JP2005158291A - 放電灯安定器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的はインバータ式安定器の利点を生かしつつ、放電灯と安定器の間の配線長を高い電力効率を維持したまま延ばすことが可能な放電灯安定器を提供することにある。
【解決手段】 所定周波数の交流電流を供給するインバータ部14と、前記交流電流により放電灯32を点灯する点灯回路部16と、放電灯32に並列接続された始動用コンデンサ34を有する始動回路部と、を備え、
前記交流電流の周波数は100Hz〜1kHzであり、前記点灯回路部16は、放電灯32の放電電流を限流するために、放電灯32に対して直列接続されたチョークコイル28を有し、該チョークコイル28のインダクタンスが1mH〜数十mHであることを特徴とする放電灯安定器10。
【選択図】 図1

Description

本発明は放電灯安定器、特にインバータ式安定器の改良に関する。
放電灯安定器には、いわゆる銅鉄形安定器と、インバータ式安定器があり、銅鉄形安定器は部品点数が少なく比較的耐久性などにも優れる反面、大きさおよび重量が大きくなるという欠点がある。一方、インバータ式安定器では高周波点灯が行われるため、小型軽量化が図れるという利点がある。
たとえば、特許文献1などには、各種のインバータ式安定器が開示されている。
特開2001−68278号公報
しかしながら、従来のインバータ式安定器で放電灯の始動を行うには、放電灯電極間の絶縁破壊を行うため、共振回路を設けてパルス状の高電圧を発生させるか、あるいは別途イグナイタを設け、高電圧を生成させる必要があった。その結果、回路構成の複雑化は避けられず、また高周波数領域で共振させた場合には放電灯と安定器間の配線長が長いと点灯が困難となるなど、各種の問題を残していた。特に配線長を長くできないことによって、屋外に放電灯を設置する等の場合でも放電灯と安定器とを隣接して配置しなければならないという不便が生じていた。
さらに、インバータ式安定器は、たとえば高圧放電灯を点灯した場合、放電管の構造により決まる共鳴周波数と点灯周波数が一致すると音響的共鳴を起こし、放電が不安定となるため、事実上数十kHz以上の高周波点灯が要求され、装置の高額化が避けられない。一方、銅鉄形安定器でもチョークコイルへの交流電流通電により大きな振動、騒音を発生する場合があり、振動と騒音の低減は共通の大きな課題となっている。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたもので、その目的はインバータ式安定器の利点を生かしつつ、放電灯と安定器の間の配線長を高い電力効率を維持したまま延ばすことが可能な放電灯安定器を提供することにある。また、その第2の目的は騒音の少ない放電灯安定器を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の放電灯安定器は、所定周波数の交流電流を供給するインバータ部と、前記交流電流により放電灯を点灯する点灯回路部と、放電灯に並列接続された始動用コンデンサを有する始動回路部と、を備え、
前記交流電流の周波数は100Hz〜1kHzであり、前記点灯回路部は、放電灯の放電電流を限流するために、放電灯に対して直列接続されたチョークコイルを有し、該チョークコイルのインダクタンスが1mH〜数十mHであることを特徴とする。
上記の安定器において、前記チョークコイルのコアとしてトロイダルコアを用いることが好適である。
前記安定器において、前記チョークコイルは、前記放電灯の定格電流の1.7倍以上の電流値で磁気飽和するものであることがさらに好適である。
上記の安定器において、放電灯に流れるランプ電流を検知するランプ電流検知手段と、前記ランプ電流検知手段が、波高率設定電流値を超える電流値を検出した場合に、前記インバータ部のスイッチング素子をオフ作動させ、ランプ電流が前記波高率設定電流値より下がった場合にオン作動させる磁気飽和防止手段と、を備え、前記波高率設定電流値はランプ電流の波高率が1.7以下となるよう設定され、前記チョークコイルの磁気飽和を防止することが好適である。
