以下、本発明の実施の形態としての記録媒体、記録再生装置及び方法並びにプログラム、データ送受信システム及び方法並びにプログラムについて説明する。
この実施の形態では、一例として、磁界変調方式でデータ記録が行われる光磁気ディスクであるミニディスク(MD)に対する記録再生システム(ミニディスクシステム)に対応したものとする。説明は、1.ディスク仕様及びエリア構造、2.ディスクの管理構造、3.UTOC、4.クラスタ構造、5.データトラックにおけるFATファイルシステム実現例、6.記録再生装置の構成、7.データ送受信システム、の順番で説明する。
1.ディスク仕様及びエリア構造
本実施例で採用するディスクは、ミニディスク方式のディスク上に、所定のディスクフォーマットに基づきオーディオデータを記録できるとともに、例えばコンピュータユースの各種データを記録できるものである。なお、説明上の区別のため本明細書では、「オーディオトラック」、「データトラック」、「MDオーディオデータ」及び「高密度データ」という文言を用いる。
「オーディオトラック」は、ミニディスクシステムにおけるオーディオデータの1区画であり、例えば音楽等の場合の1曲に相当する。このオーディオトラックとして記録されるオーディオデータは、ATRAC(Adaptive Transform Acoustic Coding)圧縮方式で圧縮され、ACIRC誤り訂正方式及びEFM変調としての「第1の変調方式」で変調されたデータである。そして、この「オーディオトラック」に記録される第1の変調方式によるオーディオデータを「MDオーディオデータ」とする。
「データトラック」は、例えばパーソナルコンピュータや配信システム等において利用できる汎用データが記録された区画(トラック)である。詳しくは、後述するが、「データトラック」内は、例えばFATファイルシステム等の汎用ファイルシステムが構築される。記録される実際のデータ種別としては、コンピュータ用途のソフトウェアデータ、アプリケーションプログラム、テキストファイル、画像(動画/静止画)ファイル、音楽等のオーディオデータファイル等多様であり、用途に応じてあらゆるデータ記録に利用できる。
そして、これら各種データは、RLL(1、7)PP(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))変調、RS−LDC誤り訂正方式及びビタビ復調方式を用いることで高密度記録を実現する「第2の変調方式」によるデータとして記録される。そして、「データトラック」に記録される第2の変調方式によるデータを「高密度データ」とする。
図1に、オーディオ用ミニディスク(及びMD−DATA)と、本実施例で採用するディスクの規格を比較して示す。ミニディスク(及びMD−DATA)のフォーマットとしては、トラックピッチは、1.6μm、ビット長は、0.59μm/bitとなる。また、レーザ波長λ=780nmとされ、光学ヘッドの開口率NA=0.45とされる。
記録方式としては、グルーブ記録方式を採っている。つまり、グルーブ(ディスク盤面上の溝)をトラックとして記録再生に用いるようにしている。
アドレス方式としては、シングルスパイラルによるグルーブ(トラック)を形成したうえで、このグルーブの両側に対してアドレス情報としてのウォブルを形成したウォブルドグルーブを利用する方式を採るようにされている。
なお、本明細書では、ウォブリングにより記録される絶対アドレスをADIP(Address in Pregroove)とも呼ぶ。
記録データの変調方式としては、EFM(8−14変換)方式を採用している。また、誤り訂正方式としては、ACIRC(Advanced Cross Interleave Reed-Solomon Code)が採用され、データインターリーブには、畳み込み型を採用している。データの冗長度は、46.3%となる。
また、データの検出方式は、ビットバイビット方式である。ディスク駆動方式としては、CLV(Constant Linear Velocity)が採用されており、CLVの線速度としては、1.2m/sとされる。
そして、記録再生時の標準のデータレートとしては、133kB/sとされ、記録容量としては、164MB(MD−DATAでは、140MB)となる。また、クラスタというデータ単位がデータの最小書換単位とされるが、このクラスタは、32個のメインセクタと4個のリンクセクタによる36セクタで構成される。
一方、本実施例で採用するディスクは、トラックピッチは、1.3μm、ビット長は、0.16μm/bitとされ、ともにオーディオ用ミニディスクよりも短くなっていることが分かる。
但し、レーザ波長はλ=780nm、光学ヘッドの開口率はNA=0.45、記録方式はグルーブ記録方式、アドレス方式はシングルスパイラルによるグルーブ(トラック)を形成したうえで、このグルーブの両側に対してアドレス情報としてのウォブルを形成したウォブルドグルーブを利用する方式を採る。つまりこれらの点では、オーディオ用ミニディスクと同様であり、記録再生装置での光学系の構成やADIPアドレス読出方式、サーボ処理については、同様となることから互換性が維持される。
記録データの変調方式としては、高密度記録に適合するとされるRLL(1、7)PP方式が採用され、誤り訂正方式としては、より訂正能力の高いBIS(Burst Indicator Subcode)付きのRS−LDC(Reed Solomon−Long Distance Code)方式を用いている。データインターリーブには、ブロック完結型が採用される。データの冗長度は、20.50%とされる。また、データの検出方式は、パーシャルレスポンスPR(1,2,1)MLを用いたビタビ復号方式とされる。
また、ディスク駆動方式は、CLVで、その線速度としては、2.7m/sとされ、記録再生時の標準のデータレートとしては、614kB/sとされる。そして、記録容量としては、297MBを得ることができる。変調方式がEFMからRLL(1,7)PP方式とされることでウインドウマージンが0.5から0.666となり、この点で、1.33倍の高密度化が実現できる。
また、物理フォーマットとしてCIRC方式から、BIS付きのRS−LDC方式とセクタ構造の差異とビタビ復号を用いる方式とされることで、データ効率は、53.7%から79.5%となり、この点で1.48倍の高密度化が実現できる。
これらにより総合的には、1.97倍(約2倍)のデータ容量が実現される。つまり記録容量は、297MBという、オーディオ用ミニディスクの約2倍にすることができる。データの最小書換単位とされるクラスタは、16セクタで構成される。
なお、上述したように本実施例で採用するディスクは、オーディオトラックとデータトラックを混在記録できるものである。そして本実施例で採用するディスクにオーディオトラックが記録される場合、MDオーディオデータの変調方式は、オーディオ用ミニディスクにおいて示したようにEFM変調及びACIRC方式となる。
本実施例で採用するディスク上の各種のエリア構造例を図2,図3,図4に模式的に示す。図2,図3,図4のそれぞれに示すように、ディスクの最内周側は、PTOC(プリマスタードTOC)領域とされ、ここは、物理的な構造としては、プリマスタードエリアとなる。すなわち、エンボスピットによる再生専用データが記録されるエリアであり、その再生専用データとして管理情報であるPTOCが記録される。
