNAとの広範な接触状況は全て明らかになっている。そのβシートはH21の608/620内部ループに片側が入り、もう一方の側がH4の副溝に入った形でその間にパッキングされている。このシートから伸長している2つのループは双方ともRNAと相互作用する。ループ1はH4の主溝中のリン酸と相互作用するのに対して、ループ2の残基39〜43はH17の453の近傍の内部ループの周囲のリン酸骨格と接触する。第1のヘリックス(53〜61)もこの内部ループの主溝を横切って伸長しており、一方第2のヘリックスのC末端はそのヘリックスから出ているターンと共にH17の副溝の中に向かっている。また、5'ドメインの110ループとの相互作用もある。最後に、伸長されたC末端はH17の先端の副溝を横切っている。
【0085】
S20:ここで得られたS20の高分解能の構造ではN末端の長いヘリックスがH6の基部およびヘリックス44の先端と接触し、多数の保存されている塩基性残基がリン酸と塩橋を形作っていることを示している。S20のヘリックス2および3はH9の副溝と相互作用し、ヘリックス3もH11の先端(263)と相互作用する。最後に、このタンパク質のC末端の最端部は伸長されてH9の副溝に沿い、Thermusではヌクレオチド11個分長い。このように、S20はこのサブユニットの底部近傍にいくつかのヘリックスを一緒に持ち込んでいる。
【0086】
機能中心近傍のタンパク質
S4、S5、およびS12はリボソームの「機能中心」の近傍に集まっており、いくつかの重要な変異の部位を含んでいる。
【0087】
S4:単離されたS4の構造では[25、26]、N末端ドメインは結晶化の前に開裂して除かれている。このN末端領域は、4個のシステインで配位されている1個の金属イオン(おそらく亜鉛)を有する密に折りたたまれたドメインとして組織化されている。このドメインはこのタンパク質の本体に接してパッキングされている。S4のN末端が高度に保存されているのに対して、システインそれ自体は保存されていない。従って、「ジンクフィンガー」の形成は折りたたみに必須なものと言うよりはむしろ安定性を高めるためであろうと考えられる。リンカー残基46〜52はN末端ドメインをこのタンパク質の残りの部分と連結している。S4の全ドメインがRNAと密に接触している。特に、S4は、5'ドメイン中でH3、H4、H16、H17、およびH18が合している5方向接合点と広範に接触している。
【0088】
N末端ドメインは420ステムループ(H16)に接してパッキングされている。大部分がへリックス状のドメインIは、H3およびH18の基部の507隆起が合しているRNAの複雑な領域に接してパッキングされている。S4の残りのドメインはH16の基部の副溝と広範に接触している。さらに、そのドメインはまたH21の先端と接触しており、H21自体はH4に接してパッキングされている。この位置関係はS4の16S RNAへの結合に関する多くの生化学的データと一致している。
【0089】
S4のC末端はS5と広範な界面を形作っている。ram表現型を与えるS4およびS5における公知の変異の多くはこの領域に位置している[27、28]。この界面はいくつかの高度に保存された塩橋を含み、変異のうちのいくつかはこれらの相互作用のうちの1つ以上を破壊する。
【0090】
S5:ここで得られたS5の構造図は、S5の残基14〜28由来のループは、単離された構造ではそのタンパク質の本体の上に折りたたまれて戻っているが、30S中では十分に伸長したβヘアピンであることを示している。また、S5のC末端(単離された構造においては無秩序である)は、主としてへリックス状で、多数の異なる鎖で形成されているS8の複雑な表面に接してパッキングされている。
【0091】
S5は頭部と本体が合するリボソームの領域と密接に相互作用する。頭部では伸長されたH35/H36ヘリックスはH28に接してパッキングされ、それは本体を頭部とつないでいる30Sのネックを形成している。H36の先端はH26a、H2、および本体の中央シュードノット(central pseudoknot)と接触している。タンパク質S5はこの領域全体にわたって接触しており、それによって頭部の本体に対するコンホメーションを安定化している。
【0092】
S5のC末端シートはH1の主溝および中央シュードノットと広範に相互作用している。N末端ドメインはH36の主溝と結合しており、βヘアピンの基部も結合している。そのヘアピンの先端はH28中のリン酸骨格と相互作用し、またH34に非常に近接している。ヌクレオチド560はK121と非常に近接しており、これは架橋データと一致している。
