JP2005113894A - タンデムポンプ - Google Patents

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靖 渡辺
Hideaki Onishi
秀明 大西
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Abstract

【課題】 両ロータを駆動軸に組付ける際の煩雑な両ロータのずれ管理の手間をできる限り少なくし、脈圧の低減と組付作業効率の向上を図る。
【解決手段】 駆動軸の外周に二面幅を設け、両インナロータ14,14に二面幅受け部27を設ける。インナロータ14の端面に凸部30と凹部31で嵌合可能な凹凸係合部を形成し、両インナロータ14,14が凹凸係合部で相互に嵌合されたときに、一方のインナロータ14の歯の頂部16aが他方のインナロータ14の歯の底部16bが円周方向で合致するようにした。両インナロータ14,14は凹凸係合部で位置決めされた状態で、二面幅受け部27が駆動軸の二面幅に嵌合される。両インナロータ14,14の吐出タイミングがずれ、脈圧が相互に相殺されるようになる。
【選択図】 図5

Description

この出願の発明は、ポンプ作用を成すポンプ本体部が駆動軸の軸方向前後に一対設けられたタンデムポンプに関し、とりわけ、脈圧を低減するための工夫を施したタンデムポンプに関する。
ポンプ本体部がトロコイド形のポンプによって構成されたタンデムポンプが従来より案出されている(特許文献1参照。)。
このタンデムポンプは、インナロータとアウタロータから成る一対のポンプ本体部が駆動軸の軸方向前後に配置され、各ポンプ本体部のインナロータが駆動軸に対してスプライン嵌合されている。そして、両ポンプ本体部のインナロータとアウタロータには、トロコイド曲線形状から成り相互に噛合する外歯と内歯が形成されているが、両ポンプ本体部のインナロータは、互いの外歯の歯位置が円周方向にずれるように駆動軸に固定されている。
このタンデムポンプの場合、インナロータ相互の外歯の歯位置のずれは各ポンプ本体部の吐出タイミングをずらすためのものであり、こうして吐出タイミングを適切にずらすことによって脈圧の低減を図っている。即ち、両ポンプ本体部の吐出部は相互に合流接続されているが、両ポンプ本体部の吐出タイミングが適切にずれることにより、合流部において脈圧が相互に相殺し合うこととなる。
特開平5-79465号公報
この従来のタンデムポンプは、両ポンプ本体部のロータ(インナロータ)を正確にずらして駆動軸にスプライン嵌合する必要があるが、両ロータのずれ量を管理しつつ各ロータを駆動軸にスプライン嵌合することは実際には非常に難しく、組付作業効率が悪いというのが実情である。
そこでこの出願の発明は、両ロータを駆動軸に組付ける際の煩雑な両ロータのずれ管理の手間をできる限り少なくし、脈圧の低減と組付作業効率の向上を図ることのできるタンデムポンプを提供しようとするものである。
上述した課題を解決するための手段として、請求項1〜4に記載の発明は、駆動軸の外周に回転係止部を設けると共に、少なくとも一方のポンプ本体部のロータに、前記回転係止部に係合される回り止め係合部を設け、両ポンプ本体部のロータの相互に対向する端面に、凸部と凹部で相互に嵌合可能な凹凸係合部を形成し、前記両ロータが端面の凹凸係合部で相互に嵌合されたときに、一方のロータのロータ側ポンプ壁の凸形状部と他方のロータのロータ側ポンプ壁の凹形状部とが円周方向で略一致するように位置決めされるようにした
この発明の場合、両ロータの端面の凹凸係合部を相互に嵌合すると、両ロータのロータ側ポンプ壁の凸形状部が円周方向に適切にずれた状態で位置決めされる。この状態で少なくとも一方のロータの回り止め係合部を駆動軸の回転係止部に係合することにより、両ロータを駆動軸に正確に組付けることができる。
請求項2に記載のように、前記両ロータは同形状に形成し、ロータの端面の凹凸係合部は、両ロータが一相対回動位置でのみ正規に嵌合する形状に形成するようにしても良い。