プリマスタードエリアより外周は、レコーダブルエリア(光磁気記録可能な領域)とされ、記録トラックの案内溝としてのグルーブが形成された記録再生可能領域となっている。
このレコーダブルエリアの最内周側は、UTOC領域とされる。なお、詳しい説明は、省略するが、UTOC領域では、プリマスタードエリアとの緩衝エリアや、レーザ光の出力パワー調整等のために用いられるパワーキャリブレーションエリアが設けられ、また、UTOC領域内の特定の3クラスタの区間にUTOCデータが3回繰り返し記録される。
UTOCの内容について詳しくは、後述するが、1つのクラスタ(後述するADIPクラスタ)内の32個の各メインセクタ(SC00〜SC1F)においてデータフォーマットが規定され、それぞれ所定の管理情報が記録される。すなわち、プログラムエリアに記録されている各トラックのアドレス、フリーエリアのアドレス等が記録され、また、各トラックに付随するトラックネーム、記録日時等の情報が記録できるようにUTOCセクタが規定されている。
レコーダブルエリアにおいてUTOC領域より外周側がデータエリアとなり、このデータエリアは、オーディオトラックやデータトラックの記録に用いられるエリアとなる。
本実施例で採用するディスクにおけるデータエリアの使用態様としては、オーディオトラックとデータトラックをランダムに混在記録可能とすることが考えられる。
この場合、例えば図2のように、データエリアにおいて、1又は、複数のオーディオトラックが記録されたオーディオ記録領域AAと、1又は、複数のデータトラックが記録された高密度データ記録領域DAが、それぞれ任意の位置に形成される。なお、後にUTOCの説明においても述べるが、1つのオーディオトラックや1つのデータトラックは、ディスク上で必ずしも物理的に連続して記録される必要はなく、複数のパーツ(パーツとは、物理的に連続して記録される区間)に分けられていてもよい。従って、例えば図2のように物理的に離れた2つの高密度データ記録領域DAが存在する場合でも、データトラックの数としては、1つの場合もあり、複数の場合もある。
また、本実施例で採用するディスクにおけるデータエリアのほかの使用態様としては、オーディオトラックが記録される領域とデータトラックが記録される領域を分割することも考えられる。例えば、予めPTOCの管理により領域を分割設定したり、ディスクを使用する前の初期化/フォーマット等により領域の分割を行う場合である。この場合、例えば図3のように、ディスク内周側に1又は、複数のデータトラックが記録される高密度データ記録領域DAが設定され、ディスク外周側に1又は、複数のオーディオトラックが記録されるオーディオ記録領域AAが設定される。このように高密度データ記録領域DAとオーディオ記録領域AAがディスク上で分割設定される場合、記録再生装置は、記録再生対象がMDオーディオデータであるか高密度データであるかにより、それぞれ対応する領域にアクセスして記録/再生を行うものとなる。
なお、領域設定は、図2の場合とは、逆に、ディスク外周側が高密度データ記録領域DA、ディスク内周側がオーディオ記録領域AAとされてもよいし、物理的に離間した複数の高密度データ記録領域DAや、同じく物理的に離間した複数のオーディオ記録領域AAが形成されてもよい。但し、図2のように高密度データ記録領域DAが内周側に設定されると、アクセスの点で有利となる。高密度データ記録領域DAに記録されるデータトラックは、例えばコンピュータ用途のデータが記録されるが、その場合、MDオーディオデータの場合に比べて短いデータ区間でアクセスが繰り返し行われることが多いことが想定される。ここで本実施例で採用するディスクは、CLV方式であり、内周側の方がディスク1回転に要する時間が短いという事情を鑑みると、内周側は、アクセスの際のディスク回転待ち時間が外周側に比べて短縮されることを意味し、つまりアクセス時間を短くできることになるためである。
また、本実施例で採用するディスクにおけるデータエリアのさらに他の使用態様としては、図4に示すように、データエリアの全域を、データトラックが記録される高密度データ記録領域DAとすることも考えられる。
図2に示したように、オーディオトラックとデータトラックを任意に混在記録可能とする場合は、結果的にデータトラックのみが記録され、図4の状態となることもあるが、予め、図4のようにデータトラックの記録のための専用ディスクとされてもよいものである。
2.ディスクの管理構造
図5により本実施例で採用するディスクの管理構造を説明する。上述したように、管理情報としては、まず通常のミニディスクシステムで採用されているPTOC、UTOCが記録される。PTOCは、書き換え不能な情報としてピットにより記録される。このPTOCには、ディスクの基本的な管理情報として、ディスクの総容量、UTOC領域におけるUTOC位置、パワーキャリブレーションエリアの位置、データエリアの開始位置、データエリアの終了位置(リードアウト位置)等が記録されている。
一方、レコーダブルエリアに記録されるUTOCは、トラック(オーディオトラック/データトラック)の記録、消去等に応じて書き換えられる管理情報であり、各トラック(トラックを構成するパーツ)について開始位置、終了位置及びモードを管理する。また、データエリアにおいて未だトラックが記録されていないフリーエリア、つまり書込可能領域としてのパーツも管理する。
図5では、一例として、データエリア内に、3つのオーディオトラックと1つのデータトラックが存在する状態を示しているが、この場合、UTOCでは、この合計4つのトラックをそれぞれ管理することになる。
3つのオーディオトラックは、例えば3つの楽曲データとされ、これは、ATRAC圧縮され、ACIRC及びEFM方式(第1の変調方式)で変調されたMDオーディオデータによるトラックとなる。なお、UTOC及びPTOCも、所定のディスクシステムに準拠する方式で記録されるものであり、つまりUTOC及びPTOCとしてのデータは、第1の変調方式のデータとされる。
一方、データトラックは、RS−LDC及びRLL(1、7)PP方式(第2の変調方式)で変調された高密度データによって形成されるトラックとされる。UTOC上では、このデータトラック全体を、MDオーディオデータによらない1つのトラックとして管理する。つまりUTOCからは、ディスク上における、データトラックの全体としての1又は、複数のパーツ位置を管理するものとなる。
また、データトラックは、高密度データクラスタを最小記録単位として構成される。データトラック内には、該データトラックに含まれる高密度データクラスタを管理するクラスタアトリビュートテーブル(以下「CAT」という。)が記録される。CATでは、データトラックを構成する高密度データクラスタのそれぞれについての属性(公開可能/不可、正常/不良等)を管理する。
このデータトラック内で公開不可とされる高密度データクラスタを用いて、著作権保護等のために用いられる、ディスクに固有のID番号(以下「ディスクID」という。)や、データ改竄チェックのためのハッシュ値(hash)が記録される。もちろんこれ以外にも、各種の非公開情報が記録されてもよい。この公開不可とされる領域には、特別に許可された機器のみが限定的にアクセスすることができるものとする。
