(実施形態1)
図1は、本実施形態による光ディスク装置19の機能ブロックの構成を示す。光ディスク装置19は、レンズ駆動回路7と、光ヘッド10と、TE生成チップ11と、光ディスクコントローラ(ODC)12と、センサ部13とを備えている。
光ディスク装置19は、光ディスク1に対してレーザ光を用いてデータの書き込みおよび読み出しを行うことができる。それらの動作を行う際、光ディスク装置19は、レーザ光の焦点が光ディスクの情報記録層上に位置し、かつ、レーザスポットが情報記録層上に設けられた記録トラックに追従するように制御を行う。この制御はサーボ制御と呼ばれている。図には、本実施形態によるサーボ制御を行うための構成要素が示されている。なお、サーボ制御の別の例は第2の実施形態として説明する。
光ディスク装置は、PC等のホストコンピュータ(図示せず)に接続され、その光ディスクドライブとして利用することができる。ユーザは、ホストコンピュータを操作して光ディスク装置を動作させる。記録情報および/または再生情報は光ディスク装置とホストコンピュータとの間で直接転送されず、ドライブ内に内蔵したバッファメモリ(図示せず)を介して転送される。例えば光ディスクにデータを書き込む際には、ホストコンピュータから送信される記録情報は一旦バッファメモリに記憶され、ドライブはバッファメモリに記憶されている情報を読み出して光ディスクに記録する。光ディスクから情報を再生する際にはドライブが光ディスクから再生した情報を一旦バッファメモリに記憶し、ホストコンピュータはバッファメモリに記憶されている情報を読み出す。なお、図1には書き込み処理および読み出し処理を行うための構成要素は示していないが、周知の部材および処理手順を用いることができるため、本実施形態では説明を省略する。
本明細書における光ディスク1は、例えばCD、DVD−ROM、DVD−RAM,DVD−RW,DVD−R,+RW,+R、BD(Blu-Ray Disc)等の円盤状の記録媒体を想定している。以下、図示された光ディスク装置19の各構成要素を説明する。
レンズ駆動回路7は、トラッキング制御信号に基づいて駆動信号を生成および出力し、後述する対物レンズ5の位置を光ディスク1の半径方向に変化させる。例えば、トラッキング制御信号がホールドされたときは、そのホールドされる直前の駆動信号の出力を継続し、ホールドが解除されているときはトラッキング制御信号に応じた駆動信号を出力する。なお、レンズ駆動回路7は、光ディスク1の半径方向のみならず、光ディスク1の情報記録層に垂直な方向にも対物レンズ5の位置を変化させることが可能であるが、本実施形態による制御では特に問題ではないので、説明は省略する。
光ヘッド10は、レーザダイオード2と、コリメートレンズ3と、ビームスプリッタ4と、対物レンズ5と、受光量検出部6と、第1遮断部100と、増幅部101とを有する。
レーザダイオード2は、レーザ光を放射する。レーザ光の波長は光ディスク1の種類に応じて異なる。例えば光ディスク1がBDのとき、レーザ光の波長は約405nmである。コリメートレンズ3は、レーザダイオード2から放射されたレーザ光を平行光に変換する。ビームスプリッタ4は、コリメートレンズ3から出射された平行光を対物レンズ5へ向けて透過するとともに、対物レンズ5からの平行光(光ディスク1からの反射光)を受光量検出部6のある方向へ分離する。対物レンズ5は、コリメートレンズ3およびビームスプリッタ4を透過してきた平行光を集光して光ディスク1の情報記録層上にレーザスポットを形成する。また、対物レンズ5は情報記録層において反射された光を平行光に変換してビームスプリッタ4へ送る。受光量検出部6は、ビームスプリッタ4から出射された平行光を受け、その受光量に応じた光量信号を生成して出力する。例えば、受光量検出部6は、受光量に比例した光電流を出力するフォトディテクタである。この光電流信号は、光ディスク1上のデータを読み出した結果として得られる信号であり、本明細書では再生信号とも称する。
第一遮断部100は、後述の検出制御部108から出力される第一遮断信号がハイレベルのときは基準電圧を出力し、ローレベルのときは受光量検出部6から出力される光量信号をそのまま出力する。増幅部101は第一遮断部100が出力する信号を増幅して出力するアンプである。なお、第一遮断部100から光量信号がそのまま出力されているときは、増幅された信号は実質的には再生信号である。
TE生成チップ11は、第二遮断部102と、TE信号生成部103と、ローパスフィルタ109とを有している。TE生成チップ11は、例えば半導体集積回路として実現することができる。
第二遮断部102は、後述の検出制御部108から出力される第二遮断信号がハイレベルのときは基準電圧を出力し、ローレベルのときは増幅部101から出力される信号をそのまま出力する。
TE信号生成部103は、第二遮断部102から出力された信号に基づいて、レーザ光の照射位置と光ディスク1の記録トラック中心とのずれを表すトラッキングエラー(Tracking Error;TE)信号を出力する。
ローパスフィルタ109は、TE信号生成部103が出力するTE信号からトラッキング制御に必要な周波数帯域以上の成分を遮断して、その周波数(遮断周波数)以下の周波数成分を抽出する。例えば、光ディスク1がBDであり、通常速度(1倍速)で回転しているときは約100kHz以下の周波数成分が抽出される。また、ローパスフィルタ109は、後述する状況判断部107から出力される検出信号がハイレベルのときは遮断周波数を高くし(例えば、上述のBDの例では約500kHz)、ローレベルのときは低くすることができる(例えば、上述のBDの例では約100kHz)。
ローパスフィルタ109は、遮断周波数が可変であれば、アナログフィルタであってもよいしデジタルフィルタであってもよい。なお、TE生成チップ11は、次に説明するODC12上にDSPとして設けられていてもよく、そのときはTE生成チップ11とODC12とを特に分けて捉えなくてもよい。
センサ部13は、第一温度検出部104および第二温度検出部105を有している。これらは具体的にはセンサである。第一温度検出部104は、増幅部101の内部または周辺の温度を検出して第一温度信号を出力する。第二温度検出部105は、TE信号生成部103の内部または周辺の温度を検出して第二温度信号を出力する。
光ディスクコントローラ(Optical Disc Controller;ODC)12は、温度記憶部106と、状況判断部107と、検出制御部108と、制御信号生成部110と、オフセット補正部111と、オフセット検出部112と、検出値記憶部113と、補正値計算部114とを有する。ODC12は、1以上のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、および、揮発性または不揮発性メモリ等を有している。DSPはいわゆるコンピュータであり、メモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することによって上述の各構成要素の機能を実現できる。なお、DSPに与えるコンピュータプログラムを変更すれば、本実施形態による光ディスク装置の他、第2〜第4の実施形態によるODCも実現される。このようなコンピュータプログラムは、後に各実施形態の説明において参照する図面のフローチャートに記載された処理に従って記述されている。以下、各要素の機能を説明する。
温度記憶部106は、後述の検出信号および更新信号に応じて、第一温度検出部104から出力される第一温度信号および第二温度検出部105から出力される第二温度信号の各々の値を記憶する。
状況判断部107は、第一温度信号の値、第二温度信号の値および温度記憶部106に記憶された値に応じて更新信号および検出信号を出力する。状況判断部107のより詳細な構成、および、更新信号および検出信号の詳細な説明は後述する。
検出制御部108は、検出信号に応じて2値で示される第一遮断信号、第二遮断信号および検出制御信号を出力する。
制御信号生成部110は、検出信号がローレベルのときはオフセット補正部111の出力信号に応じてレーザ光の照射位置を光ディスク1の記録トラックに追従させるためのトラッキング制御信号を出力する。一方、検出信号がハイレベルのときはトラッキング制御信号の値をホールド(固定)する。オフセット補正部111は、ローパスフィルタ109の出力信号に含まれる電気的オフセットを補正する。具体的には、オフセット補正部111は、ローパスフィルタ109の出力信号の値から補正値計算部114の出力信号の値を減算して出力する。
オフセット検出部112は、検出制御部108からハイレベルの検出制御信号を受け取ると、電気的オフセットを検出してオフセット信号を出力する。
検出値記憶部113は、オフセット検出部112から出力されるオフセット信号の値を、検出信号および検出制御部108からの検出制御信号に応じて記憶する。
補正値計算部114は、更新信号および検出信号に応じて、検出値記憶部113および温度記憶部106から、記憶された値を読み出して電気的オフセットの補正値を計算し、補正信号を出力する。また、補正値計算部114は、更新信号に応じて補正信号の値を保持する。
次に、ODC12の各構成要素をより詳しく説明する。
図2は、状況判断部107の機能ブロックの構成を示す。状況判断部107は、温度変化検出部200と、判断部201と、経過時間測定部202とを含む。
温度変化検出部200は、温度記憶部106から値を読み出し、第一温度検出部104から出力される第一温度信号の値と温度記憶部106に格納されている値の差を計算し、第一温度変化信号を出力する。第一温度変化信号の値は、その差の絶対値を示す。温度変化検出部200は、第二温度検出部105から出力される第二温度信号の値と温度記憶部106のアドレス2(後述)に格納されている値の差を計算し、その絶対値を示す第二温度変化信号を出力する。なお、温度記憶部106は複数の情報格納領域を有している。温度変化検出部200がどの領域の値を読み出すかについては後述する。
判断部201は、通常ローレベルの更新信号を出力し、第一温度変化信号または第二温度変化信号の値が所定の閾値を超えると、更新信号のレベルを一定時間ハイレベルにする。また、判断部201は、更新信号および経過時間測定部202から出力される経過時間信号に応じて検出信号を出力する。更新信号および検出信号は2値のパルス信号である。
経過時間測定部202は、検出信号のパルスの立ち上がりからの経過時間を測定してその値を示す経過時間信号を出力する。なお、検出信号のパルスが立ち上がるごとに経過時間信号の値をゼロにリセットする。
次に、温度記憶部106の情報格納領域を説明し、その後、温度記憶部106を利用した状況判断部107の動作を説明する。
温度記憶部106は6つの情報格納領域を有している。仮に各情報格納領域の位置を特定するためのアドレスをそれぞれアドレス1、アドレス2、アドレス3、アドレス4、アドレス5、アドレス6と記載する。各領域に格納される情報は予め定められている。具体的には、アドレス1の領域には第一温度信号の値が格納され、アドレス2の領域には第二温度信号の値、アドレス3およびアドレス4の領域には第一温度信号の値、アドレス5およびアドレス6の領域には第二温度信号の値が格納される。
第一温度信号および第二温度信号のそれぞれが、3つの異なる領域に格納されている理由は、格納した値を異なるタイミングで更新するためである。具体的には、アドレス1の領域の格納値は更新信号によって制御され、アドレス2の領域の格納値は更新信号によって、アドレス3および4の領域の格納値は検出信号によって、アドレス5および6の領域の格納値は検出信号によって制御される。