また、請求項3に記載のように、前記ロータ側ポンプ壁の凸形状部は奇数個に設定し、ロータの端面の凹凸係合部は、凸部の180°逆側位置にその凸部に対応する凹部が位置される形状に形成するようにしても良い。
さらに、請求項4に記載のように、ロータ側ポンプ壁の隣接する凸形状部の成す角度をα°とするときに、ロータの端面の凹凸係合部は、その凸部と凹部がα°/2間隔で配置されるように形成するようにしても良い。
請求項5に記載の発明は、駆動軸の外周に回転係止部を設けると共に、少なくとも一方のポンプ本体部のロータに、前記回転係止部に係合される回り止め係合部を設け、両ポンプ本体部のロータを、両者のロータ側ポンプ壁の凸形状部が円周方向で一致するように位置決めする一方、両ポンプ本体部の周壁部材を、両ポンプ本体部のポンプ作用が相互に脈圧を低減し合うように、オフセットさせるようにした。
この発明の場合、両ロータのロータ側ポンプ壁の凸形状部を円周方向で一致するように位置決めした状態で、少なくとも一方のロータの回り止め係合部を駆動軸の回転係止部に係合する。この状態において両ロータを対応する周壁部材の内側にセットすれば、両ポンプ本体部は相互に脈圧を低減し合うように機能することとなる。
請求項1〜4に記載の発明は、両ロータの端面の凹凸係合部を相互に嵌合することで、両ロータのロータ側ポンプ壁の凸形状部を円周方向に適切にずれた状態で位置決めすることができるため、煩雑な両ロータのずれ管理を行うことなく両ロータを駆動軸に容易に組付けることができる。したがって、この発明によれば、脈圧の確実な低減と組付作業効率の向上を両立させることができる。
また、請求項2に記載の発明は、ロータを一種類のみ用意すれば良いため、製造コストの低減を図ることができる。
請求項5に記載の発明は、両ロータのロータ側ポンプ壁の凸形状部をずらす必要がないため、両ロータを駆動軸に容易に組付けることができる。したがって、この発明の場合も、脈圧の確実な低減と組付作業効率の向上を両立させることができる。
次に、この出願の発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、請求項1に対応する第1の実施形態を図1〜図9によって説明する。この実施形態のタンデムポンプ1は、図2に示すように車両用エンジンのバランサ装置2に取付けられ、バランサ装置2の支持フレーム3から突出したバランサシャフトの前端部が駆動軸5とされている。バランサシャフトは図外のクランクシャフトに連係され、エンジンの動力によって回転駆動されるようになっている。
タンデムポンプ1のハウジング6は、後述するポンプ本体部7,8を収容するブロック状のハウジング本体9と、このハウジング本体9の前後を閉塞するカバープレート10と前記支持フレーム3の前端部とによって構成されている。
ハウジング本体9には、軸方向略中央の隔壁11を挟んで前後に円形状の凹部12,13が夫々設けられ、これらの各凹部12,13にポンプ本体部7,8が夫々収容されると共に、バランサ装置2から延出した前記駆動軸5が隔壁11を貫通して前方に延出している。尚、円形状の凹部12,13は駆動軸5の中心と偏心した位置において、同心に、かつ、同内径となるように形成されている。
このタンデムポンプ1のポンプ本体部7,8は、トロコイド形のポンプの構成とされ、夫々駆動軸5に一体回転可能に取付けられたインナロータ14(この発明におけるロータ)と、ハウジング本体9の前記凹部12,13に回転可能に収容されたアウタロータ15と備えている。インナロータ14はトロコイド曲線から成る複数の外歯16を有し、アウタロータ15は同様にトロコイド曲線から成りインナロータ14の外歯16よりも一つ分歯数の多い内歯17を有している。この実施形態の場合、インナロータ14の外歯16の歯数は5つに設定され、アウタロータ15の内歯17の歯数は6つに設定されている。また、この実施形態のタンデムポンプ1の場合、インナロータ14の外歯16部分がこの発明における凹凸状のロータ側ポンプ壁を構成し、アウタロータ15が周壁部材を構成している。
