しかしながら、特許文献1では骨材として使用できるものが特殊な天然骨材に限定され、舗装材のコスト的メリットや省資源的メリットを失ってしまうという問題が生じていた。
また、特許文献2及び3では、舗装材を使用中にその中に添加された金属が酸化により劣化し、熱伝導性が低下しやすいという問題が生じていた。
特許文献4に示されているようなアルミナ質焼結骨材では、その目的のために作製した焼結骨材を多量に配合しないと熱伝導率を高める効果が少ないという問題が生じていた。
特許文献5から特許文献7に示されているように、黒鉛材料は熱伝導率が高いので、黒鉛材料を使用することによって、他のセラミック材料に比べて熱伝導率の高い舗装用ブロックを得やすく、また、黒鉛材料は化学的に安定であるために、得られた舗装用ブロックは耐久性が高いという利点もある。更に、他の骨材は何であっても適用することができ、使用する骨材は特定のものに限定されないという利点もある。しかし、黒鉛材料(黒鉛粒子)を舗装用ブロックの骨材の一部として使用する場合、次のような幾つかの問題が生じていた。
つまり、通常、黒鉛粒子は、舗装用ブロックに一般に使用される骨材に比べて機械的強度が弱く、黒鉛粒子を多く使用すると舗装用ブロックの機械的強度が低下するという問題が生じていた。また、黒鉛粒子は骨材に比べて耐損傷性も劣るので、黒鉛粒子を多く使用すると舗装用ブロックの損傷性も低減され耐摩耗性が低減するとういう問題が生じていた。更に、黒鉛粒子を一定量使用すると舗装用ブロックの色が黒色を帯びるという外観上の問題が生じていた。
このために、主たる骨材が特定のものに限定されないで構成することができる舗装用ブロックであって、十分な機械的強度、走行快適性等の基本的な舗装用ブロックの特性を満足し、融雪効果が十分に発揮される程度に熱伝導性が改善され、かつ黒色を帯びていない舗装用ブロックの提供がなされていない状況にあった。加えて、一般に舗装用ブロックは低コストであることも要求される。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、主たる骨材を限定せず、融雪効果が十分に発揮される熱伝導性を有し、かつ舗装用ブロックの色が黒色を帯びていない種々様々な形態の機能型舗装用ブロックを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の機能型舗装用ブロックは、セメントを主バインダとして複数の種類の骨材を接合した機能型舗装用ブロックであって、複数の種類の骨材のうち少なくとも1種類の骨材が人造黒鉛粒子からなる骨材であり、この人造黒鉛粒子は、主たる成分が黒鉛化された炭素骨材と炭素バインダから構成されている真密度が2.22g/cm3以上の粒子であり、機能型舗装用ブロックに対して2〜8重量%含むことを特徴としている。
この構成により、高い熱伝導率を有し、ロードヒーティングによって融雪を促進させる機能型舗装用ブロックが提供される。また、上記構成のブロックは、黒鉛粒子を含有しているが黒色を帯びていない。更に、上記構成のブロックは、十分な機械的強度、耐摩耗性及び走行快適性等の基本的な特性を満足している他、優れた凍結融解に対する耐久性が発現されることが見出された。
また、上記構成では、人造黒鉛粒子以外の骨材としては、舗装用ブロックに一般的に使用されている陸砂、砕石、本石(天然石)、高炉スラグや銅スラグといった廃材等が使用でき、骨材の種類に特に限定されないので、種々様々のあらゆる形態の機能性舗装材を提供できる。
この場合、機能型舗装用ブロックのうちの2〜8重量%が人造黒鉛粒子であるが、2重量%未満であると舗装材の熱伝導率を十分向上させることがない。また、黒鉛粉の量が8重量%を超えると、機械的強度や耐摩耗性が低下する傾向にあり、ブロックも黒色を帯びやすくなるからである。また、ブロックが黒色を帯びないことを考慮すると2〜6重量%であることがより好ましい。
