JP2005155341A - 内燃機関用ピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】 上部及び下部スカートを有する内燃機関用ピストンにおいて、各スカートのおかれる環境(物理的条件)が異なることを考慮したピストンが提供される。
【解決手段】 有蓋円筒状のピストン上部体3の外周部の少なくとも一部においてピストン頂面7とは反対側に向かって延設される上部スカート5a、5bと、上記ピストン上部体3の中心軸線に沿った方向に関して上記上部スカート5a、5bよりも上記ピストン頂面7から離れた位置に設けられる下部スカート8a及び9a、8b及び9bと、を有する内燃機関用ピストンであって、上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bは、同下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面(すなわち摺動面)の少なくとも一部が上記ピストン上部体3の外周面を同ピストン上部体外周面に沿って延長した面よりもピストン径方向外方に位置するように構成されている、内燃機関用ピストンを提供する。
【選択図】 図3

Description

本発明は内燃機関用ピストンに関する。
内燃機関用ピストンとして、外周部にリング溝を有する有蓋円筒状のピストン上部体の下側の形状を骨格構造とし、軽量化及びスカートの摺動面面積の減少を図った、いわゆるスケルトン型ピストンが公知である。そして、このようなスケルトン型ピストンには、スカートがピストン頂面側の上部スカートとクランク軸側の下部スカートとに分割されたものが知られている。
例えば特許文献1には、上部スカートと下部スカートとを有し、更にこれらの間に中間スカートを設けた構成が開示されている。この中間スカートは、中間スカートとシリンダボア内面とのクリアランスが上部及び下部スカートとシリンダボア内面とのクリアランスよりも大きくなるように構成されており、中間スカートがシリンダボア内面と接触しないようにされている。特許文献1に記載されたこのピストンは、このような構成によってフリクションの増加を回避した上で中間スカートの上面側にオイルを滞留させ、それによって上部及び下部スカートとシリンダボア内面との潤滑を良好にしようとするものである。
特開平8−200150公報
ところで、内燃機関が運転されると燃焼室内の燃焼によってピストンが昇温され、これによってピストンが熱膨張する。そのため、常温でのピストンの形状は上記熱膨張を考慮した形状としておくことが望ましい。このような理由から、例えば、ピストンを頂面側から見た場合、通常、スラスト側−反スラスト側の方向を長軸、ピン穴の軸線方向を短軸とした楕円形状となっている。これは、冷却水経路との関係で通常はシリンダボア間の温度が高くなるので、それに対応するピストンのピン穴軸線方向で熱膨張量が大きくなるためである。
一方、ピストンのスカート部に関しては、通常、燃焼室に近い側、すなわちピストン頂面側で温度が高くなり、燃焼室から遠い側、すなわちクランク軸側で温度が低くなる。そしてこの温度差は、上述したような上下に分割されたスカートを有するピストンにおいては更に大きくなると考えられる。すなわち、下部スカートはピストン頂面側と分断されているため、上部スカートと下部スカートとの温度差は相当大きくなると考えられるのである。
ところが、上述したような上下に分割されたスカートを有するピストンにおいては従来、上部スカートと下部スカートがほぼ同一の外径(もしくは外周面形状)で構成されている。そのため、下部スカートでは上部スカートに比べて熱膨張量が少なく、シリンダボア内面とのクリアランスが大きくなり過ぎ、例えば、膨張量が少ないために下部スカートとシリンダボア内面との接触面積が小さくなり、結果として面圧が増大して摩耗が増加することが考えられる。
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、その目的は、上部スカートと下部スカートとを有する構成の内燃機関用ピストンにおいて、各スカートのおかれる環境(物理的条件)が異なることを考慮した内燃機関用ピストンを提供することである。
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された内燃機関用ピストンを提供する。
