JP2005117987A - Dna増幅装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ペルチェ素子の半田接合部における接触不良や断線等の熱応力破壊を防止し、サーモモジュールの耐久性(寿命)を飛躍的に高める。また、加熱冷却性能を高めるとともに、均質なDNA増幅を実現する。
【解決手段】 DNA検体を含む反応溶液を収容可能なセル部C…を有する処理ブロック2と、この処理ブロック2を加熱冷却するペルチェ素子d…を用いたサーモモジュール3…と、少なくともサーモモジュール3…に対する通電制御を行うコントローラ4を備えるとともに、さらに、サーモモジュール3…の放熱側3r…に当接し、かつ厚さLsを略4〔mm〕以上に選定した銅素材による放熱銅盤5と、この放熱銅盤5を冷却可能な冷却手段6を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、DNA(デオキシリボ核酸)を増幅する際に用いて好適なDNA増幅装置に関する。
一般に、DNAを増幅する手法として、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)が知られている。PCR法は、DNA検体に対して当該DNA検体と反応させるプライマ,酵素及びデオキシリボヌクレオシド三リン酸を加え、この反応溶液を、所定の温度パターンにより変化する熱サイクルにより加熱(冷却)するとともに、この熱サイクルを順次繰り返すことによりDNAを増幅する手法である。
また、このようなPCR法を実現するためのDNA増幅装置も知られており、例えば、特開2003−174863号公報には、無機質基板の上に設けた加熱・冷却手段と、この加熱・冷却手段の上に格子状に形成した複数の反応セルと、この反応セルの上面に設けた温度測定手段を有し、加熱・冷却手段に、P型ペルチェ素子およびN型ペルチェ素子を一対とする電−熱変換素子を用いるとともに、これを反応セルに対向する位置に格子状に配置したDNA増幅装置が開示されている。
特開2003−174863号
ところで、ペルチェ素子を用いた加熱・冷却手段(サーモモジュール)は、通常、図6に示すように構成される。同図に示すサーモモジュール3は、複数のペルチェ素子d…を連結して直列集合体Pとし、この直列集合体Pを一対の基板51,52により挟む構造で構成されている。この場合、各基板51,52の対向面(内面)には、複数の電極e…が一定間隔置きに設けられ、各電極e…に対して各ペルチェ素子d…の端部が半田等により接合される。これにより、直列集合体Pに対する通電方向を、順方向又は逆方向に切換えれば、サーモモジュール3を加熱動作又は冷却動作させることができる。この際、加熱動作時には、サーモモジュール3の放熱側(加熱冷却側に対して反対側)が冷却されるとともに、冷却動作時には、サーモモジュール3の放熱側が加熱されるため、放熱側にはアルミニウム製のヒートシンク53が付設され、このヒートシンク53を介して放熱(吸熱)が行なわれる。
また、セル部(反応セル)は、シリコンウェハ素材或いはアルミニウム素材を用いたブロック盤の上面に複数の凹部を所定間隔置きに配列形成し、この凹部を直接セル部(反応セル)として構成したり、或いはこの凹部にセル部(チューブ)を装填する構成が採用されている。これにより、セル群を形成したブロック盤は、処理ブロックとして機能し、ブロック盤の底面はサーモモジュール3の加熱冷却側により加熱冷却される。
しかし、このようなサーモモジュール3による加熱・冷却手段をDNA増幅装置に用いた場合、次のような不具合を生じる問題があった。
