JP2005138314A - 気体排除処理方法、インクジェットヘッドの気体排除処理方法、インクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】 インク流路内に気体が残留するのを防ぐ。
【解決手段】 水が充填された容器151の排出管152を加熱して水蒸気を生成し、チューブ18を介してインクジェットヘッド1内のインク流路に水蒸気を充填する。次に、インクジェットヘッド1のインク吐出面70aに形成されたノズルから空気がインク流路内に侵入しないようにインク吐出面70aをキャップで封止する。
【選択図】 図13
【解決手段】 水が充填された容器151の排出管152を加熱して水蒸気を生成し、チューブ18を介してインクジェットヘッド1内のインク流路に水蒸気を充填する。次に、インクジェットヘッド1のインク吐出面70aに形成されたノズルから空気がインク流路内に侵入しないようにインク吐出面70aをキャップで封止する。
【選択図】 図13
Description
本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッド内のインク流路に存在する気体を排除するインクジェットプリンタにおける気体排除処理方法及びインクジェットヘッドの気体排除処理方法、また、そのインクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッドに関する。
特許文献1には、インクジェットプリンタのキャリッジに着脱可能に固定されるインクジェット記録ヘッドが、キャリッジに固定される前において、袋状の梱包部材にCO2ガスと一緒に密封される技術について記載されている。この技術において、インクジェット記録ヘッドは梱包部材によって密封される前に、吸引ポンプで梱包部材内、及び、インクジェット記録ヘッドの流路内の空気が排出され、そして梱包部材内にCO2ガスが充填されている。そのため、インクジェット記録ヘッド内の流路には、空気に換わってCO2ガスが充填されることになる。したがって、インクジェット記録ヘッドの流路にはCO2ガスしか存在していないので、インクジェット記録ヘッドの流路にインクを充填する場合においては、充填したインク中にCO2ガスが溶解するため、流路内に気体が残ることはなく、インクジェット記録ヘッドの流路内に空気による気泡が発生するのを防ぐことができる。
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、インクジェット記録ヘッドをキャリッジに固定する場合に、梱包部材から取り出すので、インクジェット記録ヘッド内の流路に空気が入り込む可能性が高い。そのため、インクジェット記録ヘッドにインクを初期導入した場合に、流路内に入り込んだ空気が気泡となって流路内に存在する可能性がある。また、CO2ガスが空気よりインクに溶解し易くても、気体であるCO2ガスをインクジェット記録ヘッドに充填しているので、流路内にはインクに溶解しないCO2ガスの気泡が残留する可能性がある。
そこで、本発明の一つの目的は、インク流路内に気体が残留するのを防ぐ気体排除処理方法及び、インクジェットヘッドのインク流路内に気体が残留するのを防ぐインクジェットヘッドの気体排除処理方法を提供することである。
本発明の別の目的は、インク流路内に気体が残留しにくいインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は、インク流路内に気体が残留しにくいインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することである。
本発明の気体排除処理方法は、インクが導入されるインク導入孔とノズルとが連通するインク流路が形成されたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのインク吐出面を塞ぐことが可能なキャップとを備えたインクジェットプリンタにおけるインクジェットヘッドの気体排除処理方法であって、前記インクジェットヘッドの外部において、常温で液体に戻る物質の蒸気を生成する第1工程と、前記インクジェットヘッドに形成された前記インク流路内に、前記蒸気を充填する第2工程と、前記インク流路内に前記蒸気が充填された状態において、少なくとも前記キャップで前記インク吐出面を塞ぐ工程を行うことにより前記インク流路を外部に対して封止する第3工程とを備えている。
これにより、インクジェットヘッドの外部からインク流路に蒸気が充填されるので、インク流路内に存在するインクに溶解しにくい気体(酸素や窒素など)を多く含む空気がインクジェットヘッド内から排出される。そして、インク吐出面がキャップで封止されることで、インク流路内が蒸気で満たされた状態で維持される。この蒸気は常温に戻ると液体に戻るので、キャップで封止されたインク流路内はほぼ真空状態になる。そのため、空気がインク流路内に存在しなくなり、インクジェットヘッドのインク流路に気体が残留するのを防ぐことができる。
本発明において、前記第3工程は、前記インク導入孔から前記インクジェットヘッド内に充填された前記蒸気が前記ノズルから排出され始めてから前記キャップでインク吐出面を塞ぐことが好ましい。これにより、インク流路が蒸気で完全に満たされた状態で封止することができる。
また、本発明において、前記インクジェットプリンタが、一端が前記インクジェットヘッドの前記インク導入孔に接続され、他端がインクが充填されたインクカートリッジと接続離脱可能なインク供給管と、前記インク供給管内の流路を開閉可能な弁とをさらに備えており、前記第3工程は、前記キャップで前記インク吐出面を塞ぐ工程の後に実行される前記弁を閉じる工程を含むことが好ましい。これにより、蒸気が充填されたインク流路に空気が入り込むのを防ぐことができる。そのため、インクジェットヘッドのインク流路に気体が残留しなくなる。
また、このとき、前記第3工程は、前記弁を閉じる工程の後に前記インク流路内に充填された前記蒸気を液化させる工程を含んでいてもよい。これにより、封止されたインク流路をほぼ真空状態とすることができる。
また、このとき、前記第2工程において、前記蒸気を前記インク流路及び前記インク供給管内の流路の両方に充填していてもよい。これにより、インクジェットヘッドにインク供給管を介してインクを初期導入するときにおいても、インク供給管内の流路を含むインク流路全体に気体が残留するのを防ぐことができる。
また、本発明において、前記第1工程において、インクに含有させる液体成分を気化させることによって前記蒸気を生成することが好ましい。これにより、蒸気が完全に液化せずに蒸気のままインクジェットヘッドのインク流路に存在していても、蒸気はインクに溶けやすい性質をもつことになるので、インク流路に気体が残留するのを効果的に防ぐことができる。
また、本発明において、前記第3工程の後であって、前記インク流路内にインクを導入する工程の前に、前記インクよりも気体が溶けやすい脱気インクを前記インク流路内に導入する工程を備えていることが好ましい。これにより、流路内にわずかに空気が残っていたとしても脱気インクによってほぼ完全にインク流路内の空気が除去される。そのため、インクを初期導入したときに、よりインク流路内に気体が残留しにくくなる。
また、本発明のインクジェットヘッドの気体排除処理方法は、インクが導入されるインク導入孔とインクを吐出するノズルとが連通するインク流路が形成されたインクジェットヘッドの気体排除処理方法であって、前記インクジェットヘッドの外部において、常温で液体に戻る物質の蒸気を生成する第1工程と、前記インクジェットヘッドに形成された前記インク流路内に、前記蒸気を充填する第2工程と、前記蒸気が充填された状態の前記インク流路を外部に対して封止する第3工程とを備えている。これにより、インクジェットヘッドの外部からインク流路に蒸気が充填されるので、インク流路内に存在するインクに溶解しにくい気体(酸素や窒素など)を多く含む空気をインクジェットヘッド内から排出することができるとともに、蒸気は常温で液化するため、インクジェットヘッドのインク流路に気体が残留するのを防ぐことができる。
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、インクが導入されるインク導入孔とインクを吐出するノズルとを連通させるインク流路と、前記インク流路内のインクを前記ノズルから吐出させるインク吐出手段とを備えたヘッド本体を形成するヘッド本体形成工程と、前記ヘッド本体形成工程の後に行われ、前記ヘッド本体の外部において、常温で液体に戻る物質の蒸気を生成する第1工程と、前記ヘッド本体の前記インク流路内に、前記蒸気を充填する第2工程と、前記蒸気が充填された状態の前記インク流路を外部に対して封止する第3工程とを備えている。これにより、インクジェットヘッド内のインク流路に気体が残留しにくいインクジェットヘッドを得ることができる。
また、本発明のインクジェットヘッドは、インクが導入されるインク導入孔とインクを吐出するノズルとが連通するインク流路が形成されたインクジェットヘッドであって、前記ノズルが形成されたインク吐出面を塞ぐキャップと、一端が前記インク導入孔に接続され、他端がインクカートリッジと接続されるインク供給管と、前記インク供給管内の流路を開閉可能な弁とを備えている。そして、前記インク流路内が真空状態であって、前記キャップが前記インク吐出面を塞ぎ且つ前記弁が閉じられている。これにより、インク流路内が真空状態を維持することができる。そのため、インクジェットヘッドのインク流路にインクを初期導入したときにおいて、インク流路に気体が残留しにくくなる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態によるインクジェットヘッドが適用されたインクジェットプリンタの全体的な構成を示す側面図である。図1に示すインクジェットプリンタ101は、4つのインクジェットヘッド1を有するカラーインクジェットプリンタである。このプリンタ101には、図中左方に給紙部111が、図中右方に排紙部112が、それぞれ構成されている。
