JP2005131169A - 歯科用の歯牙研削のための研削バー - Google Patents

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Abstract

【課題】 歯牙の補綴処置などの歯科治療において、一本の研削バーで均一なショルダー形成を可能とし、研削バーを意図的に傾けることなく、スキャロップの強い歯に対しても全周のショルダー形成を可能とする。
【解決手段】 歯牙に補綴処置を行う際にハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーにおいて、前記ハンドピースに装着するシャンク部1aと、前記シャンク部の先端側に形成された研削部Pとからなり、前記研削部が円柱状、円筒状、又は円錐台状の胴部1dとこの胴部の先端に形成した球状面1eとで構成され、当該球状面の曲率半径が前記胴部端部の半径よりも大きな径で形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、歯科用として歯牙にセラミックなどの複合材料を用いて歯冠修復やその他一般の補綴処置を行う際に、ハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーに関する。
歯科治療において、従来の歯冠は金属製であったから肉厚が薄くとも機械的強度が十分にあり問題はなかったが、近年の歯冠にはセラミックやハイブリッドセラミックなどの材料が用いられるようになり、強靭性や機械的強度の点を除けば金属歯冠よりも、口腔内の感触や色彩の自由度などの面で優れているため多用されるようになってきた。
しかし、この強靭性や機械的強度を補うためには、セラミックなどの歯冠修復処置を行う際に、図4(A)(B)に示すように歯の歯頚部でショルダー形成ラインLにそって、全周に約1mm幅のショルダーSの形成を行う必要がある。図4(A)は、歯牙Tを研削するために、ハンドピースHに取り付けた研削バーBを、修復すべき歯冠の形状を予測して右側から矢印方向に歯牙の周りを旋回させて一周させ、図4(B)のようにショルダー形成を仕上げる状態を説明するものである。
この場合に現実の歯牙においては、図5に示すようにショルダー形成ラインLが、唇側面や舌側面又は隣接側面とでは高さ(歯肉のスキャロップ)が異なり、これが大きい場合にはスムーズなショルダー形成を行うことは、熟練を要する高度で難しい技術である。このことを具体的に一本の歯牙を取り出して説明すると、その際の加工状態を図6に示すように、各種の歯牙TにはスキャロップKのある複雑なショルダー形成ラインLがあることから容易に理解できる。
従来、歯科用として用いられている研削バーは、円筒部の外周面で研削するというのが一般的で、僅かに先端部が紡錘形、球面状あるいは湾曲したコーナーを有するものなどが一部で知られているにすぎない。
さらに、従来から歯にセラミックなどによる修復を行う際のショルダー形成は、図7に示すように初めにディープシャンファー用の研削バーB1(非特許文献1参照)を用いて図8のように研削し、その後に先端がフラットな形状で湾曲したコーナーを有する研削バーB2(非特許文献1参照)を用いて、図9に示すようにショルダー形状を整えるのが一般的な方法であった。
尚、従来技術として出願人が調査した範囲では、この種の用途の研削バーとしての先行技術は、上記従来から使用されているのもののほか、特許文献1として特開平11−277453号公報の図1に示されるものが見出されるに過ぎない。
特開平11−277453号公報(図1) 株式会社日向和田精密製作所発行製品カタログ「Mary Dia」(第2頁、第10頁)
上記したように、既存のディープシャンファー用の研削バーB1を用いてショルダー形成を行うと、図8に示すようにJ型のマージン形態となり遊離エナメル質部Uを残すことになる。
そこで、この遊離エナメル質部Uを、先端がフラットであって湾曲したコーナーを有するバーB2で削り、図9に示すようにショルダーを形成することになる。
