JP2005170877A - 核酸の肝臓へのターゲティング - Google Patents

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雅哉 山本
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Abstract

【課題】 肝細胞への核酸のターゲティングの効率および細胞内取込の効率を高めるための製剤を提供すること。
【解決手段】 核酸とカチオン化プルラン誘導体から形成されるポリイオンコンプレックスを含む、肝臓デリバリー用製剤が開示される。好ましくは、本発明において用いられるプルランの分子量は、30,000−60,000である。また好ましくは、ポリイオンコンプレックス中の、カチオン化プルラン誘導体中のアミノ基のモル数と核酸中のリン酸基のモル数との比は3−7である。
【選択図】 なし


Description

本発明は、遺伝子治療において核酸を肝臓へターゲティングするための水溶性高分子製剤に関する。
遺伝子治療とは、遺伝子を人為的に補いあるいは遺伝子発現を人為的に抑制することによって細胞の機能をコントロールし、病気の治療を行う方法である。このような遺伝子治療において用いるための、遺伝子を効率よく発現させることができるベクターの開発が必要とされている。遺伝子の発現ベクタ一には大きく分けて、ウイルスを用いる場合と用いない場合とがある。発現効率の高いことから、これまでは主として、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ改変ウイルス、などのウイルス自体がベクターとして用いられている。しかしながら、ウイルス本来の毒性、免疫原性などによる問題があり、これを解決するべく、分子生物学的研究が進められている。一方、後者のウイルスを用いない方法には、非ウイルス性遣伝子キャリアあるいは電気、超音波などの物理刺激の利用があるが、いずれの場合も、その遺伝子導入効率がきわめて低い。これまでに、リン酸カルシウムあるいはカチオン性高分子あるいはリポソームなどの非ウイルス性遺伝子キャリアが研究開発されている。また、それらに電気的刺激を組み合わせる方法も考案されている。
遺伝子治療の開発において解決すべき課題としては、生体内における遺伝子の分解を抑制すること、標的臓器へのターゲティングの効率を高めること、標的臓器における安定な徐放化を可能とすること、および細胞内への遺伝子導入効率を高めることなどがある。遺伝子導入には体内法と体外法とがある。体外法では,遺伝子をベクターと組み合わせ、細胞と培養することが行われ、いかに細胞とうまく遺伝子を相互作用させるかが鍵となる。一方、体内法では、それに加えて、遺伝子の体内での安定性を高め、また遺伝子をいかに特定部位にターゲティングできるかが、遺伝子レベルの発現を大きく左右する。例えば、カチオン性遣伝子キャリアは、タンパク質、脂質、血球細胞などの生体成分と相互作用しやすく、その体内動態の制御がきわめて難しい。そこで、特定細胞あるいは組織に対する親和性の高い分子およびポリエチレングリコールなどにより生体成分との相互作用を少なくすることによって、遣伝子の体内動態を修飾、およびその安定性の向上が試みられている。
遺伝子のターゲティングおよび細胞内導入の効率を高めるために、遺伝子を高分子キャリアと組み合わせたドラッグデリバリーシステムが提案されている。このような高分子キャリアの1つにプルランがある。プルランは天然の多糖類であり、肝臓に高い親和性をもつとともに(Yamaoka et al., Drug Delivery, 1, 75-82 (1993))、肝実質細胞に発現しているアシアロ糖タンパク質レセプターを介して肝細胞へ取り込まれること(Kaneo et al., J. Control Release, 70, 365-373 (2001))が知られている。したがって、このような特性をもつプルランを遺伝子のDDSキャリアとして利用すれば、遺伝子の肝臓へのターゲティングが可能になると考えられる。例えば、特開2003−104914は、プラスミドDNAとプルラン−DTPAとを金属配位結合を介して結合させることにより得られる、肝臓へのターゲティングのための複合体を開示する。
本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。
特開2003−104914 Yamaoka et al., Drug Delivery, 1, 75-82 (1993) Kaneo et al., J. Control Release, 70, 365-373 (2001)