【0093】
RNAとの広範な相互作用の大部分は主溝またはリン酸骨格を介している。
【0094】
S12:S12はその構造および位置の双方とも普通ではない。S12は30Sのタンパク質の中で、サブユニットの界面側にあるという点でユニークである。その中央のコアはOB折りたたみを有するβバレルからなっており、これはその他の例えばS17に見られる特徴である。このコアはH18、530ステムループ(H18の先端部にある)、H3、および解読部位に近接するH44の一部に共に結合している。普通でない特徴の1つは、このコアをこのタンパク質のN末端の短いヘリックスと結び付けている長い伸長部分である。この伸長部分は560ループとH12の間に片側が入り込み、もう一方の側はH11に入り込み、30Sの別の側のS8およびS17の双方と接触している。
【0095】
S12はまた、RNAの1492〜1493の近くにある解読部位の近傍の唯一のタンパク質である。この部位は機能的に興味深い多数の変異を有する。
【0096】
頭部タンパク質 S7 および S9
S7:タンパク質S7はその単離状態での構造は既に知られており、頭部のアセンブリーに極めて重要であることが知られている[29]。我々の30Sの構造では非常に基本的なN末端を含め、配列全体が可視化されている。S7は、頭部のコーナーにある2つの複数のステムの接合点を取り囲むtpdの小さいが複雑な領域に結合している。相互作用する表面の大部分はH43の基部にあるSターンに緊密にドッキングされているH29からなる。このドッキングには1346の位置の緊密なターンを必要とし、それはおそらくS7の結合によって安定化されている。S7はまたH28とも相互作用するので、その相互作用の主たる界面は、H28/H29/H43の3方向接合点の周囲の3つのヘリックス全てを取り囲んでいる。H29のH43への非常に緊密なドッキングは非常に高密度の負電荷を有する小領域を生じさせ、これに非常に高密度の正電荷を有するS7の表面(主としてS7ヘリックス1および4)が結合している。
【0097】
第2に重要な相互作用表面は、S7が結合する第2の複数のステムの接合点であるH29/H30/H41/H42接合点上に中心が置かれている。この接合点では、H30およびH42の基部はそれらの間の緊密なターンにより、共に緊密にパッキングされている。ヘリックス41と42の間のSターンはH41とH42のパッキングを介在するが、それら自体も間に緊密なターンを有している。H41もまたH43に接して非常に緊密にパッキングされている。S7はH41のリン酸骨格に接触して、そのH43とのパッキングを安定化し、H29/H30/H41/H42接合点中において緊密な湾曲が生じている1240と1298の周囲の残基と接触している。U1240との接触は特に密である:非常に広く保存されている隆起であるU1240は、S7の35ループと115ループの間の保存されている疎水性ポケット中に深く埋め込まれている。
【0098】
βヘアピンは16S RNAと緊密に会合してはいないが、おそらくはE部位tRNAの副溝中に緊密にフィットしているのであろう。この構造はS7のリボソームRNAへの結合のモデル[30]とおおよそ一致しているが、H43の位置を含めて顕著な相異もある。
【0099】
S9:S9は5本の鎖のシートに接してパッキングされている2つのヘリックスからなるコンパクトなRNA結合ドメインを含んでおり、第3の短いヘリックスはこのドメインのC末端側にある。このドメインに由来し、頭部RNAのエレメント中へ入り込む25個の残基からなる長いC末端テイルが存在する。またS9はS7と小さな疎水性パッチを介して相互作用する。
【0100】
S9のシートはH38およびH39と広範な相互作用を行う。またS9のシートはH41の1250内部ループと相互作用する2つのループを有している。短いC末端のヘリックスはH40中の1177〜1180と相互作用する。
【0101】
長いC末端の伸長部は、片側はH29-H43接合点に、もう一方の側はH38-H34接合点の間に入り込んでH31の部分に接触している。
【0102】
S3 S10 S14 クラスター
これらの3種のタンパク質は頭部の後部左側上に、突出したタンパク質部分としてクラスターを形成する。S3は明らかにその他の2種のタンパク質の上に積み重ねられ、これはアセンブリーの順番と一致している。
【0103】
