この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、複数の販売拠点からの製品の供給を依頼する発注に応じ、その発注の順序に従って、生産元から複数の販売拠点へ製品を供給する製品発注装置であって、販売拠点(実施形態における(以下、本項において同じ)販社(販売店および法人営業部))ごとの過去の販売実績SNを記憶する販売実績記憶手段(販社実績データベース31)と、記憶された過去の販売実績SNに基づいて、販売拠点ごとの販売能力(販売能力値AN)を演算する販売能力演算手段(演算処理部12a)と、演算された販売能力および所定の係数(比率P)に応じて、所定期間(週間、日)における販売拠点ごとの発注数量の上限値(リミテーション台数LN)を設定する上限値設定手段(演算処理部12a)と、複数の販売拠点から生産元に対して製品を発注する発注手段(オーダーインプット部16)と、発注手段による発注に基づいて、所定期間内における販売拠点ごとの累積発注数量(オーダーカウント数CN)を演算する累積発注数量演算手段(第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15)と、演算された累積発注数量と上限値を比較し、販売拠点からの上限値を超える発注を制限する発注数量制限手段(第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15)と、を備えることを特徴とする。
本発明の製品発注装置によれば、複数の販売拠点からの製品の発注順序に従って、生産元から販売拠点へ製品が供給される。また、過去の販売実績に基づいて販売拠点ごとの販売能力が演算され、この販売能力と所定の係数に応じて、所定期間における販売拠点ごとの発注数量の上限値が設定される。また、各販売拠点から生産元に対してなされた発注に基づいて、所定期間における販売拠点ごとの累積発注数量が演算される。そして、発注数量制限手段によって、この累積発注数量と上限値が比較され、販売拠点からの上限値を超える発注が制限される。
以上のように、本発明の製品発注装置では、販売拠点からの発注を生産元で無条件に受け付けるのではなく、上限値を超える分の発注を制限するので、一部の販売拠点への製品供給の偏りを回避でき、その結果、販売拠点全体として、特に新製品や人気製品などの需要が大きい製品の納期の平準化および短縮化を図ることができる。また、上限値を、各販売拠点の過去の販売実績に基づく販売能力をパラメータとして設定するので、例えば、販売能力が高い場合にはより大きな値に、販売能力が低い場合にはより小さな値に設定することにより、発注の制限を実際の販売実績に応じて適切に行うことができる。したがって、販売意欲を阻害することがないとともに、販売拠点間の公平感を保つことができる。さらに、上限値を所定の係数をパラメータとして設定するので、販売実績以外の要因を反映させながら、発注の制限をより適切に行うことができる。さらに、そのようにして設定した上限値を、販売拠点からの累積発注数量と比較するので、販売拠点での実際の販売状況を反映させながら、発注の制限を適切かつ柔軟に行うことができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の製品発注装置において、生産元における製品の生産能力に応じて、単位期間における製品の供給可能数量(供給台数PN)を設定する供給可能数量設定手段(供給台数テーブル8)をさらに備え、所定の係数は、設定された供給可能数量が大きいほど、より大きな値に設定されることを特徴とする。
販売拠点への製品の供給可能数量は、生産元の生産能力に応じて異なり、生産能力が高いほど、販売拠点からの発注に応えられる度合は高くなる。したがって、本発明によれば、生産能力に応じた製品の供給可能数量が大きいほど、所定の係数をより大きな値に設定し、上限値による制限を緩和することによって、発注の制限を、製品の生産能力に応じて適切に行うことができる。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の製品発注装置において、生産元における製品の生産能力に応じて、単位期間における製品の供給可能数量(供給台数PN)を設定する供給可能数量設定手段(供給台数テーブル8)と、発注数量制限手段により発注を制限された発注数量から累積制限発注数量を演算する累積制限発注数量演算手段(第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15)と、供給可能数量および累積制限発注数量から納期DLを算出する納期算出手段(納期テーブル9)と、をさらに備え、所定の係数は、納期DLが長いほど、より小さな値に設定されることを特徴とする。
この場合の納期は、生産元での生産能力に応じた製品の供給可能数量と、発注を制限された累積制限発注数量との相対的な関係から定まるものであり、納期が長いほど、販売拠点からの発注の競合が激しい状況であることを表す。したがって、本発明によれば、納期が長いほど、所定の係数をより小さな値に設定し、上限値による制限をより厳しくすることによって、一部の販売拠点への製品供給の集中・偏りを適切に回避することができる。