次に、図3を参照しながら、温度記憶部106および状況判断部107の動作タイミングを説明する。
図3は、状況判断部107に関連する信号のタイミングチャートを示す。
第一温度信号は、更新信号のパルスが立ち上がるタイミング(図中の時間軸に垂直な方向の破線)でサンプリングされ、その値は温度記憶部106のアドレス1の領域に格納される。参考のため、格納される第一温度信号の値を黒点(●)で示す。
第一温度変化信号は、第一温度信号の値から、温度記憶部106のアドレス1の領域に格納された値を減算した値の絶対値を示す信号である。なお、更新信号のパルスの立ち上がり時点では第一温度信号の値とアドレス1の領域に格納された値は常に等しいので、第一温度変化信号の値はゼロとなる。
第二温度信号は、更新信号のパルスが立ち上がるタイミングでサンプリングされ、その値は温度記憶部106のアドレス2の領域に格納される。参考のため、格納される第二温度信号の値を黒点(●)で示す。
第二温度変化信号は、第二温度信号の値から、温度記憶部106のアドレス2の領域に格納された値を減算した値の絶対値を示す信号である。なお、更新信号のパルスの立ち上がり時点では第二温度信号の値とアドレス2の領域に格納された値は常に等しいので、第二温度変化信号の値はゼロとなる。
なお、温度記憶部106は、検出信号のパルスが立ち上がり時にアドレス3の領域に格納されている値をアドレス4の領域に格納し、その後、第一温度信号の値をアドレス3の領域に格納する。そして、アドレス5の領域に格納されている値をアドレス6の領域に格納した後、第二温度信号の値をアドレス5の領域に格納する。
更新信号は、通常ローレベルであり、第一温度変化信号または第二温度変化信号のいずれかの値が所定の閾値を超えたときに一定時間ハイレベルにされる。更新信号は、ハイレベルのときは温度記憶部106の値の更新を指示し、ローレベルのときは温度記憶部106の値の保持(すなわち更新なし)を指示する。
検出信号もまた、通常ローレベルであり、更新信号のパルスが立ち上がるタイミングにおいて経過時間信号の値が所定の閾値を超えていると一定時間ハイレベルにされる。すなわち、検出信号は、前にリセットされた時間からの経過時間が所定の閾値を超えているか否かの検出結果を示す信号である。ハイレベルの検出信号は検出ありを示し、ローレベルの検出信号は検出なしを示している。なお、検出信号のパルスの立ち下がりは更新信号のパルスの立ち下がりと同時である。
経過時間信号は、検出信号のパルスが立ち上がりに対応してゼロにリセットされ、その後の経過時間に比例して値が変化する。図には、経過時間に比例して増大する経過時間信号を示す。経過時間信号の値に基づいて、リセットされた時からの経過時間を特定することができる。
引き続き図3を参照して、各信号の関係を説明する。増幅部101の内部または周辺の温度、および、TE信号生成部103の内部または周辺の温度の一方が、更新信号の立ち上がり時から所定以上変化するごとに、更新信号は一定時間ハイレベルとなる。またこの時に検出信号の立ち上がり時から所定時間が経過している時は、検出信号は一定時間ハイレベルとなる。
図3に示す時刻t1、t2およびt3に注目する。時刻t3は現在時刻を示し、時刻t2は検出信号のパルスの立ち上がり時のうち、時刻t3から見て最も近い過去の時刻を示し、時刻t1は時刻t2の次に近い過去の時刻を示す。
温度記憶部106のアドレス1の領域には、時刻t2における第一温度信号の値が格納されている。同様に、アドレス2の領域には時刻t2における第二温度信号の値が、アドレス3の領域には時刻t2における第一温度信号の値が、アドレス4の領域には時刻t1における第一温度信号の値が、アドレス5の領域には時刻t2における第二温度信号の値が、そして、アドレス6の領域には時刻t1における第二温度信号の値が格納されている。すなわち、アドレス1およびアドレス2の各領域には、検出信号の値にかかわらず最後に更新信号がハイレベルになったときの第一温度信号および第二温度信号の値が格納されており、アドレス3およびアドレス5の各領域には、それぞれ最後に更新信号および検出信号がともにハイレベルになったときの第一温度信号および第二温度信号の値が格納されており、アドレス4およびアドレス6の領域にはそれぞれ2回前に更新信号および検出信号がともにハイレベルになったときの第一温度信号および第二温度信号の値が格納されている。
次に、ODC12の検出制御部108を詳細に説明する。図4は、検出制御部108の機能ブロックの構成を示す。検出制御部108は、第一遮断制御部400と、第二遮断制御部401と、オフセット検出制御部402とを有する。これらは、いずれも、状況判断部107からの検出信号の立ち上がり時点からの経過時間に応じて動作する。
第一遮断制御部400は第一遮断信号を生成して第一遮断部100に出力する。第二遮断制御部401は第二遮断信号を生成して第二遮断部102に出力する。オフセット検出制御部402は検出制御信号を生成して、オフセット検出部112および検出値記憶部113に出力する。以下、図5を参照しながら、これらの信号の詳細を説明する。
図5は検出制御部108に関連する信号のタイミングチャートを示す。検出信号は、先に図3を参照しながら説明したとおり判断部201から出力される。第一遮断信号は、検出信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、検出信号のパルスの立ち下がりよりも前に立ち下がる。第二遮断信号は、第一遮断信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、第一遮断信号のパルスの立ち下がりと同時に立ち下がる。検出制御信号は、第一遮断信号がハイレベルである間に、2回のパルス波形を含む。1回目のパルスは、第一遮断信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、第二遮断信号のパルスの立ち上がりと同時に立ち下がる。2回目のパルスは、第二遮断信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、第一遮断信号および第二遮断信号のパルスの立ち下がりと同時に立ち下がる。
次に、オフセット検出部112を詳細に説明する。オフセット検出部112は、検出制御部108からハイレベルの検出制御信号を受け取ると、ローパスフィルタ109の出力信号の値を検出する。後述するように、この時はローパスフィルタ109から出力される信号には電気的オフセットに起因する信号成分が含まれている。オフセット検出部112はその値を検出する機能を有する。
次に、検出値記憶部113を詳細に説明する。検出値記憶部113は5つの情報格納領域を有する。各情報格納領域のアドレスをそれぞれアドレス7、アドレス8、アドレス9、アドレス10、アドレス11と記載する。検出値記憶部113は検出制御信号の各パルスが、検出信号のパルスが立ち上がった後の何回目のパルスであるかを検出し、各パルスに応じて検出制御部108からの検出制御信号のパルスが立ち下がる時のオフセット検出部112が出力するオフセット信号の値を記憶する。検出制御信号のパルスが1回目のパルスである時はその立ち下がる時のオフセット信号の値をアドレス11の情報格納領域に格納する。2回目のパルスである時はその立ち下がる時のオフセット信号の値をアドレス8の情報格納領域に格納する。検出値記憶部113はさらに、アドレス11に格納された値からアドレス8に格納された値を減算し、その結果をアドレス7に格納する。この動作により、アドレス7の領域には検出信号がハイレベルである時の増幅部101で発生している電気的オフセットを総合した値が格納され、アドレス8の領域には検出信号がハイレベルである時のTE信号生成部103およびローパスフィルタ109で発生している電気的オフセットの値が格納される。
また、検出値記憶部113は検出信号のパルスが立ち上がる時にアドレス7に格納された値をアドレス9に、アドレス8に格納された値をアドレス10に格納する。
以上の動作により、検出値記憶部113のアドレス7およびアドレス8には、それぞれ最後に更新ありかつ検出ありであった時の、増幅部101において発生している電気的オフセットを含む値、およびTE信号生成部103とローパスフィルタ109で発生している電気的オフセットを含む値が格納される。またアドレス9およびアドレス10には、それぞれ2回前に更新ありかつ検出ありであった時の、増幅部101で発生している電気的オフセットを含む値、およびTE信号生成部103とローパスフィルタ109で発生している電気的オフセットを含む値が格納される。またアドレス11には、最後に更新ありかつ検出ありであった時の増幅部101、TE信号生成部103およびローパスフィルタ109で発生している電気的オフセットを含む値が格納される。
次に、補正値計算部114を詳細に説明する。
図6は、温度記憶部106に記憶される値および検出値記憶部113に記憶される値と、検出信号および更新信号との関係を示す。補正値計算部114は、補正値の計算に際して、第一温度信号の値と、第二温度信号の値と、増幅部101で発生する電気的オフセットの値と、TE信号生成部103およびローパスフィルタ109において発生する電気的オフセットの値とを必要とする。
いま、時刻t6は現在時刻を示し、検出信号の立ち上がり時のうち、時刻t3は時刻t6から見て最も近い過去の時刻を示し、時刻t1は時刻t3の次に近い過去の時刻を示す。また、検出信号の立ち下がり時のうち、時刻t4は時刻t6から見て最も近い過去の時刻を示し、時刻t2は時刻t4の次に近い過去の時刻を示す。さらに、時刻t5は、更新信号の立ち上がり時のうち、時刻t6から見て最も近い過去の時刻を示す。
温度記憶部106のアドレス4の領域には、時刻t1における第一温度信号の値(T10)が格納されている。また、アドレス3の領域には、時刻t3における第一温度信号の値(T11)が格納されている。さらに、アドレス1の領域には、時刻t5における第一温度信号の値(T12)が格納されている。
一方、温度記憶部106のアドレス6の領域には、時刻t1における第二温度信号の値(T20)が格納されている。アドレス5の領域には、時刻t3における第二温度信号の値(T21)が格納されている。アドレス2の領域には、時刻t5における第二温度信号の値(T22)が格納されている。
検出値記憶部113のアドレス9の領域には、時刻t2付近の増幅部101の電気的オフセット値(Os10)が格納されている。アドレス7の領域には、時刻t4付近の増幅部101の電気的オフセット値(Os11)が格納されている。
検出値記憶部113のアドレス10の領域には、時刻t2付近のTE信号生成部103およびローパスフィルタ109の電気的オフセットの総合値(Os20)が格納されている。アドレス8の領域には、時刻t4付近のTE信号生成部103およびローパスフィルタ109の電気的オフセットの総合値(Os21)が格納されている。
次に、補正値計算部114において行われる補正値の計算手順を説明する。補正値計算部114は増幅部101の電気的オフセットに対する補正値と、TE信号生成部103およびローパスフィルタ109の総合的な電気的オフセットに対する補正値を別々に計算し、最終的に両者を加算して総合的な補正値とする。補正値計算部114は状況判断部107からの検出信号および更新信号のパルスが立ち下がった後に補正値を計算する。