S14:S14はRNA中の間隙内で結合し、その大部分はS3およびS10で覆われている。S14分子のほぼ全体がRNAと接触し、それにはヘリックスのH31、H32、H34、H38、およびH43が含まれている。架橋している残基はRNA28の近傍にある。
【0104】
S14はCXXC-X12-CXXCモチーフ由来の4個のシステインによって配位されている亜鉛イオンを含んでいる。このモチーフは糖質コルチコイド受容体中の第1のジンクフィンガー中に見られるものと構造的に類似している。亜鉛結合モチーフは、それをとりまく残基の多くは全ての細菌で保存されているにもかかわらず、そのモチーフ自体は細菌の全てにわたって保存されているわけではない。そのことはおそらく他の生物体ではこのタンパク質は疎水性コアを介して折りたたまれていることを示唆している。
【0105】
S10:S10は構造的にS6の折りたたみと非常に類似しており、4本の鎖のシートに接してパッキングされている2個のヘリックスを有する。このシートの鎖のうちの2本はそのシートから伸長している長いβヘアピンによって連結されており、頭部RNA折りたたみのちょうど中心に挿入されている。そのβヘアピンは、ヘリックスH31、H34、およびH41を含む、RNAとの接触の大部分を担っている。このシートの2本の鎖はH39の狭い副溝中にパッキングされ、その溝の両側の骨格残基と接触している。
【0106】
S3:S3は2つのドメインを含んでおり、その双方とも4本の鎖のシートに接してパッキングされている2本のヘリックスを含んでおり、そのことはいくつかの他のリボソームタンパク質と類似している。それらのドメインに加えて、N末端テイルが存在する(それらの全ては可視化されている)。C末端の30個の残基はあまり保存されておらず、本構造中では無秩序である。
【0107】
RNAとの接触はN末端テイルおよびC末端ドメインによって行われている。N末端テイルはH34の主溝中にフィットしている。C末端ドメインにあるシートもH34に接してパッキングされている。
【0108】
N末端ドメインはもしあったとしてもわずかな接触をRNAと行っているにすぎないが、このタンパク質のS10およびS14との接触に主として関わっている。
【0109】
S13 および S19
S13およびS19は頭部の界面側の最も「頂部」で緩い2量体を形成し、50Sの上方、かつ頭部RNAのいかなるものよりも50Sに近接して伸長している。このフレキシブルな領域内でのこれらの位置関係にも関わらず、これらは電子密度図中で比較的よく示されている。S13のC末端テイル(頭部中に達しS9の末端テイルに触れそうなところにある)を除いては、これらのタンパク質はどれもこの小さなサブユニット中の他のタンパク質のいずれとも接触しない。S12、S11、およびS15とともに、S13およびS19はサブユニット間接触の領域をとりまく数少ないタンパク質である。
【0110】
S13:S13の125個の残基の全てが本構造図中で見ることができる。N末端(約60残基)は3個の小さなヘリックスを含んでいるコンパクトなドメインを形成している。このドメインのうちで、小さな1つのループのみがRNAと接触しており、そのドメインは、その高度に伸長されたC末端領域によってのみこのサブユニットにくっついているものと思われる。この領域は、30S頭部の頂部に沿ってS19へと絡みついて伸びる長く直線的なαヘリックスで開始されている。S13は主として1300ループおよびH42と相互作用する。このポイントでこのポリペプチド鎖は約90度で曲がり、このタンパク質の残りの部分はその大部分がいかなる2次構造も持っていない。この伸長された領域はH41の周囲をカーブして頭部中に入り、そこで球状のN末端ドメインから約50〜60Åの位置で、RNA中に埋め込まれている。
【0111】
S19:S19は92個の残基からなる。単離したS19のNMRによる構造では[31]、3本の鎖のシートに接してパッキングされている1つのヘリックスを含んでいる単一の球状ドメインを示し、そのドメイン中に残基9〜78が整列している。ここで得られた30Sの構造では電子密度図で残基2〜81を見ることができる。このタンパク質のC末端は界面側を向いており、70S複合体中では整列された形となりうる。S13と同様に、S19の球状ドメインの大部分はRNAから十分離れているが、S19ではN末端およびC末端の双方が球状ドメインに向かって伸長し、ならびにループ68〜73およびループ34〜39はH42と接触している。C末端の伸長はS13と同様に、RNAの周囲を曲がって、H31と接触するが、一方N末端はいくらか距離の離れたH42へ達する。このように、S19は30Sの頭部の一部分にまたがっている。48の位置で架橋されたS13およびS19中の残基はここで得られた構造ではお互いに近接している。
