JP2005155768A - ボルト - Google Patents

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岳彦 寺田
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Abstract

【課題】 鋼構造物の組立および解体時の施工性に優れ、且つ、周辺環境にも影響を与えないボルトを提供する。
【解決手段】 先端部に雄ねじ部5を有する軸部9と、軸部9の基端部に、軸部9より大きな径の六角形断面の頭部6とを備え、軸部9の先端面には、ナットの締め付けおよび取り外しの際の反力受けとなる、軸部9より小さな径の六角形断面の把持部4が形成された高力ボルトである。
【選択図】 図1

Description

本発明はボルトに関する。
鋼構造物の接合方法は、溶接とボルト接合が一般的であるが、溶接にしろ、ボルト接合にしろ、解体時の施工性は考慮されていない。例えば、特許文献1や特許文献2では、専用工具によってのみボルトを締め付けたり、緩めたりすることができるボルトおよびナットが考案されているが、容易にナットを取外せないようにすることに重点がおかれ、ボルトを緩める際の施工性には配慮されていない。
一度締め付けられたボルトを緩めるのは結構大変であり、特に、径が大きな高力ボルトの場合には、作業員が手で緩めるのは困難なため、インパクトレンチを使うケースが多い。しかし、高力ボルトをインパクトレンチで緩めるには多数回の打撃が必要であり、かなりの騒音と振動が発生する。そして、このことが作業員の健康障害や環境公害の一因ともなっている。
また、ナットを廻してボルトを緩める際に、ボルトがとも廻りするおそれもある。ボルトがとも廻りした場合、六角ボルトであれば、ボルトの頭部をレンチで固定すれば緩めることは可能であるが、高力ボルトの大半を占めるトルシアボルトは頭部の形状が丸型であるため、ボルトがとも廻りすると、とも廻りを防ぐのは殆ど不可能である。
その結果、鋼構造物の解体では、部材がボルト接合されていても、殆どガス切断によって解体されている。ガス切断を用いた場合、部材には損傷が生じるため、解体現場から排出される鋼材は、再度溶解して新たな鋼材として再利用されることが多い。
特開平11−351219号公報 (第2−4頁、第2図) 特開平11−325040号公報 (第2−3頁、第2図)
しかしながら、鋼材の溶解による再利用は、エネルギー消費とCOの発生を伴うため、地球環境に多くの負荷を課している。一方、近年の地球環境問題への配慮から、鋼構造物解体時に排出される鋼材の再利用に当たっては、一度溶解(リサイクル)させるのではなく、部材のまま再利用(リユース)しようとする動きがある。
ボルト接合の場合は、ナットを取り外すことができれば部材が損傷せず、部材としてそのまま再利用が可能となる。しかし、従来のボルト接合は、先に述べたように解体時の施工性が考慮されていない。特許文献1に記載のトルシアボルトに関する発明では、専用工具を用いてピンテールを逆回転させることによってナットを緩めることができるとされているが、ボルトの締め付けによりピンテールが破断した後は、ボルトを緩めることは不可能である。この点に関し、同文献では、締め付けトルクが一定値以上になった時点で専用工具を作動停止し、ピンテールを切断せずにナットを締め付けることができるとしている。しかし、ボルトとピンテール間のノッチ部には、ボルト締め付け時に大きな応力集中が起きるため、ピンテールは非常に破断しやすくなっており、ナットを緩める際の反力に耐えきれるものではない。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、鋼構造物の組立および解体時の施工性に優れ、且つ、周辺環境にも影響を与えないボルトを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るボルトでは、少なくとも先端部に形成されたねじ部を有する円柱状の軸部と、当該軸部の基端部に形成され、当該軸部より大きな径を有する頭部とを備えるボルトにおいて、前記ねじ部に螺合するナットの締め付けおよび取り外しの際の反力受けとなる、前記軸部より小さな径を有する把持部が、前記軸部の先端面に形成されていることを特徴とする。
本発明では、軸部先端の把持部を反力受けとしてボルトを緩めることができるため、ボルトがとも廻りせず、確実にボルトを緩めることができる。
また、本発明では、常に片側からの作業が可能であるため、作業員一人でボルトの締め付けおよび取り外しを行うことができる。