データトラック内で公開可能とされる高密度データクラスタによる領域(エクスポータブルエリア)は、例えばUSBやSCSI等の汎用データインターフェイスを経由して、外部のコンピュータ等がアクセスし、記録領域として利用できる領域とされる。例えば、この図5の場合、エクスポータブルエリアには、FAT及びFAT管理のデータファイルによる、FATファイルシステムが構築されている状態を示している。
つまり、エクスポータブルエリアに記録されるデータは、UTOCによっては、管理されず、FAT等の汎用的な管理情報により管理される形態となり、ミニディスクシステムに準拠しない外部のコンピュータ等によって認識可能なデータとなる。
また、エクスポータブルエリアは、図6に示すように、通常のファイルであるコンテンツファイルと、データの送受信を許可するディスクの情報が含まれているコンパニオン・リスト・ファイルと、データの送受信要求が行われた際の各種情報が記録されるログファイルとがFATファイルシステムに準拠して記録されるエリアと、ディスクIDが記録されているエリアとからなる。ログファイルには、実際にデータの送受信をしたディスクのディスクID等が記録される。
なお、このような構造のデータトラックが、ディスク上に複数記録される場合もある。その場合、各データトラックが、それぞれ1つのトラックとしてUTOCから管理され、それぞれのデータトラック内のエクスポータブルエリア内のデータについては、FAT等により管理される。例えば、各データトラックがそれぞれ独自にFATファイルシステムを持つものとなる。或いは複数のデータトラックにわたって1つのFATファイルシステムが記録されるようにしてもよい。
ここで、コンパニオン・リスト・ファイルの詳細について図7を用いて以下に述べる。コンパニオン・リスト・ファイルは、データの送受信を行うことを許可する他のディスクを登録するための情報をリスト化したものであって、許可する他のディスクごとに一つのID Descriptorが生成される。また、ID Descriptorは、ディスクに予め記録されているディスクIDと、ユーザがディスクIDに任意に付した名前(以下「ディスク・ネーム」という。)と、ディスクが挿入される記録再生装置に付されているの製造番号等(以下「レコーダーID」という。)と、機器がネットワーク上の何処に接続されているかを示すネットワークID(例えば、IPアドレス)とからなっている。例えば、機器がパーソナルコンピュータに接続され、パーソナルコンピュータを介してネットワーク上に接続されている他の機器とデータの送受信を行う場合には、当該パーソナルコンピュータのIPアドレスを読み出し、読み出したIPアドレスをネットワークIDとして利用しても良い。
また、ディスクIDは、データトラック内であって、FAT管理されないデータとする例を上述したが、FAT管理されない情報とするなら、どのような論理形態で記録されてもよい。例えば、UTOCから直接的に管理されるトラックとして、非公開情報用のトラックを設けるようにしたり、或いはUTOC/PTOC内に記録してもよい。さらに、UTOC領域内で、UTOCに使用されていない部分(例えば、ディスク最内周)を用いて、非公開情報用の記録領域を設けてもよい。
3.UTOC
UTOCの管理方式について説明する。UTOCには、ディスク上に記録されるMDオーディオデータによるトラック及び高密度データによるデータトラックについてトラック単位で管理を行う。
なお、所定のディスクシステムでは、ウォブリンググルーブによるADIPが物理アドレスとして付与されており、オーディオトラック(ミニディスクシステムにおける音楽等のトラック)のデータについては、ADIPによって規定されるクラスタ(以下「ADIPクラスタ」という。)が最小書換単位となる。
このクラスタの構造については、後述するが、1つのADIPクラスタは、32個のメインセクタと4個のリンクセクタによる36セクタ(2352バイトのADIPセクタ)で構成される。ADIPとしての物理アドレスは、セクタ単位で付与されている。つまり物理アドレスは、上位値としてのADIPクラスタアドレスと下位値としてのADIPセクタアドレスからなる。
UTOCデータは、上述したUTOC領域における特定のADIPクラスタにおいて記録される。そしてUTOCデータとしては、当該ADIPクラスタ内のセクタ毎に、その内容が定義されている。UTOCセクタ0(当該ADIPクラスタ内の先頭のADIPセクタ)は、トラックやフリーエリアとしてのパーツを管理する。UTOCセクタ1,セクタ4は、トラックに対応して文字情報を管理する。
UTOCセクタ2は、トラックに対応して記録日時を管理する。ここでは、セクタ1、セクタ2、セクタ4については、説明を省略し、UTOCセクタ0について述べる。
UTOCセクタ0は、記録された楽曲等のオーディオトラックや新たにトラックが記録可能なフリーエリア、さらにデータトラックについての管理情報が記録されているデータ領域とされる。例えば、ディスクにトラックの記録を行おうとする際には、記録再生装置は、UTOCセクタ0からディスク上のフリーエリアを探し出し、ここにデータ(MDオーディオデータ又は高密度データ)を記録していくことになる。また、再生時には、再生すべきトラックが記録されているエリアをUTOCセクタ0から判別し、そのエリアにアクセスして再生動作を行う。
図8にUTOCセクタ0の構造を示す。TOCセクタ0のデータ領域(2352バイト(4バイト×588))は、先頭位置にオール0又は、オール1の1バイトデータが並んで形成される同期パターンが記録される。
続いてADIPアドレスに対応した値として、クラスタアドレス(Cluster H)(Cluster L)及びセクタアドレス(Sector)となるアドレスが3バイトにわたって記録され、さらにモード情報(MODE)が1バイト付加され、これらをまとめてヘッダとされる。ここでの3バイトのアドレスは、そのセクタ自体のアドレスである。
続いて所定バイト位置に、メーカーコード、モデルコード、最初のトラックのトラックナンバ(First TNO)、最後のトラックのトラックナンバ(Last TNO)、セクタ使用状況(Used sectors)、ディスクシリアルナンバ、ディスクID等のデータが記録される。
さらに、使用者が録音を行って記録されているトラック(楽曲等)の領域やフリーエリア等を後述するテーブル部に対応させることによって識別するため、ポインタ部として各種のポインタ(P-DFA,P-EMPTY,P-FRA,P-TNO1〜P-TNO255)が記録される領域が用意されている。
そして、ポインタ(P-DFA〜P-TNO255)に対応させることになるテーブル部として(01h)〜(FFh)までの255個のパーツテーブルが設けられ、それぞれのパーツテーブルには、あるパーツについて起点となるスタートアドレス、終端となるエンドアドレス、そのパーツのモード情報(トラックモード)が記録されている。スタートアドレス、エンドアドレスは、ADIPアドレスとしてのクラスタ/セクタアドレスに相当する値とされる。さらに各パーツテーブルで示されるパーツが他のパーツへ続いて連結される場合があるため、その連結されるパーツのスタートアドレス及びエンドアドレスが記録されているパーツテーブルを示すリンク情報が記録できるようにされている。なお、パーツとは、1つのトラック内で、データが物理的に連続して記録されているトラック部分のことをいう。そして、スタートアドレス、エンドアドレスとして示されるアドレスは、1つの楽曲(トラック)を構成する1又は、複数の各パーツを示すアドレスとなる。