しかし、中央の先端がフラットでコーナーが湾曲しているこの研削バーB2は、図10および図11に示すように、ショルダーマージン面に対して常に垂直に当てて歯牙Tを削らなければならず、狭い口腔内における作業としては極めて困難で、熟練を要する高度な技術であった。
つまり、一般に治療する歯牙Tは歯列の中間にあり、隣接する歯が有る為にショルダーSを形成するのに制約となるからである。又歯の唇側面や舌側面と相隣接する歯の面とでは高さに差が生じる為に、全周に亘り三次元的に研削バーB2の歯軸に対する傾きを調整することは、一般に連続して研削作業が行われることを考えると非常に困難な作業であって、極めて熟練した高度な技術を要するものである。
すなわち、形成しようとする歯冠の全周は唇側、舌側と隣接面とでは大きな高低差が有るから、ショルダーマージン面に対し全周360度の広範囲に亘り、先端がフラットな研削バーB2を直角に当て、隣接する歯牙Tとの間に正しい角度で研削バーB2を当て、ショルダーマージンを形成するのは現実には非常に困難であり、熟練した高度な技術を要するのである。
さらに、この場合に、ショルダーマージン面に対して、完全に垂直に当てて歯牙Tを削れれば問題はないが、研削バーB2が進行方向に向かって倒れていると、ショルダー面Fに研削バーB2の研削跡が段差となって残るいわゆるカッターマークが残り、これにあわせて製作されその後再びそこに嵌め合わされる歯冠を元のカッターマークと一致させ難く、その間に隙間が生じ、ここに細菌等が浸入することになって歯科衛生上好ましくない状態になる。特に、従来の湾曲したコーナーを有する研削バーB2では、湾曲したコーナーの曲率が小さいためにカッターマークが生じ易くなる。
即ち、従来のショルダー形成用の湾曲したコーナーを有するバーB2は、先端がフラットでコーナーのみを曲面とした研削バーであるから、図12(A)に示すようにショルダーSを形成すべき面に対し研削バーB2を常に直角に当てた場合と、図13(A)に示すように傾けて当てつつ形成した場合とでは、出来あがるショルダーSの切削断面が図12(B)および図13(B)に示すように異なってくる。すなわち、上述の通りショルダーS面にカッターマークが残るという現象が生じ易くなる。
また、研削バーB2を傾けて水平方向に動かすと切削断面が変化するということは、スキャロップKのある歯においては歯軸に対し平行に研削バーB2を当てて形成すると、形成されるショルダーSの形が変わってくることを意味する。
そして、従来の湾曲したコーナーを有する研削バーB2で、全周のショルダー形成が歯軸を中心に形成されると、角度θが歯牙Tの根面に対して90度よりも狭い角度となって、図14に示すように鋭角状に遊離エナメル質Uが残り、図15に示すような理想的ショルダー形成とはならない。
上述の通り、従来二種類の研削バーB1、B2を用いなければならないという課題があり、さらに形成するショルダー面Fが平面状ではなく、三次元方向となる為に従来の方法でスムーズなショルダーSを形成することは非常に難しく、高度で熟練した技術を必要とした。
さらに、従来のディープシャンファーの研削バーB1を用いてショルダー形成を行うと、研削バーB1の太さが1mm程度であっても形成されるショルダーSの幅が狭くなり、約1mmの幅のショルダーSとはならず、その上、従来の研削バーB1で歯軸に対して深く形成すると、J型のショルダー形成となり、遊離エナメル質Uを削除する為にはさらに引き続けてシャンファー用バーB1を使用すると、シャンファーバーB1の先端のRが小さいことから、その現象の原理を理解し易くするため、図16に誇張して示すような二本の形成ラインがショルダーSに出来てしまい、上述の図7乃至図9に好ましくない例として示すように、理想的でスムーズなショルダーSの形成が出来ないという課題がある。
また、従来の湾曲したコーナーを有する研削バーB2で、全周のショルダー形成が歯軸を中心に形成されるときの状態を図17に示すと、この研削バーB2ではスキャロップのあるショルダー面Fに対し、破線で示すように常に直角に当てなければならず、歯軸と平行に動かすとショルダーSの形が変化してしまい、一定のショルダーS形態とはならない。
