JP2005108435A - フラッシュランプ - Google Patents
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Abstract
【課題】ミスフラッシュを防止でき、かつ、易電子放射物質の蒸散を阻止して長寿命化を図れるフラッシュランプを提供すること。
【解決手段】ガスが封入された密封容器4内に、アーク放電を行うための対向する陰極6および陽極8から成る放電電極対10と、アーク放電に先立って予備放電を行うためのトリガ電極12,14とを有するフラッシュランプ2において、陰極6は、多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体22と、金属基体22の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜24と、を備え、金属基体22は、陽極8に向かって尖った尖頭を有し、金属基体22の尖頭22aの先端部分22tは、被膜24に覆われることなく露出している。
【選択図】 図2
【解決手段】ガスが封入された密封容器4内に、アーク放電を行うための対向する陰極6および陽極8から成る放電電極対10と、アーク放電に先立って予備放電を行うためのトリガ電極12,14とを有するフラッシュランプ2において、陰極6は、多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体22と、金属基体22の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜24と、を備え、金属基体22は、陽極8に向かって尖った尖頭を有し、金属基体22の尖頭22aの先端部分22tは、被膜24に覆われることなく露出している。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光分析用光源、ストロボ用光源などに用いられるフラッシュランプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、分光分析機器、発光分析機器などの光源として、フラッシュランプが利用されている。フラッシュランプは一般的に、易電子放射物質を含有する陰極および陽極から成る放電電極対と、トリガプローブ(トリガ電極)とをガラス容器内に有している。そして、陰極と陽極との間に所定の電圧を印加した状態でトリガプローブにトリガ電圧パルスを印加すると、まず、トリガプローブにより予備放電が生じ、その後、陰極の易電子放射物質により陽極に向かう電子放出が行われてアークの主放電が生じる。すなわち、トリガプローブにトリガ電圧パルスを印加するたびにアーク発光するパルス点灯となる。
【0003】
また、このようなフラッシュランプを開示した文献として、例えば特開昭60−151949号公報がある。この公報には、放電電極の先端が円錐状に形成されたフラッシュランプが開示されている。このように放電電極の先端を円錐形状にすることで、フラッシュごとの放電位置(放電点)が一定になり、アーク放電の安定度を高めることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報掲載のフラッシュランプをはじめとする従来のフラッシュランプには、次のような問題があった。すなわち、従来のフラッシュランプにおいてトリガプローブに印加するトリガ電圧パルスの周波数を高めると、陰極および陽極が高温になって易電子放射物質がスパッタ(蒸散)され、この易電子放射物質が陰極と陽極の間を舞うことになる。すると、陰極と陽極の間におけるアーク放電が生じやすくなり、アーク発光のタイミングがトリガプローブへの電圧印加タイミングすなわち予備放電のタイミングに同期しないというミスフラッシュ(異常放電)が起こる。特に、易電子放射物質のスパッタ量が多い場合等は、直流モードの点灯状態となってしまう。また、易電子放射物質のスパッタ量が増加するにつれて、陰極からの電子放出量が低下してフラッシュランプの寿命が短くなるという問題もある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ミスフラッシュを防止でき、かつ、易電子放射物質の蒸散を阻止して長寿命化を図れるフラッシュランプを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、ガスが封入された密封容器内に、アーク放電を行うための対向する陰極および陽極から成る放電電極対と、アーク放電に先立って予備放電を行うためのトリガ電極とを有するフラッシュランプにおいて、陰極は、多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体と、金属基体の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜と、を備え、金属基体は、陽極に向かって尖った尖頭を有し、金属基体の尖頭の先端部分は、被膜に覆われることなく露出していることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明に係るフラッシュランプによれば、トリガ電極による予備放電が終了した後に、陰極の易電子放射物質により陽極に向けて電子が放出されて、陰極と陽極の間でアーク発光が生じる。このとき、易電子放射物質を含有または含浸させた陰極の金属基体は、所定部分を高融点金属の被膜で被覆されているため、当該被覆部分では陰極の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。