上記の安定器において、放電灯に流れるランプ電流を検知するランプ電流検知手段と、前記ランプ電流検知手段が、回路破壊危険電流値を超える電流値を検出した場合に、前記インバータ部のスイッチング素子をオフ作動させ、ランプ電流が回路破壊危険電流値より下がった場合にオン作動させる回路破壊防止手段と、を備えることが好適である。
上記の安定器において、チョークコイルの外周に近接配置された防振手段と、前記防振手段の外周に近接配置された良熱伝導手段と、を備えることが好適である。
上記の安定器において、防振手段は、チョークコイルを挿入するチョーク収納部と、該チョーク収納部とチョークコイルとの間に充填・硬化された硬質樹脂または発泡樹脂、乃至チョークコイルまたはチョーク収納部を包む繊維状吸音材とを含み、良熱伝導手段は、軟質樹脂を含むことが好適である。
上記の安定器において、インバータ部、点灯回路部及び始動回路部は断面円形ないし楕円形ケースに装填されることが好適である。
上記の安定器において、ケース断面は、短軸/長軸が1/1〜1/2であることが好適である。
上記の安定器において、放電灯と安定器の間の配線長が15m以上であることを特徴とする放電灯安定器。
以上説明したように本発明にかかる放電灯安定器によれば、放電灯点灯周波数を100〜1kHzとし、点灯の安定化をチョークコイルにより行うことによって、放電灯と安定器の間の配線長を長くすることが可能となる。
また、前記チョークコイルのコアをトロイダル形状とすることで、コアの振動や、それに伴う騒音を抑えることが可能となった。
また、チョークコイルの外周に防振手段を近接配置することにより、騒音を低減することができる。
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる放電灯安定器10が示されている。
同図に示す放電灯安定器10は、直流コンバータ部12と、ハーフブリッジ型インバータ部14と、点灯回路部16とを備える。
前記コンバータ部12は、交流商用電源18より電力供給を受け、直流化する。
前記ハーフブリッジ型インバータ部14は、スイッチング素子20,22の直列回路と、コンデンサ24,26の直列回路とをコンバータ部12に対して並列接続して構成される。そして、駆動回路42によって、スイッチング素子20,22のON/OFFを逆位相で同期して制御することで周波数制御された交流電流を点灯回路部16に供給することができる。なお、本実施形態において、インバータ部14の出力する電流の周波数は100Hz以上1kHz以下、好ましくは300Hz以上800Hz以下である。これらの周波数は、一般的に高周波点灯と言われる領域(数10kHz)と比較するときわめて低く、従来一般的に用いられる領域ではない。
一方、前記点灯回路部16は、上記周波数領域で放電灯を点灯維持するためのチョークコイル28を含む。そして、ランプ32の一端は、チョークコイル28を介して前記スイッチング素子20,22の間に、またランプ32の他端は前記コンデンサ24,26の間にそれぞれ接続される。本実施形態において、チョークコイル28のインダクタンスは1mH以上数十mH以下である。従来のインバータ式安定器では用いられていない大きさのインダクタンスとなっている。
また、ランプ32と並列に始動用コンデンサ34が接続されており、これが始動回路部を構成する。つまり、コンデンサ34の一端はチョークコイル28とランプ32の一端の間に接続され、もう一端はランプ32の他端の電極側に接続されている。
本実施形態にかかる放電灯安定器は概略以上のように構成され、次にその作用について説明する。
まず、電源が投入されると、前記コンバータ部12により商用電源電流(周波数50乃至60Hz)は、直流電流に変換される。
このコンバータ部12より供給される直流電流は、インバータ部14により、たとえば500Hzに変換される。つまり、図2(A),(B)に示すように、駆動回路42によってスイッチング素子20,22を交番周波数500Hzで交互にON,OFFを繰り返す。つまり、スイッチング素子の一方がONのとき、他方がOFFとなり、その結果、図2(C)に示すような周波数500Hzの矩形波交流電圧を得る。