【0112】
S2
Thermus S2は256個の残基からなり、そのうち7〜235は我々の構造図で見ることができる。このタンパク質は5本の鎖のパラレルシートおよびそれらをつないでいる4個のヘリックスからなる約200残基の大きな中央ドメインからなっている。小さなコイル-コイルモチーフを形成している2個のヘリックスはこのドメインから突き出している。このタンパク質は30Sの背面の、頭部とその粒子の残りの部分との間の界面に位置している。S2は主に「頭部」タンパク質とみなされているが、我々の構造図では中央ドメインとも接触している。
【0113】
Thx
この小さな26残基のペプチドはThermusのリボソームから単離されて特性評価された[18]。Thxは頭部の最頂部の多数の異なるエレメントによって形成される空洞を満たしている。ここで得られた電子密度図で残基1〜24は見ることができ、そのうち8〜14は、伸長された末端に近接した短いヘリックスを形成する。ThxはH42、H41の先端、およびH41の基部によって囲まれているが、一方その空洞の底部はH43の主溝によって形成されている。このタンパク質は高度に塩基性で、これらの残基と近傍のRNAのリン酸との間に広範な塩橋が存在する。このようにThxは、頭部の頂部近傍に寄り集まった多数の異なるRNAエレメントを安定化する。
【0114】
30S リボソームサブユニットの構造に基づく機能の洞察
遺伝暗号の翻訳中、30Sリボソームサブユニットは、tRNAのアンチコドンとmRNAのコドンとの塩基対合のための枠組み構造を提供し、そして解読と呼ばれる過程において同族tRNAと非同族tRNAとを識別して翻訳の忠実度を保証する。トランスロケーション中、リボソームは、mRNAおよび結合tRNAに対して正確に1コドン分を移動しなければならない。解読およびトランスロケーションのいずれにおいても、リボソーム中で正確な立体構造変化を生じる「スイッチ」が関与している。30Sサブユニットの原子分解能の構造により、mRNAおよびtRNAの結合部位の環境を分子用語を用いて解釈することができる。正確度に関与する機能的スイッチの十分に特性付けされた一例において、そのエレメントの空間的配置を決定することが可能であり、従って、その構築状態を解明することも可能である。また、構造が分かると、30S中の他の可能性のあるスイッチエレメントが示唆されると共に、生じる可能性のある動作の種類が明らかになる。
【0115】
リボソームには、対応するtRNA基質に因んでそれぞれA(アミノアシル)、P(ペプチジル)、およびE(出口)と呼ばれる3つのtRNA結合部位が含まれる。各部位は2部構成であり、一部分が30Sリボソームサブユニット上に、一部分が50Sサブユニット上に位置する。A部位およびP部位のtRNAは、それらのアミノアシル受容体末端で50Sサブユニットに結合し、そして隣接mRNAコドンに塩基対合するそれらのアンチコドン末端で30Sサブユニットに結合する。E部位tRNAも同じような配向で結合されるが、E部位tRNAがE部位mRNAコドンと塩基対合するかは分かっていない。30Sサブユニットはまた、A、P、およびEコドンの上流または下流でmRNAと結合する。翻訳中、進入したアミノアシルtRNAは、EF-TuおよびGTPとの三元複合体としてA部位に送られる。同族tRNAと非同族tRNAとの識別は、A部位で起こる。EF-TuによるGTP加水分解の後、A部位において第二の「校正用」識別ステップが更に存在すると考えられる。このステップは、同族tRNAと近同族tRNAとを識別するのに必要である。30SのP部位は、読み枠を保持するために、tRNAに対してかなり高い親和性を有する。
【0116】
十分に特性付けされた立体構造スイッチの一つであるヘリックス27正確度スイッチが30Sサブユニットに存在する[32]。このスイッチはA部位tRNAの初期選択と校正との間で生じる大規模な立体構造変化の一部分であるかまたはこのスイッチはトランスロケーションの一役を担っている可能性があることが、遺伝学的および生化学的データにより支持される。
【0117】
