JP2005179685A - 熱発泡性マイクロスフェアー及びその製造方法 - Google Patents

熱発泡性マイクロスフェアー及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強い剪断力が加えられる混練加工、カレンダー加工、押出加工、射出成形などの加工に適した熱発泡性マイクロスフェアーを提供する。
【解決手段】外殻内に発泡剤が封入され、外殻が重合性単量体と1重量%超過5重量%以下の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成され、重合体が塩化ビニリデン(共)重合体または(メタ)アクリロニトリル(共)重合体であり、最大発泡倍率が5倍以上で、外殻が塩化ビニリデン系(共)重合体の場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から10℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)が0.8〜0.4で、外殻が(メタ)アクリロニトリル(共)重合体の場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から5℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)が1〜0.8である熱発泡性マイクロスフェアー、及びその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーに関し、さらに詳しくは、加工特性が顕著に改善された熱発泡性マイクロスフェアーとその製造方法に関する。
熱発泡性マイクロスフェアーは、熱膨張性マイクロカプセルとも呼ばれ、発泡インクでの用途をはじめとして、軽量化を目的とした塗料やプラスチックの充填剤など、種々の分野への用途展開が図られている。熱発泡性マイクロスフェアーは、通常、揮発性の液体発泡剤を重合体によりマイクロカプセル化したものである。このような発泡剤は、物理的発泡剤または揮発性膨張剤とも呼ばれている。所望により、加熱時に分解してガスを発生する化学発泡剤が用いられることもある。
熱発泡性マイクロスフェアーは、一般に、水系媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合する方法により製造することができる。重合反応が進むにつれて、生成する重合体により外殻が形成され、その外殻内に発泡剤が包み込まれるようにして封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーが得られる。
外殻を形成する重合体としては、一般に、ガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂が用いられている。外殻を形成する重合体は、加熱すると軟化する。発泡剤としては、重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものを選択する。熱発泡性マイクロスフェアーを加熱すると、発泡剤が気化して膨脹する力が外殻に働くが、同時に、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少する。そのため、ある温度を境にして、急激な膨脹が起きる。この温度を発泡温度という。すなわち、熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡温度に加熱すると、それ自体が膨脹して、独立気泡体(発泡体粒子)を形成する。
熱発泡性マイクロスフェアーは、独立気泡体を形成する特性を利用して、意匠性付与剤、機能性付与剤、軽量化剤などとして、広範な分野での用途展開が図られている。また、それぞれの用途分野で高性能化が要求されるようになると、熱発泡性マイクロスフェアーに対する要求水準も高くなってきている。熱発泡性マイクロスフェアーに対する要求性能として、加工特性の改善が挙げられる。
例えば、熱可塑性樹脂に熱発泡性マイクロスフェアーを配合した組成物を、混練加工、カレンダー加工、押出加工、または射出成形を行い、その過程で熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させることにより、軽量化や意匠性の施された成形物やシートを得る方法がある。しかし、熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡時に体積膨張するにしたがって外殻の重合体層が非常に薄くなるとともに、加工による高温と高剪断力を受けて、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に低下して外殻が柔らかくなるため、熱発泡性マイクロスフェアーが簡単に破壊されて、所期の目的を達成することが極めて困難であった。
また、熱発泡性マイクロスフェアーは、外殻を形成する重合体の弾性率の温度依存性が大きいため、加工の適正温度域が非常に狭いという問題があった。さらに、従来の熱発泡性マイクロスフェアーは、極性溶剤や可塑剤に対する耐性(耐溶剤性、耐薬品性)に乏しく、例えば、極性有機溶剤と共用される分野での使用が制限されていた。
従来、可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂に熱膨張性マイクロカプセルを配合した発泡押出成形用軟質塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。また、第1工程として、融点または軟化点が100℃以下の熱可塑性樹脂と、100〜200℃で膨張する熱膨張性マイクロカプセルとを含む樹脂組成物を、100℃以下で混練し、第2工程として、得られた樹脂組成物を熱可塑性樹脂に添加して、混練または成形する樹脂組成物の製造方法が提案されている(特許文献2)。
しかし、実際に、熱発泡性マイクロスフェアーが、このような発泡押出成形や混練・成形に適用可能であるためには、発泡温度が高く耐熱性に優れた外殻を有することに加えて、外殻を形成する重合体の弾性率の温度依存性が小さく、加工の適正温度域が大きいこと、極性溶剤や可塑剤などに対する耐性に優れることなどが求められる。
耐熱性の高い熱発泡性マイクロスフェアーを製造する方法として、ビニル系単量体からなる重合性単量体に架橋性単量体を加えて重合することにより、外殻の重合体層を形成する方法が提案されている(特許文献3〜6)。架橋性単量体を用いることにより、外殻を形成する重合体に架橋構造を導入し、それによって、熱発泡性マイクロスフェアーの耐熱性や溶融流動性を改善することができる。
しかし、外殻を形成する重合体の架橋度が大きくなると、熱発泡性マイクロスフェアーの熱膨張性が損なわれるため、これらの先行技術文献の各実施例では、架橋剤を重合性単量体の1重量%以下、好ましくは0.2〜0.6重量%の極めて小さな割合で用いられているだけである。ところが、架橋剤の使用割合が小さいと、加工特性が充分に改善された熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができない。また、従来の架橋重合体から形成された外殻は、弾性率の温度依存性が大きいため、加工の適正温度域が非常に狭く、加工特性に劣るものであった。
さらに、従来の架橋重合体から形成された外殻は、極性溶剤や可塑剤に対する耐性が不充分であった。さらに加えて、従来の架橋重合体から形成された外殻は、実際には、特定の組成の重合体に限定されるため、使用する熱可塑性樹脂との相溶性に優れる熱発泡性マイクロスフェアーの設計が困難であった。
特開平11−60868号公報 特開2000−17103号公報 特公昭42−26524号公報 特公平5−15499号公報 特許第2894990号公報 特開平5−285376号公報
本発明の目的は、強い剪断力が加えられる混練加工、カレンダー加工、押出加工、射出成形などの加工に適した熱発泡性マイクロスフェアーとその製造方法を提供することにある。
特に、本発明の目的は、重合体から形成された外殻の弾性率の温度依存性が小さく、加工の適正温度域の広い熱発泡性マイクロスフェアーとその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、極性溶剤や可塑剤などに対して、耐性(耐薬品性、耐溶剤性)と発泡特性の保持能力の高い熱発泡性マイクロスフェアーとその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、熱発泡性マイクロスフェアーの外殻を、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合して得られる重合体で形成することにより、驚くべきことに、熱膨張性を損なうことなく、加工特性が顕著に改良された熱発泡性マイクロスフェアーの得られることを見いだした。架橋性単量体としては、二官能の架橋性単量体が好ましく、屈曲性連鎖を介して2個の重合性炭素−炭素二重結合が連結された構造の化合物が特に好ましい。本発明は、これらの知見に基づいて、完成するに至ったものである。
本発明によれば、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、
(1)重合体から形成された外殻が、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成されたものであり、
(2)該重合体が、(a) 重合性単量体として塩化ビニリデン単独もしくは塩化ビニリデンとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる塩化ビニリデン(共)重合体、または(b) 重合性単量体として(メタ)アクリロニトリル単独もしくは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる(メタ)アクリロニトリル(共)重合体であり、
(3)最大発泡倍率が5倍以上であり、
(4)外殻が塩化ビニリデン系(共)重合体から形成されている場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から10℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)が0.8〜0.4であり、かつ、
(5)外殻が(メタ)アクリロニトリル(共)重合体から形成されている場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から5℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)が1〜0.8である
ことを特徴とする熱発泡性マイクロスフェアーが提供される。
また、本発明によれば、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、
(1)重合体から形成された外殻が、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成されたものであり、
(2)粒径分布の変動係数が1.50%以下であり、かつ
(3)最大発泡倍率が5倍以上である
ことを特徴とする熱発泡性マイクロスフェアーが提供される。
