JP2005188011A - 嵩低減抑制剤、印刷用紙の製造方法、および印刷用紙 - Google Patents

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木村  亨
Yasuji Nukazuka
保二 糠塚
Masataka Ashikawa
正高 芦川
Shunpei Shibahara
俊平 芝原
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Abstract

【課題】嵩高さと高い印刷適性とを兼ね備えた、嵩高性高品質印刷用紙を得ること。
【解決手段】紙料中のパルプ固形分に対する澱粉固形分濃度が0.5〜15質量%の範囲となるように紙料中に含有させる、未糊化澱粉の水性スラリーからなることを特徴とする印刷用紙用嵩低減抑制剤。前記嵩低減抑制剤を紙料に添加し、次いで、前記紙料を脱水工程、プレス工程、および乾燥工程に付す、印刷用紙の製造方法。前記製造方法で製造された印刷用紙。
【選択図】なし

Description

本発明は、嵩高で高品質な、すなわち高い印刷適性を有する印刷用紙を製造するための嵩低減抑制剤、前記嵩低減抑制剤を用いる印刷用紙の製造方法、前記製造方法によって製造された嵩高性高品質印刷用紙に関する。
近年、パルプ価格の高騰、資源の有効利用や環境保護の必要性から、古紙の再利用が推進されており、またそれと並行してパルプの使用量をできるだけ抑えるために、紙製品の坪量を下げる努力がなされている。しかし、古紙リサイクルが推進されることで、製紙原料に配合される繊維は微細化する方向にあり、紙の厚さ(嵩高さ)が出難く、これが原因で紙の品質を低下させてしまうという問題があった。
このような状況下、嵩高で高品質な紙を得るために、紙の坪量を増やす、加斥という操作が行われている。しかし、紙の坪量を増やすことは、使用するパルプ量が多くなるため、環境保護の観点からは好ましくない。さらに、雑誌やムック本などの用途において「厚みは落とさずに軽量化したい」、「少ないページ数でもしっかりした厚みを出したい」などのニーズも存在し、印刷適性が良く、軽くてボリューム感のある高品質な紙が求められている。このような背景から、古紙配合率の高い原料或いはパルプ配合量の少ない原料で、嵩高で高品質な印刷用紙を製造することができる方法が求められていた。
嵩高な紙を製造する方法としては、抄紙工程におけるプレス圧などの外部圧力を低下させる物理的な方法、パルプ繊維を物理的に毛羽立たせパルプの嵩高性を増す方法、パルプに架橋剤を反応させる方法(特許文献1、2)、嵩高剤、例えば多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物及びそのエステル化合物にオキシアルキレン基を付加した化合物を用いた嵩高剤(特許文献3、4)、カチオン性化合物、アミン、アミン、アンモニウム塩及び両性化合物を用いた嵩高剤(特許文献5)、あるいは各種非イオン性界面活性剤及びそれとアニオン性界面活性剤を含有する嵩高剤(特許文献6〜8)を製紙原料に添加する方法などが挙げられる。それらの方法は、操業性の悪化やエネルギーコストのアップ、紙のリサイクルが困難になる、などのデメリットを生じるものもあるが、紙の嵩を上げるという点では一定の効果を示す方法と言える。しかしながら、紙の嵩を増加させることは紙の密度を低下させることであるため、いずれの方法においても紙力の低下、特に印刷用紙においては表面強度の低下が避けられない問題となり、嵩高で、かつ高い表面強度(印刷適性)を有する印刷用紙を製造することは困難であった。
一方、印刷用紙の表面強度を向上させる方法としては、表面サイズ法が広く用いられている。しかし、澱粉糊液などのサイズ液を紙の表面に塗布する過程において、紙に圧力が加わる上に、サイズ液の塗布量が増すほど紙の密度は上昇する傾向にあるため、嵩高性を維持することは困難となる。従って、サイズ液を塗布して嵩を高いレベルに維持することは、現在の塗布技術では困難である。また表面サイズ法では、嵩を低下させるだけでなく、サイズプレスなどの塗布装置が必要となるというデメリットもある。
紙の表面強度を向上させるその他の方法としては、各種水溶性高分子からなる紙力増強剤を紙料に添加する方法がある。紙力増強剤としては、例えば、カチオン性または両性の各種澱粉糊液、或いはカチオン変性ポリアクリルアミド(PAM)、カチオン変性ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)といった合成高分子などが用いられている。これら紙力増強剤は、紙料に添加されるとパルプ繊維に吸着し繊維同士の吸着を強め、さらにプレス、乾燥工程においてより強固な繊維間結合を形成し、シートを密な構造にすることで紙力を向上させる。つまり、これらの紙力増強剤は、紙の密度を高めることで紙力を向上させる作用をもつため、結果的には紙の嵩を低下させる方向に作用する。また、紙力増強剤を紙料へ内添すること(内添法)で紙の表面強度を向上させるためには、より多くの紙力増強剤を添加する必要があるため、紙の嵩がさらに低下するだけでなく、ろ水性や地合を悪化させるなど、操業面への悪影響も避けられなかった。従ってこれらの紙力増強剤では、紙の嵩を維持した状態で紙力を向上させることは困難であった。さらに、これらの紙力増強剤を、前述の各種嵩高紙の製造方法において使用すると、紙を嵩高にするための各種処理の効果を失わせるだけでなく、エネルギーコストの浪費、薬品原単位上昇といった問題をも招き、製紙業界における環境保全、循環型社会構築の目標とは逆行する結果をもたらすこととなる。
