JP2005140025A - 作動油の粘度変化に備えた油圧駆動装置 - Google Patents

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康治 岡崎
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Abstract

【課題】作動油の粘度変化があってもアクチュエータ速度が変わらないロードセンシング制御の油圧駆動装置を提供すること。
【解決手段】油圧駆動装置は、アクチュエータへ圧油を供給するエンジン駆動の斜板式可変容量ポンプ1と、ポンプ吐出圧とアクチェータ負荷圧との差圧が一定となるようにポンプ容量を変えるサーボピストン4を有する。また、エンジン駆動の固定容量ポンプ2と、固定容量ポンプの吐出側のオリフィス6とが設けられる。装置は、オリフィス前後の流体差圧によってエンジン回転数の変動を検知し、その変動に応じて可変容量ポンプのポンプ容量制御の設定差圧を変化させる。装置はさらに、固定容量ポンプの吐出側に、装置内の作動油の粘度変動に応じて、オリフィス6による可変容量ポンプのポンプ容量制御の設定差圧を、補償するチョーク7を設けている。
【選択図】図1

Description

本発明は、油圧ショベルなどの建設機械や各種作業機械に用いる、斜板式の可変容量ピストンポンプ(以下、可変ポンプ)を備えた、ロードセンシング制御の油圧駆動装置に係り、特に、作動油の粘度変化に備えた油圧駆動装置に関する。
この形式の可変ポンプの容量制御は、サーボピストンによって可変ポンプの斜板を傾転して行う。
ロードセンシング制御は、可変ポンプの吐出圧と複数のアクチュエータの最高負荷圧との実差圧をある設定値に保つように可変ポンプの容量を制御するものである。この制御は、例えば、可変ポンプの吐出圧と最高負荷圧とを入力とする容量制御弁を設け、これら入力の大きさに応じて、サーボピストン室に可変ポンプ吐出圧を供給したり、タンクポートに開放したりして、実差圧を設定値になるよう維持する。
従来のこの種の制御として、設定差圧を変更可能にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
これは、可変ポンプに加えて、エンジンなどで駆動する固定容量ポンプ(以下、固定ポンプ)を設けて、その吐出流量をエンジン回転数の検出に利用する容量制御装置である。この装置は、固定ポンプの吐出路に絞りを設置し、絞りの前後差圧の変化でエンジン回転数の変動を検出し、ポンプ容量制御の設定差圧を変更して、可変ポンプの吐出圧と最高負荷圧の実差圧を変更するようにしている。
これによって、圧油をアクチュエータへ送る方向制御弁の開度が一定でも、エンジン回転数に応じてアクチュエータの速度が変えられる。
特開平5−99126号公報
本発明者達は、上述のような油圧駆動装置を解析して、作動油の粘度変化があると、方向制御弁の開度が一定であっても、アクチュエータ速度が変わってしまう現象が起こることを見出した。
従って、本発明は、エンジンなどの駆動源の回転数の変化に応じた制御が可能であるとともに、作動油の粘度変化があってもアクチュエータ速度が変わらないロードセンシング制御の油圧駆動装置の提供を目的とする。
その為、本発明は、前述の固定ポンプと絞りとを設けた油圧駆動装置において、ポンプ容量制御の設定差圧回路に作動油の粘度変動の補償を行うことを意図するものである。
本発明の油圧駆動装置は、駆動源の駆動によってアクチュエータへ圧油を供給する斜板式可変容量ポンプと、ポンプ吐出圧とアクチェータの負荷圧との差圧が一定となるようにポンプの容量を変えるサーボピストンと、駆動源により駆動する固定容量ポンプと、固定容量ポンプの吐出側に設けた絞り(オリフィス)とを有し、絞り前後の流体差圧によって駆動源の回転数変動を検知し、可変容量ポンプのポンプ容量制御の設定差圧を変化させる。この装置は、装置内の作動油の粘度変動に応じて可変容量ポンプのポンプ容量制御の設定差圧を変化させる補償手段を設けたことを特徴とする。
上記構成では、作動油の粘度変化により、可変ポンプの吐出側からアクチュエータまでの回路の圧力損失が変化しても、補償手段が、粘度変化に応じて、可変容量ポンプのポンプ容量制御の設定差圧を変化させる。その結果、可変容量ポンプからアクチュエータへの吐出量が粘度変化に応じて修正され、アクチュエータの速度変化を防止する。
上記補償手段は、固定容量ポンプの吐出側に、絞り(オリフィス)と直列に設置したチョークであることが好ましい。
チョークによって、補償手段を簡単な構造で安価に実現することができる。
本発明によれば、作動油の粘度変化があってもアクチュエータの速度が変動しないので、この油圧駆動装置を採用する建設機械や、各種作業機械の操作性を向上することができる。
また、可変ポンプの吐出側からアクチュエータまでの回路長さや開口面積が、装置を採用する機械の機種毎に異なっても、補償手段の諸元を調整するだけで対処することが可能であり、本発明は汎用性に富む。
さらに、補償手段としてチョークを採用することにより、このような効果を非常に容易に、安価に実現することができる。