ここで、補正値計算部114が増幅部101に関して新たに計算した補正値をC1とする。また、TE信号生成部103とローパスフィルタ109に関して新たに計算した補正値をC2とする。また最終的に出力する補正値をCとする。
まず、更新信号がハイレベルで、かつ、検出信号もハイレベルであるとき、補正値C1はOs11になり、補正値C2はOs21になる。また、最終的に出力する補正値Cは(C1+C2)である。すなわち、そのときの電気的オフセットはオフセット検出部112によって検出されており、補正値計算部114は、その値をそのまま補正値とする。
また、更新信号がハイレベルで、かつ、検出信号がローレベルであるとき、補正値計算部114は、補正値C1を(式1)によって計算し、補正値C2を(式2)によって計算する。
(式1) C1=(Os11−Os10)×(T12−T11)/(T11−T10)+Os11
(式2) C2=(Os21−Os20)×(T22−T21)/(T21−T20)+Os21
最終的に出力する補正値Cは(C1+C2)である。すなわち、そのときの電気的オフセットは検出されていないので、補正値計算部114は、現在の電気的オフセットの値を過去の値から推定し、その値をもって補正値としている。推定は温度変化に対する電気的オフセットの変化を線形であるとして、その変化率に基づいて計算する。使用する電気的オフセットは、最後および2回前に検出した値が採用され、かつ、その検出時の温度も利用される。
続いて、図7を参照しながら、光ディスク装置19の動作を説明する。
図7は、光ディスク装置19の動作の手順を示す。まず、ステップS100において、第一温度検出部104および第二温度検出部105が増幅部101およびTE信号生成部103の温度を検出する。次のステップS101において、状況判断部107は、前回のオフセット補正値の更新時から増幅部101またはTE信号生成部103のいずれかの温度が所定値以上変化したか否かを判断する。温度が所定値以上変化していない場合には処理はステップS100に戻り、変化した場合には処理はステップS102に進む。ステップS102では、状況判断部107はさらに前回の電気的オフセットの検出時から所定時間以上が経過しているか否かを判断する。所定以上の時間が経過している場合はステップS103に進み、所定以上の時間が経過していない場合はステップS104に進む。
ステップS103では、オフセット検出部112によってオフセットが検出される。ここで、図1および図5を参照しながら、オフセットの検出処理を説明する。まず、状況判断部107が検出信号をハイレベルにすると、制御信号生成部110はその直前またはそのときのトラッキング制御信号の値をホールドする。ホールド期間中、レンズ駆動回路7は対物レンズ5の位置を固定する駆動信号を出力する。対物レンズ5の位置が光ディスク1に対して固定されることにより、レーザスポットは光ディスク1の半径方向に関してホールド直前の位置に固定される。
検出信号がハイレベルになると同時に、ローパスフィルタ109は遮断周波数をより高い値に切り替える。このとき、制御信号生成部110は検出信号のパルスの立ち上がりから第一遮断信号のパルスの立ち上がりまでの間、トラッキング制御信号をホールドする。なお、このホールド期間は、ローパスフィルタ109の周波数の切り替えに要する時間を含む。
ローパスフィルタ109が遮断周波数を切り替えた後、検出制御部108が第一遮断信号をハイレベルにすると、第一遮断部100は、その出力信号を、所定の基準電圧を有する基準信号に切り換える。換言すれば、再生信号を基準電圧に短絡して出力する。この時点でローパスフィルタ109が出力する信号の値は、増幅部101の入力からローパスフィルタ109の出力までの間の回路で発生する電気的オフセットの値となる。例えば、基準電圧をVr1、ローパスフィルタ109の出力をVo1とすると、後述するタイミングにおいて、オフセット検出部112は(Vo1−Vr1)を電気的オフセットとして検出する。Vr1は予め設定された値である。例えば、Vr1=0とするとVo1自体が電気的オフセットとして検出できる。
なおローパスフィルタ109の出力信号が電気的オフセットの値に整定するまでに要する時間は、ローパスフィルタ109の高い方の遮断周波数に依存する。第一遮断信号のパルスの立ち上がりから検出制御信号の1回目のパルスの立ち上がりまでの時間はこの整定時間を含むように設計される。
ローパスフィルタ109から出力される信号値が電気的オフセットの値に整定すると、その後、検出制御信号がハイレベルになり、オフセット検出部112は電気的オフセットの値を検出する。検出値は検出値記憶部113に記憶される。検出制御信号の1回目のパルスの幅はオフセット検出部112が検出に要する時間をカバーするように設計される。
電気的オフセットの検出が終わると第二遮断信号がハイレベルになり、第二遮断部102は、その出力信号を、所定の基準電圧を有する基準信号に切り換える。この時点でローパスフィルタ109が出力する信号の値は、TE信号生成部103の入力からローパスフィルタ109の出力までの間の回路で発生する電気的オフセットの値となる。例えば、基準電圧をVr2、ローパスフィルタ109の出力をVo2とすると、後述するタイミングにおいて、オフセット検出部112は、(Vo2−Vr2)を電気的オフセットとして検出する。ここでもVr2は予め設定された値であるが、例えばVr2=0とするとVo2自体が電気的オフセットとして検出できる。第二遮断信号のパルスの立ち上がりから検出制御信号の2回目のパルスの立ち上がりまでの時間はローパスフィルタ109が出力する信号の整定時間を含むように設計され、第一遮断信号のパルスの立ち上がりから検出制御信号の1回目のパルスの立ち上がりまでの時間と等しい。
ローパスフィルタ109の出力信号の値が整定すると、その後、検出制御信号が再びハイレベルになり、オフセット検出部112は電気的オフセットの値を検出する。検出値は検出値記憶部113に記憶される。検出制御信号の2回目のパルスの幅はオフセット検出部112が検出に要する時間をカバーするように設計され、1回目のパルスの幅と等しい。
電気的オフセットの検出が終わると検出制御信号および第一遮断信号および第二遮断信号がローレベルになり、第一遮断部100および第二遮断部102はそれぞれ出力する信号を受光量検出部6が出力する光量信号および増幅部101が出力する信号に切り換える。するとローパスフィルタ109が出力する信号の値は光量信号に応じた値に復帰する。復帰に要する時間はローパスフィルタ109の高い方の遮断周波数に依存する。第一遮断信号および第二遮断信号のパルスの立ち下がりから検出信号パルスの立ち下がりまでの時間はこの復帰時間をカバーするように設計される。
ローパスフィルタ109の出力信号が光量信号に応じた値に復帰すると、検出信号がローレベルになりローパスフィルタ109の遮断周波数帯域が低い方に切り替わる。また、ホールド信号がローレベルになり、トラッキング制御信号のホールドが解除される。その結果、光ディスク1の半径方向に関して、レーザの照射位置に形成されるレーザスポットは、光ディスク1の記録トラックの中心に追従する。以上のように電気的オフセットが検出される。
次に、再び図7を参照しながら、ステップS104の処理を説明する。ステップS104では、補正値計算部114は、線形計算によって、温度記憶部106および検出値記憶部113に記憶された過去の温度および電気的オフセットの値に基づいて、現在の温度における電気的オフセットの値を導き出す。
最後に、ステップS105において、ステップS103において検出された電気的オフセットの値、またはステップS104において導出された電気的オフセットの値を用いて補正値が更新される。その後、処理はステップS100に戻る。
本実施形態の光ディスク装置19は、トラッキング制御中に、トラッキング制御をホールドして電気的オフセットを検出することによって、または、トラッキング制御をホールドしないで電気的オフセットを導出することによって補正値を更新し、電気的オフセットを補正する。これにより、光ディスク装置19の記録再生動作を中断する頻度を下げ、光ディスク装置19およびバッファメモリ間で、高レートの情報転送を実現できる。
また、電気的オフセットを検出する際にはローパスフィルタ109をそれまでよりも高い遮断周波数に切り換えるので、信号の整定時間をより短くできる。したがってトラッキング制御のホールドを行う時間も短時間化することができる。ホールドの解除時には追従ずれを起こさず確実に追従動作に復帰することができ、短時間でオフセットを補正できる。
補正値は回路の温度変化に応じて更新されるため、温度変化に追従しつつ、電気的オフセットを高い精度で補正することができる。特に、過去に検出した温度および電気的オフセットの値から現在の電気的オフセットの値を計算する際には、時間的に現在に最も近い過去の温度および過去の電気的オフセットの変化に基づいて計算が行われる。これにより、高い精度の補正ができる。
また、前回の検出時から所定時間以上が経過したときにのみ電気的オフセットを検出することにより、光ディスク装置19の転送レート(例えば光ディスク装置19とバッファメモリとの間の転送レート)をデータの記録および/または再生を阻害しないレートに保持できる。
光ディスク装置19は、装置内部の信号経路を構成する一連の電気回路の電気的オフセットを検出し、または、電気的オフセットの検出を行わずに、そのまとまりを単位として、過去に検出した温度および電気的オフセットの値から現在の電気的オフセットの値を導出する。よって、電気回路の各部で温度が異なる場合でも各部ごとの電気的オフセットを精度良く計算することができ、高い精度で電気的オフセットを補正できる。具体的には、受光量を検出した直後の信号を基準電圧に短絡し、電気回路に対する外部入力を遮断するため、光量信号の処理に関連する回路の電気的オフセットのみを選択的に補正できる。この補正によれば、他の信号系の処理に対して大きな影響を与えることはない。またサーボ信号をホールドするので、電気的オフセットの検出後に高速にサーボ動作に復帰することができる。これにより、光ディスク装置19がデータの書き込みおよび読み出しを中断する時間を短くでき、光ディスク装置19およびバッファメモリ間で、高レートの情報転送を実現できる。
本実施形態では、増幅部101の入力から出力までの信号経路を構成する電気回路、および、TE信号生成部103の入力からローパスフィルタ109の出力までの間の信号経路を構成する電気回路に区分して電気的オフセットを補正するとした。しかし、信号経路をより細かく区分して、その区分内の電気回路の電気的オフセットを補正することもできる。これにより、さらに高い精度の補正を実現できる。逆に、第二遮断部102を設けずに、増幅部101の入力からローパスフィルタ109の出力までの信号経路を構成する電気回路のオフセットのみを補正してもよい。これにより、回路の数を減らすことができるとともに、電気的オフセットの検出に要する時間も短くできる。なお、ローパスフィルタ109を迂回するように回路を切り換えて電気的オフセットを検出してもよい。これにより、整定時間がより短縮され、確実に追従動作に復帰することができる。
(実施形態2)
図8は、本実施形態による光ディスク装置29の機能ブロックの構成を示す。光ディスク装置29の用途は、第1の実施形態による光ディスク装置19と同じである。
光ディスク装置29は、レンズ駆動回路7と、光ヘッドと、温度検出部707と、再生制御部705と、再生バッファ706と、FE生成チップ21と、光ディスクコントローラ(ODC)22と、を備えている。図面の記載の簡略化のため、光ヘッドへの参照符号は省略している。