また、前記目的を達成するために、請求項4に係る発明は、複数の販売拠点からの製品の供給を依頼する発注に応じ、その発注の順序に従って、生産元から前記複数の販売拠点へ製品を供給する製品発注装置であって、販売拠点(販社(販売店および法人営業部))ごとの過去の販売実績SNを記憶する販売実績記憶手段(販社実績データベース31)と、記憶された過去の販売実績SNに基づいて、第1の所定期間(月間)における販売拠点ごとの販売能力(販売能力値AN)を演算する販売能力演算手段(演算処理部12a)と、販売拠点ごとの現在の製品の在庫数XN1を記憶する在庫数記憶手段(販社在庫データベース32)と、複数の販売拠点から生産元に対して製品を発注する発注手段(オーダーインプット部16)と、販売拠点ごとの過去の発注実績を記憶する発注実績記憶手段(発注実績データベース33)と、製品の生産計画および輸送計画を記憶する生産輸送計画記憶手段(生産計画データベース34、輸送計画データベース35)と、記憶された発注実績ならびに生産計画および輸送計画に基づいて、第1の所定期間内に販売拠点に供給される製品の入庫数XN2を演算する入庫数演算手段(演算処理部12a)と、演算された販売能力、記憶された在庫数XN1、および演算された入庫数XN2に応じて、第2の所定期間(週間、日)における販売拠点ごとの発注数量の上限値(リミテーション台数LN)を設定する上限値設定手段(演算処理部12a)と、発注手段による発注に基づいて、第2の所定期間内における販売拠点ごとの累積発注数量(オーダーカウント数CN)を演算する累積発注数量演算手段(第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15)と、演算された累積発注数量と上限値を比較し、販売拠点からの上限値を超える発注を制限する発注数量制限手段(第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15)と、を備えることを特徴とする。
本発明の製品発注装置によれば、過去の販売実績に基づいて、第1の所定期間における販売拠点ごとの販売能力が演算される。また、販売拠点の過去の発注実績と製品の生産計画および輸送計画に基づいて、第1の所定期間内に販売拠点に供給される製品の入庫数が演算される。販売拠点の販売能力、現在の製品の在庫数および入庫数に応じて、第2の所定期間における販売拠点ごとの発注数量の上限値が設定される。また、各販売拠点から生産元に対してなされた発注に基づいて、第2の所定期間における販売拠点ごとの累積発注数量が演算される。そして、発注数量制限手段によって、この累積発注数量と上限値が比較され、販売拠点からの上限値を超える発注が制限される。
以上のように、本発明の製品発注装置では、請求項1の発明と同様、上限値を超える分の発注を制限するので、一部の販売拠点への製品供給の偏りを回避でき、販売拠点全体として、納期の平準化および短縮化を図ることができる。また、上限値を、各販売拠点の販売実績に基づく販売能力に応じて設定するので、販売意欲を阻害することなく、販売拠点間の公平感を保つことができる。さらに、設定した上限値を、販売拠点からの累積発注数量と比較するので、販売店での実際の販売状況を反映させながら、発注の制限を適切かつ柔軟に行うことができる。
さらに、本発明では、上限値を設定するためのパラメータとして、販売能力に加えて、販売拠点の現在の在庫数と、生産計画および輸送計画に基づいて演算された入庫数が用いられる。この入庫数は、第1の所定期間内に販売拠点に供給される製品の数であり、在庫数と併せて、第1の所定期間内に販売拠点が入手する製品の総数を表す。したがって、上限値を、販売能力、在庫数および入庫数に応じて設定することによって、販売拠点での総製品数と販売能力との相対的な関係によって定まる在庫状況を反映させながら、発注の制限を適切に行うことができる。その結果、製品の実際の在庫状況およびその販売能力(在庫回転率)に応じて、販売拠点に製品を過不足なく供給でき、販売拠点間の在庫日数の平準化を図ることができる。
また、前記目的を達成するために、請求項4に係る発明は、複数の販売拠点からの製品の供給を依頼する発注に応じ、その発注の順序に従って、生産元から前記複数の販売拠点へ製品を供給する製品発注装置であって、販売拠点(販社(販売店および法人営業部))ごとの過去の販売実績SNを記憶する販売実績記憶手段(販社実績データベース31)と、記憶された過去の販売実績SNに基づいて、第1の所定期間(月間)における販売拠点ごとの販売能力(販売能力値AN)を演算する販売能力演算手段(演算処理部12a)と、販売拠点ごとの現在の製品の在庫数XN1を記憶する在庫数記憶手段(販社在庫データベース32)と、複数の販売拠点から生産元に対して製品を発注する発注手段(オーダーインプット部16)と、販売拠点ごとの過去の発注実績を記憶する発注実績記憶手段(発注実績データベース33)と、製品の生産計画および輸送計画を記憶する生産輸送計画記憶手段(生産計画データベース34、輸送計画データベース35)と、記憶された発注実績ならびに生産計画および輸送計画に基づいて、第1の所定期間内に販売拠点に供給される製品の入庫数XN2を演算する入庫数演算手段(演算処理部12a)と、演算された販売能力、記憶された在庫数XN1、および演算された入庫数XN2に応じて、第2の所定期間(週間、日)における販売拠点ごとの発注数量の第1上限値LN1を設定する第1上限値設定手段(演算処理部12a)と、販売能力および所定の係数(比率P)に応じて、第2の所定期間における販売拠点ごとの発注数量の第2上限値LN2を設定する第2上限値設定手段(演算処理部12a)と、設定された第1および第2の上限値LN1、LN2に基づいて、販売拠点ごとの発注数量の上限値(リミテーション台数LN)を設定する上限値設定手段(演算処理部12a)と、発注手段による発注に基づいて、第2の所定期間内における販売拠点ごとの累積発注数量(オーダーカウント数CN)を演算する累積発注数量演算手段(第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15)と、演算された累積発注数量と上限値を比較し、販売拠点からの上限値を超える発注を制限する発注数量制限手段(第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15)と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、販売能力、在庫数および入庫数に応じて設定された第1上限値と、販売能力および所定の係数などに応じて設定された第2上限値に基づいて、上限値が設定される。