次に、図面を参照して、本発明の実施例による油圧駆動装置を説明する。
図1は、この装置の油圧回路を示す。図示の油圧駆動装置は、エンジン3に駆動される斜板式の可変容量ピストンポンプ1および固定容量ポンプ2と、ポンプ1につながった容量制御用の傾転角制御弁5とを有し、可変ポンプ1が吐出する圧油を、コントロールバルブ22を通して2つのアクチュエータへ送る構成である。
サーボピストン4によって、斜板1aの傾きを変えて、ポンプ1の吐出容量を変える。サーボピストン4は、傾転角制御弁5に接続されている。
固定ポンプ2の吐出側回路には、絞り部100を設けている。絞り部100は、前述の従来技術にも設けられているオリフィス6を含んでいる。オリフィス6の下流側は、傾転角制御弁5と、リリーフ弁28に連通している。
ポンプ傾転角制御弁5には、可変ポンプ1の吐出圧(Ps0)12と、絞り部100下流側の固定ポンプ2の吐出路圧(Pp2)15が、サーボピストン4に圧油を供給する方向に傾転角制御弁5を切り換えるように作用する。また、アクチュエータの最高負荷圧(PLmax)13と固定ポンプ2の吐出路の圧(Pp1)14が、サーボピストン4の圧油をタンクへ逃がす方向に傾転角制御弁5を切り換えるように作用する。
ここで、固定ポンプの吐出路圧15はパイロットラインのリリーフ弁28の設定圧であり、吐出路圧14は、固定ポンプ2の吐出流量がオリフィス6とチョーク7を通過した時の圧力損失を吐出路圧15に加えた圧力である。
コントロールバルブ22は、アクチュエータに対応した方向制御弁8,9と、圧力補償弁10a,11aとを含んでいる。
圧力補償弁10a,11aは、方向制御弁8,9の前後差圧を補償するものである。これら圧力補償弁に働く油圧の関係を説明すると、例えば弁10aには、該弁の上流圧(Ps1)16と、自己負荷圧(PL)26とがこの弁を開かせる方向に作用する。また、最高負荷圧13と、方向制御弁8の上流圧(Pin)17とが、圧力補償弁10aを閉ざす方向に作用する。
このような構成の油圧駆動装置における圧油粘度の影響について、本発明者達が行った解析は次の通りである。
固定ポンプ2の吐出路には、前述のように、可変ポンプ容量制御の設定圧をエンジン等の駆動源の回転数に応じて変更するために絞りを設置しているが、この絞りはオリフィス6である。従って、絞りの前後差圧は、理論的には粘度の影響を受けない。そのため、圧油の粘度の大小に関わらず、可変ポンプ1の容量制御の設定圧、つまり可変ポンプ1の吐出圧12と最高負荷圧13の実差圧は一定となる。
また、可変ポンプ1が吐出した圧油をアクチュエータへ送る方向制御弁8でも、流量を制御している絞りはオリフィスとして扱える。
ところが、可変ポンプ1の吐出ポートから圧力補償弁10aまでの回路は、比較的狭く、長さがあって、チョーク状の絞りとして働く。よって、可変ポンプ1の吐出ポートから圧力補償弁10aまでは、圧油粘度の影響を受ける。
つまり、エンジン3の回転速度が一定であると、可変ポンプ1の吐出圧12と最高負荷圧13の実差圧を一定に保つことができるが、回路中の作動油粘度が変わると、可変ポンプ1の吐出ポートから圧力補償弁10aまでの圧力損失が変わるのである。その結果、方向制御弁8の開度が一定であっても、方向制御弁8の前後差圧が変化して、アクチュエータの速度が変わってしまう。
このように、この油圧駆動装置は、作動油の粘度が変動するとアクチュエータの操作性が悪化する現象を起こすことになる。
本発明は、この現象を防ぐために、可変ポンプ容量制御の設定圧に作動油粘度の変動の補償を行うものであり、本実施例では、この補償手段として、チョーク7を絞り部100に設けている。
図2は、絞り部100を拡大して示す。チョーク7は、オリフィス6の上流側に直列につながっている。
なお、このチョークは、オリフィス6の下流側に配置してもよい。
このような構成の装置では、作動油の粘度が高くなって、可変ポンプ1の吐出側と例えば圧力補償弁10a間の圧力損失が増えると、固定ポンプ2の吐出路のチョーク7も同じ影響を受けて、このチョークの圧力損失が高くなる。その分、絞り部100による可変ポンプ容量制御の設定差圧が高くなる。
また逆に、作動油の粘度が低くなって、可変ポンプ1の吐出側と圧力補償弁10aの間の圧力損失が低下した場合でも、チョーク7が同様に作動油の粘度の影響を受け、その圧力損失が低くなる分、可変ポンプ容量制御の設定圧が低くなる。
すなわち、本装置の絞り部100は、作動油の粘度変動による可変ポンプ1の吐出ポートと圧力補償弁10aとの間の圧力損失の変化に応じて、可変ポンプ容量制御の設定圧を変えるのである。これによって、方向制御弁8の開度が一定なら、作動油の粘度による影響を受けずに、アクチュエータの速度が一定になる。
かくして、作動油の粘度の影響でアクチュエータの操作性が悪化する現象を防ぐことができる。
続いて、上記構成の油圧回路における各構成要素の圧力関係を説明する。
まず、ポンプ傾転角制御弁5において、吐出圧(Ps0)12、最高負荷圧(PLmax)13および吐出路圧(Pp1,Pp2)14,15が作用する受圧面積は同じである。この弁は、力のバランスが次の式を満たすように、可変ポンプ1の容量がサーボピストン4によって制御される。

