JP2005156329A - 分光式特定成分センサ - Google Patents

分光式特定成分センサ

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Abstract

【課題】良好な製造歩留まり且つ小型の光学系にて、流体物に含まれる特定成分を検出する。
【解決手段】気体又は液体からなる流体物に含まれる特定成分を検出する分光式特定成分センサであって、ビーム光を出射する光源2と、筒状に形成されその筒状内部が流体物の流路でありビーム光が照射する検知管3と、流路に対して光源2の対岸側にありビーム光を反射させる光反射体4と、流路に対して光源2と同じ側にあり光反射体4で反射されたビーム光を受光する受光器5と、光源2より光反射体4を経由して受光器5に至る光軸上にビーム光を分光するフィルタ分光部6とを備え、そのフィルタ分光部6に、それぞれが光軸上に挿入するか否かを位置制御されるとともに異なる波長帯の光を透過させる光学多層膜フィルタ60を複数設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、化学物質の同定あるいは定量評価に用いられる分光式特定成分センサに関するものである。
従来、この種の分光式特定成分センサに用いられる分光計測技術は、化学物質の同定あるいは定量評価の手法としてしばしば用いられ、紫外域、可視域、赤外域の波長光を用いて、被検査物質に照射したときの透過光あるいは反射光の波長特性を評価する。物質の化学構造に伴う入射光の吸収の波長依存性を用いた分析手段のひとつである。
また、理化学研究用途だけでなく、食品工業、化学工業、農漁業分野などの工程管理、品質管理の道具として工業的応用がなされ、あるいはガスセンサー、湿度センサ、火災センサなど環境測定・防災分野への展開が可能である。
上記分光計測技術の中でも赤外光を用いた分析技術が、化学分析、農業食品分析、医薬品用途などで使用される。例えば非特許文献1には、広い波長域においての分析時には分光光度計が用いられ、短波長域あるいは特定波長成分のみ使用するときは光学多層膜によるバンドパスフィルタ又は傾斜膜厚バンドパスフィルタが使用されることもあると記載されている。しかし、幅広い波長域をカバーする分光光度計は大型で非常に高価であるので、安価で小型コンパクトな分光式センサを実現することは上記の用途において有効である。
従来からガス独自の波長吸収特性を利用した赤外域ガスセンサが種々、提案されている。これらは受光器で検知した光量からガスの種類、濃度を測定するものである。例えば、特許文献1には分光−受光器を複数個使用したスタテイック方式、特許文献2には分光部を可変測定させ1個の受光系からなるダイナミック方式が開示されている。スタテイック方式は赤外域を対象に素子ケース内に光学フィルタと受光素子とをセットして複数配置したものである。これに対し、ダイナミック方式はファブリペローエタロンを応用した波長可変な分光部と1個の受光素子から構成され、省電力化が可能という点で優れている。
また、特許文献3には、以下のような赤外線ガス分析計が開示されている。多層膜フィルタを固定し周期的に一定角度間を移動させる移動機構において、ソレノイドの励磁電源を制御部により一定周期でオンオフすると、ソレノイドの移動軸が水平方向に往復移動し、レバー(B)に搭載固定された多層膜フィルタは角度θの範囲内を往復移動する。この角度θは、およそ0〜45°の範囲内で透過させるに必要な波長光により決められる。
特開平3−205521号公報(第4頁−第6頁、及び、第2図) 特開平9−79980号公報(第3頁−第4頁、及び、第2図) 特開2001−27601号公報(第2頁−第3頁、及び、第2図) 尾崎幸洋,河田聡、「近赤外分光法」、学会出版センター)
しかしながら、上記従来の赤外線ガス分析計などのように、スタテイック方式では、高価な受光素子を複数個使用せねばならず、測定波長が通常、数点以内に制限され素子の小型化に限界があり、ダイナミック方式のファブリペロー構造は、微細加工技術を用いているので、多工程からなるデバイスアセンブリ、製造歩留まりなどの課題を抱え、素子ごとにおいて加工精度にともなう測定波長のばらつきの問題があり、生産性という点で問題があった。