即ち、DNA増幅装置では、図3に示すように、94〔℃〕によりT1〔秒〕間加熱した後、50〔℃〕によりT2〔秒〕間加熱し、更に72〔℃〕によりT3〔秒〕間加熱する熱サイクルにより加熱を行うとともに、この熱サイクルは、通常、数十回程度繰り返される。この結果、この繰り返し動作は、電極e…とペルチェ素子d…間の半田接合部に対して、基板51,52、電極e…及びペルチェ素子d…における各縦弾性係数,熱膨張率及び温度に依存した熱膨張差によるクリープを発生させることになり、半田接合部に接触不良や断線等の熱応力破壊を来すことになる。特に、放熱側(基板52側)と加熱冷却側(基板51側)は、クリープの発生方向が逆、即ち、図6に白抜矢印で示すように、放熱側又は加熱冷却側の一方に収縮方向のクリープが発生した際には、他方に伸長方向のクリープが発生するため、その熱応力も実質倍増する。
一方、クリープの発生を抑制するには、半田接合部の温度変化をできるだけ小さくすることが有効であり、このためには、ヒートシンク53の体積を大きくし、熱抵抗を小さくする必要がある。しかし、ヒートシンク53の体積を大きくするには限界がある。通常、ヒートシンク53における基部53bの厚さは、熱抵抗を小さくし、かつ剛性を高めるとともに、基部53bの反り(湾曲)を防止する観点から、概ね10〜15〔mm〕程度に設定されているが、この場合であっても、半田接合部の温度変化は5〜10〔℃〕程度となり、半田接合部における温度変化を十分に抑制できないとともに、サーモモジュール3全体の大型化を招く。しかも、複数のサーモモジュール3を分散させて配した場合には、各サーモモジュール3…間における温度のバラツキも大きくなり、全セル部に対する均質なDNA増幅を行うことができない。
また、アルミニウム製のヒートシンク53では、熱伝導性(熱拡散性)が十分とは言えず、熱の籠もりによる影響を無視できない。即ち、十分な放熱性を確保できないことから、迅速な昇温制御及び降温制御を行うことができず、加熱冷却性能の低下を招く。特に、セル部内の反応溶液を低温保存する場合、図3に示すように、94〔℃〕から4〔℃〕まで低下させる必要があるが、この際の降温時間Thが長くなり、迅速な降温制御を実現できない。結局、昇温制御及び降温制御を迅速に行えないことは、融通性のある的確な温度制御が実現されないのみならず、1工程にかかる所要時間が長くなり、処理効率の低下及び省電力性の低下を招く。しかも、ヒートシンク53の両側には5〜8〔℃〕程度の温度差が生じ、半田接合部の高温化を招くことにより大きなクリープの発生原因ともなる。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したDNA増幅装置の提供を目的とするものである。
本発明は、上述した課題を解決するため、DNA検体を含む反応溶液を収容可能な一又は二以上のセル部C…を有する処理ブロック2と、この処理ブロック2を加熱冷却するペルチェ素子d…を用いた一又は二以上のサーモモジュール3…と、少なくともサーモモジュール3…に対する通電制御を行うコントローラ4を備えるDNA増幅装置1を構成するに際して、サーモモジュール3…の放熱側3r…に当接し、かつ厚さLsを略4〔mm〕以上に選定した銅素材による放熱銅盤5と、この放熱銅盤5を冷却可能な冷却手段6を備えてなることを特徴とする。
このような構成を有する本発明に係るDNA増幅装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 放熱銅盤5による良好な熱拡散性及び大きな熱容量により、サーモモジュール3…におけるペルチェ素子d…と電極間の半田接合部における温度変化を、概ね3〔℃〕以内に抑えることができる。この結果、熱応力(クリープ)による半田接合部における接触不良や断線等の熱応力破壊を防止することができ、サーモモジュール3…の耐久性(寿命)を飛躍的に高めることができる。
(2) サーモモジュール3…の放熱側3rにおける熱の籠もりが無くなるため、加熱冷却性能が高められ、迅速な昇温制御及び降温制御が可能になる。この結果、融通性のある的確な温度制御を実現できるとともに、1工程にかかる所要時間の短縮化により、処理効率の向上及び省電力性の向上を図ることができる。特に、低温保存時に94〔℃〕から4〔℃〕まで低下させる場合であっても短時間に低下させることができるとともに、加えてサーモモジュール3…の小型化にも寄与できる。
