JP2005169208A - アニオン性物質の吸脱着担体を用いたアニオン性物質の濃縮方法及び濃縮装置 - Google Patents

アニオン性物質の吸脱着担体を用いたアニオン性物質の濃縮方法及び濃縮装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2005169208A
JP2005169208A JP2003410526A JP2003410526A JP2005169208A JP 2005169208 A JP2005169208 A JP 2005169208A JP 2003410526 A JP2003410526 A JP 2003410526A JP 2003410526 A JP2003410526 A JP 2003410526A JP 2005169208 A JP2005169208 A JP 2005169208A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
adsorption
desorption
dye
carrier
anionic substance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003410526A
Other languages
English (en)
Inventor
Akira Kuriyama
朗 栗山
Hirokatsu Miyata
浩克 宮田
Yoshinori Ogawa
美紀 小川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2003410526A priority Critical patent/JP2005169208A/ja
Publication of JP2005169208A publication Critical patent/JP2005169208A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Water Treatment By Electricity Or Magnetism (AREA)
  • Water Treatment By Sorption (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)

Abstract

【課題】 廃水中のアニオン性物質、特に染料を吸着・再脱着させることで容易にアニオン性物質特に染料を濃縮するための方法及び装置を提供することにある。
【解決手段】 アニオン性物質が溶解又は分散した水溶液中に吸脱着担体を分散させて前記アニオン性物質を吸着させる工程と、前記アニオン性物質を吸着した前記吸脱着担体を沈殿回収させる工程と、回収した前記吸脱着担体からアニオン性物質を脱着させる工程と、脱着済みの前記吸脱着担体を再度前記アニオン性物質に吸着させる工程に返送する工程とを含むアニオン性物質の濃縮方法において、前記吸脱着担体がその表面の少なくとも一部にアルカリ側に等電点が有る物質が形成されている多孔体であることを特徴とするアニオン性物質の濃縮方法及びその濃縮装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水溶液中のアニオン性物質、特に染色工業廃水やインクジェットプリンタの廃インク等に含まれる染料を効率的に回収、処理するための濃縮方法及びその装置に関するものである。
一般家庭向けに販売する化学物質は、AIMSテスト(変異原性試験)で発ガン性といった生物細胞への悪影響が無いかどうかを調べられる。このAIMSテストは、測定対象の化学物質の存在下で細胞を培養し、正常に分裂増殖をするかどうかを見る方法である。一般にカチオン性物質は、アニオン性物質であるDNAと電気的に結合し易く、DNAの複写やRNAへの転写を妨げる。その結果、カチオン性物質は細胞分裂等を阻害し生物に有害であると判定されることが多い。故に、企業や研究機関が一般家庭向けに設計開発する新規化学物質はアニオン性物質であることが多い。
そのアニオン性化学物質の中でも、染料は生活に不可欠な化学物質の一つであり、特に最近は家庭用インクジェットプリンタの普及に伴って、染料を扱う施設は増加している。
これに伴い、染料を生産する施設はもちろん、インクジェット用インクを製造する施設や古紙を回収し脱墨する施設も増加し、染料を含有した廃水も増大している。現在これらの廃水はBOD(Biochemical Oxygen Demand)、COD(Chemical Oxygen Demand)及び色度を低減させるため、一般な活性汚泥処理と凝集沈澱処理又は加圧浮上処理を組み合わせた処理がされている。凝集剤としては例えば、無機性の鉱酸、硫酸バンド、石灰、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、アルミン酸ソーダ、ポリ塩化アルミニウム等とポリアクリルアミド等があるが、これらの薬物は、元来、懸濁物、コロイド状物質の凝集分離に主に使用されるものであり、水に溶解している水溶性染料を析出、不溶化させる効果は充分とはいいがたい。しかもこの処理では、大きな処理施設と比較的長い処理時間を要する割に色度の低減が十分なものでないため、処理後の排水中には多くの染料が残存し、このため、染色排水が河川等に排水されて河川の美観を損ねたり、水中の染料が光の透過を妨げて生物の生産性に影響を与えたりしている。そのため、吸着剤を使ってより強力に廃水中の染料を除去する方法も採用されてきた。
吸着剤としては、一般的に知られた活性炭以外にも、ポリアルキルポリアミン、アリルアミンの重合物、ポリアミンの金属錯体配位物等を使用する報告がある。しかしながら、かかるカチオン性ポリマーを使用しても染色排水の脱色はなお充分でない。特に、これらは脱色効果が発揮される染料の種類が限られており、数種の染料が混在する染色排水に使用した場合の脱色に問題がある。そこで、数種の染料が混在する染色排水には、混在する染料各々に有効な脱色剤を互いに併用する方法が考えられるが、この場合は各凝集脱色剤の性能を逆に低下させる場合がある。
また、染料を吸着除去するカチオン性ポリマーとして、N−ビニルアミドポリマーの加水分解あるいはポリアクリルアミドのホフマン分解物等として製造されるポリビニルアミンが知られている。このポリビニルアミンは特に有機汚泥用の脱水剤、製紙における保留剤、脱水助剤、凝集剤等の用途に使用できることが開示されている。
しかし、これら凝集剤や吸着剤で染料を凝集又は吸着させた場合、上澄みの廃水からは染料が除去され色度が低下するものの、沈殿分離した染料含有汚泥を別途処理する必要が生じる。汚泥の処理方法としては脱水した上で埋め立てや焼却する方法が一般的であるが、汚泥の埋め立て処分場不足が深刻な上CO排出量も削減しなければならない昨今、汚泥が生成する染料廃水処理方法は敬遠されつつある。
一方で、多孔質無機素材としてシリカやチタンが盛んに研究されている。中でも、触媒として開発されているアルミナ多孔体は、アルミナの等電点がpH9付近にあるため中性領域でアニオン性物質を吸着するため、染料の吸着という目的に合っている。
良く知られたアルミナ多孔体としては、比表面積が100〜300m/g、細孔容積が0.5〜1.5mL/g、細孔半径ピーク位置の制御可能なベーマイトがある。
また、アルミニウムアルコキシドの加水分解生成物を加熱処理した比表面積は100〜300m/g、細孔容積は0.4〜0.6mL/g、細孔半径ピーク及び細孔の大部分が10nm以下のγ相を主成分とする遷移アルミナや、比表面積は50〜100m/g、細孔容積は0.4mL/g以下、細孔半径ピーク及び細孔の大部分は10nm以下δ相を主成分とする遷移アルミナも知られている。
更に、このようなアルミナ多孔体の細孔分布の制御と構造に関して多くの発明が開示されている。例えば、カーボンブラックの添加によってバイモーダルな細孔半径分布を得ることが開示されている。また、2種以上の酸化物を水蒸気下で加熱処理することによって細孔容積を調整する方法(特許文献1)、アルミナ化合溶液を噴霧乾燥して全細孔容積が0.8〜1.7mL/g、比表面積が80〜135m/gの多孔質表面を得る方法(特許文献2)が開示されている。更に、2種以上のベーマイトゾルを混合することによってマルチモーダルな細孔径分布を得る方法や、噴霧乾燥による方法が開示されている。
これらの方法によって作製されたアルミナ多孔体は、いずれも良好な染料吸着特性を示すが、いったん染料を吸着したアルミナ多孔体の処理が次に問題になる。熱処理をして有機物を分解しガス化する方法もあるが、CO問題以外にも一般に有色の染料分子には金属原子が入っていることが多く、熱処理だけではこれを除去することが出来ない。また、γ−アルミナは、1000〜1100℃でα−アルミナに転移する。そのため、比表面積が激減し吸着能が低下するため、アルミナ多孔体は600℃以下で効率を落として熱処理しない限り、焼却後のアルミナ多孔体の再利用は不可能となり、アルミナ自身も産業廃棄物になってしまう。これでは、有機ポリマーを使った吸着剤と大差なくなってしまう。
そのため、これら吸着による廃水中の染料の除去に代わって、近年は電解法、オゾン又は各種酸化剤を用いた酸化分解処理で直接廃水中の染料を分解する方法が採用されるようになりつつある。