請求項1に記載の発明は、有蓋円筒状のピストン上部体の外周部の少なくとも一部においてピストン頂面とは反対側に向かって延設される上部スカートと、上記ピストン上部体の中心軸線に沿った方向に関して上記上部スカートよりも上記ピストン頂面から離れた位置に設けられる下部スカートと、を有する内燃機関用ピストンであって、上記下部スカートは、該下部スカートの外周面の少なくとも一部が上記ピストン上部体の外周面を該ピストン上部体外周面に沿って延長した面よりもピストン径方向外方に位置するように構成されている、内燃機関用ピストンを提供する。
内燃機関が運転されると燃焼室内の燃焼によってピストン全体が昇温されるが、上記のような上部スカートと下部スカートとを比較すると、燃焼室に近い上部スカートの方が燃焼室から遠い下部スカートよりも高温になる。そしてその結果、上部スカートの方が下部スカートよりも熱膨張の度合が大きくなる。
請求項1に記載の発明によれば、上記下部スカートは、同下部スカートの外周面の少なくとも一部が上記ピストン上部体の外周面を同ピストン上部体外周面に沿って延長した面よりもピストン径方向外方に位置するように構成されている。そしてこのようにすることにより、各スカートがその温度変化に応じて熱膨張した際に、シリンダボア内面とのクリアランスを上下両方のスカートについてほぼ同じにすることができる。そしてその結果、ピストン全体の姿勢が良好に保持され、オイル消費量の低減、摩耗の低減、並びに燃費の改善等を図ることができる。
請求項2に記載の発明では請求項1に記載の発明において、上記下部スカートの外周面の曲率を、対応するシリンダボア内面の曲率よりも大きくしている。
請求項2に記載の発明のようにすると、ピストン揺動の際等に下部スカートの周方向端部がシリンダボア内面と局部接触することがなくなるので、焼付きの発生を抑制することができる。また、下部スカートとシリンダボア内面とのクリアランスが下部スカートの周方向中央部に向かって次第に狭くなるように形成されるので、オイルスクイーズ作用が生じ、摩耗の低減及び騒音の抑制等を図ることができる。
請求項3に記載の発明では請求項1に記載の発明において、上記上部スカートの外周面が上記下部スカートの外周面よりも硬質な表面性状を有するように構成される。
上述したように内燃機関が運転されている状態において、上部スカートと下部スカートとを比較すると、上部スカートの方が下部スカートよりも高温になり、上部スカートの方が下部スカートよりも熱膨張する度合が大きくなる。また、上部スカートには下部スカートよりも大きなスラスト荷重がかかる。その結果、上部スカートでは高温・高面圧となり、下部スカートでは上部スカートよりも低温・低面圧となる。
請求項3に記載の発明によれば、上記上部スカートの外周面が上記下部スカートの外周面よりも硬質な表面性状を有するように構成される。一般に硬質な表面性状を有している場合、高温・高面圧下で摩擦係数が小さくなる。その一方、より軟質な表面性状を有していれば、より低温・低面圧下で摩擦係数が小さくなる。したがって、請求項3に記載の発明のようにすれば、各スカートのおかれる環境(物理的条件)において摩擦係数の小さくなる表面性状とすることができ、スカートの摺動面全体についての摩擦を小さくすることが可能となる。そしてその結果、摩耗の低減及び燃費の向上を図ることができる。また特に、境界潤滑となる場合、すなわち低回転でオイル量の少ない場合や高回転・高負荷の場合の潤滑改善が図れるので、このような場合の燃費改善及び出力向上が期待できる。
請求項4に記載の発明では請求項3に記載の発明において、上記上部スカートの外周面が二硫化モリブデンまたはダイヤモンド・ライク・カーボンによってコーティングされており、上記下部スカートの外周面がポリテトラフルオロエチレンまたはグラファイトによってコーティングされている。
請求項4に記載の発明によっても、請求項3に記載の発明とほぼ同様の作用及び効果を得ることができる。
請求項5に記載の発明では請求項1に記載の発明において、上記上部スカートの外周面にはオイル保持手段が設けられており、上記下部スカートの外周面にはオイル保持手段が設けられていないか、もしくは、上記上部スカート外周面に設けられたオイル保持手段よりも少量のオイルを保持するようにしたオイル保持手段が設けられている。
上述したように内燃機関が運転されている状態においては、上部スカートで高温・高面圧となり、下部スカートでは上部スカートよりも低温・低面圧となる。請求項5に記載の発明のようにすると、より高温・高面圧となる上部スカートにおいてより多くのオイルが保持され、摩擦及び摩耗の低減が図られる。一方、下部スカートにはより少量のオイルが保持されるので、上部スカートよりも低温であってもオイル温度が充分に上昇せしめられ、摩擦の低減を図ることができる。すなわち、請求項5に記載の発明によれば、それぞれのスカートに対して、各スカートのおかれる環境(物理的条件)で適切な量のオイルを保持させることができ、スカートの摺動面全体についての摩擦及び摩耗の低減を図ることができる。