紙料に添加する内添用紙力増強剤として、前述の水溶性高分子とは別に、アニオン澱粉の表面に高分子量カチオンポリマーを吸着させた、いわゆる自己定着性澱粉の水性スラリーを紙力増強剤として使用する技術(特許文献9)があり、中でも低粘度アニオン澱粉粒子の表面に高分子量カチオンポリマーを吸着させた自己定着性澱粉を紙力増強剤として使用することで、効率的な表面強度の向上が可能となる(特許文献10)。この他に、紙の強度を向上させるための技術として、澱粉をカチオンポリマーの存在下に乾式で高温に加熱処理して得たカチオン澱粉をスラリー状態で内添する技術(特許文献11)や、澱粉粒子、カチオンポリマー系凝集剤、及びベントナイトのようなアニオン性無機コロイドを含有している、凝析した澱粉スラリーを内添する技術(特許文献12)などがある。しかし、紙の嵩と強度は相反する特性であり、従来の表面サイズ法や紙力増強剤の内添法では、この2つの特性を両立することは困難であった。
特開平4−185791号公報 特開平4−185792号公報 特開2000−034691号公報 特開平11−350380号公報 特開平11−269799号公報 特開平11−200283号公報 特開平11−200284号公報 特開平11−200285号公報 特開2000−226401号公報 特開2003−049399号公報 特開平9−291103号公報 特表2001−504174号公報
そこで、本発明は、嵩高さと高い印刷適性とを兼ね備えた、嵩高性高品質印刷用紙を得ることを目的とする。特に、本発明は、繊維長が短い古紙の含有率が高い紙料を用いた場合にも、嵩高で高品質な印刷用紙を得ることを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、紙料中のパルプ固形分に対して澱粉固形分濃度が0.5〜15質量%となるように、未糊化澱粉の水性スラリーを嵩低減抑制剤として使用することにより、嵩高で高品質な印刷用紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の上記目的は、以下の手段によって達成される。
[請求項1]紙料中のパルプ固形分に対する澱粉固形分濃度が0.5〜15質量%の範囲となるように紙料中に含有させる、未糊化澱粉の水性スラリーからなることを特徴とする印刷用紙用嵩低減抑制剤。
[請求項2]紙の嵩を維持した状態で表面強度を向上させるために用いられる、請求項1に記載の嵩低減抑制剤。
[請求項3]紙の抄造時に紙料に添加される、請求項1または2に記載の嵩低減抑制剤。
[請求項4]製紙内添用嵩高剤を用いる抄紙系において使用される請求項1〜3のいずれか1項に記載の嵩低減抑制剤。
[請求項5]前記澱粉は、アニオン澱粉の表面に高分子量カチオンポリマーを吸着させた自己定着性澱粉である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の嵩低減抑制剤。
[請求項6]請求項1〜5のいずれか1項に記載の嵩低減抑制剤を紙料に添加し、次いで、前記紙料を脱水工程、プレス工程、および乾燥工程に付すことを特徴とする、印刷用紙の製造方法。
[請求項7]前記紙料は、古紙を20%以上含有する、請求項6に記載の製造方法。
[請求項8]前記紙料は、物理的処理および/または化学的処理を行うことで嵩高性を付与したパルプを含む、請求項6または7に記載の方法。
[請求項9]請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法で製造された印刷用紙。
本発明によれば、嵩高で高品質な印刷用紙を製造することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の嵩低減抑制剤は、未糊化澱粉の水性スラリーからなるものである。本発明の嵩低減抑制剤が、嵩を維持した状態で印刷用紙の表面強度(印刷適性)を向上させることができる機構は、以下の通りであると考えられる。
例えば、紙力増強剤として水溶性高分子を使用する場合、添加された水溶性高分子はパルプ繊維全体に広範囲で吸着し、繊維同士の吸着を促進するため、脱水、プレス、乾燥工程を経てシートが形成されていく過程で、パルプ繊維間の結合は強固なものとなり、密度の高い紙が形成される。そのため、このような場合には、嵩高な紙を製造することは困難である。