最近まで、30Sサブユニットの活性部位のRNA成分を規定する高分解能の遺伝学的および生化学的データと、入手可能なリボソームの比較的低分解能の三次元構造との間に大きな相違が生じていた。本発明は、この相違を検討する。現在では、先の生化学的データおよび他のデータと組み合わせると、30S活性部位の詳細な構造を同定することが可能である。更に、tRNAおよびmRNAの座標を既知の7.8Åの70S構造と重ね合わせることによって、30S活性部位とtRNA/mRNAリガンドとの相互作用の多くを推測することが可能である。
【0118】
現在では、本発明者らの手元にある30Sサブユニットの完全な高分解能構造を用いることにより、A、P、およびE部位のtRNAのアンチコドンステム-ループ(ASL)および関連するmRNAと相互作用する30Sサブユニットのエレメントを残基レベルで同定することが可能である。
【0119】
同族tRNAリガンドの不在下で測定された構造中のA、P、およびE部位の正確な境界を不偏的に同定することは、通常、厄介な問題であろう。その場合、30S構造中のP部位は、隣接分子の「スパー(spur)」(H6)の末端に由来する残基75〜95(大腸菌の番号付け体系)に対応するRNAのステム-ループで満たされる。(これ以降では、「スパー」という用語は、同じサブユニットの底部のスパーではなく、P部位にドッキングされる対称関係のスパーを意味するものとする。) スパーは、様々な判定基準からP部位tRNAに似ていると思われる。アンチコドンステム-ループ(ASL)との30S相互作用の程度は、親和性の測定[33]およびヒドロキシルラジカルフットプリンティング[34]により決定されたものと非常によく一致する。第二に、スパーステム-ループの立体構造は、正規のtRNA ASL立体構造により良く類似するように変形される[35, 36]。すなわち、スパーヘアピンループが近似的にtRNA ASLの立体構造をとり、Uターンして積み重ねられたアンチコドンに匹敵しうるように、U-A塩基対が破壊される。スパーが結合P部位tRNA ASLの模倣体であることを示唆するもう一つの点は、30Sとスパーとの間に12個の水素結合の存在が示唆されることであり、1個だけはtRNAアンチコドンステム中の配列保存の欠如に応じて配列特異的であると思われる。最後に、スパーと16S RNAとの密な接触は、P部位tRNAに対する化学的保護データ[37]およびtRNAと16S RNAとの34-C1400 UV誘起架橋[38]と全体的に一致する(類似の残基が30S結晶構造中に積み重ねられる)。
【0120】
スパーがP部位tRNA ASLに似ていることを示唆する更にもう一つの点は、その「偽アンチコドン」がmRNAの模倣体であるヌクレオチドのトリプレットに塩基対合することである。また、第四のヌクレオチドは、E部位において偽アンチコドンの5’側に見られる。これらの偽コドン塩基は明らかにピリミジンであり、そして塩基対合の幾何学的配置からUCUであると思われる。偽アンチコドンがUUUであることから、その塩基対合の幾何学的配置はU-U、U-C、およびU-Uである。この「偽メッセージ」の起源は不明確であるが、恐らく、5’ U1542C1543U1544 3’で終わる16S RNAの3’末端に由来するものであろう。本発明者らの16Sモデルの最終ヌクレオチドはC1533であるので、結果として、7個の無秩序ヌクレオチドがC1533とU1541との間の25Åの間隙にまたがっているであろう。このことは、明らかに、立体化学的に実現可能である。このほか、結晶化前または結晶化中に16S RNAの3’末端がC1533とU1541との間のどこかで開裂された可能性もある。また、mRNAおよびP部位tRNAの機能的模倣体が存在することから、これらの結晶が比較的良好な回折を示すのはなぜかが説明される。すなわち、P部位tRNAは、30Sの頭部および胴部の両方に広範にわたって接触するので、この粒子を単一の立体構造に固定するのに役立っている。
【0121】
偽メッセージおよびスパーがmRNAおよびtRNAのASLにどれほどよく似ているかを調べるために、本発明者らは、結合したmRNAおよびtRNAを有する70Sリボソームの分解能7.8Åの構造を使用した[39]。その構造において、16S RNAの二つのエレメント、すなわち、H27およびH44が同定された。模倣体としてのスパーに対する本発明者らの解釈に偏りを生じる可能性を回避するために、H27およびH44だけをアライメントに用いて70S構造を本発明者らの30S構造上に重ね合わせた。比較的低分解能の70S構造を使用したにもかかわらず、これら二つのエレメントを最小二乗法で重ね合わせたところ、リン酸はわずか2.3Åのr.m.s.d.で存在していた。