以下、各機能ブロックを説明する。なお、各機能ブロックを構成する要素のうち、第1の実施形態による光ディスク装置19(図1)と同じ機能を有する構成要素の説明は省略する。
レンズ駆動回路7は、制御信号生成部704からのフォーカス制御信号に応じて、光ディスク1の情報記録層に対して垂直な方向に対物レンズ5を移動させる。レンズ駆動回路7は、光ディスク1の情報記録層に垂直な方向のみならず、光ディスク1の半径方向にも対物レンズ5の位置を変化させることが可能であるが、本実施形態による制御では特に問題ではないので、説明は省略する。
光ヘッドは、光ヘッド10(図1)の第1遮断部100および増幅部101に代えて増幅部700が設けられている。レーザダイオード2は、検出制御部710から出力される遮断信号がローレベルのときにレーザ発光を行い、ハイレベルのときにレーザ発光を停止する。なお、図8では、レーザダイオード2は検出制御部710から遮断信号を直接受け取るための構成を示している。しかし、例えば、後述する図15のレーザ駆動回路1305のようなレーザ駆動回路を設け、遮断信号に基づいてレーザダイオード2への電流の制御を行ってもよい。具体的には、レーザ駆動回路は、遮断信号がローレベルであればレーザ発光を行うに足りる電流をレーザダイオード2に流し、ハイレベルであれば電流を流さないように動作する。さらに、遮断信号は、後述する制御信号生成部704によって生成されてもよい。
増幅部700は、増幅率を2つの値で切り換える。値の1つは記録時のレーザパワーに対応した値であり、もう1つは再生時のレーザパワーに対応した値である。増幅部700は、後述する設定制御部715からの設定信号および検出制御部710からの増幅制御信号に応じて、光量信号の増幅率を切り換えることにより、記録時と再生時とでレーザパワーが異なった場合であってもFE信号の振幅を一定に保つことができる。増幅制御信号は、ハイレベル、中央レベル、ローレベルの3値をとる。増幅部700は、増幅制御信号が中央レベルであれば設定信号にしたがって、または、中央レベル以外のレベルであれば増幅制御信号にしたがって増幅率を設定する。増幅部700は、設定信号がハイレベルであれば記録時に対応した増幅率に切り換え、ローレベルであれば再生時に対応した増幅率に切り換える。このように動作することにより、後述のように、受光量検出部6から出力される光量信号の変動範囲が異なっても、FE信号生成部701に入力する信号の変動範囲を不変にすることができる。
再生制御部705は、光量信号に基づいて、光ディスク1に記録されたデータを読み出して出力する。
再生バッファ706は再生制御部705によって読み出されたデータを蓄積する。各データが集合して1以上の情報となる。ホストコンピュータ(図示せず)は、再生バッファ706に記憶された情報を読み出して、その後の再生処理を行う。再生情報量信号は、再生バッファ706に記憶されている情報量を示す。
温度検出部707は、光ディスク装置29の内部温度を検出して温度信号を出力する。
FE生成チップ21のFE信号生成部701は、増幅部700からの出力信号に基づいて、レーザ光の照射位置の光ディスク1の情報記録層からのずれを検出してフォーカスエラー(Focusing Error;FE)信号を出力する。
ローパスフィルタ702は、FE信号の中からフォーカス制御に必要な周波数帯域以上の成分を遮断して出力する。また、ローパスフィルタ702は、検出信号がハイレベルのときは遮断周波数を高くし、ローレベルのときは低くする。
次に、ODC22の各構成要素を説明する。
オフセット補正部703は、ローパスフィルタ702の出力信号の値から補正値記憶部711の出力信号の値を減算して出力する。
検出信号がローレベルのとき、制御信号生成部704は、オフセット補正部703の出力信号に応じてフォーカス制御信号を出力する。フォーカス制御信号は、レーザ光の照射位置を光ディスク1の情報記録層に追従させるために利用される。また、検出信号がハイレベルのとき、制御信号生成部704は、フォーカス制御信号の値を固定する。
温度記憶部708は、検出信号および更新信号に応じて温度信号の値を記憶する。
状況判断部709は、温度信号および温度記憶部708が記憶する値に応じて2値で示される更新信号を出力する。また、状況判断部709は、再生情報量信号の値に応じて2値で示される検出信号を出力する。
検出制御部710は検出信号に応じて2値で示される遮断信号、増幅制御信号および検出制御信号を出力する。
設定制御部715は、設定信号を出力する。設定信号は、記録時はハイレベルであり、再生時はローレベルの2値をとる。
増幅部700は光量信号を増幅して出力し、設定信号および増幅制御信号に応じて増幅率を切り換える。
オフセット検出部712は、ハイレベルの検出制御信号を受け取るとローパスフィルタ702の出力信号中の電気的オフセットを検出し、オフセット信号を出力する。
検出値記憶部713は、オフセット信号の値を検出制御信号および検出信号に基づいて記憶する。
補正値計算部714は、更新信号および検出信号に応じて、検出値記憶部713が記憶する値、および温度記憶部708が記憶する値を読み出して電気的オフセットの補正値を計算し、補正信号を出力する。
補正値記憶部711は、補正信号の値を記憶し、その値を出力する。また、設定制御部715からの設定信号に応じて出力する値を切り換える。
温度記憶部708は、3つの情報格納領域を有しており、温度検出部707からの温度信号の値を記憶する。各情報格納領域のアドレスをそれぞれアドレス1、アドレス2、アドレス3と記載する。アドレス1の領域に格納された値の更新は状況判断部709が出力する更新信号によって制御される。アドレス2およびアドレス3の領域に格納された値の更新は状況判断部709が出力する検出信号によって制御される。
次に、図9を参照しながら、上述の状況判断部709を詳細に説明する。図9は状況判断部709の機能ブロックの構成を示す。状況判断部709は、温度変化検出部800と、判断部801とを含む。温度変化検出部800は、温度記憶部708が記憶する値を読み出し、温度検出部707が出力する温度信号の値と温度記憶部708のアドレス1の領域に格納されている値の差を計算しその絶対値を示す温度変化信号を出力する。判断部801は温度変化検出部800が出力する温度変化信号に応じて2値で示される更新信号を出力する。また、更新信号および再生バッファ706が出力する再生情報量信号に応じて2値で示される検出信号出力する。
続いて、図10を参照しながら、状況判断部709から出力される更新信号と検出信号とを詳細に説明する。ここでは、温度記憶部708と状況判断部709の各構成要素の動作も併せて説明する。
図10は、状況判断部709に関連する信号のタイミングチャートを示す。判断部801は、温度変化信号の値が所定の閾値を超えると更新信号のレベルを一定時間ハイレベルにする。ハイレベルの更新信号は更新ありを示し、ローレベルの更新信号は更新なしを示す。
温度記憶部708は更新信号のパルスが立ち上がるときの温度信号の値をアドレス1の領域に格納する。なお図10では、格納する値を黒点(●)で示している。温度変化信号は、温度信号の値から温度記憶部708のアドレス1の領域に格納された値を減算し、その絶対値を取ることにより得られる。更新信号の立ち上がりときは温度信号の値とアドレス1の領域に格納された値は等しいので、温度変化信号の値はゼロとなる。
検出信号は判断部801が出力する2値信号であり、更新信号のパルスが立ち上がるタイミングで再生情報量信号の値が所定の閾値以上のときは一定時間ハイレベルになり、所定の閾値以下のときはローレベルになる。なお、検出信号のパルスの立ち下がりは更新信号のパルスの立ち下がりと同時である。またハイレベルの検出信号は検出ありを示し、ローレベルの検出信号は検出なしを示す。
図10に示すように、更新信号の立ち上がりから光ディスク装置29内部の温度が所定以上変化すると、更新信号は一定時間ハイレベルとなる。またこの時、再生バッファ706に所定以上の情報量が記憶されている場合には、検出信号は一定時間ハイレベルとなる。
温度記憶部708は、検出信号がハイレベルに立ち上がるとき、アドレス2の領域に格納されている値をアドレス3の領域に格納し、その後、温度信号の値をアドレス2の領域に格納する。
次に、図10に示す時刻t1、t2およびt3に注目する。時刻t3は現在時刻を示し、時刻t2は検出信号のパルスの立ち上がり時のうち、時刻t3から見て最も近い過去の時刻を示し、時刻t1は時刻t2の次に近い過去の時刻を示す。
温度記憶部708のアドレス1およびアドレス2の各領域には時刻t2における温度信号の値が格納されており、アドレス3の領域には時刻t1における温度信号の値が格納されていることになる。すなわち、アドレス1の領域には検出信号の値に関わらず最後に更新信号がハイレベルになったときの温度信号の値が格納され、アドレス2の領域には最後に更新信号および検出信号がともにハイレベルになったときの温度信号の値が格納され、アドレス3の領域には2回前に更新信号および検出信号がともにハイレベルになったときの温度信号の値が格納されていることになる。
次に、検出制御部710を説明する。図11は検出制御部710の機能ブロックの構成を示す。検出制御部710は、増幅制御部900と、遮断制御部901と、オフセット検出制御部902とを有する。増幅制御部900は、状況判断部709からの検出信号がハイレベルに立ち上がった時からの経過時間に応じて3値の増幅制御信号を生成し、増幅部700に出力する。遮断制御部901は遮断信号を生成してレーザダイオード2に出力する。オフセット検出制御部902は検出制御信号を生成してオフセット検出部712および検出値記憶部713に出力する。
ここで図12を参照しながら、これらの信号のタイミングを説明する。図12は検出制御部710に関連する信号のタイミングチャートを示す。遮断信号は、検出信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、検出信号のパルスの立ち下がりよりも前に立ち下がる。増幅制御信号は、遮断信号がハイレベルの間に正のパルスと負のパルスを各1回含む。正のパルスの立ち上がりは遮断信号のパルスの立ち上がりと同時である。また正のパルスの立ち下がりと負のパルスの立ち下がりは同時である。負のパルスの立ち上がりは遮断信号のパルスの立ち下がりと同時である。検出制御信号は、遮断信号がハイレベルの間に2回パルスを含む。1回目のパルスは、遮断信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、増幅制御信号の正のパルスの立ち下がりおよび負のパルスの立ち下がりと同時に立ち下がる。2回目のパルスは、増幅制御信号の正のパルスの立ち下がりおよび負のパルスの立ち下がりよりも後に立ち上がり、遮断信号のパルスの立ち下がりと同時に立ち下がる。
次に、オフセット検出部712を詳細に説明する。オフセット検出部712は、検出制御部710が出力する検出制御信号がハイレベルの時のローパスフィルタ702からの信号値を検出する。後述するように、検出制御信号の1回目のパルスの間、ローパスフィルタ702が出力する信号の値は、増幅部700の増幅率が記録時に対応した方に切り替わっている時の増幅部700の入力からローパスフィルタ702の出力までの間の回路で発生する電気的オフセットの値となる。一方、2回目のパルスの間、ローパスフィルタ702が出力する信号の値は、増幅部700の増幅率が再生時に対応した方に切り替わっている時の増幅部700の入力からローパスフィルタ702の出力までの間の回路で発生する電気的オフセットの値となる。オフセット検出部712はその値を検出する機能を有する。
