JP2005180605A - 貯蔵容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガス充填時の温度上昇を抑えて充填不足を防止でき、薄肉とした場合でも耐圧強度を十分に確保できる貯蔵容器を提供する。
【解決手段】 高圧ガス容器1は、空間Sが画成されるように中空状に形成されたライナー2の外面が、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質を含むFRP外被3によって覆われるように構成されたものである。
【選択図】 図1
【解決手段】 高圧ガス容器1は、空間Sが画成されるように中空状に形成されたライナー2の外面が、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質を含むFRP外被3によって覆われるように構成されたものである。
【選択図】 図1
Description
本発明は貯蔵容器に関し、詳しくは、ガスが充填される圧力容器等の貯蔵容器に関する。
燃料電池自動車や天然ガス自動車には、一般に、燃料である水素(H2)ガスや天然ガスが高圧充填された燃料ガスタンクが搭載される。このようなタンク用途に用いられる圧力容器としては、軽量且つ強度を向上させる観点から、金属製又は非金属製のライナーの外側周囲を覆うように繊維強化プラスチック(以下、「FRP」と記す。)から成る外被(外層、外殻)が形成されたものが広く用いられている。
例えば、特許文献1には、外殻を構成するFRP部内に金属繊維や炭素繊維等の導電繊維が含有されて成り、金属粉やカーボンブラック等の無機粒子を更に含んでもよい圧力容器が開示されている。この圧力容器は、導電繊維に通電して容器を昇温させることで圧力容器の温度や湿度をコントロールすることを企図したものである。また、無機粒子を含有させることにより、圧力容器の熱伝導性の向上が図られている。さらに、特許文献2では、容器本体の帯電防止性を改善すべく、FRPの母材樹脂にカーボンブラックが添加された圧力容器が提案されている。
特開平11−230347号公報
特開平10−185089号公報
ところで、圧力容器内に水素ガス等の燃料ガスを充填する際には、加圧注入によって高められたガス分子の運動エネルギーが容器に付与されて容器温度が不可避的に上昇してしまう。このとき、容器からの放熱が十分であれば、容器及びその内部ガスの温度上昇が抑えられ、又は緩和され得る。しかし、外被がFRP製である場合、その熱伝導性が不十分な傾向にあるため、容器からの放熱量よりも容器への入熱量が大きくなる傾向にある。こうなると、ガスの種類、その充填量、充填速度等に依存するものの、容器及びその内部に充填されたガスが極めて高温に達することがある。殊に、充填速度を高めることが将来的に熱望されているが、そうした場合、容器及び内部のガスの温度は更に上昇する傾向にある。
このように容器温度及びその内部のガス温度が上昇すると、内部のガス圧(内圧)が、不都合に増大してしまい、目的とする充填量(規定量)のガスを充填できなくなってしまう。或いは、予め容器の温度上昇を考慮して規定量を定めておくことも考えられるが、実際の温度上昇の程度が想定と異なると、通常、定められる許容量を超えて過充填してしまうおそれがある。さらに、温度上昇によって、圧力容器やそれに備わるバルブのシール材の耐久性が損なわれるといった問題も生じ得る。
かかる過度の温度上昇を抑止するには、上記従来の圧力容器で提案されているように、容器の構成材料の一つとしてカーボンブラックや金属粉(片)等の熱伝導が良好なものを外被の構成材料に用いることが有効と考えられる。こうすれば、容器からの放熱量が増大し、結果として容器温度の上昇がある程度抑えられ得る。よって、上述したような容器内圧の上昇に起因する不都合が緩和され、規定量の燃料ガスを充填し易くなり得る。
しかし、燃料ガスの充填量を減少させること無く、車両空間を更に確保すべく燃料タンクの小型化が切望されており、それには容器の厚さ、特に、通常内側のライナーよりも肉厚とされる外被のFRP層の厚さを低減するのが有効であるが、FRP層を薄くする分、容器の強度すなわち耐圧性が損なわれてしまう。また、容器からの放熱量を更に高めるためにカーボンブラック等の熱伝導性物質の充填量(割合)を増やすと、FRP本来の特性が低下するおそれも考えられ、こうなると、容器の強度が更に低下する傾向にある。