したがって、第1上限値により、販売実績、在庫数および入庫数によって定まる実際の在庫状況およびその販売能力(在庫回転率)に応じて、販売拠点に製品を過不足なく供給でき、販売拠点間の在庫日数の平準化を図ることができる。これに加えて、第2上限値により、在庫状況以外の要因を反映させながら、発注の制限をよりきめ細かく適正に行うことができ、それにより、販売拠点間の公平感を保てるとともに、販売意欲を維持することができる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の製品発注装置において、第1および第2の上限値LN1、LN2を重み付けするための重み係数wを記憶する重み係数記憶手段(重み係数テーブル36)をさらに備え、上限値設定手段は、重み係数wによって重み付けされた第1および第2の上限値LN1、LN2に基づいて、上限値LNを設定することを特徴とする。
この構成では、第1および第2の上限値を重み係数で重み付けし、上限値を設定する。したがって、在庫状況によって定まる供給分と、他の要因によって定まる供給分との割合を、重み係数によって容易に調整でき、それにより、発注の制限をさらにきめ細かく行うことができる。
請求項7に係る発明は、請求項4または5に記載の製品発注装置において、第2の所定期間(月間)が、第1の所定期間(週間、日)よりも短い期間に設定されていることを特徴とする。
この構成では、販売能力および入庫数の演算が第1の所定期間を対象期間として行われるのに対し、上限値の設定や発注の制限は、第1の所定期間よりも短い第2の所定期間を基準として行われる。したがって、販売実績や入庫数の推移に随時、柔軟に対応しながら、発注の制限をきめ細かく適切に行うことができる。
請求項8に係る発明は、請求項1、4または5に記載の製品発注装置において、製品の種類(ドアクラス)に関する情報を記憶する製品情報記憶手段(リミテーション対象テーブル3)をさらに備え、上限値設定手段による上限値の設定、および累積発注数量演算手段による累積発注数量の演算を、記憶された製品の種類ごとに実行することを特徴とする。
製品の人気や需要の高さは、その種類によって様々であり、販売拠点からの発注は人気製品に集中しやすい。本発明によれば、上限値の設定および累積発注数量の演算を製品の種類ごとに実行するので、例えば発注が集中する人気製品や新型製品については、上限値による制限を厳しくすることによって、発注の制限を、製品の種類に応じてきめ細かく適切に行うことができる。
請求項9に係る発明は、請求項1、4または5に記載の製品発注装置において、発注手段は、製品の販売先が決定しているか否かを入力する入力手段(オーダーインプット部16)を有し、累積発注数量演算手段は、販売先が決定していない発注数量のみを累積することによって、累積発注数量を演算することを特徴とする。
この構成では、販売先が決定している客付分と決定していない客無分とを区別した状態で、発注が行われ、上限値と比較される累積発注数量は、客無分の発注数量のみを対象として演算され、客付分の発注数量は、累積発注数量には含まれない。すなわち、販売先がすでに決定している客付分を発注の制限対象から除外して、製品を優先的に供給する一方、客無分のいわゆる見込み発注に対してのみ制限を加えるので、製品の供給を客付の有無による優先度に応じて適切に行うことができる。
請求項10に係る発明は、請求項1、4または5に記載の製品発注装置において、発注手段は、発注を取り消すキャンセル手段(オーダーキャンセル部17)を有し、累積発注数量演算手段は、キャンセル手段により発注を取り消されたキャンセル数量を発注数量から減算することによって、累積発注数量を演算することを特徴とする。
この構成では、発注のキャンセルがあった場合には、累積発注数量が、キャンセル数量を発注数量から減算した値として演算され、上限値と比較されるので、発注のキャンセルに柔軟に対応しながら、発注の制限を適切に行うことができる。
また、請求項11に係る発明は、請求項1、4または5に記載の製品発注装置において、上限値設定手段は、設定した上限値を記憶する第1の記憶手段を備え、発注数量制限手段は、第2の記憶手段と、第1の記憶手段に記憶された上限値を第2の記憶手段に所定の更新期間ごとに送ることによって更新する更新手段と、第2の記憶手段に記憶された上限値と累積発注数量を比較する比較手段と、を有することを特徴とする。
この構成では、上限値設定手段で設定した上限値が、その第1の記憶手段に記憶されるとともに、所定の更新期間ごとに発注数量制限手段の第2の記憶手段に更新され、累積発注数量と比較される。このように、上限値設定手段で上限値が設定されると、この上限値を、発注数量制限手段において、直ちに更新するのではなく、所定の更新期間ごとに更新する。したがって、この更新期間を適宜、設定することによって、発注数量制限手段において、上限値の更新処理と、累積発注数量の入力処理や上限値との比較処理とを同時に発生しないようにすることができる。その結果、販売拠点からの発注が非常に多いような場合でも、発注数量制限手段における入力処理や比較処理を、上限値の更新処理に影響されることなく、円滑に行うことができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1および図2に示すように、実施形態による自動車の製品発注装置(以下、単に「システム」という)1では、事業所が、一般のユーザーを対象として販売を行う多数の販売店と、大手ユーザー(レンタカー会社や自動車教習所など)を対象として販売を行う法人営業部に区分されている。以下、これらの販売店と法人営業部を合わせた販売拠点を、適宜「販社」という。さらに、本システム1では、販社以外の事業所が、管轄内の複数の販売店を管理する地区管理部と、地区管理部、販売店および法人営業部を管理する、生産元としての本部と、システム全体を管理する管理センターとに区分されており、事業所間はオンラインで結ばれている。