すなわち、歯軸と平行に動かして傾斜したショルダー面を研削するとき、図の左側では曲面aのようなショルダー面となり、図の中央部付近では曲面bのようなショルダー面となり、図の右側では曲面cのようなショルダー面となり全域で同一形状とならない。
したがって、スキャロップの強い歯においてスムーズなショルダーSの形成を行うことは、技術的に困難であり高度で熟練した技術を必要とする。
そこで、本発明は、上記課題を解決するために一本の研削バーで均一なショルダー形成を可能とし、従来のショルダー形成のため湾曲したコーナーを有するバーを用いる場合には、歯の長軸方向ではなくマージン面に対して垂直に動かさなければならなかったのに比べて、研削バーを意図的に傾けることなく、スキャロップの強い歯に対しても全周のショルダー形成を可能とするもので、歯科用として歯牙にセラミックなどの複合材料を用いて、歯冠修復やその他一般の補綴処置を行う際に用いる歯牙研削のための研削バー提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、本発明の基本的手段は請求項1に記載したように、歯牙に補綴処置を行う際にハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーにおいて、前記ハンドピースに装着するシャンク部と、前記シャンク部の先端側に形成された研削部とからなり、前記研削部が円柱状、円筒状、又は円錐台状の胴部とこの胴部の先端に形成した球状面とで構成され、当該球状面の曲率半径が前記胴部端部の半径よりも大きな径で形成されていることを特徴とする。
同じく、より具体的な手段は、請求項2に記載したように、歯牙に補綴処置を行う際にハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーにおいて、前記ハンドピースに装着するシャンク部と、前記シャンク部の先端側に形成された研削部とからなり、前記研削部が円柱状、円筒状、又は円錐台状の胴部とこの胴部の先端に形成した球状面とで構成され、当該球状面の曲率半径が前記胴部の半径よりも大きな径で形成され、更に前記胴部端部の直径をD、球状面の曲率半径をR、前記研削バーが使用される際の傾斜角度をPとするときそれらの間に、R=D/2sin2Pの関係が満たされ、しかもDが0.6mm乃至1.4mmであって、Pが10度乃至30度の範囲にある半径Rで形成されていることを特徴とする。
以上のように、請求項1に記載した発明によれば、歯牙に補綴処置を行う際にハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーにおいて、前記ハンドピースに装着するシャンク部と、前記シャンク部の先端側に形成された研削部とからなり、前記研削部が円柱状、円筒状、又は円錐台状の胴部とこの胴部の先端に形成した球状面とで構成され、当該球状面の曲率半径が前記胴部端部の半径よりも大きな径で形成されているから、一本の研削バーで均一なショルダー形成を可能とし、従来はショルダー形成のため湾曲したコーナーを有する研削バーを用いる場合には、歯の長軸方向ではなくマージン面に対して垂直に動かさなければならなかったのに比べて、研削バーを意図的に傾ける必要がなく、また研削バーの研削跡が段差となって残るいわゆるカッターマークを生じさせることなくスキャロップの強い歯に対しても、熟練を要することなく容易に全周に亘って良好なショルダー形成を可能とする。
また、請求項2に記載した発明によれば、歯牙に補綴処置を行う際にハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーにおいて、前記ハンドピースに装着するシャンク部と、前記シャンク部の先端側に形成された研削部とからなり、前記研削部が円柱状、円筒状、又は円錐台状の胴部とこの胴部の先端に形成した球状面とで構成され、当該球状面の曲率半径が前記胴部端部の半径よりも大きな径で形成され、更に前記胴部端部の直径をD、球状面の曲率半径をR、前記研削バーが使用される際の傾斜角度をPとするときそれらの間に、R=D/2sin2Pの関係が満たされ、しかもDが0.6mm乃至1.4mmであって、Pが10度乃至30度の範囲にある半径Rで形成されているから、歯の種類を問わずどのような歯牙に対しても熟練した技術を要することなく、スキャロップの強い歯に対しても、全周に亘って良好なショルダー形成を可能とするものである。