また、金属基体の尖頭の先端部分は被膜に覆われることなく露出しており、当該露出部から比較的低温で電子を効率良く放出させることができる。このため、陰極の温度上昇が抑制されて易電子放射物質のスパッタが一層防止されると共に、アーク放電が安定して行われる。さらに、被膜によるスパッタ防止効果によって陰極と陽極の間に放出される易電子放射物質の量を低減できるため、アーク発光のパルスタイミングが予備放電のタイミングからズレることは殆どなくなり、ミスフラッシュの防止を図ることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のフラッシュランプにおいて、陽極は、多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体と、金属基体の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜と、を備え、金属基体は、陰極に向かって尖った尖頭を有し、金属基体の前記尖頭の先端部分は、被膜に覆われることなく露出していることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明に係るフラッシュランプによれば、易電子放射物質を含有または含浸させた陽極の金属基体は、所定部分を高融点金属の被膜で被覆されているため、当該被覆部分では陽極の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフラッシュランプの好適な実施形態について詳細に説明する。尚、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する記載は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態のキセノンフラッシュランプ2を示す平面図である。キセノンフラッシュランプ2は、白色光をパルス発光するヘッドオン型のランプであり、円筒形のガラスバルブ4内に、互いに対向配置された陰極6と陽極8から成る放電電極対10と、陰極6と陽極8の間の放電空間にその先端が向くように配置された二本のトリガプローブ(トリガ電極)12,14と、キセノンフラッシュランプ2の放電を毎回安定して生じさせるためのスパーカ電極16と、を内蔵している。また、ガラスバルブ4内には、キセノンガスが封入されている。なお、本実施形態においてトリガプローブは二本配設されているが、その本数は陰極6と陽極8の間隔に応じて適宜変更される。
【0012】
また、キセノンフラッシュランプ2の使用に際しては、図示は省略するが、放電電極対10は当該放電電極対10に電圧を印加する主電源部に接続され、トリガプローブ12,14は発光タイミングを制御するために当該トリガプローブ12,14にトリガ電圧を印加するトリガ電源部に接続される。
【0013】
次に、図2を参照して、陰極6および陽極8の構成を詳説する。図2は、図1に示した陰極6および陽極8を一部破断して示した部分拡大図である。陰極6は、モリブデン製のリード棒18と当該リード棒18の先端に基部が固定された陰極先端部20とから構成されている。同様に、陽極8は、モリブデン製のリード棒19と当該リード棒19の先端に基部が固定された陽極先端部21とから構成されている。
【0014】
陰極先端部20は、陽極8に向かって尖った円錐状の尖頭22aを有する金属基体22と、当該金属基体22の尖頭22aの先端部22tを除く部分すなわち尖頭22aの斜面および陰極先端部20の基部側の円柱状部分を多う金属被膜24と、から構成されている。同様に、陽極先端部21は、陰極6に向かって尖った円錐状の尖頭23aを有する金属基体23と、当該金属基体23の尖頭23aの先端部23tを除く部分すなわち尖頭23aの斜面および陽極先端部21の基部側の円柱状部分を多う金属被膜25と、から構成されている。
【0015】
金属基体22,23は、多孔質のタングステン(高融点金属)にバリウム(易電子放射物質)を含浸させて形成され、金属被膜24,25はCVD法で堆積されたイリジウム(高融点金属)から形成されている。金属被膜24,25は0.02μm以上0.5μm以下の厚さであり、CVD法のほかにスパッタ法などでも形成することができる。陰極先端部20は、尖頭22aの先端部22tに近いほどキセノンフラッシュランプ2の動作時に高温になり易く、かつ、先端部22tに近いほど易電子放射物質を拡散させる上で重要な役割を果たしている。したがって、金属被膜24は尖頭22aにおいて必須の要素であるが、円柱状の基部側面では金属基体22を露出させていても著しい支障はない。なお、陽極8から電子が放出するわけではないため、必ずしも金属基体23に易電子放射物質を含有させる必要はなく、さらに、金属基体23を金属被膜25で被覆しなくてもよい。
【0016】
陰極6の先端部22tおよび陽極8の先端部23tでは、上述のように好適にはイリジウムが存在することなく金属基体22および金属基体23が露出している。このような構成は、例えば全面にイリジウムを被着した後、サンドペーパーで擦ることにより先端部22t,23tのイリジウムを除去すればよい。あるいは、パルスレーザー光を照射することにより、いわゆるアブレーションで先端部22t,23tのイリジウムを除去してもよい。また、先端部22t,23tをマスキングしてイリジウムを被着することにより、易電子放射物質を含んだ金属基体22,23を先端部22t,23tで露出させてもよい。
【0017】