本システム1では、本部の対象ドアクラス設定部2において、販社からの製品の発注(以下「オーダー」という)を制限するリミテーションの基本設定として、対象ドアクラス設定を行い、その結果は、管理センターのリミテーション対象テーブル(TBL)3に記憶される。図3はその一例を示しており、設定項目は、車種、ドアクラス、リミテーションNo.、および販社からのオーダーの受付期間(FROM日〜TO日)である。この場合、リミテーションの対象としては、特に新車や人気車種など、販社からのオーダーが競合すると予想されるすべての車種が選択される。
また、ドアクラスとは、生産制約を反映した製品の種類を表すものであり、例示した2WDや4WDの別に限らず、2ドアや4ドアの別などの任意のクラス分けにより、同一の車種内で複数のドアクラスを設定することが可能である。設定された各ドアクラスに対して、リミテーションを管理するためのリミテーションNo.が採番される。このように、リミテーションの対象を、車種だけでなくドアクラスに応じて設定することによって、リミテーションをきめ細かく適切に行うことができる。また、例示した身障者用のように、需要が低く、販社からのオーダーが競合する可能性のないドアクラスについては、リミテーションの対象から除外され、リミテーションNo.も採番されない。
また、本部では、上記の対象ドアクラス設定に基づき、週別基本設定部4によって、リミテーションの週別基本設定を行うとともに、必要に応じて、日別基本設定部5により日別基本設定を行う。その結果は、管理センターの週基本テーブル6に記憶される。図4は、週別基本テーブルの3つの例を示しており、同図に示すような特定の1週間を表す週別カレンダーに、リミテーションの対象期間(FROM日〜TO日)と比率P(所定の係数)が設定されている。
ベースとなる週別カレンダーは、リミテーションNo.ごとに、例えば木曜日〜水曜日を区切りとして、夜間バッチによって作成される。比率Pは、第2例に示すように、1〜9999%の範囲で指定することが可能であるとともに、この例では、販売系列1〜3(販売チャンネル)の各系列ごとに設定され、法人営業部については別個に設定されている。なお、比率Pの設定は、系列ごとではなく販売店ごとに行うことも可能である。
比率Pは、各販社が1か月当たりの販売可能な製品数を表す販売能力値AN(販売能力)に対する、当該週における販社からのオーダー数の上限値の比を表す。例えば、第1例において、系列1に属する販売店Aの1か月の販売能力値ANが100台とすると、系列1に対する比率10%が適用されることで、当該週における販売店Aからのオーダー数量の上限値は、100台×10%=10台に制限される。この販売能力値ANを演算するために、本部の販社実績データベース31には、販社ごとの過去の販売台数を表す販売実績SNがリミテーションNo.ごとに記憶されており、販売能力値ANは、この販売実績SNに基づき、後述するリミテーションテーブル12の演算処理部12aによって演算される。
図5は、販売能力値ANの演算例を示している。第1例に示すように、販社Aの販売実績SNが、前月(N−1月)、前々月(N−2月)および3か月前(N−3月)において、それぞれ10台、7台および6台であったとすると、販売能力値ANは、それらの月平均値(少数点以下切り上げ)として演算され、単月値=10台、2か月平均値=(10+7)/2=8.5→9台や、3か月平均値=(10+7+6)/3=7.7→8台などとして求められる。
また、比率Pは、供給台数テーブル8に記憶された供給台数PN(供給可能数量)、および納期テーブル9に記憶された納期DLに応じて、リミテーションNo.ごとに設定される。供給台数PNは、生産元における製品の生産能力に応じて設定されるものであり、単位期間において供給可能な台数を表す。図6は、この供給台数PNに応じた比率Pの設定例を示しており、比率Pは、供給台数PNが大きいほど、より大きな値に設定されている。このような設定により、製品の生産能力が大きいほど、リミテーションがより緩和されるので、リミテーションを生産能力に応じて適切に行うことができる。
また、納期DLは、上記の供給台数PNと、後述するリミテーションの結果、オーダーを制限された累積制限オーダー数とから算出されるものであり、納期DLが長いほど、販売店からのオーダーの競合が激しい状況であることを表す。図7は、この納期DLに応じた比率Pの設定例を示しており、比率Pは、納期DLが大きいほど、より小さな値に設定されている。このような比率Pの設定により、納期DLが長いほど、すなわちオーダーの競合が激しいほど、リミテーションがより厳しくなるので、一部の販売店への製品の供給の集中・偏りを適切に回避することができる。
図8は、リミテーションの週別基本設定に日別基本設定を併用した基本テーブルの一例を示している。この基本テーブルでは、図4と同じ週別基本設定がなされるとともに、1週間のうちの特定の2日(5月6日(木)および8日(土))に対して、日別基本設定が適用されている。この例によれば、例えば販売系列2に属する販売店に対して、5月6日および8日の各々に日別の比率10%が適用されるとともに、週別の比率20%は、残りの5日間のオーダー数の和に対して適用される。このような設定により、例えば新車の発売日に該当するなど、オーダーが集中することが予想されるような特定の日を、日別設定とすることによって、リミテーションを一時的に緩和し、販売店への製品の供給を弾力的に行うことができる。なお、同図の例では、日別の比率Pが週別の比率P以下に設定されているが、日別基本設定の併用が上記のような趣旨に基づくものであるため、日別の比率Pを週別のそれよりも大きな値に設定することも可能である。
