JP2005113189A - ナノ組織化合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ナノメートル・オーダのスケールで微細化された金属組織を有する合金であって、強度・靱性・疲労特性に優れたナノ組織化合金を実現する。
【解決手段】 共晶反応を起こす少なくとも3つの元素に、この少なくとも3つの元素からなる合金においてナノメートル・オーダのスケールでのナノ結晶化を誘発する元素を、その組成比率が0.01〜20原子%となる範囲で添加する。これにより、粒子のサイズがナノメートル・オーダで結晶化したナノ結晶が集合してなる、立体的網目構造のナノ結晶化領域11と、このナノ結晶化領域11からなる立体的網目によりそれぞれ囲まれてセル化したセル化組織12とにより形成される金属組織を得る。
【選択図】 図1
【解決手段】 共晶反応を起こす少なくとも3つの元素に、この少なくとも3つの元素からなる合金においてナノメートル・オーダのスケールでのナノ結晶化を誘発する元素を、その組成比率が0.01〜20原子%となる範囲で添加する。これにより、粒子のサイズがナノメートル・オーダで結晶化したナノ結晶が集合してなる、立体的網目構造のナノ結晶化領域11と、このナノ結晶化領域11からなる立体的網目によりそれぞれ囲まれてセル化したセル化組織12とにより形成される金属組織を得る。
【選択図】 図1
Description
本発明はナノ組織化合金に関する。より詳しくは、ナノ(nano)メートル・オーダのスケールで微細化された組織を有する合金であって、強度・靱性・疲労特性に優れた、新規な金属組織を有するナノ組織化合金を提供せんとするものである。
液相の金属を急速に冷却して得られるアモルファス金属は、結晶質金属に比して高強度および低弾性率であり、機械的性質に優れている。しかも、精密な鋳造成形が可能であって、鋳込みままにして2GPaという高い強度を得ることができる。したがって、今後の生体材料やマイクロ部品・光学部品などの材料として極めて有望視されている。
しかし、アモルファス金属は、優れた特性を有するものの、靱性や疲労特性においては、結晶質金属よりも劣る部分が少なくない。例えば、疲労強度についてみると、そのサイクル依存性は、結晶質金属のそれよりも極めて大きく、疲労中に脆化している可能性を示す。すなわち、破壊に対する抵抗が少なく、偶発的な破壊を招く可能性が高い。そのため、工業用の材料として用いる場合は、許容応力を充分に小さく設定せざるを得ず、高強度というアモルファス金属の特性が活かされていないのが現状である。
これに対して、近時、ナノメートル・オーダで金属組織が制御された合金(以下、「ナノ組織化合金」という。)の活用が提唱されている。このナノ組織化合金は、従来の通常の組織を有する金属では得られない優れた特性があることで知られている。このようなナノ組織化合金の組織としては、粒子のサイズがナノメートル・オーダである結晶(以下、「ナノ結晶」という。)のみにより構成されているもの、ナノ結晶とアモルファス相とにより構成されているものなど、種々の提案がなされている。
ここで、ナノ組織化合金の組織を構成するナノ結晶は、粒子のサイズをナノメートル・オーダとすることにより、極めて硬く変形しないという特異な性質を有するものである。アモルファス金属における疲労亀裂の伝播速度は、結晶質金属における伝播速度と大差はない。しかし、亀裂先端で生じている現象は、アモルファス金属と結晶質金属とでは大きく異なっており、その現象がアモルファス金属の疲労寿命の低減を招いている。その現象とは、亀裂先端の極度の塑性変形による発熱に伴う構造緩和や結晶化等の脆化現象である。この亀裂先端での局所的な塑性変形を緩和させるためには、極めて硬く変形しないナノ結晶を、金属組織の中に含ませることは有効である。
そこで、アモルファス金属の有する特性を活かすべく、ナノ結晶とアモルファス相とにより構成された、従来のナノ組織化合金の組織を、図13に示し説明する。ここで、図13は、この従来のナノ組織化合金の組織を示す模式図である。
図13において、ここに示したナノ組織化合金の組織は、アモルファス金属を母相として、その中にナノ結晶201が散点状に含まれている。このようなアモルファス相101の中にナノ結晶201が点在する組織を得るには、各種の方法があるが、例えば、液相の金属を急速に冷却する過程において、冷却速度をコントロールし変化させる方法が採られる。
このように、アモルファス相101と、これにより囲まれたナノ結晶201とにより構成された組織を有するナノ組織化合金は、アモルファス金属が有する特性と、ナノ結晶201が有する特性とを併有することになる。その結果、高強度および低弾性率というアモルファス金属が有する特性を活かしつつ、極めて硬く変形しないというナノ結晶201が有する特性が発揮されることになる。