この種の記録再生装置では、1つの楽曲等のトラックのデータを物理的に不連続に、すなわち、複数のパーツにわたって記録されていてもパーツ間でアクセスしながら再生していくことにより再生動作に支障はないため、使用者が記録する楽曲等については、記録可能エリアの効率使用等の目的から、複数パーツに分けて記録する場合もある。
そのため、リンク情報が設けられ、例えば、各パーツテーブルに与えられたナンバ(01h)〜(FFh)によって、連結すべきパーツテーブルを指定することによってパーツテーブルが連結できるようになされている。つまりUTOCセクタ0におけるテーブル部においては、1つのパーツテーブルは、1つのパーツを表現しており、例えば3つのパーツが連結されて構成される楽曲については、リンク情報によって連結される3つのパーツテーブルによって、そのパーツ位置の管理が行われる。
なお、実際には、リンク情報は、所定の演算処理によりUTOCセクタ0内のバイトポジションとされる数値で示される。すなわち、304+(リンク情報)×8(バイト目)としてパーツテーブルを指定する。
UTOCセクタ0のテーブル部における(01h)〜(FFh)までの各パーツテーブルは、ポインタ部におけるポインタ(P-DFA,P-EMPTY,P-FRA,P-TNO1〜P-TNO255)によって、以下のようにそのパーツの内容が示される。
ポインタP-DFAは、ディスク上の欠陥領域について示しており、傷等による欠陥領域となるトラック部分(=パーツ)が示された1つのパーツテーブル又は、複数のパーツテーブル内の先頭のパーツテーブルを指定している。つまり、欠陥パーツが存在する場合は、ポインタP-DFAにおいて(01h)〜(FFh)のいづれかが記録されており、それに相当するパーツテーブルには、欠陥パーツがスタート及びエンドアドレスによって示されている。また、他にも欠陥パーツが存在する場合は、そのパーツテーブルにおけるリンク情報として他のパーツテーブルが指定され、そのパーツテーブルにも欠陥パーツが示されている。そして、さらに他の欠陥パーツがない場合は、リンク情報は、例えば『00h』とされ、以降リンクなしとされる。
ポインタP-EMPTYは、テーブル部における1又は、複数の未使用のパーツテーブルの先頭のパーツテーブルを示すものであり、未使用のパーツテーブルが存在する場合は、ポインタP-EMPTYとして、(01h)〜(FFh)のうちのいづれかが記録される。
未使用のパーツテーブルが複数存在する場合は、ポインタP-EMPTYによって指定されたパーツテーブルからリンク情報によって順次パーツテーブルが指定されていき、全ての未使用のパーツテーブルがテーブル部上で連結される。
ポインタP-FRAは、ディスク上のデータの書込可能なフリーエリア(消去領域を含む)について示しており、フリーエリアとなるトラック部分(=パーツ)が示された1又は、複数のパーツテーブル内の先頭のパーツテーブルを指定している。つまり、フリーエリアが存在する場合は、ポインタP-FRAにおいて(01h)〜(FFh)のいづれかが記録されており、それに相当するパーツテーブルには、フリーエリアであるパーツがスタート及びエンドアドレスによって示されている。また、このようなパーツが複数個有り、つまりパーツテーブルが複数個有る場合は、リンク情報により、リンク情報が『00h』となるパーツテーブルまで順次指定されている。
図9にパーツテーブルにより、フリーエリアとなるパーツの管理状態を模式的に示す。これは、パーツ(03h)(18h)(1Fh)(2Bh)(E3h)がフリーエリアとされている時に、この状態がポインタP-FRAに引き続きパーツテーブル(03h)(18h)(1Fh)(2Bh)(E3h)のリンクによって表現されている状態を示している。なお、上記した欠陥領域や未使用パーツテーブルの管理形態もこれと同様となる。
ポインタP-TNO1〜P-TNO255は、ディスクに記録されたトラックについて示しており、例えばポインタP-TNO1では、第1トラックのデータが記録された1又は、複数のパーツのうちの時間的に先頭となるパーツが示されたパーツテーブルを指定している。例えば、第1トラック(オーディオトラック)とされた楽曲がディスク上でトラックが分断されずに、つまり1つのパーツで記録されている場合は、その第1トラックの記録領域は、ポインタP-TNO1で示されるパーツテーブルにおけるスタート及びエンドアドレスとして記録されている。
また、例えば第2トラック(オーディオトラック)とされた楽曲がディスク上で複数のパーツに離散的に記録されている場合は、その第2トラックの記録位置を示すため各パーツが時間的な順序に従って指定される。つまり、ポインタP-TNO2に指定されたパーツテーブルから、さらにリンク情報によって他のパーツテーブルが順次時間的な順序に従って指定されて、リンク情報が『00h』となるパーツテーブルまで連結される(上記、図9と同様の形態)。このように例えば2曲目を構成するデータが記録された全パーツが順次指定されて記録されていることにより、このUTOCセクタ0のデータを用いて、2曲目の再生時や、その2曲目の領域への上書き記録を行う際に、記録再生ヘッドをアクセスさせ離散的なパーツから連続的な音楽情報を取り出したり、記録エリアを効率使用した記録が可能になる。
データトラックが記録された場合には、あるポインタP-TNOxに指定されるパーツテーブルに、そのデータトラックのスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記録される。もちろんデータトラックが複数のパーツで構成される場合は、オーディオトラックの場合と同様に、複数のパーツテーブルがリンク情報でリンクされて管理される。
ところで、各パーツテーブルには、1バイトのトラックモードが記録されるが、これは、トラックの属性情報となる。1バイトを構成する8ビットを、d1(MSB)〜d8(LSB)とすると、このトラックモードは、次のように定義されている。
d1・・・0:ライトプロテクテッド(上書き消去、編集禁止)、1:ライトパーミッテッド
d2・・・0:著作権有り、1:著作権無し
d3・・・0:オリジナル、1:第1世代以上
d4・・・0:オーディオデータ、1:他
d5,d6・・・01:ノーマルオーディオ、その他:未定義
d7・・・0:モノラル、1:ステレオ
d8・・・0:エンファシスオフ、1:エンファシスオン
ここで、オーディオトラックについてのパーツテーブルのトラックモードでは、上記d4=0として、MDオーディオデータによるトラックであることが示される。一方、データトラックについてのパーツテーブルのトラックモードでは、上記d4=1として、MDオーディオデータによるトラックではないことが示される。本実施例の場合、d4=1が高密度データによるデータトラックであることを示す情報となる。
図10に、UTOCによるトラックの管理例を各種示す。図10(a)(b)(c)は、図2に示したようにデータエリア上で任意の位置にオーディオトラック及びデータトラックを記録できる場合である。