本発明は上述の点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、良好な製造歩留まり且つ小型の光学系にて、流体物に含まれる特定成分を検出することができる分光式特定成分センサを提供することにある。
請求項1に記載の発明は、気体又は液体からなる流体物に含まれる特定成分を検出する分光式特定成分センサであって、ビーム光を出射する光源と、筒状に形成されその筒状内部が前記流体物の流路であり前記ビーム光が照射する検知管と、前記流路に対して前記光源の対岸側にあり前記ビーム光を反射させる光反射体と、前記流路に対して前記光源と同じ側にあり前記光反射体で反射された前記ビーム光を受光する受光器と、前記光源より前記光反射体を経由して前記受光器に至る光軸上に前記ビーム光を分光するフィルタ分光部とを備え、そのフィルタ分光部に、それぞれが前記光軸上に挿入するか否かを位置制御されるとともに異なる波長帯の光を透過させる光学多層膜フィルタを複数設けることを特徴とする。
この構造では、複数の光学多層膜フィルタをビーム光の光軸上に挿入できるように設け、光軸上に挿入される光学多層膜フィルタの組合せにより逐次複数の分光特性を測定することができるので、これら複数の分光特性により流体物に含まれる特定成分を小型の光学系にて検出することができる。また光反射体によりビーム光の流体物内における光路長を増大させることもできる。上記より、小型の分光式特定成分センサを実現することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記フィルタ分光部に電磁駆動により位置が変位するアーマチュアを複数設け、前記アーマチュアはそれぞれ異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを備えることを特徴とする。この構造では、電磁駆動により位置が変位するアーマチュアのそれぞれに光学多層膜フィルタを備えるので、小型で高速制御が容易なフィルタ分光部を構成することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記フィルタ分光部に前記光軸に略直交する回転軸を有し回転駆動する回転体を複数設け、前記回転体の回転角度により前記ビーム光の入射角度が可変し異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを前記回転体のそれぞれに備えることを特徴とする。この構造では、光学多層膜フィルタを備えた回転体の回転角度によりビーム光の入射角度が可変し光学多層膜フィルタの透過波長帯をシフトすることができるので、小型で高速制御が容易なフィルタ分光部を構成することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記フィルタ分光部に前記光軸に略平行する回転軸を有し回転駆動する回転体を複数設け、前記回転体の回転方向において膜厚が変化する傾斜厚み多層膜からなり異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを前記回転体のそれぞれに備える。この構造では、回転体の回転角度により前記光軸上に挿入される光学多層膜フィルタの膜厚が可変し光学多層膜フィルタの透過波長帯をシフトすることができるので、小型で高速制御が容易なフィルタ分光部を構成することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記フィルタ分光部に前記光軸と略直交する回転軸を有し回転駆動する機構と、回転角度検出部とを備え、前記機構上に異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを設けることを特徴とする。この構造では、ビーム光の光軸と垂直方向に回転軸を有し連続にて自転する光学多層膜フィルタを用いて、ビーム光の入射角を変化することで透過波長帯をシフトすることができるので、低コストで簡易な駆動系にて小型のフィルタ分光部を構成することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記受光器の受光素子は焦電素子であり、前記光学多層膜フィルタは、機械的駆動による前記光ビームに対するチョッパー機能を有することを特徴とする。