本発明は、核酸と水溶性高分子とをイオン結合により結合させることにより、肝細胞への核酸のターゲティングの効率および細胞内取込の効率を高めることを目的とする。
本発明者らは、プルランにカチオン基を導入してカチオン化プルラン誘導体を作製し、これと核酸とをイオン結合により結合させてポリイオンコンプレックスを形成させることにより、肝細胞への核酸の取込効率が高まることを見いだした。
本発明は、核酸とカチオン化プルラン誘導体から形成されるポリイオンコンプレックスを含む、肝臓デリバリー用製剤を提供する。好ましくは、本発明において用いられるプルランの分子量は、30,000−60,000である。また好ましくは、ポリイオンコンプレックス中の、カチオン化プルラン誘導体中のアミノ基のモル数と核酸中のリン酸基のモル数との比は3−7である。
プルランは、デンプンの部分加水分解物を原料としてAureobasidium pullulans菌により発酵産生されるα−グルカンであり、ブドウ糖3個よりなるマルトトリオースがα−1,6結合で連鎖した直鎖状の水溶性高分子である。食品添加剤および医薬品補助剤として広く使われており、種々の分子量の製品が市販されている。プルランは、肝臓に高い親和性をもつとともに、肝実質細胞に発現しているアシアロ糖タンパク質レセプターを介して肝細胞へ取り込まれることが知られている。好ましくは、本発明において用いられるプルランの分子量は、約10,000以上、より好ましくは約20,000以上、さらに好ましくは約30,000以上、最も好ましくは約40,000以上である。また好ましくは、本発明において用いられるプルランの分子量は、約80,000以下、より好ましくは約70,000以下、さらに好ましくは約60,000以下、最も好ましくは約50,000以下である。
本発明においては、核酸とのポリイオンコンプレックスを形成させるために、プルランにカチオン基を導入したカチオン化プルラン誘導体を用いる。カチオン化の工程は、生理条件下でカチオン化する官能基を導入し得る方法であれば特に限定されないが、プルラン分子上の水酸基に1、2または3級のアミノ基またはアンモニウム基を温和な条件下で導入する方法が好ましい。例えばエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン等のアルキルジアミンや、トリメチルアンモニウムアセトヒドラジド、スペルミン、スペルミジンまたはジエチルアミド塩化物等を、種々の縮合剤、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、塩化シアヌル、N,N'−カルボジイミダゾール、臭化シアン、ジエポキシ化合物、トシルクロライド、ジエチルトリアミン−N,N,N',N'',N''−ペンタン酸ジ無水物等のジ無水物化合物、トリシルクロリド等を用いて反応させることができる。特に、エチレンジアミンまたはスペルミンを反応させる方法が簡便且つ汎用性があり好適である。
本発明において用いる核酸には、DNA、RNA、DNA−RNA複合体、siRNA、PNA、ならびに、糖、リン酸または塩基に修飾を有するこれらの誘導体が含まれる。核酸の例としては、肝疾患の治療に有用なタンパク質等をコードする遺伝子、これを含有するベクター、肝疾患、例えば癌等に対して使用しうるアンチセンスDNAおよびデコイDNA(例えば、NFκB等)を挙げることができる。肝疾患の治療に必要なタンパク質等をコードする遺伝子としては、ホルモン等の低分子量ペプチド、あるいはインターフェロン、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン、細胞成長因子あるいはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)類等のタンパク質、これらのタンパク質の生理活性部位の部分ペプチド等、またはこれらタンパク質およびペプチドの中和抗体およびレセプターのアゴニスト等の遺伝子が挙げられる。ホルモン等の低分子量ペプチドとしては、特に治療に好適なものであれば限定するものではないが、IFN等のものが挙げられる。細胞成長因子の例としては、hGH、EGF、NGF、HGF、FGF、HB−EGF、IGF等、およびこれらのフラグメント、例えばHGFの分子内断片であるNK4が挙げられる。