図10(a)では、UTOCセクタ0で管理されるトラックTK1、TK3がオーディオトラックとされ、トラックTK2がデータトラックとされている場合である。この場合、ポインタP-TNO1に示されるパーツテーブルにオーディオトラックTK1のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。また、ポインタP-TNO2に示されるパーツテーブルにデータトラックTK2のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。このトラックモードのd4=1とされる。
ポインタP-TNO3に示されるパーツテーブルにオーディオトラックTK3のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。また、ポインタP-FRAに示されるパーツテーブルにフリーエリアのスタートアドレス、エンドアドレスが記述される。
図10(b)は、UTOCセクタ0で管理されるトラックTK1がデータトラックとされ、かつ、このデータトラックは、2つのパーツTK1-1、TK1-2で形成されている場合である。
この場合、ポインタP-TNO1に示されるパーツテーブルにデータトラックTK1の第1パーツTK1-1のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述され、また、そのパーツテーブルからリンクされるパーツテーブルにデータトラックTK1の第2パーツTK1-2のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。これらのパーツテーブルでは、トラックモードのd4=1とされる。
図10(c)は、UTOCセクタ0で管理されるトラックTK1、TK3の2つのトラックがデータトラックとされている場合である。この場合、ポインタP-TNO1に示されるパーツテーブルにデータトラックTK1のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。また、ポインタP-TNO3に示されるパーツテーブルにデータトラックTK3のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。これらのパーツテーブルでは、トラックモードのd4=1とされる。
図10(d)は、例えば図3に示したようにデータエリア内でオーディオ記録領域AAと高密度データ記録領域DAが分割設定される場合等の状態であり、内周側にトラックTK1としてデータトラックが記録され、外周側にオーディオトラックTK2,TK3が記録されている場合である。この場合、ポインタP-TNO1に示されるパーツテーブルにデータトラックTK1のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。
図10(e)(f)は、例えば図4に示したようにデータエリアの全域が高密度データ記録領域DAとされる場合の例である。図10(e)は、データエリア全域にわたる1つのデータトラックTK1が記録された例である。この場合、ポインタP-TNO1に示されるパーツテーブルにデータトラックTK1のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。また、図10(f)は、データエリアに2つのデータトラックTK1、TK2が記録された例である。この場合、ポインタP-TNO1に示されるパーツテーブルにデータトラックTK1のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述され、ポインタP-TNO2に示されるパーツテーブルにデータトラックTK2のスタートアドレス、エンドアドレス、トラックモードが記述される。
これらの例に示すように、UTOCによっては、オーディオトラックは、トラック単位で管理され、また、データトラックも、そのトラック単位で管理される。データトラック内での実際の管理は、上述したように、例えばFATファイルシステムが構築される等して行われる。
4.クラスタ構造
続いて本実施例で採用するディスクに採用されるクラスタ構造を説明する。
オーディオ用のミニディスクシステムでは、ADIPとしての物理アドレスに対応したクラスタ/セクタ構造が採られ、本実施例で採用するディスクでも、オーディオトラックの記録再生に関しては、そのクラスタ/セクタ構造がそのまま用いられる。
まず、このADIPに応じたクラスタ/セクタ構造を図11(a)(b)で説明する。なお、本明細書では、説明上の区別のため、ADIPに応じたクラスタ/セクタを、「ADIPクラスタ」及び「ADIPセクタ」という。また、後述するが、データトラックの記録再生に関しては、異なるクラスタ/セクタ構造が採られるが、これを「高密度データクラスタ」及び「高密度データセクタ」と呼ぶ。
MDオーディオデータについては、記録データとしてADIPクラスタという単位毎のデータストリームが形成されるが、ミニディスクシステムでの記録トラック上は、図11(b)のようにクラスタCL(CL#(n)、CL#(n+1)・・・)が連続して形成されており、1ADIPクラスタがMDオーディオデータの記録時の最小単位とされる。
そして、1ADIPクラスタCLは、図11(a)にADIPセクタSCFC〜SCFFとして示す4個のリンクセクタと、ADIPセクタSC00〜SC1Fとして示す32個ののメインセクタから形成されている。すなわち、1ADIPクラスタは、36ADIPセクタで構成される。1ADIPセクタは、2352バイトで形成されるデータ単位である。
リンクセクタSCFC〜SCFFは、記録動作の切れ目としての緩衝領域や各種動作調整その他、或いはサブデータとして設定された情報の記録に用いることができる。
そして、上述したPTOCデータ、UTOCデータ、MDオーディオデータ等の記録は、32セクタのメインセクタSC00〜SC1Fに行われる。リンクセクタとメインセクタは、物理的には同一のものである。
ここで、このような物理的なクラスタ/セクタ構造を有するディスクに対してデータトラックを記録する場合、つまり上述した第2の変調方式によりデータ記録の線密度がMDオーディオデータより高められた高密度データを記録する場合を考える。
線密度の高い高密度データを記録すると、ディスクに元々記録されているADIPから得られるアドレスと、実際に記録する信号のアドレスが一致しなくなる。ランダムアクセスは、ADIPアドレスを基準に行うことになるが、データ読出の場合は、ADIPアドレスに基づいておおよその位置にアクセスして記録されたデータを読み出すようにすればよく、さほど大きな問題とはならない。ところが、データ書込の場合は、正確な位置にアクセスして書込を行うようにしなければ、既に記録されているデータを上書きにより消去してしまうおそれがある。また、再生時も正確な位置にアクセスできる方が、迅速なデータ読み出しのために好適であることはいうまでもない。
従って、高密度データの記録再生についての高密度データクラスタ/高密度データセクタも、ADIPアドレスから正確に把握できるようにすることが適切である。そこで、ディスクに成型記録されたADIPアドレスを所定規則で変換して得られるデータ単位として、高密度データクラスタが把握できるようにする。
さらにこの場合において、ADIPアドレス単位であるADIPセクタの整数倍が、高密度データクラスタとなるようにする。これによって、任意の位置への高密度データの記録時に、ディスクからのADIPアドレスが得られてから、いつも同じタイミングで書込を開始することができるようになる。