そして、点灯回路部16は、インバータ部14からの500Hzの交流電流に基づき、通常の銅鉄形点灯回路と同様に機能し、ランプ32の始動を行う。ランプ32の始動の際にも、インバータ部14の周波数は、図2で示したものと同じであり、スイッチング素子20,22の交番周波数は500Hzである。そして、本実施形態では、ランプ32に並列に接続された始動用コンデンサ34によって始動のための高電圧を得る。つまり、チョークコイル28のインダクタンスLの値と合わせて適切なキャパシタンスをもつ始動用コンデンサ34を用いて共振周波数が調節されており、始動のための高圧パルスが得られる。
それに対して、一般的なインバータ式の安定器、例えば特許文献1などに開示される点灯方式では、図3(A),(B)に示すように、ハーフブリッジ型インバータの2つのスイッチング素子の一方をOFFとし、他方が数十kHz(図では20kHz)の高周波でON/OFFする動作を、数十〜数100Hz(図では100Hz)の交番周波数でスイッチング素子の役割を交代しながら繰り返す。その結果、図3(C)に示すように従来の点灯方式では、点灯時でのインバータ部からの出力電圧波形は周波数100Hzの波形に20kHzの高周波が重畳されたものとなる。また、放電灯の始動時には、図4(A),(B)に示すように、2つのスイッチング素子は、数十kHz(図では20kHz)の高周波で交互にON,OFFを繰り返し、図3(C)に示すように始動時のインバータ部からの出力電圧は、20kHzの高周波となる。
このように、従来の高周波点灯方式では、点灯時、始動時にかかわらず、インバータ部からの出力電流が数十kHzの高周波を伴っており、誘電体損失等の理由により放電灯までの配線中での電力損失が大きい。また、始動パルスのパルス幅を大きくとることができないため、配線長を延ばすには別途イグナイタ等を放電灯側に取り付ける必要があり、効率も低いものであった。
しかしながら、本実施形態では、インバータ部14からの交流電流の周波数を100Hz以上1kHz以下、好ましくは300Hz以上800Hz以下としている。さらにチョークコイル28のインダクタンスを1mH以上数十mH以下のように大きくとっている。この結果、始動時のパルス幅も拡大し、始動性が有利となり、ランプ32と安定器本体(コンバータ部12,インバータ部14,点灯回路部16)との配線距離を長く取ることができる。
すなわち、本発明においては一般的なインバータ式電子安定器にはない大きなインダクタンスのチョークコイル28を有するため、一般的な銅鉄形安定器と同程度にまで配線長を伸ばすことができる。たとえば数十kHzの矩形波およびサイン波により点灯させる高周波点灯型電子安定器では、別途イグナイタ等を設けることで通常5m程度の配線長が確保できるのみであるが、本実施形態において、点灯時にパルス重畳した場合のパルス幅を30μs(33kHz)とすると、始動開始配線長は100m程度にまで可能になる。しかも、高周波点灯型電子安定器とは異なり、高い効率を維持したまま配線を延ばすことが可能である。
また、一般の高周波発生用インバータと比較し、本実施形態にかかるインバータ部14は、簡易な構成で、しかも耐久性も向上するという利点がある。
また、点灯回路部16のチョークコイル28は、商用周波数に対応した銅鉄形安定器よりははるかに小型、軽量化することができる。
すなわち、点灯周波数と、安定器の耐久性、所要重量には次のような関係がある。周波数を100Hz以上、特に300Hz以上にあげると、安定器の重量を大幅に低減させることができるが、1000Hz以上にしても重量の低減効果はそれほど大きくない。一方で、耐久性は1000Hz程度までであれば十分であるが、5000Hzになると低下し、装置も高額化する。さらに、800Hz程度までであれば、安価でしかも効率のよいケイ素鋼板を鉄心に用いることができるが、1000Hz以上となると比較的高価なアモルファスを鉄心に用いる必要が生じる。
したがって、本発明におけるインバータ部14の出力周波数は100〜1kHz、好ましくは300〜800Hzである。