インナロータ14はアウタロータ15の内周側に偏心して配置され、外歯16が最偏心側位置でアウタロータ15の内歯17に噛合されると共に、残余の部分が円周方向の複数個所で内歯17に対して滑り接触するようになっている。そして、前方側(図2中左側)のポンプ本体部7はインナロータ14とアウタロータ15の両側部をカバープレート10と隔壁11によって閉塞され、後方側(図2中右側)のポンプ本体部8はインナロータ14とアウタロータ15の両側部を隔壁11と支持フレーム3の前端部によって閉塞されている。このように両側を閉塞されたインナロータ14とアウタロータ15は内歯17と外歯16の間で複数のポンプ室18を形成し、これらのポンプ室18がインナロータ14の回転に伴なって連続的に容積変化するようになっている。尚、この実施形態の場合、両ポンプ本体部7,8におけるインナロータ14とアウタロータ15の噛み合い軸線が合致するように設定されている。
また、カバープレート10には、図1(A)に示すように前方側のポンプ本体部7の吸入領域と吐出領域に夫々臨むように吸入ポート19と吐出ポート20が形成され、支持フレーム3には、図1(B)に示すように後方側のポンプ本体部8の吸入領域と吐出領域に夫々臨むように吸入ポート21と吐出ポート22が形成されている。そして、両側の吸入ポート19,21はハウジング本体9に形成された吸入通路23に接続され、吐出ポート20,22同士はハウジング本体9に形成された吐出通路24に接続されている。
駆動軸5には、図7に示すように回転係止部としての二面幅25が形成されており、前後のポンプ本体部7,8の各インナロータ14には軸孔26が形成され、その軸孔26に前記二面幅25が係合される回り止め係合部としての二面幅受け部27が形成されている。
ここで、両ポンプ本体部7,8のインナロータ14は同一形状に形成されており、これらの相互に対向する軸方向の端面には凹凸係合部が設けられている。この実施形態の場合、凹凸係合部は、図3,図4に示すようにインナロータ14の一方の端面に180°の範囲に亙って設けられた円弧状の凸部30と、残余の180°の範囲に亙って設けられた同じく円弧状の凹部31によって構成されている。ただし、凸部30と凹部31は、夫々周方向の中心がインナロータ14の外歯16の頂部16aと底部16bに合致するように形成されている。一方のインナロータ14の凸部30は他方のインナロータ14を円周方向に180°向きを変えたときにのみ他方のインナロータ14の凹部31と完全に合致するが、インナロータ14の外歯16の歯数は奇数個である5個に設定されているため、一方のインナロータ14の凸部30が他方のインナロータ14の凹部31に180°向きを変えて完全に嵌合されると、一方のインナロータ14側の頂部16a(凸形状部)と他方のインナロータ14側の底部16b(凹形状部)は円周方向で一致することとなる。
また、この実施形態では一方のインナロータ14の凸部30と他方のインナロータ14の凹部31が完全に嵌合されたときに、両インナロータ14,14の二面幅受け部27も円周方向で完全に合致するように設定されている。
そして、駆動軸5に両インナロータ14,14を組付ける場合には、図5,図6に示すように一方のインナロータ14の凸部30を他方のインナロータ14の凹部31に嵌合させことによって両者を位置決めし、この状態において両インナロータ14,14の二面幅受け部27,27に駆動軸5の二面幅25を嵌合する。尚、この凸部30と凹部31の嵌合は隔壁11を貫通する孔を通して行う。
こうして、両インナロータ14,14が駆動軸5に組み付けられると、図7,図8に示すように一方のインナロータ14の歯の頂部16aが他方のインナロータ14の歯の底部16bと円周方向で合致することとなる。この結果、両ポンプ本体部7,8における吐出タイミングが適切にずれ、両ポンプ本体部7,8では脈圧を相互に相殺するようにポンプ作用が為されるようになる。
図9は、この実施形態のタンデムポンプ1の脈圧特性(実線)と、歯の頂部16a同士が円周方向で一致するようにインナロータ14,14を駆動軸5に組付けた比較例の脈圧特性(鎖線)を示すものであり、これらの特性図から明らかなようにこの実施形態のポンプでは吐出部における脈圧が充分に低減される。