最近研究開発が積極的に行われている方法の一つに電気化学反応を利用した電解酸化法がある。染色廃水を電解槽の中で電解酸化を行い脱色する方法である。
また、紫外線を用いて酸素をオゾン化して染料を脱色する装置のように、紫外線を用いて着色溶液を脱色する試み、又は添加物等を加え紫外線を照射して着色溶液を脱色する試みも多くなされてきている。
更に本発明者らが発明した、染料廃水と機能水を混合して可視光を照射し染料を分解する装置なら石英のような紫外線を透過する特殊な材質の容器と紫外線を発する特殊な光源が不必要となる。
しかし、これらのいずれの処理方法にしても、分解反応である限り、その反応効率は処理対象の廃水中に含まれる染料の濃度に依存する。一般的に染料を含有した廃水が、布等を捺染した後に洗浄した際に出る廃水やインクを作製する装置等の定期的な洗浄の際に出る廃水であることを考えると、廃水中の染料濃度は高いとは言い難く、上記分解処理は低効率なものにならざるを得ない。
そこで、この分解処理の前処理として、何らかの染料濃縮を行う新規な方法及びそれを用いた装置が望まれている。
特開昭58−252号公報 特開昭58−119341号公報
本発明者らは上記課題に対して種々の検討を加えた結果、アルミナやジルコニアのようなアルカリ側に等電点が有る物質から成る多孔体、又はその他の物質からなる多孔体表面の少なくとも一部にアルカリ側に等電点が有る物質の層が形成された多孔体が、沈降性が良く水溶液中に分散させても簡単に沈降回収が可能であり、かつpH7未満の酸性水溶液中でアニオン性物質特に染料を容易に吸着し、pH8以上のアルカリ性水溶液中で一度吸着したアニオン性物質特に染料を容易に脱着するという知見を得るに至った。
本発明は、このような新たな知見に基づきなされたものであり、その目的は廃水中のアニオン性物質、特に染料を吸着・再脱着させることで容易にアニオン性物質特に染料を濃縮するための方法及び装置を提供することにある。
本発明に従って、アニオン性物質が溶解又は分散した水溶液中に吸脱着担体を分散させて前記アニオン性物質を吸着させる工程と、前記アニオン性物質を吸着した前記吸脱着担体を沈殿回収させる工程と、回収した前記吸脱着担体からアニオン性物質を脱着させる工程と、脱着済みの前記吸脱着担体を再度前記アニオン性物質に吸着させる工程に返送する工程とを含むアニオン性物質の濃縮方法において、前記吸脱着担体がその表面の少なくとも一部にアルカリ側に等電点が有る物質が形成されている多孔体であることを特徴とするアニオン性物質の濃縮方法及びその濃縮装置が提供される。
上記したように、本発明の吸脱着担体及びこの担体を用いた装置によれば、染料廃水を処理又は回収する前段として、低コストでかつ容易に廃水中の染料を濃縮できることができる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の一実施態様にかかる処理装置は、アニオン性物質特に染料が溶解又は分散した水溶液中に前記吸脱着担体を分散させて前記アニオン性物質を吸着させる手段と、前記アニオン性物質を吸着した前記吸脱着担体を沈殿させる手段と、沈殿した前記吸脱着担体を脱着溶液に分散させることで吸着したアニオン性物質を再脱着させる手段と、再脱着させた前記吸脱着担体を再度前記アニオン性物質に吸着させる工程に返送する手段を含むアニオン性物質の濃縮装置において、前記吸脱着担体がその表面の少なくとも一部にアルカリ側に等電点が有る物質が形成されている多孔体であることを特徴とするアニオン性物質の濃縮装置である。
また本発明の別の実施形態にかかる処理装置は、アニオン性物質が溶解又は分散した水溶液中に前記吸脱着担体と塩化ナトリウムを添加した上で隔膜が存在する電気分解槽の陽極側に導入する手段と、塩化ナトリウム水溶液を隔膜が存在する電気分解槽の陰極側に導入する手段と、電気分解槽の両電極に通電する手段とを含む前記吸着手段、前記アニオン性物質を吸着した吸脱着担体を塩化ナトリウム水溶液に分散した上で隔膜が存在する電気分解槽の陰極側に導入する手段と、塩化ナトリウムを含む水溶液を隔膜が存在する電気分解槽の陽極側に導入する手段と、電気分解槽の両電極に通電する手段とを含む前記脱着手段、前記電気分解槽の陽極側で生成したアルカリ性水と陰極側で生成した酸性水を混合中和する手段を含む濃縮装置であることを特徴とするものである。また、この際に前記電気分解槽の電極を陽極に切り換えて吸着を行い、陰極に切り換えて脱着を行うことで、前記電気分解槽の同じ側が前記吸着手段、前記脱着手段及び前記返送手段を兼ね備えてもよい。
<吸脱着担体の作製方法>
上記したような吸脱着担体の作製方法は以下の2通りの方法がある。一つは、アルミナ又は/及びジルコニアのような等電点が中性以上の物質で多孔質担体を作製する方法である。また、もう一つは、シリカのような等電点が酸性側の物質で作製した多孔質担体の表面にアルミナ又は/及びジルコニアの層を形成する方法である。
まず、等電点が中性以上の物質で吸脱着担体を作製する方法を、アルミナを例に説明する。
アルミニウムアルコキシド、好ましくはトリ−sec−ブトキシアルミニウムを0℃〜35℃、より好ましくは4℃〜25℃の温度環境で単独又はアルコールの存在下で直接水を添加するか又は水蒸気を含んだガスを接触させ加水分解させる。アルミニウムアルコキシドは空気中の水蒸気でも加水分解反応が起こるため、この操作を行う前のアルミニウムアルコキシドは禁水的に取り扱う必要がある。また、加水分解反応の際には若干発熱するため、白濁した液の温度が35℃を越える場合は反応槽又は反応装置全体を冷却することが好ましい。水に不溶性で粘性流体のアルミニウムアルコキシドの操作性を高めるために、予めアルミニウムアルコキシドをDMFのような有機溶媒に溶解してもよい。DMFと水を混合する場合にも発熱するので、白濁したゲル状の液体の温度が35℃を越える場合は反応槽又は反応装置全体を冷却することが好ましい。
加水分解によって生成したアルミナオリゴマーは引き続き縮合反応によってアルミナ粒子となる。この加水分解・縮合反応の際には、反応槽には特に界面活性剤等を添加してもよい。アルミナアルコキシドの加水分解によって生成したアルコールがこの縮合反応の際にアルミナ粒子に取り込まれ細孔形成に寄与している、と発明者は考えている。
加水分解及び縮合反応は同時にそしてほぼ瞬時に起こるが、その後更に0℃〜35℃、好ましくは4℃〜25℃の温度環境にて30分〜24時間、好ましくは1時間〜10時間水又は水蒸気が存在する状態を維持する。水を添加する場合は液体を攪拌して均一にすることが好ましい。
その後、得られた粒子を乾燥する。特に決まった乾燥方法は無く風乾で十分だが、デシケータに入れて真空吸引すると乾燥時間を短縮できる。
最後に、乾燥した粒子を焼成炉にて焼成する。この時の焼成温度は200〜400℃以下が好ましく、より好ましくは250〜350℃、昇温速度は2℃/分、が好ましく、より好ましくは1℃/分である。500℃を越える高温で焼成すると、細孔構造が崩壊して比表面積や比細孔容積が減少して吸着容量が低下してしまう。
次に、等電点が酸性側の物質で作製した多孔質担体の表面に等電点が中性以上の物質の層を形成して吸脱着担体を作製する方法を、メソポーラスシリカ粒子表面にジルコニア層を形成する方法を例に説明する。なお、ここで言うアルミナ、ジルコニアは完全な酸化物の他にアルミニウム−酸素、ジルコニウム−酸素の結合を有する物質も包含する。
シリカメソ構造体の作製方法に関しては、基本的に界面活性剤の存在下においてシリカ源となる化合物を加水分解した上で縮合して有機無機複合粒子を作製し、最後に焼成して界面活性剤を除去する手法を用いる。例えば、Nature誌の第359巻第710〜712ページ、Nature誌の第368巻第317〜321ページに記載されている方法等を用いることが出来る。このようにして作製されたメソポーラスシリカ粒子は、シリカの等電点がpH2付近のため、比表面積が高いにも関わらずこのままではアニオン性物質を吸着しない。しかし、このメソポーラスシリカ粒子をオキシ硝酸ジルコニウム水溶液に浸漬することによって細孔表面にジルコニア層を形成させ、表面電位を大きくアルカリ性側に変化させアニオン性物質を吸着出来るようになる。
これら2通りの方法で得られた多孔質粉末をそのまま吸脱着担体として用いてもよいが、ペレット状に加工すれば若干吸着量及び速度が若干遅くなるものの固−液分離等の操作性は改善される。
<吸脱着担体の特性及び吸脱着の機構>
上記作製方法にて作製された吸脱着担体の粒子径は10μm以下が好ましく、より好ましくは1μm程度の粒子である。また、蒸留水に分散したところ数分で全て沈殿し、液中に分散しても容易に沈殿分離できることが確かめられた。
一方、この粒子に対して窒素ガス吸着分析を行い、その吸着容量を測定した結果、以下の特徴を持つ粒子が本発明の吸脱着担体として有効であることがわかった。
