JP2005183857A - 変圧器の乾燥処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 変圧器中身を収容したケース毎に熱風加温,減圧処理,絶縁油の減圧注油,絶縁油の脱気処理を連続的に行うことにより、変圧器中身の乾燥処理を短時間で合理的に行うようにした。
【解決手段】 変圧器巻線2を鉄心3に同心配置して構成した変圧器中身1をケース6に収容する工程と、前記ケース6に仮蓋21を被着した後ケース6内に熱風を所定圧力により送風して変圧器巻線2の外周部の絶縁紙を所定温度により加温する工程と、変圧器巻線2の加温後ケース6内を所定の真空度で減圧して変圧器巻線2を乾燥する工程と、前記減圧下においてケース内に絶縁油を注油する工程と、前記注油した絶縁油を脱気させる工程と、更に、絶縁油の脱気後仮蓋を解離し、ケースにカバーを被着する工程とにより構成したことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 変圧器巻線2を鉄心3に同心配置して構成した変圧器中身1をケース6に収容する工程と、前記ケース6に仮蓋21を被着した後ケース6内に熱風を所定圧力により送風して変圧器巻線2の外周部の絶縁紙を所定温度により加温する工程と、変圧器巻線2の加温後ケース6内を所定の真空度で減圧して変圧器巻線2を乾燥する工程と、前記減圧下においてケース内に絶縁油を注油する工程と、前記注油した絶縁油を脱気させる工程と、更に、絶縁油の脱気後仮蓋を解離し、ケースにカバーを被着する工程とにより構成したことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、油入変圧器の乾燥処理方法の改良に関するものである。
従来、高圧巻線と低圧巻線とからなる配電用の変圧器巻線を、鉄心に組込んで変圧器中身を形成した後乾燥室において、24〜48時間ほどかけて所要温度(100℃前後)で加熱乾燥を行い、この後、ケースに収容し高圧巻線側のリード線を1次ブッシングに、低圧巻線側のリード線は2次ブッシングにそれぞれ接続した後、ケースに仮蓋を被着し、この仮蓋に設けたパイプを介してケース内を所定の真空度で減圧した後、絶縁油を真空注油し、注油後仮蓋を外して正規のカバーを被着することにより、変圧器の製造を行っていた。
前記の変圧器の製造方法においては、前記のように、変圧器中身の高圧,低圧巻線の乾燥処理は、ほぼ1日以上の時間を必要としていたため、変圧器の製造は非能率的で製造コストを高くするという問題があった。また、乾燥処理を終えた変圧器中身は、乾燥室から取り出してケースに収容して絶縁油を真空注油するまでの間は外気に晒されているので、この間に、変圧器中身の絶縁物が吸湿したりしてその絶縁性を低下させるという問題もあった。
このため、本件出願人は、ケースに収容した変圧器中身の巻線部分に通電を行い、変圧器中身の巻線部分を所定温度で加熱することにより、乾燥処理を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
即ち、前記の乾燥処理においては、変圧器巻線を鉄心に組み込んで形成した変圧器中身をそのままケースに収容し、各リード線を所定のブッシングに接続してケース内を真空引きし、適度な真空状態を保ちながら、予め低圧巻線側を短絡させた状態で高圧巻線側に直流電流を通電し、高圧巻線側が所定の温度(約80℃)に達したら、直流電流に代えて交流電流を高圧巻線に通電する。この結果、高圧巻線は発熱状態が維持されて加熱され、低圧巻線は交流電流の通電により電圧が誘起されて短絡電流が流れるため、高圧巻線と同様に発熱して加熱される。
そして、変圧器中身の高圧,低圧巻線の温度が所定の設定温度(約120℃)に達したら高圧巻線への通電を停止する。高圧,低圧巻線への乾燥処理が終了したら、前記巻線自体を外気に触れることなく、絶縁油を真空注油するようにしたので、前記変圧器中身における高圧,低圧巻線の乾燥処理は、真空状態の中で乾燥処理が行えるため、これまでの乾燥処理に比べ乾燥時間の短縮化を良好に図ることができる。
特公昭62−8001号公報
