JP2005172755A - ヒ素測定法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 検体を含有する試料溶液に強酸性下でモリブデン酸イオン及び酸化剤を加えてヒ素(V)と反応させた後、カチオン性色素エチルバイオレット溶液を加え、安定な青色のイオン会合体を形成させると、フリーのエチルバイオレットだけがプロトン付加の進行に伴って無色のカルビノール構造体に変化することから、バックグラウンドの影響を受けることなく、水中のppbレベルの微量のヒ素であっても目視または簡便な装置を用いて検出を行うことが可能となる。
【選択図】 なし
Description
Gutzeitにより開発されたグッツアイト法(Gutzeit test)がある(非特許文献1)。この方法は、溶存状態のヒ素を還元剤によって還元して反応性の高い水素化物(アルシン;
AsH3) としてガス化(還元気化)し、次いで臭化水銀含浸紙と反応させ、生ずる褐色の呈色を標準色と比較して目視定量する手法である。しかし、本法はその操作が煩雑であるため測定実施者の熟練を必要とし、また還元気化によって発生するアルシンは極めて毒性が高く衛生上非常に問題であるだけでなく、さらにその測定には水銀を大量にしみ込ませた試験紙を用いる点で、二次汚染など多くの問題を抱えている。
ppm)を遥かに越えるppmレベルのヒ素を含む井戸水が数多く存在し、ヒ素に汚染された地下水の飲用によって数千万人規模の人々が苦しんでいる現状にある。バングラデシュにおけるだけでも井戸の数は800万本ともいわれ、そのすべてを測定するためには莫大な費用と時間が見込まれる。安価な除ヒ素剤が開発されているものの、除去装置の導入に際しては事前の調査と日常的なモニタリングが不可欠であり、フィールド分析に対応可能な測定法の開発が早急に求められている。また、農用地の土壌、鉱山廃坑に由来する河川水及び底質のヒ素汚染、及び温泉水中のヒ素濃度モニタリングに関しても高いニーズがある。かくして、簡便でありながら、ppb
レベルで水中に存在する微量のヒ素を測定するための安価な技術の開発が求められている。
本発明者等は、簡便で且つ安価でありながら、フィールド分析を可能とする水中などに存在する微量のヒ素の分析・定量法を開発すべく鋭意研究を進めた結果、カチオン性色素であるエチルバイオレット(Ethyl
Violet)が、強酸性の条件下モリブドヒ酸イオンと安定な青色のイオン会合体を形成することを見出し,さらには過剰の色素はプロトン付加反応により徐々に無色のカルビノール構造に変化してブランク色も抑制できることを見出し、高感度な水中微量ヒ素検出・定量法を完成せしめた。
〔1〕 検体を含有する試料溶液に強酸性下でモリブデン酸イオン及び酸化剤を加えてヒ素(V)と反応させた後、カチオン性色素エチルバイオレット溶液を加え、青色イオン会合体を形成せしめ、得られた溶液の色を該青色イオン会合体を指標として比色することで溶液中のヒ素を測定することを特徴とするヒ素測定方法。
〔2〕 比色を目視測定で行うか、あるいは612 nmにおける吸光度を測定することによって行うことを特徴とする上記〔1〕記載の方法。
〔3〕 標準試料と比色して定量することを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕 塩酸、硫酸又は硝酸を使用して強酸性条件を達成することを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の方法。
〔5〕 酸化剤が、ヨウ素酸カリウム又は過酸化水素であることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一に記載の方法。
〔6〕 モリブデン酸イオン源が、モリブデン酸アンモニウムであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載の方法。
〔7〕 試料溶液が、水性溶液であることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一に記載の方法。
〔8〕 検体を含有する試料溶液中のヒ素を測定するための試薬であって、試料溶液を強酸性にすることのできる強酸、モリブデン酸イオン源、カチオン性色素エチルバイオレット、及びヒ素を5価の化学形態にするに十分な量の酸化剤を含有することを特徴とするヒ素測定試薬又は試薬セット。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
検体を含む試料溶液に、ヨウ素酸塩、例えばヨウ素酸カリウムなどを加え、それに強酸、例えば、塩酸などを添加した後、モリブデン酸化合物、例えばモリブデン酸アンモニウムなどを加え、こうして得られた混合物中にエチルバイオレット溶液を加えると、安定な青色のイオン会合体を形成する。一方、過剰の色素はプロトン付加の進行に伴って無色のカルビノール構造体に変化し、したがってブランク色を抑制できることとなり、均一溶液中で該イオン会合体を直接目視により検出・測定できる。
3価のヒ素) で存在している。ヒ素はメチル化ヒ素化合物などの有機態ヒ素化合物としても存在していることも認められている。一般的な天然水の場合、殆どが無機形態で存在している。
3価のヒ素化合物の例としては,ハロゲン化物(例えば、AsCl3, AsCl2 +, AsF3など)
が挙げられる。該ハロゲン化物は容易に加水分解せしめられて亜ヒ酸(H3AsO3)あるいはその亜ヒ酸に関連した形態のもの(例えば、HAsO2 2-など)
になる。その酸化形態のものはAs2O3である。水性液中での3価のヒ素化合物は、たいていはH3AsO3のイオン化されている形態で存在している。本発明細書では、まとめてそれらを「3価のヒ素」と称している。
