本発明は、2本の主油圧シリンダによりコンクリートシリンダを前進後退させてコンクリートを吸入吐出させるようにするコンクリートポンプにおいて、原動機により駆動される油ポンプの能力範囲を原動機の出力範囲内で任意に変化させるようにする油ポンプの能力範囲制御装置に関するものである。
ホッパ内のコンクリートを2本のコンクリートシリンダで交互に吸入して吐出させるようにしてあるコンクリートポンプとしては、種々の形式のものが提案されている。図3はその一例の概略を示すもので、図示しないホッパに設けられている2つの吸入吐出口に先端側を連通させるように平行に配置したコンクリートシリンダ3a,3bの後端側に、2本の主油圧シリンダ1a,1bを洗浄室5を介し一体的に連結している。上記各コンクリートシリンダ3a,3b内に収納したコンクリートピストン4a,4bと、上記各主油圧シリンダ1a,1b内に収納した主油圧ピストン2a,2bとを、それぞれ洗浄室5を貫通して配置したピストンロッド6a,6bにて一体に連結して、上記2本の主油圧シリンダ1a,1b内の主油圧ピストン2a,2bを交互に前進後退動作させることにより、2本のコンクリートシリンダ3a,3b内のコンクリートピストン4a,4bが交互に前進後退させられて、ホッパ内のコンクリートを吸入吐出させるようにしてある。
又、上記2本の主油圧シリンダ1a,1bのロッド側圧力室7a,7bは、密封回路8で連通させてある。一方、上記2本の主油圧シリンダ1a,1bのヘッド側圧力室9a,9bには、傾転角(吐出流量)を変えることができるようにしてある油ポンプ10の吐出ライン11とタンク12への戻りライン11aを、電磁式の切換弁13、圧油給排ライン14を介して接続してあり、油ポンプ10から吐出される圧油が切換弁13を介して交互に主油圧シリンダ1aと1bのヘッド側圧力室9a,9bに供給されるようにしてある。
したがって、油ポンプ10から吐出された圧油が切換弁13を介しいずれか一方の主油圧シリンダ1a又は1bのヘッド側圧力室9a又は9bに供給されると、該主油圧シリンダ1a又は1b内の主油圧ピストン2a又は2bが前進して、ピストンロッド6a又は6bを介してコンクリートシリンダ3a又は3b内のコンクリートピストン4a又は4bが前進させられる。このとき、主油圧シリンダ1a又は1bのロッド側圧力室7a又は7bの圧油は密封回路8へ排出されて主油圧シリンダ1b又は1aのロッド側圧力室7b又は7aへ導入されるため、該主油圧シリンダ1b又は1a内の主油圧ピストン2b又は2aが後退させられる。これに伴いピストンロッド6b又は6aを介してコンクリートシリンダ3b又は3a内のコンクリートピストン4b又は4aが後退させられる。このようなコンクリートシリンダ3a,3b内のコンクリートピストン4a,4bを交互に前進後退動作させることにより、ホッパ内のコンクリート吸入吐出が行われるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
上記した如きコンクリートポンプに用いられている傾転角変更可能な油ポンプ10では、ポンプ吐出圧力の上昇に従ってポンプ傾転角を小さくし吐出流量を自動的に減少させるようにして馬力を一定にするようにする定馬力制御が通常行われている。又、上記油ポンプ10は、原動機の所定の回転数による出力で駆動されるものであり、油ポンプ10の能力範囲は、上記原動機の出力による或る一定の出力制御範囲内で定められていた。すなわち、油ポンプ10の能力範囲は、これを駆動する原動機が或る一定の回転数であるとき、その回転数においては一定の入力馬力となるようにしてあり、定馬力制御の入力馬力(馬力セット値)は一定とされていた。したがって、原動機の一定の出力制御範囲内で油ポンプの能力範囲を変化させる考え方はなかった。
なお、油ポンプの能力範囲を一定として定馬力制御を行っている例として、たとえば、油ポンプを駆動して、2本の主油圧シリンダへ交互に圧油を供給する場合に、油ポンプの吐出圧力が低いときは、油ポンプの傾転角を大きくして吐出流量を増加させるようにし、又、油ポンプの吐出圧力が高くなったときは、油ポンプの傾転角を小さくして吐出流量を減少させるようにして、2本の主油圧シリンダへの圧油供給において定馬力制御を行わせるようにしたものがある(たとえば、特許文献2参照)。