治療上有用なタンパク質をコードするDNAは、既知の配列に基づいてゲノムまたはcDNAライブラリからクローニングにより入手してもよく、化学合成により製造してもよい。タンパク質をコードするDNAは、導入された細胞内でそのタンパク質の機能が発現されることができるようにプラスミドベクター中に導入して用いる。プラスミドベクターは、細胞内でDNAが転写され、それにコードされるタンパク質が適切に発現されるような様式で配列された、プロモーター領域、開始コドン、終止コドンおよびターミネーター領域等を含む。このようなプラスミドベクターは、当分野において入手可能な発現ベクターに所望のDNAを適当な制限酵素部位を利用して挿入することによって容易に調製することができる。また、導入すべきDNAの塩基配列に基づいて、合成、半合成の手段により調製することも可能である。プラスミドベクター中のプロモーターの種類、開始コドン、終止コドン、ターミネータ領域は特に限定されるものではない。
本発明の製剤中のDNAから発現されるタンパク質は、治療上の所望の活性を有する限り、そのアミノ酸配列中の1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されていてもよく、また同様に糖鎖が置換、欠失及び/又は付加されていてもよい。さらに、別のタンパク質またはそのフラグメントとの融合タンパク質として産生されてもよい。したがって、DNAは、そのような改変型のタンパク質をコードするものであってもよい。このような改変型タンパク質をコードするDNAを部位特異的突然変異法、遺伝子組換え法または合成法により作成する方法は当該技術分野においてよく知られている。
ポリイオンコンプレックスは、核酸とカチオン化プルラン誘導体がイオン結合により結合することにより形成される複合体である。ポリイオンコンプレックスは、核酸とカチオン化プルラン誘導体とを、適当な緩衝溶液中で混合し、所定の時間放置することにより形成することができる。反応は室温で行うことができる。ポリイオンコンプレックスの形成は、混合液の濁度を指標として測定することができる。本発明においては、ポリイオンコンプレックスの特性を表すパラメータとして、N/P比を用いる。N/P比とは、カチオン化プルラン誘導体中のアミノ基のモル数と核酸中のリン酸基のモル数との比率である。目的とする治療、用いる核酸およびカチオン化プルラン誘導体に応じて、肝細胞中への取込に最適なN/P比を選択することができる。好ましくは、ポリイオンコンプレックス中のN/P比は3−7であり、より好ましくは4−6である。本発明にしたがって核酸とカチオン化プルラン誘導体とのポリイオンコンプレックスを形成することにより、核酸の負電荷が中和されるとともに、その電気的反発の緩和による分子サイズの減少が生じる。また、製剤中で核酸が安定化される。さらに、プルランと肝細胞との高い親和性により、核酸を高い効率で肝細胞中に取り込ませることができる。
本発明のポリイオンコンプレックスは水溶性であり、そのまま緩衝液、生理食塩水、注射用溶媒等の希釈剤に溶解してアッセイあるいは治療に用いることができる。あるいは、凍結乾燥した後に、使用時に希釈剤に溶解してから用いてもよい。投与方法としては、静脈内投与、動脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、体腔内投与等が挙げられる。特に好ましくは静脈内投与である。あるいは、カテーテルを用いて直接門脈に注入してもよい。
本発明の製剤の投与量は、治療的応答をもたらすに十分であるように適宜選択することができる。投与量は、通常成人患者当たり、核酸の量として約0.001〜約100μgの範囲、好ましくは、約0.01〜約10μgの範囲から選択される。また1回の投与で効果が不十分であった場合は、投与を複数回行うことも可能である。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
カチオン化プルラン誘導体の作製
カチオン化プルラン誘導体の作製は、プルランの水酸基へのN,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン(スペルミン)の導入反応により行った。分子量の異なるプルラン(東京化成工業製、重量平均分子量(Mw):200,000、昭和電工製、重量平均分子量:200,000、48,000、23,700、12,200および5,800)を脱水ジメチルスルホキシドに溶解させた(10mg/ml)。次に、種々の濃度のN,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、およびスペルミンを加え、室温で20時間撹拌した。反応溶液を蒸留水に対して2日間透析し、凍結乾燥することにより、スペルミン導入カチオン化プルラン誘導体を得た。