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、ガスを充填する際の容器及びその内部ガスの温度上昇を抑えてそれに起因するガスの充填不足を防止できると共に、従来に比して薄肉とした場合でも耐圧強度を十分に確保できる貯蔵容器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明による貯蔵容器は、ガスが供給される内容器と、その内容器の周囲に設けられており、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤(‘すす’、‘スート’)、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質を含む繊維強化プラスチック(FRP)を有して成る外容器とを備えるものである。
ここで、本発明において「フラーレン」(Fullerene)とは;
(1)IUPACの2002年勧告に準じ、球殻状又は閉塞した管状の炭素クラスターを骨格とする分子であり、20個以上の炭素原子を有しており各炭素原子が全て三配位である‘かご’型分子、
(2)IUPAC(A Preliminary Survey,1997)に準じ、20個以上の偶数個の炭素原子から成り且つ12個の五角面と(n/2−10;ただし、nは炭素原子数)個の六角面を有する閉多面体‘かご’型分子、
(3)CASの定義に準じ、20個以上の炭素原子がそれぞれ隣接する3原子と結合して成る閉じた擬球構造を有する分子であって、各環の員数は特に制限されず、また、いわゆる準(quasi-)フラーレンを含むもの、
(4)単一分子として32〜1000個又はそれ以上の炭素原子を含む中空球状構造分子、のいずれかに該当するものをいう。
(1)IUPACの2002年勧告に準じ、球殻状又は閉塞した管状の炭素クラスターを骨格とする分子であり、20個以上の炭素原子を有しており各炭素原子が全て三配位である‘かご’型分子、
(2)IUPAC(A Preliminary Survey,1997)に準じ、20個以上の偶数個の炭素原子から成り且つ12個の五角面と(n/2−10;ただし、nは炭素原子数)個の六角面を有する閉多面体‘かご’型分子、
(3)CASの定義に準じ、20個以上の炭素原子がそれぞれ隣接する3原子と結合して成る閉じた擬球構造を有する分子であって、各環の員数は特に制限されず、また、いわゆる準(quasi-)フラーレンを含むもの、
(4)単一分子として32〜1000個又はそれ以上の炭素原子を含む中空球状構造分子、のいずれかに該当するものをいう。
なお、本発明における「フラーレン」には、完全に水素化された飽和フラーレン(例えば C60H60)すなわちフラーラン(Fullerane)、及び、ヘテロフラーレン、ノルフラーレン、ホモフラーレン、セコフラーレンといったフラーロイド(Fulleroid)が含まれる。
また、本発明において「ナノチューブ」とは、いわゆるカーボンナノチューブであり、筒状又は略筒状の炭素クラスターを骨格とする分子であって、炭素原子数は当該形状が構成される数であれば特に制限されるものではない。さらに、通常分子骨格の端部(先端部)は、閉塞されていてもいなくてもよく、閉塞されている場合、筒状部の延在長によっては、上記「フラーレン」の定義にも該当する分子が含まれる。
さらに、本発明において「フラーレン煤」とは、フラーレンの製造過程において生成されたフラーレンを含む合成炭素質材料をいう。またさらに、本発明において「ナノチューブ煤」とは、ナノチューブの製造過程において生成されたナノチューブを含む合成炭素質材料をいう。
さらにまた、フラーレンとナノチューブは、同原料から、例えば、アーク放電法、気相熱分解法、レーザーアブレーション法、CVD法、水熱法等の製法で得ることができ、製造装置内の回収部位又は回収方法によって両者の分離精製が可能とされる。ただし、本発明における炭素質物質としては、両者が混合された形態で用いてもよい。また、これらを含むフラーレン煤とナノチューブ煤についても同様である。すなわち、フラーレン煤とナノチューブ又はナノチューブ煤との混合体、或いは、ナノチューブ煤とフラーレン又はフラーレン煤との混合体を本発明における炭素質物質として用いてもよい。
