JP2005186229A - ソーワイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】
製造コストの増加を抑制しつつ、ワーク切断部への砥粒の引き込み性を向上させたソーワイヤを提供する。
【解決手段】
線径が0.05〜0.30mmの金属製ソーワイヤの表面に8〜15mg/m2の油(温度40℃における動粘度が25〜100mm2/sであるもの)を付着させることによってソーワイヤとスラリーとのぬれ性を改善し、切断初期時の砥粒の引き込み性を向上させるという作用により、切断性能を向上させるとともに切断対象物の切断面の表面性状の改善を図る。
【選択図】
図1
製造コストの増加を抑制しつつ、ワーク切断部への砥粒の引き込み性を向上させたソーワイヤを提供する。
【解決手段】
線径が0.05〜0.30mmの金属製ソーワイヤの表面に8〜15mg/m2の油(温度40℃における動粘度が25〜100mm2/sであるもの)を付着させることによってソーワイヤとスラリーとのぬれ性を改善し、切断初期時の砥粒の引き込み性を向上させるという作用により、切断性能を向上させるとともに切断対象物の切断面の表面性状の改善を図る。
【選択図】
図1
Description
本発明は、シリコンインゴット、人工水晶、超硬合金、セラミック等の硬脆材料を切断するワイヤーソー装置に用いられる遊離砥粒式ソーワイヤに関するものである。
シリコンインゴット等の硬脆材料は、一般にワイヤーソーで切断されている。ワイヤーソーは、高速度で走るソーワイヤにシリコンインゴット等のワークを押し付け、砥粒と分散液からなるスラリーを供給しながら、ワークと砥粒間の研削作用によりワークを複数の加工物に切断する装置である。
そして、このワイヤーソーに要求される重要な品質項目として、切断されたワークの切断面の表面性状、すなわち面粗さとうねりがある。ワイヤーソーにより切断されたワークの切断面は、次の工程である研磨工程で研削、平滑化されるが、切断面の凹凸や厚さの不均一が多いと研磨工程での研削量が増加し、ワークの歩留が低下するという問題があるからである。
このワークの表面性状に影響を与える要因はいくつか考えられるが、その中でもソーワイヤによるワーク切断面へのスラリー、すなわち砥粒の引き込み性が切断面の表面性状を大きく左右することは、よく知られている。遊離砥粒式ワイヤーソーは、上述のように砥粒を含んだスラリーをワークの切断面に引き込み、引き込まれた砥粒を利用してワークを切断するものである。例えば一方向にワイヤを走行させるワイヤーソーにおいては、ワークに入る直前のソーワイヤ上に供給されたスラリーはソーワイヤの表面に付着してワーク切断面に引き込まれ、ワークを切断することに寄与するが、このときワーク切断面に引き込まれるスラリーの量が多いほど、ワークに作用する砥粒数が多くなり、切断性能が向上する結果、切断面の表面性状が良くなる。
ところで、ソーワイヤは、繰り返しワークの切断に使用されると、ワイヤ自体も磨耗して表面に微小な凹凸ができる。しかし、まだ一度も使用されていない新しいソーワイヤがワークに初めて接触するときには、ワイヤ表面にはこのような凹凸がない。従ってこのときにワーク切断面にスラリーがどの程度引き込まれるかは、ソーワイヤとスラリーとのぬれ性に依存する部分が大きい。ソーワイヤとスラリーとのぬれ性が良いとスラリーがソーワイヤ表面に多量に付着すると共にワイヤ表面で強固に結合して離脱し難くなるからである。
ところで、ソーワイヤは、繰り返しワークの切断に使用されると、ワイヤ自体も磨耗して表面に微小な凹凸ができる。しかし、まだ一度も使用されていない新しいソーワイヤがワークに初めて接触するときには、ワイヤ表面にはこのような凹凸がない。従ってこのときにワーク切断面にスラリーがどの程度引き込まれるかは、ソーワイヤとスラリーとのぬれ性に依存する部分が大きい。ソーワイヤとスラリーとのぬれ性が良いとスラリーがソーワイヤ表面に多量に付着すると共にワイヤ表面で強固に結合して離脱し難くなるからである。
一方、遊離砥粒式ワイヤーソーで現在使用されているスラリーは、粘度調整が容易であることから油性が主流であり、また一般的なソーワイヤは最終伸線時に水溶性潤滑剤を使用している関係で、両者のぬれ性は良いとは言えない。このため、一般的なソーワイヤをそのまま用いた場合にはワーク切断面へのスラリー、すなわち砥粒の引き込みが不十分である。