A.Inoue,Y.Horio,Y.H.Kim and T.Masumoto,Materials Transactions,JIM,Vol.33,No.7(1992),pp.669 to 674
A.Inoue,Y.Horio,Y.H.Kim and T.Masumoto,Materials Transactions,JIM,Vol.33,No.7(1992),pp.669 to 674
しかしながら、ナノ組織化合金の組織を図13に示したような構成にすると、つぎのような解決すべき課題がある。すなわち、ナノ結晶201は、アモルファス相101の粘弾性変形の抵抗としては寄与することができる。しかし、ナノ結晶201は、アモルファス相101に囲まれて散点状に点在している。そのため、疲労亀裂は、抵抗の大きいナノ結晶201を容易に避け、これを迂回してアモルファス相101を伝播することができる。ナノ結晶201は、疲労亀裂の伝播に対する抵抗(靱性)としては寄与せず、その伝播を阻止することができない。したがって、疲労強度は、ナノ結晶201を含まないアモルファス金属と変わらないことになる。以上のような解決すべき課題が、図13に示した組織を有するナノ組織化合金にはあった。
そこで、上記課題に照らし、本発明はなされたものである。そのために、本発明では、つぎのような手段を用いるようにした。すなわち、共晶反応を起こす少なくとも3つの元素に、ナノメートル・オーダのスケールでの相分離やナノ結晶化を誘発する元素を添加することによりナノ組織化して、立体的網目構造に形成された相分離およびナノ結晶化領域の一方または双方のそれぞれの立体的網目により囲まれてセル化した金属組織を得るようにした。
また、そのナノ組織化された合金に大きな温度勾配を加えて一方向に伸ばし、密度や弾性率が異なる相が交互に重畳した層状の金属組織を得るようにした。さらに、そのナノ組織化された合金に、不定形状の気体元素富領域が形成された金属組織を得るようにもした。
以上のような手段を用いた結果、本発明によるならば、従来の結晶質金属あるいはアモルファス金属はもとより、従来のナノ組織化合金では得られない、優れた強度・靱性・疲労特性のナノ組織化合金を実現することができる。したがって、許容応力が充分に大きい金属材料として、広範囲にわたる活用が可能となる。
本発明によるナノ組織化合金の組織は、図1(模式図)に示すように、粒子のサイズがナノメートル・オーダで結晶化したナノ結晶が集合してなる領域(以下、「ナノ結晶化領域」という。)11が、立体的な網目構造を形成している。すなわち、従来のナノ組織化合金の組織が、図13に示したように、点在するナノ結晶201がアモルファス相101により囲まれているのとは異なり、ナノ結晶化領域11が網目構造を形成し、これにより囲まれてセル化したセル化組織12が形成されている。各セル化組織12の大きさは、数ナノ〜数百ナノメートルであり、ナノ結晶化領域11の厚さは、数ナノ〜数十ナノメートルである。また、各セル化組織12の内部は、図2(模式図)に示すように、さらに微細にセル化したアモルファス相100の組織となっている。このアモルファス相100の各セルを画する立体的網目構造の境界13は、相分離およびナノ結晶化の一方または双方により形成されている。
このように、ナノ組織化合金の組織を、立体的網目構造のナノ結晶化領域11と、これにより囲まれたセル化組織12とにより構成した場合、つぎのような効果が得られる。図13に示したナノ組織化合金の組織では、ナノ結晶201は散点状に点在するため、疲労亀裂は、非常に硬く変形しないナノ結晶201を容易に避けて伝播し得るものであった。
これに対して、図1に示した組織では、ナノ結晶化領域11が立体的な網目構造を形成している。すなわち、疲労亀裂がナノ結晶化領域11を避けて伝播するための隙間がない。そのため、疲労亀裂は、このナノ結晶化領域11を避けて迂回することができない。疲労亀裂が伝播するには、ナノ結晶化領域11を通過せざるを得ず、そのためには大きな歪みエネルギーが必要となる。しかも、ナノ結晶化領域11により囲まれたセル化組織12の内部は、さらに微細にセル化したアモルファス相100の組織となっている。そして、各セルを画する境界13は、相分離やナノ結晶化により形成されたものである。疲労亀裂が、この境界13を通過するためには、さらに大きな歪みエネルギーを必要とする。境界13がナノ結晶化による場合は、もとより大きな歪みエネルギーを必要とする。また、相分離による場合も、弾性率や密度の異なるナノメートル・オーダのスケールでの複相の混合組織は、疲労亀裂先端での歪みの集中を困難にし、その複相の界面においても歪みを緩和する能力が充分にあり、疲労限や靱性に大いに寄与する。