このように構成された貯蔵容器は、内容器と外容器との二重構造のガス貯蔵容器として機能する。内容器は、例えば、金属製及び/又は樹脂等の非金属製のライナーとして構成でき、外容器が、その内容器の外周の一部、望ましくは全部を覆うように内容器の外面に被着したものであると好ましい。そして、この外容器が、FRPを母体とし、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質を含むので、例えば、カーボンブラックを含む従来の貯蔵容器と同等又はそれ以上の熱伝導性が発現される。また、かかる炭素質物質を含めることにより、引張強度といった機械強度が格段に向上されることが確認された。
このような作用が奏されるメカニズムの詳細は、これら炭素質物質が、FRPのマトリックス樹脂に混合分散された状態で、そこに含まれる繊維と、又は、炭素質物質の分子同士が何らかの結合を生じ、かかる結合が三次元的に網目状にネットワーク化されることにより、繊維によって強化されたマトリックス樹脂が更に一層強化されることが要因の一つと推定される。ただし、作用はこれに限定されない。また、このように炭素質物質によるネットワーク化が生じ得るので、熱伝導特性が更に改善されることも考えられる。ただし、作用はこれらに限定されない。
より具体的には、内容器が、常圧に比して圧力が高められたガス(例えば、水素ガス、天然ガスといった燃料ガス等)が充填されるものであるときに、本発明の構成が一層有用である。すなわち、本発明による貯蔵容器は、高圧ガス容器として優れたものである。なお、内容器内のガス圧(内圧)は、特に制限されず、いわゆる圧力容器の規格圧に応じて内容器及び外容器の性状を適宜決定することができる。
本発明の貯蔵容器によれば、ガスを充填する際の容器及びその内部ガスの温度上昇を抑えてそれに起因するガスの充填不足を十分に防止できると共に、従来に比して薄肉としても耐圧強度を十分に確保することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
図1は、本発明による貯蔵容器の好適な一実施形態を示す模式断面図である。高圧ガス容器1(貯蔵容器)は、空間Sが画成されるように中空状に形成されたライナー2(内容器)外面の略全部が、FRP外被3(外容器)によって覆われるように構成されたものである。ライナー2は、略円筒状を成す胴壁部の両端が絞り状に形成された曲壁部で閉塞されるように形成されており、両端部の略中心にガスが供給/排出される開口部4,5が突設されている。なお、開口部4,5のいずれか一方のみが設けられていてもよい。
ライナー2の材質は、特に制限されるものではなく、樹脂等の有機材、及び金属等の無機材のいずれをそれぞれ単独で或いは両者を組み合わせて用いることができる。ライナー2を樹脂で構成する場合、その樹脂としては特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、その他の各種樹脂が挙げられ、これらは単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。組み合わせて用いる場合には、複数層から成る積層体(多層体)としてもよい。
また、ライナー2を金属で構成する場合、その金属としては、特に制限されるものではなく、例えば、各種炭素鋼、各種ステンレス鋼、又は、他の合金、複合金属等が挙げられ、合金としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金といったいわゆる軽合金がより好ましく、これらは単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ライナー2の厚さは、その材質、高圧ガス容器1の寸法形状、要求される耐圧等に依存するものの、特に限定されず、好ましくは0.5mm〜数十mm程度、より好ましくは1mm〜10mm程度である。
一方、FRP外被3は、マトリックス樹脂(プラスチック)が繊維で補強されたものであり、マトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、等が挙げられ、これらのなかでは、エポキシ樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂がより好ましい。また、天然ゴム、合成ゴム等をマトリックスとして用いてもよい。さらに、マトリックス樹脂は、粘着性を有していてもよく、例えば、ポリマー系の接着剤を用いてもよい。