従って、従来からソーワイヤによる砥粒の切断面への引き込み性を向上させる工夫が多くなされており、その一例として、鋼線の表面層の鉄の純度を高くして軟化させたソーワイヤ(例えば、特許文献1参照)や、鋼製の銅メッキ層を極めて厚くして鋼線の表面を硬度の低い金属層にしたソーワイヤ(例えば、特許文献2参照)、さらに表面に一定間隔で平坦部を形成したソーワイヤ(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
特許文献1及び特許文献2において提案されているソーワイヤは、表面を柔らかくしたことにより、砥粒自体がソーワイヤ表面に付着して切断面に引き込まれ易くしたものであり、特許文献3において提案されているソーワイヤは、表面にスラリーの溜まり部分を設けて砥粒が切断面に引き込まれ易くしたものである。
従って、従来からソーワイヤによる砥粒の切断面への引き込み性を向上させる工夫が多くなされており、その一例として、鋼線の表面層の鉄の純度を高くして軟化させたソーワイヤ(例えば、特許文献1参照)や、鋼製の銅メッキ層を極めて厚くして鋼線の表面を硬度の低い金属層にしたソーワイヤ(例えば、特許文献2参照)、さらに表面に一定間隔で平坦部を形成したソーワイヤ(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
特許文献1及び特許文献2において提案されているソーワイヤは、表面を柔らかくしたことにより、砥粒自体がソーワイヤ表面に付着して切断面に引き込まれ易くしたものであり、特許文献3において提案されているソーワイヤは、表面にスラリーの溜まり部分を設けて砥粒が切断面に引き込まれ易くしたものである。
しかし、上記従来技術は何れもソーワイヤとスラリーとのぬれ性の改善を図ったものではなく、切断されたワークの面粗さやうねりの低減に一定の効果があるものの、各々鋼線の表面の脱炭、メッキ、機械加工の別工程を付加する必要があり、製造コストが高く、費用対効果の面で十分とはいえない状況である。
以上のことから、砥粒のワーク切断面への引き込み性を向上させ、しかも費用対効果に優れたソーワイヤの開発が望まれていた。
以上のことから、砥粒のワーク切断面への引き込み性を向上させ、しかも費用対効果に優れたソーワイヤの開発が望まれていた。
従って、本発明は、製造コストの増加を抑制しつつ、ワーク切断部への砥粒の引き込み性を向上させたソーワイヤを提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は、ソーワイヤの表面に油を付着させた構成としたことをその要旨とする。
すなわち、本発明は、ソーワイヤの表面に油を付着させた構成としたことをその要旨とする。
本発明のソーワイヤは、線径が0.05〜0.30mmの金属製のソーワイヤであって、ワイヤ表面に8〜15mg/m2油を付着させたことを特徴とする。
本発明のソーワイヤは、ワイヤ表面に油を付着させているので、ワイヤ表面に油が存在しない一般的なソーワイヤに比べて油性スラリーとのぬれ性が改善される。この結果、まだ一度も使用されていない新しいソーワイヤがワークに初めて接触するとき、すなわちワイヤ表面に磨耗による微小な凹凸がない状態のときでも、砥粒を含んだスラリーがソーワイヤ表面に多量に付着すると共にワイヤ表面の油と結合して離脱し難くなり、ワーク切断面への砥粒の引き込み性が向上する。そして、このワーク切断面への砥粒の引き込み性は、ワイヤ表面の油量の増加と共に向上し、その量が8mg/m2程度で効果が顕著となり、
15mg/m2程度でほぼ最高に達する。一方、ワイヤ表面の油量は15mg/m2を超えて
も効果に大きな変化はなく、製造コスト、製品の取扱面から15mg/m2以下であること
が望ましい。なお、ワイヤ表面の油量は、フーリエ変換型赤外線分光分析により測定したものである。
15mg/m2程度でほぼ最高に達する。一方、ワイヤ表面の油量は15mg/m2を超えて
も効果に大きな変化はなく、製造コスト、製品の取扱面から15mg/m2以下であること
が望ましい。なお、ワイヤ表面の油量は、フーリエ変換型赤外線分光分析により測定したものである。
ワイヤ表面の油量とワーク切断面のうねりとの定性的な相関は、例えば図2に示すとおりであり、線径が0.05〜0.30mmの範囲であれば、線径の大きさに関わりなく、ほぼ同様の傾向が示される。そして、例えば線径が0.08mmのワイヤの場合には、表面の油量が8mg/m2以上のとき、ワーク切断面のうねりは6〜7μm程度に抑制される。う