然るに、前記の乾燥処理方法においては、変圧器中身を構成する高圧,低圧巻線からなる変圧器巻線に電流を通電して乾燥処理を行う場合、これまでのように、変圧器中身を乾燥室にてほぼ1日以上かけて乾燥していた場合に比べれば短時間で乾燥処理を行うことができるものの、変圧器巻線に通電を行って所定の乾燥温度で乾燥させるには、巻線をその内部から加熱することになるため、乾燥時間は5〜10時間程必要であった。また、変圧器巻線に通電を行う関係上、変圧器巻線個々に通電を行うための電源設備も乾燥処理を行う変圧器の台数に匹敵する数量を必要とするため、設備費用も増大することになる結果、乾燥時間を考慮すると乾燥処理は非効率であるとともに、設備費用の増加に伴い、変圧器の製造コストを必然的に高くするという問題が依然として内在していた。
本発明は、前記の種々の問題点に鑑み、変圧器巻線の乾燥処理を効率的に行うことにより、変圧器の生産性を向上させて低コストで製造を可能とした、改良された変圧器の乾燥処理方法を提供することにある。
請求項1記載の発明は、乾燥処理した変圧器巻線を鉄心に同心配置して構成した変圧器中身をケースに収容する工程と、前記ケースに仮蓋を被着した後ケース内に熱風を所定圧力により送風して前記変圧器巻線の外周部の絶縁紙を所定温度にて加温させる工程と、前記変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温した後ケース内を所定の真空度で減圧して前記変圧器巻線を乾燥する工程と、前記減圧下においてケース内に絶縁油を注油する工程と、前記絶縁油の注油後前記注油した絶縁油を脱気させる工程と、更に、絶縁油の脱気後仮蓋を解離し、ケースにカバーを被着する工程とにより構成されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の変圧器の乾燥処理方法において、前記変圧器中身を収容したケース内に、変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温させる熱風を温度100〜110℃、風量1〜1.5m3/minにて流通させ、前記熱風により加温処理された変圧器巻線の含有水分量を低減させるためにケース内の真空度を1,330Pa以下に設定して前記変圧器巻線を乾燥させ、更に、前記ケース内に注油した絶縁油を脱気させるため前記絶縁油を充填したケース内を1,330Pa以下に減圧して脱気するようにしたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の変圧器の乾燥処理方法において、所要数のケースに変圧器中身をそれぞれ個別に収容して前記ケースの開口部に仮蓋を被着し、前記変圧器中身を収容したケース内に100〜110℃の熱風を1〜1.5m3/minの風量で10〜20分間流通させ、前記変圧器中身を構成する変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温処理した後ケース内を1,330Pa以下に10〜20分間減圧して変圧器巻線の絶縁紙の含有水分量を規定値以下に保持し、前記変圧器中身の含有水分量を規定値以下に保持させた状態でケース内に絶縁油を定量真空注油し、前記絶縁油を脱気処理した後、仮蓋をケースから解離してカバーをケースに被着するようにしたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1に記載した変圧器の乾燥処理方法において、変圧器中身を構成する変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温させるためにケースに送風される熱風は、乾燥した空気あるいは窒素ガス等水分の少ないガスを温度100〜110℃、風量1〜1.5m3/minにて生成してケース内に送風するようにしたことを特徴とする。
請求項1記載の発明においては、乾燥処理した変圧器巻線を鉄心に同心配置して構成した変圧器中身をケースに収容し、仮蓋を被着した後、熱風をケース内に送風するとともに、ケース内に送風した熱風を仮蓋側に設けた排気口から常時排出させてケース内の変圧器巻線外周部の絶縁紙を加温し、つづいて、ケース内を減圧して前記熱風にて加温した変圧器巻線の外周部の絶縁紙部分に残存している水分(湿気)を乾燥処理して除去し、かつ、前記の減圧下において絶縁油を注油し、更に、注油後の絶縁油を脱気処理することにより、即ち、変圧器中身を構成する変圧器巻線をケース内において再度乾燥処理を施して変圧器を製造するようにしたので、変圧器の組立に際してこれまでのように、事前に乾燥させた変圧器巻線を鉄心に同心配置して変圧器中身を組立て、これをケースに収容して絶縁油を真空注油したり、あるいは、ケースに変圧器中身を収容してケース内を減圧した後、変圧器巻線に電流を通電して変圧器巻線を乾燥処理するようにした場合の如く、変圧器の乾燥処理に多大な時間を要したり、乾燥処理のために高価な電源設備を用いて乾燥処理を行う必要は全くないので、変圧器の乾燥処理作業を迅速・容易に行い得、これにより、変圧器の製造コストが良好に低減でき利便である。