また、本部の自動台数割振り指示部10からの指示に応じて、リミテーション台数テーブル12の演算処理部12aによって、リミテーション台数LNの自動演算が行われる。この演算は、週・日別基本設定で設定された対象週(および対象日)におけるオーダー数の上限値(生産元において受注を認める発注数量の上限値)としてのリミテーション台数LNを、販社ごとに且つ対象ドアクラスごとに演算するものである。具体的には、前述したようにして設定または演算された対象ドアクラス、比率Pおよび販売実績SN、ならびに販社拠点数テーブル11に記憶されている販社データに基づいて、リミテーション台数LNが自動演算される。
図9は、このリミテーション台数演算処理を示すフローチャートである。この処理では、まずステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、販社実績データベース31から、販売実績SNを読み込む。次に、読み込んだ販売実績SNを平均することによって、販売能力値ANを算出する(ステップ2)。この場合、販売実績SNは、必要な過去1〜3か月分のものが読み込まれ、販売能力値ANは、単月値、2か月平均値または3か月平均値として算出される。次いで、週基本テーブル6から比率Pを読み込む(ステップ3)。そして、この比率Pとステップ2で算出した販売能力値ANを用い、次式(1)によって、リミテーション台数LNを算出する(ステップ4)。
LN = AN×P ・・・(1)
次に、算出したリミテーション台数LNを、リミテーション台数テーブル12に記憶、登録し(ステップ5)、本処理を終了する。
図10は、図5の販売実績値SNを用いて演算されたリミテーション台数LNの設定例を示している。同図(a)は、販売能力値LNとして単月値を使用した例であり、この例では、販社A〜Cに対する週別の比率Pは、いずれも30%に設定されている。これに対して、販社Aの販売能力値ANは10台であるので、販社Aの当該週におけるリミテーション台数LNは、式(1)により、10台×30%=3台に計算される。以下同様に、販社B、Cの販売能力値はそれぞれ5台、1台であるので、5台×30%=1.5台、1台×30%=0.3台が計算値として得られ、その少数点以下を切り上げることで、販売B、Cのリミテーション台数LNは、それぞれ2台、1台に設定される。
また、同図(b)は、販売能力値LNとして3か月平均値を使用した例であり、この場合には、販社A〜Cに対する週別の比率Pは、いずれも40%に設定されている。そして、上述した単月値の場合と同様にして、販社A〜Cの販売能力値LNに比率Pを乗算することにより、販売A〜Cの当該週におけるリミテーション台数LNが自動演算される。なお、図示しないが、リミテーションを日別に設定した場合には、日別設定用の比率Pを用いて、上記と同様にリミテーション台数LNが自動計算される。
以上のように自動演算されたリミテーション台数LN(以下、本項では「自動割振り台数」という)に対して、台数調整を行うことが可能である。この台数調整には、本部の地区別台数調整部13aおよび販社別台数調整部13bによる調整と、地区管理部の販社別台数調整部14による調整がある。本部による調整は、すべての販社を対象として行われ、図11に示すように、各販社への自動割振り台数を、台数に制限なく自由に調整することが可能である。その調整後台数のデータは、該当する地区管理部の販社別台数調整部14に送られる。
これに対して、地区管理部による調整は、管轄販売店のみを対象とし、図12に示すように、自動割振り台数(または本部による調整後台数)を、管轄販売店間で増減調整するものであり、その地区の管轄販売店への自動割振り台数の総和(この例では23台)を超えるような調整は行えない。以上のような調整が行われた場合、その調整後台数が最終的なリミテーション台数LNとして決定され、そのデータはリミテーション台数テーブル12に送られる。
また、リミテーション台数テーブル12に記憶されたリミテーション台数LNは、所定の更新期間ごとに、例えば週の最終日である水曜日に、第1および第2リミテーションオーダー管理台数テーブル15、20へ、夜間バッチ処理(JOB)によって送られ、更新される。後述するように、第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15では、日中のオンライン作業によって販社からオーダーデータが随時、入力され、そのカウント処理やリミテーション処理が行われる。したがって、リミテーション台数テーブル12と第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15を互いに別個に設けるとともに、前者12から後者15へのリミテーション台数LNの更新を、上記のようなタイミングで行うことによって、後者15において、リミテーション台数LNの更新処理と、オーダーデータの入力、カウントおよびリミテーション処理とを同時に発生しないようにすることができる。その結果、販社からのオーダーデータ量が非常に多いような場合でも、第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15の処理を、リミテーション台数LNの更新処理に影響されることなく、円滑に行うことができる。
販売店および法人営業部からの製品のオーダーおよびそのキャンセルは、それぞれのオーダーインプット部16およびオーダーキャンセル部17により、日中のオンライン作業によって行われる。なお、このオーダーおよびキャンセルの際には、その製品の販売先が決定している客付のものか否かが併せて入力される。オーダーの入力が行われると、そのオーダーデータは第1リミテーションオーダー管理台数テーブル15に送られ、その演算処理部(図示せず)によって、オーダーリミテーション処理が実行される。この処理は、前述のようにして設定されたリミテーション台数LNと実際のオーダー数との比較結果に基づいて、オーダーを許可または制限するものである。