即ち、研削バーの先端に半径を大きくした球状面を前記球状面の曲率半径が前記研削部の胴部端部の半径よりも大きな径で形成することによって、研削バーの歯軸に対する傾きが少し異なっていたとしても、均一なショルダーSの形成を可能にするものである。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1(A)において、歯牙Tにセラミックなどの複合材料からなる歯冠をかぶせるため、補綴処置を行う際に用いる歯牙研削のための研削バーは、図示しないが公知のハンドピースに装着され、ハンドピースに装着するシャンク部1aと、シャンク部の先に形成されたネック部1bと、ネック部に続くロッド部1cの先端側にダイヤモンド粉末を付着して形成された研削部Pとからなっている。
研削部Pは、円錐台状胴部1dとこの胴部1dの先端側端部に形成した球状面1eとからなり、この球状面1eの曲率半径は胴部1dの端部半径よりも大きく形成されている。
従って、研削部Pの胴部1dと先端側の球状面1eとの交差部1fは鈍角をなしている。もちろん、この交差部1fの角部を鈍角に尖るのではなく、丸める程度の小さな曲率をもった曲面に形成してもよい。研削部Pは円柱状、円筒状に形成しても良い。
ここで、ハンドピースH、シャンク部1a、ネック部1bおよびロッド部1cは、図4(A)に示す公知のものと原理的に同一であるから、図示および説明を省略してある。
歯牙Tに補綴処置を行う際に、図4(A)の図示状態から研削バーが矢印方向に進められると、研削部Pの胴部1dと球状面1eとによって歯牙のショルダー面Fの研削が行われ、その断面は断続的にはならず、図1(B)のように連続したカッターマークや段部の無いきれいな面になる。
つぎに、研削バー1が歯牙Tの歯軸に合わせて傾斜させて使用される状態を図2(A)に示している。このように研削バー1を歯軸に対して傾斜させて使用した場合、歯牙Tのショルダー面Fの研削された断面は図2(B)のようになる。
このような研削バーによる歯牙Tのショルダー面Fの研削が行われた場合、その断面は図1(B)、図2(B)から明らかなように、歯軸に対するある一定の傾斜角の範囲内であれば同一断面形状にすることができる。
従って、このような研削バー1を歯牙Tの歯軸に沿って平行に動かして、傾斜したショルダー面Fを研削すると、ショルダー面Fの形状は図3に示すようにほぼ同一形状の面にすることができる。すなわち、図の左側では曲面aのようなショルダー面Fとなり、図の中央部付近では曲面bのようなショルダー面Fとなり、さらに図の右側では曲面cのようなショルダー面Fにすることができる。
従って、スキャロップKの強い歯Tにおいても、スムーズなショルダーSの形成を行うことが可能であり、従来のような技術的な困難性を伴うことなく、かつ高度で熟練した技術を必要とすることもなくなる。
すなわち、従来は歯の長軸方向ではなくマージン面に対して垂直に、つまりスキャロップKの傾斜に合わせてその都度傾けて動かさなければならなかったのに比べて、研削バーを意図的に傾けることなく、スキャロップの強い歯に対しても、適宜歯軸に対して傾斜させあるいは傾斜させることなく、全周に亘って適正なショルダー形成を可能とするものである。
ところで、口腔内の歯牙の形態(マージンの形態)は歯種によって異なることから、できる限りそれぞれの歯の全周に亘って適正なショルダー形成を行おうとすると、日本人の歯の歯頚部にできる曲面の形に可及的に適合した歯牙研削のための研削バーが必要となる。
即ち、口腔内には様々な形態の歯があり、歯の種類によりそれぞれの歯頚部の曲線が異なる。そこで発明者と出願人とは、ある歯科治療の臨床で得られた日本人男女の歯頚部の曲線湾曲したコーナー値を計測したところ、少数データではあるが一般的な傾向としての概要を示す下記の様な結果となった。
上顎切歯では 1.463〜4.480R
下顎切歯では 0.931〜2.179R
上顎犬歯では 1.597〜4.722R
下顎犬歯では 1.233〜3.156R