請求項2記載の発明おいては、変圧器巻線の外周部の絶縁紙を乾燥するに当り、熱風を100〜110℃の温度にてケース内を流通させる方式が採用されているので、変圧器中身全体を加温して乾燥させるのではなく、変圧器巻線の外周部の絶縁紙に残存している水分を除去すればよいため、乾燥時間が良好に短縮することができる。また、熱風による乾燥後は、ケース内を1,330Pa以下に減圧して変圧器巻線の絶縁物に残存している水分(湿気)を乾燥・除去した後、前記減圧下において絶縁油を注油するようにしているので、変圧器巻線は外気と全く接触することなく絶縁油に浸漬した状態で保持できることはもとより、絶縁油の注油後においても脱気処理を行うようにしているため、変圧器巻線は外気の影響を受けることなく、最良の状態で製造することができる結果、品質に優れた変圧器の提供が可能となる。
請求項3記載の発明においては、変圧器巻線の乾燥処理において、前記変圧器巻線を備えた変圧器中身はそれぞれケース個々に収容して乾燥処理を行うようにした方式が採用されているので、熱風の流通からケース内の減圧・乾燥処理については、狭隘なスペースを利用しているため、熱風によるケース内の乾燥温度,ケース内の減圧状況を早期に実現することが可能となり、しかも、熱風の流通,ケース内の減圧処理はすべて配管を通して行うことができるので、乾燥設備においても簡素化することができる関係上、変圧器の乾燥処理が短時間で行うことができる結果、変圧器の製造コストを良好に低減できるという利点も備えている。
請求項4記載の発明においては、変圧器巻線の乾燥処理において、乾燥温度を100〜110℃に設定し、かつ、風量を1〜1.5m3/minにすることにより、熱風は相当の流速で狭いケース内を通り抜けることができるので、ケース内を迅速に乾燥温度まで上昇させることができるため、変圧器巻線の絶縁紙の乾燥処理を良好に行うことができる。また、熱風は乾燥した空気に代えて窒素等水分の少ないガスを使用することにより、変圧器巻線の乾燥処理は、短時間で行うことができるので、変圧器の製造時間やコストを良好に低減できるという効果も備えている。
以下、本発明の実施例を図1ないし図3によって説明する。図1において、1は変圧器巻線2と変圧器の鉄心3とからなる変圧器中身で、変圧器巻線2は内側巻線a(低圧側巻線)と外側巻線b(高圧側巻線)とによって構成されており、前記内側,外側巻線a,bは、それぞれ層間絶縁紙をコイル導体間に介在させて巻回形成されている。
そして、前記巻回された変圧器巻線2は鉄心3に同心配置させ、これら変圧器巻線2と鉄心3との間に図示しない絶縁性の楔等を挿入して、変圧器巻線2を鉄心3に固定する。4は鉄心3の上端面に取付けたタップ切換板で、変圧器巻線2の外側巻線bから引出したタップ導線5をタップ切換板4に設けた図示しないタップ接続金具に接続する。
6は変圧器のケース、7,8は前記ケース6の上部側において互いに相反する方向に取り付けられた高圧ブッシングと低圧ブッシングで、変圧器巻線2の外側巻線bから引出されたタップ導線5を接続したタップ切換板4より引出したリード線9を高圧ブッシング7に、内側巻線aから引出した引出線と接続したリード線10は、低圧ブッシング8にそれぞれ接続される。
次に、図1において、変圧器中身2を乾燥処理する乾燥処理手段Aの概略構成について説明する。図1において、前記乾燥処理手段Aは大別すると、熱風を所定温度に加熱し、これを所定の風量にてケース6内に供給する熱風供給装置11と、ケース6内を所定の真空度に保持する真空保持装置15と、ケース6内に絶縁油を定量注油する注油装置20とからなり、前記熱風供給装置11,真空保持装置15,注油装置20は図1に示すように、仮蓋21と配管系統を介して連結されている。なお、前記仮蓋21は変圧器中身2を乾燥処理する間だけ使用するため、ケース6との着脱を良好に行うため、配管系統との連結に当っては、例えば、連結部位の一部を蛇腹状に形成したり、可撓性及び耐久性に優れた金属や樹脂部材からなる連結部材を用いて、配管系統と連結することにより、ケース6の開口面に対して迅速・確実に脱着できるように構成されている。