(3) 複数のサーモモジュール3…を分散させて配する場合であっても、各サーモモジュール3…間における温度のバラツキを低減できるため、全てのセル部C…に対して均質なDNA増幅を実現することができる。
本発明に係るDNA増幅装置1によれば、最良の形態により、冷却手段6は、放熱銅盤5の放熱面5rに取付けたヒートシンク11…及びこのヒートシンク11…を空冷する送風ファン12…を有する空冷装置13により構成してもよいし、他の冷却手段6として、放熱銅盤5の内部に冷却液Wを循環させて冷却する冷却装置14により構成してもよい。この場合、前者は、比較的低コストに実施できる利点があるとともに、後者は、比較的高い冷却性能を確保できる利点がある。
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施例に係るDNA増幅装置1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1中、3…は一又は二以上のサーモモジュールである。各サーモモジュール3…は、前述した図6に示すサーモモジュール3と基本的に同じである。即ち、サーモモジュール3は、複数のペルチェ素子d…を連結して直列集合体Pとし、この直列集合体Pを一対の基板51,52により挟む構造により構成する。各基板51,52の対向面(内面)には、複数の電極e…を一定間隔置きに設け、各電極e…に対して各ペルチェ素子d…の端部を半田等により接合する。これにより、直列集合体Pに対する通電方向を、順方向又は逆方向に切換えれば、サーモモジュール3を加熱動作又は冷却動作させることができる。
一方、各サーモモジュール3…の放熱側3r…の面には、放熱銅盤5における一方の面5sを当接させる。この場合、サーモモジュール3…における放熱側3r…の面と放熱銅盤5における一方の面5sの間には熱伝導グリースを介在させ、ネジ等の固定具を利用して各サーモモジュール3…と放熱銅盤5を固定する。
放熱銅盤5は、全体を銅素材により一体形成するとともに、一定の厚みを有する板状に形成する。この場合、放熱銅盤5の厚さLsは、略4〔mm〕以上、望ましくは5〜8〔mm〕の範囲に選定する。なお、厚さLsが4〔mm〕未満の場合には、熱拡散性及び熱容量が不十分となり、本発明の意図する十分な効果を期待できない。
また、放熱銅盤5における一方の面5sに対して反対側の面は放熱面5rとなり、この放熱面5rには、一又は二以上のヒートシンク11…を取付ける。ヒートシンク11…は、放熱面5rに対して密着する密着面11bs…を有する基部11b…と、この密着面11bs…に対して反対側の面から直角方向に突出した多数の放熱フィン11f…を有し、全体をアルミニウム素材により一体形成する。この場合、基部11b…の厚さLhは、放熱フィン11f…を保持できる2〜3〔mm〕程度の厚さで足りる。前述した一般的なヒートシンク53における基部53bの厚さは、熱抵抗を小さくし、かつ剛性を高めるとともに、基部53bの反り(湾曲)を防止する観点から、通常、10〜15〔mm〕程度に設定されているが、本実施例では、これらの機能、即ち、熱抵抗を小さくし、かつ剛性を高めるとともに、基部11b…の反りを防止する機能は放熱銅盤5が担っているため、ヒートシンク11…における基部11bの厚さLhは、上述した2〜3〔mm〕程度で十分となる。
そして、各ヒートシンク11…に対向させて一又は二以上の送風ファン12…を配設する。これにより、各ヒートシンク11…を送風ファン12…により空冷することができ、このヒートシンク11…及び送風ファン12…は空冷装置13を構成する。この空冷装置13は、冷却手段6の一実施形態となる。さらに、4はコントローラであり、このコントローラ4には、各送風ファン12…及び前述した各サーモモジュール3…をそれぞれ接続する。これにより、コントローラ4は、サーモモジュール3…に対する通電制御を行うとともに、送風ファン12…に対する作動制御を行うことができる。