ねりの概念は図4に示すとおりであり、うねりが小さいほどワーク切断面の表面性状が良い。
ねりの概念は図4に示すとおりであり、うねりが小さいほどワーク切断面の表面性状が良い。
そして、上記ソーワイヤはダイスによる伸線工程において、使用される潤滑剤を油性とするか、あるいは従来の水溶性潤滑剤による最終伸線後に表面に油を塗布するだけで製造することができる。すなわち、ソーワイヤの製造時にワーク切断部への砥粒の引き込み性を向上させるためのメッキ、機械加工等のコストの高い工程を付加する必要がない。
なお、上記ソーワイヤには高抗張力、耐摩耗性、靱性がある金属製のワイヤを使用することができるがコスト、汎用性の面で鋼線が一般的である。鋼線とは、例えば、軟鋼線、硬鋼線、ピアノ線、ステンレス線であるが、抗高張力、耐摩耗性の面で優れるピアノ線等の高炭素鋼線またはステンレス鋼線が好ましい。
また、ワイヤ表面の油は鉱物油系が一般的であるが、使用するスラリーとの親和性が高い油であればあるほど大きな効果を得ることができる。
特にワイヤ表面の油の動粘度は、温度40℃において25〜100mm2/sであることが好ましい。油の動粘度が25mm2/s未満であると、ワイヤ表面に油を保持することが難しくなるからである。また、油の動粘度が100mm2/sを超えると動粘度が高すぎるため、伸線潤滑剤として使用する場合には、伸線性を悪化させ、後からワイヤ表面に油を塗布する場合には、油のワイヤ表面への付着量が15mg/m2以上となり、製造コストが高くなるからである。
また、ワイヤ表面の油は鉱物油系が一般的であるが、使用するスラリーとの親和性が高い油であればあるほど大きな効果を得ることができる。
特にワイヤ表面の油の動粘度は、温度40℃において25〜100mm2/sであることが好ましい。油の動粘度が25mm2/s未満であると、ワイヤ表面に油を保持することが難しくなるからである。また、油の動粘度が100mm2/sを超えると動粘度が高すぎるため、伸線潤滑剤として使用する場合には、伸線性を悪化させ、後からワイヤ表面に油を塗布する場合には、油のワイヤ表面への付着量が15mg/m2以上となり、製造コストが高くなるからである。
以上述べたように、本発明のソーワイヤは、伸線工程で使用される潤滑剤を油性とするか、あるいは従来の水溶性潤滑剤による最終伸線後に表面に油を塗布するだけで製造することができるので、そのためのコストは極めて低廉である。そして、ワーク切断部への砥粒の引き込み性を著しく向上させることができる。従って、本発明のソーワイヤは製造コストの増加を抑制しつつ、ワーク切断面の表面性状を向上させることができる。
以下に本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
図1は、本実施例の伸線径が0.08mmのソーワイヤの横断面図である。
図1に示すように本実施例のソーワイヤ10は、金属ワイヤ11の表面に油12を付着させた構成となり、以下のように製造することができる。
図1は、本実施例の伸線径が0.08mmのソーワイヤの横断面図である。
図1に示すように本実施例のソーワイヤ10は、金属ワイヤ11の表面に油12を付着させた構成となり、以下のように製造することができる。
先ず、線径5.5mmのピアノ線材(JIS SWRS82A相当材)を冷間引抜加工による一次伸線の後、パテンチング熱処理、二次伸線を施し線径0.7mmの中間ワイヤを製造する。そして熱処理を施した中間ワイヤを、多段のダイスを通過させて徐々に細径化して線径0.08mmのソーワイヤ10に伸線する。このとき使用した伸線装置は図3に示すとおり一般的な湿式伸線装置であり、伸線工程における潤滑剤は鉱物油系(鉱物油に有機金属系極圧添加剤またはイオウ系極圧添加剤を加えたもの)のものである。
そして、この例において製造したソーワイヤの表面油量をフーリエ変換型赤外線分光分析により測定したところ、8mg/m2であった。この測定方法は、油を含む試料を四塩化
炭素溶媒に浸漬し、油を超音波抽出した抽出液を赤外線分析計で測定するものである。これは、3.4〜3.5μmの波長領域に炭化水素特有の赤外線吸収領域が存在し、抽出液に含まれる油の量によって抽出液を透過する赤外線の量が変化する特性を利用したものである。
具体的には、本例で製造したソーワイヤ1.2976gをビーカに採り、四塩化炭素溶媒に浸漬し、油を超音波抽出した抽出液を25mlに濃縮後、液セル透過法で測定した。
