JP2005118925A - 被覆チェザー - Google Patents

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Tomohiro Takanashi
智裕 高梨
Hideki Moriguchi
秀樹 森口
Minoru Ito
実 伊藤
Yoshio Okada
吉生 岡田
Hiroyuki Morimoto
浩之 森本
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Abstract

【課題】 長期に亘り高精度で仕上げ面性状に優れ、かつ生産性よくネジ加工を行うことができる被覆チェザーを提供する。
【解決手段】 超硬合金からなる母材と、母材上に被覆されると共に、チタンの化合物のみからなる被覆膜とを具える。母材には、刃先稜線部を設け、この刃先稜線部において、逃げ面側の刃先処理量が掬い面側の刃先処理量よりも大きくする。本発明被覆チェザーでは、被覆膜に、破壊の起点となり易いAl2O3膜を具えず、強度や耐摩耗性などに優れるチタン化合物膜のみを具える。また、面粗さや光沢などの仕上げ面の品位を向上させるべく、逃げ面側の刃先処理量を掬い面側よりも大きくする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高精度なネジ加工に適した被覆チェザーに関するものである。特に、長寿命で、良好な仕上げ面が得られる被覆チェザーに関するものである。
従来、油井管などで管同士を接続するために、管の両端や、接続用継手、搬送中などに接続部を保護するために取り付けられるプロテクタなどにネジ切りを行う工具として、超硬合金母材上に被覆膜を具えたチェザーなどの工具が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、被覆膜として第1層にTiN膜、第2層にTiCN膜を具えると共に、刃先処理量を小さくした1山総型形状の工具が記載されている。特許文献2には、刃先稜線部及びその近傍の被覆膜を除去、或いは薄くしたチェザーが記載されている。特許文献3には、被覆膜としてTiC膜、Al2O3膜、TiCN膜を具えると共に、刃先処理量が大きいチェザーが記載されている。
特開昭60-197317号公報 特開昭60-172403号公報 特開平5-277809号公報
油井管や油井管の継手などのネジ切り加工では、従来からネジ寸法精度、仕上げ面性状に対する要求が厳しく、ねじ切り工具に摩耗やチッピングが進行すると、ネジ寸法の不良や加工面の異常(スジの発生、加工面の白濁など)が発生し、工具寿命が安定しないという問題があった。
特許文献1に記載される工具では、1山総型形状かつ刃先処理量を小さくして切削負荷を低減することで、特許文献2に記載されるチェザーでは、刃先稜線部の被覆膜を除去或いは薄くして耐欠損性を向上することで、特許文献3に記載されるチェザーでは、膜種及び刃先処理量を大きく規定して耐チッピング性、耐摩耗性を向上させることで、工具寿命の安定化を図っている。
しかし、特許文献1に記載される工具では、1山であるために最終ネジ形状に仕上げるまでの切削回数が多くなり生産効率が悪く、特許文献2に記載されるチェザーでは、被覆膜を除去或いは薄くするためのラップ処理を行うことで工具のコストアップに繋がるという新たな問題がある。
特許文献3に記載されるチェザーでは、刃先稜線部に施すホーニング処理において掬い面側の刃先処理量を逃げ面側の刃先処理量よりも大きくしている。しかし、本発明者らが検討した結果、このような掬い面側の刃先処理量を大きくする刃先処理形状では、より高精度で、より優れた仕上げ面品位(面粗さ、光沢など)のネジ切削を行うのに限界があるとの知見を得た。
加えて、刃先処理量を大きくとると、小径管(具体的には直径φ127mm(5inch)以下の管)のようにワーク剛性が低いものを加工する場合、切削抵抗が高くなりビビリが生じ易く加工精度が低下するという問題が生じる。
また、被覆膜としてAl2O3膜を具えると、切削中の衝撃が被覆膜に加わった際に破壊の起点となり易く、被覆膜の破壊が発生すると、仕上げ面品位を低下させる原因となる。更に、被覆膜の破壊だけでなく母材の破壊をも起こすことで工具損傷を加速し、工具寿命の低下の原因となり得るとの知見を得た。