上顎小臼歯では 1.054〜4.700R
下顎小臼歯では 1.008〜3.942R
上顎大臼歯では 1.799〜12.148R
下顎大臼歯では 1.208〜6.514R
このデータを分析し有意なものを取り出すと、最小のRが0.931で最大が3.986となり、臨床テストでは理想的なショルダー面Fを形成するためには、このR値よりも小さなRを有する研削バーが必要となることが分かった。
即ち、歯牙の歯種(前歯・小臼歯・大臼歯)や歯肉の形状に合わせて、円筒部の直径Dが0.6mmの歯牙研削バーの先端凸部が、球面状で半径0.35mm〜0.88mmの範囲で付与されている。
研削バーの円筒部の直径Dが1.3mmの場合、先端球状面を半径0.75mmとすると下顎前歯などのスキャロップの強い歯に適し、半径1mm乃至2mmとすると上顎前歯や小臼歯に適し、半径3.7mmとするとスキャロップの少ない大臼歯のショルダーSの形成に適する形状となる。
なお、円筒部の直径Dが1.3mmで半径0.75mmの球面状の先端を有する研削バーは、研削バーを30度傾けて水平方向に形成しても、直角にして水平方向に形成しても、研削部底面にできるショルダーSの形状を同じにすることができる。
また、円筒部の直径0.6mmの場合、球状面凸部を半径0.35mmとすると、0〜30度内ではバーを傾けても研削部底面に出来るショルダーSの形は同じになり、臨床上からは術者に厳密な形成角度を要求せずに均一なショルダー形成が出来る研削バーである。
従来の湾曲したコーナーを有するショルダー形成用バーでは、形成するバーの歯軸に対する傾きにより切削されるショルダーSの形が変化するために、ショルダーSに対して直角に保たねばならないが、本発明による先端が緩やかな球面状の研削バーにおいては、例えば研削バーの胴部1dの直径が1.3mmで先端の球状面1eの曲率半径を0.766mmとした場合、研削バーを30度形成しても研削される形成面は同じ形状となる。
また、先端球状面の曲率半径を1.042mmとした場合、20度傾けて形成しても研削面は同じとなる。さらに先端の球状面の曲率半径を1.909mmとした場合、10度まで傾けても同一の形態となり、先端の球状面の曲率半径を3.745mmとすると5度傾けても同じ形状の研削面となる。
研削バーの先端球状面1eの半径を0.767mmとすると、胴部1dの直径が1.3mmのバーでは30度傾けても同様の形成となるが、直径が1mmのバーでは20度まで傾けても同じ形成ができる。さらに、先端球状面1eの曲率半径を1.024mmとすると15度まで、先端球状面1eの曲率半径を1.909mmすると7度まで、先端球状面1eの曲率半径を3.745mmとすると3度50分傾けても、何れの場合も同じ形成の研削面が出来あがることが分かった。
上記のように、歯軸に対して研削バーを何度傾けられるか、あるいはどの程度傾けても同様のショルダー面F形成が出来るかが、実際の臨床治療においては使いやすいバーでるか、あるいは使いにくいバーであるかを決定する。
例えば、従来の湾曲したコーナーを有する研削バーB2では、図17に示すようにマージン面に対し直角でしか使えず、臨床においては非常に使いづらいバーであることがわかる。
一方、従来のディープシャンファーの研削バーB1では先端が半球状であることから、図19に示すように45度傾けて水平方向に削っても、図20に示すようにスキャロップの強い歯に対して傾けることなく、直角で水平方向に削っても切削された形は同じ半球状となる為に、臨床テストでは非常に使いやすい研削バーであることがわかる。
しかしながら、その反面で従来のこの研削バーB1においては、求められるショルダーSの形成がすでに述べたように不十分であり、理想的でスムーズなショルダーSができない。即ち、ショルダーSの幅を大きくした場合に、ショルダーS
の幅に比べてこの研削バーB1の湾曲した先端の曲率が小さい為に、使い易くてもショルダー面Fにカッターマークが生じて不整形になりやすい。
これに反して、本発明の研削バーは研削部Pが胴部1dを有し、その胴部1dの端部半径よりも大きな曲率半径で形成された先端側球状面1eを有するから、歯牙の形状に合わせて自由に研削作業を進めても適正なショルダー形成が可能であり、能率的に歯牙Tの補綴処置を行うことができるようになる。