また、上記構成においては、黒鉛粒子のうち、主たる成分が黒鉛化された炭素骨材と炭素バインダから構成される人造黒鉛粒子としている。この構成の人造黒鉛粒子を使用することによって、十分な機械的強度、耐摩耗性及び走行快適性が保持されやすくなり、また優れた凍結融解に対する耐久性が発現される。この構成の人造黒鉛粒子は、各粒子は一次粒子(骨材)とバインダから構成されているので、機械的強度が高くへき開することもない。従って、この黒鉛をブロックに添加しても機械的強度や耐摩耗性が保持されやすい。特に圧縮強度が高い人造黒鉛粒子とすることができ、そのような人造黒鉛粒子を添加することによってブロックの強度をあまり低下させないですむ。また、各人造黒鉛粒子は適度な気孔を有しており熱衝撃や機械的の衝撃も吸収しやすいと考えられる。
上記構成の人造黒鉛粒子は、熱伝導率が高いことに加えて、熱機械特性に優れるために走行快適性が保持されやすく、優れた凍結融解に対する耐久性が発現されたものと考えられる。凍結融解に対する耐久性について更に付け加えると、凍結融解による応力によっても人造黒鉛粒子は破壊されず、かつ、その添加によってブロックは全体が均一な温度になりやすくブロック内部での温度差によって発生する内部応力が小さくなることにより、このような特性が発現したと考えられる。例えば、鱗状の天然黒鉛は高い熱伝導率を有するが、この黒鉛粒子はへき開しやすく、添加することによってブロックの機械的強度の低下を招きやすく、凍結融解に対する耐久性も向上しない。
また、人造黒鉛粒子を構成する一次粒子のサイズ(粒径)は、特に限定されず、一次粒子の元の原料によっても好ましいサイズが変わってくるが、平均粒径で5〜300μmが好ましい。一次粒子とバインダの量の割合も、一次粒子のサイズ等によって好ましい割合が変わってくるが、概ね一次粒子の重量1に対しバインダの重量が0.1〜1である。一次粒子を小さくし、バインダの量を増やすと、機械的強度は向上するが、熱伝導率が高くならない傾向にあるので、機械的強度と熱伝導率のバランスを考えてこれらの条件を決定すればよい。
使用する人造黒鉛粒子の真密度が2.22g/cm3以上としているのは、真密度が高い方が黒鉛の結晶性が高く、高い熱伝導率を有しているからである。黒鉛の理論真密度は、2.265g/cm3であり、その値は超えることはない。真密度が2.22g/cm3に満たないような人造黒鉛粒子を使用しても熱伝導率が十分に高くないために、多量に人造黒鉛粒子を使用しないと十分に高い熱伝導率を有する舗装用ブロックが得られない。そのため、舗装用ブロックの機械的強度が低下したり、ブロックが黒色を帯びたりする結果となるからである。また、真密度が2.23g/cm3以上であることがより好ましい。ブロックの熱伝導率を向上させる効果がより高まるからである。
ここで、真密度は、標準とする液媒体にn−ブタノールを用いる比重瓶法によるものであり、JIS R7202、7212、7222に従って求められる値をいう。
なお、人造黒鉛粒子は組織が複雑であることに加え異方性があること等により正確な粒子そのものの固有の熱電伝導率を求めるのは困難と考えられる。一般に人造黒鉛粒子の熱伝導率は、100〜200W/(m・K)程度であると考えられ、各人造黒鉛粒子の結晶性に大きく影響される他、結晶粒の大きさ等によっても変化する。
また、上記構成の舗装用ブロックにおいて、人造黒鉛粒子のうち0.075mm未満の粒径を有する人造黒鉛粒子の含有量が、ブロックに対して0.5%以下であることが好ましい。黒の発色に大きな影響を与えるのは0.075mm未満の小さな粒径の人造黒鉛粒子である。黒色を帯びたか否かの判断は、目視によって行う。
この大きさの粒子がブロックに0.5重量%を超えて含まれると、目視によってブロックが黒色を帯びていることが確認されるようになる。また、人造黒鉛粒子は骨材の粒径より大きいと、機械的強度の低下を招いてしまう。従って、人造黒鉛粒子の粒度は、骨材の粒径より小さく、かつ0.075mm以下の微粒をほとんど含まないことがより好ましい。
なお、ここでは、目開きが0.075mmのふるいを通過した粒子が、「0.075mm未満の粒径を有する人造黒鉛粒子」である。
また、本発明の機能型舗装用ブロックは、セメントを主バインダとして複数の種類の骨材を接合した機能型舗装用ブロックであって、複数の種類の骨材のうち少なくとも1種類の骨材が炭化ケイ素粒子からなる骨材であり、炭化ケイ素粒子は、熱伝導率が100W/(m・K)以上であり、機能型舗装用ブロックに対して2〜8重量%含むことを特徴としている。