また、強化繊維としては、金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維といった無機繊維、或いは、アラミド繊維、ナイロン繊維等の合成有機繊維、或いは綿等の天然有機繊維を例示できる。これらの繊維は、単独で又は混合して(混繊として)使用することができ、これらの中では、炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維、ガラス繊維等が好ましく、炭素繊維、アラミド繊維が特に好ましい。
FRP外被3におけるマトリックス樹脂と繊維との含有割合としては、樹脂及び繊維の種類、繊維強化方向、厚さ等に依存するが、通常、好ましくはマトリックス樹脂:繊維=10〜80体積%:90〜20体積%、より好ましくはその比が25〜50体積%:75〜50体積%とされる。
また、FRP外被3の厚さは、その材質、高圧ガス容器1の寸法形状、要求される耐圧等に依存するものの、特に限定されず、好ましくは数mm程度、より好ましくは数mm〜50mm程度とされ、胴部の外径が300mmφ程度であるときに20mm程度とされる場合が多い。ただし、本発明では後述するように肉厚をより一層薄くしても圧力容器として十分な機能性を発現することができる。
さらに、FRP外被3には、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質が配合されている。本発明におけるこれらの炭素質物質の定義は前述した通りである。
具体的には、フラーレンとしては、サッカーボールに似た形状の20面体構造を有するC60分子(バクミンスターフラーレン)、C70分子、C84分子等の高分子量のフラーレン等が挙げられる。なお、一例として、C60フラーレンは、直径が0.7nmであり、分子量が720、比重が1.72g/cm3のものである。また、これらのフラーレン分子はそのボール形状の炭素ケージ(殻)内に金属や希ガス等の原子を閉じ込めることができ、種々の誘導体が知られている。
例えば、フラーレンの炭素ケージ内に1つ又は複数の金属原子が閉じ込められた金属内包フラーレンや、1、2−ジヒドロ[60]フラーレン、1−ブロモ−1.2−ジヒドロ[60]フラーレン、1、2−ジヒドロ[60]フラーレン−1−オール、1、2−ジヒドロ[60]フラーレン−1、2ジカルボニトリル、1、2−メタノ[60]フラーレン、1、2−エポキシ[60]フラーレン、1,6(a)−ホモ[60]フラーレン、[60]フラーレン-1-エリド、1、2−([2,3]ナフタレノ)[60]フラーレン等のフラーレンを基本骨格とするフラーレン誘導体を、本発明の炭素質材料として使用してもよい。
さらに、フラーレンがいわゆる入れ子構造になったC1500などの同心球状又はタマネギ状と表現されるカーボンオニオンもフラーレンの一種であり、本発明の炭素質材料として用いることができる。
また、ナノチューブは、一般に長尺な筒型形状を成しており、通常、外径が5〜50nm程度、内径は1〜20nm程度、長軸長が0.01〜5μm程度の分子である。また、フラーレン同様、各種誘導体が公知である。また、そのチューブ内に他の元素が包含されたものも知られている。
さらに、フラーレン煤及びナノチューブ煤は、フラーレン及びナノチューブのいずれか或いは双方を製造する際に得られる副生物であり、フラーレンやナノチューブは、通常、これらの煤から単離精製される。例えば、フラーレン煤の場合、フラーレンの含有割合は、通常、数質量%〜数十質量%程度である。またさらに、このような炭素質物質のFRP外被3における含有割合としては、これらの炭素質物質を除くFRP外被3の質量に対して好ましくは20〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%とされる。
このように構成された高圧ガス容器1を製造する方法の一例について以下に説明する。まず、ライナー2をブロー成形法、回転成形法等によって形成する。また、それとは独立に、少なくとも上述した強化繊維と、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質と、マトリックス樹脂とを適宜の処方で予め混合しておく。このFRP用混合物は、繊維及び上記炭素質物質に樹脂が含浸されたものであり、これらの構成材料の他に適宜の添加剤を含んでいてもよい。