次に、検出値記憶部713を詳細に説明する。検出値記憶部713は4つの情報格納領域を有する。各情報格納領域のアドレスをそれぞれアドレス7、アドレス8、アドレス9、アドレス10と記載する。検出値記憶部713は検出制御信号の各パルスが検出信号のパルスが立ち上がった後の何回目のパルスであるかを検出し、各パルスに応じて検出制御部710からの検出制御信号のパルスが立ち下がる時のオフセット検出部712が出力するオフセット信号の値を記憶する。検出制御信号のパルスが1回目のパルスである時はその立ち下がる時のオフセット信号の値をアドレス7の情報格納領域に格納する。2回目のパルスである時はその立ち下がる時のオフセット信号の値をアドレス8の情報格納領域に格納する。この動作により、アドレス7の領域には記録時の増幅率における電気的オフセットの値が格納され、アドレス8の領域には再生時の増幅率における電気的オフセットの値が格納される。
また、検出値記憶部713は検出信号がローレベルからハイレベルに立ち上がる時にアドレス7に格納された値をアドレス9に、アドレス8に格納された値をアドレス10に格納する。
以上の動作により、検出値記憶部713のアドレス7およびアドレス8にはそれぞれ最後に更新ありかつ検出ありであった時の、記録時の増幅率および再生時の増幅率に対する電気的オフセットの値が格納されており、アドレス9およびアドレス10にはそれぞれ2回前に更新ありかつ検出ありであった時の記録時の増幅率および再生時の増幅率に対する電気的オフセットの値が格納されていることになる。
次に、補正値計算部714を詳細に説明する。
図13は、温度記憶部708に記憶される値および検出値記憶部713に記憶される値と、検出信号および更新信号との関係を示す。補正値計算部714は、補正値の計算に際して、温度信号の値と、記録時の増幅率に対する電気的オフセットの値および再生時の増幅率に対する電気的オフセットの値を必要とする。
いま、時刻t6は現在時刻を示し、検出信号の立ち上がり時のうち、時刻t3は時刻t6から見て最も近い過去の時刻を示し、時刻t1は時刻t3の次に近い過去の時刻を示す。また、検出信号の立ち下がり時のうち、時刻t4は時刻t6から見て最も近い過去の時刻を示し、時刻t2は時刻t4の次に近い過去の時刻を示す。さらに、時刻t5は、更新信号の立ち上がり時のうち、時刻t6から見て最も近い過去の時刻を示す。
温度記憶部708のアドレス3の領域には、時刻t1における温度信号の値(T0)が格納されている。また、アドレス2の領域には、時刻t3における温度信号の値(T1)が格納されている。さらに、アドレス1の領域には、時刻t5における第一温度信号の値(T2)が格納されている。
一方、検出値記憶部713のアドレス9の領域には、時刻t2付近における記録時の増幅率に対する電気的オフセットの値(Os10)が格納されている。アドレス7の領域には、時刻t4付近における記録時の増幅率に対する電気的オフセットの値(Os11)が格納されている。
また、検出値記憶部713のアドレス10の領域には、時刻t2付近における再生時の増幅率に対する電気的オフセットの値(Os20)が格納されている。アドレス8の領域には、時刻t4付近における再生時の増幅率に対する電気的オフセットの値(Os21)が格納されている。
次に、補正値計算部714において行われる補正値の計算手順を説明する。
補正値計算部714は記録時の増幅率に対する電気的オフセットの補正値、および、再生時の増幅率に対する電気的オフセットの補正値を別々に計算する。補正値計算部714は状況判断部709からの検出信号および更新信号のパルスが立ち下がった後に補正値を計算する。
ここで、記録時の増幅率が採用されている時に新たに計算した補正値をC1とする。また、再生時の増幅率が採用されている時に新たに計算した補正値をC2とする。
まず更新信号がハイレベルで、かつ、検出信号もハイレベルであるとき、補正値C1はOs11になり、補正値C2はOs21になる。すなわち、現在の電気的オフセットはオフセット検出部712によって検出されており、補正値計算部714は、その値をそのまま補正値とする。
また、更新信号がハイレベルで、かつ、検出信号がローレベルであるとき、補正値計算部714は、補正値C1を(式3)によって計算し、補正値C2を(式4)によって計算する。
(式3) C1=(Os11−Os10)×(T12−T11)/(T11−T10)+Os11
(式4) C2=(Os21−Os20)×(T22−T21)/(T21−T20)+Os21
このとき、現在の電気的オフセットは検出されておらず、補正値計算部714は、現在の電気的オフセットの値を過去の値から推定し、その値をもって補正値とする。推定については温度変化に対する電気的オフセットの変化を線形であるとして、最後および2回前に検出した電気的オフセットとその時の温度から計算する。
補正値計算部714は、増幅部700の増幅率が記録時に対応した方に切り替わっている場合と再生時に対応した方に切り替わっている場合とを区別して、計算した補正値の値を補正信号として出力する。また、補正値記憶部711も同様に区別して、補正信号の値を記憶する。
続いて、図14を参照しながら、光ディスク装置29の動作を説明する。図14は、光ディスク装置29の動作の手順を示す。
まず、ステップS200において、温度検出部707は光ディスク装置内部の温度を検出する。次のステップS201において、状況判断部709は、前回のオフセット補正値の更新時から光ディスク装置内部の温度が所定値以上変化したか否かを判断する。温度が所定値以上変化していない場合には処理はステップS200に戻り、変化した場合には処理はステップS202に進む。ステップS202では、状況判断部709はさらに再生バッファ706に所定以上の情報量が記憶されているか否かを判断する。記憶されていると判断した場合はステップS203に進み、記憶されていないと判断した場合はステップS204に進む。
ステップS203では、オフセット検出部712によってオフセットが検出される。ここで、図8および図12を参照しながら、オフセットの検出処理を説明する。状況判断部709が検出信号をハイレベルにすると、制御信号生成部704は、その直前またはそのときのフォーカス制御信号の値をホールドする。ホールド期間中、レンズ駆動回路7は対物レンズ5の位置を固定する駆動信号を出力する。対物レンズ5の位置が光ディスク1に対して固定されることにより、レーザスポットは光ディスク1の情報記録層に垂直な方向の照射位置に関してホールド直前の位置に固定される。
検出信号がハイレベルになると同時に、ローパスフィルタ702はより高い遮断周波数に切り替える。このとき、制御信号生成部704は検出信号のパルスの立ち上がりから増幅制御信号の正のパルスおよび遮断信号のパルスの立ち上がりまでの間、フォーカス制御信号をホールドする。なお、このホールド期間は、ローパスフィルタ702の遮断周波数の切り替えに要する時間を含む。
ローパスフィルタ702が遮断周波数を切り替えた後、検出制御部710が増幅制御信号をハイレベルにすると、増幅部700は増幅率を記録時に対応した方に切り換える。また、検出制御部710は遮断信号をハイレベルにして、レーザダイオード2のレーザ発光を停止する。この時点でローパスフィルタ702が出力する信号の値は、記録時の増幅率に応じた電気的オフセットの値となる。検出する原理は、第1の実施形態で説明したと同様である。
なおローパスフィルタ702の出力信号が電気的オフセットの値に整定するまでに要する時間は、ローパスフィルタ702の高い方の遮断周波数に依存する。増幅制御信号の正のパルスおよび遮断信号のパルスの立ち上がりから検出制御信号の1回目のパルスの立ち上がりまでの時間はこの整定時間を含むように設計される。
ローパスフィルタ702の出力信号の値が整定すると、検出制御信号がハイレベルになり、オフセット検出部712は電気的オフセットの値を検出する。検出値は検出値記憶部713に記憶される。検出制御信号の1回目のパルスの幅はオフセット検出部712が検出に要する時間をカバーするように設計される。
電気的オフセットの検出が終わると増幅制御信号がローレベルになり、増幅部700は増幅率を再生時に対応した方に切り換える。この時点でローパスフィルタ702が出力する信号の値は、再生時の増幅率に応じた電気的オフセットの値となる。この電気的オフセットの値の検出原理も、第1の実施形態で説明したと同様である。増幅制御信号の負のパルスの立ち下がりから検出制御信号の2回目のパルスの立ち上がりまでの時間はローパスフィルタ702が出力する信号の整定時間を含むように設計され、増幅制御信号の正のパルスおよび遮断信号のパルスの立ち上がりから検出制御信号の1回目のパルスの立ち上がりまでの時間と等しい。
ローパスフィルタ702が出力する信号の値が整定すると、その後、検出制御信号が再びハイレベルになり、オフセット検出部712は電気的オフセットの値を検出する。検出制御信号の2回目のパルスの幅はオフセット検出部712が検出に要する時間をカバーするように設計され、1回目のパルスの幅と等しい。
電気的オフセットの検出が終了すると、検出制御信号および遮断信号がローレベルになり、レーザダイオード2はレーザ光を放射する。また、これと同時に、増幅制御信号は中央レベルになる。するとローパスフィルタ702の出力信号の値は光量信号に応じた値に復帰する。復帰に要する時間はローパスフィルタ702の高い方の遮断周波数に依存する。遮断信号のパルスおよび検出制御信号の2回目のパルスの立ち下がりおよび増幅制御信号の負のパルスの立ち上がりから検出信号のパルスの立ち下がりまでの時間は、この復帰時間をカバーするように設計される。
ローパスフィルタ702の出力信号が光量信号に応じた値に復帰すると、検出信号がローレベルになりローパスフィルタ702の遮断周波数帯域が低い方に切り替わる。また、ホールド信号がローレベルになり、フォーカス制御信号のホールドが解除される。その結果、光ディスク1の情報記録層に垂直な方向に関して、レーザの焦点位置は光ディスク1の情報記録層上に追従する。以上のように電気的オフセットが検出される。
次に、再び図14を参照しながら、ステップS204の処理を説明する。ステップS204では、補正値計算部714は、温度記憶部708および検出値記憶部713に記憶された過去の温度および電気的オフセットの値に基づいて、線形計算により現在の温度における電気的オフセットの値を導き出す。
最後に、ステップS205において、ステップS203において検出された電気的オフセットの値、またはステップS204において導出された電気的オフセットの値を用いて補正値が更新される。その後、処理はステップS200に戻る。
本実施形態の光ディスク装置29は、フォーカス制御中に、フォーカス制御をホールドして電気的オフセットを検出することによって、または、フォーカス制御をホールドしないで電気的オフセットを導出することによって補正値を更新し、電気的オフセットを補正する。これにより、光ディスク装置29の記録再生動作を中断する頻度を下げ、光ディスク装置29およびバッファメモリ間で、高レートの情報転送を実現できる。
さらに、本実施形態によれば、記録時および再生時のそれぞれに対応した回路設定の電気的オフセットの補正値を計算し、補正の際に各回路設定に対応して補正値を切り換えるため、高精度な補正が実現される。
(実施形態3)
図15は、本実施形態による光ディスク装置39の機能ブロックの構成を示す。光ディスク装置39の用途は、第1の実施形態による光ディスク装置19と同じである。