プリンタ101内部には、給紙部111から排紙部112に向かって用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙部111のすぐ下流側には、記録媒体である用紙を挟持搬送する一対の送りローラ105a、105bが配置されている。一対の送りローラ105a、105bによって用紙は図中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、2つのベルトローラ106、107と、両ローラ106、107間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト108とが配置されている。搬送ベルト108の外周面すなわち搬送面にはシリコン処理が施され粘着性を有しており、一対の送りローラ105a、105bによって搬送されてくる用紙を、搬送ベルト108の搬送面の粘着力により保持させながら、一方のベルトローラ106の図中時計回り(矢印104の方向)の回転駆動によって下流側(右方)に向けて搬送できるようになっている。
用紙のベルトローラ106に対する挿入及び排出位置には、押さえ部材109a、109bがそれぞれ配置されている。押さえ部材109a、109bは、搬送ベルト108上の用紙が搬送面から浮かないように、搬送ベルト108の搬送面に用紙を押し付けて搬送面上に確実に粘着させるためのものである。
用紙搬送経路に沿って搬送ベルト108のすぐ下流側には、剥離機構110が設けられている。剥離機構110は、搬送ベルト108の搬送面に粘着されている用紙を搬送面から剥離して、右方の排紙部112へ向けて送るように構成されている。
4つのインクジェットヘッド1は、その下端にヘッド本体70を有している。ヘッド本体70は、それぞれが矩形断面を有しており、その長手方向が用紙搬送方向に垂直な方向(図1の紙面垂直方向)となるように互いに近接配置されている。つまり、このプリンタ101は、ライン式プリンタである。4つのヘッド本体70の各底面は用紙搬送経路に対向しており、微小径を有する多数のノズル8(図7参照)が配列されたインク吐出面70aとなっている。4つのヘッド本体70のインク吐出面70aのそれぞれからは、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのインクが吐出される。
ヘッド本体70は、そのインク吐出面70aと搬送ベルト108の搬送面との間に少量の隙間が形成されるように配置されており、この隙間部分に用紙搬送経路が形成されている。この構成で、搬送ベルト108上を搬送される用紙が4つのヘッド本体70のすぐ下方側を順に通過する際、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズルから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像を形成できるようになっている。
インクジェットプリンタ101は、インクジェットヘッド1に対するメンテナンスを自動的に行うためのメンテナンスユニット117を有している。図2は、図1に示すメンテナンスユニット117を用紙搬送方向から見た説明図である。図1に示すように、メンテナンスユニット117は断面が凹形状のフレーム118と、フレーム118に固着され4つのインクジェットヘッド1に対応して4つ設けられたキャップ116とを備えている。キャップ116は、ゴム等の弾性体で形成されており、図2に示すように中央部分に凹部119が形成されている。凹部119の用紙搬送方向に沿う両端部には段差部120が形成されるとともに、インクジェットヘッド1のインク吐出面70aが段差部120に嵌合可能な形状となっている。また、キャップ116のフレーム118と対向する面には、2つの凹部121,122が形成されている。そして、凹部121,122が形成されることにより、キャップ116の肉厚が薄くなった薄肉部125が形成されている。
図2に示すようにメンテナンスユニット117には、吸引ポンプ131と廃インク溜め135とが接続されている。吸引ポンプ131に接続されたチューブ132のメンテナンスユニット117側の端部には、中空針133が設けられている。中空針133が設けられた側であって、チューブ132の途中部位には、開閉弁134が設けられている。また、廃インク溜め135に接続されたチューブ136のメンテナンスユニット117側の端部には、中空針137が設けられている。中空針135,137は、先端部が尖るように斜めにカットされている。中空針137が設けられた側であって、チューブ136の途中部位には、開閉弁138が設けられている。図2に示されるように中空針133,137は、フレーム118の貫通孔を通過してキャップ116の薄肉部125を突き破っており、これにより、吸引ポンプ131と廃インク溜め135はキャップ116がインクジェットヘッド1のインク吐出面70aに嵌合したときにインク吐出面70aとキャップ116の凹部119とで囲まれた領域と通ずるようになっている。
このようなメンテナンスユニット117のキャップ116の段差部120にヘッド本体70のインク吐出面70aの縁部分が嵌合されたときに、吸引ポンプ131を駆動することで、インク吐出面70aと凹部119とで囲まれた領域が負圧となってインクジェットヘッド1の内部のインクがその領域に吸い出されて排出される(吸引パージ)。また、吸引パージが行われると、インク吐出面70aと凹部119とで囲まれた領域に吸い出されたインクが中空針137及びチューブ136を流通して廃インク溜め135に廃棄される。
また、メンテナンスユニット117は、キャップ116を支持するフレーム118を移動させる図示しない移動機構を備えている。この移動機構は、フレーム118を図1に示す退避位置とキャップ116が各ヘッド本体70のインク吐出面70aと対向するメンテナンス位置との間で移動させる。また、各ヘッド本体70は、メンテナンス位置に位置づけられたフレーム118上のキャップ116と嵌合しえるように、図示しない昇降機構によって昇降可能とされている。
ベルトローラ106,107や搬送ベルト108は、シャーシ113によって支持されている。シャーシ113は、その下方に配置された円筒部材115上に載置されている。円筒部材115は、その中心から外れた位置に固定された軸114を中心として回転可能となっている。そのため、軸114の回転に伴って円筒部材115の上端高さが変化すると、それに合わせてシャーシ113が昇降する。これにより、ベルトローラ106,107や搬送ベルト108は用紙搬送位置と退避位置との間を変位可能となっている。そして、メンテナンスユニット117を退避位置からインク吐出面70aに対向するメンテナンス位置に移動させる際には、予め円筒部材115を適宜の角度回転させてシャーシ113、搬送ベルト108及びベルトローラ106,107を図1に示す位置から適宜の距離だけ下降させることで、メンテナンスユニット117の移動のための空間を確保することが可能となっている。
メンテナンスユニット117は、インクジェットプリンタ101で印刷が行われているときには、給紙部111の直下方の位置(退避位置)に位置している。そして、印刷終了後に所定条件が満たされたとき(例えは、印刷動作が行われない状態が所定時間だけ継続したときや、インクジェットプリンタ101の電源オフ操作がされたとき)は、先ず、シャーシ113を下降させ、次にフレーム118を前述したように移動機構によって4つのヘッド本体70の直ぐ下方のメンテナンス位置に移動させ、更に各ヘッド本体70を下降させてキャップ116によってヘッド本体70の下面をそれぞれ覆い、ヘッド本体70のノズル部分のインクの乾燥を防止、及び、吸引パージ可能となっている。
走行する搬送ベルト108をガイドするガイド141が配置されている。ガイド141は全体がほぼ直方体形状であるとともに搬送ベルト108と同程度の幅を有しており、搬送ベルト108の用紙と当接する上側の部分をその下面側から支持することで、搬送ベルト108の上側の部分の走行面を規定している。
[インクジェットヘッドへのインク供給構成]
インクジェットプリンタ101において、インクジェットヘッド1に対してインクを供給するための構成を、図3を参照して説明する。図3は、図1に示すインクジェットプリンタのインク供給経路の構成を示す概略図である。図3に示すように、それぞれのインクジェットヘッド1に異なる色のインクを供給するために、インクジェットプリンタ101内の適宜の位置に、インクカートリッジ60が設けられている。そして、互いに離れた箇所にあるインクジェットヘッド1とインクカートリッジ60とが、可撓性を有するチューブ18によって接続されている。これにより、インクカートリッジ60からインクジェットヘッド1に至るインク供給経路(インク流路)が構成されている。なお、インクカートリッジ60及びチューブ18は、インクジェットヘッド1の数に対応してそれぞれ4つ設けられている。