ここで、研削部先端球状面1eの曲率半径について検討すると、セラミックなどの複合材料を歯科用の歯冠に使用する場合、材料の強靭性あるいは機械的強度の点からその肉厚を約1.0mm程度に確保する必要があるから、歯牙の研削も約1.0mm程度の切込みを行うことになり、従って研削部の胴部1d径は約1.0mmが基準となる。
一方、隣接する歯牙との間隔は部分的であるため、これより狭くても強度を確保することが可能であり、約0.6mmの太さを確保すればこの隙間に対応する研削バーを構成することが可能である。また、ニューセラミックスなどの複合材料の中には強靭性、機械的強度に優れた材料があり、約0.6mmの肉厚でも十分に歯冠用の材料として使用できるものが現れている。
そのうえ、約0.6mmの研削バーであれば歯科医が手持ちで施術した場合に、僅かに研削バーの先端に振れを生じることによって、遊離エナメル質部を残すことなく適切なショルダーSの形成が可能である。したがって、研削部の円筒径を約0.6mm以上にすることがこのような条件から決定される。
さらに、唇側面または舌側面を研削する場合には、歯肉を傷つけないで適切なショルダー形成を行うためには、最小肉厚の約二倍の軸径にするのが効率的である。すなわち、この軸径であれば一度の研削によって適切なショルダー形成が可能になる反面で、逆に太すぎると歯肉を傷つけることになり好ましくない。
そのため、適切なショルダー形成を効率的に行うためには、研削部の円筒径は研削する歯牙における最小肉厚の約二倍の軸径に設定するのが臨床上からも最適である。
一方、このような研削バーの先端部の形状について考えてみると、研削部の先端は球状面であって前記球状面の曲率半径が前記研削部の胴部端部の半径よりも大きな径で形成され、前記研削部の直径をD、その先端の球状面の曲率半径をR、前記研削バーの歯軸に対する傾斜角度をPとするとき、図21に示されるようにそれらの間に、
R=D/2sin2P
の関係が満たされ、しかもDが0.6mm乃至1.4mmであって、Pが10度乃至30度の範囲にある半径Rで形成される。
すなわち、このような関係を満たすように、口腔内で歯牙の歯種に対応して、研削バーが使用される際の歯軸に対する傾き等の作業性を考慮して研削部先端の形状を求めると、研削部の胴部1dの端部半径よりも大きな曲率半径Rの球状面1eを、球状面1eの頂点Aと胴部1dの軸心とを一致させた円筒で切り取った形状が最適であり、胴部1dの直径Dが0.6mm乃至1.4mmの研削部に対して、半径が0.35mm乃至2.05mmの球状面1eを、直径Dの円筒で切り取った形状であることが臨床上から得られる。
以上のべたことから明らかなように、本発明による研削バーによって歯牙研削を行った場合、スキャロップが強い歯においても、研削バーを歯軸に近い傾きをもったまま治療を行うことによって適切なショルダー形成ができ、さらに進行方向に対して前後に研削バーの若干の傾きが生じても、同一で大きな曲率を保ったままショルダー面Fにカッターマークを生じさせることなく、効率的でスムーズなショルダー形成が可能である。
また、本発明による研削部の胴部1dの半径よりも大きな曲率半径で形成された先端側球状面1eを有する歯牙研削のための研削バーは、日本人の歯牙の歯頚部に合わせて最小の曲率値よりも小さな曲率を有しているので、ほぼ全歯に対応できる研削バーの提供が可能となるものである。
尚、図1に示すロッド部1cの全てが研削部の胴部1dであっても良く、さらにネック部1bも必須のものではないから、シャンク部1aから直接ロッド部1cおよび胴部1dとなるような研削バー、あるいはシャンク部1aとロッド部1cとが同一太さの研削バーを構成することも可能である。
そして、上記説明では本発明による研削バーの用途としてショルダー形成についてのみ説明したが、ショルダー形成に最も効果的であるもののこれに限定されるものではなく、歯牙の中央部分や側部の患部を除去するため、あるいは部分的な穿孔ために用いても、良好な研削形状を得られ効果的である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、適宜変更して実施することができるものである。