次に、ライナー2の外表面に、例えば、フィラメントワインディング法、ハンドレイアップ法、テープワインディング法、パネル成型法、オートクレーブ法等を用いてFRP用混合物を巻き付ける。また、ライナー2の寸法形状、強度等によっては、トランスファー法、射出成型法等を用いることもでき、これらのなかでは、フィラメントワインディング法、テープワインディング法が好ましい。それから、必要であれば、熱処理を施して高圧ガス容器1を得る。また、強化繊維の配向は特に制限されず、また、一方向強化でも、複数の方向強化でもよい。
このように構成された高圧ガス容器1では、開口部4及び/又は開口部5から、ライナー2の内部の空間Sに燃料ガスが加圧充填される。高圧ガス容器1へのガス充填量(充填圧力)としては、例えば、燃料電池車の燃料ガスである水素ガスを例にとると、政府関係省庁で検討が進められている高圧ガス保安法に基づく水素ガス供給ステーション及び高圧水素容器に関する規制の枠組みでは、35MPa、70MPaといった数値が議論されている。
水素ガス供給ステーションの将来的な構想においては、かかる35MPa、70MPaといった水素ガスの高圧水素容器への充填を、現在のガソリン燃料の供給ステーションにおける給油時間と略同等の時間で実現することが望まれており、例えば、35MPaの水素ガス充填を5分程度で行うことが熱望されている。一般に、ガスを容器へ加圧充填すると、上述の如く、容器温度が不可避的に上昇してしまい、35MPa/分のような充填速度では、熱伝導性物質を含まない高圧水素容器であれば、場合によっては、容器温度が100℃程度にまで上昇してしまうことがある。
これに対し、高圧ガス容器1は、そのFRP外被3中にフラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質が含まれており、それらの熱伝導特性により、カーボンブラック、金属粉、金属片等を含むFRP外被を有する容器と同等又はそれ以上の放熱性が高圧ガス容器1に付与される。よって、ガス充填に伴う高圧ガス容器1への入熱に比して、高圧ガス容器1からの放熱を十分に高めることができ、その結果、高圧ガス容器1の温度上昇を十分に抑制することができる。したがって、空間S内のガス圧(内圧)が不都合に高まることを抑止でき、目的量のガスを確実に充填することができる。
また、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、ナノチューブ煤といった炭素質物質の分子が、FRP外被3のマトリックス樹脂又はその強化繊維のネットワーク構造中に適度に配置され、物理的又は化学的な結合によってその強化構造が高められると考えられる(ただし、作用はこれに限定されない。)。よって、FRP外被3の機械強度が従来に比して格段に高められる。したがって、従来と同等の耐圧強度を有するFRP外被3の厚さを薄くでき、外形寸法を同等にした場合、ライナー2の内径を拡張でき、もって空間Sの容積を増大できる。その結果、ガスの貯蔵量を有意に増大できる。或いは、FRP外被3の厚さを薄くできる分、高圧ガス容器1の外形を縮小でき、設置スペースを削減できる利点がある。
さらに、FRP外被3を形成するのに、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、ナノチューブ煤といった炭素質物質をその原料に添加混合するだけでよく、ライナー2へ巻き付ける工程を特に変更したり、特別に手間の掛かる新たな工程を追加したりする必要がない。よって、従来の製造工程が過度に煩雑となるおそれがない。またさらに、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、ナノチューブ煤といった炭素質物質を添加するがためにライナー2を加工するとか、ライナー2の材質が制限されるといった不都合もない。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、FRP外被3は、カーボンブラック、金属粉、金属片等の無機材を更に含んでいてもよい。また、ライナー2を樹脂ライナーとする場合には、上記の炭素質物質や無機材をそのライナー2内に含ませてもよい。さらに、ライナー2及びFRP外被3は、複数層の積層体でもよい。またさらに、ライナー2とFRP外被3との間、ライナー2の内面側、FRP外被3の外面側に、異なる別の層を設けても構わない。
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〈比較例1〉