尚、この実施形態のタンデムポンプ1は、インナロータ14の端面に180°の範囲に亙る円弧状の凸部と凹部を配置することで凹凸係合部を構成したため、インナロータの構造が非常に簡素なものとなり、その結果、低コストでの製造が可能になるという利点がある。さらに、この実施形態においては、両インナロータ14を同形状にしているため、形状の異なるものを2種用意する場合に比較してより製造コストを低減することができる。
また、以上ではインナロータ14,14を相互に係合する凹凸係合部を一対の凸部30と凹部31によって構成した実施形態について説明したが、凹凸係合部は図10〜図12に示す第2の実施形態や図13〜図15に示す第3の実施形態のように凸部と凹部を複数対設けるようにしても良い。
図10〜図12に示す実施形態は、インナロータ14の端面に90°の範囲に亙る円弧状の凸部30a,30bと凹部31a,31bを配置したものであり、図13〜図15に示す実施形態は、インナロータ14の端面に60°の範囲に亙る円弧状の凸部30a〜30cと凹部31a〜31cを配置したものである。
第2の実施形態では、インナロータ14,14を180°ずらして組付けることにより、凸部30a,30bと凹部31b,31aが相互に嵌合され、第3の実施形態では同様にインナロータ14,14を180°ずらして組付けることにより、凸部30a,30b,30cと凹部31a,31b,31cが夫々係合される。したがって、これらの実施形態のタンデムポンプ1は、インナロータ14,14相互を複数の凸部と凹部で確実に係合させることができると共に、両者の外歯16の頂部16aと底部16bが円周方向で合致するように正確に位置決めすることができる。
ここまで説明した実施形態は、両インナロータ14,14の端部相互を凹凸係合部で係合し、両インナロータ14,14の回り止め係合部(二面幅受け部27)を駆動軸5の回転係止部(二面幅25)に係合させたが、この出願の発明にかかるタンデムポンプ1はこれに限らず、図16に示した第4の実施形態のように一方のインナロータ14の回り止め係合部(二面幅受け部)のみを駆動軸5の回転係止部(二面幅)に係合させるようにしても良い。この場合、駆動軸5の回転は凹凸係合部を介して他方のインナロータ14に伝達される。尚、図16においては、図2に示した実施形態と同一部分には同一符号を付してある。
また、インナロータ14と駆動軸5の係合は二面幅25による係合に限らず、スプライン等によって係合するようにしても良い。
さらに、凹凸係合部の凸部30と凹部31の対は必ずしも円周方向の180°逆側位置に配置しなければならないものではなく、例えば、インナロータ14の歯の隣接する頂部16a,16aの成す角度をα°とするときに、凸部30と凹部31がα°/2間隔で配置されるようにすれば、一方のインナロータ14の歯の頂部16aと他方のインナロータ14の歯の底部16bを正確に合致させることができる。ただし、この場合にはインナロータ14と駆動軸5はスプライン等によって任意角度で係合できるようにする必要がある。そして、このような構成にすればインナロータ14の外歯16の歯数は偶数にすることも可能である。
また、ポンプ本体部7,8の構成もトロコイド形に限らず、ベーン形等のポンプ構成であっても良い。この場合には、ロータ上に放射状に配置される複数のベーンがこの発明のロータ側ポンプ壁の凸形状部に相当し、隣接するベーン間のロータの外周面がロータ側ポンプ壁の凹形状部に相当することとなり、ロータの外周においてベーンの先端部をガイドするカムリングが周壁部材に相当することとなる。
つづいて、請求項5に対応する第5の実施形態を図17〜図23によって説明する。尚、以下で説明するすべての実施形態は、タンデムポンプ101の適用部位や通路構成、二つのポンプ本体部107,108がトロコイド形のポンプ構成とされている点等において、図1〜図8に示す第1の実施形態とほぼ同様であるため、第1の実施形態と同一部分に同一符号を付し、重複する部分については説明を省略するものとする。
ハウジング本体9は、軸方向略中央の隔壁11を挟む前後にポンプ本体部107,108を収容するための円形状の凹部112,113が設けられているが、この各凹部112,113は駆動軸5の中心に対して偏心し、かつ、両者の偏心方向は円周方向に設定角度ずれている(図23参照)。