本発明の一実施の形態における研削バーの作動説明図である。 本発明の一実施の形態における研削バーを傾斜させて作動した説明図である。 本発明の一実施の形態における研削バーをスキャロップのある歯牙に実施した作動説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダー形成の説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダーライン形成の説明図である。 従来の歯科治療におけるスキャロップのある歯牙に対するショルダー形成の説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダーライン形成の第一ステップの説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダーライン形成の第一ステップが完了した状態の説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダーライン形成の第二ステップの説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダーライン形成作業の説明図である。 従来の歯科治療におけるスキャロップのある歯牙に対するショルダーライン形成作業の説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダーライン形成でバーを垂直にして作動させた場合の第一ステップの説明図である。 従来の歯科治療におけるショルダーライン形成でバーを傾斜させて作動させた場合の第一ステップの説明図である。 従来の湾曲したコーナーを有する研削バーの作動説明図である。 従来の湾曲したコーナーを有する研削バーによる作動完了状態の理想的なショルダー形態の説明図である。 従来のディープシャンファー用研削バーの作動説明図である。 従来の湾曲したコーナーを有する研削バーによる研削形状の説明図である。 従来の湾曲したコーナーを有する研削バーによる研削作業の説明図である。 従来のディープシャンファー用研削バーを傾斜させて作動した説明図である。 従来のディープシャンファー用研削バーを垂直にして作動した説明図である。 本発明の一実施の形態における研削バーの先端部形状の説明図である。
符号の説明
P 研削部
1d 胴部
1e 球状面
1f 円筒状または先端側が小径の楕円体状研削部と球状面との交差部
B 研削バー
K スキャロップ
L ショルダー形成ライン
T 歯(歯牙)
S ショルダー
F ショルダー面
H ハンドピース

Claims (2)

  1. 歯牙に補綴処置を行う際にハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーにおいて、前記ハンドピースに装着するシャンク部と、前記シャンク部の先端側に形成された研削部とからなり、前記研削部が円柱状、円筒状、又は円錐台状の胴部とこの胴部の先端に形成した球状面とで構成され、当該球状面の曲率半径が前記胴部端部の半径よりも大きな径で形成されていることを特徴とする歯科用の歯牙研削のための研削バー。
  2. 歯牙に補綴処置を行う際にハンドピースに装着して用いる歯牙研削のための研削バーにおいて、前記ハンドピースに装着するシャンク部と、前記シャンク部の先端側に形成された研削部とからなり、前記研削部が円柱状、円筒状、又は円錐台状の胴部とこの胴部の先端に形成した球状面とで構成され、当該球状面の曲率半径が前記胴部の半径よりも大きな径で形成され、更に前記胴部端部の直径をD、球状面の曲率半径をR、前記研削バーが使用される際の傾斜角度をPとするときそれらの間に、R=D/2sin2Pの関係が満たされ、しかもDが0.6mm乃至1.4mmであって、Pが10度乃至30度の範囲にある半径Rで形成されていることを特徴とする歯科用の歯牙研削のための研削バー。
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