そこで、本発明の主目的は、長期に亘り高精度で仕上げ面性状に優れ、かつ生産性よくネジ加工を行うことができる被覆チェザーを提供することにある。
本発明は、被覆膜の膜種を特定すると共に、逃げ面側の刃先処理量を掬い面側の刃先処理量よりも大きくすることで上記目的を達成する。
即ち、本発明被覆チェザーは、超硬合金からなる母材と、前記母材上に被覆されると共に、チタン化合物のみからなる被覆膜とを具え、前記母材には、刃先稜線部が設けられ、前記刃先稜線部において、逃げ面側の刃先処理量が掬い面側の刃先処理量よりも大きいことを特徴とする。
本発明は、生産効率をよくするために、1山ではなく、複数山具えるチェザーとする。この構成により、一つの工具で複数のネジ山を同時に加工することができるため加工時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
また、本発明において被覆膜は、破壊の起点となり易いAl2O3膜を具えず、耐摩耗性や靭性などに優れるチタン化合物のみから構成されるものとする。
油井管は、使用環境が厳しいことから、管材料には、通常、Cr鋼やCr-Ni合金鋼などの合金鋼が使用されている。このような管材料では、加工硬化が大きい、熱伝導率が低い、切削工具との溶着や凝着が起こり易い、といった性質から、ネジ加工を行うと、ネジ切り工具に摩耗やチッピングが生じ易いため工具寿命が安定せず、寿命も短い傾向にある。従って、従来から工具寿命の向上のために、密着性に優れたCVD法による被覆膜を具えた超硬合金工具が一般的に使用されている。そして、CVD法による被覆膜には、耐熱性、断熱性に優れるAl2O3膜を具えていることが多い。しかし、本発明者らが被覆膜にAl2O3膜を具えるネジ切り工具の損傷状態を調べたところ、被覆膜の損傷として、正常摩耗と別に被覆膜の破壊に起因した異常な膜剥離の発生が認められ、このような異常な膜剥離を起点としたチッピングが生じることで、加工面品位の低下や、不安定な工具寿命を招いていることが明らかとなった。この破壊の起点を追求していくと、まず、Al2O3膜で破壊が発生し、この破壊部分に応力が集中してAl2O3膜の下層の膜、場合によっては母材までも破壊されることでチッピングに至っていることが明らかとなった。
上記知見に基づき、本発明では、破壊の起点となり易いAl2O3膜を設けないことで、上記の不具合を排除し、工具寿命の安定と加工面品位の安定とを図る。そして、最適な膜として、チタン化合物のみからなる膜を規定する。
更に、本発明では、面粗さや光沢などの仕上げ面品位を向上させるべく、逃げ面側の刃先処理量を掬い面側よりも大きくする。従来は、耐チッピング性を向上するために、掬い面側の刃先処理量を逃げ面側の刃先処理量よりも大きくしていた。しかし、仕上げ面品位を考慮すると、掬い面側ではなく逃げ面側の刃先処理量を大きくすることが望ましい。また、掬い面側の刃先処理量が大き過ぎると、切削抵抗の増加を招き易い。そこで、本発明では、上記のように形状や膜質を規定することで工具特性の向上を図ると共に、逃げ面側の刃先処理量を大きくすることで、仕上げ面品位の向上を図る。また、掬い面側の刃先処理量を逃げ面側よりも小さくすることで、切削抵抗の軽減を図る。
上記構成を具える本発明は、より高精度で、仕上げ面品位に優れるネジ加工を効率的に行うことができる。また、被覆膜の損傷を抑制して、チッピングや加工面への悪影響を防止し、より長期に亘り使用することができる。
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明において母材は、超硬合金にて形成したものを用いる。具体的には、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物及び炭窒化物よりなる群から選ばれる1種以上の金属化合物からなる硬質相と、1種以上の鉄族金属からなる結合相とにて形成されるものを用いる(不可避的不純物を含む)。公知の組成からなるものを用いてもよい。
結合相は、5質量%以上8質量%以下とすることが好ましい。また、母材のビッカース硬度は、13.5GPa以上15.5GPa以下とすることが好ましい。結合相が5質量%未満、ビッカース硬度が15.5GPa超では、母材の強度が不足して、チッピングや欠損が生じ易い。結合相が8質量%超、ビッカース硬度が13.5GPa未満では、耐摩耗性や耐塑性変形性が低下し易い。