光ディスク装置39は、レンズ駆動回路7と、レーザ駆動回路1305と、光ヘッドと、温度検出部1307と、記録制御部1314と、記録バッファ1315と、TE生成チップ31と、光ディスクコントローラ(ODC)32とを備えている。図面の記載の簡略化のため、光ヘッドへの参照符号は省略している。
以下、各機能ブロックを説明する。なお、各機能ブロックを構成する要素のうち、第1の実施形態による光ディスク装置19(図1)と同じ機能を有する構成要素の説明は省略する。
レーザ駆動回路1305は、制御信号生成部1304から出力される遮断信号、および、記録信号に応じたタイミングおよび強度で、所定の期間、レーザパワーを制御する信号(例えば電流信号)を出力する。なお遮断信号がハイレベルである時はレーザ発光を停止するように信号を出力する。
光ヘッドは、光ヘッド10(図1)の第1遮断部100および増幅部101に代えて増幅部1300が設けられている。レーザダイオード2はレーザ駆動回路1305の出力信号にしたがってレーザ光を放射する。ただし、第2の実施形態において図8を参照しながら説明したと同様、検出制御部1310が遮断信号を生成および出力して、遮断信号によってレーザダイオード2の動作を制御してもよい。すなわち、レーザダイオード2は遮断信号に基づいて制御され、レーザ光の発光および停止が行われる。
増幅部1300は、受光量検出部6が出力する光量信号を増幅して出力する。
記録バッファ1315は、ホストコンピュータ(図示せず)から光ディスク1に記録する情報を取得し、記憶する。記録情報量信号は、記録バッファ1315に記憶されている情報量を示す。
記録制御部1314は記録バッファ1315に記憶された情報を読み出して光ディスク1に記録するための記録指示信号に変換して出力する。
温度検出部1307は、光ディスク装置39の内部温度を検出して温度信号を出力する。
TE生成チップ31のTE信号生成部1301は、増幅部1300が出力する信号からレーザ光の照射位置の光ディスク1の記録トラック中心からのずれを検出してTE(Tracking Error)信号を生成して出力する。
ローパスフィルタ1302は、TE信号生成部1301が出力するTE信号からトラッキング制御に必要な周波数帯域以上の成分を遮断して出力する。また状況判断部1309が出力する検出信号がハイレベルのときは遮断周波数を高くし、ローレベルである時は低くする。
次に、ODC32の各構成要素を説明する。
オフセット補正部1303は、ローパスフィルタ1302が出力する信号の値から補正値計算部1313が出力する補正信号の値を引いて出力する。
制御信号生成部1304は、検出信号がローレベルのとき、オフセット補正部1303が出力する信号に応じて、レーザ光の照射位置を光ディスク1の記録トラックに追従させるためのトラッキング制御信号を出力する。また、制御信号生成部1304は、検出信号がハイレベルのとき、トラッキング制御信号の値を固定する。また制御信号生成部1304は、検出制御部1310から2値で示される遮断制御信号を受け取り、2値で示される遮断信号を生成する。なお、遮断信号の2値のレベルは、遮断信号を受け取るレーザ駆動回路1305の動作特性に応じて決定される。遮断制御信号および遮断信号の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングは同じである。
時間測定部1306は状況判断部1309が出力する2値で示される更新信号のパルスの立ち下がりからの時間を測定して時間信号を出力する。
温度記憶部1308は、状況判断部1309が出力する2値で示される検出信号のパルスが立ち下がる時の温度検出部1307が出力する温度信号の値を記憶する。
状況判断部1309は、時間測定部1306が出力する時間信号に応じて2値で示される更新信号を出力する。また記録バッファ1315が出力する記録情報量信号および温度検出部1307が出力する温度信号に応じて2値で示される検出信号を出力する。
検出制御部1310は状況判断部1309が出力する検出信号に応じて2値で示される遮断制御信号、および、検出制御信号を出力する。さらに、検出制御部1310は、記録制御部1314からの記録指示信号に基づいて、記録信号を生成する。
オフセット検出部1311は、検出制御部1310が出力する検出制御信号がハイレベルである時にローパスフィルタ1302からの信号に含まれる電気的オフセットを検出してオフセット信号を出力する。
検出値記憶部1312は、検出制御部1310が出力する検出制御信号のパルスが立ち下がる時のオフセット検出部1311が出力するオフセット信号の値を記憶する。
補正値計算部1313は、状況判断部1309からの更新信号および検出信号に応じて、検出値記憶部1312が記憶する値、および温度記憶部1308が記憶する値を読み出して電気的オフセットの補正値を計算して補正信号を出力する。
次に、図16を参照しながら、上述の状況判断部1309を詳細に説明する。図16は、状況判断部1309の機能ブロックの構成を示す。状況判断部1309は、更新判断部1400と、温度比較部1401と、検出判断部1402とを含む。更新判断部1400は、時間測定部1306が出力する時間信号に応じて2値で示される更新信号を出力する。なお、更新信号はハイレベルである時は更新ありを示し、ローレベルである時は更新なしを示す。
温度比較部1401は、更新判断部1400が出力する更新信号のパルスが立ち上がった時に、温度記憶部1308が記憶する温度の値の中で現在温度検出部1307が出力する温度信号の値との差が所定値以内である2つの値があるかどうかを検出し、ない場合はハイレベルであり、ある場合はローレベルである温度比較信号を出力する。検出判断部1402は、更新判断部1400が出力する更新信号、記録バッファ1315が出力する記録情報量信号および温度比較部1401が出力する温度比較信号に応じて2値で示される検出信号を出力する。ハイレベルの検出信号は検出ありを示し、ローレベルの検出信号は検出なしを示す。
続いて、図17を参照しながら、状況判断部1309から出力される更新信号と検出信号とを詳細に説明する。ここでは時間測定部1306と状況判断部1309との各構成要素の動作も併せて説明する。
図17は、状況判断部1309に関連する信号のタイミングチャートを示す。
時間信号は、更新信号のパルスが立ち下がる時にゼロにリセットされ、その後の経過時間を示す。更新判断部1400は、時間信号の値が所定の閾値を超えた時に、更新信号を一定時間ハイレベルにする。更新信号は、ハイレベルの時は更新ありを示し、ローレベルの時は更新なしを示す。
温度比較信号は温度比較部1401が出力する信号であり、温度記憶部1308が記憶する温度の値のうち、現在の温度の値との差が所定値以内である値の有無を示す。なお温度比較信号のパルスの立ち下がりは更新信号のパルスの立ち下がりと同時である。
検出信号は検出判断部1402が出力する2値信号であり、更新信号のパルスが立ち上がるタイミングの近傍において、記録情報量信号の値が所定値以下で、かつ、温度比較信号がハイレベルである時はハイレベルになる。これ以外の時はローレベルである。なお検出信号のパルスの立ち下がりは更新信号のパルスの立ち下がりと同時である。また検出信号はハイレベルの時は検出ありを示し、ローレベルの時は検出なしを示す。
図17に示すように、更新信号は一定時間ごとにパルスを有する。更新信号は、記録バッファ1315が記憶する情報量が所定以下であり、かつ、温度記憶部1308が記憶する温度値の中で、現在温度検出部1307から出力されている温度信号の値との差が所定値以内の2つの値が存在する場合は一定時間ハイレベルとなる。
次に、検出制御部1310を説明する。図18は検出制御部1310の機能ブロックの構成を示す。検出制御部1310は、遮断制御部1600とオフセット検出制御部1601とを有する。遮断制御部1600は、状況判断部1309から出力された検出信号がハイレベルに立ち上がった時からの経過時間に応じて遮断制御信号を生成し、制御信号生成部1304に出力する。オフセット検出制御部1601は、検出制御信号を生成してオフセット検出部1311および検出値記憶部1312に出力する。ここで、図19を参照しながら、これらの信号のタイミングを説明する。
図19は検出制御部1310に関連する信号のタイミングチャートを示す。検出信号は、先に図17を参照しながら説明したとおり状況判断部1309から出力される。遮断信号は、検出信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、検出信号のパルスの立ち下がりよりも前に立ち下がる。検出制御信号は、遮断信号のパルスの立ち上がりよりも後に立ち上がり、遮断信号のパルスと同時に立ち下がる。
次に、温度記憶部1308および検出値記憶部1312を詳細に説明する。
温度記憶部1308は、検出信号のパルスが立ち下がりに応じて、その都度、温度検出部1307から出力される温度信号の値を情報格納領域に順次格納する。一方、検出値記憶部1312は、検出制御信号のパルスが立ち下がりに応じて、その都度、オフセット検出部1311から出力されるオフセット信号の値を情報格納領域に順次格納する。
図19では、検出信号のパルスの立ち下りのタイミングおよび検出制御信号のパルスの立ち下りのタイミングは、明確に異なっているように記載されている。しかし、このタイミングのずれは電気的オフセットの補正開始から終了までの時間間隔と比較すると十分短く、ほぼ同時刻であると近似できる。すなわち、温度記憶部1308に記憶される温度信号の値および検出値記憶部1312に記憶されるオフセット信号の値は、ほぼ同時刻のサンプリング値とみなすことができる。その結果、温度記憶部1308および検出値記憶部1312に記憶されている値を順次たどることにより、同時刻の温度信号の値およびオフセット信号の値を参照することができる。
次に、図15および17を参照しながら、補正値計算部1313を詳細に説明する。補正値計算部1313は、更新信号のパルスが立ち下がった後に補正値を計算する。
更新信号がハイレベルである時に検出信号もハイレベルである場合は、最後に検出制御信号のパルスが立ち下がった後に検出値記憶部1312に記憶された電気的オフセットすなわち現在検出された電気的オフセットの値をそのまま補正値として採用する。
更新信号がハイレベルで、かつ、検出信号がローレベルであるとき、温度記憶部1308は記憶している温度の値から、更新信号のパルス立ち下がり時において温度検出部1307から出力される温度信号の値に近い2つの値を検索して読み出す。次に、読み出した温度の値が温度記憶部1308に記憶された時と同時に検出値記憶部1312に記憶された電気的オフセットの値を検索して読み出す。いま、読み出した温度の値をT0およびT1とし、またこれらの温度の値に対応する電気的オフセットの値をOs0およびOs1とする。また、現在の温度信号の値をT2とし、新たに計算した補正値をCとする。
補正値計算部1313は、補正値Cを(式5)によって計算する。
(式5)
C=(Os1−Os0)×(T2−T1)/(T1−T0)+Os1
このとき、現在の電気的オフセットは検出されておらず、現在の電気的オフセットの値を過去の値から推定し、その値をもって補正値とする。推定については過去に電気的オフセットの検出を行った時の温度のうち、現在の温度に最も近い2つの時の温度および電気的オフセットの値から、温度変化に対する電気的オフセットの変化を線形であるとして計算する。
続いて、図20を参照しながら、光ディスク装置39の動作を説明する。図20は、光ディスク装置39の動作の手順を示す。