以下、このオーダーリミテーション処理を、図13を参照しながら説明する。この処理では、まずステップ11において、そのオーダーが、本部ではなく他の法人に対してのもの(例えば他の地区管理部からの配車など)であるか否かを判別する。この答がYESのときには、そのオーダーは本部からの製品の供給とは無関係であるので、オーダーNo.の採番のみを行い(ステップ12)、本プログラムを終了する。
前記ステップ11の答がYESで、本部に対するオーダーであるときには、オーダーされた製品がリミテーション対象のものであるか否かを判別する(ステップ13)。この答がYESで、オーダーされた製品がリミテーションNo.を採番されたリミテーション対象であるときには、そのオーダーが客付であるか否かを判別する(ステップ14)。この答がNOで、そのオーダーが販売先の決定していない客無オーダー(見込みオーダー)のときには、それまでにカウントされた当該リミテーションNo.に係る製品のオーダーカウント数CN(生産元において受注を認めた累積発注数量)が、該当するリミテーション台数LNにすでに達しているか否かを判別する(ステップ15)。
この答がNOで、オーダーカウント数CNがリミテーション台数LNに達していないとき(CN<LN)には、そのオーダーを許可すべきとして、オーダーカウント数CNに値1を加算し、カウントした(ステップ16)後、そのオーダーにオーダーNo.を採番する(ステップ17)。オーダーNo.が採番されると、その製品の生産が完了している場合には、そのオーダーNo.に対して在庫引当を行い(ステップ18)、または、その製品の生産計画が確定している場合には、オーダーNo.に対して確定計画引当を行った(ステップ19)後、本プログラムを終了する。
一方、前記ステップ15の答がYESで、オーダーカウント数CNがリミテーション台数LNにすでに達しているとき(CN=LN)には、ステップ20において、そのオーダーを拒否する(エントリーNG)。以上の処理により、リミテーションNo.すなわち対象ドアクラスごとに、リミテーション台数LNを超えるオーダーが制限される。なお、このようにオーダーを拒否された制限オーダー数は集計され、累積制限オーダー数として、納期テーブル19に送られる。
一方、前記ステップ14の答がYESで、そのオーダーが販売先の決定している客付オーダーのときには、前記ステップ15および16をスキップして、前記ステップ17以降に進み、オーダーNo.の採番およびその引当のみを行う。すなわち、オーダーが客付の場合には、リミテーションの対象から除外されるとともに、オーダーカウント数CNのカウントからも除外される。このような処理により、販売先がすでに決定している客付オーダー分の製品を優先的に供給する一方、客無の見込みオーダー分の製品の供給を後回しにするので、製品の供給を客付の有無による優先度に応じて適切に行うことができる。
以上のように、本実施形態のオーダーリミテーションによれば、販社からの発注を生産元で無条件に受け付けるのではなく、オーダーカウント数CNがリミテーション台数LNを超えたときには、その発注を制限するので、一部の販社への製品供給の偏りを回避でき、その結果、販社全体として、特に新製品や人気製品などの需要が大きい製品の納期の平準化および短縮化を図ることができる。また、各販社の過去の販売実績SNに基づいて販売能力値ANを演算するとともに。リミテーション台数LNを、販売能力値ANが高い場合にはより大きな値に、販売能力値ANが低い場合にはより小さな値に設定するので、発注の制限を、実際の販売実績SNに応じて適切に行うことができる。したがって、販売意欲を阻害することがないとともに、販社間の公平感を保つことができる。さらに、販売能力値ANに加えて、比率Pをパラメータとして、リミテーション台数LNを設定するので、販売実績SN以外の要因を反映させながら、発注の制限をより適切に行うことができる。さらに、そのようにして設定したリミテーション台数LNを、販社から随時、インプットされるオーダーカウント数CNと比較するので、販社での実際の販売状況を反映させながら、発注の制限を適切かつ柔軟に行うことができる。
販社のオーダーインプット部16からのオーダーデータはまた、オーダーデータベース(DB)19に送られる。また、販社のオーダーキャンセル部17によってオーダーのキャンセルが行われると、そのキャンセルデータもまた、オーダーデータベース19に送られる。そして、これらのオーダーデータおよびキャンセルデータは、1日のオンライン作業終了後に、夜間バッチ処理により、当日分のオーダー数およびキャンセル数として集計され、第2リミテーションオーダー管理台数テーブル20に送られる。
図14は、この第2リミテーションオーダー管理台数テーブル20に記憶されているオーダー消化状況テーブルを示している。このテーブルは、販社ごとおよび対象ドアクラスごとに、当該週におけるリミテーション台数LN、オーダーおよびキャンセル状況やオーダー可能数などを一覧して表したものである。例えば、販社Bの例では、リミテーション台数LNは80、その時点までの総オーダー数は50(客付:30、客無:20)である。前述したように、客付分はオーダーカウント数CNのカウントから除外される(客無分のみがカウントされる)ので、この場合には、オーダーカウント数CNは、総オーダー数−客付オーダー数=50−30=20となる。また、その時点までのキャンセル数は10(客付:0、客無:10)であり、客無分のキャンセル数がオーダー可能数に反映される。したがって、オーダー可能数は、リミテーション台数LN−オーダーカウント数CN+客無分キャンセル数=80−20+10=70となる。