母材のビッカース硬度は、例えば、硬質相の粒度(粒径)を変化させたり、硬質相を構成する金属炭化物や金属炭窒化物などの金属化合物の投入量を変化させることで調整することができる。より具体的には、同一組成において硬質相の粒度を小さくしたり、同一粒度において硬質相を構成する金属化合物の投入量を多くすることで、ビッカース硬度は高くなる傾向にある。
上記母材には、ホーニング処理などの刃先処理を施した刃先稜線部を設ける。そして、本発明では、逃げ面側の刃先処理量を掬い面側の刃先処理量よりも大きくする。より具体的には、逃げ面側の刃先処理量を0.03mm以上0.06mm以下、掬い面側の刃先処理量を0.02mm以上0.04mm以下(但し、逃げ面側の刃先処理量>掬い面側の刃先処理量)とすることが好ましい。特許文献3に記載されるように掬い面側の刃先処理量を大きくすると、肉厚が薄い管や径の小さい管などのワーク剛性の低い被削材にネジ加工を施す場合、ビビリが生じ易く、加工精度が低下する恐れがある。従って、高精度の加工を行うべく、特許文献1に記載されるように刃先処理量を小さくすることが考えられるが、被覆膜の密着性を考慮してCVD法による被覆膜を施す場合、曲率半径0.02mm以下の処理では刃先強度が不足してしまう。そこで、本発明では、特に、ワーク剛性が低い被削材に対して、ビビリの発生を効果的に防止するべく、刃先処理量を小さくすると共に、十分な刃先強度を保持するべく、刃先処理量を規定する。特に、加工面品位を向上させるために逃げ面側の刃先処理量を大きくする。なお、本発明において、逃げ面側の刃先処理量l1とは、図1に示すように母材1の逃げ面2に沿った逃げ面側接線5と、掬い面3に沿った掬い面側接線7とを引き、掬い面側接線7に直交する垂線9が母材1と接する接点6から、掬い面側接線7と垂線9との交点4までの長さとする。掬い面側の刃先処理量l2とは、掬い面側接線7と垂線9との交点4から、掬い面側接線7が母材1と接する接点8までの長さとする。
また、刃先稜線部は、滑らかな曲線形状とすることが好ましい。特に、上記のように刃先処理量を小さくする場合、滑らかな曲線形状とすることで、刃先強度の向上を図ることができる。滑らかな曲線形状にするには、例えば、丸ホーニングを施してもよい。なお、滑らかな曲線形状とは、逃げ面側から掬い面側に連続する曲線形状とする。
更に、工具形状として、掬い面と逃げ面とがなす角(刃物角)を60°以上90°以下とすることが好ましい。このような工具形状とすることで、切削抵抗の軽減と刃先強度の保持との両方を達成することができる。刃物角が60°より小さいと、刃先強度が低下して、工具の欠損が生じ易い。また、90°より大きいと、切削抵抗が大きく、ビビリなどが生じ易くなる。より好ましい刃物角は、75°〜85°である。刃物角は、例えば、工具の逃げ面、或いは掬い面を研磨することで変化させることができる。なお、刃物角とは、図1に示すように逃げ面側接線5と掬い面側接線7とがつくる角θとする。
加えて、母材表面において、刃先稜線部から掬い面側にかけて面粗さをRaで50μm以下とすることが好ましい。表面を平滑にすることで、加工中の切削抵抗の軽減、溶着の抑制といった効果が得られる。面粗さは、研磨処理などを施すことで変化させることができる。
上記構成を具える母材上に被覆膜を被覆する。本発明では、チタン化合物のみで構成される被覆膜とする。具体的には、チタンの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物、硼窒化物、硼炭窒酸化物などが挙げられる。好ましくは、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタンである。窒化チタンは、母材との密着性を向上させる効果に加えて、他のチタン化合物と比べて、軟らかく強度が高いことから、膜に加えられる負荷を軽減し、膜の破壊現象を抑制する効果がある。そのため、被覆膜の母材直上層や表面層は、窒化チタン膜とすることが好ましい。母材直上層と表面層の双方を窒化チタン膜とすることがより好ましく、被覆膜を窒化チタンからなる単層としてもよい。また、炭窒化チタンや炭化チタンは、高硬度で耐摩耗性に優れるため、好ましい。特に、炭窒化チタンは、耐チッピング性及び耐摩耗性に優れる柱状晶であることが好ましい。従って、母材側から順に、窒化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンの3層構成とすることが好適である。