スペルミン導入カチオン化プルラン誘導体のスペルミンの導入率は、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)法を用いたアミノ基の定量によって算出した。すなわち、スペルミン導入カチオン化プルラン誘導体の水溶液100μlに、0.2Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)100μl、4wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液200μl、0.1wt%のTNBS水溶液200μlを加え、37℃で2時間反応させた。この反応溶液の415nmにおける吸光度を測定した。この吸光度値とβ−アラニンを用いた検量線から、プルランの水酸基あたりのスペルミンの導入モル比を算出し、スペルミン導入率(導入%)とした。
表1に、作製したカチオン化プルラン誘導体の作製条件およびスペルミン導入率を示す。プルラン、スペルミンおよびCDIの濃度をそれぞれ変化させることによって、カチオン化プルラン誘導体のスペルミン導入率を変化させることができた。
Figure 2005170877
カチオン化プルラン誘導体とプラスミドDNAとのポリイオンコンプレックス形成
プラスミドDNA遺伝子として、ルシフェラーゼをコードするプラスミドDNAを用いた。アンピシリン耐性遺伝子を含むルシフェラーゼのプラスミドDNAを大腸菌にトランスフォームした後、アンピリシン含有LB培地にて、37℃で18時間培養した。増殖した大腸菌を遠心回収し、アルカリ−SDS法によりプラスミドDNAを抽出した。プラスミドDNAの純度評価として、得られたプラスミドDNA水溶液の280nmに対する260nmの比を測定したところ、1.8−2.0の間であった。
ほぼ同じスペルミン導入率(30%)で分子量の異なるカチオン化プルラン誘導体とプラスミドDNAとのポリイオンコンプレックスを用いて、カチオン化プルラン誘導体とプラスミドDNAとのポリイオンコンプレックスのキャラクタリゼーションを行った。プラスミドDNA水溶液(25μg/ml)と濃度の異なるカチオン化プルラン誘導体とを、150nMNaClを含む10mMリン酸緩衝溶液(pH7.4)中で混合し、室温で15分間静置することにより、両者のポリイオンコンプレックスを形成させた。スペルミン導入カチオン化プルラン誘導体とプラスミドDNAとの混合モル比(N/P比)は、(カチオン化プルラン誘導体のアミノ基モル数)/(プラスミドDNAのリン酸基モル数)である。
得られたポリイオンコンプレックスの分子サイズを、動的光散乱(DLS)を用いて測定した。この水溶液をArレーザーを備えたDLS装置(大塚電子製)にて測定した(検出角度90°、37℃)。ポリイオンコンプレックスの流体力学的半径Rは、測定によって得られた散乱強度−時間相関関数およびEinstein−Stokesの式:R=kT/3πηD(k:ボルツマン定数、T:絶対温度、η:溶媒の粘度、D:核酸係数)とから付属の解析ソフトにより算出した。
図1に分子量の異なるカチオン化プルラン誘導体(N/P=5)とプラスミドDNAとのポリイオンコンプレックスの見かけの分子サイズを示す。分子量が5,800および12,200のプルランでは、元のプラスミドDNAに比べて大きな分子サイズを認めたが、分子量が23,700から200,000のプルランでは、分子量の増加とともに分子サイズが減少することがわかった。プラスミドDNAはポリアニオンであるため、その分子鎖は、電気的反発力で広がっていると考えられる。カチオン化プルラン誘導体とのポリイオンコンプレックス形成により、電気的中和と分子鎖のからまりとによって、この分子鎖の広がりが変化すると考えられる。分子量の低いプルランでは分子鎖が短く、十分にプラスミドDNA分子を凝縮させることができないため、分子サイズが低下しなかったと考えられる。一方、分子量が大きくなると、ポリイオンコンプレックスによりプラスミドDNA分子は効率よく凝縮され、分子サイズが低下したと考えられる。
また、図2は、ポリイオンコンプレックスの分子サイズに与えるN/P比の影響を示す(Mw=48,000)。N/P比の増加とともに、分子サイズは低下し、その値はN/P=10以上でプラトーになった。これらの結果は、コンプレックス形成によるプラスミドDNAの分子サイズの低下には、ある量のカチオン化プルラン誘導体で十分であることを示している。それ以上の添加では、ポリイオンコンプレックス形成に関与しない余剰のプルラン誘導体が増加していると考えられる。
濁度測定
表2に示される種々の条件下にて作製したポリイオンコンプレックス水溶液の濁度測定を行った。用いた波長は500nmであり、水溶液の吸光度変化を濁度として測定した。
Figure 2005170877