焦電素子による受光検出は微分型であるので、本来ビーム光のチョッパーが必要であるが、この構造では、光学多層膜フィルタの機械的駆動をチョッパー機能として利用することができるので、チョッパーを不要にすることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記光反射体が金属膜及び保護膜からなり、その光反射体を少なくとも1面以上前記検知管外面に直接形成することを特徴とする。この構造では、直接検知管外面に光反射体を形成するので、部品点数を増やすことなく小型コンパクトな光学系のまま反射光路長を増加することができ、そして測定精度を向上させることができる。また保護膜を形成することで耐腐食性を確保することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記検知管断面に1つ又は複数の平面形状部を設け、前記平面形状部に前記光反射体を備えることを特徴とする。この構造では、光反射体が平面であるので、反射面においてビーム光径を変形することなく多重反射光学系を実現することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記検知管及び前記光反射体を曲面レンズ構造とすることを特徴とする。この構造では、検知管に入射するビーム光をレンズ効果にて拡大させ光反射体を介して出射部で集光させることで体積効果にて計測精度を向上させることができる。
本発明によれば、良好な製造歩留まり且つ小型の光学系にて、流体物に含まれる特定成分を検出することができる。
(実施形態1)
先ず、実施形態1の基本的な構成について図1又は図2を用いて説明する。
実施形態1の分光式特定成分センサは、気体又は液体などの透光性を有する流体物の分光特性を測定してその流体物の特定成分の有無又は量を検出するものであり、図1に示すように、ハウジング1内に、光源2と、検知管3と、光反射体4と、受光器5と、フィルタ分光部6と、分光特性測定制御部7と、特定成分判定部8とを備える。
光源2は、被検出物である流体物に照射するためのビーム光を出射する。光源2は、例えば、赤外LEDなどを用いる。光源2の波長領域は、例えば、赤外線の場合、780nm〜1mmである。
検知管3は筒状に形成される。検知管3の筒状内部は流体物の流路であり、その流体物にビーム光が照射される。
光反射体4は、検知対象の流体物の流路に対して光源2の対岸側となるように、検知管3に付帯又は近傍に設けられ、照射されたビーム光を反射する。つまり、光源2から検知管3に照射されたビーム光は、検知管3内の流体物の流路を透過した後に、光反射体4で反射し、再び流体物の流路を透過する。光反射体4は、例えば、金属膜、又は、金属膜と保護膜(例えば有機膜など)との組合せからなる。金属膜は、例えば、アルミ膜、金膜などを真空蒸着するか若しくはニッケルなどを無電解メッキして形成する。
受光器5は、検知対象の流体物の流路に対して光源2と同じ側にあり光反射体4で反射されたビーム光を受光する。受光器5には、受光素子として、例えばInGaAsPINフォトダイオードや微分型の検出素子の焦電素子などを用いる。
フィルタ分光部6は、光源2より光反射体4を経由して受光器5に至る光軸上に備えられる。図1では、光源2と検知管3との間に設けられている。フィルタ分光部6の内部は、図2(a)に示すように、複数の光学多層膜フィルタ60を設け、この光学多層膜フィルタ60の組合せによりビーム光を分光する。分光した光は、最終的には受光器5(図1参照)で受光される。また、フィルタ分光部6には、例えば、複数のアーマチュア61を設ける。
各光学多層膜フィルタ60は、所定のピーク波長を中心とするバンドパスフィルタであり、それぞれ異なる波長帯の光を透過させることができる。また、各光学多層膜フィルタ60は、それぞれがビーム光の光軸上に挿入するか否かの位置制御を可能とする。なお、ビーム光の光軸上に、光学多層膜フィルタ60をそれぞれの透過波長帯が重複しないような組合せで挿入した場合、ビーム光を全く透過させなくすることができるので、光学多層膜フィルタ60はビーム光に対するチョッパーとしての機能も備える。