さらに、本発明によれば、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、及び架橋性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ発泡性マイクロスフェアーを製造する方法において、重合性単量体を基準にして1重量%超過5重量%以下の割合で架橋性単量体を含有する重合性混合物を、(I)水系分散媒体及び重合性混合物をそれぞれ別の流れとして、一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する方法、または(II)水系分散媒体及び重合性混合物を分散槽内に注入し、該分散槽内で両者を攪拌して一次分散させた後、得られた一次分散液を連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する方法により、重合性混合物の液滴を造粒し、次いで、懸濁重合して、粒径分布の変動係数が1.50%以下、かつ、最大発泡倍率が5倍以上の熱発泡性マイクロスフェアーを得ることを特徴とする熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供される。
本発明によれば、強い剪断力が加えられる混練加工、カレンダー加工、押出加工、射出成形などの加工に適した熱発泡性マイクロスフェアーとその製造方法が提供される。また、本発明によれば、重合体から形成された外殻の弾性率の温度依存性が小さい熱発泡性マイクロスフェアーとその製造方法が提供される。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、加工の適性温度域が広く、耐薬品性や耐溶剤性と発泡特性の保持能力が高い。さらに、本発明によれば、前記諸特性を有することに加えて、粒径分布の変動係数が極めて小さく、発泡がシャープな熱発泡性マイクロスフェアーが提供される。
1.熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、及び架橋性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーを製造する方法において、重合性単量体を基準にして1重量%超過5重量%以下の割合で架橋剤を含有する重合性混合物を懸濁重合することにより得ることができる。重合性単量体の種類、架橋剤の種類と使用割合などを調整することにより、最大発泡倍率が5倍以上、好ましくは10倍以上の熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができる。本発明において、最大発泡倍率とは、熱発泡性マイクロスフェアーの最大発泡倍率が得られる発泡温度での発泡倍率を意味する。最大発泡倍率の測定方法は、後述する。
(1)発泡剤
本発明で使用する発泡剤は、通常、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である。このような発泡剤としては、沸点が通常150℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、特に好ましくは110℃以下の低沸点有機溶剤が好適である。
発泡剤の具体例を沸点とともに挙げると、エタン(−89℃)、エチレン(−102.4℃)、プロパン(−42.1℃)、プロペン(−47.7℃)、n−ブタン(−0.5℃)、イソブタン(−12℃)、ブテン(−6.47℃)、イソブテン(−6.6℃)、n−ペンタン(36℃)、イソペンタン(27.85℃)、ネオペンタン(9.5℃)、2,2,4−トリメチルペンタン(99.25℃)、n−ヘキサン(69℃)、イソヘキサン(60.3℃)、石油エーテル(27〜67℃)、ヘプタン(98.4℃)などの炭化水素;CCl3F(23.8℃)などのクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン(26.6℃)などのテトラアルキルシラン;などがある。これらの発泡剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
特に、加工時の高温と高剪断条件下で、簡単に破壊されない熱発泡性マイクロスフェアーを望む場合には、例えば、n−ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどの沸点が60℃以上の炭化水素系発泡剤を用いて発泡させることが好ましい。これらの中でも、ヘプタンや2,2,4−トリメチルペンタンのような沸点が70℃以上の炭化水素系発泡剤を用いることが特に好ましい。これらの発泡剤の沸点の範囲は、好ましくは60〜130℃、より好ましくは60〜120℃、特に好ましくは70〜110℃である。
60℃以上の沸点を有する炭化水素系発泡剤は、それぞれ単独で使用してもよいが、沸点が60℃未満の炭化水素系発泡剤と組み合わせて使用すると、より高い発泡倍率を得ることができる。すなわち、同じ量の発泡剤を用いたとき、60℃未満の低沸点炭化水素系発泡剤は、モル数が多くなるため発泡倍率の増大に寄与し、60℃以上の沸点を有する炭化水素系発泡剤は、耐熱性やより高温での発泡特性に寄与する。60℃以上の沸点を有する炭化水素系発泡剤の使用割合は、発泡体全重量基準で、好ましくは10重量%以上100重量%以下、より好ましくは15重量%以上95重量%以下、特に好ましくは20重量%以上90重量%以下である。
(2)重合性単量体及び重合体
重合性単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、α−メチルスチレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエンなどのビニル系単量体が挙げられる。これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
熱発泡性マイクロスフェアーは、外殻を形成する重合体が熱可塑性で、ガスバリア性を有するものが好ましい。これらの観点から、外殻を形成する重合体として、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体が好ましい。
塩化ビニリデン(共)重合体としては、重合性単量体として、塩化ビニリデン単独、あるいは塩化ビニリデンとこれと共重合可能なビニル系単量体との混合物を用いて得られる(共)重合体を挙げることができる。塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
このような塩化ビニリデン(共)重合体としては、重合性単量体として、(A) 塩化ビニリデン30〜100重量%と、(B) アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた(共)重合体が好ましい。塩化ビニリデンの共重合割合が30重量%未満であると、外殻のガスバリア性が低下しすぎるので好ましくない。
また、塩化ビニリデン(共)重合体としては、重合性単量体として、(A1)塩化ビニリデン40〜80重量%と、(B1)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜60重量%と、(B2)アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜60重量%とを用いて得られた共重合体が好ましい。このような共重合体とすることにより、発泡温度の設計が容易であり、また、高発泡倍率を達成しやすい。
耐溶剤性や高温での発泡性を望む場合には、(メタ)アクリロニトリル(共)重合体により外殻を形成することが好ましい。(メタ)アクリロニトリル(共)重合体としては、重合性単量体として、(メタ)アクリロニトリル単独、あるいは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体とを用いて得られる(共)重合体を挙げることができる。(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体としては、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
このような(メタ)アクリロニトリル(共)重合体としては、重合性単量体として、(C) アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体30〜100重量%と、(D) 塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた(共)重合体が好ましい。(メタ)アクリロニトリルの共重合割合が30重量%未満では、耐溶剤性や耐熱性が不充分となる。
(メタ)アクリロニトリル(共)重合体は、(メタ)アクリロニトリルの使用割合が大きく、発泡温度が高い(共)重合体と、(メタ)アクリロニトリルの使用割合が小さく、発泡温度が低い(共)重合体に分けることができる。(メタ)アクリロニトリルの使用割合が大きい(共)重合体としては、重合性単量体として、(C) アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体80〜100重量%と、(D) 塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜20重量%とを用いて得られた(共)重合体が挙げられる。一方、(メタ)アクリロニトリルの使用割合が小さい(共)重合体としては、重合性単量体として、(C) アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体30重量%以上80重量%未満と、(D) 塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体20重量%超過70重量%以下とを用いて得られた共重合体が挙げられる。
また、(メタ)アクリロニトリル(共)重合体は、重合性単量体として、(C1)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体51〜100重量%と、(D1)塩化ビニリデン0〜40重量%と、(D2)アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜48重量%とを用いて得られた(共)重合体が好ましい。
外殻の重合体として、塩化ビニリデンを含まない(共)重合体が望まれる場合には、重合性単量体として、(E) アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体30〜100重量%と、(F) アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた(メタ)アクリロニトリル(共)重合体が好ましい。また、重合性単量体として、(E1)アクリロニトリル1〜99重量%と、(E2)メタクリロニトリル1〜99重量%と、(F) アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜70重量%とを用いて得られた共重合体が好ましい。
