JP2005105161A - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 静電界を利用したインクジェット記録方式でインク組成物をインク滴として飛翔させるインクジェット記録方法において、使用するインク組成物が、分散媒、色材およびその被覆ポリマーを含む荷電粒子を含有し、かつ前記被覆ポリマーの動的弾性率が50℃で5×105Pa以上、70℃で2×105Pa以下、かつ80℃で1×103Pa以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【選択図】 なし
Description
一方、静電界を利用する方式は、インク滴の飛翔方向を静電界により制御するため、望ましい位置へインク滴を正確に着弾させることが可能であり、高画質の画像形成物(印刷物)を作成でき優れている。
(1) 静電界を利用したインクジェット記録方式でインク組成物をインク滴として飛翔させるインクジェット記録方法において、使用するインク組成物が、分散媒、色材およびその被覆ポリマーを含む荷電粒子を含有し、かつ前記被覆ポリマーの動的弾性率が50℃で5×105Pa以上、70℃で2×105Pa以下、かつ80℃で1×103Pa以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
(2) 温度変化に対する前記被覆ポリマーの動的弾性率曲線が、40〜100℃の範囲内において2箇所の変曲点を有することを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録方法。
(3) 前記被覆ポリマーが、アクリル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリスチレン系ポリマーまたはこれらの混合物であり、前記被覆ポリマーの重量平均分子量が、2,000〜300,000であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0〜15.0であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のインクジェット記録方法。
(4) 前記被覆ポリマーが、結晶性ポリエステル類、結晶性ポリエチレン類、結晶性ポリエチレングリコール類またはこれらの混合物をさらに含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
[分散媒]
分散媒は、高い電気抵抗率、具体的には1010Ωcm以上を有する誘電性の液体であることが好ましい。仮に電気抵抗率の低い分散媒を使用すると、隣接する記録電極間で電気的導通を生じさせるため、本形態には不向きである。また、誘電性液体の比誘電率は5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、誘電性液体中の荷電粒子に有効に電界が作用されるため好ましい。
本発明に用いる色材としては、公知の染料および顔料を使用することができ、用途や目的に応じて選択することができる。例えば、記録された画像記録物(印刷物)の色調の観点からは、顔料を用いることが好ましい(例えば、技術情報協会発行 「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」 2001年12月25日 第1刷参照。以下「非特許文献1」とも称する)。色材を変更することにより、イエロー、マゼンタ、シアン、墨(ブラック)の4色のインクを作成することができる。特に、オフセット印刷用インクやプルーフに用いられる顔料を使用するとオフセット印刷物と同様な色調が得られるので好ましい。
更にマイクロリス−A,−K,−Tなどのマイクロリス顔料に代表される加工顔料も好適に使用できる。その具体例としてはマイクロリスイエロー4G−A,マイクロリスレッドBP−K,マイクロリスブルー4G−T,マイクロリスブラックC−Tなどが挙げられる。
また、白インク用の顔料として炭酸カルシウムや酸化チタン顔料を、銀インク用としてアルミニウム粉を、金インク用として銅合金を用いる等、必要に応じて各種の顔料を使用することができる。
インク組成物全体に対する顔料の含有量は、0.1〜50質量%の範囲内であることが好ましい。0.1質量%以上において、顔料量が充足し、印刷物において充分良好な発色が得られ、また、50質量%以下において、色材を含有する粒子を分散媒に良好に分散させることができる。さらに好ましくは、1〜30質量%である。
本発明において、顔料等の色材は、分散媒に直接、分散(粒子化)するよりも、被覆ポリマーにより被覆された状態で分散(粒子化)することが好ましい。被覆ポリマーで被覆することにより、色材が持つ荷電を遮蔽し望ましい荷電特性を付与することができる。また、本発明においては、被記録媒体へインクジェット記録した後、ヒートローラ等の加熱手段により定着するが、この際被覆ポリマーが熱により溶融し、効率よく定着できる。
本発明者らの検討によれば、動的弾性率は、インク画像の定着性の指標となり、耐ブロッキング性及び耐摩擦性に深く関係することが見出された。つまり動的弾性率は、インク粒子の熱的流動性、すなわちフロー性、上に重ねられた記録紙への画像の裏移りのしにくさ、すなわち耐ブロッキング性、そしてインク画像の熱定着時におけるヒートローラへ画像の一部が転移するオフセット等と深く関係する。