柱状晶の炭窒化チタン膜を具える場合、柱状晶の平均幅は、0.1μm以上0.5μm以下とすることが好ましい。平均幅が0.1μm未満、或いは0.5μm超では、膜の強度が低下し、切削中の負荷により膜破壊を引き起こす恐れがある。柱状晶の平均幅は、成膜条件を制御することにより、変化させることができる。例えば、公知のCVD装置を用いて、ガスの流量、炉内の圧力、コーティング温度を制御することが挙げられる。より具体的には、コーティング中に原料ガスの分圧を高くすると、柱状晶の幅は大きくなる傾向にある。柱状晶の平均幅は、以下のように求める。被覆チェザーの掬い面の破断面をSEM観察(倍率:×5000〜×20000)し、炭窒化チタン膜の膜厚において半分の厚さにあたる位置に膜表面に平行な線を引く。そして、この平行線10μmを測定長として、測定長10μm内に存在する結晶の幅をそれぞれ測定し、これら測定値の平均を平均幅とするとよい。
その他、チタンとその他の金属との炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物、硼窒化物、硼炭窒酸化物などが挙げられる。その他の金属としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。
上記被覆膜は、単層でもよいし、複数層でもよい。また、被覆膜の膜厚は、1μm以上5μm以下とすることが好ましい。1μm未満では、薄すぎて耐摩耗性が不足し易い。5μm超では、膜全体の強度が不足してチッピングを引き起こす恐れがある。複数層とする場合、合計膜厚が上記の範囲を満たすように形成することが好ましい。また、炭窒化チタン膜を具える場合、炭窒化チタン膜の膜厚は1〜4μmとすることが好ましい。
上記被覆膜は、耐摩耗性を考慮すると、密着力が高いCVD法により成膜することが好ましい。成膜条件は、公知の条件としてもよい。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(試験例1)
図2に示すような台形の2山チェザーを作製して、API規格のバットレスネジ切り試験を行った。
2山チェザーは、以下のようにして作製した。まず、母材の原料粉末として、WC(粒度3μm)及びCoを準備し、WC:94質量%、Co:6質量%の組成で各粉末を配合して、ボールミルにより8時間湿式混合して乾燥した後、特定の形状の圧粉体にプレス成形した。この圧粉体を焼結炉内に挿入して、1450Kの温度で1時間、真空中で焼結を行い、焼結体を作製した。得られた焼結体のビッカース硬度を測定したところ、14.8GPaであった。このような焼結体を複数作製した。これらの焼結体に研磨処理を施すことで、所望の形状(刃物角)とした。工具No.5、6は、研磨条件を変化させることで刃物角を変化させた。
得られた各焼結体の刃先稜線部に、ポリアミド繊維製ブラシ及びセラミックス砥粒を用いてホーニング処理を施した。逃げ面及び掬い面の刃先処理量を表1に示す。ホーニング処理は、刃先稜線部が滑らかな曲線形状となるように施した。また、ホーニング処理後、刃先稜線部から掬い面側にかけて面粗さがRaで50μm以下となるように研磨処理を施した。
上記ホーニング処理を施した各母材上に、熱CVD法により、所定の温度、ガス、圧力条件により、表1に示す被覆膜を被覆した。被覆膜の組成及び膜厚を表1に示す。表1において膜の組成を示す化学式の後ろに付された括弧内の数値が膜厚を示す。なお、表1において、TiCN(粒)は、粒状晶を示し、それ以外のTiCN膜は柱状晶とした。また、柱状晶のTiCN膜では、結晶の平均幅が0.1μm以上0.5μm以下となるように成膜条件を制御した。
上記のように母材上に被覆膜を成膜した各被覆チェザーを用いて、以下の条件でネジ切削を行い、被削材に異常が発生するまでの加工本数(最大加工本数50本)と、異常が発生した際の寿命要因を調べてみた。
(切削試験条件)
被削材:API規格L80グレード、外径177.8mm(7inch)、厚さ11.51mmの鋼管
鋼管1本当り150mmの長さのネジ切削
切削速度:100m/min
送り:5.08mm/rev.