請求項6に記載の発明では請求項5に記載の発明において、上記上部スカートの外周面には複数の条痕が設けられており、上記下部スカートの外周面には条痕が設けられていないか、もしくは、上記上部スカート外周面に設けられた条痕よりも深さの浅い条痕が上記上部スカート外周面に設けられた条痕の間隔よりも狭い間隔で設けられている。
請求項6に記載の発明によっても、請求項5に記載の発明とほぼ同様の作用及び効果を得ることができる。
各請求項に記載の発明によれば、上部スカートと下部スカートとを有する構成の内燃機関用ピストンにおいて、各スカートのおかれる環境(物理的条件)が異なることを考慮した内燃機関用ピストンが提供される。これによりに各スカートのおかれる環境(物理的条件)が異なることに起因して生ずる不都合を回避することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照番号を付す。
図1は本発明の一実施形態の内燃機関用ピストン10のスラスト側から見た場合の側面図であり、図2は図1の場合から周方向に90°ずれた方向、すなわち、ピストンピン(図示なし)を挿入するピン穴11の軸線方向に見た場合の側面図である。また、図3は、ピストン10を図1及び図2における下方から見た場合の図である。なお、ここでスラスト側とは内燃機関の膨張行程において最も大きなスラスト力の加わる側を意味し、その反対側は反スラスト側と称する。通常、上記ピン穴11の開口側から90°をなす側がスラスト側及び反スラスト側に該当し、より詳細には、そのうちの内燃機関の膨張行程においてコンロッドが傾く側が反スラスト側であり、他方がスラスト側である。
図1から図3に示したようにピストン10は、外周部にリング溝1を有する有蓋円筒状のピストン上部体3の下側の形状を骨格構造とした、いわゆるスケルトン型ピストンである。そして、本実施形態のピストン10においては、上部スカート5a、5bが、ピストン上部体3の外周部のスラスト側と反スラスト側においてピストン頂面7とは反対側に向かって延設されている。本実施形態のピストン10においては、二つの上部スカート5a、5bは、その外周面(すなわち、シリンダボア内面との摺動面)の面積が同じになるように構成されている。
また、本実施形態のピストン10においては、上記上部スカート5a、5bとは周方向にずれた位置(より具体的には各上部スカート5a、5bの周方向両側の位置)であって上記ピストン上部体3の中心軸線Xに沿った方向に関しては上記上部スカート5a、5bよりも上記ピストン頂面7から離れた位置に下部スカート8a及び9a、8b及び9bが設けられている。これら下部スカート8a及び9a、8b及び9bは、図2及び図3に示されているように、ピンボス13から延設される支持部15a及び16a、15b及び16bによって支持されている。
そして、より詳細には、上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bは、図3に最もわかり易く示されているように、下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面(すなわち、シリンダボア内面との摺動面)が上記ピストン上部体3の外周面を同ピストン上部体外周面に沿って延長した面よりもピストン径方向外方に位置するように構成されている。なお、このことは、ピストン上部体3の外周面はピストン頂面7側から見た場合(もしくは図3のように下方から見た場合)にはほぼ円形であると考える(厳密には、スラスト側−反スラスト側の方向の外径(長軸)がピン穴11の軸線方向の外径(短軸)よりも僅かに長い楕円形状となっている)と、上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外径を上記上部スカート5a、5bの外径よりも大きくしていると言い換えることもできる。
そしてこのような構成とすることで、内燃機関の運転中においてシリンダボア内面とのクリアランスを上部及び下部の両スカートについてほぼ同じにすることが可能となる。すなわち、内燃機関が運転されると燃焼室内の燃焼によってピストン全体が昇温されるが、上記のような上部スカート5a、5bと下部スカート8a及び9a、8b及び9bとを比較すると、燃焼室に近い上部スカート5a、5bの方が燃焼室から遠い下部スカート8a及び9a、8b及び9bよりも高温になる。そしてその結果、上部スカート5a、5bの方が下部スカート8a及び9a、8b及び9bよりも熱膨張の度合が大きくなる。