また、ADIPアドレス単位であるADIPクラスタ内に、整数個の高密度データクラスタが含まれるようにする。すると、ADIPクラスタアドレスから高密度データクラスタアドレスへのアドレス変換規則が単純化され、換算のための回路又は、ソフトウェア構成が簡略化できる。
このような考え方に基づいて、1ADIPクラスタに2つの高密度データクラスタが書き込まれるようにする例を図11(c)(d)に示す。図11(c)のように、各高密度データクラスタdCL(dCL#(2n)、dCL#(2n+1)・・・)は、1/2ADIPクラスタの区間に形成される。すなわち、2高密度データクラスタ区間=1ADIPクラスタ区間となり、18ADIPセクタ区間=1高密度データクラスタ区間となる。
したがって、ある区画(パーツ)において、その先頭からのADIPクラスタ数(=ADIPクラスタオフセット)が#nであるADIPクラスタCL#(n)に記録される2つの高密度データクラスタのオフセットは、それぞれ#2n、#2n+1となる。つまり図11(b)(c)に示すように、ADIPクラスタCL#(n)には、高密度データクラスタdCL#(2n)、dCL#(2n+1)が記録される。高密度データクラスタdCL#(2n)は、ADIPクラスタCL#(n)におけるADIPセクタSCFC〜SC0Dの区間、高密度データクラスタdCL#(2n+1)は、ADIPクラスタCL#(n)におけるADIPセクタSC0E〜SC1Fの区間となる。
このような高密度データクラスタが、高密度データについての最小書換単位となる。そして高密度データクラスタは、16個の高密度データセクタが含まれる構造とされる。すなわち、図11(d)に示すように、1つの高密度データクラスタの区間は、その前端にプリアンブル、後端にポストアンブルが形成され、プリアンブルとポストアンブルに挟まれた区間に16個の高密度データセクタdSC#0〜dSC#15が配される。
1つの高密度データセクタは、例えば4096バイトとされる。この高密度データセクタは、ADIPアドレスと直接的な相関関係にあるものではない。なお、図11では、1つのADIPクラスタに2つの高密度データクラスタを配する例を示したが、1つのADIPクラスタに3以上の高密度データクラスタを配するようにすることも考えられる。もちろん1つの高密度データクラスタが、18ADIPセクタの区間に限定されるものではない。
これらは、第1の変調方式と第2の変調方式のデータ記録密度の差や高密度データクラスタを構成するセクタ数、1セクタのサイズの設定等、各種の設計条件に応じて決定されればよい。
5.データトラックにおけるFATファイルシステム実現例
高密度データとして各種データが記録されるデータトラックの構造例を図12で説明する。図5において述べたように、データトラックには、エクスポータブルエリアとして外部コンピュータ機器等に解放される領域が形成され、また、外部に対しては、非公開の領域が設定されて、ユニークIDやハッシュ値が記録される。また、データトラックを構成する高密度データクラスタは、クラスタアトリビュートテーブル(CAT)で管理される。図12では、エクスポータブルエリアにおいてFATファイルシステムが実現されている例を示している。
この例の場合は、図12(d)(e)に示すように、ディスク上で1つのデータトラックが、UTOCにおいて2つのパーツとして管理される状態で記録されているものとしている。データトラックの第1のパーツは、図示するADIPクラスタ#0〜#2の区間、第2のパーツは、ADIPクラスタ#3の区間とされているとする。この場合、2つのパーツは、図12(e)に模式的に示すように物理的に離れた位置となっている。
このデータトラックは、4つのADIPクラスタにおいて形成されることになるが、図11で説明したクラスタ構造の場合は、図12(c)に示す8個の高密度データクラスタ#0〜#7によってデータトラックが構成されることになる。
この高密度データクラスタ#0〜#7は、CATにより管理され、CATによってある高密度データクラスタは、図5に示したエクスポータブルエリア、ある高密度データクラスタは、外部から見えないエリア(hidden(secure)data area(以下「ヒドゥンデータエリア」という。))とされる。この例では、高密度データクラスタ#0がヒドゥンデータエリアとされて、ここにユニークIDとしてのディスクIDやハッシュ値が記録される。また、この例では、高密度データクラスタ#1〜#7がエクスポータブルエリアとされる。
このエクスポータブルエリアは、USBやSCSIといったインターフェイスを介して外部のコンピュータ装置等から自由にアクセスできるエリアとなる。エクスポータブルエリアでの書込/読出の単位は、一般的には、512バイト、1024バイト、2048バイト等となりデータトラックの書換単位である高密度データクラスタよりも小さい。
エクスポータブルエリアの使用方法は、接続されたコンピュータのOS等に依存するが、この例では、エクスポータブルエリアにFATファイルシステムが記録されるものとしている。
すなわち、図12(b)のように、例えば8192バイトのFATクラスタ#0〜#55が形成される。また、1つのFATクラスタは、各2048バイトの4つのFATセクタ#0〜#3で形成される。ここでいうFATセクタ、FATクラスタは、FATファイルシステムでの扱い単位であり、上述したADIPクラスタ又は、高密度データクラスタ、ADIPセクタ又は、高密度データセクタに依存するものではない。例えば、このFATクラスタ#0〜#55において、FAT及びFAT管理によるデータファイルにより構成されるFATファイルシステムが格納されることになる。
なお、FATファイルシステムでのデータの扱いは、コンピュータ上では、FATセクタ単位で行われる。しかしながら、ディスクに対する書換単位は、高密度データクラスタとなるため、例えば、ある1つのFATセクタの書換の場合も、ディスク上での書換は、そのFATセクタが含まれる高密度データクラスタの単位で行われることになる。
例えば、このようにディスク上のデータトラックとして記録されたFATファイルシステムに対するFATセクタのデータの書込/読出については後述する。
ヒドゥンデータエリアとされた高密度データクラスタ#0に記録されるユニークIDやハッシュ値は、FATファイルシステムのデータについての認証、改竄チェック等に用いられる。また、ヒドゥンデータエリアに対する書込/読出は、特定の機器のみが可能とされるが、その場合別途定められる相互認証のうえで暗号化して行われる。
なお、図12では、先頭の高密度データクラスタ#0をヒドゥンデータエリアとしたが、もちろんデータトラックを構成するどの高密度データクラスタをヒドゥンデータエリアとしてもよい。
6.記録再生装置の構成
つぎに、本発明に係る記録再生装置の構成と動作について以下に述べる。
図13により、本実施例で採用するディスクに対応する記録再生装置の構成を説明する。図13には、本発明に係る記録再生装置1が、例えばパーソナルコンピュータ(PC)と接続可能なものとして示している。
記録再生装置1は、装着されているディスク2に対する記録/再生を行うメディアドライブ部3と、データの入出力を行うデータ入出力部4と、データを一時的に格納するメモリ5と、記録再生装置1の全体を制御するシステムコントローラ6とを有する。