この各凹部112,113には6つの内歯17を有するアウタロータ15が回転可能に収容され、各アウタロータ15の内側には5つの外歯16を有するインナロータ114が収容されている。インナロータ114の外歯16はアウタロータ15の内歯17にその一部で噛合されると共に、円周方向の複数個所でアウタロータ15に滑り接触し、隣接する接触点間に複数のポンプ室18を形成するようになっている。
駆動軸5には、図18に示すように回転係止部としての二面幅25が形成されており、前後のポンプ本体部7,8の各インナロータ114には軸孔26が形成され、その軸孔26に前記二面幅25が係合される回り止め係合部としての二面幅受け部27が形成されている。
両ポンプ本体部107,108のインナロータ114はともに同一形状に形成され、それらの軸方向の一端には凹凸係合部が設けられている。凹凸係合部は、図19,図20に示すように180°の範囲に亙って設けられた円弧状の凸部30と、残余の180°の範囲に亙って設けられた円弧状の凹部31によって構成され、凸部30と凹部31の境界部は、外歯16の頂部16aとそれと相反位置にある底部16bを結ぶ直線上に位置されるようになっている。
したがって、一方のインナロータ114の凸部30と他方のインナロータ114の凹部31が完全に嵌合されると、両インナロータ114の頂部16a,16a同士と、底部16b,16b同士が円周方向で合致することとなる。また、インナロータ114の二面幅受け部27は、一方のインナロータ114の凸部30と他方のインナロータ114の凹部31が完全に嵌合されたときに、両者の二面幅受け部27,27が円周方向で完全に合致するように設定されている。
両インナロータ114,114は、隔壁11を貫通する孔を通して凸部30と凹部31を嵌合させることによって両者の外歯16の歯位置が合致するように位置決めされ、この状態で駆動軸5の二面幅25に二面幅受け部27,27を嵌合することによって駆動軸5に一体回転可能に組み付けられる。
このとき、各インナロータ114は、ハウジング本体9の凹部112,113に収容されたアウタロータ15に噛合されるが、駆動軸5に対する凹部112,113の偏心方向は前述のように設定角度ずれているため、前後のポンプ本体部107,108におけるインナロータ114とアウタロータ15の噛み合い軸線P1,P2(図18(A),(B)及び図22(A),(B)参照)はその角度分ずれる。この噛み合い軸線P1,P2のずれ角は、一方のポンプ本体部107と他方のポンプ本体部108の吐出タイミングが適切にずれ、両者の脈圧が相互に打ち消し合うような角度に設定されている。
このタンデムポンプ101は、以上のように二つのポンプ本体部107,108による吐出が脈圧を相互に打ち消し合うように為されるため、ポンプ全体の脈圧を確実に低減することができ、しかも、両インナロータ114,114を凸部30と凹部31による嵌合によって正確に位置決めすることができることから、駆動軸5に対するインナロータ114,114の組付作業効率も向上する。特に、この実施形態においては、両インナロータ114,114の外歯16をずらす必要がないため、外歯をずらす第1の実施形態のものに比較して組付作業が容易になる。
また、この実施形態のタンデムポンプ101は、円弧状の一対の凸部30と凹部31によって凹凸係合部を構成したことと、両インナロータ114,114を同形状にしたことにより、製造コストを低減することができる。
以上では、両インナロータ114,114を位置決めする凹凸係合部を一対の凸部30と凹部31によって構成したが、凹凸係合部は図24〜図26に示す第6の実施形態のように凸部30a,30bと凹部31a,31bを複数設けるようにしても良い。この場合、一対の凸部30aと凹部31aの嵌合長が他の対のものと異なるように設定することにより、両インナロータ114,114を一定回動位置に組付けることができる。
また、インナロータ114の歯数は奇数に限らず図27〜図30に示す第7の実施形態のように偶数であっても良い。この実施形態は前述と同様に両インナロータ114,114の外歯16の位置を円周方向で合致させるものであるため、インナロータ114の形状が上下対称になる分割線上に凸部30と凹部31の境界部が位置されるようにすれば、両インナロータ114,114を第5の実施形態と同様に位置決めすることができる。
