JP2005152731A - 磁性体粒子の回収方法及び回収用ホルダー - Google Patents

磁性体粒子の回収方法及び回収用ホルダー Download PDF

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秀樹 絹川
Yasuyuki Kumagai
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Abstract

【課題】 磁性体粒子の洗浄操作を簡便かつ迅速に行うための方法およびその方法の為に使用するホルダーを提供する。
【解決手段】 磁性金属体に付着したN極とS極が交互に並ぶように配置した2の倍数個の永久磁石を、磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明容器の外壁の一部分にのみ密着あるいは近接させ、該一部分の外壁に相当する該容器の内壁のみに磁性体粒子を付着させることを特徴とする、容器内部の磁性体粒子の回収方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁性体粒子上に対して化学反応あるいは物理的吸着を行わせる際に磁性体粒子を洗浄するために容器内壁に付着させて回収する方法及びホルダーに関する。
免疫化学反応、有機合成反応その他の、複数の化学的、生化学的あるいは物理的反応を連続して行う必要のある反応系では、しばしば一の反応工程からその次の反応工程へと操作を進める際に、前工程の反応生成物を洗浄したり、反応残渣を除去したりする必要が生じる。特に次工程において反応溶媒を大きく変更するような場合、先の反応工程で使用した試薬の残留物が次工程移行の反応にとって著しく不具合を生じる場合には、反応生成物の洗浄槽鎖を繰り返して、前工程の残留物を徹底して取り除く必要がある。
この様な前工程残留物の除去方法には、濾過、蒸留による溶媒の除去、クロマトグラフィ精製等の多くの手法が用いられている。これらとは異なり、固体粒子に反応出発物を予め固定化し、この粒子を適当な反応系に置いて、粒子上で連続して所望の化学反応を行う方法も広く使用されている。この方法は、固体粒子と溶媒との分離は比較的容易となる点で有用である。その一例として、固体粒子として磁性体粒子を用い、反応容器内の液体に懸濁させた磁性体粒子を容器の外側から磁石を近づけることで集め、磁性体粒子の流出を抑えつつ反応溶媒を変換する方法が報告されている(例えば特許文献1〜4)。また、円柱の磁性金属の内側に4個の磁石を交互に配置して複数のN極とS極とを設けた容器内の液体に懸濁された磁性体粒子を、磁石を用いて分離する装置も報告されている(特許文献5)。
特開2000−93834号公報 特開昭60−67858号公報 特開昭55−141670号公報 国際公開第90/14891号パンフレット 特表平6−505673号公報
しかし、特許文献1〜4に記載された従来の方法では、一度に大量の磁性体粒子を用いて反応を行う場合などの様に、必要とする容器が大きくなると、容器の外側に設ける磁石の配置や容器への近づけ方によっては、磁性体粒子の洗浄に用いた洗浄液除去の際に、磁石から最も遠い位置にある磁性体粒子が誤って外れてしまう危険性がある。
また、特許文献5に記載の方法では、周辺の機器等に影響を与えないことを目的として、反応容器の周囲を全て鉄板等で覆い、磁力を外部に漏出しないようにしている。しかし、このために、容器内の磁性体粒子が磁石によって確実に寄せ集められているかを視認することができなくなっている。従って、静置時間が十分でないと、洗浄液除去の際に磁性体粒子も一緒に排出してしまう危険性がある一方、この危険性を回避しようとすると多大の吸着時間を要するために、該装置は処理時間の面で不利となる。また、構造上当然に装置全体のかさや重量が増し、より多量の磁性体粒子を用いて反応を行う場合には、洗浄操作が重労働となる恐れもある。
この様に、従来法では、洗浄効率の点において、特に磁性体粒子の流出による洗浄後の磁性体粒子の現象が磁性体粒子への化学反応物の固定化とその後の化学反応工程の不安定さをもたらし、そのため、製造再現性が低い、磁性体の付着条件設定が困難であるなどの問題を有していた。また、洗浄操作を迅速かつ簡便に繰り返すというニーズについても満足の行くものではなかった。
本発明者らは、磁性体粒子の洗浄の際に、簡便に磁性体粒子を一定の場所に付着させ、溶媒等の交換を容易に行うとともに、付着状態を確実に視認できる新たな方法を開発した。
