JP2005105851A - 真空ポンプ、および真空装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで制御性に優れた圧力調整を実現する。
【解決手段】真空ポンプPはターボ分子ポンプ機構部Ptに吸気口4から吸入されたガス分子のうちで移送方向に運動量が付与されるガス分子の確率Mを変動させる圧縮比調節機構部Pγを備え、真空ポンプPに接続された制御系統51において、真空ポンプPの吸気口4に装着された真空チャンバC内の圧力を圧力計103で測定し、測定された測定圧力値と予め設定された目標圧力値との差分を補正値として補正値検出器52で検出し、補正値に対応した回転角度指令信号をPID補償器53から圧縮比調節機構部Pγを駆動する駆動モータ39に出力して制御することで真空チャンバC内の圧力を調整するものとする。
【選択図】図11
【解決手段】真空ポンプPはターボ分子ポンプ機構部Ptに吸気口4から吸入されたガス分子のうちで移送方向に運動量が付与されるガス分子の確率Mを変動させる圧縮比調節機構部Pγを備え、真空ポンプPに接続された制御系統51において、真空ポンプPの吸気口4に装着された真空チャンバC内の圧力を圧力計103で測定し、測定された測定圧力値と予め設定された目標圧力値との差分を補正値として補正値検出器52で検出し、補正値に対応した回転角度指令信号をPID補償器53から圧縮比調節機構部Pγを駆動する駆動モータ39に出力して制御することで真空チャンバC内の圧力を調整するものとする。
【選択図】図11
Description
本発明は、半導体製造装置や液晶ディスプレイパネル製造装置に使用される真空ポンプとこの真空ポンプを備えた真空装置に関する。
半導体製造工程におけるドライエッチングやCVD等のプロセスでは、真空チャンバ内の圧力を所定の値に保つために、例えばターボ分子ポンプのような真空ポンプが使用される。
図13に示すように、従来の真空装置Dにおいて、真空チャンバCの排気口に設置された真空ポンプPは、真空チャンバCの内部に導入されたプロセスガスを吸入,圧送,排出して、真空チャンバC内の圧力が所定の真空度になるように機能する。また、この種の真空装置Dでは、真空チャンバC内の圧力を制御する手段として、真空チャンバCと真空ポンプPとの間のコンダクタンスの値を変更する機構が設けられている場合がある。
例えば、特許文献1に開示された真空装置では、真空ポンプの吸気口部に複数の吸気制御板が設けられており、これらの制御板を開閉して真空チャンバから真空ポンプに吸入されるプロセスガスの排気速度を変更する方法が採用されている。
また、特許文献2に開示された真空装置では、真空ポンプ内部の所定のステージにコンダクタンス可変バルブが設けられており、このバルブを開閉してプロセスガスの通路面積を増減する方法が採用されている。
この他に真空チャンバ内の圧力を制御する手段としては、例えば真空ポンプの回転体の回転数を変更する方法や、真空ポンプの所定のステージにおいて真空チャンバ内に導入されるプロセスガスとは異なる種類のガスをリークする方法等が知られている。
まず、真空ポンプの吸気口部や真空チャンバと真空ポンプとの間にバルブを設ける方法を採用した場合には、バルブの開閉動作が繰り返し行われることから、接触するバルブ部材どうしの摩耗によって生じる塵埃が問題となる。すなわち、真空チャンバ内にあるプロセスガスを真空ポンプで吸引しても、真空ポンプの前段にこのような発塵の要因となるバルブがあると、バルブの開閉動作で生じた塵埃の真空チャンバ側への逆流が起こる。すると、逆流して真空チャンバ内で飛散している塵埃が作業中のシリコンウエハの上に落下してしまい、半導体ICの製造不良を引き起こすという問題点がある。
次に、真空ポンプ内部の所定のステージにコンダクタンス可変バルブを設ける方法を採用した場合には、真空ポンプ内部のタービン中段にバルブを設けることで塵埃はその上段のタービンで遮られて上流の真空チャンバへの逆流を阻止できるので、前記のような問題は解決される。ところが、この方法によると、バルブによってポンプ内でのプロセスガスの流路の一部を閉塞することになるので、ガスの流れに淀みが起こり、ガス摩擦による発熱や排気効率が低下してしまうという問題点がある。
さらに、回転体の回転数を変更する方法を採用した場合には、回転数を変更する制御命令の応答レスポンスを高める必要があり、制御性に優れた高価な駆動モータを使用しなければならない。加えて、通常運転中に回転体の加減速を急激に行うと発熱や消費電力の増大に繋がるとともに、回転体の通常の高速回転による繰返荷重と、回転体の加減速による変動荷重とが材料に作用して疲労が起こり、この材料疲労が要因で回転体の寿命が短縮してしまうという問題点もある。
最後に、ガスリークによる方法を採用した場合には、ガスを導入するための配管やその流量を調節するための機構が必要で、真空ポンプの製造コストが高くなるとともに装置が大型化してしまう。しかも、真空ポンプの内部にプロセスガス以外のガスを導入することになるので、プロセスガスのガス圧とは異なるガス圧によって回転体のタービンに対する負荷が増加してポンプ駆動にかかるモータ電力が増大するという問題点もある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、低コストでかつ制御性に優れた圧力調整を可能にする信頼性の高い真空ポンプと真空装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ポンプケース外部からガス分子を吸入する吸気口と、前記ポンプケース内部に固定された複数段のステータ翼と、該ステータ翼間に配置されて回転する複数段のロータ翼とを有し、該ロータ翼を回転させて前記吸気口から吸入されたガス分子を圧縮して移送するポンプ機構部と、前記ポンプ機構部で圧縮して移送されたガス分子を前記ポンプケース外部に排出する排気口と、前記ポンプ機構部に設けられて、前記吸気口から吸入されたガス分子のうちで移送方向に運動量が付与されるガス分子の確率を変動させて該ガス分子の圧縮比を調節する圧縮比調節機構部と、を備え、前記圧縮比調節機構部は、前記ステータ翼を厚み方向に分割した上側ステータ翼と下側ステータ翼とを備え、前記上側ステータ翼と前記下側ステータ翼のいずれか一方が他方に対して相対的に移動して、該上側ステータ翼のブレード部と該下側ステータ翼のブレード部との間のピッチが増減する構造であることを特徴とする真空ポンプを提供するものである。