さらに、加工性、発泡性、ガスバリア性、耐溶剤性などが特に優れた熱発泡性マイクロスフェアーを得るには、外殻の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体が、重合性単量体として、(E1)アクリロニトリル20〜80重量%と、(E2)メタクリロニトリル20〜80重量%と、(F) アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0〜20重量%とを用いて得られた共重合体であることが好ましい。
(3)架橋性単量体
本発明では、前記の如き重合性単量体と共に、加工特性、発泡特性、耐熱性、耐溶剤性(耐薬品性)などを改良するために、架橋性単量体を使用する。架橋性単量体としては、通常、2つ以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能性化合物が用いられる。重合性炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、アリル基などが挙げられる。2つ以上の重合性炭素−炭素二重結合は、それぞれ同一または相異なっていてもよい。
具体的に、架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族両末端アルコール由来の(メタ)アクリレート;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のジビニル化合物;など二官能の架橋性単量体が挙げられる。また、架橋性単量体として、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマールなどの三官能以上の多官能架橋性単量体が挙げられる。
架橋性単量体の中でも、発泡性と加工特性とのバランスを取りやすい点で、重合性炭素−炭素二重結合を2個有する二官能架橋性単量体が好ましい。三官能以上の多官能架橋性単量体の場合、使用割合が増大すると、外殻を形成する重合体が熱可塑性樹脂としての特性を喪失し、加熱しても発泡が起こらなくなる場合がある。
二官能架橋性単量体としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アルキルジオール、アルキルエーテルジオール、及びアルキルエステルジオールからなる群より選ばれるジオール化合物から誘導された屈曲性連鎖を介して、直接的または間接的に、2個の重合性炭素−炭素二重結合が連結された構造の化合物であることが好ましい。
架橋性単量体として、このような屈曲性連鎖を有する二官能架橋性単量体を1重量%を超え5重量%以下の割合で用いると、発泡倍率を高度に保持しながら、外殻の重合体の弾性率の温度依存性を小さくすることができ、かつ、混練加工、カレンダー加工、押出加工、射出成形などの加工工程で、剪断力を受けても、外殻の破壊や内包ガスの散逸が起こり難い熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができる。
屈曲性連鎖を有する二官能架橋性単量体を特定の割合で使用すると、外殻重合体層に良好なヒズミ硬化性的物性を付与することができると推定される。ヒズミ硬化性とは、変形量が大きくなるに従って、更に変形を加えるために、より大きな変形応力が必要となるような特性である。すなわち、発泡が開始し進行するに従って、外殻重合体層が引き伸ばされる。そのとき、薄くなった重合体層の部分のみが更に変形応力によって引き伸ばされるのではなく、まだ変形が小さく、変形応力が小さくてすむ重合体層の厚い部分が優先的に引き伸ばされる。それによって、外殻重合体層の架橋度が高くても、高発泡倍率が得られる。また、外殻重合体層の厚さが均一なので、温度や剪断力、溶剤に対する抵抗力が大きくなる。これに対して、重合性炭素−炭素二重結合を連結する部位が剛直な構造であったり、架橋性単量体の使用量が多すぎたりすると、ヒズミ硬化性が大きくなりすぎて、発泡倍率が大幅に低下するか、ひどい場合には、全く発泡しなくなる。
前記の屈曲性連鎖を介して2個の重合性炭素−炭素二重結合が連結された構造の二官能架橋性単量体としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート、アルキルエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、アルキルエステルジオールジ(メタ)アクリレート、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
より具体的に二官能架橋性単量体としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート〔エチレンオキサイド単位(−CHCHO−)が通常2〜15個〕;ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート[プロピレンオキサイド単位〔−CH(CH)CHO−〕または〔−CHCH(CH)O−〕が通常2〜20個];エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールジ(メタ)アクリレート(屈折性連鎖が脂肪族炭素からなり、連結部の炭素原子数が通常2〜20個);3−オキサ−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのようなアルキルエーテルジオールジ(メタ)アクリレート〔屈曲性連鎖が脂肪族炭素とエーテル結合とから構成されている。エーテル結合が1個の場合(−R−O−R−)は、通常、各脂肪族炭素は同じではない(R≠R)。〕;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのようなアルキルエステルジオールジ(メタ)アクリレート〔屈曲性連鎖が脂肪族炭素とエステル結合とから構成されている。(−R−COO−R−)〕;などが挙げられる。
架橋性単量体の使用割合の下限は、重合性単量体を基準として(重合性単量体=100重量%)、1重量%超過であり、好ましくは1.1重量%、より好ましくは1.2重量%、特に好ましくは1.3重量%である。架橋性単量体の使用割合の上限は、5重量%、好ましくは4重量%、より好ましくは3重量%である。特に、前記の屈曲性連鎖を介して2個の重合性炭素−炭素二重結合が連結された構造の二官能共重合性単量体を使用するときは、多くの場合、架橋性単量体の使用割合が1.4〜4重量%、さらには、1.5〜3重量%の範囲で良好な結果を容易に得ることができる。
架橋性単量体の使用割合が1重量%以下であると、従来の熱発泡性マイクロスフェアーと同様の加工特性しか得ることができない。一方、架橋剤の使用割合が過大であると、外殻重合体が熱可塑性を喪失して、発泡が困難になる。
(4)重合開始剤
重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、重合性単量体に可溶性である油溶性重合開始剤が好ましい。より具体的に、重合開始剤として、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、及びアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤は、通常、単量体混合物中に含有させるが、早期重合を抑制する必要がある場合には、造粒工程中または造粒工程後に、その一部または全部を水系分散媒体中に添加して、重合性混合物の液滴中に移行させてもよい。重合開始剤は、水系分散媒体基準で、通常、0.0001〜3重量%の割合で使用される。
(5)水系分散媒体
懸濁重合は、通常、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で行われる。分散安定剤としては、例えば、シリカ、水酸化マグネシウムなどの無機微粒子を挙げることができる。この他に補助安定剤、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、各種乳化剤等を使用することができる。分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用される。
分散安定剤を含有する水系分散媒体は、通常、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製する。重合時の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカなどのシリカを使用する場合は、酸性環境下で重合が行われる。水系分散媒体を酸性にするには、必要に応じて酸を加えて、系のpHを6以下、好ましくはpH3〜4程度に調整する。水酸化マグネシウムやリン酸カルシウムなどの酸性環境下で水系分散媒体に溶解する分散安定剤の場合には、アルカリ性環境下で重合させる。
分散安定剤の好ましい組み合わせの一つとして、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせがある。縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物や、ジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。縮合生成物の酸価は、60以上95未満であることが好ましく、65〜90であることがより好ましい。さらに、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加すると、より均一な粒子形状を有する熱発泡性マイクロスフェアーが得られやすくなる。無機塩としては、通常、食塩が好適に用いられる。
コロイダルシリカの使用量は、その粒子径によっても変わるが、通常、重合性単量体100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部の割合である。縮合生成物は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05〜2重量部の割合で使用される。無機塩は、重合性単量体100重量部に対して、0〜100重量部の割合で使用される。
分散安定剤の他の好ましい組み合わせとしては、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせが挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカとポリビニルピロリドンとの組み合わせが好適に用いられる。さらに、他の好ましい組み合わせとしては、水酸化マグネシウム及び/またはリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせがある。
分散安定剤として、水溶性多価金属塩化合物(例えば、塩化マグネシウム)と水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化ナトリウム)との水相中での反応により得られる難水溶性金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)のコロイドを用いることができる。また、リン酸カルシウムとしては、リン酸ナトリウムと塩化カルシウムとの水相中での反応生成物を使用することができる。
乳化剤は、一般に使用しないが、所望により陰イオン性界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩やポリオキシエチレンアルキル(アリル)エーテルのリン酸エステル等を用いてもよい。