アモルファス金属における疲労亀裂の場合、亀裂の先端に現れる塑性変形領域は、数ナノ〜10ナノメートル以下である。したがって、この塑性変形領域の大きさに対応した大きさのセル化組織12をそろえることにより、図3に示すように、セル化組織12ごとに、疲労亀裂Cの伝播を有効に阻止することが可能となる。とくに、図2に示したように、各セル化組織12の内部は、相分離やナノ結晶化により形成された境界13によって画された、さらに微細にセル化したアモルファス相100の組織となっていることから、疲労亀裂Cの伝播を阻止することができる。
つぎに、図1に示した組織を有するナノ組織化合金の具体例について説明する。従来より、液体状態が熱的に最も安定して共晶反応を起こす3元素組成として、Zr-Cu-Al系合金が知られている。その組成比率は、Zr50Cu40Al10すなわちZrが50原子%、Cuが40原子%、Alが10原子%である。このZr-Cu-Al系合金における元素間の結合力は、内部エネルギーをもって整理すると、
Zr-Al −44kJ/mol
Zr-Cu −23kJ/mol
Cu-Al −0.8kJ/mol
となる。ここで、負に大きな値を示すほうが安定な構造をとり、結合力は強くなる。
Zr-Al −44kJ/mol
Zr-Cu −23kJ/mol
Cu-Al −0.8kJ/mol
となる。ここで、負に大きな値を示すほうが安定な構造をとり、結合力は強くなる。
元素間の力関係は、明確に大中小の3種類によって構成されていることが理解される。そして、このZr-Cu-Al系合金を用いてアモルファス構造を形成するうえで重要な役割を果たす元素は、Alである。事実、アモルファス相の生成する組成は、Alが10原子%の組成線上に沿って広がっている。最も負に大きな値を示すZr-Al結合は、Al原子におけるs軌道(電子の第1軌道)上の電子およびp軌道(第2軌道)上の電子と、Zr原子におけるd軌道(第3軌道)上の電子の化学的結合作用が、大きな結合力を生み出している。
一般に、アモルファス構造は、強い結合だけでなく、それよりも弱い複数の結合も併せ持っている。それらを複雑に絡めることにより、ランダムな原子配列を維持している。そして、アモルファス金属の構造的特徴は、この絡みによって生じる隙間に起因する。この隙間は、結晶質の隙間に比べて4%以上も大きく、低弾性率や靱性の根源として重要な役割を果たしている。
このようなアモルファス構造に変調すなわち均質な構造から不均質な構造への変化をもたらすためには、Zr-Cu-Al系合金においては、主たる組成元素であるZr、あるいは、アモルファスの主幹構造をなすZr-Alの結合に対して、強い相互作用を有する元素を添加することが有効である。その場合、その添加元素が金属元素のときは、組成元素のいずれかと原子位置の置換がしやすいという特徴が必要となる。有効な元素としては、Zr-Cu-Al系合金では、Pd,Hf,Ni,Pt,Inなどが挙げられる。また、金属元素のみならず、酸素や水素などの気体元素を添加するのも有効である。
そこで、Zr-Cu-Al系合金を基本組成として、これにPdを添加して図1に示した組織を得る例について説明する。鋳造前の溶解して液体状態にあるZr-Cu-Al系合金にPdを添加すると、液体状態にあるZr-Cu-Al系合金の構造は不安定となり、液体状態でのナノメートル・オーダの、図4に示す不定形状のスピノーダル的な相分離が誘発される。そして、しみ出た粒界に相当する領域(2相分離した領域)を結晶化するように凝固制御する。Pdを添加した合金の各元素の組成比率は、Zrが50原子%、Cuが37原子%、Alが10原子%、Pdが3原子%である(Zr50Cu37Al10Pd3)。
図5は、このようにして鋳造前において液体構造が制御された合金を、鋳造装置により鋳造したものを、高分解能電子顕微鏡を用いて撮影した写真を示すものである。これに対して、図6は、Pdを添加しないZr-Cu-Al系合金を、同じく高分解能電子顕微鏡を用いて撮影した写真を示すものである。ここから明らかなように、Zr-Cu-Al系合金に少量のPdを添加することにより、図5中の矢印が「Nano-crystal」として示すナノ結晶化領域11が形成されている。なお、鋳造に当たっては、特願2002−97501号において開示されている、コールド・スポット抑制機能付きの鋳造装置を用いた。