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載された真空ポンプにおいて、前記圧縮比調節機構部は、前記複数段のステータ翼のいずれかの段に設けられ、それよりも吸気口側に少なくとも1段以上のロータ翼が配置されていることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載された真空ポンプにおいて、前記圧縮比調節機構部は、前記複数段のステータ翼のうちで、前記排気口側に設けられていることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、請求項1に記載された真空ポンプにおいて、前記圧縮比調節機構部は、前記複数段のステータ翼のうちで、前記吸気口側から前記排気口側にかけて複数段にわたって設けられていることを特徴とする。
さらに、請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された真空ポンプと、前記真空ポンプの前記吸気口に装着される真空チャンバと、前記真空チャンバ内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段で測定された圧力測定値に基づいて前記真空ポンプの前記圧縮比調節機構部を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする真空装置を提供するものである。
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載された真空装置において、前記圧縮比調節機構部が前記真空ポンプにおける前記複数段のステータ翼に設けられ、かつ該圧縮比調節機構部における駆動機構が該ステータ翼の各段に独立して設けられていることを特徴とする。
さらに、請求項7に係る発明は、請求項5または請求項6に記載された真空装置において、前記制御手段は、前記圧力測定手段で測定された圧力測定値と、予め設定された前記真空チャンバ内の目標圧力値とを比較した差分を補正値として検出する補正値検出手段を備え、該補正値検出手段により検出された補正値に対応した制御信号を前記真空ポンプの前記圧縮比調節機構部に出力することを特徴とする。
さらにまた、請求項8に係る発明は、請求項7に記載された真空装置において、前記制御手段は、前記補正値検出手段により検出された補正値を微動補正値,中間補正値,および粗動補正値に分割し、該微動補正値に対応した制御信号を吸気段の圧縮比調節機構部に出力し、該中間補正値に対応した制御信号を中間段の圧縮比調節機構部に出力し、該粗動補正値に対応した制御信号を圧縮段の圧縮比調節機構部に出力することを特徴とするものである。
本発明によれば、真空ポンプのポンプ機構部内に設けられた圧縮比調節機構部で圧縮比を可変させて真空チャンバ内の圧力を効率良く制御できる。また、圧縮比の調節はステータ翼におけるブレード部のピッチという一つのパラメータのみを可変させる構造によって実現できるので、従来のコンダクタンス可変機構のようにガス分子のコンダクタンス値の急激な変化による圧縮熱や排気効率の低下を招くことがなく制御性に優れた圧力調整が可能になる。さらに、回転体の加減速やガスリークを行う必要がないことから、材料の寿命短縮や消費電力の増大といった不具合を解消してメンテナンスフリーや製造コストの低減を図ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明の真空ポンプの概略構成を説明する。
図1に示すように、本実施形態の真空ポンプPは、半導体製造装置や液晶ディスプレイパネル製造装置における真空装置の一部として使用され、真空チャンバC内の圧力が所定の真空度になるように機能する。この真空ポンプPは運動量輸送式のポンプであり、円筒形状の外装体1の下端面にベース2を一体に接合してなるポンプケース3の内部に、ターボ分子ポンプ機構部Ptとネジ溝ポンプ機構部Psの2つのポンプ機構部を収容した複合タイプのポンプである。
ポンプケース3は、外装体1の上端面が開口した吸気口4とされており、ベース2の下方側面に排気口5が開設されている。かかる真空ポンプPは、外装体1に延設された吸気口フランジ6を介して吸気口4が真空チャンバCの排気口に装着され、排気口5に嵌着された排気パイプ7を介して容積移送式の補助ポンプPVの吸気口に連結されることで真空装置Dを形成するものである。
次に、この真空ポンプにおけるポンプ機構部の構成を詳しく説明する。
ポンプケース3の内部中央には、各種電装品を内蔵する円筒形状のステータコラム8がベース2の上に固定される。ステータコラム8の中心部には円柱形状のロータ軸9が貫通している。ロータ軸9はステータコラム8の内壁面に埋設された駆動モータ13に通電することで高速回転するように構成されている。駆動モータ13はDCブラシレスモータやACサーボモータ等が用いられ、ロータ軸9の軸方向の略中心位置に配置される。
ステータコラム8の上端面から突出したロータ軸9には、ステータコラム8を包囲するように断面逆U字形状に成形された椀型のロータ本体11がロータ軸9の軸線L方向に締結される。ロータ本体11は駆動モータ13によってロータ軸9と同軸度を保って高速回転するようになっている。ロータ軸9とロータ本体11の回転数は回転数センサ14で検出され、検出された信号を電装コネクタ26にケーブルを介して接続した制御系統51に出力して駆動モータ13が制御される。