さらに、インナロータ114の歯数を偶数にする場合も、図31〜図33に示す第8の実施形態のように複数の凸部30a〜30cと凹部31a〜31cによって凹凸係合部を構成するようにしても良い。この場合には、第6の実施形態と同様に一対の凸部30aと凹部31aの嵌合長が他の対のものと異なるように設定する。
尚、第5〜第8の実施形態のものにおいても、図16に示すもののように一方のインナロータのみを駆動軸に回り止め係合するようにして良い。また、これらの実施形態の場合にも、ポンプ本体部107,108をベーン形等の他のタイプのポンプ構成としても良い。
次に、上述した実施形態の記載内容から把握し得る前記請求項に記載された発明以外の発明について、以下にその効果と共に記載する。
(イ) 駆動軸の回転によってポンプ作用を為すポンプ本体部が前記駆動軸の軸方向前後に一対設けられ、その一対のポンプ本体部の吐出部が合流接続されて成るタンデムポンプであって、
前記各ポンプ本体部が、駆動軸に一体回転可能に回転方向で係止され、外周にトロコイド曲線形状の複数の外歯が設けられたインナロータと、このインナロータの外周側に偏心して配置され、内周に前記インナロータが噛合するトロコイド曲線形状の複数の内歯が設けられたアウタロータと、を備えたトロコイド形ポンプによって構成されたものにおいて、
前記駆動軸の外周に回転係止部を設けると共に、前記少なくとも一方のポンプ本体部のインナロータに、前記回転係止部に係合される回り止め係合部を設け、前記両ポンプ本体部のインナロータの相互に対向する端面に、凸部と凹部で相互に嵌合可能な凹凸係合部を形成し、
前記両インナロータが端面の凹凸係合部で相互に嵌合されたときに、一方のインナロータの外歯の頂部と他方のインナロータの外歯の底部が円周方向で略一致するように位置決めされるようにしたことを特徴とするタンデムポンプ。
この場合、両インナロータの端面の凹凸係合部を相互に嵌合することで、両インナロータの外歯を円周方向に適切にずれた状態で位置決めすることができる。
(ロ) ロータの端面の凹凸係合部は、180°の範囲に亙る円弧状の凸部と残余の180°の範囲に亙る円弧状の凹部によって形成したことを特徴とする請求項3に記載のタンデムポンプ。
この場合、ロータの端面の凹凸係合部が最も単純な形状となり、ロータの製造が容易になる。
(ハ) 駆動軸の回転によってポンプ作用を為すポンプ本体部が前記駆動軸の軸方向前後に一対設けられ、その一対のポンプ本体部の吐出部が合流接続されて成るタンデムポンプであって、
前記各ポンプ本体部が、駆動軸に一体回転可能に回転方向で係止され、外周にトロコイド曲線形状の複数の外歯が設けられたインナロータと、このインナロータの外周側に偏心して配置され、内周に前記インナロータが噛合するトロコイド曲線形状の複数の内歯が設けられたアウタロータと、を備えたトロコイド形ポンプによって構成されたものにおいて、
前記駆動軸の外周に回転係止部を設けると共に、前記少なくとも一方のポンプ本体部のインナロータに、前記回転係止部に係合される回り止め係合部を設け、
両ポンプ本体部のインナロータを、両者の外歯の頂部が円周方向で一致するように位置決めする一方、一方のポンプ本体部のインナロータとアウタロータの噛み合い軸線と、他方のポンプ本体部のインナロータとアウタロータの噛み合い軸線が円周方向で相互にずれるように両ポンプ本体部のアウタロータをオフセットさせたことを特徴とするタンデムポンプ。
この場合、両インナロータの外歯をずらす必要がないため、両インナロータを駆動軸に容易に組付けることができる。
(ニ) 駆動軸の回転係止部を二面幅によって構成すると共に、両ポンプ本体部のロータに回り止め嵌合部としての二面幅受け部を形成し、両ロータが端面の凹凸係合部で相互に嵌合されたときに、一方のロータのロータ側ポンプ壁の凸形状部と他方のロータのロータ側ポンプ壁の凹形状部とが円周方向で一致し、かつ、両ロータの二面幅受け部も円周方向で一致するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタンデムポンプ。