さらに、金属被膜24,25の厚さや被着条件を調整して先端部22t,23tの金属被膜24,25を他の部分よりも物理的に「弱く」しておき、フラッシュランプとして組み付けた後に軽く予備放電することで、先端部22t,23tのイリジウムを選択的に除去して金属基体22,23を露出させることもできる。なお、この予備放電は直流あるいは交流の電力を供給することで実施できるが、いわゆるエージングの一環として実施してもよい。
【0018】
ここで、金属基体22,23を形成する高融点金属としては、動作時の高温で変質・変形することのない金属であることが必要で、かつ、易電子放射物質を含浸ないし焼結により含ませることが可能な金属である。このような金属として、タングステンの他にモリブデン、タンタル、ニオブを用いることができるが、タングステンは含浸型および焼結型のいずれにおいても最も好適な金属である。
【0019】
また、金属基体22,23に含有または含浸される易電子放射物質としては、仕事関数が低くて電子の放出が容易な金属であることが必要で、高温下で蒸散しにくいことが望ましい。このような材料として、バリウムの他にカルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属や、ランタン、イットリウム、セリウムなどを用いても良い。また、二種類以上の金属を混合しても良く、酸化物としても良い。
【0020】
さらに、金属被膜24,25を構成する金属としては、キセノンフラッシュランプ2の動作時の高温に耐えられる高融点金属であることが重要であり、かつ、仕事関数を下げる金属であれば易電子放射物質による電子放出をさらに促進する。このような金属として、イリジウムが最も好適であるが、レニウム、オスミウム、ルテニウム、タングステン、ハフニウム、タンタルでもよい。また、二種類以上の金属を混合し、あるいは積層した被膜としても良い。
【0021】
以上が本実施形態のキセノンフラッシュランプ2の構成である。次に、図1および図2を参照して、本実施形態のキセノンフラッシュランプ2の動作を説明する。放電電極対10によりアーク放電を生じさせるには、まず、上述の主電源部(図示省略)によって陰極6および陽極8の間に所定の電圧を印加する。そして、トリガ電源部によってスパーカ電極16、トリガプローブ12,14、および陽極8にパルス電圧が印加される。
【0022】
続いて、このように各電極へ電圧を印加した場合の放電現象を説明する。まず、スパーカ電極16で予備放電が行われて紫外線が放射される。そして、この紫外線により陰極6、陽極8、およびトリガプローブ12,14から光電子が放出されて、ガラスバルブ4内のキセノンガスが電離される。スパーカ電極16による放電終了後、陰極6とトリガプローブ12との予備放電およびトリガプローブ12とトリガプローブ14との予備放電が生じ、これらの予備放電によって陰極6と陽極8との間に予備放電路が形成される。
【0023】
そして、予備放電路が形成された後に、陰極6の金属基体22に含有される易電子放射物質により陽極8に向けて電子が放出されて、陰極6と陽極8の間でアーク放電が生じる。このとき、易電子放射物質を含有させた陰極6の金属基体22は、所定部分を金属被膜24で被覆されているため、当該被覆部分では陰極6の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。また、金属基体22の尖頭22aの先端部22tは金属被膜24に覆われることなく露出しており、当該露出部から比較的低温で電子を効率良く放出させることができる。このため、陰極6の温度上昇が抑制されて易電子放射物質のスパッタが一層防止されると共に、アーク放電が安定して行われる。
【0024】
また、易電子放射物質が陰極6と陽極8の間の放電空間に存在すると、陰極6と陽極8の間におけるアーク放電が生じやすくなるためアーク発光のタイミングが速まり、アーク発光がトリガプローブ12,14への電圧印加タイミングすなわち予備放電のタイミングに同期しないというミスフラッシュ(異常放電)が起こり易くなる。しかし、本実施形態のキセノンフラッシュランプ2では、金属被膜24によるスパッタ防止効果によって陰極6と陽極8の間に放出される易電子放射物質の量を低減できるため、アーク発光のパルスタイミングが予備放電のタイミングからズレることは殆どなくなり、ミスフラッシュの防止を図ることができる。
【0025】
さらに、陽極8に関しても、易電子放射物質を含有させた金属基体23は、所定部分を金属被膜25で被覆されているため、当該被覆部分では陽極8の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が実現される。
【0026】
なお、上述のように、陰極6の先端部22tおよび陽極8の先端部23tでは、好適にはイリジウムが存在することなく金属基体22,23が放電ガス雰囲気中に露出しているが、完全に露出していなくても実質的な意味で露出していれば、本実施形態の優れた効果を概ね発揮することができる。ここで「実質的な意味で露出」とは、陰極6の金属基体22の内部を拡散してきた易電子放射物質が、先端部22tに到達したときに放電ガスに晒される状態にあることを言う。すなわち、第一に、動作時に易電子放射物質が金属基体22の先端部22t表面に十分に拡散できるような物質状態にあること、第二に、尖頭22aの円錐斜面に形成された金属被膜24に比べて、数倍ないし数十倍の程度で易電子放射物質を放電ガスに接触させることが可能な物質状態になっていること、である。
【0027】