そして、この例において製造したソーワイヤの表面油量をフーリエ変換型赤外線分光分析により測定したところ、8mg/m2であった。この測定方法は、油を含む試料を四塩化
炭素溶媒に浸漬し、油を超音波抽出した抽出液を赤外線分析計で測定するものである。これは、3.4〜3.5μmの波長領域に炭化水素特有の赤外線吸収領域が存在し、抽出液に含まれる油の量によって抽出液を透過する赤外線の量が変化する特性を利用したものである。
具体的には、本例で製造したソーワイヤ1.2976gをビーカに採り、四塩化炭素溶媒に浸漬し、油を超音波抽出した抽出液を25mlに濃縮後、液セル透過法で測定した。
なお、伸線時におけるソーワイヤの表面油量の調整は、最終段のダイスの減面率と形状を変えることにより行うことができる。例えば最終段のダイスのアプローチ角を緩やかにして減面率を下げることによって、ソーワイヤ表面の油量を増加させることができる。
さらに、最終ダイスを通過後に油を染み込ませたフェルトの間を通過させて別途油を塗布することもできる。
また、ソーワイヤ表面の油については、スラリーとの親和性があればよく、本例の鉱物油系に限定されるものではない。
さらに、最終ダイスを通過後に油を染み込ませたフェルトの間を通過させて別途油を塗布することもできる。
また、ソーワイヤ表面の油については、スラリーとの親和性があればよく、本例の鉱物油系に限定されるものではない。
以上のようにして製造されたソーワイヤでVTR用磁気ヘッドの材料である一辺が2インチの四角柱状フェライトを巾0.05mmに100枚切り出し、その切断面のうねりを測定した。その測定結果のうねりの平均値は、7μmであった。なお、従来のソーワイヤによる比較例では、うねりが10μmであった(うねりについては、図2におけるl1−l2参照)。
10 ソーワイヤ
11 金属ワイヤ
12 油
11 金属ワイヤ
12 油
Claims (3)
- 線径が0.05〜0.30mmの金属製のソーワイヤであって、ワイヤ表面に8〜15mg/m2の油を付着させたことを特徴とするソーワイヤ。
- 上記金属が高炭素鋼またはステンレス鋼である請求項1記載のソーワイヤ。
- 上記油が、温度40℃における動粘度25〜100mm2/sの油であり、スラリーとの親和性の高い性質を有する請求項1または2記載のソーワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003431925A JP2005186229A (ja) | 2003-12-26 | 2003-12-26 | ソーワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003431925A JP2005186229A (ja) | 2003-12-26 | 2003-12-26 | ソーワイヤ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005186229A true JP2005186229A (ja) | 2005-07-14 |
Family
ID=34789785
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003431925A Pending JP2005186229A (ja) | 2003-12-26 | 2003-12-26 | ソーワイヤ |
Country Status (1)
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---|---|
JP (1) | JP2005186229A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008149455A (ja) * | 2006-12-13 | 2008-07-03 | Siltronic Ag | 工作物から多数のウェハをスライスするための方法 |
-
2003
- 2003-12-26 JP JP2003431925A patent/JP2005186229A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008149455A (ja) * | 2006-12-13 | 2008-07-03 | Siltronic Ag | 工作物から多数のウェハをスライスするための方法 |
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