AsIII は濃硝酸で酸化されて5価のヒ素であるヒ酸(H3AsO4・1/2H2Oとして単離することが可能)
を生ずる。相当するハロゲン化物としては、例えば、AsCl5, AsCl4 +などが知られている。水性液中での5価のヒ素化合物は、たいていはH3AsO4のイオン化されている形態で存在している。本発明細書では、まとめてそれらを「5価のヒ素」と称している。
のイオン会合体の形成並びに安定性に関してヒ素測定に実質的な悪影響を及ぼさないものであるかぎり限定されない。酸化剤は当該分野で容易に入手できるものから選ばれてよく、さらに安価なものが好ましい。また酸化剤は安全の面の考慮が払われてそれを選択することが好ましい。酸化剤としては、ヨウ素酸塩、例えばヨウ素酸カリウム(KIO3)、ヨウ素酸ナトリウム(NaIO3)、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ素酸亜鉛、ヨウ素酸水溶液など、次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなど、塩素酸塩、例えば塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸バリウム、塩素酸カルシウムなど、過ヨウ素酸塩、例えば過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウムなど、過塩素酸塩、例えば過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウムなど、臭素酸塩、例えば臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸マグネシウムなど、硝酸塩、例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなど、過酸化水素、例えば過酸化水素水など、ペルオキシ硫酸及びその塩、例えば、ペルオキシ硫酸ナトリウムなどが挙げられるが、ヨウ素酸カリウムを好適に使用できる。酸化剤は水溶液として使用するのが好ましい。
希釈水溶液の形態で使用することができる。該強酸としては、本エチルバイオレット・モリブデン酸イオン・ヒ素(V) のイオン会合体の形成並びに安定性に関してヒ素測定に実質的な悪影響を及ぼさないものであるかぎり限定されないし、また未反応のエチルバイオレットに対しプロトン付加を進行せしめて無色のカルビノール構造のエチルバイオレットにする作用を有するものを使用できる。該強酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられるが、塩酸、特には希塩酸水溶液を好適に使用できる。
検体としては、ヒ素を含有している疑いのあるものであればそのすべてを対象として包含され、例えば、井戸水、地下水、河川水、小川あるいは溝の水、湖沼の水、土壌などヒ素を含有している疑いのあるものから抽出されたりした水溶液などが挙げられる。
試料は本発明のヒ素測定法を適用するにあたり、前処理を施すことも可能である。該前処理としては,妨害物質を除くことが挙げられ、例えば、イオン交換樹脂などにより処理したりすることが挙げられる。例えば、リン酸イオンを豊富に含むような試料水などでは、アニオンイオン交換樹脂で試料を前処理することが好ましい。
本発明のヒ素測定法では、共存するヒ素以外の様々なイオンによる妨害を防いだり、あるいは悪影響を低くする目的で,キレート化剤、マスキング剤などを添加することもこの鵜である。こうしたキレート化剤やマスキング剤としては、当該分野で知られたものからそれを選択して使用できるが、好ましくは容易に入手できるものから選ばれてよく、さらに安価なものが好ましい。さらに、所要の測定に実質的な悪影響を及ぼさないものであるかぎり限定されない。
検体を含む試料溶液に、ヨウ素酸塩、例えばヨウ素酸カリウムなどを加え、それに強酸、例えば、塩酸などを添加した後、モリブデン酸化合物、例えばモリブデン酸アンモニウムなどを加え、こうして得られた混合物中にエチルバイオレット溶液を加えると、安定な青色のイオン会合体を形成する。一方、過剰の色素はプロトン付加の進行に伴って無色のカルビノール構造体に変化し、したがってブランク色を抑制できることとなり、均一溶液中で該イオン会合体を直接目視により検出・測定できる。
本発明の測定方法を個々の試験試料などに適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な物質に関連した測定系を構築すればよい。
これらの一般的な技術手段の詳細については、当該分析分野で知られた、総説、成書などを参照することができる。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
μl(最終濃度: 1.2×10-3 mol/dm3) 混和し、その後6.85 mol/dm3の濃度の塩酸を250
μl(最終濃度: 0.343 mol/dm3)混和し、次に3.15 ×10-2 mol/dm3の濃度のモリブデン酸アンモニウムを254
μl(最終濃度: 1.6×10-3 mol/dm3) 混和した。最後に1.3×10-4
mol/dm3の濃度のエチルバイオレットを166 μl(最終濃度: 3.8×10-5 mol/dm3)
添加して全量を5 mlとした。30分間静置後、目視で比色して定量した。612 nmにおける吸光度を測定することによっても定量した。
標準的な操作を図1に示す。
mol/dm3の濃度のエチルバイオレット水溶液で測定し、図3ではエチルバイオレットの濃度は4.34×10-6
mol/dm3で塩酸の濃度は0.343 mol/dm3 の水溶液で測定したものである。