メディアドライブ部3は、装着されたディスク2を図示しないスピンドルモータによってCLV方式で回転駆動させる。また、メディアドライブ部3は、ディスク2に対して記録/再生時にレーザ光を照射する光学ヘッド10と、記録するデータによって変調された磁界をディスク2に印加する磁気ヘッド11と、光学ヘッド10で読み出したデータに再生信号処理を行うRFアンプ部12と、記録するデータに応じて変調した信号を光学ヘッド10に供給する記録ドライバ部13と、ディスク2を回転等するための駆動信号を生成するモータドライバ部14とを備える。
光学ヘッド10は、記録時には、記録トラックをキュリー温度まで加熱するための高レベルのレーザ出力を行い、また、再生時には、磁気カー効果により反射光からデータを検出するための比較的低レベルのレーザ出力を行う。このため、光学ヘッド10には、ここでは、詳しい図示は省略するが、レーザ出力手段としてのレーザダイオード、偏光ビームスプリッタや対物レンズ等からなる光学系及び反射光を検出するためのディテクタが搭載されている。また、光学ヘッド10に備えられる対物レンズとしては、例えば2軸機構によってディスク半径方向及びディスクに接離する方向に変位可能に保持されている。
磁気ヘッド11は、ディスク2を挟んで光学ヘッド10と対向する位置に配置されており、記録データによって変調された磁界をディスク2に印加する動作を行う。また、図示しないが光学ヘッド10全体及び磁気ヘッド11をディスク半径方向に移動させためスレッドモータ及びスレッド機構が備えられている。
RFアンプ部12は、光学ヘッド10から入力された信号に対して電流−電圧変換、増幅、マトリクス演算等を行い、再生情報としての再生RF信号、トラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FE、グルーブ情報(ディスクにトラックのウォブリングにより記録されているADIP情報)等を抽出する。
モータドライバ部14は、RFアンプ部12からシステムコントローラ6を介して供給されるトラッキングエラー信号TE等に基づいて所要のサーボドライブ信号を生成する。ここでのサーボドライブ信号としては、二軸機構を駆動する二軸ドライブ信号(フォーカス方向、トラッキング方向の2種)、スレッド機構を駆動するスレッドモータ駆動信号、スピンドルモータを駆動するスピンドルモータ駆動信号となる。このようなサーボドライブ信号により、ディスク2に対するフォーカス制御、トラッキング制御及びスピンドルモータに対するCLV制御が行われることになる。
データ入出力部4は、マイク等により音声を入力する音声信号入力端子20と、音声信入力端子20から入力された音声信号を増幅する増幅部21と、増幅後の音声信号をデジタル変換するデジタル変換部22と、光信号を入力する光信号入力端子23と、システムコントローラを介して出力された音声信号を増幅する増幅部24と、増幅部24で増幅された音声信号をヘッドフォンへ出力する音声信号出力端子25と、PC等にデータを送信するUSBインターフェース部26とを有する。
システムコントローラ6は、記録再生装置1内の全体の制御を行うとともに、USBインターフェース部26に接続されているパーソナルコンピュータとの間の通信制御を行う。すなわち、システムコントローラ6は、USBインターフェイス部26を介して接続されたパーソナルコンピュータとの間で通信可能とされ、書込要求、読出要求等のコマンドの受信やステイタス情報その他の必要情報の送信等を行う。
システムコントローラ6は、例えばディスク2がメディアドライブ部3に装着されることに応じて、ディスク2からの管理情報等の読み出しをメディアドライブ部3に指示し、読み出した管理情報等をメモリ5に格納させる。
システムコントローラ6は、PTOC、UTOCの管理情報を読み込ませることで、ディスク2のトラック記録状態を把握でき、また、CATを読み込ませることによりデータトラック内の高密度データクラスタ構造を把握でき、パーソナルコンピュータからのデータトラックに対するアクセス要求に対応できる状態となる。また、ディスクIDやハッシュ値により、ディスク認証その他の処理を行ったり、或いはこれらの値をパーソナルコンピュータに送信して処理させることができる。
また、パーソナルコンピュータからのあるFATセクタの読み出し要求があった場合は、システムコントローラ6は、メディアドライブ部3に、当該FATセクタを含む高密度データクラスタの読み出しを実行させる。そしてシステムコントローラ6は、読み出した高密度データクラスタのデータから、要求されたFATセクタのデータを抽出し、USBインターフェイス部を介してパーソナルコンピュータに送信する。
パーソナルコンピュータからのあるFATセクタの書込要求があった場合は、システムコントローラ6は、メディアドライブ部3に、まず当該FATセクタを含む高密度データクラスタの読み出しを実行させる。そして、システムコントローラ6は、パーソナルコンピュータからのFATセクタのデータ(記録データ)をUSBインターフェイスを介してメモリ5上で該当するFATセクタのデータの書換えを実行させる。
そして、システムコントローラ69は、必要なFATセクタが書き換えられた状態で先ほど読み出された高密度データクラスタのデータを、記録データとしてメディアドライブ部3に転送させる。メディアドライブ部3では、当該高密度データクラスタの記録データを第2の変調方式で変調してディスク2に書き込む。
なお、以上は、データトラックの記録再生のための制御であり、MDオーディオデータ(オーディオトラック)の記録再生時のデータ転送は、図示しないオーディオ処理部を介して行われる。
ここで、一方のディスク(以下「ディスク2A」という。)から他方のディスク(以下「ディスク2B」という。)へデータの送信を可能とするため処理について、図14に示すフローチャートを用いて以下に説明する。なお、以下では、一方の記録再生装置(以下「記録再生装置1A」という。)により、ディスク2Aからディスク2Bにデータの送信を可能とするようにディスク同士を関連付ける手順を示す。また、記録再生装置1Aは、各種のメッセージを表示する表示部を有していることとする。
ステップS1において、記録再生装置1Aは、ディスク2Aが挿入されたことを確認する。ディスク2Aが挿入されている場合にはステップS2に進み、ディスク2Aが挿入されていない場合には、ディスク2Aの挿入を促す旨のメッセージを表示部に表示する。
ステップS2において、記録再生装置1Aは、ディスク2Aから固有のディスクIDを読み出す。
ステップS3において、記録再生装置1Aは、機器の番号(例えば、製造番号)を読み出し、読み出した機器の番号と、ステップS2で読み出したディスク2AのディスクIDからID DescriptorAを生成する。なお、記録再生装置1Aは、ディスクIDにディスク・ネームが付されている場合には、ID DescriptorAにディスク・ネームも含まれることとし、また、機器がパーソナルコンピュータを介してネットワークに接続されている場合には、当該パーソナルコンピュータのIPアドレスを読み出し、これをID DescriptorAのネットワークIDとする。
ステップS4において、記録再生装置1Aは、ディスク2Aを取り出し、ディスク2Bの挿入を促す旨のメッセージを表示部に表示する。ユーザは、表示部のメッセージに従って、記録再生装置1Aからディスク2Aを取りだし、ディスク2Bを挿入する。