つづいて、前記乾燥処理手段Aを構成する各装置11,15,20の概略構成について説明する。最初に、熱風供給装置11は図1に示すように、圧縮空気を生成するコンプレッサ12と、このコンプレッサ12と各ケース6に脱着する複数の仮蓋21との間に配管した送風管13に配管接続したヒータを内蔵した熱風生成装置Hと、前記送風管13を各ケース6毎に必要に応じて開閉させるバルブ14とを備えて構成されている。
次に真空保持装置15は図1に示すように、真空ポンプ16と、前記各仮蓋21と真空ポンプ16との間に配管した吸引管17に各ケース6毎に配管接続したバルブ18とを備えて構成されている。更に、注油装置20は図1に示すように、注油ポンプ22と、この注油ポンプ22と各仮蓋21との間に配管した注油管23に各ケース6毎に配管接続したバルブ24とを備えて構成されており、前記注油ポンプ22は図示しない絶縁油のタンクにパイプを介して連接されている。また、各仮蓋21には、ケース6内に流入する熱風を外部に排出するための排気管25が、排気バルブ26を配管接続して取付けられている。
次に、本発明の動作について説明する。変圧器巻線2を鉄心3に同心配置して形成した変圧器中身1を図1に示すように、所要数配置した各ケース6毎にそれぞれ収容し、この変圧器中身1をケース6内において固定手段により固定した後、タップ切換板4に一方を接続したリード線9の他方を高圧ブッシング7に接続し、また、内側巻線aから引出した引出線と接続したリード線10は低圧ブッシング8に接続することにより、変圧器中身1のケース6への組み付けを終える(図2のS1参照)。
なお、乾燥処理手段Aを構成する熱風供給装置11,空保持装置15,注油装置20の各起動・停止の順序,起動時間,熱風の加熱温度,風量,ケース6内の真空度,絶縁油の注入量,絶縁油の脱気時間等は、すべて図示しない制御装置からの指令によって自動制御されるように構成されている。
前記のように、変圧器中身1をそれぞれケース6に収容してこのケース6との組み付けを終了したら、次に各ケース6の上部開口部に仮蓋21を気密に被着する。仮蓋21のケース6への被着に当っては、乾燥処理手段Aを構成する各装置11,15,20の配管、即ち、送風管13,吸引管17,注油管23は、前記仮蓋21との連結部付近がそれぞれ図示しない可撓性部材を用いて連結されているので、仮蓋21は変圧器中身1をケース6に収容する際、変圧器中身1の収容の妨げにならないように簡単に横方向に移動させることができる結果、変圧器中身1の収容及びケース6への組み付け、組み付け後のケース6に仮蓋21を被着する作業が容易に行うことができる(図2のS2と図3の21参照)。
変圧器中身1を収容・固定したケース6に仮蓋21を被着したら、図示しない制御装置からの指令により熱風供給装置11を駆動する。即ち、図1において、送風管13及び排気管25に配管接続した各バルブ14,26を開放し、コンプレッサ12によって所定風量が得られるように圧縮された空気を送風管13に給送する。前記送風管13に給送された空気は、送風管13の配管途中に設けた熱風生成装置Hにより所要温度(100〜110℃)に加熱し、熱風となって各ケース6内に所定風量(1〜1.5m3/min)にて送出され、ケース6内を循環して仮蓋21に取付けた排気管25からケース6外に排出される(図2のS3,S4と図3の12,H,25参照)。
前記のように、コンプレッサ12により生成した圧縮空気を熱風生成装置Hにて所要温度に加熱してケース6内に送出しながら排気管25から外部に強制排出させることにより、各ケース6内に収容した変圧器中身1を構成する変圧器巻線2を強制的に加温させる。前記所定温度に加熱された熱風は、ケース6毎に給送するように構成されているので、変圧器中身1を収容したケース6内が狭隘なスペースであることと、熱風を所要風量で給送・排出するようになっている関係上、前記熱風によりケース6内温度が早期に上昇することになるため、変圧器巻線2は短時間(約10〜20分間)で良好に加温処理することができる。