このような油ポンプ10の能力範囲が一定となっている状態でコンクリート運転を行う場合、通常は、図2に示すポンプ性能曲線図に実線で示されている如き最大馬力(200PS)となるように油ポンプ10を駆動させ、この範囲内で定馬力制御が行われていた。
そのため、油ポンプの能力を上記の如き最大馬力とした状態で油ポンプを駆動してコンクリートポンプの運転を行う場合、現場でのコンクリート打設に多くのコンクリート流量を必要としているときは、現場の能力に必要な量のコンクリートを圧送することができて問題はないが、コンクリート打設現場での打設コンクリート量として少量しか必要としない状況になったときは、現場の打設能力に対し油ポンプの能力が過大となる。
このような現場の能力に対し油ポンプの能力が過大の場合は、該油ポンプの運転を停止したり、運転再開したりの操作を頻繁に繰り返して、現場の能力に合わせるようにしているのが実状である。
特開2000−275200号公報
実用新案登録第2511470号公報
ところが、上述の如く、従来の油ポンプの定馬力制御においては、油ポンプの能力範囲は原動機の一定の出力範囲内で定められているものであり、現場の能力に対し油ポンプの能力が過大となる場合でも現場の能力に応じて油ポンプの能力範囲を下げるような制御は行われていない。そのため、油ポンプ側は、余分な馬力を消費しているにも拘らず、現場でのコンクリート打設時間は、現場の能力によって決ってしまい、無駄な燃料消費となっているという問題があった。
又、特許文献2に示されているものは、定馬力制御であるが、定馬力制御の馬力セット値は一定であり、この馬力セット値を変えることを示唆するものではない。
そこで、本発明は、油ポンプの能力範囲である定馬力制御の馬力セット値を、現場の能力に応じて増減変化させて最適運転を可能にし、無駄な燃料消費を避けることができるようにしようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、油ポンプの傾転角を変える傾転調整用アクチュエータのサーボピストンの一端側を小径として小径側圧力室に収納し、上記サーボピストンの他端側を大径として大径側圧力室に収納し、且つ上記油ポンプ吐出側の自己圧を上記傾転調整用アクチュエータに作用させるようにする自己圧ラインを、上記小径側圧力室には直接、上記大径側圧力室にはサーボバルブを介してそれぞれ接続させるようにすると共に、該サーボバルブにパワーシフト圧力を作用させるパイロットピストンに、上記自己圧ラインを接続し、上記大径側圧力室を上記サーボバルブを介しタンクに接続させるようにして自己圧を解放させるようにし、更に、上記サーボバルブのパイロットピストンにパワーシフト圧力を作用させるようにするパワーシフト制御用の電磁逆比例減圧弁を設けた構成を有するものとする。
又、上記の構成において、電磁逆比例減圧弁への入力電流を増減してパワーシフト圧力を増加、又は減少させることにより、傾転調整用アクチュエータの大径側圧力室を、サーボバルブを介し自己圧ラインと連通させて自己圧とし、又はサーボバルブを介しタンクと連通させて自己圧を解放させ、サーボピストンを小径側又は大径側へ移動させるようにした構成とする。
本発明のコンクリートポンプにおける油ポンプの能力範囲制御装置によれば、油ポンプの傾転角を変える傾転調整用アクチュエータのサーボピストンの一端側を小径として小径側圧力室に収納し、上記サーボピストンの他端側を大径として大径側圧力室に収納し、且つ上記油ポンプ吐出側の自己圧を上記傾転調整用アクチュエータに作用させるようにする自己圧ラインを、上記小径側圧力室には直接、上記大径側圧力室にはサーボバルブを介してそれぞれ接続させるようにすると共に、該サーボバルブにパワーシフト圧力を作用させるパイロットピストンに、上記自己圧ラインを接続し、上記大径側圧力室を上記サーボバルブを介しタンクに接続させるようにして自己圧を解放させるようにし、更に、上記サーボバルブのパイロットピストンにパワーシフト圧力を作用させるようにするパワーシフト制御用の電磁逆比例減圧弁を設けた構成とし、更に、電磁逆比例減圧弁への入力電流を増減してパワーシフト圧力を増加、又は減少させることにより、傾転調整用アクチュエータの大径側圧力室を、サーボバルブを介し自己圧ラインと連通させて自己圧とし、又はサーボバルブを介しタンクと連通させて自己圧を解放させ、サーボピストンを小径側又は大径側へ移動させるようにした構成としてあるので、油ポンプの定馬力制御の馬力セット値を任意に増、減調整することができて、現場の作業状態に合わせた最適馬力での運転を選択でき、無駄な燃料消費を避けることができるという燃費の改善が期待できる優れた効果を奏し得る。