重合助剤として、水系分散媒体中に、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、水可溶性アスコルビン酸類、及び硼酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を存在させることができる。これらの化合物の存在下に懸濁重合を行うと、重合時に、重合粒子同士の凝集が起こらず、重合物が重合缶壁に付着することがなく、重合による発熱を効率的に除去しながら安定して熱発泡性マイクロスフェアーを製造することができる。
亜硝酸アルカリ金属塩の中では、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウムが入手の容易性や価格の点で好ましい。アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸の金属塩、アスコルビン酸のエステルなどが挙げられるが、これらの中でも水可溶性のものが好適に用いられる。ここで、水可溶性アスコルビン酸類とは、23℃の水に対する溶解性が1g/100cm以上であるものを意味し、アスコルビン酸とそのアルカリ金属塩が好ましい。これらの中でも、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸カリウムが、入手の容易性や価格、作用効果の点で、特に好適に用いられる。これらの化合物は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部の割合で使用される。
(6)懸濁重合
水系分散媒体に各成分を添加する順序は、任意であるが、通常は、水と分散安定剤、必要に応じて安定助剤や重合助剤などを加えて、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製する。一方、発泡剤、重合性単量体、及び架橋性単量体は、別々に水系分散媒体に加えて、水系分散媒体中で一体化して重合性混合物(油性混合物)を形成してもよいが、通常は、予めこれらを混合してから、水系分散媒体中に添加する。重合開始剤は、予め重合性単量体に添加して使用することができるが、早期の重合を避ける必要がある場合には、例えば、重合性混合物を水系分散媒体中に添加し、攪拌しながら重合開始剤を加え、水系分散媒体中で一体化してもよい。重合性混合物と水系分散媒体との混合を別の容器で行って、高剪断力を有する攪拌機や分散機で攪拌混合した後、重合缶に仕込んでもよい。
重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合することにより、水系分散媒体中で重合性混合物の液滴を造粒する。液滴の平均粒径は、目的とする熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径とほぼ一致させることが好ましいが、通常、3〜100μm程度である。粒径分布が極めてシャープな熱発泡性マイクロスフェアーを得るには、水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給し、該攪拌分散機中で両者を連続的に攪拌して分散させた後、得られた分散液を重合槽内に注入し、該重合槽内で懸濁重合を行う方法を採用することが好ましい。
より具体的には、水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する工程において、(I)水系分散媒体及び重合性混合物をそれぞれ別の流れとして、一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する方法、及び(II)水系分散媒体及び重合性混合物を分散槽内に注入し、該分散槽内で両者を攪拌して一次分散させた後、得られた一次分散液を連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する方法がある。
前記(I)の方法では、例えば、図2に示すように、水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する工程において、水系分散媒体1及び重合性混合物2をそれぞれ別の流れとして、一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する。具体的には、水系分散媒体1を貯槽3内に、重合性混合物2を貯槽4内に、それぞれ保持しておく。水系分散媒体1をポンプ5を用いてライン6から、重合性混合物2をポンプ7を用いてライン8から、それぞれ別の流れとして、連続式高速回転高剪断型攪拌分散機9内に供給する。水系分散媒体1と重合性混合物2の供給比率は、通常、1:1〜6:1の範囲内であり、より好ましくは2:1〜4:1の範囲内である。該攪拌分散機9中で両者を連続的に攪拌して分散させた後、得られた分散液をライン10を経て重合槽11内に注入し、該重合槽11内で懸濁重合を行う。
前記(II)の方法では、図3に示すように、水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する工程において、水系分散媒体1及び重合性混合物2を分散槽12内に注入し、該分散槽12内で両者を攪拌して一次分散させる。分散槽12内には、通常、一般的な攪拌翼が備えられている。水系分散媒体1と重合性混合物2の比率は、通常、1:1〜6:1の範囲内であり、より好ましくは2:1〜4:1の範囲内である。分散槽内で攪拌により得られた一次分散液は、ポンプ13を用いてライン14を経て、連続式高速回転高剪断型攪拌分散機9内に供給する。該攪拌分散機9中で一次分散液をさらに攪拌して分散させた後、得られた分散液をライン15を経て重合槽11内に注入し、該重合槽11内で懸濁重合を行う。上記(II)の方法によれば、粒径分布がシャープな熱発泡性マイクロスフェアーを安定して得ることができる。
このような方法を採用することにより、平均粒径が3〜100μmで、粒径分布の変動係数が、好ましくは1.50%以下、より好ましくは1.30%以下、特に好ましくは1.10%以下のシャープな粒径分布を有する熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができる。粒径分布がシャープな熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡がシャープであり、均一な発泡体や発泡成形品を与えることができる。
本発明では、図4に示すような回分式高速回転高剪断分散機を用いることができる。回分式高速回転高剪断分散機を用いる方法では、水系分散媒体1及び重合性混合物2を回分式高速回転高剪断分散機16内に投入し、攪拌分散させることにより、重合性混合物の微小な液滴を造粒し、次いで、分散液をポンプ17を用いてライン18を経由して、重合槽11内に注入し、該重合槽内で懸濁重合を行う。
懸濁重合は、通常、反応槽内を脱気するか、もしくは不活性ガスで置換して、30〜100℃の温度に昇温して行う。懸濁重合後、水相は、例えば、濾過、遠心分離、沈降によって除去される。熱発泡性マイクロスフェアーは、濾過・洗浄した後、ウエットケーキの状態で回収される。必要に応じて、熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡剤がガス化しない程度の比較的低温で乾燥される。熱発泡性マイクロスフェアーは、所望により、各種化合物で表面処理を行うことができ、また、無機微粉末を付着させることもできる。さらに、無機微粉末以外の各種材料で表面をコーティングすることもできる。
2.熱発泡性マイクロスフェアー
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を有しており、外殻重合体は、重合性単量体(通常、ビニル系単量体)の重合より形成されるが、本発明では、重合性単量体と、重合性単量体基準で、1重量%超過5重量%以下の架橋性単量体とを重合することにより形成される。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、その外殻重合体が、重合性単量体に加えて、比較的多量の架橋性単量体、好ましくは二官能架橋性単量体を用いて形成されているため、外殻重合体の弾性率の温度依存性が小さい。したがって、例えば、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーを熱可塑性樹脂に配合した樹脂組成物を、混練加工、カレンダー加工、押出加工、射出成形などの加工を行うと、外殻の破壊や内包ガスの散逸が起こりにくい。
また、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、外殻重合体の弾性率の温度依存性が小さいため、均一に発泡するための加工適性温度範囲を広く取ることができる。この点で、図1を参照されたい。図1は、外殻重合体の弾性率と測定温度との関係を示すグラフである。従来の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻重合体(a)は、温度が上昇すると弾性率が急激に低下するため、適切な発泡(均一発泡)をする弾性率領域の温度範囲(a2−a1)が狭い。これに対して、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻重合体(b)は、適切な発泡をする弾性率領域の温度範囲(b2−b1)が広いため、均一に発泡するための加工適性温度範囲を広く取ることができる。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径は、特に限定されないが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲内である。この平均粒径が小さすぎると、発泡性が不充分となる。平均粒径が大きすぎると、美麗な外観が要求される分野では、表面が粗になるため好ましくなく、また、剪断力に対する抵抗性も不充分となる。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、その粒径分布の変動係数は特に制限されないが、特にシャープな発泡が要求される用途では、該変動係数が1.50%以下であることが好ましい。粒径分布の変動係数は、より好ましくは1.30%以下、特に好ましくは1.10%以下である。この変動係数が大きすぎると、大粒子径と小粒子径の熱発泡性マイクロスフェアーが混在することになる。小粒子径よりも大粒子径の方が発泡開始温度が低くなる傾向を示すため、早期発泡を防ぎ、均一な発泡を得るには、熱発泡性マイクロスフェアーの変動係数を小さくすることが望ましい。粒径分布の変動係数が極めて小さな熱発泡性マイクロスフェアーを得る方法としては、前述の(I)及び(II)の方法が挙げられる。
本発明において、粒径分布の変動係数とは、下記の式(1)及び(2)に基づいて算出される値である。
Figure 2005179685
Figure 2005179685
(式中、μ=平均値、x=粒子径、q=頻度分布)