インクジェットプリンタ101において、インクジェットヘッド1に対してインクを供給するための構成を、図3を参照して説明する。図3は、図1に示すインクジェットプリンタのインク供給経路の構成を示す概略図である。図3に示すように、それぞれのインクジェットヘッド1に異なる色のインクを供給するために、インクジェットプリンタ101内の適宜の位置に、インクカートリッジ60が設けられている。そして、互いに離れた箇所にあるインクジェットヘッド1とインクカートリッジ60とが、可撓性を有するチューブ18によって接続されている。これにより、インクカートリッジ60からインクジェットヘッド1に至るインク供給経路(インク流路)が構成されている。なお、インクカートリッジ60及びチューブ18は、インクジェットヘッド1の数に対応してそれぞれ4つ設けられている。
図3に示すようにインクカートリッジ60は、合成樹脂製のハウジング61の内部に、インク袋62を備えた構成となっている。このインク袋62は、脱気されたインクを内包している。インク袋62は、その開口部を封止する樹脂製のスパウトを有し、このスパウトは、シリコンゴム製またはブチルゴム製のキャップ63を備えている。インク袋62は、可撓性を有する複数のフィルムを熱圧着して形成されたパウチフィルムで構成されている。このパウチフィルムは、最内側にポリプロピレン層が形成され、外側に向かって順に基材としてのポリエステル層と、そのポリエステル層に敷設されるガスバリア層としてのアルミ箔層と、フィルムの強度向上のためのナイロン層とが多重に積層された構造となっている。
キャップ63には、後述の中空針65を貫通できるようになっており、また、インクカートリッジ60内部のインクが切れたときには、キャップ63から中空針65を抜いて、インクタンク60ごと交換できるようになっている。
前述したインクジェットヘッド1のヘッド本体70は、その長手方向一端部側において、インク吐出面70aの反対側の面に形成されたインク導入孔にチューブ18の一端を接続するためのジョイント部材19を備えている。インクカートリッジ60から導入されたインクがインク導入孔を通じてヘッド本体70内部のインク流路に導かれ、吐出ノズルから吐出されるように構成されている。
また、図3に示すようにチューブ18のインクカートリッジ60側の端部には、金属製の中空針65が直結されている。中空針65は円筒形状を有しつつ、インクカートリッジ60側の端部が尖るように斜めにカットされている。チューブ18に直結された中空針65は、図3に示すようにインクカートリッジ60のキャップ63に水平に貫通されており、中空針65とチューブ18とで、インクカートリッジ60とインクジェットヘッド1との間を繋ぐインク流路が形成される。そして、中空針65及びチューブ18を介してインクカートリッジ60のインクがインクジェットヘッド1に供給される。また、チューブ18の中空針65近傍には、開閉弁66が配置されており、この開閉弁66を開閉することで、インクカートリッジ60とインクジェットヘッド1とのインク流路の流れを変化させることができる。つまり、開閉弁66を「開」状態にすると、インク流路が流通可能となり、開閉弁66を「閉」状態にすると、インク流路の流通が遮断される。
[インクジェットヘッドの全体構造]
図4は、図1に示すインクジェットヘッド1の外観斜視図である。図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。インクジェットヘッド1は、主に用紙に対してインクを吐出するための主走査方向に延在した矩形平面形状を有するヘッド本体70と、ヘッド本体70の上方に配置され、且つヘッド本体70に供給されるインクの流路であるインク溜まり3が形成されたリザーバユニットであるベースブロック71と、ヘッド本体70及びベースブロック71を保持するホルダ72とから構成されている。
図4は、図1に示すインクジェットヘッド1の外観斜視図である。図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。インクジェットヘッド1は、主に用紙に対してインクを吐出するための主走査方向に延在した矩形平面形状を有するヘッド本体70と、ヘッド本体70の上方に配置され、且つヘッド本体70に供給されるインクの流路であるインク溜まり3が形成されたリザーバユニットであるベースブロック71と、ヘッド本体70及びベースブロック71を保持するホルダ72とから構成されている。
ヘッド本体70は、インク流路が形成された流路ユニット4と、流路ユニット4の上面にエポキシ系の熱硬化性接着剤によって接着された複数のアクチュエータユニット21とを含んでいる。これら流路ユニット4及びアクチュエータユニット21は共に、複数の薄板を積層して互いに接着させた構成である。また、アクチュエータユニット21の上面には、給電部材であるフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)50が半田によって接着されて引き出されている。
図6は、ヘッド本体70の平面図である。図6に示すように、流路ユニット4は、一方向(主走査方向)に延在した矩形平面形状を有している。図6において、流路ユニット4内に設けられた共通インク室であるマニホールド流路5が破線で描かれている。マニホールド流路5内へは、複数の開口3aを介してベースブロック71のインク溜まり3からインクが供給される。マニホールド流路5は、流路ユニット4の長手方向と平行に延在する複数の副マニホールド流路5aに分岐している。
流路ユニット4の上面には、平面形状が台形である4つのアクチュエータユニット21が、開口3aを避けるように、千鳥状になって2列に配列されつつ接着されている。各アクチュエータユニット21は、その平行対向辺(上辺及び下辺)が流路ユニット4の長手方向に沿うように配置されている。そして、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士が、流路ユニット4の幅方向に部分的にオーバーラップしている。
アクチュエータユニット21の接着領域と対向した流路ユニット4の下面は、多数のノズル8(図8参照)がマトリクス状に配列されたインク吐出領域となっている。アクチュエータユニット21に対向する流路ユニット4の上面には、多数の圧力室10(図8参照)がマトリクス状に配列された圧力室群9が形成されている。言い換えると、アクチュエータユニット21は、多数の圧力室10に跨る寸法を有している。
図5に戻って、ベースブロック71は、例えばステンレスなどの金属材料からなる。ベースブロック71内のインク溜まり3は、ベースブロック71の長手方向に沿って形成された略直方体の中空領域である。インク溜まり3は、その一端に設けられたインク導入孔と通じるジョイント部材19(図5においては図示せず)を介してインクカートリッジ60に連通しており、インクカートリッジ60からインクが供給される。ベースブロック71には、インク溜まり3に通じる開口3bが、2つずつ対になって、アクチュエータユニット21が設けられていない領域において開口3aと接続されるように千鳥状に設けられている。
ベースブロック71の下面73は、開口3bの近傍において周囲よりも下方に飛び出している。そして、ベースブロック71は、下面73の開口3b近傍部分73aにおいてのみ流路ユニット4と接触している。そのため、ベースブロック71の下面73の開口3b近傍部分73a以外の領域は、ヘッド本体70から離隔しており、この離隔部分にアクチュエータユニット21が配されている。
ホルダ72は、把持部72aと、把持部72aの上面からこれと直交する方向に所定間隔をなして延出された平板状の一対の突出部72bとを含んでいる。ベースブロック71は、ホルダ72の把持部72aの下面に形成された凹部内に接着固定されている。アクチュエータユニット21に接着されてアクチュエータユニット21から引き出されたFPC50は、スポンジなどの弾性部材83を介してホルダ72の突出部72b表面に沿うようにそれぞれ配置されている。そして、ホルダ72の突出部72b表面に配置されたFPC50上にドライバIC80がハンダ付けされて設置されている。これにより、FPC50は、ドライバIC80から出力された駆動信号をヘッド本体70のアクチュエータユニット21に伝達するように、両者を電気的に接合している。
ドライバIC80の外側表面には略直方体形状のヒートシンク82が密着配置されているため、ドライバIC80で発生した熱を効率的に散逸させることができる。ドライバIC80及びヒートシンク82の上方であって、FPC50の外側には、基板81が配置されている。ヒートシンク82の上面と基板81との間、および、ヒートシンク82の下面とFPC50との間は、それぞれシール部材84で接着されている。
図7は、図6内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図7に示すように、アクチュエータユニット21に対向した流路ユニット4内には、流路ユニット4の長手方向と平行に4本の副マニホールド流路5aが延在している。各副マニホールド流路5aには、その出口からノズル8に至る多数の個別インク流路が接続されている。図8は、個別インク流路を示す断面図である。図8から分かるように、各ノズル8は、圧力室10及びアパーチャすなわち絞り13を介して副マニホールド流路5aと連通している。このようにして、ヘッド本体70には、副マニホールド流路5aの出口からアパーチャ13、圧力室10を経てノズル8に至る個別インク流路7が圧力室10ごとに形成されている。
[ヘッド断面構造]
ヘッド本体70は、図8からも分かるように、上から、アクチュエータユニット21、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、カバープレート29及びノズルプレート30の合計10枚のシート材が積層された積層構造を有している。これらのうち、アクチュエータユニット21を除いた9枚のプレートから流路ユニット4が構成されている。