ライナーとしてポリアミド樹脂から成る樹脂ライナー(厚さ4mm)を形成し、その外周の略全面上に、炭素繊維を強化繊維として含むエポキシ樹脂との混合物をフィラメントワインディング法で巻き付けた。その後、熱処理を施してCFRP製の外被を形成し、図1に示す高圧ガス容器1と同等の構成を有し且つ胴部外径が約285mmφ、全長が約850mmである貯蔵容器を作製した。なお、FRP外被3における炭素繊維とエポキシ樹脂との含有割合は、混合物の処方で、両者の全量に対して、それぞれ炭素繊維を60体積%、及びエポキシ樹脂を40体積%とした。
ライナーとしてポリアミド樹脂から成る樹脂ライナー(厚さ4mm)を形成し、その外周の略全面上に、炭素繊維を強化繊維として含むエポキシ樹脂との混合物をフィラメントワインディング法で巻き付けた。その後、熱処理を施してCFRP製の外被を形成し、図1に示す高圧ガス容器1と同等の構成を有し且つ胴部外径が約285mmφ、全長が約850mmである貯蔵容器を作製した。なお、FRP外被3における炭素繊維とエポキシ樹脂との含有割合は、混合物の処方で、両者の全量に対して、それぞれ炭素繊維を60体積%、及びエポキシ樹脂を40体積%とした。
〈参考例1〉
FRP外被を形成するための混合物として、炭素繊維を強化繊維として含むエポキシ樹脂との混合物に更にアルミニウム繊維を添加したものを用いたこと以外は、比較例1と同様にして貯蔵容器を得た。なお、本参考例においては、アルミ繊維の添加量を、炭素繊維とエポキシ樹脂との合計量に対してそれぞれ30質量%、50質量%、及び70質量%とした3種の貯蔵容器を作製した。
FRP外被を形成するための混合物として、炭素繊維を強化繊維として含むエポキシ樹脂との混合物に更にアルミニウム繊維を添加したものを用いたこと以外は、比較例1と同様にして貯蔵容器を得た。なお、本参考例においては、アルミ繊維の添加量を、炭素繊維とエポキシ樹脂との合計量に対してそれぞれ30質量%、50質量%、及び70質量%とした3種の貯蔵容器を作製した。
〈参考例2〉
エポキシ樹脂に代えてアルミニウム粉を含有する接着剤であるデブコン(登録商標)を使用したこと以外は、参考例1と同様にして3種類の貯蔵容器を作製した。
エポキシ樹脂に代えてアルミニウム粉を含有する接着剤であるデブコン(登録商標)を使用したこと以外は、参考例1と同様にして3種類の貯蔵容器を作製した。
〈実施例1〉
アルミニウム繊維に代えてカーボンナノチューブを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、カーボンナノチューブの添加量が、炭素繊維とエポキシ樹脂との合計量に対してそれぞれ30質量%、50質量%、及び70質量%である3種類の貯蔵容器を作製した。
アルミニウム繊維に代えてカーボンナノチューブを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、カーボンナノチューブの添加量が、炭素繊維とエポキシ樹脂との合計量に対してそれぞれ30質量%、50質量%、及び70質量%である3種類の貯蔵容器を作製した。
〈評価1:温度測定試験〉
比較例1、参考例1及び2、並びに、実施例1で得た貯蔵容器の開口部にガス供給用のバルブを取り付け、充填圧が35MPaとなるように水素ガスを充填しながら、貯蔵容器内の水素ガス温度の変化を測定した。このとき、充填時間を5分とした。すなわち、平均充填速度は7MPa/分であった。
比較例1、参考例1及び2、並びに、実施例1で得た貯蔵容器の開口部にガス供給用のバルブを取り付け、充填圧が35MPaとなるように水素ガスを充填しながら、貯蔵容器内の水素ガス温度の変化を測定した。このとき、充填時間を5分とした。すなわち、平均充填速度は7MPa/分であった。
その結果、水素ガス充填直後の貯蔵容器内の水素ガス温度は、比較例1の貯蔵容器が75〜85℃であったのに対し、参考例1の貯蔵容器(アルミニウム繊維添加量が30質量%、50質量%、70質量%)がそれぞれ、50〜60℃、25〜35℃、及び20〜35℃であった。また、参考例2及び実施例1の貯蔵容器は、参考例1と同程度の温度であった。これらの結果より、本発明による実施例1の貯蔵容器は、参考例1及び2の貯蔵容器と同様に、貯蔵容器及びその内部のガス温度の上昇を十分に抑制できることが確認された。
〈評価2:引張強度測定試験〉