このように、Pdを添加することによりナノ結晶化領域11が形成されるのは、液体状態での相分離現象(非晶質の徐冷(数百K/秒以下で温度や過冷状態を維持)における結晶化前駆段階(devitrification;失透))と考えられる。Pdは、Cuと置換が容易であることが考えられ、Zrに対してはAlより活性に働きかけるために、Zrの分布に偏りが生じている可能性がある。このような現象によってナノ組織化を生じさせ、それを凍結することによりナノ組織化合金を得ることが可能となる。
図7は、より高分解能の走査形透過電子顕微鏡を用いて、図5に示したZr50Cu37Al10Pd3の組織を撮影した写真である。白色に見える網目が、ナノ結晶化領域11(図1)である。また、図8は、図7における四角で囲んだ部分を拡大した写真である。ナノ結晶化領域11により囲まれた内部に、さらに微細にセル化した組織が形成されていることを示している。
図9は、以上説明した、Zr-Cu-Al系合金にPdを添加したZr-Cu-Al-Pd系合金の疲労特性を示すものである。ここで、疲労限は、107回繰り返し応力を加えて破壊しない応力としている。実線Aは、本合金の疲労特性を示しており、疲労限は1050MPa以上である。これに対して、従来の金属の疲労限の最大値は、結晶質金属では海洋鋼の800MPaであり、アモルファス金属ではZr-Al-Ti-Cu-Ni系合金の907MPaである。したがって、本合金の疲労特性は、従来の金属と比較して顕著に向上している。なお、破線Bは、Pdを添加しないZr-Cu-Al系合金(Zr50Cu40Al10)の疲労特性を示している。これと本合金の疲労特性とを対比すれば、従来のZr基アモルファス合金における大きな問題点であった103〜104サイクルでの疲労強度の極端な低下が、本合金ではみられない。すなわち、従来のアモルファス金属においてみられた疲労破壊靱性値の大きなサイクル依存性もまったくみられず、高い信頼性を得ることができる。
以上においては、Zr-Cu-Al系合金を基本組成とする場合について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。共晶反応を起こす少なくとも3つの元素を基本組成とする場合に、本発明は適用され得るものである。
また、Pdを添加元素として用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限られるものではない。その他にも、Hf,Ni,Pt,In,O,Hなど、ナノメートル・オーダのスケールで相分離やナノ結晶化を誘発する元素を添加する場合にも、本発明は適用し得るものである。
さらに、添加元素であるPdの組成比率が3原子%である場合について述べた。しかし、本発明は、これに限られるものではない。添加元素の量が増加すると、組織のサイズは大きくなるが、添加元素の組成比率が0.01〜20原子%の範囲で、本発明は適用することができるものである。
また、図1では、立体的網目構造が、ナノ結晶化領域11により形成される場合について示した。しかし、この立体的網目構造は、ナノ結晶により形成される場合だけでなく、相分離により形成される場合、さらには相分離とナノ結晶の双方により形成される場合もある。
図10は、本発明を実施するための他の形態を示す模式図である。ここに示したナノ組織化合金の組織は、図1に示した金属組織が、疲労亀裂への抵抗を高めるものであるのに対して、矢印が示す方向からの衝撃波による衝撃破壊への抵抗を高めるものである。
図10において、このナノ組織化合金の組織は、密度および弾性率の一方または双方が異なるナノ結晶化領域11Bと、アモルファス相100Bとが交互に重畳した層状をなしている。ここにおけるナノ結晶化領域11Bは、一方向に伸ばされたセル構造(長さ方向の断面は層状組織、幅方向の断面はセル組織)となっている。
このように、金属組織を、密度や弾性率が異なる2つの層が交互に重畳した層状に形成すると、衝撃破壊亀裂の伝播を有効に阻止する効果が得られる。ここで、固体内部を伝播する弾性波の速度Vは、
V∝(E/ρ)1/2 (ただし、Eは弾性率、ρは密度)
で表される。すなわち、ナノ組織において密度に大きな揺らぎ(定常的な場所による変化)がみられるが、ナノ結晶化領域11Bが低密度で弾性率が大きく、アモルファス相100Bが高密度で弾性率が小さいと、衝撃亀裂の伝播を阻止する効果は、より大きいものとなる。
V∝(E/ρ)1/2 (ただし、Eは弾性率、ρは密度)
で表される。すなわち、ナノ組織において密度に大きな揺らぎ(定常的な場所による変化)がみられるが、ナノ結晶化領域11Bが低密度で弾性率が大きく、アモルファス相100Bが高密度で弾性率が小さいと、衝撃亀裂の伝播を阻止する効果は、より大きいものとなる。