このようにして70Sエレメントを本発明者らの30S構造上に重ね合わせると、確かに、予想した通り、P部位tRNAは30Sスパー上によく重なり合い、そして30S偽メッセージはP部位コドンに対応することが判明した。特に、スパーステム-ループの配向は70S P部位ASLと非常に類似しており、そしてこのように重ね合わせた場合、70S A部位およびE部位tRNAと本発明者らの30Sサブユニットとの間に有意な不一致は存在しない。しかしながら、スパーおよび偽メッセージは完全な模倣体ではありえないことは明らかである。なぜなら、偽アンチコドン-コドンヘリックスは三つのピリミジン-ピリミジン塩基対から成り立っており、この塩基対はワトソン・クリック対よりも約2Å狭いからである。従って、スパーおよびその偽メッセージはそれぞれP部位tRNAおよびP部位コドンの良好ではあるが完全ではない模倣体であり、そしてスパー模倣体モデルにより、30Sに結合するP部位tRNAの特性の多くが説明されるが、恐らく、すべての特性が説明される訳ではないと思われる。更に、変換されたA部位およびP部位tRNAならびにA部位コドンは、30SのA部位およびE部位の範囲をモデリングするための有用な目標物を提供する。
【0122】
P 部位
P部位スパーは、16S RNAの七つの個別領域に接触する。これらの領域のほとんどは、生化学的実験によりP部位結合に関与していることが示唆された。2種のタンパク質もまた、P部位ASLとの結合に関与しているが、これは恐らく驚くべき結果であろう。接触表面のほとんどは、スパーステムの小溝と16S RNAヌクレオチド1338〜1341、1229〜1230との間、ならびにタンパク質S13およびS9のC末端テールとの間に存在する。スパー残基C91、C92、およびG78の小溝(すなわち、2’OH基および塩基)と、G1338〜A1339の小溝表面との間には多数の水素結合が存在する。これらの水素結合のうちの一つだけは、配列特異的であると思われる(G78 N2-A1339 N3)。S9のLys126による接触は、この小溝を小溝パッキング相互作用で安定化するのに役立つと思われる。1338および1339はいずれも、P部位結合に関与していることが既に示唆されている[37]。第二の接触領域は、第一の接触領域にほぼ連続しており、16S 1229〜1230糖-リン酸バックボーンと、スパー残基G77およびG78との間に存在する。この接触領域は、S13のC末端テールによって拡張されており、このことは、スパーと1229〜1230領域とを共に結合させるのに役立つと思われる。他の接触領域は、より一層不明瞭である。相互作用の一つは、C1400上へのU82の積み重なりであり、これによってASL 34-C1400 uv誘起架橋が合理的に説明される[38]。他の相互作用は、A790とスパー残基88〜89とのパッキング相互作用であり、この作用には単一の水素結合が存在する。A790は、いわゆるクラスIII部位である。すなわち、A790は、tRNAまたは50Sサブユニットのいずれかによって保護されている。従って、スパー相互作用から、50SサブユニットまたはP部位ASLのいずれかの結合がA790 N6と1498のリン酸との接触、すなわち、中央ドメインと3’小ドメインとの接触を安定化させると思われる。最後に、偽コドン-偽アンチコドンヘリックスが2〜3Å幅広ければ、ワトソン・クリック対合ヘリックスの場合のように、そのヘリックスはG966の塩基とファンデルワールス接触するであろう。また、G966は、化学修飾実験によりP部位の一部分であることが示唆されており、そして更に、P部位結合にきわめて重要なわずかなグアニンのうちの一つとして同定されている[40]。
【0123】
P部位コドンは、16S RNAの普遍的保存領域中において、ヘリックス44の上側部分の主溝を貫通している。ヌクレオチド-1と+1との間、すなわち、最後のE部位コドンヌクレオチドと最初のP部位コドンヌクレオチドとの間に強固なターンが存在すると思われる。この強固なターンは、P部位結合にきわめて重要であることが既に示唆された残基である保存残基G926のN1/N2基への水素結合によって安定化されている[40]。更なる水素結合は、+1の2’OHとC1498のリン酸との間および+2のリン酸とC1498の2’OHとの間に見られる。また、+2のリン酸はC1498の塩基上に積み重なっている。+3のリン酸は、C1402およびC1403に由来する2個の保存シチジンN4基の水素結合距離内にある。また、+3塩基は、C1400の糖上に積み重なっている。最後に、H44の主溝においてP部位コドンの位置を安定化させるのに役立ちうる、いくつかのマグネシウムイオンが存在する可能性があると思われる。