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーにおける発泡剤の含有量は、全重量基準で、通常5〜50重量%、好ましくは7〜35重量%である。発泡剤の含有量が少なすぎると、発泡倍率が不充分となり、大きすぎると、外殻の厚みが薄くなって、加工時に加熱下での剪断力を受けて早期発泡や外殻の破裂を起こしやすくなる。発泡剤としては、低沸点有機溶剤、加熱により分解してガスを発生する化合物などがあり、これらの中でも、低沸点有機溶剤が好ましい。発泡剤は、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものから選択される。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻は、通常、ガスバリア性と耐熱性に優れた重合体から形成される。具体的には、前記した通り、アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレンなどの種々の重合性単量体を用いて形成することができる。これらの中でも、塩化ビニリデン(共)重合体及び(メタ)アクリロニトリル(共)重合体は、ガスバリア性、耐溶剤性、耐熱性、発泡性などを高度にバランスさせる上で好ましい。本発明によれば、使用する重合性単量体の組み合わせや組成比の制御と、発泡剤の種類の選択により、様々な発泡挙動を示す熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができる。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、特に加工特性に優れており、かつ、発泡特性(熱膨張性)と加工特性とのバランスが良好である。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、架橋剤を1重量%を越える割合で用いているにもかかわらず、熱膨張性が喪失しておらず、最大発泡倍率が5倍以上である。最大発泡倍率は、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上であり、多くの場合、30〜60倍程度の最大発泡倍率を達成することが可能である。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、重合体から形成された外殻の弾性率の温度依存性が小さい。また、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、加工の適正温度域が広い。さらに、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、極性溶剤や可塑剤などに対して、耐性(耐薬品性、耐溶剤性)と発泡特性の保持能力が高い。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーが有するこれらの特性は、実施例に具体的に示されている。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの特性の具体例として、発泡の温度依存性の小さいことが挙げられる。例えば、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻重合体が前述の如き塩化ビニリデン(共)重合体である場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から10℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)は、通常0.8〜0.4、好ましくは0.9〜0.5、より好ましくは1〜0.5である。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻重合体が前述の如き(メタ)アクリロニトリル共重合体〔(メタ)アクリロニトリルの共重合割合=30重量%以上80重量%未満〕である場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から5℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)は、通常1〜0.8、好ましくは1〜0.85、より好ましくは1〜0.9である。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻重合体が(メタ)アクリロニトリル(共)重合体〔(メタ)アクリロニトリルの割合=80〜100重量%〕である場合、架橋性単量体として、特に、前記の屈曲性連鎖を有する二官能架橋性単量体を1重量%超過5重量%以下の割合で使用することにより、発泡性を高度に維持しつつ、外殻重合体の弾性率の温度依存性が小さく、加工性や耐薬品性に優れた熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができる。
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、190℃以上における外殻重合体の弾性率が10N/m以上かつ10N/m以下のものであると、高温かつ高剪断化での耐性に優れる。外殻重合体の弾性率は、より好ましくは5.0×10N/m以上かつ10N/m以下、特に好ましくは10N/m以上かつ10N/m以下である。
3.用途
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、加熱発泡(熱膨脹)させて、あるいは未発泡のままで、各種分野に使用される。熱発泡性マイクロスフェアーは、例えば、その膨脹性を利用して、自動車等の塗料の充填剤、壁紙、発泡インク(T−シャツ等のレリーフ模様付け)の発泡剤、収縮防止剤などに使用される。熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡による体積増加を利用して、プラスチック、塗料、各種資材などの軽量化や多孔質化、各種機能性付与(例えば、スリップ性、断熱性、クッション性、遮音性等)の目的で使用される。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、表面性や平滑性が要求される塗料、壁紙、インク分野に好適に用いることができる。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、加工特性に優れているので、混練加工、カレンダー加工、押出加工、射出成形などの加工工程を必要とする用途分野に好適に適用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
物性及び特性の測定方法は、次の通りである。
(1)発泡倍率及び最大発泡倍率
熱発泡性マイクロスフェアー0.7gを、ギア式オーブン中に入れ、所定温度(発泡温度)で2分間加熱して発泡させる。得られた発泡体をメスシリンダーに入れて体積を測定し、未発泡時の体積で割って発泡倍率とする。この際、発泡倍率を100℃から5℃刻みで昇温して測定し、最大の発泡倍率が得られた時の発泡温度での当該発泡倍率を最大発泡倍率と定義する。
(2)平均粒径
島津製作所製の粒径分布測定器SALD−3000Jを用いて、重量基準でのメディアン径を測定し、平均粒径とした。
(3)弾性率
熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させ、内包された発泡剤をできるだけ抜いた後、熱プレス機で熱プレスシートを調製し、1cm×1.5cm×0.25cmの試験片に切り出した。この試験片を東洋精機製作所のレオグラフ・ソリッドを用いて、窒素雰囲気下、周波数10ヘルツ、3℃/分の昇温速度で加熱して、弾性率を測定した。
(4)バインダー系での発泡倍率
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA;エチレン/酢酸ビニル=30/70重量%)を含有するEVA系エマルジョン(濃度55重量%)に、EVA5重量部に対して、熱発泡性マイクロスフェアー1重量部を加えて塗布液を調製する。この塗布液を両面アート紙に200μmのギャップを有するコーターで塗布、乾燥し、次いで、所定温度のオーブンに入れて2分間加熱する。発泡前後の厚み比でもって、発泡倍率とする。
(5)耐薬品性
ガラス製試験管に、可塑剤としてフタル酸ジイソノリル2重量部と熱発泡性マイクロスフェアー1重量部を加えて可塑剤液を調製する。この可塑剤液を、オイルバスを用いて140℃で加熱し、経時による発泡の有無と可塑剤液の増粘の程度を観察する。
(6)可塑化PVCシートでの発泡倍率
ポリ塩化ビニル樹脂(呉羽化学工業製S903)50重量部とジオクチルフタレート(DOP)50重量部に対して、熱発泡性マイクロスフェアー3重量部を加えて、コンパウンドを調製する。コンパウンドを120℃で2分間ロール練りして、1mm厚さのシートを作成する。このシートを3×4cm角の大きさに裁断して試料とし、この試料を200℃のオーブン中で、5分間及び10分間、それぞれ発泡させる。発泡前後の比重を測定して、発泡倍率(%)を算出する。
(7)TMA(Thermo Mechnical Analysis)
パーキンエルマー社製のTMA-7型を用いてTMA測定を行った。サンプル約0.25mgを使用した。昇温速度は、5℃/分及び20℃/分とした。
[比較例1]
固形分20%のコロイダルシリカ80.5g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合物50%水溶液3.0g、塩化ナトリウム164.1g、重クロム酸カリ2.5%水溶液2.2g、塩酸0.1g、及び脱イオン水からなる合計470gの水系分散媒体を調製した。
一方、アクリロニトリル141.7g、メタクリロニトリル67.1g、メタクリル酸メチル11.2g、三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.67g、n−ペンタン26.1g、石油エーテル14.9g、及びアゾビスイソブチロニトリル1.1gからなる重合性混合物を調製した(単量体成分の重量%=アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=64.4/30.5/5.1;架橋性単量体使用量=単量体成分の0.3重量%)。
この重合性混合物と水系分散媒体とを、図4に示す回分式高速回転高剪断型分散機で攪拌混合して重合性混合物の微小な液滴を造粒した。この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて60℃で20時間反応させた。得られた反応生成物を遠心分離機を用いる濾過と水洗に繰り返し付してケーキ状物とし、これを一昼夜乾燥して、平均粒径が約25μm、粒径分布の変動係数が1.7%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−A)を得た。MS−Aの170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。結果を表1に示す。この比較例1は、特公平5−15499号公報の実施例2に準じたものである。
[実施例1]