各アーマチュア61は、それぞれが異なるピーク波長(λ1,λ2,λ3,λ4)を有する波長帯の光を透過させる光学多層膜フィルタ60(例えば4個)を備える。また、アーマチュア61は、例えば金属膜からなり、図2(c)に示すように、近傍にマグネット62を設けて電磁駆動により位置が変位する。すなわち、アーマチュア61は、マグネット62のオン又はオフなどで、図2(a)に示すように、光軸(図2(a)において左右方向)に対して垂直である駆動方向(図2(a)において上下方向)に位置が変位する。例えば、マグネット62がオフにすると、アーマチュア61上の光学多層膜フィルタ60は、上下方向の矢印のストローク分だけ移動し、ビーム光の光軸上に挿入される。
分光特性測定制御部7は、図1に示すように、所定の分光特性を得るために、フィルタ分光部6内の光学多層膜フィルタ60をそれぞれビーム光の光軸に挿入させるか否かを制御する。例えば、分光特性測定制御部7は、各アーマチュア61(図2(a)参照)の移動を制御して、光学多層膜フィルタ60のうちいくつかをビーム光の光軸上に挿入する。また、分光特性測定制御部7は、受光器5が測定した受光量を記憶する。
特定成分判定部8は、それぞれの光学多層膜フィルタ60の制御を変更して得られた複数の分光特性測定結果より流体物の特定成分の有無又は量を判定する。
次に、実施形態1の動作について説明する。光源2には赤外LED、受光器5にはInGaAsPINフォトダイオードを用いる。図2に示すように、アーマチュア61上の光学多層膜フィルタとしてバンドパスフィルタ60をビーム光の光軸(矢印方向)に沿って4個配置する。バンドパスフィルタ60のピーク波長はそれぞれ、1552.5nm、1551.7nm、1550.9nm、1550.1nmである。分光特性測定制御部7からの制御によりバンドパスフィルタ60のうち1つだけをビーム光の光軸上に挿入させる。
図1に示すように、光源2から出射したビーム光はフィルタ分光部6に入射する。ビーム光は上記のように設定したバンドパスフィルタ60を透過し検知管3に入射する。ビーム光は光反射体4で反射されて検知管3を出射し、受光器5により受光し、ビーム光の波長ごとの透過率を測定する。
図3は、それぞれのバンドパスフィルタ60のうち1個だけ光軸上に挿入されているときのビーム光の波長に対する透過率を測定したデータである。なお、透過率0dBとはバンドパスフィルタ60がないときの透過率に相当する。それぞれのバンドパスフィルタ60の透過率には、ピーク波長を中心とする透過波長帯が存在する。
被検出物の流体物を測定する場合は、分光特性測定制御部7(図1参照)により上記のような透過率の特性を持つバンドパスフィルタ60の組合せを1通り若しくは複数通り決定し、検知管3の内部に被検出物の流体物を導入し組合せごとの分光特性を測定し、特定成分判定部8(図1参照)により流体物の特定成分を判定する。
以上、実施形態1によれば、複数の光学多層膜フィルタ60をビーム光の光軸上に挿入できるように電磁駆動により位置が変位するアーマチュア61上に設け、光軸上に挿入される光学多層膜フィルタ60の組合せにより逐次複数の分光特性を測定することができるので、これら複数の分光特性により流体物に含まれる特定成分の有無又は量を、光軸と直交する面において小型になり且つ高速制御が容易なフィルタ分光部6で検出することができる。また光反射体4によりビーム光の流体物内における光路長を増大させることもできる。上記より、小型の分光式特定成分センサを実現することができる。
(実施形態2)
実施形態2は、ハウジング1内に、光源2と、検知管3と、光反射体4と、受光器5と、フィルタ分光部6と、分光特性測定制御部7と、特定成分判定部8とを備え、フィルタ分光部6に異なる波長帯の光を透過する光学多層膜フィルタ60を複数設ける点では実施形態1と同様であるが、実施形態1にはない以下に記載の特徴部分がある。図4に示すように、フィルタ分光部6に光軸と略直交する回転軸を有し回転駆動する機構と、回転角度検出部64とを備え、機構上に異なる波長帯の光を透過する光学多層膜フィルタ60を設ける。