以下、本発明の実施をするための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明のコンクリートポンプにおける油ポンプの能力範囲制御装置の実施の一形態を示すもので、図3に示したコンクリートポンプのように、傾転角を変えられるようにしてある油ポンプ10の吐出ライン11を通して2本の主油圧シリンダ1a,1bに圧油を交互に供給させることにより該2本の主油圧シリンダ1a,1b内の主油圧ピストン2a,2bを交互に前進後退動作させるようにし、該主油圧ピストン2a,2bの交互の前進後退動作で、ピストンロッド6a,6bを介しコンクリートシリンダ3a,3b内のコンクリートピストン4a,4bを交互に前進後退させることにより、ホッパ内のコンクリートを吸入吐出するようにしてあるコンクリートポンプにおいて、原動機の一定の出力で駆動される上記油ポンプ10の能力範囲である定馬力制御の馬力セット値を、原動機の一定の出力範囲内でパワーシフト制御により任意に調整するようにし、現場の能力に合わせた最適な馬力として運転させるようにする。
詳述すると、原動機(図示せず)の出力により駆動され且つ傾転角を変えられるようにしてある油ポンプ10の近傍位置に、スリーブ16とスプール17を相対変位できるようにしてあるサーボバルブ15と、一端を小径として小径側圧力室20に収納し且つ他端を大径として大径側圧力室21に収納して軸心方向へ移動できるようにサーボピストン19を有する傾転調整用アクチュエータ18を設ける。上記油ポンプ10が実際に仕事をしている自己圧となっている該油ポンプ10の吐出側に、自己圧ライン22を吐出ライン11より分岐して設け、該自己圧ライン22を、上記傾転調整用アクチュエータ18の小径側圧力室20に接続して、該小径側圧力室20が自己圧となっているようにする。又、該自己圧ライン22を、上記傾転調整用アクチュエータ18の大径側圧力室21に、上記サーボバルブ15を介し接続できるようにして、上記傾転調整用アクチュエータ18の大径側圧力室21と小径側圧力室20がともに自己圧となっているときに、サーボピストン19の両端の面積差で該サーボピストン19が図上右側の小径側へ移動できるようにしてある。一方、上記大径側圧力室21をサーボバルブ15を介してタンク23へ接続するようにしてあり、該大径側圧力室21がタンク23に接続されたときは、油ポンプ10吐出側の自己圧で上記サーボピストン19が図上左側の大径側へ移動できるようにしてある。このようなサーボピストン19の軸心方向の移動ができるように、上記サーボバルブ15のスリーブ16には、スプール17のポートaを通して自己圧ライン22と大径側圧力室21を連通させる開口と、スリーブ16のポートbを通して大径側圧力室21とタンク23を連通させる開口がそれぞれ設けてある。又、上記スリーブ16には、サーボピストン19の中央部分に連結してあるフィードバックレバー24の他端が取り付けてあり、上記サーボピストン19の移動に追従してスリーブ16が移動することにより、開口の位置が変動して自己圧ライン22と大径側圧力室21との連通や大径側圧力室21とタンク23との連通を遮断した位置でスリーブ16で静止するようにしてある。
又、上記サーボバルブ15のスプール17の一端側(図の右側)には、リターンスプリング25が取り付けられていて、スプール17を図の左側へ付勢するようにしてある。一方、スプール17の他端側(図の左側)には、レバー26を介してパイロットピストン27とリターンスプリング28が設けてあって、該パイロットピストン27に、上記自己圧ライン22を接続し、自己圧が上昇して過負荷となるときは、上記パイロットピストン27に作用している自己圧により該パイロットピストン27が図の右方向へ押されてスプール17が図の右側へ移動させられ、自己圧ライン22と傾転調整用アクチュエータ18の大径側圧力室21とをポートaを通して連通させ、該大径側圧力室21を自己圧とするようにしてあり、これにより、前記したサーボピストン19の両端の面積差でサーボピストン19が小径側へ移動させられ、油ポンプ10の吐出流量を自動的に減少させて定馬力制御が行われるようにしてある。