まず、ステップS300において、状況判断部1309は前回のオフセット補正値の更新時から所定時間が経過したか否かを判断する。ステップS300は、所定時間が経過するまで継続して行われる。所定時間が経過したと判断すると、処理はステップS301に進む。ステップS301では、状況判断部1309はさらに記録バッファ1315に記憶されている情報量が所定値以下であるか否かを判断する。所定値以下のときはステップS302に進み、所定値以上のときはステップS303に進む。
ステップS302では、オフセット検出部1311によってオフセットが検出される。ここで、図15および図19を参照しながら、オフセットの検出処理を説明する。状況判断部1309が検出信号をハイレベルにすると、制御信号生成部1304はその直前またはそのときのトラッキング制御信号の値をホールドする。ホールド期間中、レンズ駆動回路7は対物レンズ5の位置を固定する駆動信号を出力する。対物レンズ5の位置が光ディスク1に対して固定されることにより、レーザスポットは光ディスク1の半径方向に関してホールド直前の位置に固定される。
検出信号がハイレベルになると同時に、ローパスフィルタ1302は遮断周波数をより高い値に切り替える。このとき、制御信号生成部1304は検出信号のパルスの立ち上がりから遮断信号のパルスの立ち上がりまで間、トラッキング制御信号をホールドする。なお、このホールド期間は、ローパスフィルタ1302の周波数の切り替えに要する時間を含む。
ローパスフィルタ1302が遮断周波数を切り替えた後、検出制御部1310は遮断信号をハイレベルにして、レーザダイオード2のレーザ発光を停止する。この時点でローパスフィルタ1302が出力する信号の値は電気的オフセットの値となる。検出する原理は、第1の実施形態で説明した原理と同様である。
なおローパスフィルタ1302の出力信号が電気的オフセットの値に整定するまでに要する時間はローパスフィルタ1302の高い方の遮断周波数に依存する。遮断信号のパルスの立ち上がりから検出制御信号のパルスの立ち上がりまでの時間はこの整定時間を含むように設計される。
ローパスフィルタ1302の出力信号の値が電気的オフセットの値に整定すると、検出制御信号がハイレベルになり、オフセット検出部1311は電気的オフセットの値を検出する。検出制御信号のパルスの幅はオフセット検出部1311が検出に要する時間をカバーするように設計される。
電気的オフセットの検出が終わると検出制御信号および遮断信号がローレベルになり、レーザダイオード2はレーザ光を放射する。するとローパスフィルタ1302が出力する信号の値は光量信号に応じた値に復帰する。復帰に要する時間はローパスフィルタ1302の高い方の遮断周波数に依存する。遮断信号および検出制御信号のパルスの立ち下がりから検出信号のパルスの立ち下がりまでの時間はこの復帰時間をカバーするように設計される。
ローパスフィルタ1302の出力信号が光量信号に応じた値に復帰すると、検出信号がローレベルになりローパスフィルタ1302の遮断周波数が低い方に切り替わる。また、ホールド信号がローレベルになり、トラッキング制御信号のホールドが解除される。その結果、光ディスク1の半径方向の照射位置は光ディスク1の記録トラックに追従する。以上のように電気的オフセットが検出される。
次に、再び図20を参照しながら、ステップS303の処理を説明する。ステップS303では、温度記憶部1318に記憶された過去の温度および検出値記憶部1312に記憶された過去の電気的オフセットの値に基づいて、線形計算により現在の温度における電気的オフセットの値を線形計算で導き出す。
最後に、ステップS304において、ステップS302において検出された電気的オフセットの値、またはステップS303において導き出された電気的オフセットの値を用いて補正値が更新される。その後、処理はステップS300に戻る。
本実施形態の光ディスク装置39は、電気的オフセットを検出することによって、または、過去の温度および電気的オフセットの値に基づいて現在の電気的オフセットの値を導出することによって補正値を更新し、電気的オフセットを補正する。これにより、光ディスク装置39の記録再生動作を中断する頻度を下げ、高いレートで光ディスク装置39およびバッファメモリ間で、高レートの情報転送を実現できる。
また、光ディスク装置39は補正値の更新を一定時間ごとに行うので、ドライブとバッファメモリの間の転送レートを一定以上に保つことができる。
電気的オフセットの検出は、記録バッファに所定以下の情報量が記憶されている場合にのみ行うため、ホストコンピュータとバッファメモリの間の転送レートは一定以上に保つことができる。このときは、記録時にドライブとバッファメモリの間の転送レートが低下しても問題は生じない。なお、同様に再生バッファに記録されている情報量を検出し、その情報量が所定値以下である場合は電気的オフセットの検出を禁止してもよい。この場合は、再生時の転送レートを一定以上に保つことができる。
また、過去に検出した温度および電気的オフセットの値から現在の電気的オフセットの値を計算する際には、過去の検出によって蓄積記憶している電気的オフセットおよび温度の値の中から現在の電気的オフセットおよび温度の値に近い値を探し出すため、電気的オフセットの検出を充分な回数行った後は、もはや電気的オフセットを検出する必要がなくなる。よって、ドライブおよびバッファメモリ間で、高レートな情報転送を実現できる。
また、温度比較部1401が出力する温度比較信号によって、現在の温度との差が所定以内である温度の値が記憶されていない場合には電気的オフセットの検出を促すため、温度に対する電気的オフセットの特性が線形ではない場合においても高い精度の補正を実現できる。
また、本実施形態による光ディスク装置は、第2の実施形態で説明したように記録時および再生時のそれぞれに対応した回路設定の場合に対して補正値を計算し、補正を行う際に各回路設定に対応して補正値を切り換えてもよい。この場合さらに高い精度の補正が実現できる。
上述した第2および3の実施形態によれば、電気的オフセットを検出する際にはレーザ発光を停止して回路に対する外部入力を遮断するため、回路規模の拡大の必要なく電気的オフセットの値を高い精度で検出することができる。またサーボ信号に対してホールドを行うことで電気的オフセットの検出後に高速にサーボ動作に復帰することができ、ドライブの記録再生動作を中断する時間を短くし、ドライブおよびバッファメモリ間で、高レートの情報転送を実現できる。
また、電気的オフセットの検出は、再生バッファに所定以上の情報量が記憶されている場合のみ行うため、ホストコンピュータとバッファメモリの間の転送レートは一定以上に保つことができる。このときは、再生時にドライブとバッファメモリの間の転送レートが低下しても問題は生じない。なお、記録バッファに記憶されている情報量を検出し、その情報量が所定以上である場合に電気的オフセットの検出を禁止してもよい。このときも、記録時の転送レートも一定以上に保つことができる。
なお、実施形態1と同様に、ローパスフィルタを迂回するように回路を切り換えて電気的オフセットを検出してもよいし、信号経路を構成する電気回路に区分して電気的オフセットを補正してもよい。
また、電気回路に対する外部入力を遮断する際、第1の実施形態で説明したように受光量を検出した直後の信号を基準電圧に短絡してもよい。この場合電気的オフセットに対する補正を必要とする信号の回路のみにおいて外部入力を遮断でき、他の信号系の処理に対して大きな影響を与えることなく電気的オフセットの値を高い精度で検出できる。
上述した実施形態では、サーボ信号に関して電気的オフセットを補正するための光ディスク装置の構成および動作を説明した。しかし、光ディスク装置は、それらの信号に限らず、光量信号に基づいて生成されるあらゆる信号に対して同じ処理を適用することができる。
(実施形態4)
図21は本実施形態による光ディスク装置の構成を示す。本実施形態による光ディスク装置はレベル調整部43および迷光調整部46を有しており、その各々はTE信号生成部1301に入力される信号および制御信号生成部47に入力される信号のレベルをより適切に調整する。その結果、光ディスク装置はより精度の高いサーボ制御を行うことができる。
以下、光ディスク装置の構成を説明する。光ディスク装置は、光ヘッド40と、TE生成チップ41と、光ディスクコントローラ(ODC)42と、レンズ駆動回路7とを備えている。
光ヘッド40は、レーザダイオード2と、コリメートレンズ3と、ビームスプリッタ4と、対物レンズ5と、受光量検出部6と、増幅部1300とを有する。各構成要素の機能および動作はすでに説明しているので、その説明は省略する。
光ヘッド40に関して留意すべきは、光ヘッド40から出力される信号には迷光に起因する信号が含まれていることである。「迷光」とは、光ヘッド40のコリメートレンズ3、ビームスプリッタ4および対物レンズ5間の光学経路におけるレーザ光の乱反射成分のことをいう。例えば、コリメートレンズ3から光ディスク1へ向けて放射されたレーザ光の一部は、対物レンズ5において反射され、再びコリメートレンズ3の方向へ戻ることが知られている。このコリメートレンズ3の方向へ戻る光を迷光という。迷光は、ディスク1からの反射光とともに受光量検出部6において検出され、その検出信号は増幅部1300において増幅される。以下、本明細書では、迷光に起因する信号を「迷光信号」と称し、その信号のレベルを「迷光オフセット」と称する。本実施形態の光ディスク装置は、後述する迷光調整部46によって迷光信号を除去することができる。
TE生成チップ41は、レベル調整部43と、TE信号生成部1301と、ローパスフィルタ1302とを有する。このうち、TE信号生成部1301およびローパスフィルタ1302は、すでに説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。レベル調整部43が設けられたTE生成チップ41は、例えば、半導体集積回路(IC)として生産され、光ディスク装置に実装され得る。
レベル調整部43は、レベル検出部43aとレベル補正部43bとを有しており、これらにより、増幅部1300からの増幅信号のレベルを調整して出力する。以下、図22(a)から(d)を参照しながら、レベル調整部43の構成および動作をより詳しく説明する。なお、レベル調整部43の動作条件、すなわちレベル調整部43がレベルを調整するときの条件は、レーザダイオード2が点灯しており、かつ、光ディスク装置がフォーカス制御動作およびトラッキング制御動作を行っていないことである。
レベル調整部43は、TE信号生成部1301の処理能力との関係を考慮してその仕様が決定されている。図22(a)は、TE信号生成部1301内部のアンプ(図示せず)が処理可能なダイナミックレンジDを示す。ダイナミックレンジDは下限値Dminおよび上限値Dmaxによって規定される範囲である。TE信号生成部1301は、ダイナミックレンジDに収まる振幅を有する内部信号に対しては正常な処理を行ってTE信号を生成することができる。一方、図22(b)に示すように、内部信号のレベルが上限値Dmaxを超えているときは、TE信号生成部1301は上限値Dmax以上の飽和部分を処理することができない。また、図22(c)に示すように、内部信号のレベルが下限値Dminよりも小さいときも、TE信号生成部1301は下限値Dminよりも小さい部分(いわゆる不感帯部分)を処理することができない。