[数1]
Ps0 + Pp2 = Pp1 + PLmax すなわち
Ps0 - PLmax = Pp1 - Pp2 ・・・(1)
次に、圧力補償弁10aにおいて、上流圧(Ps1,Pin)16,17、自己負荷圧(PL)26、そして最高負荷圧13が働く受圧面積は同じである。この弁は、力のバランスが次の式を満たすように制御される。
[数2]
Ps1 + PL = Pin + PLmax すなわち
Pin - PL = Ps1 - PLmax ・・・(2)
可変ポンプ1の吐出圧12と圧力補償弁10aの上流圧16の差圧は、次の通りである。
[数3]
Ps0 - Ps1 = ΔPs ・・・(3)
作動油が粘度νの状態の時、方向制御弁8の開口面積をA1、定数をC1とすると、方向制御弁8の通過流量Q1は、(2)式より、次の(4)式のようになる。
また、可変ポンプ1の吐出側から圧力補償弁10aまでの管路をチョークとみなし、その開口面積をA2、チョーク長さをL、定数をC2とすると、流量Q1は(3)式より、次の(5)式で表せる。
[数4]
Q1 = C1・A1・√(Ps1 - PLmax) ・・・(4)
Q1 = C2・(A2)2・△Ps/(ν・L) ・・・(5)
一方、固定ポンプ吐出路のオリフィス6の開口面積をa1、定数をC1、オリフィス6とチョーク7の間の圧19をPpmとすると、固定ポンプ2の吐出量Q2は、次の(6)式となる。
また、チョーク7の開口面積をa2、チョーク長さをl、定数をC2とすると、吐出量Q2は、次の(7)式で表せる。
[数5]
Q2 = C1・a1・√(Ppm - Pp2) ・・・(6)
Q2 = C2・(a2)2・(Pp1 - Ppm)/(ν・l) ・・・(7)
ここで、方向制御弁8とオリフィス6の前後差圧が等しくなるように、つまり次の(8)式を満たすように(4)式と(6)式から導いた次の(9)式によってオリフィス6の開口面積a1を設定する。
[数6]
Ps1 - PLmax = Ppm - Pp2 ・・・(8)
Q1/(C1・A1) = Q2/(C1・a1) これを整理して
a1 = Q2/Q1・A1 ・・・(9)
また、オリフィス7については、上記(8)式を満たし、且つ次の(10)式を満たすように(5)式および(7)式から導いた次の(11)式によって、チョーク長さlと、開口面積a2を設定する。
[数7]
△Ps = Pp1 - Ppm ・・・(10)
Q1・ν・L/(C2・(A2)2) = Q2・ν・l/(C2・(a2)2) これを整理して
l/(a2)2 = L/(A2)2・(Q1/Q2) ・・・(11)
この油圧駆動装置において、作動油の粘度がn倍になった場合、固定ポンプ吐出路のオリフィス6における圧力損失は、粘度の影響を受けないことより、(8)式のPpm−Pp2のままである。
(7)式と固定ポンプ2の吐出量Q2が変化しないことから、固定ポンプ吐出路のチョーク7におけるチョーク式は、チョーク上流圧をPp1‘とすると、次のようになる。
[数8]
Q2 = C2・(a2)2・(Pp1'- Ppm)/(n・ν・l) ・・・(12)
(7)式と(12)式より、
[数9]
Pp1'- Ppm = n・(Pp1 - Ppm) ・・・(13)
このとき方向制御弁8の通過流量をQ1'とすると、
[数10]
Q1' = C1・A1・√(Ps1'- PLmax) ・・・(14)
また可変ポンプ1の吐出ポートから圧力補償弁10aまでの圧力損失を△Ps'とすると、
[数11]
Q1' = C2・(A2)2・△Ps'/(n・ν・L) ・・・(15)
△Ps' = Ps0'- Ps1' ・・・(16)
固定ポンプ吐出路のオリフィス6とチョーク7の圧力損失を合算したもの、つまりポンプ容量制御の設定差圧はPp1'−Pp2であり、可変ポンプ1の吐出圧Ps0'と最高負荷圧13の実差圧と等しくなるよう制御するので、
[数12]
Pp1'- Pp2 = Ps0'- PLmax ・・・(17)
Pp1'- Ppm + Ppm - Pp2 = Ps0'- PLmax ・・・(18)
(13)式より、
[数13]
n・(Pp1 - Ppm)+ Ppm - Pp2 = Ps0'- Plmax ・・・(19)
(8)式より、
[数14]
n・(Pp1 - Ppm)+ Ps1 - PLmax = Ps0'- PLmax・・・(20)
(10)式より整理して、
[数15]
n・△Ps + Ps1 - PLmax = Ps0'- PLmax
n・△Ps + Ps1 - PLmax = Ps0'- Ps1 + Ps1 - PLmax
n・△Ps = Ps0'- Ps1
Ps0'= n・△Ps + Ps1 ・・・(21)
ここで(15)式、(16)式および(21)式より、
[数16]
Q1'= C2・(A2)2・(n・△Ps + Ps1 - Ps1')/(n・ν・L)・・・(22)
Q1'= Q1 + C2・(A2)2・(Ps1 - Ps1')/(n・ν・L) ・・・(23)
Ps1−Ps1'=Xとし、(14)式と(23)式より、
[数17]
C1・A1・√(Ps1 - X - PLmax) = Q1 + C2・(A2)2・X /(n・ν・L)・・・(24)
Xについて方程式を解くと、