ヘッド本体70は、図8からも分かるように、上から、アクチュエータユニット21、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、カバープレート29及びノズルプレート30の合計10枚のシート材が積層された積層構造を有している。これらのうち、アクチュエータユニット21を除いた9枚のプレートから流路ユニット4が構成されている。
アクチュエータユニット21は、図10に示すように、4枚の圧電シート41〜44が積層され且つ電極が配されることによってそのうちの最上層だけが電界印加時に活性部となる部分を有する層(以下、単に「活性部を有する層」というように記する)とされ、残り3層が活性部を有しない非活性層とされたものである。キャビティプレート22は、圧力室10の空隙を構成するほぼ菱形の孔が、アクチュエータユニット21の貼付範囲内に多数設けられた金属プレートである。ベースプレート23は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10とアパーチャ13との連絡孔23a及び圧力室10からノズル8への連絡孔23bがそれぞれ設けられた金属プレートである。
アパーチャプレート24は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ13となる孔のほかに圧力室10からノズル8へ至る流路を形成する連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。サプライプレート25は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ13と副マニホールド流路5aとの連絡孔及び圧力室10からノズル8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。マニホールドプレート26、27、28は、副マニホールド流路5aを形成する孔に加えて、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からノズル8へ至る流路を形成する連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。カバープレート29は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からノズル8へ至る流路を形成する連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。ノズルプレート30は、キャビティプレート22の圧力室10の各々に対応するノズル8が設けられた金属プレートであり、圧力室10と同数のノズル8が形成されている。
これら10枚のシート21〜30は、図8に示すような個別インク流路7が形成されるように、互いに位置合わせして積層されている。この個別インク流路7は、副マニホールド流路5aからまず図8中上方へ向かい、アパーチャ13において水平に延在し、それからさらに上方に向かい、圧力室10において再び水平に延在し、それからしばらくアパーチャ13から離れる方向に斜め下方に向かって延在し、更に垂直下方に延在しノズル8へと向かう。
図8から明らかなように、各プレートの積層方向において圧力室10とアパーチャ13とは異なる高さレベルに設けられている。これにより、図7に示すように、アクチュエータユニット21に対向した流路ユニット4内において、1つの圧力室10と連通したアパーチャ13を、当該圧力室に隣接する別の圧力室10と平面視で重複位置に配置することが可能となっている。この結果、圧力室10同士が密着して高密度に配列されるため、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド1により高解像度の画像印刷が実現される。
ベースプレート23及びマニホールドプレート28の上下面と、サプライプレート25及びマニホールドプレート26、27の上面と、カバープレート29の下面には、余分な接着剤を流すための逃し溝14が、各プレートの接合面に形成された開口を取り囲むように設けられている。この逃し溝14があることによって、プレートどうしを接着する際の接着剤が個別インク流路内にはみ出して流路抵抗が変動することが防止される。
[流路ユニットの詳細]
図7に戻って、アクチュエータユニット21の貼付範囲内には、多数の圧力室10からなる圧力室群9が形成されている。圧力室群9は、アクチュエータユニット21の貼付範囲とほぼ同じ大きさの台形形状を有している。圧力室群9は、各アクチュエータユニット21について1つずつ形成されている。
図7に戻って、アクチュエータユニット21の貼付範囲内には、多数の圧力室10からなる圧力室群9が形成されている。圧力室群9は、アクチュエータユニット21の貼付範囲とほぼ同じ大きさの台形形状を有している。圧力室群9は、各アクチュエータユニット21について1つずつ形成されている。
図7から明らかなように、圧力室群9に属する各圧力室10は、その長い対角線の一端においてノズル8に連通されていると共に、長い対角線の他端においてアパーチャ13を介して副マニホールド流路5aに連通されている。また、図9及び図10に示されるように、アクチュエータユニット21上には、平面形状がほぼ菱形で圧力室10よりも一回り小さい個別電極35が、圧力室10と対向するようにマトリクス状に配列されている。なお、図7において、図面を分かりやすくするために、流路ユニット4にあって破線で描くべき、ノズル8、圧力室10及びアパーチャ13等を実線で描いている。
圧力室10は、配列方向A(第1の方向)及び配列方向B(第2の方向)の2方向に配列するマトリクス状に隣接配置されている。配列方向Aは、インクジェットヘッド1の長手方向、すなわち流路ユニット4の延在方向であって、圧力室10の短い方の対角線と平行である。配列方向Bは、配列方向Aと鈍角θをなす圧力室10の一斜辺方向である。そして、圧力室10の両方の鋭角部は、隣接する別の2つの圧力室の間に位置している。
配列方向A及び配列方向Bの2方向にマトリクス状に隣接配置された圧力室10は、配列方向Aに沿って37.5dpiに相当する距離ずつ離隔している。また、圧力室10は、1つのアクチュエータユニット21内において、配列方向Bに16個並べられている。
マトリクス状に配置された多数の圧力室10は、図7に示す配列方向Aに沿って、複数の圧力室列を形成している。圧力室列は、図7の紙面に対して垂直な方向(第3の方向)から見て、副マニホールド流路5aとの相対位置に応じて、第1の圧力室列11a、第2の圧力室列11b、第3の圧力室列11c、及び、第4の圧力室列11dに分けられる。これら第1〜第4の圧力室列11a〜11dは、アクチュエータユニット21の上辺から下辺に向けて、11c→11d→11a→11b→11c→11d→…→11bという順番で周期的に4列ずつ配置されている。
第1の圧力室列11aを構成する圧力室10a及び第2の圧力室列11bを構成する圧力室10bにおいては、第3の方向から見て、配列方向Aと直交する方向(第4の方向)に関して、ノズル8が図7の紙面下側に偏在している。そして、ノズル8が、それぞれ対応する圧力室10の下端部付近と対向している。一方、第3の圧力室列11cを構成する圧力室10c及び第4の圧力室列11dを構成する圧力室10dにおいては、第4の方向に関して、ノズル8が図7の紙面上側に偏在している。そして、ノズル8が、それぞれ対応する圧力室10の上端部付近と対向している。第1及び第4の圧力室列11a、11dにおいては、第3の方向から見て、圧力室10a、10dの半分以上の領域が、副マニホールド流路5aと重なっている。第2及び第3の圧力室列11b、11cにおいては、第3の方向から見て、圧力室10b、10cのほぼ全領域が、副マニホールド流路5aと重なっていない。そのため、いずれの圧力室列に属する圧力室10についてもこれに連通するノズル8が副マニホールド流路5aと重ならないようにしつつ、副マニホールド流路5aの幅を可能な限り広くして各圧力室10にインクを円滑に供給することが可能となっている。
図7に示すように、ヘッド本体70には、台形である圧力室群9の対となる平行辺のうちの長辺に沿って、圧力室10と同じ形状及び同じ大きさを有する多数の周縁空隙15が長辺の全域に亘って一直線状に配列されている。周縁空隙15は、キャビティプレート22に形成された圧力室10と同じ形状及び同じ大きさを有する孔がアクチュエータユニット21及びベースプレート23によって塞がれることによって画定されている。つまり、周縁空隙15にはインク流路が接続されておらず、しかも周縁空隙15には対向する個別電極35が設けられていない。つまり、周縁空隙15はインクで満たされることがない。
また、ヘッド本体70には、台形である圧力室群9の対となる平行辺のうちの短辺に沿って、多数の周縁空隙16が短辺の全域に亘って一直線状に配列されている。さらに、ヘッド本体70には、台形である圧力室群9の両斜辺に沿って、多数の周縁空隙17が両斜辺の全域に亘って一直線状に配列されている。周縁空隙16、17は、共に平面視正三角形の領域においてキャビティプレート22を貫通している。周縁空隙16、17にはインク流路が接続されておらず、しかも周縁空隙16、17には対向する個別電極35が設けられていない。つまり、周縁空隙15と同様、周縁空隙16、17はインクで満たされることがない。
[アクチュエータユニットの詳細]
次に、アクチュエータユニット21の構成について説明する。アクチュエータユニット21上には、圧力室10と同じパターンで多数の個別電極35がマトリクス状に配置されている。各個別電極35は、平面視において圧力室10と対向する位置に配置されている。