比細孔容積に関しては0.2mL/g以上が好ましく、より好ましくは0.3mL/g以上である。Brunauer、Emmett及びTellerの単分子吸着理論による計算方法(以下BET法)で求められる比表面積に関しては100m/g以上が好ましく、より好ましくは200m/g以上、特に好ましくは300m/g以上である。Berret、Joyner及びHalendaの理論による計算方法(以下BJH法)で求められる孔径分布に関しては、2nm〜100nmまで非常に広範なもの、又は一般にメソ細孔と呼ばれる2〜50nmの範囲内に鋭い極大値を持つ単一分散を示すものと2通りのどちらでもよいが、両者共に10nm以下の細孔容積が全細孔容積の80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。これらの数値を下回る粒子の場合、粒子のアニオン性物質の吸着容量が低く、本発明の方法及び装置の吸脱着担体としては適さない。また、焼成後の粉末には有機物成分は残存していないことが赤外吸光分析によって確認された。
アルミナやジルコニアの等電点はpH9〜11付近のため中性付近ではゼータ電位がプラスになるため、これらから成る多孔質担体又は表面にこれらの層が形成された多孔質担体は酸性から中性付近ではアニオン性物質を良好に吸着し容易に脱着しない。一方、pHをアルカリ側に変えると容易に脱着するものと考えられる。
これらを考慮すると、1000m/g程度の高い比表面積の粒子を作る方法が確立しているメソポーラスシリカ粒子表面に、ジルコニア等の層を形成した吸脱着担体は高い吸着容量が期待できる。
<吸着対象>
吸着濃縮の対象となる物質しては、アニオン性物質なら特に限定されないが、特に染料として多用されているアニオン性染料が産業上有用である。例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料及びメチン染料等の染料の吸着が可能である。特に本発明は、アゾ染料やフタロシアニン染料等を含む着色溶液の脱色には極めて有効である。
着色溶液のpHは低いほど吸着量が増えて有利である。しかし、本来中性付近の廃水に酸を添加してpHを低下させると、染料を吸着処理した後の処理済み水を中和する必要が生じる。このため、電解酸性水を作製して廃水に混合するか、廃水に塩化ナトリウムを添加して陽極側で電気分解して電解酸性水にして吸着させた後、上澄み水を電解酸性水の作製時に同時に出来る電解アルカリ性水を用いて中和する方法が好ましく用いられる。
<脱着溶媒>
吸脱着担体に吸着した染料は、吸脱着担体を脱着用溶媒に浸漬することによって脱着する。脱着用溶媒はとしては、アルカリ性の水溶液なら特に何でもよいが、好ましくはpH8以上である。
吸着はアニオン性物質が溶解又は分散した水溶液をpH7未満の酸性水溶液にした上で行われることが好ましく、この様な酸性水溶液中で吸着させた場合は、脱着用溶媒としてpH8付近の緩衝液のような弱アルカリ性の水溶液でもよい。また、電解アルカリ性水を用いてもよい。
脱着溶媒は染料廃水の吸着時のpHとの差が大きいほど吸脱着担体からの脱着量は多くなるため濃縮染料液の染料濃度を高めることができるが、吸脱着槽内側の表面を耐アルカリ処理する必要が生じるほか、濃縮染料液を分解処理する前に場合によっては中和処理する必要が生じる可能性もある。
また、脱着溶媒がアンモニアのようなガス状の溶質を溶解した水溶液の場合は、蒸発乾固しても溶質が残留しないため、混合物の少ない純度の高い染料を固形物として回収することが出来る。
<吸脱着装置の実施形態>
図1は本発明の実施態様にかかる装置構成の概略図である。ストレーナ(不図示)で固形物を除去された被処理廃水は予め吸脱着担体12を充填した吸脱着槽10にバッチ的に供給される。この時、乾燥した吸脱着担体12に勢いよく廃水を注ぐと担体が粉塵のように空気中に舞い上がるので、事前に処理槽に若干の水を注いで担体を水になじませておくと良い。
吸脱着槽10を被処理廃水で満たした後、一定時間廃水を攪拌して十分に廃水と吸脱着担体を接触させ廃水内の染料を吸着させる。攪拌の手段は、特に何でもよいが、プロペラ攪拌、ポンプによる液の循環やエアレーション等の一般的な物でよい。
吸着時の被処理廃水のpHは低いほど表面電位が高まり吸脱着担体の吸着量が増えるため、装置の濃縮率を高めることが出来る。ただ、この場合吸着処理後の上澄み水は中和処理が必要になる。
十分染料を吸着させた後、攪拌をやめ、吸脱着担体を沈殿させた後、染料が除去された上澄み水を吸脱着槽10から排水する。
吸脱着担体12の吸着容量が1回の操作で吸着される量よりはるかに大きい場合には、この吸着操作を繰り返すことが出来る。繰り返す回数は吸脱着担体12の吸着容量と廃水中の染料の量及びpHにより適宜決定される。また、吸脱着槽10に染料の濃度や液の色度等を測定するセンサを設置して未吸着の染料濃度を監視することが好ましい。
上澄み水を排水し底部に吸脱着担体を含むスラリーが溜まった状態の吸脱着槽10に脱着用溶媒を注いで、吸脱着担体12表面の染料を脱着させる。脱着溶媒はとしては、アルカリ性の水溶液が用いられる。
吸脱着槽10を脱着溶媒で満たした後、一定時間攪拌して吸脱着担体から染料を溶媒に脱着する。脱着に要する攪拌時間は、吸着した染料の量や脱着用溶媒の種類、pHによって適宜決定される。また吸着の際と同様に、吸脱着槽10に染料の濃度や液の色度等を測定するセンサを設置して吸脱着担体の吸着能を常時監視するとなお良い。
十分染料を脱着した後、攪拌をやめ、吸脱着担体12を沈殿させた後、濃縮染料が溶解した上澄み水を吸脱着槽10から排水する。この時、排水ラインを切換バルブ17で濃縮染料処理装置18に切り換えて送水する。
脱着槽で染料を溶解された濃縮染料液は、沈殿槽で吸脱着担体と分離された後、染料分解処理工程に送られ分解処理してもよいし、蒸発乾固の上染料として回収して再利用したり、固形産業廃棄物として処理してもよい。
(他の実施態様)
図2は他の実施態様にかかる装置構成の概略図である。ストレーナ(不図示)で固形物を除去された被処理廃水は予め吸脱着担体12を充填した吸着槽に連続的に供給される。吸着槽は吸着攪拌槽20と吸着沈殿槽21からなっており、両者の滞留時間は廃水中の染料濃度やpHにより適宜決定される。吸着沈殿槽21は染料の濃度や液の色度等を測定するセンサを設置して吸脱着担体の吸着能を常時監視する。また吸着攪拌槽の攪拌の手段は、特に何でもよいが、プロペラ攪拌、ポンプによる液の循環やエアレーション等の一般的な物でよい。
攪拌槽で十分に染料を吸着され沈殿槽で吸脱着担体と分離され色度の低下した上澄み水は、沈殿槽上部の放流口付近に設置されたセンサにより染料濃度やpHが規定の範囲内にある場合は、そのまま放流できる。
沈殿槽底部に沈殿した吸脱着担体は、一定の割合で脱着槽に送られる。
図2の場合、脱着操作は連続的に行なわれるが、脱着槽は沈殿槽のない一槽式にしてバッチ的に行っても構わない。ただ、ここでは、連続式脱着操作についてのみ説明する。
脱着槽にも攪拌槽と沈殿槽が設置されており、両者の滞留時間は脱着槽に流入する脱着溶媒の種類やpHにより適宜決定される。また、脱着操作そのものはバッチ的に行っても連続的に行ってもよい。ただ、一定時間内に吸着槽に流入する廃水の量と同じ時間に脱着槽に流入する脱着溶媒の量の比が、装置の染料濃縮比になるため、脱着槽を必要以上に大きなものにしたり、脱着溶媒の流入量を多くすると、十分に染料を濃縮できない。
十分染料を脱着した後、脱着槽沈殿槽底部に沈殿した吸脱着担体は再び吸着槽に返送されて再度吸着に利用される。
脱着槽で染料を溶解された濃縮染料液は、沈殿槽で吸脱着担体と分離された後、染料分解処理工程に送られ分解処理してもよいし、蒸発乾固の上染料として回収して再利用したり、固形産業廃棄物として処理してもよい。
(他の実施形態)
図3は他の実施態様にかかる装置構成の概略図である。ストレーナ(不図示)で固形物を除去された被処理廃水は、予め吸脱着担体を充填した吸脱着槽40にバッチ的に供給される。吸脱着槽40は隔膜43で2分され両側に電極44、45を設置した電解槽の陽極側部分である。隔膜としては例えばイオン交換膜等が好適に用いられる。また、被処理廃水を陽極側に供給するのと同時に陰極側にも水を供給し、更に両方が同濃度の塩化ナトリウム水溶液になるように、高濃度の塩化ナトリウム水溶液又は塩化ナトリウムの粉末を添加する。
次に、陽極側を攪拌しながら電極に電圧を掛け塩化ナトリウム水溶液を電気分解する。この時、両極に掛ける電圧は電流をモニタすることでより適宜決定されるが、一般に電流密度が20mA/cm以上でpHの変化が起こると言われているので、それに応じた電流・電圧を設定すればよい。
攪拌の方法は、吸脱着担体が吸脱着槽40底部に沈殿しない範囲で穏やかな方がよい。激しく攪拌して槽内の液を泡立てたり、曝気によって液を循環させる方法を採ると、電極付近で発生した塩素ガスが液中に溶解せず大気中に放出されて、吸脱着槽40内の液中pHが十分に下がらなくなる。ただ、液を静置したとしても多少の塩素ガスの発生は避けられないので、装置全体又は吸脱着槽40は密閉系にして槽内空気は活性炭等を通した上で大気に放出することが好ましい。
一定時間電圧をかけ、槽内のpHが5〜3程度に低下したら、通電をやめてしばらく攪拌だけを行い染料を十分に吸脱着担体に吸着させる。更に通電してpHを低下させると、生成した塩素ガスの酸化作用で染料を分解できるが、染料濃度の低い排水を電気分解するのは効率が悪い。
吸脱着担体12の吸着容量が1回の操作で吸着される量よりはるかに大きい場合には、この吸着操作を繰り返すことが出来る。繰り返す回数は、吸脱着担体12の吸着容量と廃水中の染料の量及びpHにより適宜決定される。また、吸脱着槽40に染料の濃度や液の色度等を測定するセンサを設置して未吸着の染料濃度を監視することが好ましい。