ロータ本体11の上側外周部はターボ分子ポンプ機構部Ptとして機能する。ロータ本体11の外壁面には、所定角度で傾斜したブレード部が放射状に複数列形成してあり、複数列のブレード部がロータ翼12を構成している。ロータ翼12はロータ軸9の軸線L方向に沿って複数段設けられている。
外装体1の内壁面には、ロータ翼12のブレード部とは反対方向に傾斜したブレード部が複数列形成してあり、複数列のブレード部がステータ翼31を構成している。ステータ翼31は複数段設けられており、複数段のステータ翼31,31,…は複数段のロータ翼12,12,…間に交互に位置決めされる。このステータ翼31は、後述する複数枚のスペーサ17,17,…を交互に積層することで外周縁部が挟持されて外装体1の内壁面に密着固定される。
本実施形態では、ロータ翼12とステータ翼31は5段ずつ設けられていて、所望の排気性能を発揮するために、最上段から最下段に向かうにつれて次第に両者間のクリアランスが狭まっていくとともにブレード部の長さも短くなっていく。以下ではステータ翼の各段を機能別に区分して、吸気口4側から数えて1段目(最上段)を「吸気段」、2段目を「中間段」、3段目から5段目(最下段)をそれぞれ「第1圧縮段」「第2圧縮段」「第3圧縮段」と称するものとする。
一方、ロータ本体11の下側外周部はネジ溝ポンプ機構部Psとして機能する。ロータ本体11の外壁面は平滑な円筒面になっていて、この外壁面と極めて狭いクリアランスで対向するように、外装体1の内壁面には所定厚みを有する円筒形状のステータ18が嵌め込まれている。ステータ18の内壁面には、上端部から下端部にかけて螺旋状のネジ溝19が刻設されており、このネジ溝19はロータ翼12とステータ翼31との間の隙間に連通している。
本実施形態において、ネジ溝19はステータ18の内壁面に形成されているが、ネジ溝19をロータ本体11の外壁面に形成してステータ18の内壁面を平滑な円筒面にすることもできる。また、ネジ溝19をステータ18の内壁面とロータ本体11の外壁面の双方に形成しても良い。
このように構成されたポンプ機構部は、吸気口4から排気口5へと圧送されるガス分子の流路Rを形成している。
ロータ軸9を駆動モータ13で回転駆動させると、まずターボ分子ポンプ機構部Ptのステージでは、ロータ本体11とその外壁にある複数段のロータ翼12,12,…とが同期して回転動作を行う。すると、所定傾斜角を持って回転するロータ翼12のブレード部と、反対傾斜角を持って固定されたステータ翼31のブレード部との相互作用によって次のような排気動作が行われる。
すなわち、吸気口4付近のガス分子は、分子どうしの衝突が分子と流路内壁面との衝突よりも著しく少ない自由分子流状態であり、吸気段におけるロータ翼12Aのブレード部とステータ翼31Aのブレード部に衝突して吸気されるものと、ブレード部に衝突せずに浮遊しているものとが存在している。このうち、吸気されたガス分子は、中間段におけるロータ翼12Bのブレード部とステータ翼31Bのブレード部に衝突すると移送方向の運動量が付与される。さらに、移送方向の運動量が付与されたガス分子は、第1圧縮段,第2圧縮段,第3圧縮段の順でロータ翼12C〜12Eのブレード部とステータ翼31C〜31Eのブレード部に交互に衝突し、流路Rを狭められながら徐々に中間流の状態に圧縮されていく。そして、中間流の状態に圧縮されたガス分子は下流のネジ溝ポンプ機構部Psのステージへと移送される。
続くネジ溝ポンプ機構部Psのステージでは、ロータ軸9の回転駆動に伴ってロータ本体11が回転している。ここでは、回転するロータ本体11の平滑な外周面と、固定されたステータ18にある螺旋状のネジ溝19との相互作用によって次のような排気動作が行われる。
すなわち、上流のターボ分子ポンプ機構部Ptのステージから移送されてきた中間流のガス分子は、ロータ本体11の外壁面とネジ溝19との間に形成された螺旋状の狭い流路Rに案内されることでさらに圧力の高い粘性流の状態に圧縮されていく。そして、この圧縮された粘性流のガス分子が最終的には下流の排気口5から排出される。
また、本実施形態の真空ポンプPでは、ロータ軸9の支持構造として次のような磁気浮上式の軸受が採用されている。
ロータ軸9と対向するステータコラム8の内面中央部には、ロータ軸9に対して半径方向の磁気吸引力を発生させるラジアル電磁石21が埋設されている。ラジアル電磁石21は、駆動モータ13を中心にした上下位置において、それぞれステータコラム8の内周上にロータ軸9を挟んで対向配置されている。これら各対のラジアル電磁石21,21に電流を流して励磁すると、ロータ軸9の外周に高透磁率材料の鋼板を積層した積層鋼板15が電磁石に吸引されてロータ軸9が半径方向の所定位置で支持される。
ロータ軸9はラジアルセンサ22によってその半径方向の変位が検出され、検出された信号に基づいて制御系統51でラジアル電磁石21に励磁される磁力を調整してロータ軸9の半径方向の位置が制御される。
ステータコラム8の内面下端部には、ロータ軸9に対して軸方向の磁気吸引力を発生させるアキシャル電磁石23が埋設されている。ロータ軸9の下端部外周には透磁率の高い材料からなる円盤形状のアキシャルディスク16が固定され、アキシャル電磁石23はこのアキシャルディスク16を挟んだ上下位置に対向配置されている。この一対のアキシャル電磁石23,23に電流を流して励磁すると、アキシャルディスク16が上下の電磁石に吸引されてロータ軸9が軸方向の所定位置で浮上支持される。
ロータ軸9はアキシャルセンサ24によってその軸方向の変位が検出され、検出された信号に基づいて制御系統51でアキシャル電磁石23に励磁される磁力を調整してロータ軸9の軸方向の位置が制御される。