次に、アクチュエータユニット21の構成について説明する。アクチュエータユニット21上には、圧力室10と同じパターンで多数の個別電極35がマトリクス状に配置されている。各個別電極35は、平面視において圧力室10と対向する位置に配置されている。
図9は個別電極35の平面図である。図9に示すように、個別電極35は、圧力室10と対向する位置に配置されて平面視において圧力室10内に収容される主電極領域35aと、主電極領域35aにつながっており且つ圧力室10外に対向する位置に配置された補助電極領域35bとから構成されている。
図10は、図9のX−X線に沿った断面図である。図10に示すように、アクチュエータユニット21は、それぞれ厚みが15μm程度で同じになるように形成された4枚の圧電シート41、42、43、44を含んでいる。これら圧電シート41〜44は、ヘッド本体70内の1つのインク吐出領域内に形成された多数の圧力室10に跨って配置されるように連続した層状の平板(連続平板層)となっている。圧電シート41〜44が連続平板層として多数の圧力室10に跨って配置されることで、例えばスクリーン印刷技術を用いることにより圧電シート41上に個別電極35を高密度に配置することが可能となっている。そのため、個別電極35に対応する位置に形成される圧力室10をも高密度に配置することが可能となって、高解像度画像の印刷ができるようになる。圧電シート41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。
最上層の圧電シート41上に形成された個別電極35の主電極領域35aは、図9に示すように、圧力室10とほぼ相似である略菱形の平面形状を有している。略菱形の主電極領域35aにおける下方鋭角部は延出されて、圧力室10外に対向する補助電極領域35bにつながっている。補助電極領域35bの先端には、個別電極35と電気的に接続された円形のランド部36が設けられている。図10に示すように、ランド部36は、キャビティプレート22において圧力室10が形成されていない領域(桁部)に対向している。ランド部36は、例えばガラスフリットを含む金からなり、図9に示すように、補助電極領域35bにおける延出部表面上に接着されている。図10ではFPC50の図示を省略しているものの、ランド部36は、FPC50に設けられた接点と電気的に接合されている。この接合を行う際に、FPC50の接点を、ランド部36に対して押圧する必要があるが、ランド部36に対向するキャビティプレート22の領域に、圧力室10が形成されていないため、十分な押圧により確実な接合を行うことができる。
最上層の圧電シート41とその下側の圧電シート42との間には、圧電シート41と同じ外形及び略2μmの厚みを有する共通電極34が介在している。個別電極35及び共通電極34は共に、例えばAg−Pd系などの金属材料からなる。
共通電極34は、図示しない領域において接地されている。これにより、共通電極34は、すべての圧力室10に対応する領域において等しく一定の電位、本実施の形態ではグランド電位に保たれている。また、個別電極35は、各圧力室10に対応するものごとに電位を制御することができるように、各個別電極35ごとに独立した複数のリード線を含むFPC50を介してドライバIC80に接続されている。
[アクチュエータユニットの駆動方法]
次に、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21における圧電シート41の分極方向はその厚み方向である。つまり、アクチュエータユニット21は、上側(つまり、圧力室10とは離れた)1枚の圧電シート41を活性部が存在する層とし且つ下側(つまり、圧力室10に近い)3枚の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。従って、個別電極35を正又は負の所定電位とすると、例えば電界と分極とが同方向であれば圧電シート41中の電極に挟まれた電界印加部分が活性部(圧力発生部)として働き、圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。
次に、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21における圧電シート41の分極方向はその厚み方向である。つまり、アクチュエータユニット21は、上側(つまり、圧力室10とは離れた)1枚の圧電シート41を活性部が存在する層とし且つ下側(つまり、圧力室10に近い)3枚の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。従って、個別電極35を正又は負の所定電位とすると、例えば電界と分極とが同方向であれば圧電シート41中の電極に挟まれた電界印加部分が活性部(圧力発生部)として働き、圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。
本実施の形態では、圧電シート41において主電極領域35aと共通電極34とによって挟まれた部分は、電界が印加されると圧電効果によって歪みを発生する活性部として働く。一方、圧電シート41の下方にある3枚の圧電シート42〜44は、外部から電界が印加されることが無く、そのために活性部としてほとんど機能しない。したがって、圧電シート41において主に主電極領域35aと共通電極34とによって挟まれた部分が、圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。
一方、圧電シート42〜44は、電界の影響を受けないため自発的には変位しないので、上層の圧電シート41と下層の圧電シート42〜44との間で、分極方向と垂直な方向への歪みに差を生じることとなり、圧電シート41〜44全体が非活性側に凸となるように変形しようとする(ユニモルフ変形)。このとき、図10に示したように、圧電シート41〜44で構成されたアクチュエータユニット21の下面は圧力室を区画する隔壁(キャビティプレート)22の上面に固定されているので、結果的に圧電シート41〜44は圧力室側へ凸になるように変形する。このため、圧力室10の容積が低下して、圧力室10内のインクに付与される圧力が上昇し、ノズル8からインクが吐出される。その後、個別電極35を共通電極34と同じ電位に戻すと、圧電シート41〜44は元の形状になって圧力室10の容積が元の容積に戻るので、圧力室10内は減圧され、これにより、副マニホールド5a内のインクが圧力室10内に吸い込まれる。
なお、他の駆動方法として、予め個別電極35を共通電極34と異なる電位にしておき、吐出要求があるごとに個別電極35を共通電極34と一旦同じ電位とし、その後所定のタイミングにて再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にすることもできる。この場合は、個別電極35と共通電極34とが同じ電位になるタイミングで、圧電シート41〜44が元の形状に戻ることにより、圧力室10の容積は初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加し、インクが副マニホールド流路5a側から圧力室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にしたタイミングで、圧電シート41〜44が圧力室10側へ凸となるように変形すると、圧力室10内の容積低下により圧力室10内のインクに付与される圧力が上昇し、インクが吐出される。
[印字時の動作例]
再び図7に戻って、配列方向Aに37.5dpiに相当する幅(677.3μm)を有し、配列方向Aと直交する方向(第4の方向)に延在する帯状領域Rについて考える。この帯状領域Rの中では、16列の圧力室列11a〜11dの内の何れの列についても、ノズル8が1つしか存在していない。すなわち、1つのアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域内の任意の位置に、このような帯状領域Rを区画した場合、この帯状領域R内には、常に16個のノズル8が分布している。そして、これら16個の各ノズル8を配列方向Aに延びる直線上に射影した点の位置は、印字時の解像度である600dpiに相当する間隔ずつ離隔している。
再び図7に戻って、配列方向Aに37.5dpiに相当する幅(677.3μm)を有し、配列方向Aと直交する方向(第4の方向)に延在する帯状領域Rについて考える。この帯状領域Rの中では、16列の圧力室列11a〜11dの内の何れの列についても、ノズル8が1つしか存在していない。すなわち、1つのアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域内の任意の位置に、このような帯状領域Rを区画した場合、この帯状領域R内には、常に16個のノズル8が分布している。そして、これら16個の各ノズル8を配列方向Aに延びる直線上に射影した点の位置は、印字時の解像度である600dpiに相当する間隔ずつ離隔している。
1つの帯状領域Rに属する16個のノズル8を配列方向Aに延びる直線上に射影した位置が左にあるものから順に、これら16個のノズル8を(1)〜(16)と記することにしたとき、これら16個のノズル8は、下から、(1)、(9)、(5)、(13)、(2)、(10)、(6)、(14)、(3)、(11)、(7)、(15)、(4)、(12)、(8)、(16)の順番に並んでいる。このように構成されたインクジェットヘッド1において、アクチュエータユニット21内を印字媒体の搬送に合わせて適宜駆動させると、600dpiの解像度を有する文字や図形等を描画することができる。