そのため、上述したように下部スカート8a及び9a、8b及び9bを、同下部スカートの外周面が上記ピストン上部体3の外周面を同ピストン上部体外周面に沿って延長した面よりもピストン径方向外方に位置するように構成することによって、各スカートがその温度変化に応じて熱膨張した際に、シリンダボア内面とのクリアランスを上部及び下部の両方のスカートについてほぼ同じにすることができる。そしてこの結果、ピストン全体の姿勢が良好に保持され、オイル消費量の低減、摩耗の低減、並びに燃費の改善等を図ることができる。
なお、下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面をピストン上部体外周面の延長面よりもどの程度ピストン径方向外方へ突出させるかについては、内燃機関の運転中に生じる上部スカート5a、5bと下部スカート8a及び9a、8b及び9bとの間の温度差、及びその温度差によって生ずる熱膨張量の差等を考慮して、シリンダボア内面とのクリアランスが上部及び下部の両方のスカートについてほぼ同じになるように決定する。
また、上述のピストン10においては、下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面の全部が上記ピストン上部体3の外周面を同ピストン上部体外周面に沿って延長した面よりもピストン径方向外方に位置するように構成されていたが、下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面の一部のみが上記ピストン上部体外周面の延長面よりもピストン径方向外方に位置するように構成されていてもよく、このような構成によっても上述したような作用及び効果を得ることが可能である。
次に図4を参照しつつ、本発明の他の実施形態の内燃機関用ピストン20について説明する。図4は図3と同様の図であり、ピストン20を下方から見た場合の図である。ピストン20の構成は、基本的にはピストン10と同様であり、共通する部分については説明を省略する。
上述のピストン10の構成とピストン20の構成との主な相違点は、ピストン10においては図3に示されるように下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面の曲率がピストン上部体3の外周面の曲率とほぼ同じであるのに対して、ピストン20においては図4に示されるように下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面の曲率がピストン上部体3の外周面の曲率より大きくなっている点である。より詳細には、ピストン20においては、下部スカート8a及び9a、8b及び9bはその外周面の曲率が対応するシリンダボア内面の曲率よりも大きくなるように構成されている。具体的には図4に示された例では、各下部スカート8a及び9a、8b及び9bの周方向の両端の外径が中央部よりも小さくされ円弧状とされている。
そして、このような構成にすると、ピストン揺動の際等に下部スカート8a及び9a、8b及び9bの周方向端部がシリンダボア内面と局部接触することがなくなるので、焼付きの発生を抑制することができる。また、下部スカート8a及び9a、8b及び9bとシリンダボア内面とのクリアランスが下部スカートの周方向中央部に向かって次第に狭くなるように形成されるので、オイルスクイーズ作用が生じ、摩耗の低減及び騒音の抑制等を図ることができる。
次に図5を参照しつつ、本発明の更に他の実施形態の内燃機関用ピストン30について説明する。図5は図3及び図4と同様の図であり、ピストン30を下方から見た場合の図である。ピストン30の構成は、基本的にはピストン10と同様であり、共通する部分については説明を省略する。
図5に示されているように、ピストン30は従来の上部スカート及び下部スカートを有する内燃機関用ピストンと同様に、上部スカート5a、5bと下部スカート8a及び9a、8b及び9bとがほぼ同一の外径で構成されている。しかしながら、ピストン30においては、上記上部スカート5a、5bの外周面が上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面よりも硬質な表面性状を有するように構成されている。具体的には、例えば、上記上部スカート5a、5bの外周面が二硫化モリブデン(MoS2)またはダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)によってコーティングされ、上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面がポリテトラフルオロエチレンまたはグラファイトによってコーティングされている。なお、上記ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)は、例えば物理蒸着法(PVD法)によってコーティングされる。