ステータコラム8の内面上端部と内面下端部には、保護用ドライベアリング25,25が内蔵されている。保護用ドライベアリング25は、ステータコラム8の内壁面に装着された外輪とその内周にある可動の内輪との間にボールを備えてなる転がり軸受であり、ボールと内輪・外輪の両転動面には固体潤滑剤をコーティングしてある。この保護用ドライベアリング25は、磁気軸受が正常に動作する通常運転時にはロータ軸9に対して非接触であるが、磁気軸受の電源異常時にはロータ軸9に形成された段部が内輪に最初に接触して軸受支持される。よって、磁気浮上していたロータ軸9が電源異常で落下しても、ロータ翼12とステータ翼31との接触破壊を防止できる。
このように、本実施形態の真空ポンプPでは、磁気浮上による非接触式の軸受構造を採用していることからロータ軸9とロータ本体11の高速回転が可能になる。また、ベアリングにオイル性の潤滑剤が不要になり、真空下でのオイルの蒸発によるガスも発生しないので、ポンプ内が汚れる心配がなくメンテナンスフリーが実現できる。しかも、通常運転中には回転する部材と固定された部材との間に機械的接触がなく金属摩耗による粉塵も発生しないので、半導体製造に不可欠なクリーンな環境が求められる真空装置に好適に使用できる。
ところで、この真空ポンプPは、吸入圧と背圧との比率、すなわち吸気口4から吸入されたガス分子の圧力を排気口5から排出されたガス分子の圧力で除した値(以下「圧縮比」という)γを調節できる圧縮比調節機構部Pγを備えている。本実施形態において、圧縮比調節機構部Pγによる圧縮比γの調節は、吸気口4から吸入されるガス分子のうちで移送方向の運動量が付与されて最終的に排気口5に到達するガス分子の割合(以下「輸送確率」という)Mを変動させることで行われる。
図2は圧縮比調節機構部の要部構成を示す図であり、図1に示した真空ポンプのターボ分子ポンプ機構部におけるステータ翼を切断して拡大したものである。
図2に示すように、1段分のステータ翼31は、所定厚みを有する円盤形状のプレートがその厚み方向に2分割され、上側ステータ翼31−1と下側ステータ翼31−2とからなる上下2分割体で構成されている。また、ステータ翼31をロータ翼12,12間に位置決めして組み立てる際の作業性を考慮して、円周を2等分する位置には切断溝31aが形成されていてステータ翼31を半円状に2分割できるようになっている。
上側ステータ翼31−1と下側ステータ翼31−2は、ともに円環形状の内周フレーム部32と、この内周フレーム部32と同心円でかつ大径の外周フレーム部33と、この内周フレーム部32と外周フレーム部33とによってその両端部が放射状にかつ所定の傾斜角度で支持されてなる複数列のブレード部34,34,…とを備えている。このような独特の形状を成形するには、例えばアルミニウムやステンレス鋼等からなる金属製の円盤プレートから内周フレーム部32と外周フレーム部33を残してエッチング加工し、複数列のブレード部34,34,…の輪郭を放射状に切り出しておいて、各列を上側ステータ翼31−1では下方に下側ステータ翼31−2では逆に上方に向けて互いに等しい傾斜角度でプレス加工すれば良い。
図3はステータ翼を部分的に切断した断面を示している。同図に示す上下2分割構造のステータ翼31は、後述する駆動機構によって、上側ステータ翼31−1と下側ステータ翼31−2とが、互いに同心度を保った状態で円周方向に相対的にスライド移動するようになっている。本実施形態では、下側ステータ翼31−2が固定されていて、この固定された下側ステータ翼31−2に対して上側ステータ翼31−1が可動する構造が採用されている。また、これとは逆に上側ステータ翼31−1を固定して、下側ステータ翼31−2を可動させても良い。
図4で定義するように、上側ステータ翼31−1と下側ステータ翼31−2は全列のブレード部34,34,…の傾斜角度と、厚み方向の長さ(以下「コード」という)Lcが均一に設定され、互いに厚み方向における平行状態が保たれている。一方、隣り合う列のブレード部34,34間における円周方向の距離(以下「ピッチ」という)Lpを増減できるように構成されている。ピッチLpは下側ステータ翼31−2における隣接したブレード部34,34間の範囲内で増減する。なお、ピッチLpを増減させてもガス分子が通過するブレード部34,34間の断面積(ガス分子の通過面積)の総和は変わらずに一定である。
続いて、このステータ翼で構成される圧縮比調節機構部の駆動機構を説明する。図5はこの駆動機構を断面で示し、図6は同駆動機構を上側から見た平面で示している。
図5に示すように、ステータ翼31は、上下に配置されたスペーサ17(17−1,17−2)で挟持することで外装体1の内壁面に固定される。スペーサ17は所定厚みを有する円盤プレートで構成されており、表面にはその外側の周縁部を全周にわたって切り欠いた外周凹部17aを形成することでその内側に内周凸部17bが設けられ、裏面にはその内側の周縁部を全周にわたって切り欠いた内周凹部17cを形成することでその外側に外周凸部17dが設けられている。
そして、下側スペーサ17−2,ステータ翼31,上側スペーサ17−1の順に積み重ねていくと、下側スペーサ17−2の内周凸部17bにステータ翼31の外周フレーム部33が載置され、外周フレーム部33が上側スペーサ17−1の内周凹部17cに押圧されて保持される。スペーサ17どうしを見てみると、下側スペーサ17−2の外周凹部17aに上側スペーサ17−1の外周凸部17dが嵌合されて堅固に固定される。
このような上下2分割構造のステータ翼31において、上側ステータ翼31−1はその表裏面に配設された上下のベアリング35(35−1,35−2)に支持されて、下側ステータ翼31−2に対して円周方向の所定範囲内を可動するようになっている。
すなわち、上側ベアリング35−1は、固定された上側スペーサ17−1の内周凹部17cに装着した外輪と、可動する上側ステータ翼31−1の外周フレーム部33に装着した内輪との間にボールを有する転がり軸受である。また、下側ベアリング35−2は、固定された下側ステータ翼31−2の外周フレーム部33に装着した外輪と、可動する上側ステータ翼31−1の外周フレーム部33に装着した内輪との間にボールを有する転がり軸受である。本実施形態では、上側ベアリング35−1と下側ベアリング35−2が第2圧縮段31Dと第3圧縮段31Eに同様に設けられている。