三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.67gに代えて、二官能架橋性単量体のジエチレングリコールジメタクリレート3.5g(架橋性単量体使用量=単量体成分の1.6重量%)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、平均粒径が約26μm、粒径分布の変動係数が1.7%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−1)を得た。MS−1の170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。結果を表1に示す。
[比較例2]
三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパンの使用量0.67gを3.5gにしたこと以外は比較例1と同様にして、平均粒径が約26μmの熱発泡性マイクロスフェアー(MS−B)を得た。MS−Bは、その外殻層を形成する樹脂成分が熱可塑性樹脂としての特性を大幅に失ったため、140℃以上のどの温度域でもほとんど発泡しなかった。結果を表1に示す。
Figure 2005179685
(脚注)
(*1)熱発泡性マイクロスフェアー含有EVA系エマルジョン塗布層の発泡前後の厚み比。
(*2)可塑剤液=フタル酸ジイソノニル2部/熱発泡性マイクロスフェアー1部
(考察)
実施例1のMS−1は、架橋性単量体の使用量が単量体成分の1重量%を超過しているにかかわらず、最大発泡倍率(発泡温度170℃)が50倍と良好である。これに対して、三官能架橋性単量体を単量体成分の1.6重量%の割合で用いたMS−B(比較例2)は、外殻層を形成する重合体が高度に架橋して、熱発泡性を実質的に喪失している。
EVA系エマルジョン中での発泡挙動では、実施例1のMS−1は、架橋性単量体の使用量を比較例1のMS−Aに比べて、重量で5.2倍(モル数で5.2倍)と多くしたにもかかわらず、最大発泡倍率が得られた170℃での発泡倍率が5.5倍であり、MS−Aと同じ高発泡倍率を保持している。しかも、さらに高温の190℃でのMS−1の発泡倍率は4.3倍であり、MS−Aの3.7倍に比べて発泡倍率の低下が少なく、耐熱性に優れていることが分かる。
140℃での外殻重合体の弾性率を比較すると、実施例1のMS−1は、代表的な従来技術の熱発泡性マイクロスフェアーである比較例1のMS−Aに比べて、1.4倍の弾性率を有している。すなわち、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、より高い剪断力に対する耐性があり、かつ、耐熱性に優れていることが分かる。さらに高温の190℃で比較すると、実施例1のMS−1は、比較例1のMS−Aに比べて、外殻重合体の弾性率が1.6倍である。このことは、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーが、粒子の収縮が起こり難く、高発泡倍率を保持できること、並びに、加工適性温度域を従来に比べ広く取れることを意味している。
耐薬品性の評価では、比較例1のMS−Aを含有する可塑剤液は、140℃で6分加熱後に一部発泡が起こり、著しく増粘した。これに対して、実施例1のMS−1の場合は、140℃で6分加熱後に部分発泡は認められず、さらに7分経過しても部分発泡しなかった。
[比較例3]
コロイダルシリカ12g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合物1.4g、塩化ナトリウム154g、亜硝酸ナトリウム0.12g、塩酸0.2g、及び脱イオン水からなる合計520gの水系分散媒体を調製した。
一方、アクリロニトリル130g、メタクリロニトリル60g、イソボニルメタクリレート10g、三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン1g、n−ペンタン38g、及びアゾビスイソブチロニトリル1.2gからなる重合性混合物を調製した(単量体成分の重量%=アクリロニトリル/メタクリロニトリル/イソボニルメタクリレート=65/30/5、架橋性単量体使用量=単量体成分の0.5重量%)。この重合性混合物と水系分散媒体とを、図4に示す回分式高速回転高剪断型分散機で攪拌混合して重合性混合物の微小な液滴を造粒した。
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて60℃で22時間反応させた。得られた反応生成物を遠心分離機を用いる濾過と水洗に繰り返し付してケーキ状物とし、このケーキ状物を一昼夜乾燥して、平均粒径が約28μm、粒径分布の変動係数が1.8%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−C)を得た。MS−Cの170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約55倍であった。この比較例3は、特開平5−285376号公報の実施例2に準じたものである。結果を表2に示す。
[実施例2]
三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン1gに代えて、二官能架橋性単量体のジエチレングリコールジメタクリレート3.5g(架橋性単量体使用量=単量体成分の1.6重量%)を用いたこと以外は、比較例3と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が1.6%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−2)を得た。このMS−2の170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約55倍であった。結果を表2に示す。
Figure 2005179685
(考察)
外殻重合体の弾性率を比較すると、実施例2のMS−2は、測定温度が194℃の場合、代表的な従来技術の熱発泡性マイクロスフェアーである比較例3のMS−Cと同じであった。しかし、高温の210℃の測定温度で比較すると、MS−2の外殻重合体の弾性率は、MS−Aの2.6倍である。また、実施例2のMS−2は、194℃から210℃の温度域での外殻重合体の弾性率の低下が極めて小さい。このことは、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーが、高温度域において粒子の収縮が起こり難く、高発泡倍率を保持できること、並びに、加工温度域を従来に比べ広く取れることを意味する。別な見方をすれば、より高い剪断力に対する耐性があり、耐熱性があることをも意味している。
[実施例3]
攪拌機付の重合缶(1.5L)にコロイダルシリカ16.5g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物1.6g、食塩169.8g、亜硝酸ナトリウム0.11g、及び水を合計で557gになるように仕込み、水系分散媒体を調製した。水系分散体のpHが3.2になるように、塩酸を添加して調整した。
一方、アクリロニトリル147.4g、メタクリロニトリル70.4g、メタクリル酸メチル2.2g、ジエチレングリコールジメタクリレート3.5g、イソペンタン41.8g、及びアゾビスイソブチロニトリル1.32gからなる重合性混合物を調製した(単量体成分の重量%=アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=67/32/1、架橋性単量体使用量=単量体成分の1.6重量%)。この重合性混合物と前記で調製した水系分散媒体とを、図4に示す回分式高速回転高剪断型分散機で攪拌混合して、重合性混合物の微小な液滴を造粒した。
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて60℃で45時間反応させた。得られた反応生成物を濾過と水洗を繰り返し、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が1.8%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−3)を得た。MS−3の170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。結果を表3に示す。
[実施例4]
単量体成分の仕込み重量比を、アクリロニトリル/メタクリロニトリル=70/30になるように、単量体の仕込み量を変えたこと以外は、実施例3と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が2.1%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−4)を得た。このMS−4の170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。結果を表3に示す。
[比較例4]
二官能架橋性単量体のジエチレングリコールジメタクリレート3.5gに代えて、三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.6g(架橋性単量体使用量=単量体成分の0.3重量%)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が1.6%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−D)を得た。このMS−Dの170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。結果を表3に示す。
[比較例5]
二官能架橋性単量体のジエチレングリコールジメタクリレート3.5gに代えて、三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.6g(架橋性単量体使用量=単量体成分の0.3重量%)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が1.9%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−E)を得た。このMS−Eの170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。結果を表3に示す。
Figure 2005179685
(脚注)
(*1)PVC50部/DOP50部/熱発泡性マイクロスフェアー3部からなる混合物100gを120℃の回転ロールにて2分間混練して調製した1mm厚のシート。
(*2)3×4cm角のシートを200℃のオーブン中で発泡させ、発泡前後の比重の測定値から発泡倍率(%)を算出した。
(考察)
実施例3及び4の熱発泡性マイクロスフェアー(MS−3及びMS−4)を含有する各可塑化PVCシートは、それぞれ200℃/5分後に高度の発泡倍率を示し、200℃/10分後にも高い発泡倍率を維持している。これに対して、比較例4及び5の熱発泡性マイクロスフェアー(MS−D及びMS−E)を含有する各可塑化PVCシートは、120℃での発泡が著しく、200℃/5分後の発泡倍率が小さく、さらには、200℃/10分後の発泡倍率が著しく低下して、いわゆるヘタリ現象が観察された。
[比較例6]