表2に示す種々の条件下で作製したポリイオンコンプレックスの濁度測定の結果を図3に示す。いずれの分子量のプルランを用いた場合でも、N/P比の増加にともない溶液濁度が増加し、その値はN/P比5以上で一定となった。分子量23,700および48,000のプルランが、他の分子量のものに比べて溶液濁度が高い傾向を示した。図4は種々のイオン強度の分子量48,000のプルラン(N/P=5)を用いて濁度測定を行った結果を示す。図より明らかなように、イオン強度が高くなるにしたがって、濁度の減少が認められた。
インターカレーターとプラスミドDNAとの相互作用の評価
20μg/mlのプラスミドDNA水溶液にエチジウムブロマイド(EtBr、0.4μg/ml)を加え、EtBrをDNA分子へインターカレートさせた。濃度の異なるカチオン化プルラン誘導体水溶液をこの水溶液に加えた。カチオン化プルラン誘導体水溶液の混合前後の蛍光強度(励起波長510nm、蛍光波長590nm)を測定し、もとのプラスミドDNA/EtBrの蛍光強度を100%として相対蛍光強度を算出した。一般に、DNAにEtBrがインターカレートすることによって蛍光が生じる。プラスミドDNAとカチオン化プルラン誘導体とがポリイオンコンプレックスを形成すると、EtBrがプラスミドDNAにインターカレートできなくなり、プラスミドDNAから遊離する。すなわち、相対蛍光強度が減少することは、カチオン化プルラン誘導体とプラスミドDNAとの相互作用が起こっていることを示している。減少の強さはプラスミドDNAカチオン化プルラン誘導体との相互作用の強さに対応すると考えられる。図5に異なる分子量のカチオン化プルラン誘導体との混合によるプラスミドDNA−EtBr複合体の蛍光強度の変化を示す。用いるプルランの分子量によらず、N/P比の増加にともない、相対蛍光強度の減少が認められた。また、N/P比が低い場合、分子量23,700および48,000のプルランが他の種類のプルランに比べて、減少傾向が強いことがわかった。
プラスミドDNA水溶液(10μg/ml)とカチオン化プルラン誘導体(Mw=23,700、スペルミン導入率31.3%))水溶液とを0.1M PBS(pH7.4)中で混合し、異なるN/P比をもつポリイオンコンプレックスを得た。得られたポリイオンコンプレックスをEtBr(0.1mg/ml)を含んだアガロース(1wt%)水溶液から作製したゲルを用いて、100V、30分の条件で電気泳動した。電気泳動用緩衝液は、10mMのエチレンジアミン四酢酸を含む445mMトリス−ほう酸緩衝液(pH8.3)である。UVトランスイルミネーター(GelDoc2000:日本バイオ・ラッドラボラトリーズ製)により、電気泳動されたプラスミドDNAを観察した。図6に結果を示す。N/P比の増加にともなって泳動バンドは薄くなり、N/P比が1以上においては、バンドが認められなくなった。これは、前述のEtBr排除が起こることによって、プラスミドDNAのバンドが消失したものと考えられる。
細胞へのインビトロ遺伝子導入実験
細胞としてヒト肝癌由来株HepG2細胞を用いた。6ウエルプレート(Costar製)に、4×104細胞/cm2(4×105細胞/ウエル)の細胞を播種し、10vol%の仔ウシ胎児血清(FCS)を添加したMEM(MEM−FCS)中にて、5%CO2・95%空気、37℃で24時間培養した。血清を含まないOpti−MEM(Gibco製)培地へ交換した後、ルシフエラーゼ−プラスミドDNAとカチオン化プルラン誘導体とのポリイオンコンプレックス、または対照としてルシフエラーゼ−プラスミドDNAを加えて、6時間培養した。次に、培地をMEM−FCSに交換し、さらに42時間培養を続けた。培地を除去し、細胞をPBSでよく洗浄した後、細胞溶解液(25mMトリス−リン酸緩衝液(pH7.8)、2mMジチオスレイトール、2mM 1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、10%グリセロール、1%Triton(登録商標)X−100)を加え、細胞を溶解させた。細胞溶解液中のルシフェラーゼタンパク質の化学発光を測定することによって、遺伝子発現を定量した。また、Bicinchoninate(BCA)法にて細胞溶解液中の総タンパク質量を測定した。統計分析は、ANOVAを用いた。p値が0.05より低いとき有意差があるとした。