上澄み水を排水し底部に吸脱着担体を含むスラリーが溜まった状態の吸脱着槽40に脱着溶媒として陰極側の電解アルカリ性水を注いで、吸脱着担体12表面の染料を脱着させる。電解アルカリ性水を注ぐ前に、吸脱着担体を含むスラリーを激しく攪拌して液中の塩素ガス濃度を低下させると若干pHが上昇するため、電解アルカリ性水を注いだ時吸脱着担体12表面から脱着する染料の量が増える。
吸脱着槽40を脱着溶媒で満たした後、一定時間攪拌して吸脱着担体から染料を溶媒に脱着する。どの程度の時間攪拌する必要があるかについても、吸着した染料の量や脱着用溶媒の種類、pHによって変わってくるので、予め予備テストを行って決定しておくと良い。また吸着の際と同様に、吸脱着槽40に染料の濃度や液の色度等を測定するセンサを設置して未吸着の染料濃度を監視することが好ましい。
十分染料を脱着させた後、攪拌をやめ、吸脱着担体を沈殿させた後、濃縮染料が溶解した上澄み水を吸脱着槽40から排水する。この時、排水ラインを切換バルブ47で染料処理槽に切り換えて送水する。
(他の実施形態)
図3から電解アルカリ性水送水ポンプ53を取り除いた物は他の実施態様にかかる装置構成の概略図である。染料廃水から吸脱着担体に染料を吸着させるまでは、前記実施形態と同じである。
この後、上澄み水を排水し底部に吸脱着担体を含むスラリーが溜まった状態の吸脱着槽40及び電解アルカリ性水槽41に水を供給し、更に両方が同濃度の塩化ナトリウム水溶液になるように、高濃度の塩化ナトリウム水溶液又は塩化ナトリウムの粉末を添加する。
次に、攪拌しながら電極44、45に今までの吸着とは逆の電圧をかける。つまり、吸脱着槽40が陰極でアルカリ性となり、アルカリ性水槽41が陽極で酸性となるのである。
一定時間電圧をかけ、槽内のpHが9〜11程度に上昇したら、通電をやめてしばらく攪拌だけを行い染料を十分に吸脱着担体から脱着させる。
十分染料を脱着させた後、攪拌をやめ、吸脱着担体を沈殿させた後、濃縮染料が溶解した上澄み水を吸脱着槽40から排水する。この時、排水ラインを切換バルブ47で濃縮染料処理装置48に切り換えて送水する。
これら電解分解槽を用いた2つの実施形態の装置の場合、脱着操作後に吸脱着槽40底部の吸脱着担体スラリーを一時的に別の場所に除去した上で、吸脱着槽40内の濃縮染料溶液を排水せず、必要なら吸脱着槽40及びアルカリ性水槽41に再度塩化ナトリウムを添加し、電極44が陽極になるように通電し、同時に可視光を照射することで濃縮染料廃水を分解することが出来る。この場合、新たに濃縮染料処理装置48を設置する必要がない。
以下、実施例により本発明を詳述するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
実施例1(アルミナ、室温で作製、酸性シアン色染料の吸着)
窒素ガスを充填したグローブボックスの中で、トリ−sec−ブトキシアルミニウム(高純度化学研究所製)を容積100mLの三角フラスコに10mL入れた。グローブボックスからフラスコを取り出し、事前に36%HClを200μL添加した蒸留水を40mLを素早くフラスコ内のトリ−sec−ブトキシアルミニウムの上に重層した。この時、フラスコは水浴しながらゆっくり攪拌し、内容物の温度が上昇しないようにした。塩酸水溶液を添加後、フラスコをロータリーシェーカーに固定し、50rpmの回転速度で回転攪拌した。フラスコ底部の透明なトリ−sec−ブトキシアルミニウムは蒸留水と接触直後に界面が白濁し、30分程度で全体が白濁し蒸留水と完全に混合した。
8時間攪拌後、フラスコ内の白濁した液を遠心機にかけ約1万Gの加速度をかけて遠心分離した。上澄みを除去後、沈殿物をデシケータに移し室温のまま10時間減圧して乾燥させた。ここまでの作業は全て22℃の室温の実験室で行った。
この後、得られた粉を焼成炉に入れ、1℃/分の昇温速度で300℃まで温度を上げ、5時間焼成し、目的の吸脱着担体を約2g得た。
上記作製方法にて作製された吸脱着担体をSEM(日立製、型番名:S−5000H)にて観察したところ1μm程度の粒子であった。また、蒸留水に分散したところ数分で全て沈殿し、液中に分散しても容易に沈殿分離できることが確かめられた。
また、この吸脱着担体をX線回折装置(理学電機社製、型番名:RAD−2X)で分析した結果、規則性のある細孔構造を持たないγ型の結晶相のAlであることがわかった。また、この粉末試料に対してガス吸着装置(カンタクローム社製、型番名:Autosorb−1)で分析した結果、比細孔容積が0.42mL/g、BET法から求められた比表面積が491m/gで、BJH法で解析した孔径分布は2nm〜100nmまで非常に広範だが、10nm以下の細孔容積が全細孔容積の91%であることがわかった。また、焼成後の粉末には有機物成分は残存していないことが赤外吸光分析によって確認された。
次に、この吸脱着担体を遠心管に50mg取り、これにインクジェットプリンタ用インクをシアン色に発色させるために使われるアニオン性フタロシアニン染料であるDBL−199をpH2.6の酸性電解水に溶解して0.040g/Lの濃度にした水溶液を200mL添加して30分間穏やかに攪拌した後、遠心分離した。遠心後の上澄みは目視では透明になっており、逆に吸脱着担体は青く染まっていた。この操作により、吸脱着担体に自重の16%にあたる約8.0mgのDBL−199を吸着させた。なおこの電解酸性水には、予め強電解水生成器(アマノ社製、製品名;Model FW−200)を用いて作製したpH2.6の電解酸性水及びpH10.5の電解アルカリ性水を用いた。
次に、上澄み水を除去した後の沈殿吸脱着担体にpH10.5の電解アルカリ性水を2mL添加して10分間攪拌した後、遠心分離した。遠心後の上澄みは目視では青色に染まっており、吸脱着担体は白色に戻っていた。
始めに添加した0.040g/LのDBL−199水溶液を10分の1に希釈した溶液、吸着操作後の上澄み液(無希釈)、及び脱着処理後の上澄み液を1000分の1に希釈した液を分光光度計(島津製作所製、型番名:UV−3100)で測定した結果を図4に示す。
この結果から、上記方法で作製された吸脱着担体を用いると0.040g/Lの染料水溶液200mLを吸着処理し透明な吸着処理水を得ると共に、いったん吸脱着担体の自重の約16%にあたる染料を吸着し、脱着処理によって約100倍に濃縮した4.0g/Lの脱着溶液を2mL生成できることがわかった。
次に、この一度吸脱着処理を行った粒子を用いて、更に同様の吸脱着処理を5回行ったが、常に1度目と同様に透明な吸着処理水と、4.0g/Lの脱着溶媒を2mL生成することがわかった。
以上の結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、2回目以降も常に自重の16%のシアン染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液から染料を除去した上で100倍に濃縮された脱着溶媒を生成できることがわかった。
実施例2(アルミナ、室温で作製、酸性黄色染料の吸着)
実施例1と同様の方法で作製した吸脱着担体を用いて、シアンの代わりにインクジェットプリンタ用インクを黄色に発色させるために使われるアニオン性アゾ染料であるAY−23を0.030g/Lの濃度にした電解酸性水溶液(pH2.5)を用いた以外は、実施例1と同様の吸脱着実験を行ったところ、約6mgのAY−23を吸着した。
次に、実施例1と同様に、上澄み水を除去した後の沈殿吸脱着担体にpH10.5の電解アルカリ性水を2mL添加して10分間攪拌した後、遠心分離した。遠心後の上澄みは目視では黄色に染まっており、吸脱着担体は白色に戻っていた。
0.030mg/LのAY−23水溶液を10分の1に希釈した物、1回目の吸着操作後の上澄み液(無希釈)、及び1回目の脱着処理後の上澄み液を1000分の1に希釈した液を分光光度計で測定した結果を図5に示す。
2回目以降も実施例1と同様の作業を行い、常に6.0mgの染料を吸脱着できるという結果を得た。以上の結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、常に自重の12%のイエロー染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液から染料を除去した上で100倍に濃縮された脱着溶媒を生成できることがわかった。
実施例3(アルミナ、中性シアン染料水溶液を吸着)
実施例1と同様の方法で作製した吸脱着担体を50mg取り、これに蒸留水に実施例1で用いたDBL−199を0.040g/Lの濃度になるように溶解した水溶液(pH6.6)を20mL添加して10分間攪拌した後、遠心分離した。遠心後の上澄みは目視では透明になっており、逆に吸脱着担体は青く染まっていた。この操作により、吸脱着担体に約0.8mgのDBL−199を吸着させた。
次に、上澄み水を除去した後の沈殿吸脱着担体に予めpH10.1に調整した水酸化ナトリウム水溶液を2mL添加して10分間攪拌した後、遠心分離した。遠心後の上澄みは目視では青色に染まっており、吸脱着担体は白色に戻っていた。
始めに添加したDBL−199水溶液と脱着処理後の上澄み液を希釈して分光光度計で測定した結果から、染料水溶液のpHが6.6の場合、上記方法で作製された吸脱着担体を用いると0.040g/Lの染料水溶液20mLを吸着処理し透明な吸着処理水を得ると共に、いったん吸脱着担体の自重の約1.6%にあたる染料を吸着し、脱着処理によって10倍に濃縮した0.4g/Lの脱着溶媒を2mL生成できることがわかった。