上述したように内燃機関が運転されている状態において、上部スカート5a、5bと下部スカート8a及び9a、8b及び9bとを比較すると、上部スカート5a、5bの方が下部スカート8a及び9a、8b及び9bよりも高温になり、上部スカート5a、5bの方が下部スカート8a及び9a、8b及び9bよりも熱膨張する度合が大きくなる。また、上部スカート5a、5bには下部スカート8a及び9a、8b及び9bよりも大きなスラスト荷重がかかる。その結果、上部スカート5a、5bでは高温・高面圧となり、下部スカート8a及び9a、8b及び9bでは上部スカート5a、5bよりも低温・低面圧となる。
上述したようにピストン30においては、上記上部スカート5a、5bの外周面が上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面よりも硬質な表面性状を有するように構成されている。一般に硬質な表面性状を有している場合、すなわち例えば、表面が二硫化モリブデン(MoS2)やダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)でコーティングされている場合には、高温・高面圧下で摩擦係数が小さくなる。その一方、より軟質な表面性状を有している場合、すなわち例えば、表面がポリテトラフルオロエチレンやグラファイトによってコーティングされている場合には、より低温・低面圧下で摩擦係数が小さくなる。
したがって、ピストン30のようにすることによって、各スカートのおかれる環境(物理的条件)において摩擦係数の小さくなる表面性状とすることができ、スカートの摺動面全体についての摩擦を小さくすることが可能となる。そしてその結果、摩耗の低減及び燃費の向上を図ることができる。また特に、境界潤滑となる場合、すなわち低回転でオイル量の少ない場合や高回転・高負荷の場合の潤滑改善が図れるので、このような場合の燃費改善及び出力向上が期待できる。
また、本発明の別の実施形態のピストンでは、ピストン30のコーティングの代わりに、オイル保持手段を備えるようにしても良い。すなわち、例えば、上記上部スカート5a、5bの外周面にオイル保持手段を設ける一方、上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面にはオイル保持手段を設けないか、もしくは、上記上部スカート外周面に設けたオイル保持手段よりも少量のオイルを保持するようにしたオイル保持手段を設けるようにする。
具体的には、例えば、上記上部スカート5a、5bの外周面に周方向に複数の条痕もしくは溝G1を設ける一方、上記下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面には条痕を設けないか、もしくは、上記上部スカート外周面に設けられた条痕G1よりも深さの浅い条痕G2を上記上部スカート外周面に設けられた条痕G1の間隔よりも狭い間隔で設けるようにする。すなわち、オイルはこれら条痕G1、G2内に保持され、条痕の深さの深い分だけ上部スカート5a、5bにおいて多くのオイルが保持されることになる。
図6は、上部及び下部スカートの両方に条痕を設けた場合の各スカートの外周面部分の断面図を図解的に示したものである。図6(a)が上部スカート5a、5bの外周面部分を示し、図6(b)が下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面部分を示している。この例では上述したように、下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面に設けられた条痕G2の深さD2が上部スカート5a、5bの外周面に設けられた条痕G1の深さD1よりも浅くなっており、下部スカート8a及び9a、8b及び9bの外周面に設けられた条痕G2の間隔P2が上部スカート5a、5bの外周面に設けられた条痕G1の間隔P1よりも狭くなっている。