すなわち本発明は、磁性金属体に付着したN極とS極が交互に並ぶように配置した2の倍数個の永久磁石を、磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明容器の外壁の一部分にのみ密着あるいは近接させ、該一部分の外壁に相当する該容器の内壁のみに磁性体粒子を付着させることを特徴とする、容器内部の磁性体粒子の回収方法。
また、本発明は上記方法に使用される、N極とS極が交互に並ぶように配置した2の倍数個の永久磁石を付着させた磁性金属板と、該永久磁石を嵌め込むことのできる開放口を有する凹部または貫通部と磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明の容器の外面に密着することのできる面とを有する部材とからなる、請求項1〜3に記載の方法に利用するための磁性体粒子の回収用ホルダーも提供する。
本発明の回収方法と回収ホルダーは、反応容器内部の磁性体粒子を効率的に永久磁石を介して容器側面に付着させることができ、かつ付着を目視で確認することができるため、磁性体粒子の回収と洗浄操作を簡便かつ迅速に行うことが可能である。
本発明の一つの態様は、磁性金属体に付着したN極とS極が交互に並ぶように配置した2の倍数個の永久磁石を、磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明容器の外壁の一部分にのみ密着あるいは近接させ、該一部分の外壁に相当する該容器の内壁のみに磁性体粒子を付着させることを特徴とする、容器内部の磁性体粒子の回収方法である。
かかる方法では、2個、4個等の2の倍数個の永久磁石を準備し、これらを磁性金属板の長軸方向に並列に配置して使用する。その際、配置方向に向かって各磁石のN極S極が交互に現れるように配置する。この配置により、磁性金属板を貫通する方向に磁力が伸びることを防ぐことが出来、同方向にある周辺機器への磁気の影響を小さくすることができる。
また、この様に配置された永久磁石が付着している磁性金属板としては、付着している磁石を内面にして適度な曲面を有するか、あるいは適度な角度で折れ曲がっているもの、あるいは折り曲げ可能である金属板が好ましい。この様な金属板に永久磁石を付着させると、各磁石から発生する磁力は互いに交差する方向に伸びることになり、磁性金属体への向きとは反対の向きに伸びる磁力の外部への拡散をより低減することができる。同時に、容器内部の磁性体粒子に向かって磁力が収束することになるので、磁性体粒子の回収効率を高めることができる点でも有利である。
本発明の方法では、上記の永久磁石を、磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明容器の外壁の一部分にのみ密着あるいは近接させる。一部にのみ密着あるいは近接させるとは、容器の側面360°にわたって永久磁石を密着あるいは近接させ、磁性体粒子を容器内壁の全面に付着させるのではなく、磁性体粒子が付着することのない容器内壁が必ず存在するように永久磁石を容器に対して位置させることをいう。
この様に永久磁石を位置させることで確保できる磁性体粒子が付着しない側面部分は、そこを通して容器内部にある磁性体粒子の付着の度合いを目視により観察するための窓の役割を果たす。また、この付着していない内面を通して(下向きにして)容器を傾け、反応溶媒や残留物等をデカンテーションにより取り除くことができ、そのために磁性体粒子の流出を防止することができるとともに、洗浄効率も上昇するという利点を有している。
永久磁石によって磁性体粒子を付着させる容器内壁は、容器側面の内壁全体の3/4以下、好ましくは1/2以下、更に好ましくは1/3以下である。
本発明の別の態様は、上記の方法を実施するために使用されるホルダーであって、より詳しくは、N極とS極が交互に並ぶように配置した2の倍数個の永久磁石を付着させた磁性金属板と、該永久磁石を嵌め込むことのできる開放口を有する凹部または貫通部と磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明の容器の外面に密着することのできる面とを有する部材とからなる、上記の方法に利用するための磁性体粒子の回収用ホルダーである。
このホルダーを用いることにより、容器を該ホルダーに装着するという単純な操作で、容器の外面を永久磁石に密着あるいは近接させることができる。