湿式
Figure 2005118925
表1に示すように、被覆膜がチタン化合物のみから構成され、かつ逃げ面側の刃先処理量が掬い面側よりも大きい工具No.1〜12は、少なくとも38本以上加工することができた。寿命要因も適正な摩耗であり、高精度で仕上げ品位に優れていた。特に、炭窒化チタン膜を具える場合、粒状晶よりも柱状晶とすることが好ましいことが確認された。また、母材直上層、表面層を窒化チタンとしている工具No.1〜6、及び10では50本加工することができ、母材直上層、表面層には、窒化チタン膜を施すことが好ましいことが確認された。
工具No.10と同様の膜組成で、成膜条件を変化させて結晶の平均幅のみを異ならせた工具(工具No.100:平均幅0.1μm未満、工具No.101:平均幅0.5μm超)を作製して同様の切削条件でネジ加工を行ってみた。すると、工具No.100、101はそれぞれ、加工本数が44本、45本であった。このことから、TiCN膜の柱状晶の平均幅は、0.1μm以上0.5μm以下が好ましいことがわかった。なお、平均幅は、作製した各工具において、掬い面断面をSEM観察(20000倍)し、各TiCN膜において半分の厚さにあたる1.5μmの位置に膜表面に平行な線を引き、測定長を10μmとして、測定長内に存在する結晶の幅をそれぞれ測定し、これら測定値の平均とした。
工具No.10と同様の膜組成で、PVD法により成膜させて工具(工具No.102)を作製して同様の切削条件でネジ加工を行ってみたところ、工具No.102の加工本数は、40本であり、CVD法による成膜の方が好ましいことがわかった。
一方、被覆膜にチタン化合物以外の化合物膜を具える工具No.51〜53、掬い面側の刃先処理量が大きい工具No.54は、20本程度加工したところで、スジ(切削残りの引っかき疵)が生じて仕上げ品位が低下したため、寿命となった。
また、上記工具No.1と同様の被覆チェザーを作製し、被削材をAPI規格L80グレード、外径127mm(5inch)、厚さ9mmの鋼管として、ネジ加工を行ってみた。切削条件は、鋼管1本当り130mmの長さのネジ切削で、切削速度:100m/min、送り:5.08mm/rev.、湿式として、上記試験と同様に被削材に異常が発生するまでの加工本数(最大加工本数50本)と、異常が発生した際の寿命要因を調べてみた。すると、ビビリが生じることなく、50本加工することできた。これらの試験から、本発明は、長期に亘り、高精度で加工品位に優れるネジ加工を生産性よく行え、また、ワーク剛性が低い被削材に対しても、加工精度の低下を抑制できることが確認された。
(試験例2)
上記試験例1で用いた試料No.1に対して、刃先処理の形状のみ変えた試料(試料No.13、14)、刃先処理量のみ変えた試料(試料No.15〜18)、刃物角のみ変化させた試料(試料No.19、20)、刃先稜線部から掬い面側にかけての表面粗さのみ変えた試料(No.21)を作製して、上記と同様のネジ切削試験を行ってみた。試験結果を表2に示す。なお、試料No.21の刃先稜線部から掬い面側にかけての表面粗さは、Raで70μmとした。
Figure 2005118925
表2に示す結果から、刃先処理の形状は、曲線形状とすることが、逃げ面側の刃先処理量は、0.03〜0.06mm、掬い面側の刃先処理量は、0.02〜0.04mmが好ましいことがわかる。刃物角は、60°以上90°以下が好ましいことがわかる。そして、刃先稜線部から掬い面側にかけての表面粗さは、Raで50μm以下が好ましいことがわかる。
(試験例3)
上記試験例1で用いた試料No.1に対して、被覆膜の膜厚のみを変えた試料を作製して、上記試験例1と同様のネジ切削試験を行ってみた。試験結果を表3に示す。
Figure 2005118925
表3に示す結果から、被覆膜の膜厚を1〜5μmとすると、長寿命であると共にスジなどが生じにくく、より好ましいことがわかる。