コロイダルシリカ5g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物0.5g、亜硝酸ナトリウム0.12g、及び水が合計で600gになるように計量し、水系分散媒体を調製した。水系分散媒体のpHが3.2になるように、塩酸を添加して調整した。
一方、アクリロニトリル120g、メタクリル酸メチル120g、三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.4g、イソペンタン70g、及び2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2gからなる重合性混合物を調製した(単量体成分の重量%=アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=50/50、架橋性単量体使用量=単量体成分の0.2重量%)。この重合性混合物と水系分散媒体とを、図4に示す回分式高速回転高剪断型分散機で攪拌混合して重合性混合物の微小な液滴を調製した。
この重合性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて53℃で22時間反応させた。得られたpH6.3の反応生成物を濾過・水洗し、これを繰り返した後、乾燥して、平均粒径が14μm、粒径分布の変動係数が1.6%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−F)を得た。MS−Fの145℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約18倍であり、150℃での発泡倍率は、約12倍であった。結果を表4に示す。
[実施例5]
三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.4gの代わりに、二官能架橋性単量体のジエチレングリコールジメタクリレート3.2g(架橋性単量体使用量=単量体成分の1.6重量%)を用いたこと以外は、比較例6と同様にして平均粒径が約15μm、粒径分布の変動係数が1.7%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−5)を得た。このMS−5の145℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約40倍であり、150℃に発泡温度を上げても約40倍の最大発泡倍率を維持していた。結果を表4に示す。
Figure 2005179685
[比較例7]
コロイダルシリカ8.8g、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物0.8g、亜硝酸ナトリウム0.13g、及び水が合計で528gになるように計量し、水系分散媒体を調製した。
一方、塩化ビニリデン143g、アクリロニトリル66g、メタクリル酸メチル11g、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.33g、イソプロピルパーオキシジカーボネート2.2g、及びイソブタン35.2gからなる重合性混合物を調製した(単量体成分の重量%=塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=65/30/5、架橋性単量体使用量=単量体成分の0.15重量%)。次いで、この重合性混合物と上記で調製した水系分散媒体とを、図4に示す回分式高速回転高剪断型分散機で攪拌混合して、重合性混合物の微小な液滴を造粒した後、重合缶に仕込み、50℃で22時間反応させた。得られた反応生成物を濾過と水洗を繰り返し、平均粒径が約15μm、粒径分布の変動係数が1.6%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−G)を得た。このMS−Gは、120℃での発泡倍率(最大発泡倍率)が約50倍であったが、発泡温度を130℃に上げると、発泡倍率が約18倍に著しく低下した。結果を表5に示す。
[実施例6]
三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.33gの代わりに、二官能架橋性単量体のジエチレングリコールジメタクリレート3.5g(架橋性単量体使用量=単量体成分の1.6重量%)を用いたこと以外は、比較例7と同様にして平均粒径が約15μm、粒径分布の変動係数が1.7%である熱発泡性マイクロスフェアーMS−6を得た。このMS−6の120℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であり、発泡温度を130℃に上げても、約35倍の高い発泡倍率を示した。結果を表5に示す。
Figure 2005179685
[実施例7]
三官能架橋性単量体のトリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.67gに代えて、二官能架橋性単量体のジエチレングリコールジメタクリレート3.5g(架橋性単量体使用量=単量体成分の1.6重量%)を用い、この重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合する際に、図2に示すように、水系分散媒体と重合性混合物をそれぞれ別の槽に保持し、そして、これらをある一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型攪拌分散機を通過させた後、懸濁重合を行うこと以外は、比較例1と同様にして、平均粒径が約25μm、粒径分布の変動係数が0.3%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−7)を得た。MS−7の170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。このMS−7を含有する可塑剤液は、140℃で8分間保持しても部分発泡しなかった。一方、実施例1のMS−1の場合は、8分間を過ぎるとやや部分発泡が認められ始めた。これは、架橋性単量体の種類と使用量の効果に加えて、MS−7の粒径分布がMS−1に比べてシャープであることに起因する。
[実施例8]
重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合する際に、図2に示すように、水系分散媒体と重合性混合物をそれぞれ別の槽に保持し、そして、これらをある一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型分散機を通過させた後、懸濁重合を行うこと以外は、実施例3と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が0.3%である粒径分布のシャープな熱発泡性マイクロスフェアー(MS−8)を得た。MS−8の170℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であった。
実施例3のMS−3を含有する可塑化PVCシート(表3参照)は、120℃の回転ロールにて2分間混練して調製した1mm厚のシートの厚みが、MS−3を含有しない可塑化PVCシートに比べ10%程度厚みが増加した。これに対して、MS−8を含有する可塑化PVCシートは、120℃の回転ロールにて2分間混練して調製した1mm厚のシートの厚みが、MS−8を含有しない可塑化PVCシートに比べ殆ど厚み変化がなかった。つまり、MS−8は、ロール混練時の部分発泡特性に優れる(部分発泡しにくい)と言える。
[実施例9]
重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合する際に、図2に示すように、水系分散媒体と重合性混合物をそれぞれ別の槽に保持し、そして、これらをある一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型分散機を通過させた後、懸濁重合を行うこと以外は、実施例5と同様にして、平均粒径が約15μm、粒径分布の変動係数が0.5%である粒径分布のシャープな熱発泡性マイクロスフェアー(MS−9)を得た。MS−9の145℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約40倍であり、150℃に発泡温度を上げても、約40倍の最大発泡倍率を維持していた。
このMS−9とMS−5(実施例5)をそれぞれバインダー系での発泡倍率の測定方法に従い、両面アート紙に塗布した。これらのウエット塗布紙を乾燥機にて1℃/分の昇温速度で乾燥したところ、MS−5は、MS−9より低い温度で発泡してしまった。このことは、MS−9のような粒径分布のシャープな熱発泡性マイクロスフェアーを使用すると、加工速度がアップできる(高温で短時間で乾燥できる)ことを意味する。
[実施例10]
重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合する際に、図2に示すように、水系分散媒体と重合性混合物をそれぞれ別の槽に保持し、そして、これらをある一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型分散機を通過させた後、懸濁重合を行うこと以外は、実施例6と同様にして、平均粒径が約15μm、粒径分布の変動係数が0.2%である粒径分布のシャープな熱発泡性マイクロスフェアー(MS−10)を得た。MS−10の120℃での発泡倍率(最大発泡倍率)は、約50倍であり、130℃に発泡温度を上げても、約35倍の最大発泡倍率を維持していた。ホットステージ付き顕微鏡で5℃/分の速度で昇温しながら、その発泡挙動を観察したところ、MS−10は、実施例6のMS−6に比べて発泡する温度が高かった。したがって、MS−10は、発泡がシャープに起きていると判断される。
[実施例11]
イソペンタン41.8gに代えて、発泡剤としてイソペンタン/2,2,4-トリメチルペンタン(重量比=20/10)66gを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が0.5%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−11)を得た。MS−11の180℃での発泡倍率は、約40倍であった。
MS−11を含有する可塑化PVCシートは、120℃の回転ロールにて2分間混練して調製した1mm厚のシートの厚みが、MS−11を含有しない可塑化PVCシートに比べ殆ど厚み変化がなかった。つまり、MS−11は、ロール混練時の部分発泡特性に優れる(部分発泡しにくい)と言える。
[実施例12]
イソペンタン41.8gに代えて、発泡剤としてイソペンタン/2,2,4-トリメチルペンタン(重量比=15/15)66gを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、平均粒径が約31μm、粒径分布の変動係数が0.4%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−12)を得た。
MS−12を含有する可塑化PVCシートは、120℃の回転ロールにて2分間混練して調製した1mm厚のシートの厚みが、MS−12を含有しない可塑化PVCシートに比べ殆ど厚み変化がなかった。つまり、MS−12は、ロール混練時の部分発泡特性に優れる(部分発泡しにくい)と言える。