ケース6内に熱風を所定時間給送すると、図示しない制御装置からの指令により熱風供給装置11の駆動を停止させる。即ち、コンプレッサ12と熱風生成装置Hの運転を停止させるとともに、バルブ14,26を閉止する(図2のS5〜S6と図3の12,H,25参照)。前記熱風供給装置11の駆動が停止すると、制御装置からの指令により真空保持装置15を駆動させる。真空保持装置15に駆動指令が出力されると、吸引管17に配管接続した各バルブ18を開放すると同時に真空ポンプ16を起動させる(図2のS8,S9と図3の16参照)。
バルブ18を開放して真空ポンプ16を駆動させることにより各ケース6内が徐々に減圧され、各ケース6内の真空度が事前に設定した1,330Paに達すると、暫くの間(例えば、10〜20分間)各ケース6内の前記真空度1,330Paを維持し、変圧器巻線2の外周部の絶縁紙に残存している水分(湿気)の乾燥・除去を図るための減圧・乾燥処理を行う。前記各ケース6内を減圧する場合においても、各ケース6内が狭隘なスペースとなっている関係上、ケース6内は短時間でその真空度が1,330Paに達して前記真空度を良好に維持することが可能であるため、前記絶縁紙に残存している水分の除去(乾燥処理)を迅速・容易に行うことができる。前記ケース6内の減圧・乾燥処理においても、ケース6毎に行うことにより比較的短時間で行うことが可能となる。
前記のように、熱風による変圧器巻線2の加温処理の後、前記ケース6内を減圧して変圧器中身1を構成する変圧器巻線2を乾燥処理することにより、前記変圧器巻線2の外周部の絶縁紙の含有水分量を測定したところ2%以下に抑制することが可能となった。この含有水分量は、例えば、電気協同研究(第53巻第4号75頁)に示されている絶縁物中水分管理値(154kV級以下 2.0%・wt以下)を十分に保持することができるものである。前記各ケース6内の減圧・乾燥処理は所定時間(約10〜20分)が経過すると、図示しない制御装置からの指令により真空保持装置15は駆動を停止する。即ち、真空ポンプ16の運転停止と、バルブ18を閉止する(図2のS10〜S12と図3の16参照)。
つづいて、前記各ケース6内の減圧状態下において、図示しない制御装置からの指令によって注油装置20を駆動する。即ち、注油管23に配管接続したバルブ24を開放し、次に注油ポンプ22を起動させ、図示しない絶縁油のタンクから絶縁油を注油管23を通して各ケース6に注油(注油時間は約5分)を行う。絶縁油を注油する際、各ケース6内は減圧状態下にあるため、ケース6内に流入した絶縁油は、変圧器中身1内に気泡をほとんど生じさせることなく良好に浸透させた状態でケース6に注入することができる(図2のS13〜S15と図3の22参照)。
前記各ケース6内に絶縁油が定量注入されると、図示しない制御装置からの指令により、注油装置20の駆動を停止させる。即ち、注油ポンプ22の運転を停止し、バルブ24を閉止するものである(図2のS16〜S18と図3の22参照)。
各ケース6への絶縁油の注油が終了したら、再び真空保持装置15を駆動すべく制御装置からの指令により、バルブ18を開放して真空ポンプ16を駆動させる。前記真空ポンプ16を約3分間ぐらい駆動し、絶縁油の脱気処理を行うものである。この脱気処理により絶縁油中には空気がほとんど存在していないため、変圧器巻線2は空気や水分(湿気)の悪影響を受けることが全くないので、長期にわたって円滑・良好に使用することが可能となる(図2のS19〜S21と図3の16参照)。
前記のように、各ケース6内に注油した絶縁油の脱気処理が完了すると、図示しない制御装置からの指令により、真空ポンプ16の運転を停止させるとともに、バルブ24を閉止して注油作業を終了するものである。注油、脱気作業が終了したら、図示しない制御装置からの指令によって排気管25に配管接続したバルブ26を開放し、各ケース6内を大気圧に戻した後、仮蓋21をケース6から取り外し、正規のカバー(図示せず)をケース6の開口端に被着して変圧器の乾燥処理(製造)を終了するものである(図2のS22〜S26参照)。