それに対し、未糊化澱粉の水性スラリーからなる本発明の嵩低減抑制剤は、紙料に添加される段階では水性スラリーの状態であるため、不溶性の粒子として存在している。これが紙料に添加されると、イオン的な吸着、或いは物理的な繊維との絡み合いによりパルプ繊維に定着するが、定着した澱粉粒子は水溶性高分子と比較して非常に粗大であり、パルプ繊維同士の吸着を促進する作用は皆無である。従ってこの紙料に、脱水、プレス処理を施しても、パルプ繊維は疎な状態のままでシートが形成される。その後、乾燥工程において、ウェットシート中に含有されている澱粉粒子が、シート中の水分と乾燥熱により、シート内で糊化、分散し、パルプ繊維間に広範囲に浸透し、その一部が紙の表面にまでマイグレーションすることにより、紙の表面強度を向上させることができる。この結果、紙の嵩を維持した状態で表面強度の向上が達成される。さらに、本発明の嵩低減抑制剤は、嵩高処理したパルプや製紙内添用の嵩高剤を用いる抄紙系においても、上記と同様の作用機構により、各種嵩高処理の効果を妨げることなく表面強度の向上を達成し、より嵩高で高品質な印刷用紙の製造が可能となる。
本発明の未糊化澱粉の水性スラリーからなる嵩低減抑制剤に使用される澱粉は、特に限定されず、例えば、未加工の澱粉、各種カチオン化剤またはカチオン性高分子により処理されたカチオン化澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、アニオン澱粉の表面にカチオン性ポリマーを吸着させた自己定着性澱粉など市販のいずれの澱粉も使用できる。特に、水性スラリーの状態でパルプ繊維に定着しやすく、また乾燥工程において糊化、分散しやすくなるよう加工された澱粉を用いることが好ましい。そのような澱粉としては、アニオン澱粉粒子の表面にカチオンポリマーが吸着した自己定着性澱粉を用いることができ、中でも、50℃、60rpmにおいて50mPa・sのB型粘度を与える澱粉糊液の固形分濃度が5〜30質量%である低粘度アニオン澱粉粒子の表面に、濃度0.2質量%の水溶液の20℃、60rpmにおけるB型粘度が10mPa・s以上である高分子量カチオンポリマーが、澱粉固形分当たり固形分として100〜20,000ppm吸着された自己定着性澱粉を用いることが特に好ましい。
前記自己定着性澱粉の原料となるアニオン澱粉は、その粒子表面にアニオンを有する澱粉である。そのアニオン化度は、吸着させるカチオンポリマーのカチオン化度も考慮して適宜設定することが好ましく、例えば、0.01meq/g以上であることが好ましい。アニオン化度が0.01meq/g以上であれば、カチオンポリマーが良好に吸着し、水性スラリーの状態でパルプ繊維に定着しやすく、また乾燥工程において糊化、分散しやすい自己定着性澱粉を得ることができる。アニオン化度は、好ましくは0.03〜0.5meq/gである。
前記アニオン澱粉は、50℃、60rpmにおいて50mPa・sのB型粘度を与える澱粉糊液の固形分濃度が5〜30質量%である低粘度アニオン澱粉であることが好ましい。このアニオン澱粉の固形分濃度は、アニオン澱粉の水性スラリーを95℃で30分間加熱糊化した後、50℃に冷却した糊液について、60rpmにおけるB型粘度が50mPa・sとなるときの固形分濃度を測定することにより求められる。
50℃、60rpmにおいて50mPa・sのB型粘度を示すアニオン澱粉糊液の固形分濃度が5〜30質量%の範囲内であれば、脱水工程において紙層内に定着した澱粉が乾燥工程において糊化分散する際に、紙の表面にまで効率よくマイグレーションし、表面強度の向上が達成される。この範囲以下では、マイグレーションが不十分となり効率的な表面強度の向上が達成され難く、またこの範囲以上であると澱粉が著しく低分子量化されるため冷水可溶性成分が増加し、脱水工程における澱粉歩留の低下とそれに伴う表面強度向上効果の低下をもたらすといった不具合を生じる恐れがある。
前記アニオン澱粉の具体例としては、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩で処理された酸化澱粉、無水こはく酸や無水マレイン酸などの二塩基酸無水物を反応させた澱粉二塩基酸ハーフエステル、および燐酸/尿素(併用)、燐酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウムなどの燐酸および/または燐酸塩で処理した澱粉燐酸エステルが挙げられる。これらの中でも、酸化澱粉や澱粉燐酸エステルは、アニオン導入と低粘度化がほぼ同時に達成できるので経済的に有利である。
前記アニオン澱粉は、アニオン化と同時に、所望程度に低粘度化されたものであることもでき、また、アニオン化のみでは所望程度に低粘度化されていない場合は、アニオン化の後、低粘度化処理を施すことができる。低粘度化の方法としては、酸加水分解、酸化分解、酵素分解など公知の低粘度化方法を採用することができる。前記アニオン澱粉の調製に用いられる原料澱粉の具体例としては、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチなどが挙げられ、市販のいずれの澱粉も使用できる。