本発明のホルダーを構成する部材は、容器内の磁性体粒子を容器内壁に効率的に付着させるために、容器の外壁と密着できるような形状の面(密着面)を有する必要がある。この密着面の形状は、用いる容器の外壁形状に即して決定すればよく、容器の外面が曲面であると平面であるとは問わない。例えば、円柱上の容器であれば、当該円柱の外壁の一部または全部に密着しかつ容易に容器の脱着を行うことのできる内径を有する円筒を部材として例示することが出来る。この場合、円筒の内面が密着面となる。また、容器が角柱状であれば、その角柱の外壁の一部または全部に密着しかつ容易に容器の脱着を行うことのできる断面形状の角柱状の筒を例示することができる。この場合にも、筒の内面が密着面となる。
先に例示した筒状の部材の場合、部材あるいは密着面は完全な筒状である必要はなく、半筒状でも、全体が凹型の形状であっても、何ら差し支えはない。部材と容器との密着状態を保持するため、また洗浄操作例えばデカンテーションを行う際に部材の落下等を防ぐために、容器の外壁の半分以上にわたって包み込むことのできる密着面を設けることが望ましい。密着面が容器外壁の1/2以下とすることもできるが、その様な場合には、容器と密着面との密着状態を維持するための押さえ部を設ける必要がある。
部材はさらに、磁性金属板に密着させた永久磁石を組み込みための凹部を有する。凹部は、永久磁石が収まる程度の広さと、ここに収められた永久磁石が密着面を介してホルダーにセットされた容器の外壁に近接するような深さを有する。容器内壁に磁性体粒子をよりしっかりと付着させるためには、永久磁石が容器の外壁に直接接触することが望ましいが、この場合には、凹部はそのまま密着面まで貫通させればよい。
部材中の凹部の位置には格別の制限はなく、容器の大きさあるいは容器内壁に付着させるべき磁性体粒子の量に応じて適宜定めればよい。永久磁石が容器底面から1、2cmほど上がった位置に置かれるように凹部を設けると、容器の底に溜まった溶媒や反応残渣を吸引回収する場合に、誤って磁性体粒子を吸引することも無く、好都合である。
凹部に収められる永久磁石は、2の倍数個の永久磁石をN極とS極とが交互に現れるように配置したものを磁性金属板に付着させて使用する。この配置により、磁性金属板を貫通する方向に磁力が伸びることを防ぐことが出来、同方向にある周辺機器への磁気の影響を小さくすることができる。
また、この様に配置された永久磁石が付着している磁性金属板としては、付着している磁石を内面にして適度な曲面を有するかあるいは適度な角度で折れ曲がっているものあるいは折り曲げ可能である金属板が好ましい。この様な金属板に永久磁石を付着させると、各磁石から発生する磁力は互いに交差する方向に伸びることになり、磁性金属体への向きとは反対の向きに伸びる磁力の外部への拡散をより低減することができる。同時に、容器内部の磁性体粒子に向かって磁力が収束することになるので、磁性体粒子の回収効率を高めることができる点でも有利である。
本発明で使用する永久磁石の種類、大きさ、数、磁力の強さ等は、反応容器の大きさ、形状、使用する磁性体粒子の量などに応じて、適宜選択すればよい。
本発明のホルダーを、図1〜3に示した一態様を例として更に説明する。
図1〜3に示される本発明のホルダーは、厚みt1を有する円筒状の部材1を有し、該部材1は部材外周の約1/4に相当する幅の凹部が設けられている。部材1の円筒内径dは、磁性体粒子を含む円柱状の透明容器の外径d’より僅かに大きく、容器外壁と円筒部材の内面とが摺動可能に接触するように、該容器を部材1の円筒内部に挿入することができる。永久磁石3及び3’は、ほぼ中間で折り曲げられた磁性金属板である鉄板4の両翼に付着しており、これらは部材1の凹部に永久磁石を内側に向けた状態で蓋5によって脱着可能に組み込まれている。また、部材1は、凹部の反対側に容器が露出する切り欠き部6を設けており、この切り欠き部6を通じて容器内部を直接目視することが可能となっている。
磁性体粒子を含む透明容器を部材1の中に挿入すると、該磁石は凹部の奥の厚みt2を有する部材の一部を挟んで容器に近接される。容器内の磁性体粒子はこの近接する永久磁石の磁力により容器内壁に付着し、この付着作用によって同時に容器は部材1に固定される。すなわち、反応に供した容器を該部材1の円筒内部に挿入するだけで、磁性体粒子を容器内壁に確実に付着させることができる。
その後、容器の口部を開き、ホルダーごと持ち上げ、磁性体粒子の付着していない面、すなわち切り欠き部6を下方にしたデカンテーションにより磁性体粒子以外の内容物を排出してもよく、あるいは吸引ノズルを切り欠き部6の方向に差し込んで内容物を吸引除去しても良い。その後、ホルダーから容器を引き抜き、さらに洗浄液あるいは次段階の反応溶媒を加えて磁性体粒子を洗浄し、再びホルダーに挿入して、上記と同じ操作を繰り返すことで、洗浄を徹底して行うことが可能となる。