本発明は、以上説明したように、変圧器中身1の乾燥処理に当っては、ケース6に熱風を給送・排出させて変圧器中身1を構成する変圧器巻線2の外周部の絶縁紙を加温し、次いで、ケース6内を減圧して変圧器巻線2の外周部の絶縁紙に水分(湿気)が残存している場合、水分を除去する乾燥処理を施してから絶縁油を前記減圧状態下で注油し、更に、絶縁油の注油後再度絶縁物の脱気処理を行うことにより、変圧器中身1を乾燥処理して変圧器の組立てを行うようにしたので、変圧器中身1は熱風処理→減圧処理→絶縁油の脱気処理と計3回に亘り乾燥処理を行うことにより、水分の残留に伴う品質低下を良好に回避するとともに、前記の乾燥処理は、熱風供給装置11,真空保持装置15,注油装置20,排気管25をそれぞれ途中にバルブ14,18,24,26を介在させて複数の仮蓋21に配管接続して乾燥処理手段Aが構成されているので、変圧器中身1を個別に収容した複数のケース6において、例えば、10数台のケース6について一度に処理することができるため、変圧器中身1の乾燥処理と組立作業が効率的に行い得、変圧器の製造工程の簡素化と製造コストを良好に軽減することができ、利便である。
なお、本発明は、空気を加熱してケース6内を流通させることにより変圧器中身1を乾燥する例について説明したが、前記空気に代えて、例えば、事前に温度を低くした乾燥空気、あるいは、窒素ガス等水分の少ないガスを前記空気と同様に加熱して変圧器巻線2の外周部の絶縁紙を加温させることにより、変圧器中身1の乾燥処理を更に短時間で行うようにしても、本発明は成立するものである。
1 変圧器中身
2 変圧器巻線
6 ケース
11 熱風供給装置
12 コンプレッサ
13 送風管
14,18,24,26 バルブ
15 真空保持装置
16 真空ポンプ
17 吸引管
20 注油装置
21 仮蓋
22 注油ポンプ
25 排気管
A 乾燥処理手段
H 熱風生成装置
2 変圧器巻線
6 ケース
11 熱風供給装置
12 コンプレッサ
13 送風管
14,18,24,26 バルブ
15 真空保持装置
16 真空ポンプ
17 吸引管
20 注油装置
21 仮蓋
22 注油ポンプ
25 排気管
A 乾燥処理手段
H 熱風生成装置
Claims (4)
- 乾燥処理した変圧器巻線を鉄心に同心配置して構成した変圧器中身をケースに収容する工程と、前記ケースに仮蓋を被着した後ケース内に熱風を所定圧力により送風して前記変圧器巻線の外周部の絶縁紙を所定温度にて加温させる工程と、前記変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温した後ケース内を所定の真空度で減圧して前記変圧器巻線を乾燥する工程と、前記減圧下においてケース内に絶縁油を注油する工程と、前記絶縁油の注油後前記注油した絶縁油を脱気させる工程と、更に、絶縁油の脱気後仮蓋を解離し、ケースにカバーを被着する工程とにより構成されていることを特徴とする変圧器の乾燥処理方法。
- 請求項1記載の変圧器の乾燥処理方法において、前記変圧器中身を収容したケース内に、変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温させる熱風を温度100〜110℃、風量1〜1.5m3/minにて流通させ、前記熱風により加温処理された変圧器巻線の含有水分量を低減させるためにケース内の真空度を1,330Pa以下に設定して前記変圧器巻線を乾燥させ、更に、前記ケース内に注油した絶縁油を脱気させるため前記絶縁油を充填したケース内を1,330Pa以下に減圧して脱気するようにしたことを特徴とする変圧器の乾燥処理方法。
- 請求項1記載の変圧器の乾燥処理方法において、所要数のケースに変圧器中身をそれぞれ個別に収容して前記ケースの開口部に仮蓋を被着し、前記変圧器中身を収容したケース内に100〜110℃の熱風を1〜1.5m3/minの風量で10〜20分間流通させ、前記変圧器中身を構成する変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温処理した後ケース内を1,330Pa以下に10〜20分間減圧して変圧器巻線の絶縁紙の含有水分量を規定値以下に保持し、前記変圧器中身の含有水分量を規定値以下に保持させた状態でケース内に絶縁油を定量真空注油し、前記絶縁油を脱気処理した後、仮蓋をケースから解離してカバーをケースに被着するようにしたことを特徴とする変圧器の乾燥処理方法。
- 請求項1〜3のいずれか1に記載の変圧器の乾燥処理方法において、変圧器中身を構成する変圧器巻線の外周部の絶縁紙を加温させるためにケースに送風される熱風は、乾燥した空気あるいは窒素ガス等水分の少ないガスを温度100〜110℃、風量1〜1.5m3/minにて生成してケース内に送風するようにしたことを特徴とする変圧器の乾燥処理方法。
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