この構成により、高い熱伝導率を有し、ロードヒーティングによって融雪を促進させる機能型舗装用ブロックが提供される。また、上記構成のブロックは、炭化ケイ素粒子を使用しているために黒色を帯びることはなく、十分な機械的強度と走行快適性が保持される。
また、この構成により、黒鉛粒子以外の骨材としては、舗装用ブロックに一般的に使用されている陸砂、砕石、本石(天然石)、高炉スラグや銅スラグといった廃材等が使用でき、骨材の種類に特に限定されないので、種々様々のあらゆる形態の機能性舗装材を提供できる。
上記構成において、炭化ケイ素粒子は、100W/(m・K)以上の熱伝導率を有するものであれば、炭化ケイ素(SiC)粒子としては、立方晶系のβ−SiCと六方晶系のα−SiCとがあり、いずれも使用することができる。α−SiC粉は、工業炉で大量生産されており安定的に入手しやすい。この場合、好ましくは、炭化ケイ素粒子の熱伝導率が140W/(m・K)以上である。炭化ケイ素の使用量をより少なくして熱伝導率を高めることができるからである。
炭化ケイ素粒子の量は、舗装用ブロックに対して2〜8重量%含んでいる。2重量%未満であるとブロックの熱伝導率が十分向上せず、8重量%を超えるとブロックの機械的強度が低下する傾向にある。
本発明の機能型舗装用ブロックは、上記いずれのブロックであっても前述のように種々様々な形態の舗装材に適用することができる。従って、機能型舗装用ブロックは、透水性を有する透水性コンクリートブロック、非透水性を有する非透水性コンクリートブロック又はインターロッキングブロックとすることができる。ここで、インターロッキングブロックは、側面に連結構造を有していて、これらを相互に連結したときは、一体的な舗装面を有する構造体となる。
また、本発明の機能型舗装用ブロックは、上記いずれのブロックであっても機能型舗装用ブロックの表面に複数の溝を施す加工(ローレット加工)を行うことによって、がたつきや振動に影響を受けやすい構造、すなわち車輪の径が小さく、クッション性に乏しい構造である車椅子や乳母車などの車両に与える振動を少なくすることができる。このように、こうした車両の滑らかな走行を可能とすることは、近年注目されているバリアフリーに対応できる技術として有益である。
本発明の機能型舗装用ブロックは、融雪を促進させることができ、ロードヒーティングにおいて少ないエネルギで融雪することができる。
また、本発明の機能型舗装用ブロックは、十分な機械的強度、耐摩耗性及び走行快適性並びに優れた凍結融解に対する耐久性を有する。
また、本発明の機能型舗装用ブロックにおいては、高熱伝導性の骨材を一部使用する他は、特殊な骨材を必要せず、種々様々な形態の舗装材に適用することができる。従って、広いバリエーションのもと各種の機能型舗装用ブロックを提供することができる。
本発明の機能型舗装用ブロックは、コンクリートブロックであるので、歩道の美しさや、街の景観に配慮した着色や表面テクスチャーの加工も可能である。更に、本発明の機能型舗装用ブロック表面に複数の溝加工(ローレット加工)を施したインターロッキングブロックとすることもでき、それによって景観性や快適な歩行性等の機能性を併せ持つので、積雪地のユニバーサルデザイン及び冬季バリアフリー構想の促進を図ることができる。
本発明において、表面にローレット加工を施した機能型舗装用ブロックは、車椅子や乳母車による走行を滑らかで快適なものとすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態にあっては、セメントを主バインダとして複数の種類の骨材を接合しており、骨材の一部に特定の人造黒鉛粒子からなる骨材を使用して舗装用ブロックとする。
また、本発明の実施の形態にあっては、セメントを主バインダとして複数の種類の骨材を接合しており、骨材の一部に特定の炭化ケイ素粒子からなる骨材を使用して舗装用ブロックとする。
上記人造黒鉛粒子は、主たる成分が黒鉛化された炭素骨材と炭素バインダから構成される粒子であって、真密度が2.22g/cm3以上である。より好ましくは、真密度が2.23g/cm3以上である。