エチルバイオレットの化学種について図5に示す。青紫色を示すキノイド型の構造体からプロトン付加に伴って黄色あるいは青色の化学種のもの、さらには無色のカルビノール型の構造体のものとなる。
0.002 mol/dm3, [Molybdate]T: 1.6×10-3 mol/dm3,
[EV]: 3.8×10-5 mol/dm3の条件下に塩酸の添加量を変えてその吸収に及ぼす影響を調べた。図7では、[KIO3]T:
0.002 mol/dm3, [HCl]: 0.34 mol/dm3, [EV]: 3.8×10-5
mol/dm3の条件下にモリブデン酸アンモニウムの添加量を変えてその吸収に及ぼす影響を調べた。図8では、[KIO3]T:
0.002 mol/dm3, [HCl]: 0.34 mol/dm3, [Molybdate]T:
1.6×10-3 mol/dm3の条件下にエチルバイオレット(EV)の添加量を変えてその吸収に及ぼす影響を調べた。
以上の結果、典型的なヒ素分析条件としては、塩酸 0.34 mol/dm3,モリブデン酸アンモニウム 1.6×10-3
mol/dm3, エチルバイオレット 3.8×10-5 mol/dm3が選択される。
mol/dm3, [HCl]: 0.34 mol/dm3, [Molybdate]T:
1.6×10-3 mol/dm3, [EV]: 3.8×10-5 mol/dm3の条件下に行った。図9は吸光度測定の結果を示し、図10は目視した場合の色調を示す。図10におけるブランクでは無色の色調で、ヒ素濃度が高くなるに従い(右側になるに従い)青色が濃くなる。図11には本ヒ素測定方法での612
nmにおける吸収とヒ素濃度との関係が示されている。本ヒ素測定方法を実施した結果、現在のところ得られたその目視定量並びに吸光光度法でのヒ素検出限界をまとめたものを表1に示す。
μg/dm3 のヒ素含有水溶液に添加したもので測定した。SiO2- ではマスキング剤としてフッ化ナトリウムを1.33×10-6
mol/dm3添加し、PO3-ではアニオン交換樹脂による前処理を行った後測定した。共存イオンの種類に関係なく、必要に応じてマスキング剤を添加したり、イオン交換樹脂などによる前処理を加えるなどして、本ヒ素測定方法を行うことにより定量可能であることが確かめられた。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
Claims (7)
- 検体を含有する試料溶液に強酸性下でモリブデン酸イオン及び酸化剤を加えてヒ素(V)と反応させた後、カチオン性色素エチルバイオレット溶液を加え、青色イオン会合体を形成せしめ、得られた溶液の色を該青色イオン会合体を指標として比色することで溶液中のヒ素を測定することを特徴とするヒ素測定方法。
- 比色を目視測定で行うか、あるいは612 nmにおける吸光度を測定することによって行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 標準試料と比色して定量することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
- 塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選択された強酸を使用して強酸性条件を達成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の方法。
- 酸化剤が、ヨウ素酸カリウム又は過酸化水素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の方法。
- モリブデン酸イオン源が、モリブデン酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の方法。
- 検体を含有する試料溶液中のヒ素を測定するための試薬であって、試料溶液を強酸性にすることのできる強酸、モリブデン酸イオン源、カチオン性色素エチルバイオレット、及びヒ素を5価の化学形態にするに十分な量の酸化剤を含有することを特徴とするヒ素測定試薬又は試薬セット。
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JP2009150743A (ja) * | 2007-12-20 | 2009-07-09 | Tokyo Electric Power Co Inc:The | 絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法 |
CN101726487B (zh) * | 2008-10-16 | 2011-12-28 | 北京有色金属研究总院 | 一种矿石样品中砷的分析方法 |
CN102998288A (zh) * | 2012-09-26 | 2013-03-27 | 广西师范大学 | 测定水中As (III)的适配体-纳米金共振瑞利散射光谱法 |
KR20190102458A (ko) * | 2018-02-26 | 2019-09-04 | 광주과학기술원 | 니트로-타이로신을 포함하는 비소 검출 시약 및 검출키트, 및 이를 이용한 비소 검출방법 |
CN112326571A (zh) * | 2020-10-28 | 2021-02-05 | 中国科学院生态环境研究中心 | 一种水样中五价砷的定量检测方法 |
-
2003
- 2003-12-15 JP JP2003416575A patent/JP2005172755A/ja active Pending
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