【0124】
E 部位
E部位は、上記したように、本発明者らの30S構造上に重ね合わされた70S E部位tRNAを取り囲む環境によって規定される。A部位およびP部位とは違って、E部位は、主にタンパク質からなる。タンパク質S7およびS11は、E部位ASLの小溝に結合する小さな界面を有する。S7の高度に保存されたβ-ヘアピンは、この表面をアンチコドンの底部近傍まで拡張させており、S7 β-ヘアピンは、E部位アンチコドンからE部位コドンを解離させるのに役立つ可能性がある。E部位のRNA部分は、E部位ASLと弱い相互作用をしているにすぎない。16Sヌクレオチド1382および1383は、アンチコドンの残基34と相互作用する可能性がある。保存16S残基693および694の小溝表面は、E部位ASLの37〜39残基の小溝表面と相互作用する可能性がある。
【0125】
A 部位
A部位は、P部位またはE部位よりもいくらか幅広くかつ浅い。これは、恐らく、EF-TuによるGTP加水分解中またはその後、A部位コドン-アンチコドンヘリックスの回転を可能にするためである。A部位のRNA成分には、530ループの一部分、頭部のH34、および3’小ドメイン由来の残基1492〜1493が含まれていると思われる。これらすべては、A部位結合に関与することが以前に示唆されている。
【0126】
ヘリックス 27 スイッチ
種々のtRNAと接触する多くのエレメントは、トランスロケーション中に移動しなければならないことは明らかである。実際に、リボソームは、伸長サイクル中に広範にわたる立体構造変化を経ることが知られており、またこれらの変化は、正確な接触の破壊および形成に関与していると推定される。しかしながら、これらの立体構造変化における正確なスイッチエレメントは、H27中のスイッチを除いて、一般に知られていない。
【0127】
H27は、翻訳中に二者択一的塩基対合構成、すなわち、885〜887を910〜912に対合させる「ram」形態または許容形態、および888〜890を910〜912に対合させる代替「制限」形態をとるとの提案がなされている[32]。ram形態は、リボソームにおいてより安定な形態であると思われる。また、ram形態はH27においてSターン(またはループEモチーフ)の特性を示す。H27中のSターンはまた、70SのtRNA結合構造中にも見られる[39]。制限形態へのスイッチは、H27の二本の鎖の相互のスライドに関与しているであろう。そしてSターンは、H27に対して異なる構造を有する内部ループで置換されるであろう。実際に、3次元低温電子顕微鏡法による2種の形態の分析により、リボソームの顕著な立体構造変化、特に、A部位周辺の変化が明らかとなる[41]。今や、本発明者らは、H27周辺の構造を正確に規定することができ、しかも従来の化学修飾データ[32]を用いて関与する動作の種類を提案することができる。
【0128】
888周辺にあるH27中のSターンは、H44中の1489のすぐ隣にあり、そしてH27は、解読部位のすぐ下にあるH44の小溝にパッキングされている。H27の先端はH11に近接し、一方、本発明者らの立体構造において910に塩基対合している885は、H1および570ループの両方の近傍にある。最後に、914は、H1および530ループ中の526の両方の近傍にある。従って、H27は、解読部位および530ループを含む領域のまさしく中心にある。それゆえ、H27の立体構造の変化がこれらのエレメントに影響を及ぼすことは驚くべきことではない。
【0129】
「制限」状態において、より利用可能性のある多数のエレメントが、本発明の構造中に保護されていると思われる。従って、例えば、524〜526は、本発明の場合、530偽ノット(pseudoknot)中の507〜505と塩基対合している。このことから、530偽ノットは、制限状態で破壊されている可能性があると推測される。同様に、1053および1197は、本発明の構造中で塩基対合しているが、それらは、Sターンと類似したH34の変形領域の一部分であり、類似のスイッチが代替状態でH34中に存在している可能性があると予想することは難しいことではない。従って、本発明者らの構造と組み合わせたデータによって、頭部のH34および肩部の530ループは、これらの二つの状態間を移行し、この際、H34は恐らく代替形態をとり、そして530偽ノットは破壊されると推定される。この背景において、H34および530ループがいずれもtRNA結合に関与していることが示唆されたことに注目することは興味深いことである。