このような人造黒鉛粒子を別途製造して使用することもできるが、製鋼用電極、等方性黒鉛黒鉛、電気黒鉛質ブラシ等の黒鉛材料の切粉から真密度の特性等を満足する材料を選択することもできる。これらいずれの黒鉛材料も使用済み材料のリサイクルを使用することができるが、これらのうち、特に製鋼用電極は黒鉛化度が高く熱伝導性に優れたものも多く、生産量も多いので、製鋼用電極の製造工程において排出される廃材や使用済み材料を再利用の形で使用しやすい。
人造黒鉛粒子の量は、舗装用ブロックに対して2〜8重量%であり、2重量%未満であると舗装材の熱伝導率を十分向上せず、8重量%を超えると、機械的強度が低下する傾向にあり、ブロックも黒色を帯びやすくなる。この場合、ブロックが黒色を帯びないことを考慮すると2〜5%重量%であることがより好ましい。
また、人造黒鉛粒子のうち0.075mm未満の粒径を有する人造黒鉛粒子の含有量が、ブロックに対して0.5%以下であることが好ましい。また、人造黒鉛粒子の粒度は、骨材の粒径より小さく、かつ0.075mm以下の微粒をほとんど含まないことがより好ましい。
また、ブロックが黒色を帯びているか否か微妙なときには、平均粒径が、0.05〜1μmの酸化鉄(Fe2O3)をブロックに対して0.2〜1重量%添加してもよい。酸化鉄の赤色によって、黒色を目視で感じる黒色を低減することができる。
また、本実施の形態にあっては、高熱伝導性を有する粒子として炭化ケイ素を使用する。この場合、使用する炭化ケイ素粒子は熱伝導率が100W/(m・K)以上である。また、より少ない使用で熱伝導率を高めるためには140W/(m・K)以上であることが好ましい。
炭化ケイ素(SiC)粒子としては、α−SiC粉は、工業炉で大量生産されており安定的に入手しやすい。
炭化ケイ素粒子の量は、舗装用ブロックに対して2〜8重量%であり、2重量%未満であるとブロックの熱伝導率が十分向上せず、8重量%を超えるとブロックの機械的強度が低下する傾向にある。
本実施の形態にあっては、他の骨材は、陸砂、砕石、本石(天然石)、高炉スラグや銅スラグといった廃材等、一般的に舗装材に使用されているあらゆる種類の骨材を使用して機能型舗装用ブロックのブロックとすることができる。
通常、黒鉛粉、炭化ケイ素粉等の高熱伝導性の素材は、骨材の一部として使用する。また、黒鉛粉、炭化ケイ素粉等を用いる場合、単独で使用してもよいし、他の高熱伝導性材料と混合して使用してもよい。
本実施の形態にあっては、高熱伝導性の素材を使用する以外は、一般的に採用されている方法によって機能型舗装用ブロックのブロックを製造する。
また、前述のようにあらゆる形態の舗装用ブロックに適用することができる。図1は、機能型舗装用ブロックの形態の例を示しており、(a)は普通平板、(b)は1のインターロッキングブロック、(c)は他のインターロッキングブロックを示している。
普通平板は、図1(a)に示すように直方体形状をしている。インターロッキングブロックは、図1(b)及び(c)に示すようにブロックの側面2、2a、2bに連結構造を有しており、これらを相互に連結して、一体的な舗装面を有する構造体となるようにしている。図1(b)ではブロックの側面2が凹凸構造を有しており、図1(c)では側面2aに凸部3が側面2aと反対側の側面2bに凹部4が形成されている。
図1(c)のインターロッキングブロックでは、表面1に同ピッチの溝5が形成されたローレット加工が施されており、これによって車椅子や乳母車が快適に走行できる。なお、図1(a)及び(b)のブロック表面1にもローレット加工を施してもよい。
以下、本発明について実施例を挙げて図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
熱伝導性の高い原料(骨材)として人造黒鉛切粉を配合したコンクリート平板(普通平板)の舗装材であるブロックAを作製した。ブロックAの成分と成分比率を、表1に示している。
本実施例で使用した人造黒鉛切粉は、製鋼用電極を加工する際に発生するその電極の切削粉である。この切粉の真密度は、2.22g/cm3であった。