[実施例13]
イソペンタン41.8gに代えて、発泡剤としてイソペンタン/2,2,4-トリメチルペンタン(重量比=10/20)66gを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が0.3%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−13)を得た。
MS−13を含有する可塑化PVCシートは、120℃の回転ロールにて2分間混練して調製した1mm厚のシートの厚みが、MS−13を含有しない可塑化PVCシートに比べ殆ど厚み変化がなかった。つまり、MS−13は、ロール混練時の部分発泡特性に優れる(部分発泡しにくい)と言える。
[実施例14]
イソペンタン41.8gに代えて、発泡剤としてイソペンタン/2,2,4-トリメチルペンタン(重量比=6/24)66gを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、平均粒径が約30μm、粒径分布の変動係数が0.5%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−14)を得た。
[実施例15]
イソペンタン41.8gに代えて、発泡剤として2,2,4-トリメチルペンタン66gを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、平均粒径が約29μm、粒径分布の変動係数が0.2%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−15)を得た。
[実施例16]
イソペンタン41.8gに代えて、発泡剤としてヘプタン66gを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、平均粒径が約32μm、粒径分布の変動係数が0.3%である熱発泡性マイクロスフェアー(MS−16)を得た。
[実施例17]
上記の実施例で調製したサンプルMS−3、MS−11〜MS−15についてTMA測定を行った。結果を表6に示す。
Figure 2005179685
(*)膨張による変位量の相対比較
[実施例18]
比較例4で調製したMS−D、及び実施例14〜16で調製したMS−14〜16を、水99gにそれぞれ1g分散した後、100℃で10分間煮沸した。水面に発泡した粒子が浮いているかを観察し、その結果を表7に示す。
Figure 2005179685
本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡インクの用途、軽量化を目的とした塗料やプラスチックの充填剤など、種々の分野で利用することができる。
図1は、熱発泡性マイクロスフェアーの外殻重合体の弾性率と測定温度との関係を示すグラフである。 図2は、連続式高速回転高剪断型分散機を用いた熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法の一例を示す説明図である。 図3は、連続式高速回転高剪断型分散機を用いた熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法の他の例を示す説明図である。 図4は、回分式高速回転高剪断型分散機を用いた熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法の一例を示す説明図である。
符号の説明
1:水系分散媒体
2:単量体混合物
3:槽
4:槽
5:ポンプ
6:ライン
7:ポンプ
8:ライン
9:連続式高速回転高剪断型攪拌分散機
10:ライン
11:重合槽
12:分散槽
13:ポンプ
14:ライン
15:ライン
16:回分式高速回転高剪断型分散機
17:ポンプ
18:ライン

Claims (12)

  1. 重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、
    (1)重合体から形成された外殻が、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成されたものであり、
    (2)該重合体が、(a) 重合性単量体として塩化ビニリデン単独もしくは塩化ビニリデンとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる塩化ビニリデン(共)重合体、または(b) 重合性単量体として(メタ)アクリロニトリル単独もしくは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる(メタ)アクリロニトリル(共)重合体であり、
    (3)最大発泡倍率が5倍以上であり、
    (4)外殻が塩化ビニリデン系(共)重合体から形成されている場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から10℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)が0.8〜0.4であり、かつ、
    (5)外殻が(メタ)アクリロニトリル(共)重合体から形成されている場合、最大発泡倍率Rに対するそのときの温度から5℃高い温度での発泡倍率Rの比(R/R)が1〜0.8である
    ことを特徴とする熱発泡性マイクロスフェアー。
  2. 架橋性単量体が、重合性炭素−炭素二重結合を2個有する二官能架橋性単量体である請求項1記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
  3. 二官能架橋性単量体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アルキルジオール、アルキルエーテルジオール、及びアルキルエステルジオールからなる群より選ばれるジオール化合物から誘導された屈曲性連鎖を介して、2個の重合性炭素−炭素二重結合が連結された構造の化合物である請求項2記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
  4. 二官能架橋性単量体である当該化合物が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート、アルキルエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、及びアルキルエステルジオールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項3記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
  5. 重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、
    (1)重合体から形成された外殻が、重合性単量体と、該重合性単量体を基準として1重量%超過5重量%以下の割合の架橋性単量体とを重合してなる重合体から形成されたものであり、
    (2)粒径分布の変動係数が1.50%以下であり、かつ
    (3)最大発泡倍率が5倍以上である
    ことを特徴とする熱発泡性マイクロスフェアー。
  6. 架橋性単量体が、重合性炭素−炭素二重結合を2個有する二官能架橋性単量体である請求項5記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
  7. 二官能架橋性単量体である当該化合物が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート、アルキルエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、及びアルキルエステルジオールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項6記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
  8. 重合体から形成された外殻が、(a) 重合性単量体として塩化ビニリデン単独もしくは塩化ビニリデンとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる塩化ビニリデン(共)重合体、または(b) 重合性単量体として(メタ)アクリロニトリル単独もしくは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物と、架橋性単量体とを重合してなる(メタ)アクリロニトリル(共)重合体から形成されたものである請求項5乃至7のいずれか1項に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
  9. 水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤、重合性単量体、及び架橋性単量体を含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ発泡性マイクロスフェアーを製造する方法において、重合性単量体を基準にして1重量%超過5重量%以下の割合で架橋性単量体を含有する重合性混合物を、(I)水系分散媒体及び重合性混合物をそれぞれ別の流れとして、一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する方法、または(II)水系分散媒体及び重合性混合物を分散槽内に注入し、該分散槽内で両者を攪拌して一次分散させた後、得られた一次分散液を連続式高速回転高剪断型攪拌分散機内に供給する方法により、重合性混合物の液滴を造粒し、次いで、懸濁重合して、粒径分布の変動係数が1.50%以下、かつ、最大発泡倍率が5倍以上の熱発泡性マイクロスフェアーを得ることを特徴とする熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
  10. 架橋性単量体が、重合性炭素−炭素二重結合を2個有する二官能架橋性単量体である請求項9記載の製造方法。
  11. 二官能架橋性単量体である当該化合物が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート、アルキルエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、及びアルキルエステルジオールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項10記載の製造方法。
  12. 重合性単量体が、(a)塩化ビニリデン単独もしくは塩化ビニリデンとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物、または(b)(メタ)アクリロニトリル単独もしくは(メタ)アクリロニトリルとそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物である請求項9乃至11のいずれか1項に記載の製造方法。
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