これをミクロな観点で説明すると、例えば先端部22tにおいて、微細なイリジウム塊がアイランド状に離散分布していても、バリウムのような易電子放射物質は容易に尖頭先端部の金属基体22の露出表面に供給され、放電ガス中への電子放出を容易にする。この時、尖頭22aの円錐斜面における金属基体22は、金属(イリジウム)被膜24で覆われているので、易電子放射物質の蒸散は抑制される。
【0028】
また、金属被膜24をミクロに見れば、これは粒径が数十ないし数百オングストローム単位の微細なイリジウム塊が多数、無秩序に積み重なることにより成膜されているが、先端部22tにおけるイリジウム塊の堆積の厚さを尖頭22aの円錐斜面と比べて数分の一ないし数十分の一とすれば、円錐斜面と先端部22tとの相対関係において、先端部22tでは金属基体22が実質的に露出している状態にある、と言える。さらに、イリジウム塊の大きさや堆積密度を異ならせても良い。例えば、先端部22tで塊径を大きく、円錐斜面で塊径を小さくすれば、金属基体22に含まれる易電子放射物質が円錐斜面で蒸散するのを防止でき、かつ、先端部22tに拡散した易電子放射物質を介して電子を放電ガス中に容易に供給することができる。
【0029】
次に、図3〜図5のグラフを用いて、本実施形態のキセノンフラッシュランプの特性を説明する。図3は、エージングを24時間行った後に、トリガ電圧パルスの周波数とキセノンフラッシュランプの安定性との関係を示すグラフであり、イリジウムからなる金属被膜24,25の厚さが0.2μm(グラフ中、四角印で示している。)、2.0μm(三角印)の2種類のキセノンフラッシュランプに関するデータと、従来の金属基体を金属被膜で被覆しないキセノンフラッシュランプ(白丸)に関するデータを示している。このグラフに示されているように、従来のランプではトリガ電圧パルスの周波数を上げると著しく光量の安定性が悪くなり、周波数が300Hz程度でランプが使用できなくなった。これは、放電電極対の温度上昇に伴って多量の易電子放射物質が蒸散し、ランプの電子放出機能が無くなるためである。これに対し、金属基体22,23に金属被膜24,25を塗布した本実施形態のキセノンフラッシュランプでは、周波数を500Hzまで上げてもランプは正常であった。これは、金属基体22の所定部分が金属被膜24で覆われているため易電子放射物質が蒸散されにくいためである。
【0030】
図4は、トリガ電圧パルスの周波数を100Hzに維持したときの、キセノンフラッシュランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。図5は、トリガ電圧パルスの周波数を10Hzに維持したときの、ランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。これらのグラフに示されているように、従来の金属基体に金属被膜を塗布しないランプでは、動作時間が経過するにつれて光量が変動し、アーク放電の安定性が低いといえる。これに対し、本実施形態の金属基体22,23に金属被膜24,25を塗布したキセノンフラッシュランプでは、長時間ランプを動作させても光量が殆ど変動せず、アーク放電が安定して行われている。このようにアーク放電が安定して行われるのは、金属基体22の所定部分が金属被膜24に覆われているため易電子放射物質の蒸散が防止され、また、金属基体22の先端部22tは金属被膜24に覆われず露出しているので当該露出部から比較的低温で電子が放出されるためである。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、放電電極対のうち陽極には金属被膜を被覆せず、陰極のみを金属被膜で覆うようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るフラッシュランプによれば、トリガ電極による予備放電が終了した後に、陰極の易電子放射物質により陽極に向けて電子が放出されて、陰極と陽極の間でアーク発光が生じる。このとき、易電子放射物質を含有または含浸させた陰極の金属基体は、所定部分を高融点金属の被膜で被覆されているため、当該被覆部分では陰極の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。また、金属基体の尖頭の先端部分は被膜に覆われることなく露出しており、当該露出部から比較的低温で電子を効率良く放出させることができる。このため、陰極の温度上昇が抑制されて易電子放射物質のスパッタが一層防止されると共に、アーク放電が安定して行われる。さらに、被膜によるスパッタ防止効果によって陰極と陽極の間に放出される易電子放射物質の量を低減できるため、アーク発光のパルスタイミングが予備放電のタイミングからズレることは殆どなくなり、ミスフラッシュの防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のキセノンフラッシュランプを示す図である。
【図2】図1に示した陰極および陽極の一部を破断した拡大図である。
【図3】トリガ電圧パルスの周波数とキセノンフラッシュランプの安定性との関係を示すグラフである。
【図4】トリガ電圧パルスの周波数を100Hzに維持したときの、キセノンフラッシュランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。
【図5】トリガ電圧パルスの周波数を10Hzに維持したときの、ランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2…キセノンフラッシュランプ、4…ガラスバルブ(密封容器)、6…陰極、8…陽極、10…放電電極対、12,14…トリガプローブ(トリガ電極)、16…スパーカ電極、20…陰極先端部、21…陽極先端部、22,23…金属基体、22t,23t…先端部、22a,23a…尖頭、24,25…金属被膜。