つぎに、図10に示した層状の組織を得る方法について説明する。ここでは、Zr-Cu-Al系合金を基本組成として、これにNiを添加したもの(Zr50Cu30Ni10Al10)を、例に挙げて説明する。
まず、図11(a)に示すように、合金21の表層部に、酸素を濃縮した層(酸素富表層部)22を生成する。ついで、この合金21を、図11(b)に示すように、電極棒301との間で発生したアークの熱により再溶解して、酸素富表層部22が合金21の内部に練り込むようにする。このような溶解を多数回にわたって繰り返すと、合金21の溶湯内部はナノ組織化するとともに、図11(c)に示すように、溶湯M内部に、マーブル状の不定形状の酸素富領域23が形成される。すなわち、ある程度連続する複数の相からなる混相組織が現れる。この混相組織における各相の密度は、異なるものである。なお、酸素富領域23の厚さは、数十ナノ〜数十マイクロメートルである。
その後、以上のようにしてナノ組織化された合金に、大きな温度勾配を加えることにより、一方向に伸ばされた層状の組織を得る。図12は、そのような一方向に伸ばされた層状の組織を生成するために用いられる装置の構成概念を示す平面図である。
図12において、ここに示した装置では、平面形状が略扇状の、水冷した銅製の2つの電極31a,31bが、所定幅の空隙部Sをもって並置されており、各電極31a,31b間に電圧を加えると、ジュール熱が発生する。
これらの電極31a,31bの近傍には、それぞれリール33a,33bが配設されており、一方のリール31aに、上述のナノ組織化された合金のリボン状の薄帯24を巻く。そして、各ガイド・ローラ22a,22bを介し、かつ、各電極21a,21bの円弧状の部分に沿うようにして、薄帯24の先端を他方のリール33bに固定する。
そこで、各電極31a,31b間に電圧を加えた状態で、薄帯24を高速で送り、これを加熱する。しかし、薄帯24は加熱されても、すぐ冷却するため結晶は大きく成長することができない。しかも、常に一方向に大きな温度勾配がかけられていることから、結晶は一方向に成長し始める。このような操作を多数回にわたり繰り返すと、一方向に伸ばされた図10の層状組織が得られる。
このようにして得られる層状組織の各層の厚さは、数ナノ〜数百マイクロメートルであ
り、実験によれば、数マイクロメートルが衝撃破壊に対しては最も有効である。本願発明者が行ったシャルピー衝撃試験では、従来の合金(Zr50Cu30Ni10Al10)のシャルピー衝撃値は、80〜90kJ/m2である。これに対して、層状組織とした合金(Zr50Cu30Ni10Al10)のシャルピー衝撃値は、230〜300kJ/m2であり、衝撃特性は飛躍的に向上している。
り、実験によれば、数マイクロメートルが衝撃破壊に対しては最も有効である。本願発明者が行ったシャルピー衝撃試験では、従来の合金(Zr50Cu30Ni10Al10)のシャルピー衝撃値は、80〜90kJ/m2である。これに対して、層状組織とした合金(Zr50Cu30Ni10Al10)のシャルピー衝撃値は、230〜300kJ/m2であり、衝撃特性は飛躍的に向上している。
また、図10に示した層状の組織は、密度が異なる層が混成したものであることから、吸振能が高い。各層の厚さを制御することにより、音波から超音波まで対応することが可能である。
なお、以上においては、密度および弾性率の少なくとも一方が異なるナノ結晶化領域11Bと、アモルファス相100Bとが、交互に重畳した層状をなしている場合について述べた。しかし、密度等が異なるナノ結晶化領域どうし、あるいは、密度等が異なるアモルファス相どうしが、交互に重畳した層状をなしている場合にあっても、衝撃破壊に対しては同様に有効である。
また、密度や弾性率が異なる2つの相を、交互に重畳した層状にではなく、一方の相を図1に示したような立体的網目構造とし、他方の相を立体的網目により囲まれるセル構造としてもよい。
つぎに、本発明を実施するためのさらに他の形態について説明する。本形態においては、
アモルファス合金を再溶解して、溶湯内部に徐々に酸素を混入する。具体的には、例えば、Zr50Cu30Ni10Al10のアモルファス合金を溶解して、図11を用いて説明した方法により、溶湯の内部に100〜1000massppmの酸素を徐々に混入する。酸素が混入されると、既に述べたように、溶湯内部にマーブル状の変調組織が形成されてナノ組織化するとともに、密度が異なる複数の相の混相組織となる。