この切粉は、2.5mmの目開きのふるいは100重量%通過し、0.3mmの目開きのふるいを83重量%通過し、0.15mmの目開きのふるいを50重量%通過し、0.075mmの目開きのふるいを15重量%通過した。なお、表1に示すブロックAの成分と成分比率から、ブロックAにはこの人造黒鉛切粉が3重量%含まれているので、ブロックAには粒径が0.075mm以下の切粉は、0.45重量%含まれている。
ブロックAの作製は、表1に示す成分比率になるように一般的に知られている工程を採用して行った。すなわち、バインダである普通セメントと骨材である陸砂、7号砕石、高炉スラグ、銅スラグ及び人造黒鉛切粉とを適量の水を加えて、コンクリートミキサーを使用して混練を行い、成形用のブロック材料を得た。得られたブロック材料を、ブロックAの特性を試験するための試験体の大きさに合せた型枠(例えば、200x200x60mm)に入れ、振動加圧成形によってブロック形状に成形した。そして、この成形体を15℃/時間の昇温速度で60℃まで加熱し、60℃で4時間保持した後、室温まで自然冷却させることによって養生し、かさ密度が2.2g/cm3のブロックAを得た。ブロックAは、目視による観察では、特に黒色を帯びている様子は認められなかった。
また、ブロックAとの比較のために、熱伝導性の高い骨材を配合しないコンクリート平板(普通平板)の舗装材であるブロックB(かさ密度が2.2g/cm
3)を作製した。ブロックBの成分と成分比率は、表2に示している。
ブロックBは、表2に示す成分比率になるようにした以外は、ブロックAの場合と同様の方法で作製した。
ブロックA及びブロックBについて、曲げ強度の測定、凍結融解性試験、熱伝導率の測定及び表面温度維持性能試験を行った。
表3は、これらの試験結果の概要を示している。
曲げ強度の測定は、JIS規格A5371に従って行った。
表3に示すように、ブロックAは曲げ強度が4.8MPaであり、一方ブロックBは曲げ強度が4.7MPaであった。ここで、JIS規格A5371の付属書2において、歩道の舗装に用いる普通平板の曲げ強度荷重は12kNで破壊してはならないと定められている。荷重12kNは、本測定において曲げ強度4.0MPaに相当する。
従って、本実施例のブロックAは、上記曲げ強度の規格を十分に満足し、ブロックBと同等以上の値を示した。
凍結融解性試験は、マルイ製凍結融解装置を用いて行った。
この試験では、まず、寸法198x198x60mmの直方体のブロックA及びブロックB各3個に対し、6日間の毛細管吸水と1日間の全吸水を行った。ここで、毛細管吸水はブロックの半分だけ水中に浸して吸水させる方法であり、全吸水はブロック全体を水に浸して吸水させる方法である。次に、試験装置内にそれら合計6個のブロックを入れた。そして、図2に示す温度サイクル、すなわち20℃からマイナス20℃まで1.5時間で下げ、マイナス20℃で1.5時間保持し、1.0時間散水融解しながら20℃に戻して20℃で保持するサイクル(合計4時間)を繰り返し与えた。このとき、30サイクル毎にブロックに割れ、欠け、はく離が生じていないか目視にて観察した。
表3より、ブロックAにおいては、300サイクル経過後もブロックに割れ、欠け、はく離が観察されなかった。一方、ブロックBにおいては、90サイクル経過時に1個のブロックに大きな亀裂による割れが発生しているのが認められた。
熱伝導率の測定は、迅速熱伝導率計(昭和電工(株)製、Shotherm QTM−DII)を用いて室温(20℃)で行った。本測定は、非定常熱線法の原理にもとにプローブを用いて行われるものである。なお、この試験は、寸法が198x198x60mmの直方体のブロックを用いて行った。
表3に示すように、ブロックAの熱伝導率は、2.3W/(m・K)であった。一方、ブロックBの熱伝導率は、1.2W/(m・K)であった。従って、人造黒鉛切粉を3重量%配合することによって、ブロックの熱伝導率が約2倍近く高くなった。