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光分析用光源、ストロボ用光源などに用いられるフラッシュランプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、分光分析機器、発光分析機器などの光源として、フラッシュランプが利用されている。フラッシュランプは一般的に、易電子放射物質を含有する陰極および陽極から成る放電電極対と、トリガプローブ(トリガ電極)とをガラス容器内に有している。そして、陰極と陽極との間に所定の電圧を印加した状態でトリガプローブにトリガ電圧パルスを印加すると、まず、トリガプローブにより予備放電が生じ、その後、陰極の易電子放射物質により陽極に向かう電子放出が行われてアークの主放電が生じる。すなわち、トリガプローブにトリガ電圧パルスを印加するたびにアーク発光するパルス点灯となる。
【0003】
また、このようなフラッシュランプを開示した文献として、例えば特開昭60−151949号公報がある。この公報には、放電電極の先端が円錐状に形成されたフラッシュランプが開示されている。このように放電電極の先端を円錐形状にすることで、フラッシュごとの放電位置(放電点)が一定になり、アーク放電の安定度を高めることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報掲載のフラッシュランプをはじめとする従来のフラッシュランプには、次のような問題があった。すなわち、従来のフラッシュランプにおいてトリガプローブに印加するトリガ電圧パルスの周波数を高めると、陰極および陽極が高温になって易電子放射物質がスパッタ(蒸散)され、この易電子放射物質が陰極と陽極の間を舞うことになる。すると、陰極と陽極の間におけるアーク放電が生じやすくなり、アーク発光のタイミングがトリガプローブへの電圧印加タイミングすなわち予備放電のタイミングに同期しないというミスフラッシュ(異常放電)が起こる。特に、易電子放射物質のスパッタ量が多い場合等は、直流モードの点灯状態となってしまう。また、易電子放射物質のスパッタ量が増加するにつれて、陰極からの電子放出量が低下してフラッシュランプの寿命が短くなるという問題もある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ミスフラッシュを防止でき、かつ、易電子放射物質の蒸散を阻止して長寿命化を図れるフラッシュランプを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、ガスが封入された密封容器内に、アーク放電を行うための対向する陰極および陽極から成る放電電極対と、アーク放電に先立って予備放電を行うためのトリガ電極とを有するフラッシュランプにおいて、陰極は、多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体と、金属基体の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜と、を備え、金属基体は、陽極に向かって尖った尖頭を有し、金属基体の尖頭の先端部分は、被膜に覆われることなく露出していることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明に係るフラッシュランプによれば、トリガ電極による予備放電が終了した後に、陰極の易電子放射物質により陽極に向けて電子が放出されて、陰極と陽極の間でアーク発光が生じる。このとき、易電子放射物質を含有または含浸させた陰極の金属基体は、所定部分を高融点金属の被膜で被覆されているため、当該被覆部分では陰極の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。また、金属基体の尖頭の先端部分は被膜に覆われることなく露出しており、当該露出部から比較的低温で電子を効率良く放出させることができる。このため、陰極の温度上昇が抑制されて易電子放射物質のスパッタが一層防止されると共に、アーク放電が安定して行われる。さらに、被膜によるスパッタ防止効果によって陰極と陽極の間に放出される易電子放射物質の量を低減できるため、アーク発光のパルスタイミングが予備放電のタイミングからズレることは殆どなくなり、ミスフラッシュの防止を図ることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のフラッシュランプにおいて、陽極は、多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体と、金属基体の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜と、を備え、金属基体は、陰極に向かって尖った尖頭を有し、金属基体の前記尖頭の先端部分は、被膜に覆われることなく露出していることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明に係るフラッシュランプによれば、易電子放射物質を含有または含浸させた陽極の金属基体は、所定部分を高融点金属の被膜で被覆されているため、当該被覆部分では陽極の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフラッシュランプの好適な実施形態について詳細に説明する。