例えば、600dpiの解像度で配列方向Aに延びる直線を印字する場合について説明する。まず、ノズル8が圧力室10の同じ側の鋭角部に連通している参考例の場合について簡単に説明する。この場合には、印字蝶体が搬送されるのに対応して、図9中一番下に位置する圧力室列中のノズル8からインクの吐出を始め、順次上側に隣接する圧力室列に属するノズル8を選択してインクを吐出する。これにより、インクのドットが配列方向Aに向かって600dpiの間隔で隣接しながら形成されていく。最終的には、全体で600dpiの解像度で配列方向Aに延びる直線が描かれることになる。
一方、本実施の形態では、図7中一番下に位置する圧力室列11b中のノズル8からインクの吐出を始め、印字媒体が搬送されるのに伴って順次上側に隣接する圧力室に連通するノズル8を選択してインクを吐出していく。このとき、下側から上側に1圧力室列上がるごとのノズル位置の配列方向Aへの変位が同じでないので、印字媒体が搬送されるのに伴って配列方向Aに沿って順次形成されるインクのドットは、600dpiの間隔で等間隔にはならない。
すなわち、図7に示したように、印字媒体が搬送されるのに対応して、まず図中一番下の圧力室列11bに連通するノズル(1)からインクが吐出され、印字媒体上に37.5dpiに相当する間隔でドット列が形成される。この後、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から2番目の圧力室列11aに連通するノズル(9)の位置に達すると、このノズル(9)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の8倍だけ配列方向Aに変位した位置に2番目のインクドットが形成される。
次に、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から3番目の圧力室列11dに連通するノズル(5)の位置に達すると、ノズル(5)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分の4倍だけ配列方向Aに変位した位置に3番目のインクドットが形成される。さらに、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から4番目の圧力室列11cに連通するノズル(13)の位置に達すると、ノズル(13)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドットの位置から600dpiに相当する間隔分の12倍だけ配列方向Aに変位した位置に4番目のインクドットが形成される。さらに、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から5番目の圧力室列11bに連通するノズル(2)の位置に達すると、ノズル(2)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分のだけ配列方向Aに変位した位置に5番目のインクドットが形成される。
以下同様にして、順次図中下側から上側に位置する圧力室10に連通するノズル8を選択しながらインクドットが形成されていく。このとき、図7中に示したノズル8の番号をNとすると、(倍率n=N−1)×(600dpiに相当する間隔)に相当する分だけ、始めに形成されたドット位置から配列方向Aに変位した位置にインクドットが形成される。最終的に16個のノズル8を選択し終わったときには、図中一番下の圧力室列11b中のノズル(1)により37.5dpiに相当する間隔で形成されたインクドットの間が600dpiに相当する間隔毎に離れて形成された15個のドットで繋げられ、全体で600dpiの解像度で配列方向Aに延びる直線を描くことが可能になっている。
なお、各インク吐出領域の配列方向Aについての両端部(アクチュエータユニット21の斜辺)近傍では、ヘッド本体70の幅方向に対向する別のアクチュエータユニット21に対応するインク吐出領域の配列方向Aについての両端部近傍と相補関係となることで600dpiの解像度での印刷が可能となっている。
[インクジェットヘッドの製造方法]
次に、上述したインクジェットヘッド1の製造方法について、図11を参照しつつ説明する。図11は、インクジェットヘッド1の製造工程図である。
次に、上述したインクジェットヘッド1の製造方法について、図11を参照しつつ説明する。図11は、インクジェットヘッド1の製造工程図である。
初めにインクジェットヘッド1のヘッド本体70を製造するヘッド本体形成工程について説明する。インクジェットヘッド1を製造するには、流路ユニット4及びアクチュエータユニット21などの部品を別々に作製し、それから各部品を組み付ける。まず、ステップ1(S1)では、流路ユニット4を作製する。流路ユニット4を作製するには、これを構成する各プレート22〜30に、パターニングされたフォトレジストをマスクとしたエッチングを施して、図8に示すような孔を各プレート22〜30に形成する。その後、個別インク流路7が形成されるように位置合わせされた9枚のプレート22〜30を、エポキシ系の熱硬化性接着剤を介して重ね合わせる。そして、9枚のプレート22〜30を熱硬化性接着剤の硬化温度以上の温度に加圧しつつ加熱する。これによって、熱硬化性接着剤が硬化して9枚のプレート22〜30が互いに固着され、図8に示すような流路ユニット4が得られる。
なお、他の例として、9枚のプレート22〜30間の熱硬化性接着剤を、流路ユニット4とアクチュエータユニット21との間の熱硬化性接着剤と共に硬化させてもよい。また、9枚のプレート22〜30を、金属接合によって互いに固着してもよい。ノズルプレート30の孔は、エッチングではなく、パンチング加工やレーザ加工によって形成してもよい。
一方、アクチュエータユニット21を作製するには、まず、ステップ2(S2)において、圧電セラミックスのグリーンシートを複数用意する。グリーンシートは、予め焼成による収縮量を見込んで形成される。そのうちの一部のグリーンシート上に、導電性ペーストを共通電極34のパターンにスクリーン印刷する。そして、治具を用いてグリーンシート同士を位置合わせしつつ、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートの下に、共通電極34のパターンで導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを重ね合わせ、さらにその下に、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを2枚重ね合わせる。
そして、ステップ3(S3)において、ステップ2で得られた積層体を公知のセラミックスと同様に脱脂し、さらに所定の温度で焼成する。これにより、4枚のグリーンシートが圧電シート41〜44となり、導電性ペーストが共通電極34となる。その後、ステップ4(S4)において、最上層にある圧電シート41上に、導電性ペーストを個別電極35のパターンにスクリーン印刷する。そして、積層体を加熱処理することによって導電性ペーストを焼成して、圧電シート41上に個別電極35を形成する。しかる後、ガラスフリットを含む金を個別電極35上に印刷して、ランド部36を形成する。このようにして、図10に描かれたようなアクチュエータユニット21を作製することができる。
なお、ステップ1の流路ユニット作製工程と、ステップ2〜4のアクチュエータユニット作製工程は、独立に行われるものであるため、いずれを先に行ってもよいし、並行して行ってもよい。
次に、ステップ5(S5)において、ステップ1で得られた流路ユニット4の圧力室に相当する凹部が多数形成された面に、熱硬化温度が80℃程度であるエポキシ系の熱硬化性接着剤を、バーコーターを用いて均一に塗布する。熱硬化性接着剤としては、例えば二液混合タイプのものが用いられる。
続いて、ステップ6(S6)において、流路ユニット4に塗布された熱硬化性接着剤層上に、アクチュエータユニット21を載置する。このとき、各アクチュエータユニット21は、活性部と圧力室10とが対向するように流路ユニット4に対して位置決めされる。この位置決めは、予め作製工程(ステップ1〜ステップ4)において流路ユニット4及びアクチュエータユニット21に形成された位置決めマーク(図示せず)に基づいて行われる。
次に、ステップ7(S7)において、流路ユニット4と、流路ユニット4とアクチュエータユニット21との間の熱硬化性接着剤層と、アクチュエータユニット21との積層体を、図示しない加熱・加圧装置で熱硬化性接着剤の硬化温度以上に加熱しながら加圧する。そして、ステップ8(S8)において、加熱・加圧装置から取り出された積層体を自然冷却する。こうして、流路ユニット4とアクチュエータユニット21とで構成されたヘッド本体70が製造される。これをもってヘッド形成工程は終了する。
しかる後、FPC50の接着を行った後、リザーバユニット71の接着工程などを経ることによって、上述したインクジェットヘッド1が完成する。
なお、他の例として、個別電極35及びランド部36が形成されていないアクチュエータユニット(本明細書において、このようなものを便宜上アクチュエータユニットということがある)と流路ユニット4との加熱接着後に、アクチュエータユニット上に導電性ペーストを個別電極35のパターンにスクリーン印刷し、さらに加熱処理を行ってもよい。また、導電性ペーストを個別電極35のパターンにスクリーン印刷したグリーンシートを用意し、その下に、共通電極34のパターンで導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを重ね合わせ、さらにその下に、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを2枚重ね合わせた積層体に加熱処理を施してもよい。