なお、上側ステータ翼31−1は、上側スペーサ17−1の内周凹部17cと下側ステータ翼31−2の外周フレーム部33とにそれぞれシール部材36,36を埋設してその隙間が封止され、下側ステータ翼31−2は、可動しないように下側スペーサ17−2の内周凸部17bに対して割ピン37で確実に固定される。
また、可動する上側ステータ翼31−1の外周フレーム部33は、図6に示すように円周上の所定箇所が外側に向けて突出成形されている。この突出部分を逃げるように外装体1はその一部が破断しており、この破断部分を密閉するために断面コ字形状のカバー体38が外装体1の外部に装着される。
カバー体38の内部空間には駆動モータ39が設置される。駆動モータ39は本実施形態ではDCステッピングモータが用いられており、駆動モータ39の先端部には、外周に平歯車を有する駆動ギア41がシャフトを介した同軸上に装着されている。この駆動ギア41は駆動モータ39に印加されるパルス信号で所定の回転角度ずつ正逆自在に回転動作し、その回転数は電装コネクタ26にケーブルを介して接続した制御系統51に出力されて制御される。なお、駆動モータ39の種類としてはDCステッピングモータに替えてACサーボモータや超音波モータ等の各種モータを用いても構わない。
一方、上側ステータ翼31−1において、外周フレーム部33の突出部分には駆動ギア41のギア歯に噛み合う平歯車を有する従動ギア42が形成されており、従動ギア42の下面には連結ロッド43が固定されている。この連結ロッド43は、従動ギア42と第3圧縮段のステータ翼31Eの上側ステータ翼31−1とを連結している。上側スペーサ17−1と下側スペーサ17−2には、それぞれ連結ロッド43が通過するための断面楕円形状の溝部17e,17eが設けられている。
そして、制御系統51によって駆動モータ39に電流が流されると、駆動モータ39が所定の回転角度ずつステッピング駆動し、この回転がシャフトを介して駆動ギア41に伝達される。駆動ギア41の回転はギア歯を介して従動ギア42に伝達されて従動ギア42が所定の回転角度で回転する。こうして、従動ギア42に一体化された上側ステータ翼31−1は、固定された下側ステータ翼31−2に対する同心度を保ちながら円周方向(図6中矢印イ方向)に所定の回転角度で回転動作し、これにより、図3に示したように、上側ステータ翼31−1のブレード部34と下側ステータ翼31−2のブレード部34との間のピッチLpが増減してステータ翼31の位相を可変できる。
また、従動ギア42の回転動作に連動して連結ロッド43が溝部17e内を移動することで、第2圧縮段31Dの上側ステータ翼31−1とその下段の第3圧縮段31Eの上側ステータ翼31−1とが同期して回転する。したがって、第2圧縮段のステータ翼31Dにおける翼列のピッチLpと第3圧縮段のステータ翼31Eにおける翼列のピッチLpとは互いに等しく増減するようになっている。
なお、ステータ翼31の翼列のピッチLpを元通りに戻すには、駆動モータ39に流れる電流の向きを逆転して駆動させ、駆動ギア41を逆回り方向に回転させることで上側ステータ翼31−1を先程とは反対方向(図6中矢印ロ方向)に回転させれば良い。
次に、圧縮比調節機構部と圧縮比との関係を説明する。
図7に示すように、1段のステータ翼31を基準にして考えた場合、その前段の空間領域R1とその後段の空間領域R2から単位時間にステータ翼31に飛来するガス分子の量をそれぞれN1,N2とし、領域R1から領域R2へと最終的に到達するガス分子の輸送確率をM1,逆に領域R2から領域R1への輸送確率をM2とすると、ブレード部34,34間を通過して領域R1から領域R2へと単位時間に移送されるガス分子量Wは、次の数式1で表わされる。
また、空間領域R1,R2における圧力P1,P2と、空間領域R1,R2における分子数密度n1,n2との間には次の数式2の関係が成り立つ。
そして、排気速度効率Q=W/N2に数式1と数式2を代入すると、排気速度効率Qと圧縮比γはそれぞれ次の数式3,数式4で表わせる。
また、排気速度効率Qの最大値は数式3においてP2/P1=1のときとして、圧縮比γの最大値は数式4においてQ=0のときとして、それぞれ次の数式5,数式6で与えられる。
数式6から明らかなように、領域R1から領域R2への輸送確率M1と領域R2から領域R1への輸送確率M2が変化すれば圧縮比の値γは可変することが分かる。すなわち、圧縮比調節機構部Pγにおいて、ピッチLpを増減させることで輸送確率M1とM2とが可変するので圧縮比γの値を調節することが可能になる。
図8はこのようなピッチLpと圧縮比γの関係をグラフ化したものである。同図のグラフは、ステータ翼31において、隣接したブレード部34,34間のピッチLpをコードLcで除した値を横軸に示し、圧縮比γの値を縦軸に示した圧縮比特性曲線である。
同図に示すように、圧縮比γの特性は、圧縮比γの最大値γmax(γA)を頂点とする山状の曲線になることが分かる。この圧縮比γの最大値γAが得られる位置(圧縮比最大位置)でのステータ翼31の位相は図9のようになる。このとき、可動する上側ステータ翼31−1のブレード部34と固定された下側ステータ翼31−2のブレード部34との間には、ステータ翼31の全周にわたって等間隔のピッチLp1,Lp1,…が形成されている。
ここで、圧縮比調節機構部Pγの駆動機構によって上側ステータ翼31−1を所定の回転角度でスライドさせた場合を想定してみる。図10はそのステータ翼31の位相を示すもので、このとき上側ステータ翼31−1のブレード部34と下側ステータ翼31−2のブレード部との間のピッチLpは、ステータ翼31の全周において等間隔であったピッチLp1よりも狭い間隔のピッチLp2,Lp2,…と、ピッチLp1よりも広い間隔のピッチLp3,Lp3,…とが交互に形成される。このピッチLp2における圧縮比の値γB1とピッチLp3における圧縮比の値γB2はそれぞれ図9に示すようになる。