尚、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する記載は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態のキセノンフラッシュランプ2を示す平面図である。キセノンフラッシュランプ2は、白色光をパルス発光するヘッドオン型のランプであり、円筒形のガラスバルブ4内に、互いに対向配置された陰極6と陽極8から成る放電電極対10と、陰極6と陽極8の間の放電空間にその先端が向くように配置された二本のトリガプローブ(トリガ電極)12,14と、キセノンフラッシュランプ2の放電を毎回安定して生じさせるためのスパーカ電極16と、を内蔵している。また、ガラスバルブ4内には、キセノンガスが封入されている。なお、本実施形態においてトリガプローブは二本配設されているが、その本数は陰極6と陽極8の間隔に応じて適宜変更される。
【0012】
また、キセノンフラッシュランプ2の使用に際しては、図示は省略するが、放電電極対10は当該放電電極対10に電圧を印加する主電源部に接続され、トリガプローブ12,14は発光タイミングを制御するために当該トリガプローブ12,14にトリガ電圧を印加するトリガ電源部に接続される。
【0013】
次に、図2を参照して、陰極6および陽極8の構成を詳説する。図2は、図1に示した陰極6および陽極8を一部破断して示した部分拡大図である。陰極6は、モリブデン製のリード棒18と当該リード棒18の先端に基部が固定された陰極先端部20とから構成されている。同様に、陽極8は、モリブデン製のリード棒19と当該リード棒19の先端に基部が固定された陽極先端部21とから構成されている。
【0014】
陰極先端部20は、陽極8に向かって尖った円錐状の尖頭22aを有する金属基体22と、当該金属基体22の尖頭22aの先端部22tを除く部分すなわち尖頭22aの斜面および陰極先端部20の基部側の円柱状部分を多う金属被膜24と、から構成されている。同様に、陽極先端部21は、陰極6に向かって尖った円錐状の尖頭23aを有する金属基体23と、当該金属基体23の尖頭23aの先端部23tを除く部分すなわち尖頭23aの斜面および陽極先端部21の基部側の円柱状部分を多う金属被膜25と、から構成されている。
【0015】
金属基体22,23は、多孔質のタングステン(高融点金属)にバリウム(易電子放射物質)を含浸させて形成され、金属被膜24,25はCVD法で堆積されたイリジウム(高融点金属)から形成されている。金属被膜24,25は0.02μm以上0.5μm以下の厚さであり、CVD法のほかにスパッタ法などでも形成することができる。陰極先端部20は、尖頭22aの先端部22tに近いほどキセノンフラッシュランプ2の動作時に高温になり易く、かつ、先端部22tに近いほど易電子放射物質を拡散させる上で重要な役割を果たしている。したがって、金属被膜24は尖頭22aにおいて必須の要素であるが、円柱状の基部側面では金属基体22を露出させていても著しい支障はない。なお、陽極8から電子が放出するわけではないため、必ずしも金属基体23に易電子放射物質を含有させる必要はなく、さらに、金属基体23を金属被膜25で被覆しなくてもよい。
【0016】
陰極6の先端部22tおよび陽極8の先端部23tでは、上述のように好適にはイリジウムが存在することなく金属基体22および金属基体23が露出している。このような構成は、例えば全面にイリジウムを被着した後、サンドペーパーで擦ることにより先端部22t,23tのイリジウムを除去すればよい。あるいは、パルスレーザー光を照射することにより、いわゆるアブレーションで先端部22t,23tのイリジウムを除去してもよい。また、先端部22t,23tをマスキングしてイリジウムを被着することにより、易電子放射物質を含んだ金属基体22,23を先端部22t,23tで露出させてもよい。
【0017】
さらに、金属被膜24,25の厚さや被着条件を調整して先端部22t,23tの金属被膜24,25を他の部分よりも物理的に「弱く」しておき、フラッシュランプとして組み付けた後に軽く予備放電することで、先端部22t,23tのイリジウムを選択的に除去して金属基体22,23を露出させることもできる。なお、この予備放電は直流あるいは交流の電力を供給することで実施できるが、いわゆるエージングの一環として実施してもよい。
【0018】
ここで、金属基体22,23を形成する高融点金属としては、動作時の高温で変質・変形することのない金属であることが必要で、かつ、易電子放射物質を含浸ないし焼結により含ませることが可能な金属である。このような金属として、タングステンの他にモリブデン、タンタル、ニオブを用いることができるが、タングステンは含浸型および焼結型のいずれにおいても最も好適な金属である。
【0019】
また、金属基体22,23に含有または含浸される易電子放射物質としては、仕事関数が低くて電子の放出が容易な金属であることが必要で、高温下で蒸散しにくいことが望ましい。このような材料として、バリウムの他にカルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属や、ランタン、イットリウム、セリウムなどを用いても良い。また、二種類以上の金属を混合しても良く、酸化物としても良い。
【0020】