2回目以降も同様の作業を行い、常に0.8mgの染料を吸脱着できるという結果を得た。以上の結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、2回目以降も常に自重の1.6%のシアン染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液のpHを酸性にする操作を行うことなく染料を除去した上で濃縮された脱着溶液を生成できることがわかった。
実施例4(アルミナ、中性黄色染料水溶液を吸着)
実施例1と同様の方法で作製した吸脱着担体を50mg取り、これに実施例2で用いたAY−23を0.030g/Lの濃度になるように蒸留水に溶解した水溶液(pH6.9)を20mL添加して10分間攪拌した後、遠心分離した。遠心後の上澄みは目視では透明になっており、逆に吸脱着担体は黄色く染まっていた。この操作により、吸脱着担体に約0.6mgのAY−23を吸着させた。
次に、実施例3と同様に、上澄み水を除去した後の沈殿吸脱着担体に予めpH10.1になるよう調整した水酸化ナトリウム水溶液を2mL添加して10分間攪拌した後、遠心分離した。遠心後の上澄みは目視では黄色に染まっており、吸脱着担体は白色に戻っていた。
始めに添加したAY−23水溶液と脱着処理後の上澄み液を希釈して分光光度計で測定した結果から、染料水溶液のpHが6.6の場合、上記方法で作製された吸脱着担体を用いると0.030g/Lの染料水溶液20mLを吸着処理し透明な吸着処理水を得ると共に、いったん吸脱着担体の自重の約1.2%にあたる染料を吸着し、脱着処理によって1.2倍に濃縮した0.3g/Lの脱着溶媒を2mL生成できることがわかった。
2回目以降も同様の作業を行い、常に0.6mgの染料を吸脱着できるという結果を得た。以上の結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、2回目以降も常に自重の1.2%のシアン染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液pHを酸性にする操作を行うことなく染料を除去した上で濃縮された脱着溶液を生成できることがわかった。
実施例5(メソポーラスシリカ表面にジルコニア形成、シアン染料を吸脱着)
SIGMA CHEMICAL 社製の非イオン性界面活性剤Brij56(ポリオキシエチレン10セチルエーテル)3.3gを128mLの純水に溶解し、36%HCl20mLを添加し、界面活性剤の酸性溶液とした。この界面活性剤溶液に常温で2.2mLのテトラエトキシシランを添加し、3分間攪拌した後に、フッ素樹脂製の耐圧容器に移し、80℃で1週間反応させ、沈殿を得た。この沈殿を、純水で十分に洗浄した後に乾燥させ、得られた粉末を空気中において550℃で10時間焼成し、白色粉末を得た。
この粉末を、X線回折分析を用いて分析した結果、この粉末は二次元ヘキサゴナル構造の細孔構造を有するメソポーラスシリカであることが確認され、その(100)面の面間隔は5.3nmであることが確認された。また、この粉末試料に対してガス分析装置で測定した結果、比細孔容積1.08mL/g、BET法から求められた比表面積は811m/gという大きな値を示し、BJH法により細孔径分布を計算した結果、細孔径分布は3.8nmに鋭い極大値を持つ単一分散を示し、かつ分布曲線は2nm〜7nmの範囲に入っており、これより、作製したメソポーラスシリカは実質的に均一な細孔径を有していることが確かめられた。また、焼成後の粉末には有機物成分は残存していないことが赤外吸光分析によって確認された。
このメソポーラスシリカを、10質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液中に分散し、室温で3時間攪拌した後、分離し、更に純水で十分に洗浄を行った。洗浄を終えた粒子は分離し、常温で乾燥した。元素分析等により、メソポーラスシリカの表面にオキシ硝酸ジルコニウムが存在していることが確かめられた。また、処理後の粉末のX線回折分析を行ったところ、焼成直後と同じ位置に回折ピークが観測され、構造が保持されていることが確認された。また、処理後の粉末に対して窒素ガス吸着の実験を行った結果、比細孔容積0.998mL/g、BET法によって求められた比表面積は785m/g、BJH法によって求められた細孔径分布もオキシ硝酸ジルコニウムによる処理を行う前とほとんど変化がなかった。
このようにして作製したジルコニア層形成メソポーラスシリカを吸脱着担体として用い、DBL−199水溶液の量を250mLにした以外は、実施例3と同様の実験を行った。
この結果、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、常に自重の20%のシアン染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液から染料を除去した上で濃縮された脱着溶媒を生成できることがわかった。
実施例6(メソポーラスシリカ表面にジルコニア形成、黄色染料の吸脱着)
シアンの代わりにインクジェットプリンタ用インクを黄色に発色させるために使われるアニオン性アゾ染料であるAY−23を0.03g/Lの濃度で250mLを用いた以外は、実施例5と同様の吸脱着実験を行った。
この結果、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、常に自重の15%のイエロー染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液から染料を除去した上で濃縮された脱着溶媒を生成できることがわかった。
比較例1
実施例3で作製したメソポーラスシリカ粒子表面にジルコニウム層を形成せずそのまま用いた以外は、実施例1〜4と同様の実験を行った。
この結果、染料水溶液のpHが6.6、2.5どちらの場合でも、メソポーラスシリカ粒子は全くシアン染料もイエロー染料も吸着せず、吸脱着担体としては使えないことがわかった。
実施例7(アルミナ、4℃で作製、シアン色染料の吸脱着)
トリ−sec−ブトキシアルミニウムと塩酸水溶液の混合及び8時間の攪拌を4℃で行った以外は、実施例1と同様の方法で吸脱着担体の作製を行った。
上記作製方法にて作製された吸脱着担体をSEMにて観察したところ1μm程度の粒子であった。また、蒸留水に分散したところ数分で全て沈殿し、液中に分散しても容易に沈殿分離できることが確かめられた。
また、この吸脱着担体をX線回折装置で分析した結果、規則性のある細孔構造を持たないγ型の結晶相のAlであることがわかった。またこの粉末試料に対してガス吸着装置で分析した結果、比細孔容積が0.40mL/g、比表面積が454m/g、孔径分布は2nm〜100nmまで非常に広範だが、10nm以下の細孔容積が全細孔容積の91%であることがわかった。また、焼成後の粉末には有機物成分は残存していないことが赤外吸光分析によって確認された。
次に、この吸脱着担体を用い、実施例1と同様の吸脱着実験を行った。その結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、常に自重の1.4%のシアン染料吸脱着能力を繰り返し維持し、染料水溶液から染料を除去した上で濃縮された脱着溶媒を生成できることがわかった。
実施例8(アルミナ、ブタノールを添加して作製、シアン色染料の吸脱着)
事前に36%HClを200μL及びn−ブタノールを560μL添加した蒸留水を40mL素早くフラスコ内のトリ−sec−ブトキシアルミニウムの上に重層した以外は、実施例1と同様の方法で吸脱着担体の作製を行った。
上記作製方法にて作製された吸脱着担体をSEMにて観察したところ1μm程度の粒子であった。また、蒸留水に分散したところ数分で全て沈殿し、液中に分散しても容易に沈殿分離できることが確かめられた。
また、この吸脱着担体をX線回折装置で分析した結果、規則性のある細孔構造を持たないγ型の結晶相のAlであることがわかった。また、この粉末試料に対してガス吸着装置で分析した結果、比細孔容積が0.33mL/g、比表面積が425m/g、孔径分布は2nm〜100nmまで非常に広範だが、10nm以下の細孔容積が全細孔容積の94%であることがわかった。また、焼成後の粉末には有機物成分は残存していないことが赤外吸光分析によって確認された。
次に、この吸脱着担体を用い、実施例1と同様の吸脱着実験を行った。その結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、常に自重の1.3%のシアン染料吸脱着能力を繰り返し維持し、染料水溶液から染料を除去した上で濃縮された脱着溶媒を生成できることがわかった。
実施例9(アルミナ、アルコキシドをDMFに溶解して作製、シアン色染料の吸脱着)
事前にトリ−sec−ブトキシアルミニウム10mLをDMF126mLに溶解して、36%HClを200μL添加した蒸留水を40mL入れたフラスコにピペットで滴下した以外は、実施例1と同様の方法で吸脱着担体の作製を行った。