ここで、ブロックAとブロックBとは、使用されている骨材の種類が異なるが、別途これらの各骨材単味でセメントをバインダとして平板を作製して熱伝導率を測定して、各骨材が有する熱伝導性を評価した。その結果、陸砂、7号砕石、高炉スラグ及び銅スラグにおいては、ぼぼ同等の熱伝導率を示した。骨材の種類や配合量の違いによる熱伝導率に与える影響は小さいことを確認した。なお、人造黒鉛切粉単味の場合は他の骨材の場合に比べて概ね6倍の値を示した。なお、いずれの骨材の場合もバインダと骨材の割合は、容積比率でバインダ1に対して骨材2の割合にした。
表面温度維持性能試験は、冬季環境を想定した温度に恒温槽内温度を設定し、ロードヒーティングシステムを稼動させた場合における舗装材(ブロック)の表面温度維持性能を確認するものである。
図3は、表面温度維持性能試験装置の概略構成を示している。図3において、(a)は正面から見た当該装置の断面の構造を、(b)は平面から見た構造を示している。そして、図3に示す構成は、本発明の機能型舗装用ブロックを実際の歩道に使用してロードヒーティングする場合を模擬している。
まず、表面温度維持性能試験装置11の設定について説明する。
装置11の設定は、図3(a)に示すように、箱型の厚さ50mmの断熱材17に厚さ60mmのブロックA(またはブロックB)の試験体12をセットする。このとき、試験体12の下には厚さ30mmのサンドクッション13、厚さ100mmのクラシャランを敷き詰めたクラシャラン層14を形成する。試験体12(12a、12b)は、図3(b)に示すように、長さ198x198mmの試験体12aが7個と長さ96x198mmの試験体12bを4隅に1づつ合計4個配置している。そして、試験体12の直下、サンドクッション13内には線状のヒーター15が縦・横(便宜上、直交する2つの方向を「縦」、「横」という)にそれぞれ5本づつ合計10個セットされている。また、線状のヒーター15(15a、15b)の内、縦に配置されたヒーター15aは固有抵抗が高く、横に配置されたヒーター15bは固有抵抗が低い構成になっており、縦のヒーター15aと横のヒーター15bとがそれぞれ独立に作動することによって温度調節をしやすくしている。そして、表面温度維持性能試験装置11は、恒温恒湿槽(図示しない)にセットした。更に、測温のためのK型熱電対16a〜16fを6箇所に設置している。それぞれ試験体12表面にある熱電対16a、試験体12裏面にある16b、ヒーター15a表面にある熱電対16c、ヒーター15b表面にある熱電対16d、クラシャラン層14の底部にある熱電対16e及び恒温恒湿槽内の空間にある熱電対16fである。
次に、表面温度維持性能試験の手順を説明する。
恒温恒湿槽にセットされた上記表面温度維持性能試験装置1は、恒温恒湿槽内の温度(正確には、熱電対16fが示す温度)が5℃の定常状態になった時点から、恒温恒湿槽内の温度を1℃/hの速度で−10℃まで降温する。このとき、試験体12表面にある熱電対16aが5℃を保つように、試験体12はヒーター15によって加熱される。このときのヒーター15は、温度コントローラ(図示しない)によってオン−オフ制御される。そして、熱電対16a〜16fが示す温度を10分毎に温度を記録した。
図4はブロックAの試験を行った場合について、試験開始から終了までの熱電対16a〜16fが示した値を時間に対してプロットしている。また、図5はブロックBの試験を行った場合について、試験開始から終了までの熱電対16a〜16fが示した値を時間に対してプロットしている。また、ヒーター15(15a、15b)は、前述したようにオン−オフ制御であるので、表3及び表4においてヒーターの温度(熱電対16c、16d)を示す曲線は、鋸歯状となっている。
図4よりブロックAについては、抵抗の高いヒーター15aの温度(熱電対16c)の最高値が54℃、抵抗の低いヒーター5bの温度(熱電対16d)の最高値が47℃であった。一方、図5よりブロックBについては、ヒーター15aの温度(熱電対16c)の最高値が71℃、ヒーター15bの温度(熱電対16d)の最高値が54℃であった。また、試験の最初から最後にかけてブロックAの場合の方が、ブロックBの場合に比べて低いヒーター15(15a、15b)の温度(熱電対16c、16dが示す温度)で試験体12の表面温度を一定の5℃に保っている。この結果は、ブロックAの使用によってヒーター15の消費電力が少なくなることを意味している。