さらに、金属被膜24,25を構成する金属としては、キセノンフラッシュランプ2の動作時の高温に耐えられる高融点金属であることが重要であり、かつ、仕事関数を下げる金属であれば易電子放射物質による電子放出をさらに促進する。このような金属として、イリジウムが最も好適であるが、レニウム、オスミウム、ルテニウム、タングステン、ハフニウム、タンタルでもよい。また、二種類以上の金属を混合し、あるいは積層した被膜としても良い。
【0021】
以上が本実施形態のキセノンフラッシュランプ2の構成である。次に、図1および図2を参照して、本実施形態のキセノンフラッシュランプ2の動作を説明する。放電電極対10によりアーク放電を生じさせるには、まず、上述の主電源部(図示省略)によって陰極6および陽極8の間に所定の電圧を印加する。そして、トリガ電源部によってスパーカ電極16、トリガプローブ12,14、および陽極8にパルス電圧が印加される。
【0022】
続いて、このように各電極へ電圧を印加した場合の放電現象を説明する。まず、スパーカ電極16で予備放電が行われて紫外線が放射される。そして、この紫外線により陰極6、陽極8、およびトリガプローブ12,14から光電子が放出されて、ガラスバルブ4内のキセノンガスが電離される。スパーカ電極16による放電終了後、陰極6とトリガプローブ12との予備放電およびトリガプローブ12とトリガプローブ14との予備放電が生じ、これらの予備放電によって陰極6と陽極8との間に予備放電路が形成される。
【0023】
そして、予備放電路が形成された後に、陰極6の金属基体22に含有される易電子放射物質により陽極8に向けて電子が放出されて、陰極6と陽極8の間でアーク放電が生じる。このとき、易電子放射物質を含有させた陰極6の金属基体22は、所定部分を金属被膜24で被覆されているため、当該被覆部分では陰極6の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。また、金属基体22の尖頭22aの先端部22tは金属被膜24に覆われることなく露出しており、当該露出部から比較的低温で電子を効率良く放出させることができる。このため、陰極6の温度上昇が抑制されて易電子放射物質のスパッタが一層防止されると共に、アーク放電が安定して行われる。
【0024】
また、易電子放射物質が陰極6と陽極8の間の放電空間に存在すると、陰極6と陽極8の間におけるアーク放電が生じやすくなるためアーク発光のタイミングが速まり、アーク発光がトリガプローブ12,14への電圧印加タイミングすなわち予備放電のタイミングに同期しないというミスフラッシュ(異常放電)が起こり易くなる。しかし、本実施形態のキセノンフラッシュランプ2では、金属被膜24によるスパッタ防止効果によって陰極6と陽極8の間に放出される易電子放射物質の量を低減できるため、アーク発光のパルスタイミングが予備放電のタイミングからズレることは殆どなくなり、ミスフラッシュの防止を図ることができる。
【0025】
さらに、陽極8に関しても、易電子放射物質を含有させた金属基体23は、所定部分を金属被膜25で被覆されているため、当該被覆部分では陽極8の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が実現される。
【0026】
なお、上述のように、陰極6の先端部22tおよび陽極8の先端部23tでは、好適にはイリジウムが存在することなく金属基体22,23が放電ガス雰囲気中に露出しているが、完全に露出していなくても実質的な意味で露出していれば、本実施形態の優れた効果を概ね発揮することができる。ここで「実質的な意味で露出」とは、陰極6の金属基体22の内部を拡散してきた易電子放射物質が、先端部22tに到達したときに放電ガスに晒される状態にあることを言う。すなわち、第一に、動作時に易電子放射物質が金属基体22の先端部22t表面に十分に拡散できるような物質状態にあること、第二に、尖頭22aの円錐斜面に形成された金属被膜24に比べて、数倍ないし数十倍の程度で易電子放射物質を放電ガスに接触させることが可能な物質状態になっていること、である。
【0027】
これをミクロな観点で説明すると、例えば先端部22tにおいて、微細なイリジウム塊がアイランド状に離散分布していても、バリウムのような易電子放射物質は容易に尖頭先端部の金属基体22の露出表面に供給され、放電ガス中への電子放出を容易にする。この時、尖頭22aの円錐斜面における金属基体22は、金属(イリジウム)被膜24で覆われているので、易電子放射物質の蒸散は抑制される。
【0028】
また、金属被膜24をミクロに見れば、これは粒径が数十ないし数百オングストローム単位の微細なイリジウム塊が多数、無秩序に積み重なることにより成膜されているが、先端部22tにおけるイリジウム塊の堆積の厚さを尖頭22aの円錐斜面と比べて数分の一ないし数十分の一とすれば、円錐斜面と先端部22tとの相対関係において、先端部22tでは金属基体22が実質的に露出している状態にある、と言える。さらに、イリジウム塊の大きさや堆積密度を異ならせても良い。例えば、先端部22tで塊径を大きく、円錐斜面で塊径を小さくすれば、金属基体22に含まれる易電子放射物質が円錐斜面で蒸散するのを防止でき、かつ、先端部22tに拡散した易電子放射物質を介して電子を放電ガス中に容易に供給することができる。
【0029】