比較例1、参考例1及び2、並びに、実施例1で得た貯蔵容器のテストピースを作製し、これらの引張強度を測定した。なお、テストピースの作製及び試験は、JIS K7073炭素繊維強化プラスチックの引張試験方法に準拠した方法で実施した。その結果、実施例1の貯蔵容器のテストピースは、それらに含まれるカーボンナノチューブと同等割合でアルミニウム繊維を含む参考例1及び2の貯蔵容器のテストピースに比して、引張強度が約20〜30%向上されることが判明した。
比較例1、参考例1及び2、並びに、実施例1で得た貯蔵容器のテストピースを作製し、これらの引張強度を測定した。なお、テストピースの作製及び試験は、JIS K7073炭素繊維強化プラスチックの引張試験方法に準拠した方法で実施した。その結果、実施例1の貯蔵容器のテストピースは、それらに含まれるカーボンナノチューブと同等割合でアルミニウム繊維を含む参考例1及び2の貯蔵容器のテストピースに比して、引張強度が約20〜30%向上されることが判明した。
本発明による貯蔵容器は、ガスを充填する際の温度上昇を抑えてそれに起因するガスの充填不足を防止できると共に、従来に比して薄肉とした場合でも耐圧強度を十分に確保できるので、燃料電池自動車等の水素ガス容器、天然ガス自動車の天然ガス容器といった高圧ガス容器、及びそれを備える機器、動機、設備等に広く利用することができる。
1…高圧ガス容器(貯蔵容器)、2…ライナー(内容器)、3…FRP外被、4,5…開口部、S…空間。
Claims (2)
- ガスが供給される内容器と、
前記内容器の周囲に設けられており、フラーレン、ナノチューブ、フラーレン煤、及びナノチューブ煤のうち少なくとも一種の炭素質物質を含む繊維強化プラスチックを有して成る外容器と、
を備える貯蔵容器。 - 前記内容器は、常圧に比して圧力が高められたガスが充填されるものである、
請求項1記載の貯蔵容器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003423103A JP2005180605A (ja) | 2003-12-19 | 2003-12-19 | 貯蔵容器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003423103A JP2005180605A (ja) | 2003-12-19 | 2003-12-19 | 貯蔵容器 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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EP2902692A1 (de) * | 2013-12-06 | 2015-08-05 | MAGNA STEYR Engineering AG & Co KG | Bauteil eines Tanksystems |
JP2019502067A (ja) * | 2015-12-18 | 2019-01-24 | ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.Dsm Ip Assets B.V. | 圧力容器 |
EP3933249A1 (fr) | 2020-07-02 | 2022-01-05 | Airbus (S.A.S.) | Réservoir d'hydrogène et canalisation d'hydrogène recouverts d'un matériau bidimensionnel, et installation de distribution d'hydrogène |
-
2003
- 2003-12-19 JP JP2003423103A patent/JP2005180605A/ja active Pending
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FR3112191A1 (fr) * | 2020-07-02 | 2022-01-07 | Airbus (S.A.S.) | Réservoir d’hydrogène et canalisation d’hydrogène recouverts d’un matériau bidimensionnel, et installation de distribution d’hydrogène. |
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