この場合、両ロータの凹凸係合部を相互に嵌合させると、両ロータの外周の凸形状部が適切にずれた状態で位置決めされると同時に、両ロータの二面幅受け部も合致するようになる。このため、この後に両ロータの二面幅受け部に駆動軸の二面幅を容易に嵌合することができる。
(ホ) 駆動軸の回転係止部を二面幅によって構成すると共に、両ポンプ本体部のロータに回り止め嵌合部としての二面幅受け部を形成し、両ロータが端面の凹凸係合部で相互に嵌合されたときに、両者のロータ側ポンプ壁の凸形状部が円周方向で一致し、かつ、両ロータの二面幅受け部が円周方向で一致するようにしたことを特徴とする請求項5に記載のタンデムポンプ。
この場合、両ロータの凹凸係合部を相互に嵌合させると、両ロータの外周の凸形状部と、二面幅受け部が夫々合致するように位置決めされる。このため、この後に両ロータの二面幅受け部に駆動軸の二面幅を容易に嵌合することができる。
(ヘ) 各ロータの端面の凹凸係合部に複数の凸部と凹部が設けられている請求項1〜5、(イ),(ハ)〜(ホ)のいずれかに記載のタンデムポンプにおいて、
前記ロータの一つの凸部と凹部の対の嵌合長を他の対の嵌合長と異なるように設定したことを特徴とするタンデムポンプ。
この場合、両ロータの端面が複数の凸部と凹部で係合するため、両ロータが回転方向に確実に位置決めされるようになる。このとき、一つの凸部と凹部の対の嵌合長が他の対の嵌合長と異なるため、両ロータは設定された一相対回動位置でのみ確実に嵌合される。
この発明の第1の実施形態を示す図2のA矢視図(A)と図2のB−B断面に対応する断面図(B)を併せて記載した図。 同実施形態を示す縦断面図。 同実施形態を示すインナロータの斜視図。 同インナロータの正面図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す斜視図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す側面図。 同実施形態を示す一方のポンプ本体部の正面図(A)と他方のポンプ本体部の正面図(B)を併せて記載した図。 同実施形態の両ポンプ本体部を併せて記載した正面図。 同実施形態と比較例の脈圧特性を示すグラフ。 この出願の発明の第2の実施形態を示すインナロータの斜視図。 同インナロータの正面図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す斜視図。 この出願の発明の第3の実施形態を示すインナロータの斜視図。 同インナロータの正面図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す斜視図。 この出願の発明の第4の実施形態を示す縦断面図。 この発明の第5の実施形態を示す縦断面図。 同実施形態を示す図17のA矢視図(A)と図17のB−B断面に対応する断面図(B)を併せて記載した図。 同実施形態を示すインナロータの斜視図。 同インナロータの正面図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す斜視図。 同実施形態を示す一方のポンプ本体部の正面図(A)と他方のポンプ本体部の正面図(B)を併せて記載した図。 同実施形態の両ポンプ本体部を併せて記載した正面図。 この出願の発明の第6の実施形態を示すインナロータの斜視図。 同インナロータの正面図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す斜視図。 この出願の発明の第7の実施形態を示すインナロータの斜視図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す斜視図。 同実施形態を示す一方のポンプ本体部の正面図(A)と他方のポンプ本体部の正面図(B)を併せて記載した図。 同実施形態の両ポンプ本体部を併せて記載した正面図。 この出願の発明の第8の実施形態を示すインナロータの斜視図。 同インナロータの正面図。 同実施形態の二つのインナロータを組付けた状態を示す側面図。