前記アニオン澱粉粒子の表面に吸着させる高分子量カチオンポリマーは、アニオン澱粉粒子の表面に吸着可能なものであれば格別限定されず、例えばカチオン化度0.2meq/g以上のものが好ましく用いられる。高分子量カチオンポリマーの具体例としては、カチオン変性ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンイミン、カチオン変性ポリ(メタ)アクリレート、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、キトサンなどが挙げられる。これらの中でも、経済性からみて、カチオン変性ポリアクリルアミド系のもの、例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性モノマーを共重合体せしめた共重合PAM、マンニッヒ変性PAM、ホフマン分解PAM、などが好適である。また、カチオンに加えて、ノニオン、アニオン(ネットカチオン化度が例えば0.2meq/gを下回らない範囲で)の置換基を有していても良い。
アニオン澱粉粒子の表面に吸着させる高分子量カチオンポリマーの分子量は、例えば、1万〜2000万の範囲であることができる。
しかし、非常に高い分子量を持つポリマーの分子量を正確に測ることは困難であり、また、測定方法による誤差も大きい。そこで、本発明では、水溶液粘度を分子量の指標とする。即ち、本発明で使用される高分子量カチオンポリマーは、濃度0.2質量%の水溶液の20℃、60rpmにおけるB型粘度が10mPa・s以上の高分子量カチオンポリマーであることが好ましく、前記B型粘度が30〜500mPa・sの範囲の高分子量カチオンポリマーを用いることがより好ましい。この水溶液粘度は、カチオンポリマーを蒸留水で希釈または溶解して、0.2質量%濃度の水溶液としたものの20℃、60rpmにおけるB型粘度を測定した値である。前記B型粘度が10mPa・s以上、好ましくは30〜500mPa・sの高分子量カチオンポリマーを用いると、澱粉に吸着したカチオンポリマーがパルプ繊維と広範囲で吸着し、脱水工程において紙層内に澱粉を効率よく定着させることができる。一方、この範囲を超える粘度を示す高分子量カチオンポリマーを用いると、パルプ繊維への定着性はより高くなるものの、澱粉粒子の著しい凝集を引き起こし、紙層内で澱粉が不均一に定着し、効率的な表面強度の向上が達成され難くなるおそれがある。
アニオン澱粉にカチオンポリマーを吸着させて自己定着性澱粉を得る方法としては、アニオン澱粉を水に懸濁した水性スラリーとカチオンポリマーの水溶液を接触させ、カチオンポリマーをアニオン澱粉に吸着させるに足る十分な時間保持する方法を用いることができ、その具体的手法は格別限定されない。最も簡便な方法は、アニオン澱粉の水性スラリーにカチオンポリマー水溶液または粉末状カチオンポリマーを添加し、十分撹拌を行う方法である。
低粘度アニオン澱粉粒子表面への高分子量カチオンポリマーの吸着量は、澱粉固形分当たり固形分として100〜20,000ppmの範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜10,000ppmの範囲である。吸着量が前記範囲内であれば、パルプ繊維への効率的な吸着と、紙層内への均一な定着、すなわち効率的な表面強度の向上が可能となる。この範囲を上回ると、澱粉粒子が著しい凝集を引き起こし紙層内への不均一な定着をもたらすだけでなく、過剰のカチオンポリマーがパルプ繊維同士の吸着をも促進し、紙の嵩を低下させる恐れがある。
アニオン澱粉の水性スラリーは、カチオンポリマーを吸着させると若干の凝集を引き起こし一時的に水性スラリーの粘度が上昇する。そのため、自己定着性澱粉製造時のアニオン澱粉の水性スラリーは、上記のような場合でもスラリーを十分に攪拌できる程度の濃度、例えば30%以下の濃度で調製することが好ましい。またアニオン澱粉の水性スラリーの温度がアニオン澱粉の糊化開始温度を上回ると、澱粉の膨潤が始まりスラリー粘度が上昇し作業性を悪化させる恐れがあり、また紙料に添加した場合には脱水工程においてろ水性を悪化させるなどの不具合が生じる恐れがある。以上の観点から、自己定着性澱粉製造時のアニオン澱粉の水性スラリーの温度は40℃以下であることが好ましい。
本発明の嵩低減抑制剤は、例えば、前述の自己定着性澱粉から得られた水性スラリーであることができる。水性スラリーは、公知の方法で調製することができる。また、本発明の嵩低減抑制剤である未糊化澱粉の水性スラリーは、未糊化澱粉のほかに、糊化澱粉、市販の合成高分子、塩類、消泡剤、防腐剤などを含むこともできる。
前記水性スラリー中の澱粉濃度は、特に限定されないが、作業性を考慮すると、例えば、1〜40%、好ましくは5〜30%の範囲とすることができる。