そして、このようなオイル保持手段を有する構成にすると、スカートの摺動面全体についての摩擦及び摩耗の低減を図ることができる。すなわち、上述したように内燃機関が運転されている状態においては、上部スカート5a、5bで高温・高面圧となり、下部スカート8a及び9a、8b及び9bでは上部スカート5a、5bよりも低温・低面圧となる。上述したようなオイル保持手段を有する構成にすると、より高温・高面圧となる上部スカート5a、5bにおいてより多くのオイルが保持され、摩擦及び摩耗の低減が図られる。一方、下部スカート8a及び9a、8b及び9bにはより少量のオイルが保持されるので、上部スカート5a、5bよりも低温であってもオイル温度が充分に上昇せしめられ、摩擦の低減を図ることができる。すなわち、この構成によれば、それぞれのスカートに対して、各スカートのおかれる環境(物理的条件)で適切な量のオイルを保持させることができる。そしてその結果として、スカートの摺動面全体についての摩擦及び摩耗の低減を図ることができる。
なお、図5を参照して説明した上部及び下部スカートの外周面にそれぞれ硬さの異なるコーティングを施す構成や図6を参照して説明したオイル保持手段を設ける構成は、図1から図3を参照して説明したピストン10の構成や図4を参照して説明したピストン20の構成に適用することもできる。この場合、各構成の持つ作用効果の相乗的な向上を図ることができる。
図1は、本発明の一実施形態の内燃機関用ピストンをスラスト側から見た場合の側面図である。 図2は、図1の内燃機関用ピストンを図1の場合から周方向に90°ずれた方向、すなわち、ピストンピン(図示なし)を挿入するピン穴の軸線方向に見た場合の側面図である。 図3は、図1の内燃機関用ピストンを図1及び図2における下方から見た場合の図である。 図4は、図3と同様の図であり、本発明の他の実施形態の内燃機関用ピストンを下方から見た場合の図である。 図5は、図3及び図4と同様の図であり、本発明の更に他の実施形態の内燃機関用ピストンを下方から見た場合の図である。 図6は、上部及び下部スカートの両方に条痕を設けた場合の各スカートの外周面部分の断面図を図解的に示したものである。図6(a)が上部スカートの外周面部分を示し、図6(b)が下部スカートの外周面部分を示している。
符号の説明
10、20、30…内燃機関用ピストン
1…リング溝
3…ピストン上部体
5a、5b…上部スカート
7…ピストン頂面
8a、8b、9a、9b…下部スカート
11…ピン穴
13…ピンボス

Claims (6)

  1. 有蓋円筒状のピストン上部体の外周部の少なくとも一部においてピストン頂面とは反対側に向かって延設される上部スカートと、上記ピストン上部体の中心軸線に沿った方向に関して上記上部スカートよりも上記ピストン頂面から離れた位置に設けられる下部スカートと、を有する内燃機関用ピストンであって、
    上記下部スカートは、該下部スカートの外周面の少なくとも一部が上記ピストン上部体の外周面を該ピストン上部体外周面に沿って延長した面よりもピストン径方向外方に位置するように構成されている、内燃機関用ピストン。
  2. 上記下部スカートの外周面の曲率を、対応するシリンダボア内面の曲率よりも大きくした請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
  3. 上記上部スカートの外周面が上記下部スカートの外周面よりも硬質な表面性状を有するように構成される、請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
  4. 上記上部スカートの外周面が二硫化モリブデンまたはダイヤモンド・ライク・カーボンによってコーティングされており、上記下部スカートの外周面がポリテトラフルオロエチレンまたはグラファイトによってコーティングされている、請求項3に記載の内燃機関用ピストン。
  5. 上記上部スカートの外周面にはオイル保持手段が設けられており、上記下部スカートの外周面にはオイル保持手段が設けられていないか、もしくは、上記上部スカート外周面に設けられたオイル保持手段よりも少量のオイルを保持するようにしたオイル保持手段が設けられている、請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
  6. 上記上部スカートの外周面には複数の条痕が設けられており、上記下部スカートの外周面には条痕が設けられていないか、もしくは、上記上部スカート外周面に設けられた条痕よりも深さの浅い条痕が上記上部スカート外周面に設けられた条痕の間隔よりも狭い間隔で設けられている、請求項5に記載の内燃機関用ピストン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102009056630B4 (de) * 2008-12-05 2012-02-23 Honda Motor Co., Ltd. Kolben

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