実施形態2の回転駆動する機構は、後述するような回転角度検出機構を設けている。ビーム光の光軸に略直交する回転軸を有し、小型モータ640により回転駆動する。小型モータ640は、光学多層膜フィルタ60と同時にスリット板641も回転駆動させる。スリット板641は、例えば180度の関係で2つのスリット穴641aを有し、その近傍にはフォトカプラ642が配置されている。スリット板641が連続して回転駆動し、スリット穴641aがフォトカプラ642を通過したときに、図5に示すようなフォトカプラ信号を出力する。このフォトカプラ信号は予め設定された所定の回転角度のときに発生する。図5では、ビーム光の入射角度が0°の場合に測定するように設定している。スリット板641のスリット穴641aと光学多層膜フィルタ60との位置を調整することで、ビーム光の入射角度を変更することができる。
実施形態2の光学多層膜フィルタ60は、実施形態1と異なる点として、光学多層膜フィルタ60が、回転によりビーム光の入射角度が可変する膜である。入射光から斜め入射のとき光学特性が短波長側へシフトする現象を利用して任意の入射角度を設定する。光学多層膜フィルタ60の入射角度を制御すると、全くビーム光を透過することができなくなり、ビーム光に対するチョッパーとしての機能を有する。このように、ビーム光の入射角度が変わり干渉の光路差にて透過波長帯をシフトさせて透過波長微調整を行ったり、それ自体をビーム光学系から外すことができる。そして、上記のような光学多層膜フィルタ60を複数個配置することで幅広い波長域をカバーすることができる。
次に、実施形態2の連続自転するバンドパスフィルタ60を用いた分光計測設計の一例を示す。ビーム光の入射角度を変更すると、図6に示すように、各波長に対する透過率の特性が変化し、光学多層膜フィルタ60の透過スペクトルのバンドパス特性が低波長側へのシフトする。透過スペクトルのバンドパス特性が低波長側へのシフトする現象を示す。
被検出物の流体物を測定する場合は、図1に示す分光特性測定制御部7により上記のような透過率の特性を持つ光学多層膜フィルタ60の組合せを1通り若しくは複数通り決定し、検知管3の内部に被検出物の流体物を導入し組合せごとの分光特性を測定し、特定成分判定部8により流体物の特定成分を判定する。
以上、実施形態2によれば、ビーム光の光軸と略直交する回転軸にして連続自転する光学多層膜フィルタ60では回転角度によって、ビーム光の入射角度が変化し透過波長帯をシフトすることができるので、低コストで簡易な駆動系にて、光軸と直交する面において小型になり且つ高速制御が容易なフィルタ分光部6を構成することができる。
なお、実施形態2の変形例として、図7に示すように、フィルタ分光部6(図1参照)に、光軸と回転軸とが偏芯位置になるような回転体63を複数設け、回転体63の回転角度により前記ビーム光の入射角度が可変する光学多層膜フィルタ60を回転体63のそれぞれに備えてもよい。このような構成にすると、回転体63の回転角度によりビーム光の入射角度が可変し光学多層膜フィルタ60の透過波長帯をシフトすることができるので、光軸と直交する面において小型になり且つ高速制御が容易なフィルタ分光部6を構成することができる。
(実施形態3)
実施形態3は、ハウジング1内に、光源2と、検知管3と、光反射体4と、受光器5と、フィルタ分光部6と、分光特性測定制御部7と、特定成分判定部8とを備え、フィルタ分光部6に異なる波長帯の光を透過する光学多層膜フィルタ60を複数設ける点では実施形態1と同様であるが、実施形態1にはない以下に記載の特徴部分がある。図8に示すように、フィルタ分光部6(図1参照)に回転駆動する回転体63を複数設け、それぞれの回転体63に光学多層膜フィルタ60を備える。