まず、圧縮比最大位置での圧縮比の値γAを境界にして、ピッチLp/コードLcの値が小さくなる(換言するとコードLcの値は常に一定であるのでピッチLpの値が小さくなる)につれて圧縮比の値γB1は低くなることが分かる。その理由は、ピッチLp2のようにピッチLpの値が最適値のピッチLp1よりも小さくなると、ブレード部34,34間のガス分子の通過面積が狭くなってガス分子の入射量が減るので、コードLcのブレード部34で移送方向の運動量を付与できるガス分子の量が減少して輸送確率Mが低下するためである。
次に、圧縮比最大位置での圧縮比の値γAを境界にして、ピッチLp/コードLcの値が大きくなるにつれて圧縮比の値γB2は低くなることが分かる。その理由は、ピッチLp3のようにピッチLpの値が最適値のピッチLp1よりも大きくなると、ブレード部34,34間のガス分子の通過面積が広くなってガス分子の入射量が増えるが、コードLcのブレード部34に衝突せずに移送方向の運動量を付与されないガス分子の量や逆流するガス分子の量も増加して輸送確率Mが低下するためである。
そして、1段のステータ翼31全体で見た圧縮比は、ピッチLp2における圧縮比の値γB1とピッチLp3における圧縮比の値γB2の平均値となるので、図10に示したステータ翼31の圧縮比γBの値は図9に示したステータ翼31の圧縮比γAの値よりも低くなる。
このように、ステータ翼31におけるピッチLpの値を増減させることで、そのステータ翼31における圧縮比を調節することが可能になる。
また、このような圧縮比調節機構部Pγは、複数段あるステータ翼31のいずれかの段に設けられ、それよりも吸気口側に少なくとも1段以上のロータ翼12が配置されていることが望ましい。その理由は、吸気口側に少なくとも1段以上のロータ翼12が配置されていれば圧縮比調節機構部Pγの駆動機構の動作によって塵埃が生じたとしても、その塵埃の真空チャンバC側への逆流が上段にあるロータ翼12で阻止されて、塵埃付着による半導体ICの製造不良を確実に防止できるためである。このような観点から、本実施形態の圧縮比調節機構部Pγは、5段のステータ翼31A〜31Eのうちで4段目(第2圧縮段)と5段目(第3圧縮段)のステータ翼31D,31Eに設けられている。
次に、上述した真空ポンプを使用した本発明の真空装置の実施形態を説明する。
図11は真空装置の制御系統を示すブロック図である。
同図に示すように、真空装置Dは、上述した実施形態の真空ポンプPと、半導体製造のためのステージが配設された真空チャンバCと、容積移送式の補助ポンプPVとを備えて大略構成されている。本実施形態の真空ポンプPでは、上述した圧縮比調節機構部Pγが吸入段,中間段,および圧縮段の全段のステータ翼31A〜31Eに設けられており、各々の上側ステータ翼31−1が個別の駆動モータ39で回転するものとしている。
真空ポンプPの吸気口4は真空チャンバCの第1の排気口101に装着され、真空ポンプPの排気口5は補助ポンプPVの吸気口201に連結される。真空チャンバCには第2の排気口102が設けられており、第2の排気口102は、排気口5と吸気口201とを連通する配管の途中に連結されている。また、真空チャンバCは切換手段を備えていて、第1の排気口101から真空ポンプPに通じる連通路と、第2の排気口102から補助ポンプPVに通じる連通路とを切り換えられるようになっている。
真空ポンプPでは、ポンプ内の電装品を制御する制御系統51が電装コネクタ26にケーブルを介して接続されている。一方で、真空チャンバCには圧力計103が設置されていて、この圧力計103はコネクタとケーブルを介して真空ポンプPの制御系統51に接続されている。
このように構成された真空装置Dを使用する場合には、まず真空チャンバCにある切換手段で第2の排気口102を補助ポンプPVに連通させる。そして、補助ポンプPVの電源をONにして補助ポンプPVを作動させると、真空チャンバC内の大気が粗引きされて真空チャンバC内の圧力が減圧される。
ここで、圧力計103で真空チャンバC内の圧力を測定し、真空ポンプPが作動可能な背圧範囲(10−1〜102Pa台)になると、補助ポンプPVの電源をOFFにして真空チャンバCの切換手段によって第1の排気口101を真空ポンプPに連通させる。そして、真空ポンプPの電源をONにして真空ポンプPを作動させる。
すると、真空ポンプPの駆動モータ13が駆動して、ロータ軸9とロータ本体11が定格回転数(20000〜50000rpm)で高速回転する。そして、真空チャンバC内のステージにプラズマ反応のために導入された塩素系やフッ素系のプロセスガスが吸気口4から真空ポンプP内に吸入される。この吸入されたプロセスガスは、上述したポンプ機構部の排気動作によって圧送されて排気口5から排出される。こうして、真空チャンバC内の圧力はプラズマ反応に最適な真空度(10−4〜10−1Pa程度)に減圧される。
一方、真空ポンプPの制御系統51は、補正値検出器52,PID補償器53,およびアンプ54を備えている。そして、真空チャンバC内の圧力は圧力計103によって所定サンプリング周期で測定されており、この測定圧力値は補正値検出器52に出力されるようになっている。補正値検出器52ではこの測定圧力値と予め設定された目標圧力値とが比較され、その差分が補正値としてPID補償器53に出力される。PID補償器53ではPID制御によって補正値に対応した回転角度指令信号が出力され、この信号はアンプ54で増幅された後に圧縮比調節機構部Pγを駆動させる駆動モータ39に出力される。
本実施形態では、補正値検出器52からPID補償器53に出力する補正値を分割して段階的に制御することが特徴である。