【0130】
化学保護データの他の部分、特に、ram状態の増大される利用可能性を示唆することを支持する部分を合理的に説明することはそれほど容易ではない。なぜなら、それらの部分には、本発明者らの構造中の保護塩基が含まれているからである。
【0131】
30S構造により、本発明者らは、tRNAおよびmRNAの結合部位の詳細を明確にすることが可能となっただけでなく、H27スイッチ周辺の構造を初めて詳細に調べることができた。明らかに、H27は、翻訳中に生じる主要な立体構造変化の一構成要素にすぎない。高分解能30S構造を分析することにより、本発明者らは、他の潜在的スイッチエレメントを同定することができるはずである。そして次にそれを遺伝学的に試験することが可能である。
【0132】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、30Sリボソームの2次構造を示す。
【図2】図2は、表1Aおよび1B、ならびに表2を示す。

Claims (11)

  1. a=401.375Å、b=401.375Å、c=175.887Åの単位格子サイズをもつ正方晶系の空間群P41212を有する30Sサブユニットの結晶。
  2. a=401.4Å、b=401.4Å、c=175.9Åの単位格子サイズをもつ正方晶系の空間群P41212を有する30Sサブユニットの結晶。
  3. 約3Åより優れた(数値的には3Åより小さい)分解能を有する30Sリボソームサブユニットの結晶。
  4. 表1の座標により規定される構造を有する30Sリボソームサブユニットの結晶。
  5. コンピュータに基づく合理的な薬物設計の方法であって、
    表1の座標により規定される30Sリボソームサブユニットの構造を提供すること;
    候補モジュレーター分子の構造を提供すること;
    表1の30Sの構造に対して候補物の構造を適合させること;
    を含む、上記方法。
  6. コンピュータに基づく30Sリボソームの潜在的インヒビターの同定方法であって、
    a. 30Sまたは30Sの少なくとも1つのサブドメインの3次元構造を利用して、少なくとも1つの活性部位を特性決定すること、ただし、該3次元構造は表1の原子座標データにより規定されること;
    b. 該活性部位との相互作用について化合物を設計するかまたは選択することにより、潜在的インヒビターを同定すること;
    を含む、上記方法。
  7. さらに、
    c. 潜在的インヒビターを取得または合成すること;
    d. 該潜在的インヒビターを30Sと接触させ、該インヒビターの30Sと相互作用する能力を測定すること;
    を含む、請求項6記載の方法。
  8. さらに、
    c. 潜在的リガンドを取得または合成すること;
    d. 30Sと該潜在的リガンドの複合体を形成すること;
    e. 該複合体をX線結晶解析により解析し、該潜在的リガンドの30Sと相互作用する能力を測定すること;
    を含む、請求項6記載の方法。
  9. T. thermophilus以外の種に由来する細菌の30Sの構造を決定する方法であって、
    (a) 上記種の30Sを結晶化し、結晶を得ること;
    (b) 該結晶についてX線結晶解析を行い、X線回折データを得ること;
    (c) 表1の構造データを提供すること;
    (d) 分子置換を用いて、30Sの電子密度地図を算出すること;
    を含む、上記方法。
  10. 30Sリボソームもしくは潜在的モジュレーターと30Sリボソームの複合体について構造を作製し、および/または合理的薬物設計を行うためのコンピュータシステムであって、(a)30Sもしくは30Sの少なくとも1つのサブドメインの3次元構造を規定する表1の原子座標データ、または、(b)表1の原子座標データから誘導可能な30Sの構造因子データ、のいずれかを含む上記システム。
  11. コンピュータ読取可能な媒体であって、(a) 該媒体に記録された、30Sリボソーム、30Sリボソームの少なくとも1つの原子または少なくとも1つのサブドメインの3次元構造を規定する表1の原子座標データ、または、(b) 該媒体に記録された、表1の原子座標データから誘導可能な30Sの構造因子データ、のいずれかを含む上記媒体。
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