実施形態3の回転体63は、図9に示すように、例えば、円盤状の基板からなり、後述するような回転角度検出機構を設けている。ビーム光の光軸に略平行する回転軸を有し、この回転軸は光軸からずれている。小型モータ640により回転駆動する。小型モータ640は、回転体63と同時にスリット板641も回転駆動させる。スリット板641は、例えば2つのスリット穴641aを180度の関係で設け、その近傍にはフォトカプラ642が配置されている。スリット板641が連続して回転駆動し、スリット穴641aがフォトカプラ642を通過したときに、フォトカプラ信号が発生する。このフォトカプラ信号は所定の回転角度のときに発生する。
実施形態3の光学多層膜フィルタ60は、実施形態1と異なる点として、図8に示すように、回転体63の回転方向において傾斜した膜厚分布を有するサーキュラタイプ多層膜からなり、この多層膜の厚みが可変すると透過波長帯はシフトする。上記より傾斜膜厚型の複数の光学多層膜フィルタ60では、回転体63の回転軸と光軸がずれているので、それぞれの光学多層膜フィルタ60の回転位置を独立に変化させることで、膜厚が変化して任意の波長光のみを透過させることができる。なお、光学多層膜フィルタ60を使用しないときは、回転体63を回転駆動させて回転位置を膜未形成部63aに設定すると全波長域のビーム光が透過する。
また、実施形態3では、受光器5(図1参照)の受光素子(図示せず)に焦電素子を用いる。焦電素子は微分型の検出素子であるので、パルス状のビーム光を必要とする。そこで、光学多層膜フィルタ60の機械的駆動によりビーム光の透過を制御して、光学多層膜フィルタ60をビーム光のチョッパーとして用いている。
次に、実施形態3の傾斜膜厚型の光学多層膜フィルタ60を用いた分光計測設計の一例を示す。光学多層膜フィルタ60の回転位置を変えると、図10に示すように、各波長に対する透過率の特性が変化し、膜厚が厚いほど光学多層膜フィルタ60の透過波長帯は低波長側へシフトする。
被検出物の流体物を測定する場合は、図1に示す分光特性測定制御部7により上記のような透過率の特性を持つ光学多層膜フィルタ60の組合せを1通り若しくは複数通り決定し、検知管3の内部に被検出物の流体物を導入し組合せごとの分光特性を測定し、特定成分判定部8により流体物の特定成分を判定する。
以上、実施形態3によれば、回転体63の回転位置により光学多層膜フィルタ60の透過波長帯をシフトすることができるので、光軸と直交する面において小型になり且つ高速制御が容易なフィルタ分光部6を構成することができる。
また、受光器5に焦電素子(図示せず)を用いても、光学多層膜フィルタ60の機械的駆動をチョッパー機能として利用することができるので、チョッパーを不要にすることができる。
(実施形態4)
実施形態4は、ハウジング1内に、光源2と、検知管3と、光反射体4と、受光器5と、フィルタ分光部6と、分光特性測定制御部7と、特定成分判定部8とを備え、フィルタ分光部6に異なる波長帯の光を透過する光学多層膜フィルタ60を複数設ける点では実施形態1と同様であるが、実施形態1にはない以下に記載の特徴部分がある。図11に示すように、金属膜及び保護膜からなる光反射体4を検知管3の外面に直接備え、検知管3と一体化する。例えば、検知管3のサファイアパイプ外面の一部に金膜を蒸着してさらに有機系保護膜を被うようにコートする。
また、メタンや一酸化炭素を含む炭化水素系など炭素成分を含有する有機ガス、水蒸気などは近赤外線あるいは中赤外線域にその分子構造に起因する波長吸収域がある特定ガスのセンサとして応用することを特徴とする。
図12,13に、被検知物である流体物のガスとして都市ガス(主成分がメタンである。)と一酸化炭素をそれぞれ検知管3内に導入したときの光量を示す。これらの図より、それぞれの気体ごとに波長依存性が異なるので、実施形態4がガスセンサーとして機能するといえる。
以上、実施形態4によれば、光反射体4は直接検知管3外面に金属膜として形成されるので、部品点数を増やすことなく小型コンパクトな光学系のまま反射光路長を増加することができ、そして測定精度を向上させることができる。また、金属膜の上に有機保護膜を形成することで、耐腐食性を確保することができる。
さらに、炭化水素系など炭素成分を含有する有機ガス、水蒸気などのガスセンサーとしての応用が可能であり、小型コンパクトなガス検知器を実現することができる。
なお、実施形態4の変形例として、図14に示すように、金属膜からなる光反射体4を1面のみ設けてもよい。