これに対して、販社Aの例では、キャンセルが客付分のみであり、客付分については、もともとオーダーカウントされていないので、そのキャンセル数はオーダー可能数には反映されない。したがって、この場合のオーダー可能数は、LN−CN=80−60=20となる。以上の内容のオーダー消化状況テーブルは、第2リミテーションオーダー管理台数テーブル20から各事業所の販社別消化状況照会部21に取り出して表示することが可能であり、各事業所では、この表示を見ることで、その時点でのオーダー可能数などを容易に知ることができる。この場合、表示内容を事業所に応じて変えることも可能であり、例えば、本部については全販社のデータ、地区管理部については管轄販売店のみのデータ、販売店および法人営業部については当該事業所のみのデータとすることができる。
図15は、リミテーション台数LNへのオーダーおよびキャンセルの反映方法を示している。前述したように、販社からのオーダーデータおよびキャンセルデータは、日中のオンライン作業により入力され、オーダーデータベース19に随時、送られるとともに、1日のオンライン作業終了後に、夜間バッチ処理により、当日分のオーダー数およびキャンセル数として集計され、第2リミテーションオーダー管理台数テーブル20に送られる。これにより、前日のキャンセル分を翌日のリミテーション台数LNに反映させることができる。なお、この例では、日曜日が夜間バッチ処理の不稼働日であるため、日曜日のキャンセル分は、月曜日分と併せて、月曜日の夜間に処理され、火曜日に反映される。また、週の最終日である水曜日のキャンセル分は、翌週には反映されない。
また、この水曜日の夜間バッチ処理時に、第2リミテーションオーダー管理台数テーブル20において、翌週(N+1週)用のリミテーション台数LNn+1が、今週(N週)用のリミテーション台数LNnとしてシフトされ、更新され、それと同時に、リミテーション台数テーブル12から第2リミテーションオーダー管理台数テーブル20へ、直近2週間分のリミテーション台数LNのデータが送られる。
次に、図16〜図18を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、上述した第1実施形態と比較し、リミテーション台数LNの設定方法のみが異なっており、図16に示すように、販社の販売能力値ANと、販社が当面1か月以内に入手する総台数XNとの関係から、販社における製品の在庫日数を評価し、リミテーション台数LNを設定するものである。この総台数XNには、販社にすでに供給されている在庫数XN1と、販社に当面1か月以内に供給される入庫数XN2が含まれる。在庫数XN1は、販社在庫データベース32に記憶されている。
また、上記の入庫数XN2には、製品の生産がすでに完了し、1か月以内に販社への引き渡しが決まっている既生産分と、製品の生産がまだ完了しておらず、生産計画および輸送計画から、1か月以内に販社に供給されることが確実な未生産分が含まれる。この入庫数XN2を算出するために、管理センターの発注実績データベース33には販社ごとの発注実績が、生産計画データベース34および輸送計画データベース35には製品の生産計画および輸送計画が、それぞれ記憶されている。なお、以下では、リミテーション台数LNを週別に設定する例を中心として説明するが、第1実施形態と同様、これを日別に設定することも、週別および日別を併用して設定することも可能である。
図17は、リミテーション台数テーブル12の演算処理部12aによって実行される、本実施形態によるリミテーション台数演算処理を示す。この処理ではまず、図9のステップ1および2と同様、販社実績データベース31から販売実績SNを読み込む(ステップ31)とともに、読み込んだ販売実績SNを平均することによって、販売能力値ANを算出する(ステップ32)。次に、販社在庫データベース32から販社における現在の製品の在庫数XN1を読み込む(ステップ33)。また、発注実績データベース33から販社の過去の発注実績を読み込む(ステップ34)とともに、生産計画データベース34および輸送計画データベース35から製品の生産計画および輸送計画をそれぞれ読み込む(ステップ35)。そして、読み込んだ発注実績、生産計画および輸送計画に基づいて、販社に1か月以内に供給される入庫数XN2を算出する(ステップ36)。
次いで、ステップ33で読み込んだ在庫数XN1に、ステップ36で算出した入庫数XN2を加算することによって、販社が1か月以内に入手する総台数XNを算出する(ステップ37)。そして、この総台数XNと、ステップ32で算出した販売能力値ANを用い、次式(2)によって、当月の各週(第1〜第4週)のリミテーション台数LNを算出する(ステップ38)。
LN =(AN×2−XN)/4 (ただしLN≧1) ・・・(2)
次に、算出したリミテーション台数LNを、リミテーション台数テーブル12に記憶、登録し(ステップ39)、本処理を終了する。
図18は、以上のようにして演算されたリミテーション台数LNの設定例を示している。例えば販社Aの場合、その販売能力値AN=50であり、在庫数XN1=57、入庫数XN2=73から、総台数XN=130である。そして、これらの販売能力値ANおよび総台数XNから、式(2)による計算値は−7.5となり、リミテーション台数LNの下限値が1に設定されている(LN≧1)ことから、各週のリミテーション台数LNは1に設定される。
なお、表中の在庫日数は、次式(3)によって算出されるものであり、販社の販売能力から見て、総台数XNの製品の販売を完了するのに要する予定日数を表す。
在庫日数 =(XN/AN)×30(日) ・・・(3)