続いて、製造されたインクジェットヘッド1のインク流路内に存在する空気を排除する工程について、以下に説明する。図12はインクジェットヘッド1のインク流路内に存在する空気を排除する工程を示す工程図である。図13は、インクジェットヘッドのインク流路内に蒸気を充填する状況を示した概略図である。図14は、蒸気が充填されたインクジェットヘッド1にキャップ116を取り付けた状況を示す概略図であり、図2に示したメンテナンスユニット117の構成も示されている。
まず、製造されたインクジェットヘッド1に、中空針65が接続されたチューブ18を接続する。そして、図13に示すように、水が充填された容器151から図13中右方に延出された排出管152の端部に設けられたキャップ153に中空針65を突き刺して接続する。なお、キャップ153は、前述したインクカートリッジ60に設けられたキャップ63と同様なものである。また、本実施の形態において、容器151に充填された液体として、水を使用しているが、インクカートリッジ60のインクに含まれる成分(例えば、保湿剤など)を含んでいてもよい。
容器151の排出管152の中央外周部分には、排出管152を加熱するとともに排出管152内の水を加熱する加熱装置155が配置されている。ステップ10(S10)においては、この加熱装置155で排出管152内の水を加熱して水を気化させて、水蒸気を生成する。このステップ10が第1工程となる。
次に、ステップ11(S11)において、チューブ18に設けられた開閉弁66を「開」の状態にする。すると、排出管152内で生成された水蒸気がチューブ18側に流通して、インクジェットヘッド1のインク流路全体の隅々にまで行きわたる。こうして、インクジェットヘッド1のインク流路とチューブ18内のインク流路とに水蒸気を充填させる。このステップ11が第2工程となる。
次に、ステップ12(S12)において、インクジェットヘッド1に充填された蒸気がノズル8から排出されたら、図14に示すようにキャップ116の凹部119をヘッド本体70のインク吐出面70aと対向させつつ、段差部120にインクジェットヘッド1を嵌合させて、キャップ116でインク吐出面70aを外部に対して封止する。さらにステップ13(S13)においては、開閉弁66を「閉」の状態にする。こうして、インクジェットプリンタ101に組み付ける前のインクジェットヘッド1が完成する。
このように、インクジェットヘッド1のインク流路とチューブ18内のインク流路とに水蒸気を充填させることで、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路に存在する空気が水蒸気によってノズル8から押し出される。そのため、インク流路内には空気が存在しない状態となる。そして、インク吐出面70aをキャップ116で封止するとともに、開閉弁66を「閉」の状態にすることで、外部の空気がノズル8及び中空針65から侵入できなくなる。そのため、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路が水蒸気だけで満たされた状態で維持される。
次に、ステップ14(S14)において、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路に充填された水蒸気が液化するまで待つ。こうすることで、水蒸気が水になり、その体積が減少してインクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路がほぼ真空状態となる。以上のステップ12〜14が第3工程となる。
次に、図14に示すようにインクジェットプリンタ101に設けられたフレーム118から突き出た中空針133,137の先端部とキャップ116の薄肉部125とが対向する位置に配置させる。そして、中空針133,137で薄肉部125を突き破らせ、中空針133,137の先端部がインク吐出面70aと凹部119とで囲まれた領域に存在するようにしつつ、キャップ116をフレーム118に固着させる。このとき、中空針133,137に接続されたチューブ132,136に設けられた開閉弁134,138は共に「閉」の状態にされているので、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路の真空状態は保たれたままとなっている。こうして、インク流路の空気が排除された状態のままインクジェットヘッド1及びチューブ18をインクジェットプリンタ101に組み付けることができる。
また、本実施の形態では、インクジェットプリンタ101にインクジェットヘッド1を取り付ける中で説明していたが、単にインクジェットヘッド1を前述したように製造する場合においては、製造されたインクジェットヘッド1にチューブ18を接続せず、排出管152を直接、インクジェットヘッド1に接続して、排出管152で前述と同様に生成された水蒸気をインクジェットヘッド1のインク流路に充填する。そして、水蒸気がインク流路内に充填された状態でインク吐出面70aをキャップ116で封止してインクジェットヘッド1を製造してもよい。こうすると、インクジェットヘッド1内のインク流路に空気がほとんど残留していないインクジェットヘッドを得ることができる。また、インクジェットヘッドのインク流路に水蒸気が充填されるので、前述のようにインク流路内に存在する空気をインクジェットヘッド1内から排出することができるとともに、水蒸気は常温で液化するため、インクジェットヘッド1のインク流路に気体が残留するのを防ぐことができる。
続いて、インクジェットプリンタ101に組み付けられたインクジェットヘッド1にインクを初期導入するときの導入工程について、以下に説明する。図15は、インクジェットヘッド1にインクを初期導入するときの状況を示す概略図であり、図2に示されたメンテナンスユニット117の構成も示されている。
インクジェットプリンタ101に組み付けられたインクジェットヘッド1にインクを初期導入するときは、図15に示すようにインクジェットヘッド1を脱気インクが充填されたインクカートリッジ171に接続する。このインクカートリッジ171は、前述したインクカートリッジ60とほぼ同じ構成を有しているが、インクカートリッジ171のインク量が少ない分だけ小さくなっている点と、充填されているインクが気体が溶け込みやすい脱気インクという点だけが異なっている。なお、インクカートリッジ171のキャップ172は、前述したインクカートリッジ60のキャップ63と同様である。
次に、図15に示すようにインクカートリッジ171のキャップ172にチューブ18に直結された中空針65を突き刺してから開閉弁66を「開」の状態にする。すると、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路はほぼ真空状態で減圧されているために、脱気インクはインク流路内に導入されその隅々に行きわたる。そのとき、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路に僅かな空気が残っていても、その空気は残らず脱気インクに溶け込むため、インク流路内にわずかに空気が残留していても、それを排除することができる。以上が脱気インクをインク流路内に導入する工程となる。
次に、吸引ポンプ131を駆動させると共に、開閉弁134,138を「開」の状態にして、キャップ116の凹部119とインク吐出面70aとで囲まれた領域内に漏れだしている脱気インクとインクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路の脱気インクとを吸引して廃インク溜め135に廃棄する。
次に、吸引ポンプ131を停止すると共に、開閉弁66を「閉」の状態にする。そして、インクカートリッジ171を中空針65から抜き取り、インクカートリッジ60のキャップ63に中空針65を突き刺してインクジェットヘッド1とインクカートリッジ60とをチューブ18を介して接続する。
次に、吸引ポンプ131を駆動させると共に、開閉弁66を「開」の状態にする。そして、チューブ18及びインクジェットヘッド1内のインク流路の脱気インクがインクカートリッジ60に充填されているインクに入れ替わるまで、吸引ポンプ131を駆動させ、インクが入れ替われば吸引ポンプ131を停止させる。こうして、インクジェットヘッド1へのインクの初期導入が終了する。
なお、本実施の形態においては、インクカートリッジ60のインクをインクジェットヘッド1に導入する前に、インクカートリッジ171の脱気インクを導入しているが、上述したようにインクジェットヘッド1及びチューブ18内はほぼ真空状態とされているので必ずしも脱気インクをインクジェットヘッド1に導入する必要性はなく、はじめからインクカートリッジ60のインクをインクジェットヘッド1に初期導入してもよい。こうすることで、脱気インクをインクジェットヘッド1に導入する手間が省けることになる。