実施形態4の他の変形例として、図15に示すように、複数の光反射体4を設けてもよい。このような構成では、多重反射光路となり、複数の光反射体4の部品点数を増やすことなく、さらに反射光路長を大幅に増加させることができる。
また、実施形態4の他の変形例として、図16に示すように、流路方向を軸として正反射面金属膜など鏡面反射する光反射体4を螺旋状に検知管3の外面に複数設けてもよい。このような構成は、流路方向に多重反射光路となるので、検知管3内の反射光路長を大幅に増大させて計測精度を向上させることができる。
さらに、実施形態4の他の変形例として、図17に示すように、検知管3の光学測定部形状を球形状として、外面の粗面化を行い、その後金属膜など乱反射する光反射体4を球面上に設けてもよい。このように乱反射することで、検知管3内の複数の多重反射光学系により光路長を増大させ計測精度を向上させることができる。
(実施形態5)
実施形態5は、ハウジング1内に、光源2と、検知管3と、光反射体4と、受光器5と、フィルタ分光部6と、分光特性測定制御部7と、特定成分判定部8とを備え、フィルタ分光部6に異なる波長帯の光を透過する光学多層膜フィルタ60を複数設ける点では実施形態1と同様であるが、実施形態1にはない以下に記載の特徴部分がある。図18に示すように、検知管3断面に平面形状部30を2つ設け、それぞれの平面形状部30は内側の平面部に光反射体4を備える。
検知管3内のビーム光の光路は、矢印のように、それぞれの平面形状部30の光反射体4により順に反射される。また、ビーム光は平面部で反射されるのでビーム光径が変形することがない。
以上、実施形態5によれば、光反射体4が平面であるので、反射面においてビーム光径を変形することなく多重反射光学系を実現し、光路長を増加させて測定精度を向上させることができる。
なお、実施形態5の変形例として、平面形状部30を3つ以上設けてもよい。このような構成では、さらに光路長を増加させることができ測定精度を向上させることができる。
また、実施形態5の他の変形例として、平面形状部30を1つのみ設けてもよい。このような構成でも、ビーム光径の変形を防ぐことができる。
(実施形態6)
実施形態6は、ハウジング1内に、光源2と、検知管3と、光反射体4と、受光器5と、フィルタ分光部6と、分光特性測定制御部7と、特定成分判定部8とを備え、フィルタ分光部6に異なる波長帯の光を透過する光学多層膜フィルタ60を複数設ける点では実施形態1と同様であるが、実施形態1にはない以下に記載の特徴部分がある。図19に示すように、検知部3のビーム光が入射部に入射部レンズ31aを、出射部に出射部レンズ31bを設け、検知管3及び光反射体4を曲面レンズ構造とする。
光源2からのビーム光は、先ず入射部レンズ31aによりビーム径が拡大する。次に、ビーム径が拡大したビーム光は検知管3内を透過し光反射体4で反射する。そして、光反射体4からの反射光は出射部レンズ31bに集光、コリメートされ平行光となる。
以上、実施形態6によれば、検知管3に入射するビーム光をレンズ効果にて拡大させ光反射体4を介して出射部で集光させることで体積効果にて計測精度を向上させることができる。
本発明による実施形態1の分光式特定成分センサの構成図である。 同上の光学多層膜フィルタの構成図であって、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は(b)のA’〜Aの断面図である。 同上の各バンドパスフィルタの透過率を示す図である。 本発明による実施形態2の分光式特定成分センサにおける光学多層膜フィルタの構成図であって、(a)は上面図、(b)は断面図、(c)はスリット板を示す図ある。 同上の測定タイミングを示す図である。 同上のレーザ光の入射角度に対する透過率を示す図である。 同上の光学多層膜フィルタの変形例を示す図である。 本発明による実施形態3の分光式特定成分センサにおける光学多層膜フィルタの構成図である。 同上の光学多層膜フィルタの側面図である。 同上の光学多層膜フィルタの回転角度に対する透過率を示す図である。 本発明による実施形態4の分光式特定成分センサにおける光反射体の設置図である。 同上を用いて都市ガス(メタン)を測定したときの結果を示す図である。 同上を用いて一酸化炭素ガスを測定したときの結果を示す図である。 同上の光反射体の変形例を示す図である。 同上の複数の光反射体を示す図である。 同上の螺旋状に設けられる光反射体を示す図である。 同上の乱反射する光反射体の設置図である。 本発明による実施形態5の分光式特定成分センサにおける光反射体の設置図である。 本発明による実施形態6の分光式特定成分センサにおける光反射体の設置図である。