図12は段階的制御に必要なパラメータとなる圧縮比特性曲線を示すものである。同図では吸気段のステータ翼31Aの圧縮比特性曲線をγ1で、中間段のステータ翼31Bの圧縮比特性曲線をγ2で、圧縮段のステータ翼31C,31D,31Eの圧縮比特性曲線をγ3でそれぞれ表わしている。
同図に示すように、圧縮比γの特性は、吸気段の圧縮比特性曲線γ1においてその変化率が最も小さく、次が中間段の圧縮比特性曲線γ2で、圧縮段の圧縮比特性曲線γ3においてその変化率が最も大きくなることが分かる。その理由は、吸気段のステータ翼31Aは上述したようにガス分子の圧縮性能よりもガス分子の入射率を優先した形状に設計されており、これとは逆に、圧縮段のステータ翼31C,31D,31Eは上述したようにガス分子の入射率よりもガス分子の圧縮性能を優先した形状に設計されているためである。
このように、吸気段側のステータ翼31Aよりも圧縮段側のステータ翼31C〜31Eにおける設計パラメータの方が、シフト角度に対する圧縮比γの変化率が大きくなっている。このため、圧縮比調節機構部Pγは、少なくとも圧縮段側のステータ翼31C〜31E、換言すれば吸気口4よりも排気口5に近いステータ翼に設けられていると良い。
本実施形態では、圧縮比調節機構部Pγが全段のステータ翼31A〜31Eに設けられており、かつ圧縮比調節機構部Pγの駆動機構がステータ翼31A〜31Eの各段に独立して設けられている。そして、補正値検出器52からPID補償器53に出力する補正値を微動補正値,中間補正値,粗動補正値に分割し、微動補正値を圧縮比γの変化率が小さな吸気段に、中間補正値を中間段に、粗動補正値を圧縮比γの変化率が大きな圧縮段にそれぞれ振り分けるものとする。
すなわち、微動補正値は吸気段のステータ翼31Aの回転角度指令信号としてPID補償器53から出力し、中間補正値は中間段のステータ翼31Bの回転角度指令信号としてPID補償器53から出力する。また、粗動補正値は第1圧縮段のステータ翼31Cの回転角度指令信号,第2圧縮段のステータ翼31Dの回転角度指令信号,第3圧縮段のステータ翼31Eの回転角度指令信号としてそれぞれPID補償器53から出力する。
こうして、駆動モータ39を回転角度指令信号に基づいて駆動させ、駆動ギア41と従動ギア42を介して上側ステータ翼31−1を所定の回転角度でスライドさせることで圧縮比γを調節する。
例えば、真空チャンバC内の測定圧力値が目標圧力値に比して高い場合には、制御系統51の補正値検出器52によって補正値が検出され、補正値に対応した回転角度指令信号が出力されて上側ステータ翼31−1が回転し、ステータ翼31が図9に示したような圧縮比最大位置の位相にシフトする。これにより、ステータ翼31のピッチLpが最適値に補正され、ガス分子の輸送確率Mが増加して真空ポンプPの背圧が上昇する。したがって、真空ポンプPの吸入圧が下降して、真空チャンバC内のガス分子を吸引する吸引力が増すので真空チャンバC内の圧力を減圧することができる。
逆に、真空チャンバC内の測定圧力値が目標圧力値に比して低い場合には、制御系統51の補正値検出器52によって補正値が検出され、補正値に対応した回転角度指令信号が出力されて上側ステータ翼31−1が回転し、ステータ翼31が図10に示したような圧縮比減少位置の位相にシフトする。これにより、ステータ翼31のピッチLpが可変し、ガス分子の輸送確率Mが減少して真空ポンプPの背圧が低下する。したがって、真空ポンプPの吸入圧が上昇して、真空チャンバC内のガス分子を吸引する吸引力が減少するので真空チャンバC内の圧力を増加させることができる。
なお、制御手法として、真空チャンバC内の圧力を急激に可変させたい場合には、吸気段回転角度指令信号,中間段回転角度指令信号,圧縮段回転角度指令信号を同じ回転角度で同時に出力するようにする。また、補正値を粗動補正値として出力して圧縮段回転角度指令信号のみで真空チャンバC内の圧力を制御することも可能である。さらに、緻密な制御を行う必要がある場合には、まず第3圧縮段の回転角度指令信号を出力し、続いて第2圧縮段の回転角度指令信号,第3圧縮段の回転角度指令信号の順に出力して真空チャンバC内の圧力を徐々に可変させていけば良い。
このように、圧縮段のステータ翼31C〜31Eにおけるシフト操作は、シフト角度に対する圧縮比γの変化率が大きいので、目標圧力値と測定圧力値との差が大きいときの粗動や、高速で圧力を変化させたいときの圧力制御に優位となる。これとは逆に、吸気段のステータ翼31Aにおけるシフト操作は、シフト角度に対する圧縮比γの変化率が小さいので精緻な圧力制御に優位である。
以上、詳細に説明したが、上述した実施形態の真空ポンプPは、以下のような様々な変形例が考えられる。
例えば、圧縮比調節機構部Pγは、ターボ分子ポンプ機構部Ptにおけるステータ翼31であれば吸気段31A,中間段31B,圧縮段31C〜31Eのいずれの段に設けても良く、これらのすべての段に設けることも可能である。すべての段に設ける場合には、上述したように全段のステータ翼31A〜31Eに駆動機構を設けて各段ごとの段階的制御を行う構成や、吸気段のステータ翼31Aにのみ駆動機構を設けて、それよりも下段のステータ翼31B,31C,31Eを連結ロッド43で連動させる構成を採用することもできる。
また、ネジ溝ポンプ機構部Psのステージにおいて、ロータ本体11の外壁面にも複数段のロータ翼12,12,…を追加し、ステータ18を取り除いてロータ翼12,12,…間にステータ翼31,31,…を設けた全翼タイプのターボ分子ポンプとすることも可能である。この場合には、ロータ翼12とステータ翼31の段数が増加するので、ステータ翼31に設ける圧縮比調節機構部Pγをさらに多段に形成することができ、より精緻な圧縮比制御が行えるという利点がある。
さらに、真空チャンバC内の圧力を測定する圧力測定手段として真空チャンバCに圧力計103を設置しているが、この構成に替えて真空ポンプPの吸気口フランジ6に圧力計を設置してその圧力測定値を制御系統51の補正値検出器52に出力する構成を採用しても良い。この場合には、真空ポンプPの吸気口4にさらに近い位置で圧力が測定されるため、吸入圧と背圧との比率である圧縮比γの値をより正確に検出して制御することが可能になる。