アモルファス合金を再溶解して、溶湯内部に徐々に酸素を混入する。具体的には、例えば、Zr50Cu30Ni10Al10のアモルファス合金を溶解して、図11を用いて説明した方法により、溶湯の内部に100〜1000massppmの酸素を徐々に混入する。酸素が混入されると、既に述べたように、溶湯内部にマーブル状の変調組織が形成されてナノ組織化するとともに、密度が異なる複数の相の混相組織となる。
このようにして得られた合金について本願発明者が行ったシャルピー衝撃試験によると、シャルピー衝撃値は200〜300kJ/m2 である。従来のアモルファス合金のシャルピー衝撃値の平均値は、80kJ/m2 である。したがって、衝撃特性が顕著に向上する。
以上では、アモルファス合金を再溶解して、溶湯内部に酸素を混入する場合について説明した。しかし、酸素に限らず、その他の気体元素、例えば水素を用いても同様の効果を得ることができる。、
11,11B ナノ結晶化領域
12 セル化組織
13 境界
21 合金
22 酸素富表層部
23 酸素富領域
24 薄帯
31a,31b 電極
32a,32b ガイド・ローラ
33a,33b リール
100,100B,101 アモルファス相
201 ナノ結晶
301 電極棒
C 疲労亀裂
M 溶湯
S 空隙部
12 セル化組織
13 境界
21 合金
22 酸素富表層部
23 酸素富領域
24 薄帯
31a,31b 電極
32a,32b ガイド・ローラ
33a,33b リール
100,100B,101 アモルファス相
201 ナノ結晶
301 電極棒
C 疲労亀裂
M 溶湯
S 空隙部
Claims (4)
- 共晶反応を起こす少なくとも3つの元素と、
前記少なくとも3つの元素からなる合金においてナノメートル・オーダのスケールでの相分離およびナノ結晶化の少なくとも一方を誘発する性質を有する添加元素とからなり、
前記添加元素の組成比率が、前記少なくとも3つの元素および前記添加元素の総原子量に対して0.01〜20原子%であって、
立体的網目構造に形成された相分離およびナノ結晶化領域(11)の少なくとも一方と、
前記相分離およびナノ結晶化領域の少なくとも一方により形成された立体的網目によりそれぞれ囲まれてセル化されたセル化組織(12)と
により形成された金属組織を有するナノ組織化合金。 - 前記セル化組織の内部に、前記相分離およびナノ結晶化領域の少なくとも一方により形成された立体的網目よりは微細の相分離およびナノ結晶化の少なくとも一方による立体的網目の境界(13)が形成され、アモルファス相(100)が前記境界により画されてセル化した金属組織を有する請求項1記載のナノ組織化合金。
- 共晶反応を起こす少なくとも3つの元素と、
前記少なくとも3つの元素からなる合金においてナノメートル・オーダのスケールでの相分離およびナノ結晶化の一方を誘発する性質を有する添加元素とからなり、
前記添加元素の組成比率が、前記少なくとも3つの元素および前記添加元素の総原子量に対して0.01〜20原子%であって、
密度および弾性率の少なくとも一方が異なる相が交互に重畳した層状の金属組織を有するナノ組織化合金。 - 共晶反応を起こす少なくとも3つの元素と、
前記少なくとも3つの元素からなる合金においてナノメートル・オーダのスケールでの相分離およびナノ結晶化の一方を誘発する性質を有する添加元素とからなり、
前記添加元素の組成比率が、前記少なくとも3つの元素および前記添加元素の総原子量に対して0.01〜20原子%であって、
不定形状の気体元素富領域(23)が形成された金属組織を有するナノ組織化合金。
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JP (1) | JP2005113189A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011091029A (ja) * | 2009-09-23 | 2011-05-06 | General Electric Co <Ge> | スイッチ構造及び方法 |
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2003
- 2003-10-07 JP JP2003347711A patent/JP2005113189A/ja active Pending
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JP2011091029A (ja) * | 2009-09-23 | 2011-05-06 | General Electric Co <Ge> | スイッチ構造及び方法 |
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