販社Aの場合、以上のようにリミテーション台数LNが設定される結果、同図の右2つの欄に示すように、第1週および第4週のオーダーインプット(I/P)後の総台数XNが、それぞれ131、134になることで、在庫日数はほとんど増えず、製品のさらなるだぶつきが抑制される。なお、図示しないが、当面の1か月間に販売能力値AN程度の台数が販売されるため、次の月には、在庫数XN1および在庫日数が大幅に減少し、製品のだぶつきが解消される。
これに対し、例えば販社Fの場合には、販売能力値AN=111、総台数XN=32で、在庫日数は8.6と小さく、販売能力に対して製品が不足気味の状況にある。この場合には、式(2)により各週のリミテーション台数LNが比較的大きな48に設定されることによって、リミテーションが緩和される。その結果、販社Fの総台数XNが、第1週および第4週のオーダーインプット後においてそれぞれ80、224になることで、在庫日数が大幅に増加し、製品不足が解消される。詳細な説明は省略するが、他の販社のリミテーション台数LNも同様に算出され、それにより、同図の右2つの欄に示すように、販社間の在庫日数が平準化されることが分かる。
以上のように、本実施形態によれば、販社の販売実績に基づく販売能力値ANと、販社の現在の在庫数XN1および今後の入庫数XN2の和である総台数XNとに応じて、総台数XNに対して販売能力値ANが相対的に小さいほど、リミテーション台数LNが小さな値に設定される。したがって、在庫日数が大きく、製品がだぶついている場合には、発注の制限を厳しくするとともに、在庫日数が小さく、製品が不足気味の場合には、発注の制限を緩和することができる。このように、製品の実際の在庫状況に応じて、販社に製品を過不足なく供給でき、在庫日数の平準化を図ることができる。なお、上記の例では、1か月相当の販売能力値ANと総台数XNに基づいて、第1〜4週分のリミテーション台数LNをまとめて一律に設定しているが、他の手法を採用することももちろん可能である。例えば、販売能力値ANおよび総台数XNを週ごとに更新し、当面1週間分のみのリミテーション台数LNを算出してももよく、それにより、最新の販売実績と在庫および入庫状況に基づいて、発注の制限をより適切に行うことができる。
次に、図19〜図20を参照しながら、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、前述した第1および第2実施形態と比較し、リミテーション台数LNの設定方法のみが異なっており、両実施形態によるリミテーションの手法を併用したものである。
図19は、リミテーション台数テーブル12の演算処理部12aによって実行される、本実施形態によるリミテーション台数演算処理を示す。この処理ではまず、週当たりの第1上限値LN1を算出する(ステップ41)。この第1上限値LN1は、第2実施形態によるリミテーション台数LNとまったく同じものであり、販売能力値ANおよび総台数XNに基づき、前記式(2)によって算出される。次に、週当たりの第2上限値LN2を算出する(ステップ42)。この第2上限値LN1は、第1実施形態によるリミテーション台数LNとまったく同じものであり、前記式(1)によって、販売能力値ANと比率Pとの積として算出される。
次いで、重み係数wを読み込む(ステップ43)。この重み係数wは、リミテーション台数LNを算出する際に、第1および第2上限値LN1、LN2を重み付けするためのものであり、販社ごとおよびリミテーションNo.ごとに所定の値(0<w<1)にあらかじめ設定され、管理センターの重み係数テーブル36に記憶されている、次に、第1および第2上限値LN1、LN2と重み係数を用い、次式(4)によって、週当たりのリミテーション台数LNを算出する(ステップ44)。
LN = LN1×w+LN2×(1−w) ・・・(4)
次に、算出したリミテーション台数LNを、リミテーション台数テーブル12に記憶、登録し(ステップ45)、本処理を終了する。
図20は、以上のようにして演算されたリミテーション台数LNの設定例を示している。データ例は、図18の販社Aの例と同じであり、比率Pは30%、重み係数wは0.5である。この場合、販売能力値AN=50、総台数XN=130および比率P=30%であることから、第1上限値LN1は、図18の場合と同様、式(2)により1に設定され、第2上限値LN2は、式(1)により、50×30%=15に設定される。そして、設定した第1および第2上限値LN1、LN2を用い、式(4)によって、リミテーション台数LNは、1×0.5+15×(1−0.5)=8に設定される。
なお、上記の例では、重み係数wを0.5に設定し、第1および第2上限値LN1、LN2に対する重み付けを均等にしているが、重み係数wを0.5以外の値に設定することによって、両上限値LN1、LN2の一方に重みを加えることも可能である。
以上のように、本実施形態によれば、第1および第2実施形態によるリミテーションの手法によってそれぞれ設定された第1および第2上限値LN1、LN2に基づいて、リミテーション台数LNが設定される。したがって、販売実績SN、在庫数XN1および入庫数XN2に応じ、実際の在庫状況を反映させながら、販社に製品を過不足なく供給でき、販社間の在庫日数の平準化を図ることができる。これに加えて、比率Pにより、在庫状況以外の要因を反映させながら、発注の制限をよりきめ細かく適正に行うことができ、それにより、販社間の公平感を保てるとともに、販売意欲を維持することができる。また、第1および第2の上限値LN1、LN2を重み係数wで重み付けし、リミテーション台数LNを設定するので、在庫状況によって定まる供給分と、他の要因によって定まる供給分との割合を、重み係数wによって容易に調整でき、発注の制限をさらにきめ細かく行うことができる。
なお、上述した実施形態では、第1および第2リミテーションオーダー管理台数テーブル15、20を、互いに別個のものとして説明したが、両者を1つのテーブルで構成することも可能である。