他方、サーモモジュール3…の加熱冷却側3sの面には、処理ブロック2を取付ける。これにより、サーモモジュール3…は、図1に示すように、下側に配した放熱銅盤5(ヒートシンク11…)と上側に配した処理ブロック2の間に挟まれる構造となる。
処理ブロック2は、基盤部21とこの基盤部21に固着した一又は二以上のセル部C…を有する。基盤部21は、全体を、熱膨張率が7〔ppm〕以下となる窒化珪素(Si34),アルミナ(Al23),窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス素材、或いは合成樹脂又は銅を含浸させたグラファイト素材により一体形成する。また、基盤部21は、平板状の基盤本体部22と、この基盤本体部22の上面に一体形成した複数の位置決部23…を有する。基盤本体部22の厚さLbは、略3〔mm〕以下、望ましくはセラミックス素材の場合、0.3〜2.0〔mm〕の範囲に選定するとともに、グラファイト素材の場合、0.3〜3.0〔mm〕の範囲に選定し、できるだけ薄くなるように考慮する。これにより、熱容量及び熱膨張係数が小さく、かつ熱伝導率の高い基盤本体部22を得ることができる。さらに、位置決部23…は、基盤本体部22の上面に一定間隔置きに配列形成するとともに、図2に示すように、セル部C…の底部が嵌着できるように、リング形をなす凸状に形成する。
なお、グラファイトの熱膨張率は約5〔ppm〕であり、かつ密度も小さいため、基盤部21にグラファイトを使用し、基盤本体部22の厚さLbを1〔mm〕程度に選定したとしても熱膨張差による反りは僅かである。この場合、基盤本体部22に対して、厚さが0.3〜0.5〔mm〕程度のセラミックスを、熱伝導グリース或いは熱伝導性接着剤により貼り付けて補強すれば、熱容量は若干増大するが、熱膨張差による反りをより抑えることができる。
一方、セル部Cは、図2に示すように、DNA検体を含む反応溶液を収容可能な0.2〜1.5〔ml〕程度の容積を有するカップ状に形成する。このセル部Cは、熱伝導率の比較的高い銅素材或いはアルミニウム素材等を用いた薄板をプレス加工により絞り成形することができる。そして、セル部Cの底部に表面処理としてニッケルや金メッキ等を施し、銀ペースト等の接着材により、位置決部23の内側における基盤本体部22の上面に固着する。この場合、銀ペーストの中にはエポキシ樹脂等の合成樹脂材を含ませることが望ましい。これにより、セル部Cと基盤部21間における熱膨張差を吸収することができ、温度変化が繰り返し作用しても高い熱伝導性と耐久性が確保される。また、セル部Cの熱膨張係数は基盤部21の熱膨張係数よりも大きくなるため、基盤部21が冷却された際には、セル部Cの外周面が位置決部23を加圧することになり、温度変化の繰り返し作用によって発生する熱応力に対する強度を高めることができる。
なお、サーモモジュール3…の加熱冷却側3sの面に、処理ブロック2を取付ける際には、基盤本体部22の下面とサーモモジュール3…における加熱冷却側3sの面の間に熱伝導グリースを介在させ、ネジ等の固定具を利用して各サーモモジュール3…と基盤本体部22を固定する。
このように構成する処理ブロック2は、熱容量及び熱膨張係数が小さく、かつ熱伝導率の高い基盤部21を用いるため、基盤部21の熱歪は、例えば、アルミニウム製のものに比べて1/3〜1/6程度になる。また、熱容量もアルミニウム製のものに比べて1/10程度となり、迅速な昇温制御及び降温制御を実現できる。具体的には、アルミニウム製のものを用いた場合、1.5〜2〔℃/秒〕程度となる温度変化率が、本実施例の場合、3.5〜4〔℃/秒〕程度になることが実験的に確認できた。
次に、本実施例に係るDNA増幅装置1の使用方法及び動作について、図1〜図3を参照して説明する。
まず、コントローラ4には、図3に示す温度パターンFが得られるように、サーモモジュール3…を通電制御するためのシーケンス制御機能を持たせる。この場合、温度パターンFに示す処理温度は、セル部C…の内部温度である。したがって、図示は省略したが、処理ブロック2における所定位置には、一又は二以上の温度センサが装着され、処理温度に対するフィードバック制御が行われる。この際、セル部C…の内部温度は、予め実験等により求めたデータベースにより推定することもできる。また、コントローラ4は、送風ファン12…を作動モードに制御する。なお、必要により、送風ファン12…はインバータ制御することができる。