[数18]
X = 0 ・・・(25)
または、 X = -(C1・A1/C2/A2)2/(A2)2・(n・ν・L)2 ・・・(26)
(26)式を(24)式に代入すると、
[数19]
Q1 +((C1・A1)2/C2/A22)・(n・ν・L) = Q1 + ((C1・A1)2/C2/A22)・(n・ν・L)2
n・ν・L=(n・ν・L)2 ・・・(27)
(27)式は成立しないので、Xの解ではない。(25)式より、
[数20]
Ps1 = Ps1' ・・・(28)
(28)式を(14)式に代入すると、
[数21]
Q1' = Q1 ・・・ (34)
となり、方向制御弁8の通過流量は、作動油の粘度変化があっても変化しないことになる。
このように、本実施例の装置では、作動油の粘度が変動し、可変ポンプ1の吐出ポートから圧力補償弁10aまでの圧力損失が変化しても、固定ポンプ2の吐出路に設けたチョーク7の圧力損失も対応して変化し、ポンプ容量制御の設定差圧が変わる。その結果、アクチュエータの速度が圧油の粘度変化に応じて補償され、粘度変化によるアクチュエータの速度変化を防止することになる。
本発明の実施例による油圧駆動装置の回路図である。 図1の回路において固定ポンプの吐出側に設けた絞り部の拡大断面図である。
符号の説明
1 可変容量ポンプ
1a 斜板
2 固定容量ポンプ
3 エンジン
4 サーボピストン
6 オリフィス(絞り)
7 チョーク(補償手段)
8,9 方向制御弁
12 可変容量ポンプの吐出圧
13 アクチュエータの負荷圧

Claims (2)

  1. 駆動源(3)の駆動によってアクチュエータへ圧油を供給する斜板式可変容量ポンプ(1)と、ポンプ吐出圧とアクチェータの負荷圧との差圧が一定となるようにポンプ(1)の容量を変えるサーボピストン(4)と、駆動源により駆動する固定容量ポンプ(2)と、固定容量ポンプの吐出側に設けた絞り(6)とを有し、この絞り前後の流体差圧によって駆動源の駆動力変動を検知し、その変動に応じて可変容量ポンプのポンプ容量制御の設定差圧を変化させる油圧駆動装置において、
    装置内の作動油の粘度変動に応じて可変容量ポンプのポンプ容量制御の設定差圧を変化させる補償手段を設けたことを特徴とする油圧駆動装置。
  2. 請求項1に記載の装置において、前記補償手段は、固定容量ポンプの吐出側に、絞り(オリフィス)(6)と直列に設置したチョーク(7)である、油圧駆動装置。
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