上記作製方法にて作製された吸脱着担体をSEMにて観察したところ1μm程度の粒子であった。また、蒸留水に分散したところ数分で全て沈殿し、液中に分散しても容易に沈殿分離できることが確かめられた。
また、この吸脱着担体をX線回折装置で分析した結果、規則性のある細孔構造を持たないγ型の結晶相のAlであることがわかった。また、この粉末試料に対してガス吸着装置で分析した結果、比細孔容積が0.35mL/g、比表面積が358m/g、孔径分布は2nm〜100nmまで非常に広範だが、10nm以下の細孔容積が全細孔容積の91%であることがわかった。また、焼成後の粉末には有機物成分は残存していないことが赤外吸光分析によって確認された。
次に、この吸脱着担体を用い、実施例1と同様の吸脱着実験を行った。以上の結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、常に自重の1.6%のシアン染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液から染料を除去した上で濃縮された脱着溶媒を生成できることがわかった。
実施例10(アルミナ、水蒸気で加水分解して作製、シアン色染料の吸脱着)
窒素ガスを充填したグローブボックスの中で、トリ−sec−ブトキシアルミニウムを容積1000mLの細口ビンに10mL入れた後、この細口ビンの円筒の壁面が水平になるように倒してゆっくり回転させ、底部及び平面全体に薄くトリ−sec−ブトキシアルミニウムを広げた。この後、グローブボックスから細口ビンを取りだし、ゆっくり回転させながら、ビンの口にガラス管を挿入し、水中でバブリングした空気を10mL/分の流量で送風した。この時、送風した空気の温度22℃/湿度80%であった。
約1週間この操作を行ったところ、細口ビンの壁面は完全に白い結晶状の粒子が付着した状態になったので、トリ−sec−ブトキシアルミニウムは完全に加水分解してアルミナになったと判断して水蒸気を含んだ空気の送気を止めた。細口ビンごとデシケータに移し室温のまま10時間減圧して乾燥させた。ここまでの作業は全て22℃の室温の実験室で行った。
この後、得られた粉を実施例1と同様に焼成炉に入れ、1℃/分の昇温速度で300℃まで温度を上げ、5時間焼成し、目的の吸脱着担体を約2g得た。
上記作製方法にて作製された吸脱着担体をSEMにて観察したところ2μm程度の粒子であった。また、蒸留水に分散したところ数分で全て沈殿し、液中に分散しても容易に沈殿分離できることが確かめられた。
また、この吸脱着担体をX線回折装置で分析した結果、規則性のある細孔構造を持たないγ型の結晶相のAlであることがわかった。また、この粉末試料に対してガス吸着装置で分析した結果、比表面積が688m/g、比細孔容積が0.48mL/g、孔径分布は2nm〜100nmまで非常に広範だが、10nm以下の細孔容積が全細孔容積の97%であることがわかった。また、焼成後の粉末には有機物成分は残存していないことが赤外吸光分析によって確認された。
次に、この吸脱着担体を用い、実施例1と同様の吸脱着実験を行った。以上の結果から、本作製方法で作製した吸脱着担体を用いると、常に自重の1.6%のシアン染料を繰り返し吸脱着する能力を維持し、染料水溶液から染料を除去した上で濃縮された脱着溶液を生成できることがわかった。
実施例11(実施形態1、バッチ式濃縮装置)
まず始めに、実施例1及び2で用いたシアン染料であるDBL−199及びイエロー染料であるAY−23を蒸留水にそれぞれ0.004g/L及び0.003g/Lの割合で溶解した水溶液(pH6.9)を作製し、模擬染料廃水とした。
図1のバッチ式濃縮装置を用意し、吸脱着槽10に予め実施例1と同様の方法で作製した吸脱着担体12を5g充填した上で模擬染料廃水を1000mL注いだ。次に、エアポンプ13を作動させて散気装置14から泡15を発生させ模擬染料廃水を攪拌し吸脱着担体12を液中に分散させた。
約10分間曝気後、エアポンプ13を停止し、吸脱着担体12を沈殿させた後、排水ラインの送水先を切換バルブ17で放流ラインに切り換えた上で、ポンプ16を作動させて染料が除去された上澄み水を吸脱着槽10から950mL排水した。
2回目から5回目まで、吸脱着槽10底部に残った吸脱着担体12のスラリー50mLの分を差し引いた量の950mLの模擬染料廃水を導入してこの吸着操作を繰り返したが、放流された処理済み水の色度をJIS K0101に従って測定したところ常に3〜5であり、そのまま放出して差し支えない程度まで脱色されていることが確かめられた。本装置により染料の十分な吸着除去ができることがわかった。またこの時、吸脱着担体12は青黒い色になっていた。
次に、ポンプ19を作動させて予め脱着溶媒貯留槽11内に作製したpH10.1の水酸化ナトリウム水溶液を脱着溶媒として吸脱着槽10に150mL注いで液量を200mLにした上で、10分間エアポンプ13を作動させて吸脱着担体から染料を水酸化ナトリウム水溶液に脱着した。この後、エアポンプ13を停止し、吸脱着担体12を沈殿させた。この時、吸脱着担体12は白色に戻っていた。完全に吸脱着担体12が沈殿した後、排水ラインの送水先を切換バルブ17で濃縮染料廃水処理装置18に切り換えた上で、ポンプ16を作動させて濃縮染料が溶解した上澄み水を吸脱着槽10から150mL排水し、50mLのスラリーを吸脱着槽10の底部に残した。
この時排水した染料濃縮液を希釈して、吸光光度型で測定したところ、約20分の1に希釈したところで、ほぼ始めに用意した染料廃水と同様になることがわかった。
この一連の吸脱着操作を2回目以降は、投入模擬染料廃水量を950mLにして5回行ったが、1回目とほぼ同様の結果が得られた。
以上の結果から、本装置用いると、染料廃水バッチ的に処理して約20倍に濃縮した濃縮染料廃水を作ることができることがわかった。
実施例12(実施形態2、全連続式濃縮装置)
図2の連続式濃縮装置を用意し、容積800mLの吸着攪拌槽20及び200mLの吸着沈殿槽21に予め実施例1と同様の方法で作製した吸脱着担体12を5g充填した上で実施例10と同様の模擬染料廃水を40mL/分の流量で注いだ。この時吸着攪拌槽20での滞留時間は20分間、吸着沈殿槽21での滞留時間は5分となる。次に、エアポンプ23を作動させて散気装置24から泡15を発生させ模擬染料廃水を攪拌し吸脱着担体12を液中に分散させた。
約30分間後、バルブ27を開いて吸着沈殿槽21底部に沈殿した染料を吸着済みの吸脱着担体12を含むスラリーを2mL/分の流速で容積40mLの脱着攪拌槽30及び容積10mLの沈殿槽31に導入した。同時に、ポンプ36を作動させて予め脱着溶媒貯留槽37内に作製したpH12の水酸化ナトリウム水溶液を6mL/分の流速で導入して吸脱着担体と混合しエアポンプ33を作動させて散気装置34から泡を発生させ、脱着攪拌槽を攪拌した。
脱着沈殿槽31の放流口から流出する染料濃縮液は濃縮染料廃水処理装置38に送水された。また、ポンプ26を作動させて、バルブ27と同流量の2mL/分で染料の脱着処理を行った吸脱着担体12を含むスラリーを吸着攪拌槽20に返送した。
約8時間連続して装置を運転し模擬染料廃水を流し続けたが、吸着沈殿槽21から放流された処理済み水の色度をJIS K0101に従って測定したところ常に3〜5であり、そのまま放出して差し支えない程度まで脱色されていることが確かめられた。また、脱着沈殿槽31から流出した染料濃縮液を希釈して、吸光光度型で測定したところ、常に20分の1に希釈したところで、ほぼ始めに用意した染料廃水と同様になることがわかった。
以上の結果から、本装置用いると、染料廃水及び吸脱着担体を連続的に処理して約20倍に濃縮した濃縮染料廃水を作ることができることがわかった。
実施例13(実施形態3、電気分解利用バッチ式濃縮装置)
図3の電気分解を利用した酸性水及び電解アルカリ性水生成装置を組み込んだバッチ式濃縮装置を用意した。この装置の電気分解槽は容積1000mLで、槽内はイオン交換膜43で吸脱着槽40と電解アルカリ性水槽41に二分され、それぞれの槽には白金板の電極44、45が設置されている。予め実施例1と同様の方法で作製した吸脱着担体12を5g充填した上で吸脱着槽40に実施例10と同様の模擬染料廃水を450mL、電解アルカリ性水槽41に同量の蒸留水を注いだ。同時にポンプ51を作動させて予め塩化ナトリウム水溶液槽50内に作製した10g/Lの塩化ナトリウム水溶液を吸脱着槽40及び電解アルカリ性水槽41にそれぞれ50mL導入し、両水槽内の塩化ナトリウム水溶液濃度を1000mg/Lになるようにした。次に、電極44を陽極、電極45を陰極として500mAの定電流で通電した。この時の電圧はおよそ20Vであった。同時に、攪拌翼49をゆっくり回転させて吸脱着担体12を吸脱着槽40内に分散させた。この時、電極間に流れた電流はおよそ500mAであった。
約10分間通電後、電気をやめ、攪拌翼49を停止し、吸脱着担体12を沈殿させた。この時、吸脱着担体12は青黒い色だった。
次に、排水ラインの送水先を切換バルブ47で放流ラインに切り換えた上で、ポンプ46、52を作動させて吸脱着槽40内の染料が除去された上澄み水及び電解アルカリ性水槽41内の電解アルカリ性水を中和槽54で混合した上でそれぞれ475mL排水した。この時、吸脱着槽40内の上澄み水のpHは3.6、電解アルカリ性水槽41内の電解アルカリ性水のpHは9.5、中和槽54から排水される中和処理済み水のpHは6.8であった。