また、図5、図6はそれぞれ本発明の他の実施形態例である。図1に対応する部分には、図5においては符号200、図6においては符号300を加え説明を省略する。図5、図6は始動回路部の変形例を示している。他の回路部については図1と同様である。
図5では、チョークコイル228に中間タップを設け、該中間タップとランプ232の逆側電極との間に、ランプ232と並列に始動用コンデンサ234が接続されており、これが始動回路部を構成する。始動用コンデンサ234のC、及びチョーク228の中間タップまでの十分に大きなLにより共振周波数を調整し、始動高電圧を得る。
図6では、始動用コンデンサ334として非線形コンデンサを用い、ランプ332に並列接続され、始動回路部が構成されている。そして、非線形コンデンサの持つ蓄積電荷と電圧との間の非線形な特性から、容易にパルス幅の大きい高圧パルスを得ることができる。
また、チョークコイルへの交流電流通電による大きな振動、騒音の低減のため、チョークコイルのコアとしてトロイダル形状のコアを用いることが好適である。次にこの点について説明を行う。
コイルの騒音の原因としては一般的にコアの材質のもつ磁歪、局所的な磁束の集中によるコアの振動が原因と考えられる。一般に外部磁場により多数の磁区が磁化方向を揃えようとするとき、コアの外形に歪みが生じる。ある部分の磁束密度が他の部分に比べて局所的に大きくなるとその部分の変形は他の部分よりも大きなものとなってしまう。この局所的な歪みが原因となってコアの振動が生じる。
そこで、本実施形態では、チョークコイルのコアとして、図7に示すような丸みのある略ドーナツ状の形状をしたトロイダルコアを用いた。このような角の少ないコアを用いることで磁束の集中を抑えることができ、コアの振動が少なくなる。
さらに、コアのギャップ部分を小さくすることでより好適に騒音を低減することができる。図8にコアのギャップ部分の磁束線の模式図を示す。図8に示すようにコアの外部の磁束線はコアの角(図8で点線の丸印で囲んだ部分)の周辺に集中し、角の部分の磁束密度は他の部分よりも相対的に大きくなる。ここで、ギャップが小さい場合(図8(a))と、大きい場合(図8(b))とを比べるとギャップの小さい場合の方がコアの角部分への磁束の集中は少なく、コアの他の部分との差が小さい。このため、ギャップを小さくすることでコアの振動を抑えることができる。ただし、コアのギャップを小さくすることは、小さい電流量でコアが磁気飽和状態になることを意味する。通常の安定器では、チョークコイルのコアが磁気飽和しないように十分な余裕をもって設計されている。例えば、放電灯の定格電流(ただし、定格電流の値は実効値としての値である)の2倍以上の電流が流れても磁気飽和が起こらないよう設計するのが通常である。しかし、上記のようにギャップを少なくすると、コアの磁気飽和を引き起こす電流量の下限が小さいものとなる。また、コアの断面積を大きくすることで、磁気飽和を引き起こす電流量を大きくすることができるが、この場合コイルの大型化は避けられない。
つまり、騒音を減らすためにコアとして極力ギャップの少ないものを用いること、かつ安全のために電流量の余裕をとること、コイルをできるだけ小型化すること、という3点を同時に考慮に入れる必要がある。そこで、本発明者らが検討した結果、放電灯の定格電流の1.7倍以上で磁気飽和するチョークコイルを用いることが好適であることが分かった。ただし、ここで定格電流の値は実効値としての値を意味する。
また、図1に示すように、本実施形態おいては、コイルの磁気飽和を防ぐため、ランプ32に流れる電流を検知するランプ電流検知手段38と、磁気飽和防止手段40とを備えている。該磁気飽和防止手段40は、ランプ電流が所定の値に設定された波高率設定電流値を超える場合に、前記インバータ部14の駆動回路42に信号を出し、スイッチング素子20,22が強制的にオフされる。そして、ランプ電流値が前記波高率設定電流値以下に復帰すると、再び駆動回路42に信号を出し、スイッチング素子20,22をオンの状態、すなわち通常の動作状態に復帰させる。そして、前記波高率設定電流値を適切な値に設定しておくことでランプ電流の波形を制御することができる。例えば、波高率設定電流値をチョークコイルの磁気飽和が起きる電流値より小さい値に設定しておけば、ランプ電流の波高率(=最大値/実効値)を所定の値以下、好適には1.7以下、に抑えることができる。その結果、ランプに短絡電流が流れたときにもチョークコイルの磁気飽和を防ぐことができる。