次に、図3〜図5のグラフを用いて、本実施形態のキセノンフラッシュランプの特性を説明する。図3は、エージングを24時間行った後に、トリガ電圧パルスの周波数とキセノンフラッシュランプの安定性との関係を示すグラフであり、イリジウムからなる金属被膜24,25の厚さが0.2μm(グラフ中、四角印で示している。)、2.0μm(三角印)の2種類のキセノンフラッシュランプに関するデータと、従来の金属基体を金属被膜で被覆しないキセノンフラッシュランプ(白丸)に関するデータを示している。このグラフに示されているように、従来のランプではトリガ電圧パルスの周波数を上げると著しく光量の安定性が悪くなり、周波数が300Hz程度でランプが使用できなくなった。これは、放電電極対の温度上昇に伴って多量の易電子放射物質が蒸散し、ランプの電子放出機能が無くなるためである。これに対し、金属基体22,23に金属被膜24,25を塗布した本実施形態のキセノンフラッシュランプでは、周波数を500Hzまで上げてもランプは正常であった。これは、金属基体22の所定部分が金属被膜24で覆われているため易電子放射物質が蒸散されにくいためである。
【0030】
図4は、トリガ電圧パルスの周波数を100Hzに維持したときの、キセノンフラッシュランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。図5は、トリガ電圧パルスの周波数を10Hzに維持したときの、ランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。これらのグラフに示されているように、従来の金属基体に金属被膜を塗布しないランプでは、動作時間が経過するにつれて光量が変動し、アーク放電の安定性が低いといえる。これに対し、本実施形態の金属基体22,23に金属被膜24,25を塗布したキセノンフラッシュランプでは、長時間ランプを動作させても光量が殆ど変動せず、アーク放電が安定して行われている。このようにアーク放電が安定して行われるのは、金属基体22の所定部分が金属被膜24に覆われているため易電子放射物質の蒸散が防止され、また、金属基体22の先端部22tは金属被膜24に覆われず露出しているので当該露出部から比較的低温で電子が放出されるためである。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、放電電極対のうち陽極には金属被膜を被覆せず、陰極のみを金属被膜で覆うようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るフラッシュランプによれば、トリガ電極による予備放電が終了した後に、陰極の易電子放射物質により陽極に向けて電子が放出されて、陰極と陽極の間でアーク発光が生じる。このとき、易電子放射物質を含有または含浸させた陰極の金属基体は、所定部分を高融点金属の被膜で被覆されているため、当該被覆部分では陰極の温度上昇に伴う易電子放射物質のスパッタが防止されて長寿命化が可能となる。また、金属基体の尖頭の先端部分は被膜に覆われることなく露出しており、当該露出部から比較的低温で電子を効率良く放出させることができる。このため、陰極の温度上昇が抑制されて易電子放射物質のスパッタが一層防止されると共に、アーク放電が安定して行われる。さらに、被膜によるスパッタ防止効果によって陰極と陽極の間に放出される易電子放射物質の量を低減できるため、アーク発光のパルスタイミングが予備放電のタイミングからズレることは殆どなくなり、ミスフラッシュの防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のキセノンフラッシュランプを示す図である。
【図2】図1に示した陰極および陽極の一部を破断した拡大図である。
【図3】トリガ電圧パルスの周波数とキセノンフラッシュランプの安定性との関係を示すグラフである。
【図4】トリガ電圧パルスの周波数を100Hzに維持したときの、キセノンフラッシュランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。
【図5】トリガ電圧パルスの周波数を10Hzに維持したときの、ランプの動作時間と安定性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2…キセノンフラッシュランプ、4…ガラスバルブ(密封容器)、6…陰極、8…陽極、10…放電電極対、12,14…トリガプローブ(トリガ電極)、16…スパーカ電極、20…陰極先端部、21…陽極先端部、22,23…金属基体、22t,23t…先端部、22a,23a…尖頭、24,25…金属被膜。
Claims (2)
- ガスが封入された密封容器内に、アーク放電を行うための対向する陰極および陽極から成る放電電極対と、前記アーク放電に先立って予備放電を行うためのトリガ電極とを有するフラッシュランプにおいて、
前記陰極は、
多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体と、
前記金属基体の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜と、を備え、
前記金属基体は、前記陽極に向かって尖った尖頭を有し、
前記金属基体の前記尖頭の先端部分は、前記被膜に覆われることなく露出していることを特徴とするフラッシュランプ。 - 前記陽極は、
多孔質の高融点金属に易電子放射物質を含浸させた含浸型または高融点金属に易電子放射物質を含有させて焼結した焼結型の金属基体と、
前記金属基体の表面の所定部分を被覆する高融点金属の被膜と、を備え、
前記金属基体は、前記陰極に向かって尖った尖頭を有し、
前記金属基体の前記尖頭の先端部分は、前記被膜に覆われることなく露出していることを特徴とする請求項1記載のフラッシュランプ。
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