そして本発明によれば、被覆ポリマーの動的弾性率が50℃で5×105Pa以上であることにより、定着されたインク画像の耐ブロッキング性が良好となり、70℃で2×105Pa以下であることにより、インク粒子のフロー性が良好となり、そして80℃で1×103Pa以上であることにより、オフセット性が改善される。これらの要件をすべて満たすことにより、インク画像に極めて良好な「定着性」を付与することができる。
被覆ポリマーの動的弾性率は、50℃で7×105Pa以上、70℃で1.5×105Pa以下、80℃で5×103以上Paとすることが好ましく、50℃で1×106Pa以上、70℃で1×105Pa以下、80℃で1×104Pa以上であることがより好ましい。
さらに具体的には、例えば試料の微粉砕物3gをUBM社製レオメーター「Rheosol−G1000型」の試料チャンバー内にセットし、所定の測定方法に則りまず200℃でこれを溶融させたのち、温度を降下させながらローターを周波数1Hzで振動させ自動的に「温度−動的弾性率曲線」を記録し、50℃、70℃、80℃における動的弾性率を測定することができる。
加えて、80℃での動的弾性率が1×103Pa以上とすることにより低温フロー性を保持しつつ被覆ポリマーの弾性を確保できるので、定着のためのヒートローラー表面への粒子の付着を防止することが可能となる。このため耐ブロッキング性を向上し得るのである。即ち、被覆ポリマーの動的弾性率を上記条件を満たすように調整することで、フロー状態であってもヒートローラーへのブロッキングは起きないことになる。このときの温度−弾性率曲線は図2のcに示されるようにもうひとつの明らかな変曲点を有するのである。
本発明において用いられる被覆ポリマーは、温度変化に対する動的弾性率曲線が、40〜100℃の範囲内において2箇所の変曲点を有することが好ましい。また、被覆ポリマーとして、特定のアクリル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、またはポリスチレン系ポリマーと、結晶性ポリエステル類、結晶性ポリエチレン類、結晶性ポリエチレングリコール類またはこれらの混合物などの結晶性ポリマーとを併用することでフロー性をさらに向上することができる。
本発明において好ましくは、色材と被覆ポリマーの混合物を分散媒中に分散(粒子化)するが、粒子直径を制御し、かつ粒子の沈降を抑制するために分散剤を使用することがさらに好ましい。
好適な分散剤としては、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステルや、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステルに代表される界面活性剤が挙げられる。また、例えば、スチレンとマレイン酸のコポリマー、及びそのアミン変性物、スチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、ロジン、BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製のポリウレタン系ポリマー)、EFKA−401、402(EFKA社製のアクリル系ポリマー)、ソルスパース17000,24000(ゼネカ社製のポリエステル系ポリマー)等が挙げられる。本発明においては、インク組成物の長期間保存安定性の観点から、重量平均分子量が1,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、グラフトポリマーまたはブロックポリマーを用いることが最も好ましい。
また、一般式(6)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、等が挙げられる。
これらのグラフトポリマーの具体例としては、下記の構造式で示されるポリマーが挙げられる。
本発明においては、色材と被覆ポリマーの混合物を、分散剤を用いて分散媒中に分散(粒子化)することが好ましく、粒子の荷電量を制御するために荷電調整剤を併用することがさらに好ましい。
好適な荷電調整剤としては、ナフテン酸ジルコニウム塩、オクテン酸ジルコニウム塩等の有機カルボン酸の金属塩、ステアリン酸テトラメチルアンモニム塩等の有機カルボン酸のアンモニム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸マグネシウム塩等の有機スルホン酸の金属塩、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機スルホン酸のアンモニウム塩、スチレンと無水マレイン酸のコポリマーをアミンで変性したカルボン酸基を含有するポリマー等の側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、メタクリル酸ステアリルとメタクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩の共重合体等の側鎖にカルボン酸アニオン基を有するポリマー、スチレンとビニルピリジンの共重合体等の側鎖に窒素原子を有するポリマー、メタクリル酸ブチルとN−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムトシラート塩との共重合体等の側鎖にアンモニウム基を有するポリマー等が挙げられる。粒子に付与される荷電は、正荷電であっても負荷電であってもよい。インク組成物全体に対する分散剤の含有量は、0.0001〜10質量%の範囲内であることが好ましい。この範囲内において、インク組成物の電気伝導度を、10nS/m〜300nS/mの範囲内に容易に調整できる。更に、荷電粒子の電気伝導度を、インク組成物の電気伝導度の50%以上に容易に調整できる。