以上のような本実施の形態によるインクジェットプリンタ101のインクジェットヘッド1によると、インク吐出面70aはキャップ116で封止され、チューブ18は開閉弁66によって閉じられているので、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路に充填された水蒸気が液化すると、インク流路内をほぼ真空状態に維持することができる。そのため、インクを初期導入したときに、そのインク流路内には空気が存在しないので、インク流路中のインクに気泡が混入することがない。また、インクジェットヘッド1の気体排除方法によると、インクジェットヘッド1を製造した後、インクジェットヘッド1及びチューブ18内のインク流路に水蒸気を充填することで、このインク流路内の空気が外部に排出される。そして、キャップ116及び開閉弁66で外部とインク流路とを遮断することで、インク流路には空気が入り込まなくなる。この状態で、インクジェットプリンタ101に組み付けられるので、インクをインク流路に初期導入しても上述したようにインク流路中のインクには気泡が混入しなくなる。
また、インクジェットヘッド1のインク流路とチューブ18のインク流路とに水蒸気が充填されているので、チューブ18を介してインクを初期導入するときにおいても、チューブ18及びインクジェットヘッド1内のインク流路に気体が残留するのを防ぐことができる。つまり、インクカートリッジと接続されたチューブ等のインク供給管が接続されたインクジェットヘッドだと、インクジェットヘッド1内のインク流路に蒸気を充填しインクジェットヘッド1内のインク流路を真空状態としても、インク初期導入時にインクとともにインク供給管内の空気がインクジェットヘッドのインク流路に流れてきて、インク流路内に空気が残存して気泡が生じるが、本発明においては、インクジェットヘッド1内のインク流路とともにインク供給管となるチューブ18にも水蒸気を充填して真空状態を形成しているので、インク流路内に気体が残留するのを確実に防ぐことが可能となる。
また、インクカートリッジ60のインク成分に含まれる水を気化させた水蒸気を使用しているため、水蒸気が完全に液化せずに水蒸気のままインクジェットヘッド1及びチューブ18のインク流路に存在していても、水蒸気はインクに溶けやすいのでインクジェットヘッド1内のインク流路に気体が残留するのを効果的に防ぐことができる。また、インク初期導入時において、水蒸気は冷やされることになり、直ぐに水蒸気が液化してインク内に溶け込んでしまう。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな設計変更が可能なものである。例えば、上述したインクジェットヘッド1は、活性部を変化させて圧力室のインクに圧力を与えてインクを吐出させているが、他の方式のインクジェットヘッドにおいても蒸気をインク流路に充填することで、上述した効果を得ることができる。また、本発明は、ライン式のだけでなく、シリアル式のインクジェットプリンタにも適用可能である。
また、上述したインクジェットヘッド1のインク流路内の気体排除方法において、インクジェットヘッド1に蒸気を充填させるときに、インク吐出面70aから蒸気が出ていなくても、キャップ116で封止してもよく、この場合においても、インク流路内に残留する気体を減少させることができる。また、チューブ18が備えていないインクジェットヘッドにも適用することができる。
1 インクジェットヘッド
4 流路ユニット
8 ノズル
10 圧力室
18 チューブ
21 アクチュエータユニット(インク吐出手段)
66 開閉弁
70 ヘッド本体
70a インク吐出面
101 インクジェットプリンタ
116 キャップ
117 メンテナンスユニット
151 容器
152 排出管
4 流路ユニット
8 ノズル
10 圧力室
18 チューブ
21 アクチュエータユニット(インク吐出手段)
66 開閉弁
70 ヘッド本体
70a インク吐出面
101 インクジェットプリンタ
116 キャップ
117 メンテナンスユニット
151 容器
152 排出管
Claims (10)
- インクが導入されるインク導入孔とノズルとが連通するインク流路が形成されたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのインク吐出面を塞ぐことが可能なキャップとを備えたインクジェットプリンタにおけるインクジェットヘッドの気体排除処理方法であって、
前記インクジェットヘッドの外部において、常温で液体に戻る物質の蒸気を生成する第1工程と、
前記インクジェットヘッドに形成された前記インク流路内に、前記蒸気を充填する第2工程と、
前記インク流路内に前記蒸気が充填された状態において、少なくとも前記キャップで前記インク吐出面を塞ぐ工程を行うことにより前記インク流路を外部に対して封止する第3工程とを備えていることを特徴とする気体排除処理方法。 - 前記第3工程は、前記インク導入孔から前記インクジェットヘッド内に充填された前記蒸気が前記ノズルから排出され始めてから前記キャップでインク吐出面を塞ぐことを特徴とする請求項1に記載の気体排除処理方法。
- 前記インクジェットプリンタが、
一端が前記インクジェットヘッドの前記インク導入孔に接続され、他端がインクが充填されたインクカートリッジと接続離脱可能なインク供給管と、
前記インク供給管内の流路を開閉可能な弁とをさらに備えており、
前記第3工程は、前記キャップで前記インク吐出面を塞ぐ工程の後に実行される前記弁を閉じる工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の気体排除処理方法。 - 前記第3工程は、前記弁を閉じる工程の後に前記インク流路内に充填された前記蒸気を液化させる工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の気体排除処理方法。
- 前記第2工程において、前記蒸気を前記インク流路及び前記インク供給管内の流路の両方に充填することを特徴とする請求項3又は4に記載の気体排除処理方法。
- 前記第1工程において、インクに含有させる液体成分を気化させることによって前記蒸気を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の気体排除処理方法。
- 前記第3工程の後であって、前記インク流路内にインクを導入する工程の前に、前記インクよりも気体が溶けやすい脱気インクを前記インク流路内に導入する工程を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の気体排除処理方法。
- インクが導入されるインク導入孔とインクを吐出するノズルとが連通するインク流路が形成されたインクジェットヘッドの気体排除処理方法であって、
前記インクジェットヘッドの外部において、常温で液体に戻る物質の蒸気を生成する第1工程と、
前記インクジェットヘッドに形成された前記インク流路内に、前記蒸気を充填する第2工程と、
前記蒸気が充填された状態の前記インク流路を外部に対して封止する第3工程とを備えていることを特徴とするインクジェットヘッドの気体排除処理方法。 - インクが導入されるインク導入孔とインクを吐出するノズルとを連通させるインク流路と、前記インク流路内のインクを前記ノズルから吐出させるインク吐出手段とを備えたヘッド本体を形成するヘッド本体形成工程と、
前記ヘッド本体形成工程の後に行われ、前記ヘッド本体の外部において、常温で液体に戻る物質の蒸気を生成する第1工程と、
前記ヘッド本体の前記インク流路内に、前記蒸気を充填する第2工程と、
前記蒸気が充填された状態の前記インク流路を外部に対して封止する第3工程とを備えていることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - インクが導入されるインク導入孔とインクを吐出するノズルとが連通するインク流路が形成されたインクジェットヘッドであって、
前記ノズルが形成されたインク吐出面を塞ぐキャップと、
一端が前記インク導入孔に接続され、他端がインクカートリッジと接続されるインク供給管と、
前記インク供給管内の流路を開閉可能な弁とを備え、
前記インク流路内が真空状態であって、前記キャップが前記インク吐出面を塞ぎ且つ前記弁が閉じられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003374530A JP2005138314A (ja) | 2003-11-04 | 2003-11-04 | 気体排除処理方法、インクジェットヘッドの気体排除処理方法、インクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッド |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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JP2005138314A true JP2005138314A (ja) | 2005-06-02 |
Family
ID=34686221
Family Applications (1)
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JP (1) | JP2005138314A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007307845A (ja) * | 2006-05-22 | 2007-11-29 | Brother Ind Ltd | 液体カートリッジ及び液体吐出装置 |
JP2008221623A (ja) * | 2007-03-13 | 2008-09-25 | Ricoh Co Ltd | 画像形成装置 |
-
2003
- 2003-11-04 JP JP2003374530A patent/JP2005138314A/ja active Pending
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