2回目から5回目までは、吸脱着槽40底部の染料を吸着した吸脱着担体12を含むスラリー25mL及び電解アルカリ性水槽41の底部の電解アルカリ性水25mLの分を差し引いた量の425mLの模擬染料廃水及び蒸留水を導入し、更に50mLの塩化ナトリウム水溶液を添加して、この吸着操作を繰り返したが、放流された処理済み水の色度をJIS K0101に従って測定したところ常に3〜5、pHは常に6.5〜6.8であり、そのまま放出して差し支えない程度まで脱色され中和されていることが確かめられた。本装置により染料の十分な吸着除去と中和ができることがわかった。
次に、吸脱着槽40底部に25mLの染料を吸着した吸脱着担体12を含むスラリーが有る状態で攪拌翼49を激しく回転させた。この時、攪拌翼49は一部が水面から出た状態であった。この操作を約5分行った後、スラリーのpHを測定したところ、4.8に上昇していた。この後、電解アルカリ性水送水ポンプ53を作動させて電解アルカリ性水槽41の底部に残った電解アルカリ性水を全て吸脱着槽40に送水して、10分間攪拌翼49を作動させて、吸脱着担体から染料を混合液に脱着した。この後、攪拌翼49を停止し、吸脱着担体を沈殿させた。この時、吸脱着担体12はほぼ白色に戻っていた。完全に吸脱着担体が沈殿した後、排水ラインの送水先を切換バルブ47で染料処理装置48に切り換えた上で、ポンプ46を作動させて濃縮染料が溶解した上澄み水を吸脱着槽40から排水した。
この時の染料濃縮液を希釈して、吸光光度計で測定したところ、約30分の1に希釈したところで、ほぼ始めに用意した染料廃水と同様になることがわかった。またpHは7.8であった。
この一連の吸脱着操作を5回行ったが、1回目とほぼ同様の結果が得られた。以上の結果から、本装置用いると、染料廃水バッチ的に処理して常に約30倍に濃縮した濃縮染料廃水を作ることができることがわかった。
実施例14(実施形態4、電気分解利用バッチ式濃縮装置)
図3の電気分解を利用した酸性水及び電解アルカリ性水生成装置から電解アルカリ性水送水ポンプ53を取り除いた物を組み込んだバッチ式濃縮装置を用意した。この装置を用い、実施例13と同様に5回の吸着処理と、吸脱着担体12を含むスラリーが有る状態での攪拌翼49を回転した。この後、吸脱着槽40及び電解アルカリ性水槽41に水を20mL供給し、更にポンプ51を作動させて予め塩化ナトリウム水溶液槽50内に作製した10g/Lの塩化ナトリウム水溶液を吸脱着槽40及び電解アルカリ性水槽41にそれぞれ5mL導入し、両水槽内の塩化ナトリウム水溶液濃度を1000mg/Lになるようにした。
次に、攪拌しながら電極44、45に先ほどの吸着工程とは逆に、つまり吸脱着槽40側電極44を陰極、アルカリ性水槽41側電極45を陽極として、電気分解を行った。
約10分間通電後、電気をやめ、攪拌翼49を停止し、吸脱着担体12を沈殿させた。次に、排水ラインの送水先を切換バルブ47で放流ラインに切り換えた上で、ポンプ46、52を作動させて吸脱着槽40内の染料が除去された上澄み水及び電解アルカリ性水槽41内の電解アルカリ性水を中和槽54で混合した上でそれぞれ25mL排水した。この時、吸脱着槽40内の上澄み水のpHは3.6、電解アルカリ性水槽41内の電解アルカリ性水のpHは9.5、中和槽54から排水される中和処理済み水のpHは6.8で実施例12とほぼ同様であった。
この一連の吸脱着操作を5回行ったが、1回目とほぼ同様の結果が得られた。以上の結果から、本装置用いると、染料廃水バッチ的に処理して約30倍に濃縮した濃縮染料廃水を作ることができることがわかった。
本発明の実施態様にかかる装置構成の概略図である。 本発明の他の実施態様にかかる装置構成の概略図である。 本発明の他の実施態様にかかる装置構成の概略図である。 アルミナ球脱着担体にシアン染料を吸脱着したときの液の吸光度である。 アルミナ球脱着担体にイエロー染料を吸脱着したときの液の吸光度である。
符号の説明
10 吸脱着槽
11 脱着溶媒貯留槽
12 吸脱着担体
13 曝気攪拌用エアポンプ
14 曝気攪拌用散気装置
15 泡
16 排水ポンプ
17 切換バルブ
18 濃縮染料廃水処理装置
19 脱着溶媒送水ポンプ
20 吸着攪拌槽
21 吸着沈殿槽
23 曝気攪拌用エアポンプ
24 曝気攪拌用散気装置
26 脱着済み吸脱着担体スラリー返送ポンプ
27 脱着済み吸脱着担体スラリー送水バルブ
30 脱着攪拌槽
31 脱着沈殿槽
33 曝気攪拌用エアポンプ
34 曝気攪拌用散気装置
36 脱着溶媒送水ポンプ
37 脱着溶媒貯留槽
38 濃縮染料廃水処理装置
40 吸脱着槽
41 電解アルカリ性水槽
43 隔膜
44 陽極側電極
45 陰極側電極
46 吸脱着槽排水ポンプ
47 切換バルブ
48 濃縮染料廃水処理装置
50 塩化ナトリウム水溶液貯留槽
51 塩化ナトリウム水溶液送水ポンプ
52 電解アルカリ性水排水ポンプ
53 電解アルカリ性水送水ポンプ
54 中和槽

Claims (10)

  1. アニオン性物質が溶解又は分散した水溶液中に吸脱着担体を分散させて前記アニオン性物質を吸着させる工程と、前記アニオン性物質を吸着した前記吸脱着担体を沈殿回収させる工程と、回収した前記吸脱着担体からアニオン性物質を脱着させる工程と、脱着済みの前記吸脱着担体を再度前記アニオン性物質に吸着させる工程に返送する工程とを含むアニオン性物質の濃縮方法において、前記吸脱着担体がその表面の少なくとも一部にアルカリ側に等電点が有る物質が形成されている多孔体であることを特徴とするアニオン性物質の濃縮方法。
  2. 前記吸着工程が、前記アニオン性物質が溶解又は分散した水溶液中に吸脱着担体と塩化ナトリウムを添加した上で隔膜が存在する電気分解槽の陽極側に導入する工程と、塩化ナトリウム水溶液を隔膜が存在する電気分解槽の陰極側に導入する工程と、電気分解槽の両電極に通電する工程とを含む請求項1に記載のアニオン性物質の濃縮方法。
  3. 前記脱着工程が、前記アニオン性物質を吸着した吸脱着担体を塩化ナトリウム水溶液に分散した上で隔膜が存在する電気分解槽の陰極側に導入する工程と、塩化ナトリウムを含む水溶液を隔膜が存在する電気分解槽の陽極側に導入する工程と、電気分解槽の両電極に通電する工程とを含む請求項1に記載のアニオン性物質の濃縮方法。
  4. 前記電気分解槽の電極を陽極に切り換えて吸着を行い、その後陰極に切り換えて脱着を行うことで、前記電気分解槽の同じ側で吸着工程、脱着工程及び返送工程を行う請求項1〜3のいずれかに記載のアニオン性物質の濃縮方法。
  5. 前記電気分解槽の陽極側で生成したアルカリ性水と陰極側で生成した酸性水を混合中和して放流する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載のアニオン性物質の濃縮方法。
  6. アニオン性物質が溶解又は分散した水溶液中に吸脱着担体を分散させて前記アニオン性物質を吸着させる手段と、前記アニオン性物質を吸着した前記吸脱着担体を沈殿回収させる手段と、回収した前記吸脱着担体からアニオン性物質を脱着させる手段と、脱着済みの前記吸脱着担体を再度前記アニオン性物質を吸着させる手段に返送する手段とを含むことを特徴とするアニオン性物質の濃縮装置において、前記吸脱着担体がその表面の少なくとも一部にアルカリ側に等電点が有る物質が形成されている多孔体であることを特徴とするアニオン性物質の濃縮装置。
  7. 前記吸着手段が、アニオン性物質が溶解又は分散した水溶液中に吸脱着担体と塩化ナトリウムを添加した上で隔膜が存在する電気分解槽の陽極側に導入する手段と、塩化ナトリウム水溶液を隔膜が存在する電気分解槽の陰極側に導入する手段と、電気分解槽の両電極に通電する手段とを含むものである請求項6に記載のアニオン性物質の濃縮装置。
  8. 前記脱着手段が、アニオン性物質を吸着した吸脱着担体を塩化ナトリウム水溶液に分散した上で隔膜が存在する電気分解槽の陰極側に導入する手段と、塩化ナトリウムを含む水溶液を隔膜が存在する電気分解槽の陽極側に導入する手段と、電気分解槽の両電極に通電する手段とを含むものである請求項6に記載のアニオン性物質の濃縮装置。
  9. 前記電気分解槽の電極を陽極に切り換えて吸着を行い、その後陰極に切り換えて脱着を行うことで、前記電気分解槽の同じ側が吸着手段、脱着手段及び返送手段を兼ね備えた請求項6〜8のいずれかに記載のアニオン性物質の濃縮装置。
  10. 前記電気分解槽の陽極側で生成したアルカリ性水と陰極側で生成した酸性水を混合中和して放流する手段を含む請求項6〜8のいずれかに記載のアニオン性物質の濃縮装置。
JP2003410526A 2003-12-09 2003-12-09 アニオン性物質の吸脱着担体を用いたアニオン性物質の濃縮方法及び濃縮装置 Pending JP2005169208A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003410526A JP2005169208A (ja) 2003-12-09 2003-12-09 アニオン性物質の吸脱着担体を用いたアニオン性物質の濃縮方法及び濃縮装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003410526A JP2005169208A (ja) 2003-12-09 2003-12-09 アニオン性物質の吸脱着担体を用いたアニオン性物質の濃縮方法及び濃縮装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005169208A true JP2005169208A (ja) 2005-06-30