本発明の嵩低減抑制剤は、紙の抄造時に紙料に添加することができる。より詳細には、本発明の嵩低減抑制剤は、抄紙前の紙料へ添加することができる。その後、本発明の嵩低減抑制剤を含む紙料を脱水工程、プレス工程、および乾燥工程に付すことにより、嵩高で高品質な印刷用紙を製造することができる。
本発明の嵩低減抑制剤は、質量基準で、紙料中のパルプ固形分に対する澱粉固形分濃度が0.5〜15%となるように、好ましくは1〜5%となるように、紙料中に含有させるものである。紙料中の澱粉固形分濃度が上記範囲内であれば、紙の嵩を維持した状態で紙の表面強度を向上させるのに十分な量の澱粉を紙層内へ定着させることが可能となる。それに対し、紙料中の澱粉固形分濃度が0.5質量%未満では、高い表面強度を有する印刷用紙を得ることができず、紙料中の澱粉固形分濃度が15質量%を超えると、密度上昇を引き起こし、嵩高で高品質な印刷用紙を得ることが困難となる。本発明の嵩低減抑制剤は、原料パルプ液に後述するような製紙内添用薬品を添加して調製した紙料へ添加することもでき、また、製紙内添用薬品添加前の原料パルプ液に添加することもできる。なお、以下に記載の「紙料に添加する」とは、製紙内添用薬品を添加する前の原料パルプ液に添加することも含むものとする。
本発明において印刷用紙を製造するために使用する原料パルプとしては、砕木パルプ(GP)、加圧砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、セミケミカルパルプ(SCP)などの機械パルプ(MP)、化学パルプ(AP,KP)、脱墨パルプ(DIP)、抄紙工程等で発生する工程損紙から得られる回収パルプなどを用いることができ、このような原料パルプを、要求品質に応じて任意の比率で紙料へ配合して使用することができる。より嵩高な印刷用紙を抄造するために、物理的処理や化学的処理を行うことで嵩高性を付与したパルプを用いることも好ましい。そのようなパルプとしては、物理的に繊維を毛羽立たせたパルプ、架橋剤を反応させたパルプ等を挙げることができる。本発明の嵩低減抑制剤は、DIPや回収パルプのように2度以上離解処理が行われ、嵩が出難くなった古紙原料を多く用いる抄紙系に用いることで、嵩を維持した状態で表面強度を向上させる効果をより顕著に発揮することができる。
本発明の嵩低減抑制剤は、特に、繊維長が短い古紙の含有率が高い紙料から嵩高で高品質な印刷用紙を得るために好適に用いることができ、例えば、本発明の嵩高剤を用いることで、古紙含有率が20%以上、好ましくは60%以上のパルプ原料から、嵩高で高品質な紙を得ることができる。
印刷用紙の抄造時には、水溶性アルミニウム化合物、サイズ剤、填料、歩留向上剤、ろ水性向上剤など市販の製紙内添用の薬品を紙料に添加してもよい。その中で、歩留向上剤、ろ水性向上剤は水溶性高分子からなるものが多く、それらは紙料内で繊維同士の吸着を促進し、密なシートを形成しやすくするため、添加する場合には、パルプ原料に対して1%以下の低添加率で使用することが好ましい。
印刷用紙の抄造時に製紙内添用の嵩高剤を添加することは、より嵩高な印刷用紙の抄造に効果的である。本発明の嵩低減抑制剤と嵩高剤を併用する場合、紙料中の嵩高剤の添加率は、パルプ固形分に対し0.1〜1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0質量%である。その場合、本発明の嵩低減抑制剤は、パルプ原料に対し澱粉固形分濃度が0.5〜15質量%となるように添加することが好ましく、1.0〜5質量%となるように添加することがより好ましい。併用する嵩高剤は特に限定されず、例えば多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物及びそのエステル化合物にオキシアルキレン基を付加した化合物を用いた嵩高剤、カチオン性化合物、アミン、アンモニウム塩及び両性化合物を用いた嵩高剤、各種非イオン性界面活性剤及びそれとアニオン性界面活性剤を含有する嵩高剤、疎水性基、ポリアミン基、グリシジル基構造を有する嵩高剤、アミノ基にアセタール基が結合してなるアミノ化合物を有効成分とする嵩高剤などを用いることができる。
本発明の嵩低減抑制剤は、紙料が抄紙機のワイヤー上を進む間にろ水されシートを形成する、脱水・プレス工程の前までの抄紙工程において添加することで、その効果を発揮することができる。例えば、レファイナー、マシンチェスト、種箱、ヘッドボックスなど、本発明の嵩低減抑制剤を均一にパルプ原料にブレンドできる場所で添加することが望ましい。本発明において、本発明の嵩低減抑制剤、およびその他の製紙内添用薬品の添加順序は特に制限されない。
乾燥工程は、シート中に含有された澱粉粒子が、効率的に糊化、分散するような条件で行うことが好ましく、例えば、シート内部の温度が50℃以上、より好ましくはシート内部の水分が50%以上の状態でシート内部の温度が70℃以上に達するような乾燥条件で行うことが望ましい。シート内部の水分が50%以上、シート内部の温度が50℃以上であれば、澱粉が良好に糊化、分散し、嵩高さとともに、高い表面強度を有する印刷用紙を得ることができる。