TE信号生成部1301内を伝送される内部信号のレベルは入力信号のレベルに応じて変化し、または、入力信号はそのままTE信号生成部1301の内部信号として利用される。そこで、レベル調整部43は、TE信号生成部1301の内部信号が図22(a)に示すダイナミックレンジDに入るように、TE信号生成部1301への入力信号のレベルを調整する。図22(d)は、TE信号生成部1301のダイナミックレンジDに入る入力信号の範囲を示す。入力信号のレベル(入力電圧)が基準電圧C±Aの範囲に入っているとき、TE信号生成部1301の内部信号は図22(a)の範囲に入る。図22(d)には、基準電圧CからΔCだけ高い電圧を振幅中心とする信号が示されている。なお、基準電圧Cおよび基準電圧Cからの幅(±A)は、光ディスク装置の記録再生動作に関して既知の変動範囲の最大値および最小値から決定される。
レベル調整部43のレベル検出部43aは、増幅部1300から入力された信号のレベルを一定の期間(例えば、信号の数周期)にわたって検出し、検出結果をレベル補正部43bに送る。するとレベル補正部43bは、基準電圧Cからのずれ(ΔC)を算出し、入力信号のレベルに(−ΔC)を加算して信号レベルを補正する。その結果、レベル補正部43bは振幅中心が基準電圧Cに一致する信号を得て、その信号をTE信号生成部1301に出力する。以上の処理の結果、TE信号生成部1301は正常に動作しかつ精度のよいTE信号を得ることができる。なお、信号の振幅中心となる電圧を基準電圧Cに一致させてもその振幅が上述の振幅Aよりも大きい場合がある。そのときは、レベル補正部43bは、さらに信号を定数倍し、その振幅の最大値および最小値の絶対値がC±Aに収まるように信号のレベルを補正すればよい。
なお、入力信号のレベルを変更することは、入力信号のレベルに電気的なオフセット(−ΔC)を与えることを意味している。このオフセットは、任意の値で与えてもよいし、ステップ状の値(−10mV、−20mV等)のひとつとして与えてもよい。
上述の処理によれば、TE信号生成部1301のダイナミックレンジを狭く設定しても正常にTE信号生成部1301を動作させることができ、TE信号生成部1301の省電力化を実現できる。さらに、アナログ演算を行うTE信号生成部1301のダイナミックレンジを狭くすることにより、ディジタル演算を行う制御信号生成部47に信号を入力する際のA/D変換の分解能を向上させることができる。
次に、ODC42を説明する。ODC42は、オフセット検出部48と、検出値記憶部44と、補正値計算部45と、オフセット補正部1303と、迷光調整部46と、制御信号生成部47とを有する。
オフセット検出部48、検出値記憶部44、補正値計算部45およびオフセット補正部1303の各機能は、例えば図1に示す同じ名称の構成要素の機能と同様である。すなわち、オフセット検出部48はローパスフィルタ1302から出力された信号に基づいてオフセットを検出し、検出値記憶部44はオフセット検出部48が出力するオフセット信号の値をすべて記憶する。また、補正値計算部45は、検出値記憶部44に記憶されたオフセット値を読み出して電気的オフセットの補正値を計算して補正信号を出力する。オフセット補正部1303は、補正値計算部45から出力された補正値に基づいてローパスフィルタ1302の出力信号を補正する。なお、図には実施形態1から3による光ディスク装置に共通して設けられたオフセット検出部、検出値記憶部、補正値計算部およびオフセット補正部のみを示している。
以上の処理により、光ディスク装置内のアンプ等に起因する電気的オフセットが補正される。さらに、この補正処理によれば、レベル調整部43において意図的に信号に与えられた電気的オフセットをも補正できる。例えば、レベル補正部43bがステップ状の値のうち“−10mV”を与える場合を考える。“−13mV”のオフセットによって完全な補正が可能であるとすると、−10mVと−13mVとの間の差(−3mV)は、信号に意図的に与えられた電気的オフセットになる。オフセット補正部1303は、この電気的オフセットを含めてそれまでに生じた電気的オフセットを補正することができる。
次に、迷光調整部46の構成および動作を説明する。迷光調整部46は、迷光検出部46aおよび迷光補正部46bを有し、光ヘッド40内の光学経路に起因する迷光を除去する。所定の条件の下では、迷光に関する信号のみが迷光調整部46に入力される。「所定の条件」とは、レーザダイオード2が点灯していること、フォーカス制御動作およびトラッキング制御動作が行われていないこと、および、光ディスク1からの反射光を受光量検出部6が受光しないこと(例えば対物レンズ5が光ディスク1から十分離れていること)である。本明細書では、この条件を迷光調整部46が迷光を調整するときの条件としている。
受光量検出部6が反射光を受光しないようにするために、レンズ駆動回路7はレンズ5に物理的に連結されたフォーカスアクチュエータ(図示せず)に予め規定された駆動信号を与え、フォーカスアクチュエータは駆動信号にしたがって対物レンズ5を光ディスク1に垂直な方向で、かつ光ディスク1から離れる方向に十分な距離だけ移動させる。このような動作は、制御信号生成部47からの制御信号に基づいてレンズ駆動回路7によって行われる。また、光ディスク1の情報記録層にデータを書き込み、情報記録層からデータ読み出す際には、光ビームの焦点が情報記録層に位置するようにレンズ駆動回路7からフォーカスアクチュエータに駆動信号が出力される。
レンズ駆動回路7は光ディスク1に垂直な方向のみならず、光ディスク1の半径方向にもレンズ5を駆動することができる。このとき、レンズ駆動回路7はレンズ5に物理的に連結されたトラッキングコイル(図示せず)に駆動信号を与え、トラッキングコイルは駆動信号にしたがってレンズ5を光ディスク1の半径方向に駆動する。これにより、光ビームの焦点位置が記録トラックを外れないように制御することができる。トラッキングコイルによって制御できないような光ヘッド40の大きな半径方向の移動は、光ヘッド40を移送する移送台(図示せず)を移動させることによって光ヘッドを所定の記録トラックまで移動させ、トラッキングコイルによってその記録トラックに追随するように制御が行われる。
迷光検出部46aが迷光信号のレベルすなわち迷光オフセットを検出し保持することにより、迷光補正部46bはオフセット補正部1303の出力信号からその迷光オフセットを減算して容易に迷光信号を除去できる。その結果、制御信号生成部47は、迷光補正部46bから出力された信号を受けて迷光の影響のない制御信号を生成することができ、これにより精度の高いトラッキング制御が実現される。
次に、図23を参照しながら、本実施形態による光ディスク装置のレベル補正動作および迷光補正動作の一連の処理手順を説明する。図23は、本実施形態による光ディスク装置の補正処理の手順を示す。ステップS401において、レーザダイオード2が点灯してレーザ光が放射される。このとき、光ディスク装置はフォーカス制御動作およびトラッキング制御動作を行っておらず、かつ、受光量検出部6が光ディスク1からの反射光を受光しない位置まで対物レンズ5をフォーカス方向に移動させる。
次にステップS402において、レベル調整部43はレベル補正を行ってTE信号生成部1301へ入力される信号のレベルを調整する。ステップS403では、オフセット補正部1303は電気的オフセット補正する。次のステップS404では、迷光調整部46は迷光オフセットを検出するとともに迷光を補正する。
ステップS404までの処理によって電気的オフセットおよび迷光オフセットが補正されると、次のステップS405において、光ディスク装置はフォーカス制御を行って光ビームを光ディスク1の情報記録層上に収束させ、ステップS406において、トラッキング制御を行って光ビームを光ディスク1の記録トラック上に正しく走査させる。その後、光ディスク1へのデータの記録動作または光ディスク1からのデータ読み出し動作が開始されると、所定の時間間隔で、ステップS407が実行される。
ステップS407では、オフセット補正部1303は電気的オフセットを検出または推定して、必要に応じて電気的オフセットを補正する。なお、所定の時間間隔の他に、実施形態1による光ディスク装置のように温度検出部を設けて、所定の温度に到達したときにステップS407を実行してもよい。
なお、ステップS404における迷光補正は、電気的オフセットの補正と異なり、光ディスク装置の起動時に一度だけ補正すればよい。動作開始後の温度変化が迷光の発生状態に対して与える影響は実質的に無視できるからである。迷光補正処理を行う際には、例えば実施形態2の光ディスク装置の動作と同様、光ディスク装置はデータの記録動作時と再生動作時とで設定を変更して迷光オフセット検出および補正を行ってもよい。このとき、例えば設定制御部715は、記録用発光パワーと再生用発光パワーとを切り替えてレーザダイオード2を発光させる。
図21の光ディスク装置はレベル調整部43および迷光調整部46の両方を備えているが、これらは一方のみが設けられてもよい。レベル調整部43および迷光調整部46の各動作は独立しているので、各々を上述した各条件の下で動作させることにより、上述の各目的を達成できる。
レベル調整部43および/または迷光調整部46は、実施形態1から3による光ディスク装置に組み込まれてもよい。例えば、図24は、実施形態1による光ディスク装置にレベル調整部43および迷光調整部46を設けた他の光ディスク装置の構成を示す。レベル調整部43は、第2遮断部102とTE信号生成部103に設けられ、TE信号生成部103へ入力される信号のレベルを調整する。また、迷光調整部46は、オフセット補正部111と制御信号生成部110との間に設けられ、精度の高いトラッキング制御およびフォーカス制御が実現される。また、本発明の第2の実施形態による光ディスク装置にレベル調整部を設ける場合には、例えばレベル調整部を増幅部700およびFE信号生成部701の間に配置して、レベル調整部がFE信号生成部701に入力される信号のレベルを調整してもよい。これにより、FE信号生成部701が正常に動作するとともに精度のよいFE信号を得ることができる。さらにFE信号生成部701のダイナミックレンジを小さくできることに伴う上述の利点も得ることができる。
なお、1台のデータ処理装置において、第1〜第3の各実施形態の2以上を組み合わせて利用することも可能である。例えば第1および第2の実施形態による処理を組み合わせて、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号の両方について、各信号に重畳された電気的オフセットを別個に補正することができる。
以上、第1から第4の実施形態による光ディスク装置を説明した。各実施形態による光ディスク装置は、電気的オフセットを検出する際の外部入力の遮断の方法、回路の各部の電気的オフセットの切り分け、記録および再生にそれぞれ対応した設定、補正値の計算方法、補正値を更新する状況、および、電気的オフセットを検出する状況等において互いに異なっている場合がある。しかし、これらの方法、設定内容等の動作条件を互いに自由に組み合わせることにより、高レートの情報転送およびより高精度なオフセット補正、レベル補正、迷光補正を実現させることができる。その結果、サーボ信号の品質が高くなり、精度の高いサーボ制御を実現できる。
なお、本明細書ではサーボ制御の例として、トラッキング制御およびフォーカスエラー制御のそれぞれを説明した。明細書および図面における、TE/FE信号、FE/TE生成チップ、TE/FE信号生成部は、それぞれサーボ信号、サーボ信号生成チップ、サーボ信号生成回路などと総括することができる。