Family

ID=34731598

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003410526A Pending JP2005169208A (ja) 2003-12-09 2003-12-09 アニオン性物質の吸脱着担体を用いたアニオン性物質の濃縮方法及び濃縮装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005169208A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009207964A (ja) * 2008-03-03 2009-09-17 Kazumi Oguro パラミロンによる廃液中の色素成分除去方法
CN102976435A (zh) * 2012-12-11 2013-03-20 天津工业大学 一种利用氨基或羧基功能化磁性微球去除染料污染的方法
WO2013069929A1 (ko) * 2011-11-07 2013-05-16 주식회사 동진쎄미켐 염료감응 태양전지 모듈의 염료 재활용 방법
CN103803754A (zh) * 2013-03-12 2014-05-21 浙江迪邦化工有限公司 一种染料酸性废水的处理方法及装置
KR101751733B1 (ko) 2015-12-10 2017-06-28 성균관대학교산학협력단 음이온성 물질의 흡착 또는 센싱 방법
CN111003761A (zh) * 2020-03-10 2020-04-14 广东电网有限责任公司东莞供电局 一种印染废水处理系统及方法
KR102375244B1 (ko) * 2021-03-31 2022-03-17 경기도 산성 염료 하폐수 색도 제거 방법
CN115583688A (zh) * 2022-01-19 2023-01-10 河南理工大学 基于煤矸石基分子筛的螺旋流态化连续性吸附装置及方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009207964A (ja) * 2008-03-03 2009-09-17 Kazumi Oguro パラミロンによる廃液中の色素成分除去方法
WO2013069929A1 (ko) * 2011-11-07 2013-05-16 주식회사 동진쎄미켐 염료감응 태양전지 모듈의 염료 재활용 방법
KR101850354B1 (ko) 2011-11-07 2018-04-19 주식회사 동진쎄미켐 염료감응 태양전지 모듈의 염료 재활용 방법
CN102976435A (zh) * 2012-12-11 2013-03-20 天津工业大学 一种利用氨基或羧基功能化磁性微球去除染料污染的方法
CN103803754A (zh) * 2013-03-12 2014-05-21 浙江迪邦化工有限公司 一种染料酸性废水的处理方法及装置
KR101751733B1 (ko) 2015-12-10 2017-06-28 성균관대학교산학협력단 음이온성 물질의 흡착 또는 센싱 방법
CN111003761A (zh) * 2020-03-10 2020-04-14 广东电网有限责任公司东莞供电局 一种印染废水处理系统及方法
KR102375244B1 (ko) * 2021-03-31 2022-03-17 경기도 산성 염료 하폐수 색도 제거 방법
CN115583688A (zh) * 2022-01-19 2023-01-10 河南理工大学 基于煤矸石基分子筛的螺旋流态化连续性吸附装置及方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Desa et al. Industrial textile wastewater treatment via membrane photocatalytic reactor (MPR) in the presence of ZnO-PEG nanoparticles and tight ultrafiltration
Pang et al. Fe3+ doped TiO2 nanotubes for combined adsorption–sonocatalytic degradation of real textile wastewater
RU2612273C2 (ru) Обработка попутно добываемой воды для удаления органических соединений
NO176436B (no) Fremgangsmåte for rensing av kloakk
CN103613228B (zh) 一种处理维生素k3生产废水的方法
Laera et al. Photocatalytic activity of TiO2 nanofibers in simulated and real municipal effluents
Belghiti et al. Fast and non-selective photodegradation of basic yellow 28, malachite green, tetracycline, and sulfamethazine using a nanosized ZnO synthesized from zinc ore
Liu et al. The reuse of nano-TiO2 under different concentration of CO32–using coagulation process and its photocatalytic ability in treatment of methyl orange
CN108358363A (zh) 一种高盐有机污水的深度处理方法
JP2005169208A (ja) アニオン性物質の吸脱着担体を用いたアニオン性物質の濃縮方法及び濃縮装置
Rashed et al. Photocatalytic degradation of Rhodamine‐B dye using composite prepared from drinking water treatment sludge and nano TiO2
Zhang et al. One-step dye wastewater treatment by combined adsorption, extraction, and photocatalysis using g-C3N4 pickering emulsion
Vaghela et al. Reduced graphene oxide coated graphite electrodes for treating Reactive Turquoise Blue 21 rinse water using an indirect electro-oxidation process
Talaiekhozani et al. Comparing the ZnO/Fe (VI), UV/ZnO and UV/Fe (VI) processes for removal of Reactive Blue 203 from aqueous solution
Hu et al. Pyrolysis of paper sludge and utilization for ionic dye adsorption
CN207330594U (zh) 一种油墨废水回收再利用装置
CN110255690B (zh) 重金属废水处理剂及其应用
Hajipour et al. Photo-Fenton decolorization of dye with Cu solid state exchanged bentonite
Bellebia et al. Color removal from acid and reactive dye solutions by electrocoagulation and electrocoagulation/adsorption processes
Song et al. Sodium borohydride-triggered efficient adsorption and desorption behavior of methylene blue on the surface of Co0. 85Se nanosheets
CN105366745B (zh) 一种高效染色废水处理剂
KR100706536B1 (ko) 급속폐수처리장치 및 이를 이용하는 급속폐수처리방법
Kim et al. Preparation of TiO2 nanoparticle from Ti-salt flocculated sludge with dye wastewater
CN114031167A (zh) 一种同步去除水中微塑料和喹诺酮类抗生素的方法
CN108892288B (zh) 一种油田废液电催化高效脱色方法及装置