本発明の嵩低減抑制剤を紙料に添加し、次いで、前記紙料を脱水工程、プレス工程、および乾燥工程に付すことによって得られた印刷用紙は、嵩高さと表面強度を兼ね備えたものである。つまり、本発明の嵩低減抑制剤は、紙の嵩を維持した状態で表面強度を向上させ、高品質な印刷用紙を得るために用いることができる。ここで、「高品質な印刷用紙」とは、高い印刷適性を有した印刷用途に使用されるあらゆる紙を示している。紙に高い印刷適性を付与するには、紙の表面強度を向上させることが求められる。「表面強度を向上させる」とは、紙の表面付近に存在するパルプ繊維同士の結合をより強固なものにし、紙紛やベッセルピックを抑制することを示す。前述の通り、一般的に表面サイズ法や水溶性高分子の内添法により表面強度の向上を達成することが可能であるが、これらの方法では紙の嵩を低下させてしまう。従って、ここで言う「紙の嵩を維持した状態」とは、表面サイズ法や水溶性高分子の内添法などにより引き起こされる紙の嵩の低下を抑制した状態、すなわちこれらの表面強度向上処理を行わない場合に得られる紙の嵩と同程度の紙の嵩を獲得することを示す。
前記印刷用紙の密度は、例えば、表面サイズ法及び水溶性高分子の内添法など紙の嵩を低下させる作用をもつ表面強度向上処理を行わない以外は同様の製造方法にて得られる印刷用紙をブランクとし、この密度を100%とした場合の、密度変化率として104%以下であることができ、102%以下であることが好ましい。また、前記印刷用紙の表面強度は、上記と同様にブランクの表面強度を100%とした場合の、表面強度変化率として100%以上であることができ、105%以上であることが好ましい。本発明の嵩低減抑制剤を用いることで、前記範囲の嵩高さと表面強度をと兼ね備えた、高品質印刷用紙を得ることができる。
本発明により製造される嵩高性高品質印刷用紙には、澱粉糊液やPVA溶液などのサイズ液をサイズプレスなどにより塗布することもできる。このような処理を行うことは、物理的圧力及び塗布されたサイズ液による嵩の低下は避けられないものの、より高い表面強度の達成には効果的である。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。尚、以下に示した「%」は特記しない限り、パルプ固形分に対しての質量基準である。また、以下に記載の「ブランク」は、表1〜3に示した内添用嵩低減抑制剤として示した成分を添加しない、もしくは表3に示した表面サイズを行わない以外は、実施例または比較例と同様の処方で抄造したサンプルを示す。実施例および比較例において得られた印刷用紙は、下記の方法により評価した。
(1)密度
JIS P 8118に準じて測定した。また得られた値より、ブランクの密度を100%としたときの密度変化率を算出した。密度変化率2%の差は優位差として十分に認識されるものである。
(2)表面強度
短冊状にカットした試料を台紙上に貼りつけたものを10組作製し、これをRI試験機(RI−II型;明製作所(株)製)によりDryまたはWetの状態で印刷を行った後、各試料の紙剥けの状態を5段階評価した。点数が高いほど、表面強度が高いことを示す。
(3)澱粉歩留
試料の一部をホモジェナイザーにより離解し、αアミラーゼで処理した後、アンスロン硫酸法にて紙中澱粉量を測定し、澱粉歩留を算出した。
[実施例1〜6]
広葉樹晒パルプ(LBKP)シートをカナディアンスタンダードフリーネステスターで400mlとなるようにナイアガラ式ビーターで叩解した後、市水で2%濃度に調整し、攪拌しながら硫酸バンド(住友化学工業(株)製)を1%(硫酸アルミニウムとして8%を含有する液状の硫酸バンドを100%として換算)添加し、次いで1分後に自己定着性澱粉(HRサイズ#100;日本食品化工(株)製)の水性スラリーを、澱粉固形分濃度が表1に示す濃度になる量で添加し、さらに1分後にサイズ剤(ハーサイズNES−405;ハリマ化成(株)製)を0.5%添加した。さらに1分間攪拌した後、嵩高剤(KB−115;花王(株)製、またはスルゾールVL;BASFジャパン(株)製)を0.6%添加し、その1分後に希釈水を加えてパルプ濃度1.0%濃度の紙料を調製した。
得られた紙料を用いて、実験用角形シートマシン(250mm×250mm、熊谷理機工業(株)製)を用い、紙料濃度0.1%にて坪量60g/m2を目標として手抄きシートを作成した。次いで1kg/cm2で1分間プレスした後、表面温度130℃の回転乾燥機で2分間乾燥し、印刷用紙を得た。これを23℃、関係湿度50%中で一晩調湿した後、分析を実施した。その結果を表1に示した。
[比較例1〜12]