符号の説明
1,101…タンデムポンプ
5…駆動軸
7,8,107,108…ポンプ本体部
14,114…インナロータ(ロータ)
15…アウタロータ(周壁部材)
16…外歯(ロータ側ポンプ壁)
16a…頂部(凸形状部)
16b…底部(凹形状部)
18…ポンプ室
25…二面幅(回転係止部)
27…二面幅受け部(回り止め係合部)
30…凸部(凹凸係合部)
31…凹部(凹凸係合部)

Claims (5)

  1. 駆動軸の回転によってポンプ作用を為すポンプ本体部が前記駆動軸の軸方向前後に一対設けられ、その一対のポンプ本体部の吐出部が合流接続されて成るタンデムポンプであって、
    前記各ポンプ本体部が、駆動軸に一体回転可能に回転方向で係止されたロータと、このロータの外周に円周方向に沿って設けられた凹凸状のロータ側ポンプ壁と、前記ロータの外周側に配置され、円周方向に離間した複数個所で前記ロータ側ポンプ壁と当接する周壁部材と、前記ロータと周壁部材の隣接する当接部間に形成され、前記ロータの駆動回転に伴なって容積を増減変化させる複数のポンプ室と、を備えた構成とされたものにおいて、
    前記駆動軸の外周に回転係止部を設けると共に、前記少なくとも一方のポンプ本体部のロータに、前記回転係止部に係合される回り止め係合部を設け、前記両ポンプ本体部のロータの相互に対向する端面に、凸部と凹部で相互に嵌合可能な凹凸係合部を形成し、
    前記両ロータが端面の凹凸係合部で相互に嵌合されたときに、一方のロータのロータ側ポンプ壁の凸形状部と他方のロータのロータ側ポンプ壁の凹形状部とが円周方向で略一致するように位置決めされるようにしたことを特徴とするタンデムポンプ。
  2. 前記両ロータを同形状に形成すると共に、ロータの端面の凹凸係合部を、両ロータが一相対回動位置でのみ正規に嵌合する形状に形成したことを特徴とする請求項1に記載のタンデムポンプ。
  3. 前記ロータ側ポンプ壁の凸形状部を奇数個に設定すると共に、ロータの端面の凹凸係合部を、凸部の180°逆側位置にその凸部に対応する凹部が位置される形状に形成したことを特徴とする請求項2に記載のタンデムポンプ。
  4. ロータ側ポンプ壁の隣接する凸形状部の成す角度をα°とするときに、ロータの端面の凹凸係合部を、その凸部と凹部がα°/2間隔で配置されるように形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のタンデムポンプ。
  5. 駆動軸の回転によってポンプ作用を為すポンプ本体部が前記駆動軸の軸方向前後に一対設けられ、その一対のポンプ本体部の吐出部が合流接続されて成るタンデムポンプであって、
    前記各ポンプ本体部が、駆動軸に一体回転可能に回転方向で係止されたロータと、このロータの外周に円周方向に沿って設けられた凹凸状のロータ側ポンプ壁と、前記ロータの外周側に配置され、円周方向に離間した複数個所で前記ロータ側ポンプ壁と当接する周壁部材と、前記ロータと周壁部材の隣接する当接部間に形成され、前記ロータの駆動回転に伴なって容積を増減変化させる複数のポンプ室と、を備えた構成とされたものにおいて、
    前記駆動軸の外周に回転係止部を設けると共に、前記少なくとも一方のポンプ本体部のロータに、前記回転係止部に係合される回り止め係合部を設け、
    両ポンプ本体部のロータを、両者のロータ側ポンプ壁の凸形状部が円周方向で一致するように位置決めする一方、両ポンプ本体部の周壁部材を、両ポンプ本体部のポンプ作用が相互に脈圧を低減し合うように、オフセットさせたことを特徴とするタンデムポンプ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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DE102006052322A1 (de) * 2006-11-07 2008-05-08 Sauer-Danfoss Aps Hydraulische Maschine
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