P 真空ポンプ
Pt ターボ分子ポンプ機構部
Ps ネジ溝ポンプ機構部
Pγ 圧縮比調節機構部
Lc コード
Lp ピッチ
M 輸送確率
γ 圧縮比
γ1 吸気段の圧縮比特性曲線
γ2 中間段の圧縮比特性曲線
γ3 圧縮段の圧縮比特性曲線
3 ポンプケース
4 吸気口
5 排気口
12 ロータ翼
17 スペーサ
17−1 上側スペーサ
17−2 下側スペーサ
31 ステータ翼
31a 切断溝
31A 吸気段のステータ翼
31B 中間段のステータ翼
31C 第1圧縮段のステータ翼
31D 第2圧縮段のステータ翼
31E 第3圧縮段のステータ翼
31−1 上側ステータ翼
31−2 下側ステータ翼
39 駆動モータ
51 制御系統
52 補正値検出器
53 PID補償器
54 アンプ
D 真空装置
C 真空チャンバ
101 第1の排気口
102 第2の排気口
103 圧力計
PV 補助ポンプ
201 吸気口
Pt ターボ分子ポンプ機構部
Ps ネジ溝ポンプ機構部
Pγ 圧縮比調節機構部
Lc コード
Lp ピッチ
M 輸送確率
γ 圧縮比
γ1 吸気段の圧縮比特性曲線
γ2 中間段の圧縮比特性曲線
γ3 圧縮段の圧縮比特性曲線
3 ポンプケース
4 吸気口
5 排気口
12 ロータ翼
17 スペーサ
17−1 上側スペーサ
17−2 下側スペーサ
31 ステータ翼
31a 切断溝
31A 吸気段のステータ翼
31B 中間段のステータ翼
31C 第1圧縮段のステータ翼
31D 第2圧縮段のステータ翼
31E 第3圧縮段のステータ翼
31−1 上側ステータ翼
31−2 下側ステータ翼
39 駆動モータ
51 制御系統
52 補正値検出器
53 PID補償器
54 アンプ
D 真空装置
C 真空チャンバ
101 第1の排気口
102 第2の排気口
103 圧力計
PV 補助ポンプ
201 吸気口
Claims (8)
- ポンプケース外部からガス分子を吸入する吸気口と、
前記ポンプケース内部に固定された複数段のステータ翼と、該ステータ翼間に配置されて回転する複数段のロータ翼とを有し、該ロータ翼を回転させて前記吸気口から吸入されたガス分子を圧縮して移送するポンプ機構部と、
前記ポンプ機構部で圧縮して移送されたガス分子を前記ポンプケース外部に排出する排気口と、
前記ポンプ機構部に設けられて、前記吸気口から吸入されたガス分子のうちで移送方向に運動量が付与されるガス分子の確率を変動させて該ガス分子の圧縮比を調節する圧縮比調節機構部と、
を備え、
前記圧縮比調節機構部は、
前記ステータ翼を厚み方向に分割した上側ステータ翼と下側ステータ翼とを備え、
前記上側ステータ翼と前記下側ステータ翼のいずれか一方が他方に対して相対的に移動して、該上側ステータ翼のブレード部と該下側ステータ翼のブレード部との間のピッチが増減する構造である
ことを特徴とする真空ポンプ。 - 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記圧縮比調節機構部は、
前記複数段のステータ翼のいずれかの段に設けられ、それよりも吸気口側に少なくとも1段以上のロータ翼が配置されている
ことを特徴とする真空ポンプ。 - 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記圧縮比調節機構部は、
前記複数段のステータ翼のうちで、前記排気口側に設けられている
ことを特徴とする真空ポンプ。 - 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記圧縮比調節機構部は、
前記複数段のステータ翼のうちで、前記吸気口側から前記排気口側にかけて複数段にわたって設けられている
ことを特徴とする真空ポンプ。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の真空ポンプと、
前記真空ポンプの前記吸気口に装着される真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段で測定された圧力測定値に基づいて前記真空ポンプの前記圧縮比調節機構部を制御する制御手段と、
を備えた
ことを特徴とする真空装置。 - 請求項5に記載の真空装置において、
前記圧縮比調節機構部が前記真空ポンプにおける前記複数段のステータ翼に設けられ、かつ該圧縮比調節機構部における駆動機構が該ステータ翼の各段に独立して設けられている
ことを特徴とする真空装置。 - 請求項5または請求項6に記載の真空装置において、
前記制御手段は、
前記圧力測定手段で測定された圧力測定値と、予め設定された前記真空チャンバ内の目標圧力値とを比較した差分を補正値として検出する補正値検出手段を備え、該補正値検出手段により検出された補正値に対応した制御信号を前記真空ポンプの前記圧縮比調節機構部に出力する
ことを特徴とする真空装置。 - 請求項7に記載の真空装置において、
前記制御手段は、
前記補正値検出手段により検出された補正値を微動補正値,中間補正値,および粗動補正値に分割し、該微動補正値に対応した制御信号を吸気段の圧縮比調節機構部に出力し、該中間補正値に対応した制御信号を中間段の圧縮比調節機構部に出力し、該粗動補正値に対応した制御信号を圧縮段の圧縮比調節機構部に出力する
ことを特徴とする真空装置。
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-
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- 2003-09-29 JP JP2003336739A patent/JP2005105851A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20061205 |