ステップS5において、記録再生装置1Aは、挿入されているディスク2Bから固有のディスクIDを読み出す。
ステップS6において、記録再生装置1Aは、ステップS4で読み出したディスク2Bの固有のディスクIDに基づきID DescriptorBを生成する。
ステップS7において、記録再生装置1Aは、ステップS3で生成したディスク2AのID DescriptorAをディスク2Bのコンパニオン・リスト・ファイルに記録する。
ステップS8において、記録再生装置1Aは、ディスク2Bを取り出し、ディスク2Aの挿入を促すメッセージを表示部に表示する。
ステップS9において、記録再生装置1Aは、挿入されているディスク2Aのコンパニオン・リスト・ファイルにステップS6で生成したID DescriptorBを記録する。
したがって、本願発明に係る記録再生装置は、装着されているディスク2Aから固有のディスクIDを読み出し、機器の固有の番号を読み出し、ディスク2AのディスクIDと機器の固有の番号とからID DescriptorAを生成し、ディスク2Aからディスク2Bに交換されたとき、ディスク2BにID DescriptorAを記録し、ディスク2Bから固有のディスクIDを読み出し、読み出した固有のディスクIDからID DescriptorBを生成し、ディスク2Bからディスク2Aに交換されたとき、ディスク2AにID DescriptorBを記録することにより、ディスク2Aとディスク2Bとを関連付けるので、ネットワークを介して、ディスク2Aに記録されているデータをディスク2Bにのみ送信することが可能となり、ユーザにパスワードの設定等の煩わしい作業を行わせることなくディスク2に記録されたデータを特定の者のみの間で安全に送受信を行わせることができる。
なお、記録再生装置1Aは、ディスク対応付けボタンを有し、ユーザが当該ボタンを押圧することにより、ステップS1〜ステップS9の動作が自動的に行われるような構成であっても良い。また、本願に係る発明は、コンピュータにステップS1〜ステップS8を実行させるためのプログラムであっても良い。
7.データ送受信システム
つぎに、記録再生装置1がネットワークを介して複数台接続されている場合に、当該装置間でデータを送受信する際のデータ送受信システム7について、図15に示すフローチャートに従って説明する。なお、ディスク2Aとディスク2Bとは、上述したように記録再生装置1Aによりネットワークを介してデータの送受信ができるように関連づけれているものとする。
ステップS10において、他方の記録再生装置(以下「記録再生装置1B」という。)は、挿入されているディスク2Bに記録されているコンパニオン・リスト・ファイルからID DescriptorBを読み出す。なお、記録再生装置1Bは、ディスク2Bに記録されているコンパニオン・リスト・ファイルに複数のID Descriptorが含まれている場合には、ユーザが所望するID Descriptorを選択するようにしても良い。
ステップS11において、記録再生装置1Bは、ディスク2Bから読み出したID DescriptorBからネットワークIDを抽出する。
ステップS12において、記録再生装置1Bは、抽出したネットワークIDに基づき、ネットワーク上に接続されている記録再生装置1Aを特定する。なお、記録再生装置1Bは、記録再生装置1Aを特定した後、記録再生装置1Aが所定の装置かどうかの確認(認証)を行っても良い。
ステップS13において、記録再生装置1Bは、ディスク2Bに予め記録されている固有のディスクIDを読み出し、ネットワークを介して記録再生装置1Aに送信する。
ステップS14において、記録再生装置1Aは、記録再生装置1BからディスクIDが送信されたとき、挿入されているディスク2Aに記録されているコンパニオン・リスト・ファイルを読み出し、当該コンパニオン・リスト・ファイルに記録されている全てのID DescriptorにステップS13で記録再生装置1Bから送信されてきたディスクIDがあるかどうか確認する。なお、記録再生装置1BからディスクIDが送信されたときに、記録再生装置1Aにディスク2Aが挿入されていなかった場合には、記録再生装置1Aの表示部にディスクの挿入を促す旨のメッセージを表示しても良い。ディスク2Aのコンパニオン・リスト・ファイルのID Descriptorのいずれかに、記録再生装置1Bから送信されてきたディスクIDが含まれていた場合には、ステップS15に進む。
また、ディスク2Aのコンパニオン・リスト・ファイルのID Descriptorのいずれにも、記録再生装置1Bから送信されてきたディスクIDが含まれていなかった場合には、ネットワークを介して、記録再生装置1Bにその旨を通知する。なお、ディスク2Aのコンパニオン・リスト・ファイルに記録されているID Descriptorのいずれにも、記録再生装置1Bから送信されてきたディスクIDが含まれていなかった場合には、記録再生装置1Aの表示部に他のディスクに交換する旨のメッセージを表示しても良い。
ステップS15において、記録再生装置1Aは、挿入されているディスク2Aが確かにディスク2Bとデータの送受信が可能である旨のメッセージをネットワークを介して記録再生装置1Bに送信する。
ステップS16において、記録再生装置1Bは、データの送信を要求する旨のデータ送信要求信号を生成し、ネットワークを介して記録再生装置1Aに送信する。
ステップS17において、記録再生装置1Aは、記録再生装置1Bから供給されたデータ送信要求信号に応じて、ディスク2Aからデータを読み出し、読み出したデータをネットワークを介して記録再生装置1Bに送信する。
ステップS18において、記録再生装置1Bは、送信されてきたデータをディスク2Bに記録する。
なお、上述例では、ネットワーク上に記録再生装置1A及び記録再生装置1Bとが接続されている例を示したが、複数台の記録再生装置が接続されていても、ID Descriptorに含まれているネットワークIDとして用いているIPアドレスは固有のアドレスなので、ネットワーク上に存在していれば必ず所望の記録再生装置を特定することができる。
したがって本願発明に係るデータ送受信システムは、ネットワーク上に複数の記録再生装置が接続されており、記録再生装置1Bにより挿入されているディスク2Bからコンパニオン・リスト・ファイルを読み出し、読み出したコンパニオン・リスト・ファイルに記録されているID Descriptorの中から所定のID DescriptorBに含まれいているネットワークIDからネットワークに接続されている記録再生装置1Aを特定し、ディスク2Bの固有のディスクIDを読み出し、読み出したディスクIDを記録再生装置1Aに送信し、記録再生装置1Aにより挿入されているディスク2Aからコンパニオン・リスト・ファイルを読み出し、読み出したコンパニオン・リスト・ファイルに記録されているID Descriptorに該当するディスクIDが有るかどうかを判断し、判断結果からディスク2Aとディスク2Bとが関連付けられていることが判明したら、ディスク2Aに記録されているデータをネットワークを介して記録再生装置1Bに送信するので、ユーザにパスワードの設定等の煩わしい作業を行わせることなくディスクに記録されたデータを特定の者のみの間で安全に送受信を行うことができる。
また、本願に係る発明は、コンピュータにステップS10〜ステップS17を実行させるためのプログラムであっても良い。