上記スプール17の他端側(図の左側)には、別のレバー29を介してパイロットピストン30とリターンスプリング31が設けてある。上記パイロットピストン30には、外部からの入力電流を増加させることによりパイロット圧力を増加させるようにする流量制御用の電磁比例減圧弁32の2次側圧力ライン33を接続し、該電磁比例減圧弁32の1次側には、たとえば、弁切換え用の圧油ラインからの比例弁用1次側圧力を導くサーボアシストライン34の1次圧ポートが接続してあり、該電磁比例減圧弁32への入力電流を変えることにより、パイロットピストン30、サーボバルブ15を介し傾転調整用アクチュエータ18のサーボピストン19が移動させられるようにし、油ポンプ10の能力範囲内で任意にポンプ傾転角を制御して流量調整のみを行うことができるようにしてある。
更に、前記したパイロットピストン27には、パワーシフト圧力を作用させて油ポンプ10の吐出側に生じている自己圧の設定値、すなわち、定馬力制御の馬力セット値を増減切り換えるようにするパワーシフト制御用の電磁逆比例減圧弁35を設ける。該電磁逆比例減圧弁35の2次側圧力ライン36を上記パイロットピストン27に接続し、且つ該電磁逆比例減圧弁35の1次側に、上記サーボアシストライン34の1次圧ポートを接続して、上記電磁逆比例減圧弁35への入力電流を増加してパワーシフト圧力を増減させることにより、パイロットピストン27、サーボバルブ15を介し傾転調整用アクチュエータ18のサーボピストン19が移動させられるようにし、定馬力制御の馬力セット値を増減変化させることができるようにする。
図中、a1は圧力ゲージ用ポート、a2,a3は比例減圧弁用2次圧ポート、37はドレンタンクである。
コンクリートポンプの運転において、油ポンプ10の設定馬力を、たとえば、最大の能力範囲である図2に示す馬力200PSとして運転するようにした場合は、油ポンプ10は最大の能力範囲で仕事をすることになる。この場合、油ポンプ10の吐出側の圧力は、油ポンプ10が実際に仕事をしている最大の能力範囲の自己圧となり、この油ポンプ10の自己圧が変化すると、過負荷とならないように、その自己圧の変化に応じ馬力を一定にするようポンプ傾転角(吐出流量)を自動的に調整する、いわゆる定馬力制御が行われる。
すなわち、油ポンプ10の吐出側の自己圧ライン22は、傾転調整用アクチュエータ18の小径側圧力室20に直接接続されていると共に、該アクチュエータ18の大径側圧力室21にはサーボバルブ15のスプール17のポートaを通して接続されるようにしてあり、更に、パイロットピストン27にも接続されているので、コンクリートポンプの運転中は、上記油ポンプ10の自己圧がパイロットピストン27と傾転調整用アクチュエータ18の小径側圧力室20に作用していて、該パイロットピストン27と小径側圧力室20は自己圧となっている。
この状態で、たとえば、オペレータが吐出量を設定馬力以上となってしまうように増加させた場合は、この自己圧により過負荷とならないように、すなわち、設定馬力内となるように自動的に吐出量が制御される。この場合は、この変化した自己圧によりパイロットピストン27は、図の右方向へ移動させられて、サーボバルブ15のスプール17を、リターンスプリング25に抗して図の右方向へ移動させるようにする。このスプール17の移動によりポートaが自己圧ライン22と傾転調整用アクチュエータ18の大径側圧力室21とを連通させる。これにより該大径側圧力室21も小径側圧力室20と同時に自己圧となり、サーボピストン19の両端の面積差により該サーボピストン19は図の右側の小径側へ移動させられて、ポンプ傾転角(吐出流量)が減少するように制御されることになる。このように、油ポンプ10の自己圧の変化に応じ馬力を一定とするように自動的に流量を減少させる定馬力制御が行われる。
上記の定馬力制御範囲内において、油ポンプ10の能力範囲内で流量を任意に変化させるようにすることもできる。この場合は、オペレータが流量制御用の電磁比例減圧弁32への入力電流を増加させてパイロット圧力を増加させるように外部から操作するようにする。これにより、パイロットピストン30、サーボバルブ15を介してポンプ傾転角を変えることができて、油ポンプ10の能力範囲内で流量を調整させるようにすることができる。