(試験例4)
上記試験例1で用いた試料No.1に対して、母材の組成を変化させて、ビッカース硬度を変化させた試料を作製し、上記試験例1と同様のネジ切削試験を行ってみた。試験結果を表4に示す。試料No.26は、WC:93.5質量%(粒度3μm)、Co:6.5質量%、試料No.27は、WC:95.0質量%(粒度3μm)、Co:5.0質量%、試料No.28は、WC:92.0質量%(粒度3μm)、Co:8.0質量%、試料No.29は、WC:93.5質量%(粒度1μm)、Co:6.5質量%、試料No.30は、WC:92.0質量%(粒度5μm)、Co:8.0質量%、試料No.31は、WC:95.5質量%(粒度5μm)、Co:4.5質量%、試料No.32は、WC:91.5質量%(粒度1μm)、Co:8.5質量%とした。
Figure 2005118925
表4に示す結果から、母材において結合相の含有量を5〜8質量%、ビッカース硬度を13.5〜15.5GPaとすると、長寿命であると共にチッピングや欠けなどが生じにくく、より好ましいことがわかる。
本発明は、高精度で、仕上げ面品位に優れるネジ加工を長期に亘り行うのに適する。より具体的には、油井管などの高精度、高品位が求められる被削材にネジ加工を行うのに最適である。
母材の刃先稜線部付近の断面を示す拡大模式図である。 2山チェザーの模式図である。
符号の説明
1 母材 2 逃げ面 3 掬い面 4 交点 5 逃げ面側接線 6 接点
7 掬い面側接線 8 接点 9 垂線

Claims (10)

  1. 超硬合金からなる母材と、
    前記母材上に被覆されると共に、チタン化合物のみからなる被覆膜とを具え、
    前記母材には、刃先稜線部が設けられ、
    前記刃先稜線部において、逃げ面側の刃先処理量が掬い面側の刃先処理量よりも大きいことを特徴とする被覆チェザー。
  2. 逃げ面側の刃先処理量が0.03〜0.06mm、掬い面側の刃先処理量が0.02〜0.04mmであることを特徴とする請求項1に記載の被覆チェザー。
  3. 刃先稜線部は、滑らかな曲線形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆チェザー。
  4. 掬い面と逃げ面とがなす角が60°以上90°以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆チェザー。
  5. 被覆膜には、柱状晶の炭窒化チタン膜を具え、柱状晶の平均幅が0.1μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の被覆チェザー。
  6. 被覆膜の膜厚が1〜5μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の被覆チェザー。
  7. 被覆膜の母材直上層は、窒化チタンからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の被覆チェザー。
  8. 被覆膜の表面層は、窒化チタンからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の被覆チェザー。
  9. 被覆膜は、CVD法により形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の被覆チェザー。
  10. 超硬合金は、硬質相と5〜8質量%の結合相とからなり、
    母材のビッカース硬度が13.5〜15.5GPaであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の被覆チェザー。
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