実施例1〜6と同様に、2%パルプスラリー(LBKP)を攪拌しながら硫酸バンド(住友化学工業(株)製)を1%(硫酸アルミニウムとして8%を含有する液状の硫酸バンドを100%として換算)添加し、次いで1分後に両性PAM(ハーマイドEX−200;ハリマ化成(株)製)または両性澱粉(Cato3210;日本NSC(株)製)の水溶液を、両性PAMまたは両性澱粉固形分濃度が0.3〜1.5%となるように添加し、さらに1分後にサイズ剤(ハーサイズNES−405;ハリマ化成(株)製)を0.5%添加した。さらに1分間攪拌した後、嵩高剤(KB−115;花王(株)製、またはスルゾールVL;BASFジャパン(株)製)を0.6%添加し、その1分後に希釈水を加えてパルプ濃度1.0%濃度の紙料を調製した。得られた紙料を用いて実施例1〜6と同様の方法で、印刷用紙を製造した。印刷用紙の分析結果を表1に示した。
Figure 2005188011
表1から、嵩高剤を使用する抄紙系において、未糊化澱粉の水性スラリーからなる本発明の嵩高剤を使用した実施例1〜6は、両性PAMや両性澱粉糊液などの水溶性高分子の水溶液を使用したものに対して、密度の低い状態、すなわち嵩高な状態で、表面強度の向上が達成されたことがわかる。一方、両性澱粉や両性PAMなどの水溶性高分子の水溶液を添加した比較例1〜12は、表面強度は向上するものの添加率に応じた密度の上昇(嵩の低下)を引き起こしており、嵩高剤の効果を消失させたことがわかる。
[実施例7〜12]
雑誌古紙由来のDIP80部、広葉樹晒パルプ(LBKP)20部からなるパルプスラリーを市水で2%濃度に調製し、攪拌しながらカチオン澱粉(ネオタック40T;日本食品化工(株)製)または自己定着性澱粉(HRサイズ#100;日本食品化工(株)製)の水性スラリーを、澱粉固形分濃度が表2に示す濃度となる量で添加し、次いで1分後に硫酸バンド(住友化学工業(株)製)を1%(硫酸アルミニウムとして8%を含有する液状の硫酸バンドを100%として換算)添加し、その1分後にサイズ剤(ハーサイズNES−405;ハリマ化成(株)製)を0.5%添加した。さらに1分間攪拌した後、希釈水を加えてパルプ濃度1.0%濃度の紙料を調製した。
得られた紙料を用いて、実験用角形シートマシン(250mm×250mm、熊谷理機工業(株)製)を用い、紙料濃度0.1%にて坪量60g/m2を目標として手抄きシートを作成した。次いで1kg/cm2で1分間プレスした後、表面温度130℃の回転乾燥機で2分間乾燥し、印刷用紙を得た。印刷用紙の分析結果を表2に示した。
[比較例13〜16]
実施例7〜12と同様に、2%のパルプスラリー(DIP:LBKP=80:20)を攪拌しながらカチオン澱粉(ネオタック40T;日本食品化工(株)製)または自己定着性澱粉(HRサイズ#100;日本食品化工(株)製)の水性スラリーを、澱粉固形分濃度が表2に示す濃度となる量で添加し、次いで1分後に硫酸バンド(住友化学工業(株)製)を1%(硫酸アルミニウムとして8%を含有する液状の硫酸バンドを100%として換算)添加し、その1分後にサイズ剤(ハーサイズNES−405;ハリマ化成(株)製)を0.5%添加した。さらに1分間攪拌した後、希釈水を加えてパルプ濃度1.0%濃度の紙料を調成した。得られた紙料を用いて実施例7〜12と同様の方法で、印刷用紙を抄造した。印刷用紙の分析結果を表2に示した。
[比較例17〜22]
実施例7〜12と同様に、2%のパルプスラリー(DIP:LBKP=80:20)を攪拌しながら両性PAM(ポリストロン1250;荒川化学工業(株)製)またはカチオン澱粉(ネオタック40T;日本食品化工(株)製)の水溶液を、両性PAMまたはカチオン澱粉固形分濃度が表2に示す濃度となるように添加し、次いで1分後に硫酸バンド(住友化学工業(株)製)を1%(硫酸アルミニウムとして8%を含有する液状の硫酸バンドを100%として換算)添加し、その1分後にサイズ剤(ハーサイズNES−405;ハリマ化成(株)製)を0.5%添加した。さらに1分間攪拌した後、希釈水を加えてパルプ濃度1.0%濃度の紙料を調成した。得られた紙料を用いて実施例7〜12と同様の方法で、印刷用紙を抄造した。印刷用紙の分析結果を表2に示した。
Figure 2005188011
表2から、紙料中のパルプ固形分に対する澱粉固形分濃度が0.5〜15質量%の範囲内となる量で未糊化澱粉の水性スラリーからなる本発明の嵩低減抑制剤を使用した実施例7〜12では、両性PAMやカチオン澱粉などの水溶性高分子の水溶液を使用した比較例17〜22と比べて、密度の低い状態、すなわち嵩の高い状態で表面強度の向上が達成されたことがわかる。しかし、比較例13および15のように、紙料中のパルプ固形分に対する澱粉固形分濃度が0.3質量%となる量で、未糊化澱粉の水性スラリーを使用した場合は、効率的な表面強度の向上が達成されなかった。また、比較例14および16のように、紙料中のパルプ固形分に対する澱粉固形分濃度が20質量%となる量で未糊化澱粉の水性スラリーを使用した場合は、表面強度の向上は達成されるものの、密度の上昇、すなわち嵩の低下を引き起こした。