本発明の方法であるいはホルダーと組み合わせて使用される容器は、磁性体粒子に固相化した化学物質を基に化学反応を行わせることのできる容器であって、適当な手段により開け閉め可能な一つ以上の口を有していればよい。なお、容器の大きさ、開け閉めの手段や口の数には格別の制限はないが、本発明の方法あるいはホルダーを使用することで容器内に収められた磁性体粒子を永久磁石に面した容器の側面に付着させる必要があることから、かかるホルダーと接する面以外の部分に口を設けることが望ましい。また材質としては、化学反応に使用する溶媒や試薬によっても左右されるが、磁性体粒子の付着状況を容器の外から視認できるように、アクリル、ガラス、ポリプロピレンその他の透明あるいは半透明であって内部を視認できる材質を使用する。
以下、非限定的な実施例を示す。
外面の直径128、内面の直径74、厚みt=54、長さ125のアクリル製パイプに、縦54、幅内角104°の凹部をパイプの一端から66までの位置に設けて部材を用意した。山信金属社製永久磁石(縦47mm×横25mm×厚み8mm)を2枚用意し、中央部で135°に折り曲げた縦45mm×幅80mm×厚み4mmの鉄板の両端に磁石を付着させた。この鉄板を部材の凹部に組み込み、その上からアクリル製の蓋をして固定した。この態様を図面1〜3に表す。
このホルダーの使用例を以下に示す
磁性体粒子(アボット社製Code32188、5%固体)をウエイブローターに載せ、30分間懸濁する。500mL容の直径73mm円柱型ポリプロピレン(PP)チューブに同パーティクル100mLを懸濁しながら入れ、さらにMES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)を含むコーティングバッファー233.5mLを加え(1回目)、転倒混和にて攪拌する。
実施例1に記載のホルダーにPPチューブを挿入して15分間静置させ、粒子をPPチューブの磁石に面した内壁に集める。粒子がPPチューブの内壁に付着していることを目視で確認し、反応液をホルダーの切り欠き部を下にしたデカンテーションで廃棄し、容器底部に残る反応液をアスピレーターにて完全に抜き取る。容器をホルダーから取り出し、再びコーティングバッファーを333.5mL加えて転倒混和にて攪拌後、上記と同様にして洗浄を2回繰り返した
洗浄後の容器にコーティングバッファー206.8mLを加え、転倒混和にて攪拌する。オーバーヘッドミキサーの撹拌翼を容器底から1cm上方にセットし、SCCF2H7抗体溶液(2.0mg/mL)を100mL加えて250rpmで1分間撹拌し、さらにEDAC溶液(12.5mg/mL)を26.68ml加え、さらに室温で60分間攪拌した。
攪拌終了後、容器を上記のホルダーに挿入し、上記と同じ洗浄操作を3回繰り返した。
図1は、本発明の一態様であるホルダーを上から見た概略図を示す。 図2は、図1のホルダーを左から見たときの側面図を示す。 図3は、図1のホルダーを蓋5の方向から見たときの側面図を示す。

Claims (6)

  1. 磁性金属体に付着したN極とS極が交互に並ぶように配置した2の倍数個の永久磁石を、磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明容器の外壁の一部分にのみ密着あるいは近接させ、該一部分の外壁に相当する該容器の内壁のみに磁性体粒子を付着させることを特徴とする、容器内部の磁性体粒子の回収方法。
  2. 永久磁石から生ずる磁力線が交差する角度で折り曲げられているあるい折り曲げ可能である磁性体金属板を用いる、請求項1に記載の方法。
  3. 永久磁石が密着あるいは近接する容器の一部が、容器外側面の3/4以下である、請求項1または2に記載の方法。
  4. N極とS極が交互に並ぶように配置した2の倍数個の永久磁石を付着させた磁性金属板と、該永久磁石を嵌め込むことのできる開放口を有する凹部または貫通部と磁性体粒子を懸濁した液体を内包する透明または半透明の容器の外面に密着することのできる面とを有する部材とからなる、請求項1〜3に記載の方法に利用するための磁性体粒子の回収用ホルダー。
  5. 部材が、透明または半透明の容器の外面に密着することのできる面を内面とする筒状である、請求項4に記載のホルダー。
  6. 容器と密着できる形状が曲面状である、請求項4または5に記載のホルダー。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017170320A (ja) * 2016-03-23 2017-09-28 東ソー株式会社 磁性微粒子捕集器具及びそれを用いた捕集方法

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