また、試験体12裏面(熱電対16b)の温度及びクラシャラン層14の底部(熱電対16e)の温度は、いずれもブロックBの方が高い値を示している。このことは、ブロックBでは、熱が試験体12の表面に伝わりにくいために、ブロックAに比べてヒーター15からの熱がサンドクッション13やクラシャラン層14の温度をより上昇させていることを示している。
以上のことから、熱伝導率が高いブロックAは、試験体12の裏面から表面に熱を伝えやすく、少ないエネルギで表面の温度を上昇させると考えられる。
更に、ブロックAの表面にローレット加工を施し、このブロックAのすべり抵抗性及び振動特性の評価を行った。
ブロックAのすべり抵抗性は、ASTM規格C―303に準じたすべり抵抗性試験によって評価した。この試験は、舗装材の表面がすべりに対して十分な抵抗性を有するかを調べるものである。その結果、ライン垂直方向では乾燥時95BPN、湿潤時73BPN、ライン斜め方向では乾燥時94BPN、湿潤時71BPN、ライン平行方向では、乾燥時94BPN、湿潤時70BPNであった。これによって、道路設計基準(東京都建設局)及びアスファルト舗装要綱(日本道路協会)の規格値40BPNを十分満足することを確認した。
また、ブロックAの振動特性は、以下に説明する振動測定試験によって評価した。
その試験には、寸法が198x198x60mmの直方体のブロックAを試験室に敷き詰めて、手動式車椅子(前輪直径17.8cm/幅2.5cm、後輪直径61.0cm/幅3.2cm)に体重60kgの人間が乗車して速度4.8km/hの一定速度で他力駆動走行した。振動スイッチを車椅子前輪部分に取り付けて、ブロックAの表面のラインに対して垂直、斜め、平行に走行した。振動スイッチからの波形は(株)キーエンス社製の波形データ観測ソフトを用いてパーソンナルコンピュータで解析した。その結果、ブロックAは走行方向に関係なく振動が十分に小さいことが確認された。なお、ブロックAは、この試験において特に摩耗することもなく、十分な耐摩耗性も有している。
更に、人造黒鉛の適切な添加量を検討する目的で、以下に示すように人造黒鉛の添加量が異なる2種類のブロック(ブロックC及びブロックD)を作製し、これらブロックに対してJIS規格A5371に従って、曲げ強度試験を行った。
ブロックCは、人造黒鉛切粉の量を6重量%、陸砂の量を41重量%とした以外は、ブロックAと同様な方法で作製した。また、ブロックDは、人造黒鉛切粉の量を9重量%、陸砂の量を38重量%とした以外は、ブロックAと同様な方法で作製した。
そして、ブロックCの曲げ強度は4.3MPaであり、ブロックDの曲げ強度は3.4MPaであった。この結果、6重量%の人造黒鉛切粉を添加しても、曲げ強度に関して上記JIS規格A5371の基準値4.0MPaを満足することが示された。
また、ブロックCは、目視によっては黒色を帯びていると認められなかった。そして、ブロックDは、目視によってはやや黒色を帯びていると認められた。
更に、高熱伝導性の原料としての炭化ケイ素粉について熱伝導性に関する評価を行った。
バインダであるセメントと骨材である炭化ケイ素粉とを容積比率でセメント1:炭化ケイ素粉2の割合で、適量の水を加えて一般的な舗装材の製造方法によって、ブロックEを作製した。本炭化ケイ素粉の粒径は5mm以下である。
また、比較のために、表1に示す成分比率において、人造黒鉛切粉を炭化ケイ素粉に置き換えた以外は、ブロックAと全く同様な方法でブロックFを作製した。更に、バインダの熱伝導率への寄与度を確認するためにセメントのみによってブロックGを作製した。これらのブロックE、ブロックF及びブロックGの寸法は、227x112x60mmであった。
ブロックE、ブロックF及びブロックGについて、本実施例において前述の方法で室温(20℃)での熱伝導率を測定した。その結果、ブロックEの熱伝導率の値が、6.1W/(m・K)であった。一方、ブロックFの値は5.9W/(m・K)であった。また、ブロックGの値は1.3W/(m・K)であった。
このことは、炭化ケイ素粉を骨材として使用することによって、人造黒鉛切粉と同等またはそれ以上に舗装材ブロックの熱伝導性を高めることができることを示している。