さらに、本発明では、後述するアウタースリーブとインナースリーブからなる電動スリーブを使用すれば、ナットの締め付けおよび取り外しが静的に行えるため、騒音および振動が発生しない。その結果、環境公害が生じることもない。
また、本発明に係るボルトでは、少なくとも先端部に形成されたねじ部を有する円柱状の軸部と、当該軸部の基端部に形成され、前記軸部より大きな径を有する頭部と、ノッチ部を有し、前記軸部の先端面に当該ノッチ部を介して形成されたピンテールとを備え、前記ねじ部に螺合するナットの締め付け反力を前記ピンテールにとり、前記ピンテールが前記ノッチ部で破断するまで締め付けて使用されるボルト(いわゆるトルシアボルト)において、前記ナットの取り外しの際の反力受けとなる、前記軸部より小さな径を有する把持部が、前記軸部の先端面と前記ノッチ部の基端面との間に形成されていることを特徴とする。
本発明では、トルシアボルトのねじ部とノッチ部との間に、ナット取り外しの際の反力受けとなる把持部を設けることにより、殆ど不可能であったトルシアボルトの取り外しを容易に行うことができる。
本発明によれば、ボルト軸部の先端面に、ナットの締め付けおよび取り外しの際の反力受けとなる把持部を設けることにより、鋼構造物の組立および解体時の施工性に優れ、且つ、周辺環境にも影響を与えないボルトを実現することができる。
また、本発明によれば、トルシアボルトのねじ部とノッチ部との間に、ナット取り外しの際の反力受けとなる把持部を設けることにより、殆ど不可能であったトルシアボルトの取り外しを容易に行うことができる。
以下、本発明に係るボルトの実施形態について、図面に基いて説明する。
図1は、本発明に係るボルトの第一の実施形態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態によるボルト1は、先端部に雄ねじ部5を有する軸部9と、軸部9の基端部に、軸部9より大きな径の六角形断面の頭部6とを備え、軸部9の先端面には、ナットの締め付けおよび取り外しの際の反力受けとなる、軸部9より小さな径の六角形断面の把持部4が形成された高力ボルトである。
次に、本発明に係るボルトを締め付ける方法および緩める方法について説明する。
図2は、本発明に係るボルトを締め付ける方法および緩める方法を示す説明図である。ここで、符号40は、本発明に係るボルトを締め付けたり、緩めたりするための電動スリーブであり、ナット2に嵌合するアウタースリーブ41と、把持部4に嵌合するインナースリーブ42とを備える。アウタースリーブ41とインナースリーブ42とは、図示しない遊星歯車機構などにより相対的に反対方向に回転させられるような構造になっている。
被締結部材50と被締結部材51を本実施形態によるボルト1で締め付ける場合、先ず、ボルト1の軸部9に座金3を挿入し、被締結部材50と被締結部材51を貫通するように設けられた孔32にボルト1を挿入する。そして、ボルト1の軸部9に別の座金3を挿入した後、ボルト1の雄ねじ部5にナット2を螺合する。
次に、電動スリーブ40のアウタースリーブ41とインナースリーブ42をそれぞれナット2と把持部4に嵌合させた後、電動スリーブ40のスイッチを入れてアウタースリーブ41とインナースリーブ42をそれぞれ反対方向に回転させてボルト1とナット2の締め付けを行う。そして、ボルト接合部に所定のトルクが導入された時点で、ボルト1およびナット2の回転は停止する。
一方、ボルト1を緩める場合は、電動スリーブ40のアウタースリーブ41とインナースリーブ42をそれぞれナット2と把持部4に嵌合させた後、電動スリーブ40のスイッチを入れてアウタースリーブ41とインナースリーブ42をそれぞれ締め付け時と逆方向に回転させてボルト1とナット2を緩めるものである。
なお、本発明に係るボルトは、電動スリーブ40を用いなくとも、スパナなどの工具を用いて、締め付けたり、緩めたりすることが可能である。
本実施形態によるボルト1では、軸部9先端の把持部4を反力受けとしてボルト1を緩めることができるため、ボルトがとも廻りせず、確実にボルトを緩めることができる。
また、本実施形態によるボルト1では、常に片側からの作業が可能であるため、作業員一人でボルトの締め付けおよび取り外しを行うことができる。
さらに、本実施形態によるボルト1では、電動スリーブ40使用に際し、アウタースリーブ41とインナースリーブ42が回転するだけであり、騒音および振動が発生しない。その結果、環境公害が生じることもない。
図3は、本発明に係るボルトの第二の実施形態を示す図である。
図3に示すように、本実施形態によるボルト11は、ボルト11を緩めるときの反力受けとなる、軸部19より小さな径の六角形断面の把持部14を、軸部19の先端面とピンテール17の基端面との間に設けたトルシアボルトである。