一方、セル部C…内には、DNA検体に対してこのDNA検体と反応させるプライマ,酵素及びデオキシリボヌクレオシド三リン酸を加えた反応溶液を収容する。そして、コントローラ4は、最初に、サーモモジュール3…を通電制御し、94〔℃〕によりT1〔秒〕(例えば、15〔秒〕)間加熱を行う。これにより、二重螺旋構造のDNAを解離させる。次いで、サーモモジュール3…を通電制御し、50〔℃〕まで冷却するとともに、50〔℃〕に達したなら、50〔℃〕にT2〔秒〕(例えば、15〔秒〕)間維持する。これにより、DNAの特定部位にプライマを結合させる(アニーリング)。次いで、サーモモジュール3…を通電制御し、72〔℃〕まで加熱するとともに、72〔℃〕に達したなら、72〔℃〕にT3〔秒〕(例えば、30〔秒〕)間維持する。これにより、プライマが結合した特定遺伝子に対して酵素により相補鎖を合成する。以上が1熱サイクルとなり、この熱サイクルを数十回(例えば、30回)繰り返すことによりDNAの増幅処理を行うことができる。他方、このようなDNA増幅処理が終了したなら、図3に示すように、94〔℃〕から4〔℃〕まで冷却(プルダウン)する。そして、4〔℃〕に達したなら同温度に維持する制御を行う。これにより、増幅したDNAを低温保存することができる。
この場合、加熱動作時には、サーモモジュール3における加熱冷却側3sによって処理ブロック2が加熱され、かつ放熱側3rが冷却されるとともに、冷却動作時には、サーモモジュール3における加熱冷却側3sによって処理ブロック2が冷却され、かつ放熱側3rが加熱される。放熱側3rの熱量は放熱銅盤5を介して放熱され、この放熱量は、処理ブロック2から奪った熱量とサーモモジュール3自身による冷却作用のための入力電力に基づく熱量の和となる。加熱冷却能力(加熱冷却速度)は、放熱側3rにおける放熱性にも大きく影響されるが、放熱銅盤5による良好な熱拡散性と大きな熱容量により、サーモモジュール3…におけるペルチェ素子d…と電極間の半田接合部における温度変化は、概ね3〔℃〕以内に抑えられる。したがって、熱応力(クリープ)により発生する半田接合部における接触不良や断線等の熱応力破壊を防止でき、サーモモジュール3…の耐久性(寿命)を飛躍的に高めることができる。
また、本実施例に係るDNA増幅装置1によれば、放熱銅盤5による良好な放熱性により、サーモモジュール3の放熱側3rにおける熱の籠もりが無くなるとともに、加えて、処理ブロック2の構造により、加熱性能及び冷却性能を高めることができる。この結果、図3における降温時間Td及び昇温時間Tf,Tsが短縮され、迅速な昇温制御及び降温制御を実現できる。特に、増幅処理終了後、保存モードに移行する際における94〔℃〕から4〔℃〕までの降温時間Th(図3)は、できるだけ短くなることが望ましいが、放熱銅盤5による良好な放熱性により、降温時間Thの短縮が可能になる。よって、DNA増幅における1工程全体にかかる所要時間の短縮化を図れるとともに、省電力化にも貢献でき、しかも、サーモモジュール3…の小型化にも寄与できる。
さらに、複数のサーモモジュール3…を分散させて配する場合であっても、各サーモモジュール3…間における温度のバラツキが低減されるため、全てのセル部C…における均質なDNA増幅を実現することができる。
次に、冷却手段6及び処理ブロック2の変更実施例について、図4及び図5を参照して説明する。