つまり、正常時にはランプ電流は、図9に示すように電流値ゼロを基準とした交流である。しかしながら、放電灯の始動直後から安定動作に移るまでには、図10に示すような波高の高い短絡電流が流れる。そのため、チョークコイルの磁気飽和が起こり、異常発熱の原因となり得る。しかしながら、本実施形態において、磁気飽和防止手段40によって、ランプ電流を図11に示すように、波高の高い部分をカットしてしまうため、コイルの磁気飽和を防ぐことができる。
他の実施形態例として、図12に示すようなものも好適である。図1と同一の部材には符号400を加え説明を省略する。図12の放電灯安定器410は、ランプ432に流れる電流を検知するランプ電流検知手段438と、回路破壊防止手段444を備え、該回路破壊防止手段444は、ランプ電流が回路破壊危険電流値を超える場合に、前記インバータ部414の駆動回路442に指令を出し、スイッチング素子420,422を強制的にオフさせ、電流値が回路破壊危険電流値以下に復帰するとオンさせる。
つまり、ランプ寿命末期などには図13に示すように中心電流値がどちらかに偏り、直流化する傾向にある。この場合にも、ランプ自体は点灯を維持することができるが、電子部品には過大の負荷を与え、場合によっては損傷する。これに対し、通常の安定器には安全機構として過大電流が流れた場合に安定器自体の機能を停止するものもあるが、これではランプの一時的な異常、あるいはまだ使用可能であるランプを早期に使用不可にしてしまう可能性があるなどの欠点がある。つまり、回路破壊防止手段444は、ランプ電流が回路破壊危険電流値以上となると、たとえば500Hzで作動しているスイッチング素子420,422を一時的に強制オフ作動させ、ランプ電流が正常領域に復帰すると強制オフ作動を解除する。その結果、図14に示すように、ランプの性能劣化などによる一時的直流化などの場合にもランプを直ちに停止することなく、安定化する時間を付与することができる。
図15には本実施形態にかかる放電灯安定器の構造が示されており、前記図1と対応する部分には符号100を加えて示し、説明を省略する。なお、同図(A)は安定器の長手方向断面図、同図(B)はI−I線断面図である。
本実施形態にかかる安定器110は、コンバータ部(12)及びインバータ部(14)の主要電子部品を載置する基板150と、点灯回路部(16)のチョークコイル128が収納される有底筒状のチョーク収納部152と、これらの基板150及びチョーク収納部152を収納する断面楕円状の筒状ケース154とを備える。
本発明において特徴的なことは、チョークコイル128の外周に近接配置された防振手段と、前記防振手段の外周に近接配置された良熱伝導手段を含むことであり、このために本実施例においてはチョーク収納部152に防振性に優れた硬質ウレタン系樹脂(硬度70以上)を充填、硬化させ、筒状ケース154内には熱伝導性に優れた軟質ウレタン系樹脂(硬度60以下)を充填・硬化させている。
本実施形態において、筒状ケース154に充填する樹脂も硬質ウレタン樹脂とした場合には、基板150上に載置された電子部品に冷熱サイクルによる影響を与えるおそれがある。
また、本実施形態において用いられるインバータ周波数領域における音響的共鳴をさらに軽減するため、チョーク収納部152に充填する防振性樹脂に、次のようなものを用いることが好適である。
(表1)
本発明
ウレタン系樹脂 △
ウレタン系樹脂+10%ケイ砂 △
ウレタン系樹脂+30%ケイ砂 ○
ウレタン系樹脂+50%ケイ砂 ○
このように、ケイ砂を樹脂に混合することにより、本発明にかかる安定器の静音性をさらに高めることができる。
一方、筒状ケース154に充填される熱伝導性樹脂にケイ砂などを混入すると、電子部品に損傷を与えるおそれがあり、好ましくない。