ボルト頭部16の形状は、受圧面積を増加させるために丸型になっている。そのため、使用に当たっては、頭部側の座金を省略することができる。
また、ピンテール17は、把持部14より小さな径の六角形断面をしており、ピンテール17の基端部の外周面には、V字状のノッチ18が形成されている。
本実施形態によるボルト11の締め付けは、トルシアボルト締め付け用の工具を用いて行う。即ち、アウタースリーブとインナースリーブを備えるトルシアボルト締め付け用の工具(図示省略)を使用し、アウタースリーブとインナースリーブをそれぞれナット2とピンテール17に嵌合させた後、アウタースリーブとインナースリーブをそれぞれ反対方向に回転させ、ピンテール17がノッチ18で破断するまで締め付けを行う。
一方、ボルト11を緩める場合は、第一の実施形態と同様に、電動スリーブ40のアウタースリーブ41とインナースリーブ42をそれぞれナット2と把持部14に嵌合させた後、アウタースリーブ41とインナースリーブ42をそれぞれ締め付け時と逆方向に回転させて緩めるものである。
本実施形態によるボルト11では、トルシアボルトの軸部19先端面とピンテール17の基端面との間に、ナット2の取り外しの際の反力受けとなる把持部14を設けることにより、殆ど不可能であったトルシアボルトの取り外しを容易に行うことができる。
図4は、本発明に係るボルトの第三の実施形態を示す図である。
図4に示すように、本実施形態によるボルト21は、第二の実施形態におけるトルシアボルトにおいて、把持部24の断面形状をピンテール27の断面形状と同じにしたものである。
本実施形態によるボルト21では、把持部24の断面形状とピンテール27の断面形状が同じであるため、ボルトの締め付けと取り外しを同一の工具を用いて行うことができる。
図5は、本発明に係るボルトの第四の実施形態を示す図である。
図5に示すように、本実施形態によるボルト31は、第一の実施形態のボルトにおいて、ボルト頭部36の形状を、受圧面積を増加させるために丸型としている。
本実施形態によるボルト31では、ボルト頭部36の形状を丸型とし、受圧面積を増加させているため、使用に当たって頭部側の座金を省略することができる。
以上、本発明に係るボルトの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、把持部の断面が六角形をしているが、本発明では、インナースリーブと把持部が嵌合して反力が取れればよく、把持部の断面形状は、他の多角形や楕円形でもよい。また、上記実施形態では、高力ボルトを対象としたが、本発明が普通ボルトにも適用できることは言うまでもない。
本発明に係るボルトの第一の実施形態を示し、(a)はその平面図、(b)はその立面図である。 本発明に係るボルトを締め付ける方法および緩める方法を示す説明図である。 本発明に係るボルトの第二の実施形態を示し、(a)はその平面図、(b)はその立面図である。 本発明に係るボルトの第三の実施形態を示し、(a)はその平面図、(b)はその立面図である。 本発明に係るボルトの第四の実施形態を示し、(a)はその平面図、(b)はその立面図である。
符号の説明
1、11、21、31 ボルト
2 ナット
3 座金
4、14、24、34 把持部
5、15、25、35 雄ねじ部
6、16、26、36 ボルト頭部
17、27 ピンテール
18、28 ノッチ
9、19、29、39 軸部
40 電動スリーブ
41 アウタースリーブ
42 インナースリーブ
50、51 被締結部材
32 孔

Claims (2)

  1. 少なくとも先端部に形成されたねじ部を有する円柱状の軸部と、当該軸部の基端部に形成され、当該軸部より大きな径を有する頭部とを備えるボルトにおいて、
    前記ねじ部に螺合するナットの締め付けおよび取り外しの際の反力受けとなる、前記軸部より小さな径を有する把持部が、前記軸部の先端面に形成されていることを特徴とするボルト。
  2. 少なくとも先端部に形成されたねじ部を有する円柱状の軸部と、当該軸部の基端部に形成され、前記軸部より大きな径を有する頭部と、ノッチ部を有し、前記軸部の先端面に当該ノッチ部を介して形成されたピンテールとを備え、前記ねじ部に螺合するナットの締め付け反力を前記ピンテールにとり、前記ピンテールが前記ノッチ部で破断するまで締め付けて使用されるボルトにおいて、
    前記ナットの取り外しの際の反力受けとなる、前記軸部より小さな径を有する把持部が、前記軸部の先端面と前記ノッチ部の基端面との間に形成されていることを特徴とするボルト。
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