更に、表2から、本発明の嵩低減抑制剤によれば、原料パルプの古紙含有率が80%と高く、嵩を維持することが困難な場合であっても、嵩高で高品質な印刷用紙が得られることがわかる。また、本発明の嵩低減抑制剤として澱粉歩留の高い自己定着性澱粉を使用すると、澱粉歩留の低いカチオン澱粉に対してより効率的に強度の向上が達成されていることがわかる。
[実施例13〜18]
雑誌古紙由来のDIP70部、針葉樹晒パルプ(NBKP)10部、TMP20部からなるパルプスラリーを市水で2%濃度に希釈し、パルプスラリーを攪拌しながら自己定着性澱粉(HRサイズ#100;日本食品化工(株)製)の水性スラリーを、澱粉固形分濃度が3%になるように添加し、次いで1分後に硫酸バンド(住友化学工業(株)製)を1%(硫酸アルミニウムとして8%を含有する液状の硫酸バンドを100%として換算)添加し、次いで1分後に炭酸カルシウム(タマパールTP−121;奥多摩工業(株)製)を10%添加し、さらにその1分後希釈水を加えてパルプ濃度1.0%濃度の紙料を調製した。
得られた紙料を用いて、実験用角形シートマシン(250mm×250mm、熊谷理機工業(株)製)を用い、紙料濃度0.1%にて坪量60g/m2を目標として手抄きシートを作成した。次いで1kg/cm2で1分間プレスした後、表面温度130℃の回転乾燥機で2分間乾燥し、手抄き紙を得た。これに8、10、12%濃度の澱粉糊液(MS#3800;日本食品化工(株)製)、または7、9、11%濃度のPVA水溶液(クラレポバールPVA−117;(株)クラレ製)を、ゲートロールコーター(熊谷理機工業(株)製)を使用して、乾燥質量が片面当たりそれぞれ0.2、0.4、0.6g/m2となるように塗布して、印刷用紙を得た。印刷用紙の分析結果を表3に示した(なお、表3に示すブランクは、本発明の嵩高剤を添加せず、澱粉糊液、PVA水溶液の塗布も行わずに得られたサンプルである)。
[比較例23〜28]
実施例13〜18と同様に、2%パルプスラリー(DIP:NBKP:TMP=70:10:20)を攪拌しながら両性PAM(ポリストロン1250;荒川化学工業(株)製)の水溶液を、両性PAM固形分濃度が0.3%になるように添加し、次いで1分後に硫酸バンド(住友化学工業(株)製)を1%(硫酸アルミニウムとして8%を含有する液状の硫酸バンドを100%として換算)添加し、次いで1分後に炭酸カルシウム(タマパールTP−121;奥多摩工業(株)製)を10%添加し、さらに1分後に希釈水を加えてパルプ濃度1.0%濃度の紙料を調製した。
得られた紙料を用いて実施例13〜18と同様の方法で手抄き紙を作製した。これに、8、10、12%濃度の澱粉糊液(MS#3800;日本食品化工(株)製)、または7、9、11%濃度のPVA水溶液(クラレポバールPVA−117;(株)クラレ製)を、ゲートロールコーター(熊谷理機工業(株)製)を使用して、乾燥質量が片面当たりそれぞれ0.2、0.4、0.6g/m2となるように塗布して、印刷用紙を得た。印刷用紙の分析結果を表3に示した。
Figure 2005188011
表3から、表面サイズ処理を施した印刷用紙の場合には、表面サイズによる嵩の低下は避けられないものの、原紙抄造の際に本発明の嵩低減抑制剤を添加することにより、水溶性高分子を紙料に添加したものと比べて、嵩の高い状態で表面強度の向上が達成されたことがわかる。
本発明によれば、古紙含有率が高い紙料からも、嵩高で高品質な印刷用紙を製造することができる。

Claims (9)

  1. 紙料中のパルプ固形分に対する澱粉固形分濃度が0.5〜15質量%の範囲となるように紙料中に含有させる、未糊化澱粉の水性スラリーからなることを特徴とする印刷用紙用嵩低減抑制剤。
  2. 紙の嵩を維持した状態で表面強度を向上させるために用いられる、請求項1に記載の嵩低減抑制剤。
  3. 紙の抄造時に紙料に添加される、請求項1または2に記載の嵩低減抑制剤。
  4. 製紙内添用嵩高剤を用いる抄紙系において使用される請求項1〜3のいずれか1項に記載の嵩低減抑制剤。
  5. 前記澱粉は、アニオン澱粉の表面に高分子量カチオンポリマーを吸着させた自己定着性澱粉である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の嵩低減抑制剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の嵩低減抑制剤を紙料に添加し、次いで、前記紙料を脱水工程、プレス工程、および乾燥工程に付すことを特徴とする、印刷用紙の製造方法。
  7. 前記紙料は、古紙を20%以上含有する、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記紙料は、物理的処理および/または化学的処理を行うことで嵩高性を付与したパルプを含む、請求項6または7に記載の方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法で製造された印刷用紙。

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