さらに、チョーク収納部152には、チョークコイル128の巻き線の隙間にまで樹脂を充填し、振動抑制効果、耐久性を向上させるため、減圧充填を行うことが好ましい。
これに対し、筒状ケース154へ熱伝導性樹脂を充填する際、減圧にすると電子部品の損傷が懸念され、好ましくない。
このように本実施形態においては、振動および熱の発生源であるチョークコイル128は、防振性の高い硬質樹脂、チョーク収納部152、熱伝導性の高い軟質樹脂、筒状ケース154の四重構造で外界と隔離されており、防振性が極めて高く、さらに電子部品に過度の負荷をかけることもない。
さらに本発明者らが検討したところ、防振性樹脂またはチョーク収納部152自体を発泡樹脂で形成し、あるいはチョークコイル128またはチョーク収納部152を発泡ウレタン樹脂、スチールウールなどの吸音材で包み込むことも好適である。また、チョーク収納部152を防振塗料、防振材貼付、収納部152内面の凹凸加工などにより防振構造とすることができる。
また、チョークコイル128をチョーク収納部152へ挿入配置する際、チョークコイル128が収納部152の壁面に直接接触すると、防振性が低下する恐れがあるため、収納部152内部あるいはチョークコイル128に突起を設け、チョークコイル128と収納部152内面が一定の離隔距離を取るように調整することが好適である。
また、本発明者らが検討したところ、筒状ケース154を用いることにより、特に100〜1000Hz程度の点灯周波数で点灯した場合に、優れた静音効果が得られることが明らかとなった。
(表2)
楕円 矩形
20kHz × ×
500Hz ○ ×
上記表2より明らかなように、20kHzで駆動した場合には、楕円形筒状ケースを用いても、あるいは矩形筒状ケースを用いても、静音効果には大きな影響はなかった。しかしながら、500Hzで駆動した場合には、楕円形筒状ケースを用いると優れた静音効果が発揮される一方、矩形筒状ケースを用いた場合には、静音効果は限られたものとなった。
この点について本発明者らがさらに検討したところ、短軸/長軸が1/1(真円)〜1/2程度、長軸径が200mm程度まで高い静音効果が示された。これらの結果より、静音効果は、500Hz程度と低周波数の場合に円形あるいは楕円形のケースは共振を防止するためと考えられる。
本実施形態にかかる安定器110を組み立てる際には、前述したようにチョーク収納部152にチョークコイル128を挿入した後に防振性樹脂を充填・硬化させ、さらにこの収納部152に対して基板150及び左端蓋158を取り付け、この組み立て体を筒状ケース154に挿入する。そして、左端蓋158を筒状ケース154の左端開口部に固定することで、チョーク収納部152及び基板150もケース154内にしっかりと固定されることとなる。そして、必要に応じ前記樹脂を充填し、右端蓋160を取り付ける。また、さらに基板150背面をケース154内面に密着させて放熱性を向上させるため、基板150の右端を筒状ケース154の内側へネジ止め162することが好適である。これらのネジ止めあるいは取付金具による固定は、いずれもケース154の左端開口より容易に行うことができる。むろん、ケース154は、特に基板150に対応する外面に放熱フィン166を密に設けている。以上のように、本実施形態にかかる安定器によれば、組み立て効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態にかかる組み立て方法によれば、アルミベース基板に限らず、通常の基板に放熱フィン付のケースを取り付ける際にも応用可能であり、チョーク収納部のような大きな部品がない場合には、たとえば左端蓋に基板固定用の金具を設置して実施することもできる。
また、本発明において、インバータ部と点灯回路部を別体に構成し、一のインバータ部から供給される100〜1kHzに周波数制御された電力を複数の点灯回路部に供給することもできる。この場合には、各点灯回路部には供給される電力の周波数に応じたチョークコイル、位相制御コンデンサなどを設ければよく、一層の装置小型化を図ることができる。