コンクリート打設現場での打設状況は、オペレータが監視しており、たとえば、作業状況から打設コンクリート量を減らす必要があるような場合等、現場の能力に対し油ポンプ10の能力が過大であることがオペレータにより判断されると、オペレータは、たとえば、外部に設けてあるスイッチを操作する等によってパワーシフト制御用の電磁逆比例減圧弁35への入力電流を減少してパワーシフト圧力を増加させるようにする。これにより、自己圧ライン22により油ポンプ10の自己圧となっているパイロットピストン27に、比例減圧弁2次側圧力ライン36の圧力が付加されることになり、該パイロットピストン27は図の右方向へ移動させられる。このパイロットピストン27の移動により、サーボバルブ15のスプール17は、リターンスプリング25に抗して図の右方向へ移動させられ、前記したように自己圧ライン22と傾転調整用アクチュエータ18の大径側圧力室21がスプール17のポートaを通して連通させられる。これにより上記大径側圧力室21も自己圧となり、小径側圧力室20と大径側圧力室21がともに自己圧となったサーボピストン19は、両端の面積差により右側の小径側へ移動させられ、油ポンプ10の傾転角は減少する方向へ変化させられ、油ポンプ10の出力パワーが小さくなるように変えられる。すなわち、油ポンプ10の能力範囲(定馬力制御の馬力セット値)は減少する方向へ切り換えられ、図2の破線で示すような馬力160PSにシフトされることになる。
このように、現場の能力に対して油ポンプ10の能力が過大となると判断されるときに、油ポンプ10の過負荷の上限値を機械的に頭打ちにするよう変更させ、作業状態に合わせた最適な馬力を得ることができるようにすることにより、過負荷操作によるオーバーロードを自動的に最適な運転モードに制御させることができる。
これにより、原動機の一定の出力範囲において油ポンプ10の定馬力制御の馬力セット値を、当初の最大の値より小さい値に減少させることができ、油ポンプ10の定馬力制御を現場の能力に合わせて調整することができる。
なお、上記サーボピストン19を図の右方向へ移動させて油ポンプ10の出力パワーを変化させる際、該サーボピストン19の移動に追従してサーボバルブ15のスリーブ16は右方向へ移動する。このスリーブ16の移動により、自己圧ライン22と大径側圧力室21に連通している開口を徐々に閉じ始め、完全に閉じた位置でサーボピストン19は移動を停止し、スリーブ16は静止する。
次に、上記の如き油ポンプ10の定馬力制御の馬力セット値を小さく調整した状態において、現場の打設能力からコンクリートの量を増加する必要があるとオペレータにより判断されると、オペレータの操作でパワーシフト制御用の電磁逆比例減圧弁35への入力電流を増加するにつれてパワーシフト圧力が減少するようにする。これにより比例減圧弁2次側圧力ライン36の圧力が減少するよう変化し、サーボバルブ15のリターンスプリング25がパイロットピストン27に作用する圧力に打勝ってスプール17を図の左方向へ移動させるようにする。このスプール17の左方向への移動により、傾転調整用アクチュエータ18の大径側圧力室21がスプール17のポートbを通してタンク23へ連通させられ、該大径側圧力室21がタンク23へ開放される。上記アクチュエータ18の右側の小径側圧力室20は、常時、自己圧ライン22を介して自己圧となっているので、サーボピストン19の両端に作用する圧力差により該サーボピストン19は図の左方向へ移動させられる。このサーボピストン19の左方向への移動により油ポンプ10の傾転角は大きくなる方向へ変化させられ、該油ポンプ10の定馬力制御の馬力セット値が増大する方向へシフトされる。上記傾転調整用アクチュエータ18のサーボピストン19の左方向への移動に追従してサーボバルブ15のスリーブ16も左方向へ移動させられるため、該スリーブ16の開口が徐々に閉じ始め、完全に閉じた位置でサーボピストン19の左方向への移動が止められる。このサーボピストン19の移動量で油ポンプ10の傾転角の変化量が決められ、油ポンプ10の定馬力制御の馬力セット値は、当初の油ポンプ10の最大の能力である200PSに戻されることになる。
このように、油ポンプ10の能力を原動機の一定の出力範囲内で現場の能力に応じ任意に変えることができるので、現場の作業状況に合わせて最適な能力を2段階に切換えることができる。これにより現場の能力に対し油ポンプ10の能力が過大であるとオペレータにより判断された場合にも、油ポンプ10の運転、停止を頻繁に繰り返す必要性をなくすことができる。