図7は、プラスミドDNAとカチオン化プルラン誘導体とからなる種々のポリイオンコンプレックスを用いたHepG2細胞へのインビトロ遺伝子導入結果を示す(プラスミドDNA量5μg/ウエル、N/P=5、白バー:アシアロフェツインなし、黒バー:アシアロフェツインあり、*p<0.05)。図から明らかなように、分子量48,000のプルランが最も高い遺伝子発現を示した。一方、いずれのコンプレックスにおいても、HepG2細胞表面に発現しているアシアロ糖夕ンパク質レセプターに結合するアシアロフェツイン(1mg/ml)をコンプレックスと同時添加した場合、遺伝子発現が低下した。このことは、カチオン化プルランとプラスミドDNAとのポリイオンコンプレックスが、主としてアシアロ糖タンパク質レセプ夕ーを介して細胞内に取り込まれていることを示唆している。
図8は、HepG2細胞への遺伝子発現に与えるN/P比の影響について調べた結果を示す(プラスミドDNA量5μg/ウエル、Mw=48,000、スペルミン導入率29.0%、白バー:アシアロフェツインなし、黒バー:アシアロフェツインあり、*p<0.05)。N/P比が5の場合、最も高い遺伝子発現を示した。N/P比が低い場合には、ポリイオンコンプレックスは十分正電荷を帯びていないため負電荷を帯びている細胞膜との相互作用が弱く、また、コンプレックスの分子サイズも大きいため遺伝子導入効率が低いと考えられる。
カチオン性高分子は、負電荷をもつ細胞膜と強く相互作用することにより、細胞に対して高い毒性を示すことが知られている。図9は細胞毒性に関するデータを示す(プラスミドDNA量5μg/ウエル、Mw=48,000、スペルミン導入率29.0%、白バー:アシアロフェツインなし、黒バー:アシアロフェツインあり)。N/P比の増加にしたがって遣伝子導入実験後の細胞の総タンパク質量が減少し、細胞数が低下していることがわかった。N/P比がより高くなるとフリーのカチオン化プルラン誘導体が多くなり、その細胞毒性により遺伝子発現が低下すると考えられる。
図10は異なる量のプラスミドDNAを含むポリイオンコンプレックスを用いたHepG2細胞へのインビトロ遺伝子導入についての結果を示す(Mw=48,000、スペルミン導入率29.0%、N/P=5、白バー:アシアロフェツインなし、黒バー:アシアロフェツインあり、*p<0.05)。プラスミドDNAの濃度が5μg/ウエルの場合に最も高い遺伝子発現を示し、それよりも高いあるいは低いプラスミドDNA投与量では発現レベルは低くなった。また、いずれの投与量においてもアシアロフェツインの添加により発現レベルは低下した。これは、ポリイオンコンプレックスによる遺伝子発現が、アシアロ糖タンパク質レセプターを介していることを示している。また、図11に示すように、プラスミドDNAの投与量の増加とともに、細胞の総タンパク質量の減少が認められ、ポリイオンコンプレックスの濃度の増加により細胞が死んでいることがわかった(プラスミドDNA量5μg/ウエル、Mw=48,000、スペルミン導入率29.0%、白バー:アシアロフェツインなし、黒バー:アシアロフェツインあり)。以上のことより、プラスミドDNA投与量が低い場合には遺伝子発現が起こらず、逆に高い投与量のポリイオンコンプレックスは細胞毒性を誘発し、その結果、遺伝子発現レベルが低下したと考えられる。
図1は、カチオン化プルラン誘導体とプラスミドDNAとのポリイオンコンプレックスの見かけの分子サイズを示す。 図2は、ポリイオンコンプレックスの分子サイズに与えるN/P比の影響を示す。 図3は、ポリイオンコンプレックスの濁度測定の結果を示す。 図4は、種々のイオン強度の分子量48,000のプルランを用いて濁度測定を行った結果を示す。 図5は、カチオン化プルラン誘導体との混合によるプラスミドDNA−EtBr複合体の蛍光強度の変化を示す。 図6は、ポリイオンコンプレックスの電気泳動の結果を示す。 図7は、ポリイオンコンプレックスを用いたHepG2細胞へのインビトロ遺伝子導入結果を示す。 図8は、HepG2細胞への遺伝子発現に与えるN/P比の影響を示す。 図9は、ポリイオンコンプレックスの細胞毒性に関するデータを示す。 図10は、ポリイオンコンプレックスを用いたHepG2細胞へのインビトロ遺伝子導入の結果を示す。 図11は、ポリイオンコンプレックスを用いてHepG2細胞へインビトロ遺伝子導入したときの細胞の総タンパク質量を示す。

Claims (3)

  1. 核酸とカチオン化プルラン誘導体から形成されるポリイオンコンプレックスを含む、肝臓デリバリー用製剤。
  2. 前記プルランの分子量が30,000−60,000である、請求項1記載の製剤。
  3. 前記ポリイオンコンプレックス中の、カチオン化プルラン誘導体中のアミノ基のモル数と核酸中のリン酸基のモル数との比が3−7である、請求項1記載の製剤。
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