図4は、冷却手段6の変更実施例を示す。図4に示す冷却手段6は、放熱銅盤5の内部に冷却液Wを循環させて冷却する冷却装置14により構成したものである。即ち、放熱銅盤5の内部には、冷却液Wを循環させる通液路(ジャケット)31を形成する。また、外部には、冷却液Wを収容する冷却液タンク32,送液ポンプ33,ラジエータ(熱交換器)34及び送風ファン35を備える。これにより、冷却液タンク32に収容された冷却液Wは、送液ポンプ33によりラジエータ34に供給され、このラジエータ34により空冷された後、通液路31の流入口31iに供給される。そして、通液路31を流れ、熱交換された冷却液Wは、通液路31の流出口31oから排出され、冷却液タンク32に戻される。図4に示す冷却手段6によれば、放熱銅盤5の内部が冷却液Wにより強制冷却されるため、比較的高い冷却性能を確保できる利点がある。なお、図4は、ラジエータ34を、送風ファン35により冷却(空冷)する場合を示したが、ラジエータ34を図6に示したサーモモジュール3と同様のサーモモジュール等により冷却してもよい。その他、図4において、図1と同一部分には、同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
他方、図5は、処理ブロック2の変更実施例を示す。図5に示す処理ブロック2は、基盤部21における基盤本体部22の上面に、偏平円柱形の凸状をなす複数の位置決部23s…を一体形成するとともに、この位置決部23s…に嵌着するセル部C…の底部に開口部Co…を形成し、この開口部Co…に位置決部23s…が差し込まれるようにしたものである。この場合、セル部Cを基盤本体部22に取付けるに際しては、セル部Cの底部内面にニッケルメッキ等を施し、開口部Coを位置決部23sに装着した後、銀ペースト或いは銅−銀系の半田付等により固着すればよい。なお、基盤部21が冷却された際に、セル部Cにより位置決部23sが締め付けられ、温度変化の繰り返し作用によって発生する熱応力に対する強度を高めることができる点は、図2に示した実施例と同じになる。その他、図5において、図1及び図2と同一部分には、同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明は、このような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、冷却手段6は、図1及び図4に二つの形態を示したが、放熱銅盤5を冷却することができる他の任意の冷却手段を用いることができる。なお、本発明におけるDNA増幅装置1は、酵素反応装置も含む概念である。
本発明の好適な実施例に係るDNA増幅装置の構成図、 同DNA増幅装置における処理ブロックの一部を示す分解斜視図、 同DNA増幅装置を動作させる際における時間対処理温度特性図、 同DNA増幅装置における変更実施例に係る冷却手段の構成図、 同DNA増幅装置における変更実施例に係る処理ブロックの一部を示す断面構成図、 同DNA増幅装置におけるサーモモジュールの模式的構成図、
符号の説明
1 DNA増幅装置
2 処理ブロック
3… サーモモジュール
3r… サーモモジュールの放熱側
4 コントローラ
5 放熱銅盤
5r 放熱銅盤の放熱面
6 冷却手段
11… ヒートシンク
12… 送風ファン
13 空冷装置
14 冷却装置
C… セル部
d… ペルチェ素子
Ls 放熱銅盤の厚さ
W 冷却液

Claims (3)

  1. DNA検体を含む反応溶液を収容可能な一又は二以上のセル部を有する処理ブロックと、この処理ブロックを加熱冷却するペルチェ素子を用いた一又は二以上のサーモモジュールと、少なくとも前記サーモモジュールに対する通電制御を行うコントローラを備えるDNA増幅装置において、前記サーモモジュールの放熱側に当接し、かつ厚さを略4〔mm〕以上に選定した銅素材による放熱銅盤と、この放熱銅盤を冷却可能な冷却手段を備えてなることを特徴とするDNA増幅装置。
  2. 前記冷却手段は、前記放熱銅盤の放熱面に取付けたヒートシンク及びこのヒートシンクを空冷する送風ファンを有する空冷装置であることを特徴とする請求項1記載のDNA増幅装置。
  3. 前記冷却手段は、前記放熱銅盤の内部に冷却液を循環させて冷却する冷却装置であることを特徴とする請求項1記載のDNA増幅装置。
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