本発明においては、原動機の出力を一定として駆動される油ポンプ10の能力範囲を、最大の200PSとそれより低い160PSとして、40PSの馬力差で油ポンプ10の吐出流量に10m3/Hrの差が発生するように実施すると、後述の実施例の如く油ポンプ10の運転、停止を繰り返すことなくコンクリートポンプの運転を行うことができて、無駄な燃料消費をなくすことができる。
油ポンプの馬力セット値を200PSとしたときのコンクリート吐出量を80m3/Hrとし、一方、油ポンプの馬力セット値を160PSとしたときのコンクリート吐出量を70m3/Hrとして、40PSの馬力差で10m3/Hrの差が発生していること、並びに総打設量を300m3と仮定し、原動機回転数を1800min−1とした条件で運転を行い、打設時間差、燃料消費量差について調べる実験を行った。
その結果、前者の馬力200PS、吐出量80m3/Hrの場合は、打設時間が3.750Hr、燃料消費量が0.502l/m3、総燃料消費量が150.6l/300m3であったのに対し、後者の馬力160PS、吐出量70m3/Hrの場合は、打設時間が4.286Hr、燃料消費量が0.459l/m3、総燃料消費量が137.7l/300m3であった。これより打設時間差は0.536Hrであり、燃料消費量差は0.04l/m3、総燃料消費量差は12.9l/300m3で、無駄な消費は避けられていることが判明した。
実施例1と同様に、油ポンプの馬力セット値を200PSとしたときのコンクリート吐出量を70m3/Hrとし、一方、油ポンプの馬力セット値を160PSとしたときのコンクリート吐出量を60m3/Hrとして、40PSの馬力差で吐出量10m3/Hrの差が発生している条件で運転を行い、打設時間差、燃料消費量差について調べる実験を行った。
その結果、前者の馬力200PS、吐出量70m3/Hrの場合は、打設時間が4.286Hr、燃料消費量が0.574l/m3、総燃料消費量が172.1l/300m3であったのに対し、後者の馬力160PS、吐出量60m3/Hrの場合は、打設時間が5.000Hr、燃料消費量が0.535l/m3、総燃料消費量が160.6l/300m3であった。
これにより打設時間差は0.714Hrであり、燃料消費量差は0.04l/m3、総燃料消費量差は11.5l/300m3であり、無駄な消費は避けられていることが判明した。
実施例1、実施例2と同様に、油ポンプの馬力セット値を200PSとしたときのコンクリート吐出量を100m3/Hrとし、一方、油ポンプの馬力セット値を160PSとしたときのコンクリート吐出量を90m3/Hrとして、40PSの馬力差で吐出量10m3/Hrの差が発生している条件で運転を行い、打設時間差、燃料消費量差について調べる実験を行った。
その結果、前者の馬力200PS、吐出量100m3/Hrの場合は、打設時間が3.000Hr、燃料消費量が0.401l/m3、総燃料消費量は120.4l/300m3であったのに対し、後者の馬力160PS、吐出量90m3/Hrの場合は、打設時間が3.333Hr、燃料消費量が0.357l/m3、総燃料消費量が107.1l/300m3であった。
これにより打設時間差は0.333Hrであり、燃料消費量差は0.04l/m3、総燃料消費量差は13.4l/300m3であり、無駄な消費は避けられていることが判明した。
その他、油ポンプの馬力セット値を200PSとしたときの吐出量を50m3/Hrとし、馬力セット値を160PSとしたときの吐出量を40m3/Hrとした場合には、燃料消費量差、総燃料消費量差ともに零であった。
このように現場の能力に対してポンプの能力が過大の場合に、馬力セット値を減少させることにより、燃料の無駄が省けることが判明した。
本発明のコンクリートポンプにおける油ポンプの能力範囲切換え装置の実施の一形態を示す油圧回路図である。
定馬力制御の油ポンプの能力範囲を示す図である。
従来用いられているコンクリートポンプの一例を示す概略図である。
符号の説明
10 油ポンプ
11 吐出ライン
15 サーボバルブ
18 傾転調整用アクチュエータ
19 サーボピストン
20 小径側圧力室
21 大径側圧力室
22 自己圧ライン
23 タンク
27 パイロットピストン
35 パワーシフト制御用の電磁逆比例減圧弁
36 比例減圧弁2次側圧力ライン