本発明の一実施形態にかかる放電灯安定器の概略構成の説明図である。 本発明の実施形態に係るインバータ部の動作の説明図である。 従来の高周波点灯装置におけるインバータ部の動作の説明図である。 従来の高周波点灯装置におけるインバータ分の動作の説明図である。 本発明の放電灯安定器の他の実施形態例である。 本発明の放電灯安定器の他の実施形態例である。 トロイダルコアの斜視図である。 コアのギャップと磁束線との関係の説明図である。 正常時のランプ電流変化の説明図である。 短絡電流が流れたときの電流変化の説明図である。 本発明の実施形態に係る放電灯安定器の電流制御の説明図である。 本発明の放電灯安定器の他の実施形態例である。 ランプ電流が直流化した場合の説明図である。 図12の実施形態例による電流制御の説明図である。 本発明の実施形態にかかる放電灯安定器のケースと各部品の配置を示す説明図である。
符号の説明
10 放電灯安定器
14 インバータ部
16 銅鉄形点灯回路部
28 チョークコイル
34 始動用コンデンサ

Claims (10)

  1. 所定周波数の交流電流を供給するインバータ部と、
    前記交流電流により放電灯を点灯する点灯回路部と、
    放電灯に並列接続された始動用コンデンサを有する始動回路部と、
    を備え、
    前記交流電流の周波数は100Hz〜1kHzであり、前記点灯回路部は、放電灯の放電電流を限流するために、放電灯に対して直列接続されたチョークコイルを有し、該チョークコイルのインダクタンスが1mH〜数十mHであることを特徴とする放電灯安定器。
  2. 請求項1記載の安定器において、
    前記チョークコイルのコアとしてトロイダルコアを用いることを特徴とする放電灯安定器。
  3. 請求項2記載の安定器において、
    前記チョークコイルは、前記放電灯の定格電流の1.7倍以上の電流値で磁気飽和するものであることを特徴とする放電灯安定器。
  4. 請求項3記載の安定器において、
    放電灯に流れるランプ電流を検知するランプ電流検知手段と、
    前記ランプ電流検知手段が、波高率設定電流値を超える電流値を検出した場合に、前記インバータ部のスイッチング素子をオフ作動させ、ランプ電流が前記波高率設定電流値より下がった場合にオン作動させる磁気飽和防止手段と、を備え、前記波高率設定電流値はランプ電流の波高率が1.7以下となるよう設定され、前記チョークコイルの磁気飽和を防止することを特徴とする放電灯安定器。
  5. 請求項1〜3記載の安定器において、
    放電灯に流れるランプ電流を検知するランプ電流検知手段と、
    前記ランプ電流検知手段が、回路破壊危険電流値を超える電流値を検出した場合に、前記インバータ部のスイッチング素子をオフ作動させ、ランプ電流が回路破壊危険電流値より下がった場合にオン作動させる回路破壊防止手段と、
    を備えることを特徴とする放電灯安定器。
  6. 請求項1〜5記載の安定器において、
    チョークコイルの外周に近接配置された防振手段と、
    前記防振手段の外周に近接配置された良熱伝導手段と、
    を備えたことを特徴とする放電灯安定器。
  7. 請求項6記載の安定器において、
    防振手段は、チョークコイルを挿入するチョーク収納部と、該チョーク収納部とチョークコイルとの間に充填・硬化された硬質樹脂または発泡樹脂、乃至チョークコイルまたはチョーク収納部を包む繊維状吸音材とを含み、
    良熱伝導手段は、軟質樹脂を含むことを特徴とする放電灯安定器。
  8. 請求項1〜7記載の安定器において、インバータ部、点灯回路部及び始動回路部は断面円形ないし楕円形ケースに装填されることを特徴とする放電灯安定器。
  9. 請求項8に記載の安定器において、ケース断面は、短軸/長軸が1/1〜1/2であることを特徴とする放電灯安定器。
  10. 請求項1〜9記載の安定器において、放電灯と安定器の間の配線長が15m以上であることを特徴とする放電灯安定器。
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