符号の説明
1 ハウジング
2 光源
3 検知管
4 光反射体
5 受光器
6 フィルタ分光部
60 光学多層膜フィルタ
7 分光特性測定制御部
8 特定成分判定部

Claims (9)

  1. 気体又は液体からなる流体物に含まれる特定成分を検出する分光式特定成分センサであって、
    ビーム光を出射する光源と、
    筒状に形成されその筒状内部が前記流体物の流路であり前記ビーム光が照射する検知管と、
    前記流路に対して前記光源の対岸側にあり前記ビーム光を反射させる光反射体と、
    前記流路に対して前記光源と同じ側にあり前記光反射体で反射された前記ビーム光を受光する受光器と、
    前記光源より前記光反射体を経由して前記受光器に至る光軸上に前記ビーム光を分光するフィルタ分光部とを備え、
    そのフィルタ分光部に、それぞれが前記光軸上に挿入するか否かを位置制御されるとともに異なる波長帯の光を透過させる光学多層膜フィルタを複数設けることを特徴とする分光式特定成分センサ。
  2. 前記フィルタ分光部に電磁駆動により位置が変位するアーマチュアを複数設け、
    前記アーマチュアはそれぞれ異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを備えることを特徴とする請求項1記載の分光式特定成分センサ。
  3. 前記フィルタ分光部に前記光軸に略直交する回転軸を有し回転駆動する回転体を複数設け、
    前記回転体の回転角度により前記ビーム光の入射角度が可変し異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを前記回転体のそれぞれに備えることを特徴とする請求項1記載の分光式特定成分センサ。
  4. 前記フィルタ分光部に前記光軸に略平行する回転軸を有し回転駆動する回転体を複数設け、
    前記回転体の回転方向において膜厚が変化する傾斜厚み多層膜からなり異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを前記回転体のそれぞれに備えることを特徴とする請求項1記載の分光式特定成分センサ。
  5. 前記フィルタ分光部に前記光軸と略直交する回転軸を有し回転駆動する機構と、
    回転角度検出部とを備え、
    前記機構上に異なる波長帯の光を透過する前記光学多層膜フィルタを設けることを特徴とする請求項1記載の分光式特定成分センサ。
  6. 前記受光器の受光素子は焦電素子であり、前記光学多層膜フィルタは、機械的駆動による前記光ビームに対するチョッパー機能を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の分光式特定成分センサ。
  7. 前記光反射体が金属膜及び保護膜からなり、その光反射体を少なくとも1面以上前記検知管外面に直接形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の分光式特定成分センサ。
  8. 前記検知管断面に1つ又は複数の平面形状部を設け、
    前記平面形状部に前記光反射体を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の分光式特定成分センサ。
  9. 前記検知管及び前記光反射体を曲面レンズ構造とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の分光式特定成分センサ。
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