本発明においては、さらに、腐敗防止のために防腐剤や、表面張力を制御するための界面活性剤等を目的に応じて含有することができる。
以上の成分を用い、色材と好ましくは被覆ポリマーを分散(粒子化)することにより、本発明におけるインク組成物を作成することができる。分散(粒子化)する方法としては、例えば下記の方法が挙げられる。
(1)色材と被覆ポリマーをあらかじめ混合した後、分散剤と分散媒を用いて分散(粒子化)し、荷電調整剤を加える。
(2)色材、被覆ポリマー、分散剤と分散媒を同時に用いて分散(粒子化)し、荷電調整剤を加える。
(3)色材、被覆ポリマー、分散剤、荷電調整剤と分散媒を同時に用いて分散(粒子化)する。
本発明では、以上記述したインク組成物を、インクジェット記録方式により、被記録媒体へ記録する。本発明においては、静電界を利用したインクジェット記録方式を用いることが好ましい。静電界を利用するインクジェット記録方式は、制御電極と被記録媒体背面の背面電極間に電圧を印加することにより、インク組成物の荷電粒子を静電力によって吐出位置に濃縮し、吐出位置から記録媒体へ飛翔させる方式である。制御電極と背面電極間に印加する電圧は、例えば荷電粒子が正の場合、制御電極が正極であり背面電極が負極となる。背面電極へ電圧を印加する代わりに被記録媒体に帯電を行っても同様の効果が得られる。
まずは、図3に示す記録媒体に片面4色印刷を行う装置の概要について説明する。
図3に示されるインクジェット記録装置1は、フルカラー画像形成を行うための4色分の吐出ヘッド2C、2M、2Y及び2Kから構成される吐出ヘッド2にインクを供給し、さらに吐出ヘッド2からインクを回収するインク循環系3、図示されないコンピュータ、RIP(ラスター・イメージ・プロセッサ)等の外部機器からの出力により吐出ヘッド2を駆動させるヘッドドライバ4、位置制御手段5を備える。またインクジェット記録装置1は、3つのローラ6A、6B、6Cに張架された搬送ベルト7、搬送ベルト7の幅方向の位置を検知可能な光学センサなどで構成された搬送ベルト位置検知手段8、記録媒体Pを搬送ベルト上に保持するための静電吸着手段9、画像形成終了後に記録媒体Pを搬送ベルト7から剥離するための除電手段10及び力学的手段11を備える。搬送ベルト7の上流、下流には、記録媒体Pを図示されないストッカーから搬送ベルト7に供給するフィードローラ12及びガイド13、剥離後の記録媒体Pへインクを定着させると共に図示されない排紙ストッカーに搬送する定着手段14及びガイド15が配置されている。またインクジェット印刷装置1の内部には、搬送ベルト7を挟んで吐出ヘッド2に対向する位置には、記録媒体位置検出手段16を有し、さらにインク組成物から発生する溶媒蒸気を回収するための排出ファン17及び溶媒蒸気吸着材18からなる溶媒回収部が配置され、装置内部の蒸気は該回収部を通って装置外部に排出される。
本発明で好適に使用されるインクジェットヘッドは、インク流路内での荷電粒子を電気泳動させて開口付近のインク濃度を増加させ、吐出を行うインクジェット方法であり、主に記録媒体又は記録媒体背面に配置された対向電極に起因する静電吸引力によりインク滴の吐出を行うものである。従って、記録媒体又は対向電極がヘッドに対向していない場合や、ヘッドと対向する位置にあっても記録媒体又は対向電極に電圧が印加されていない場合には、誤って吐出電極に電圧が印加された場合や振動が与えられた場合でもインク滴の吐出は起こらず、装置内を汚すことはない。
その際、第1吐出電極46と第2吐出電極56の両者にパルス電圧が印加された場合にのみインク滴Gが吐出するように、第1吐出電極46と第2吐出電極56とに印加する電圧値を調整しておく。
静電界を利用したインクジェット記録方式では、インク組成物中の荷電粒子が濃縮されて吐出する。従って、長時間インク組成物の吐出を行うと、インク組成物中の荷電粒子が減量し、インク組成物の電気伝導度が低下する。また、荷電粒子の電気伝導度とインク組成物の電気伝導度との割合が変化する。さらに、吐出の際、直径の小さな荷電粒子よりも大きな荷電粒子が優先して吐出する傾向にあるため、荷電粒子の平均直径が小さくなる。また、インク組成物中の固形物の含有量が変化するため、粘度も変化する。
これらの物性値の変化により、結果として、吐出不良を起こしたり、記録された画像の光学濃度の低下やインクのにじみが発生する。このため、当初インクタンクへ仕込んだインク組成物よりも、高濃度(固形分濃度の高い)のインク組成物を補充することにより、荷電粒子の減量を防止し、インク組成物の電気伝導度や、荷電粒子の電気伝導度とインク組成物の電気伝導度の割合を一定の範囲に留めることができる。また、平均粒子直径や粘度を維持することができる。さらに、インク組成物の物性値を一定の範囲内に保つことにより、インク吐出が長時間安定して均一に行われる。この際の補充は、例えば、使用しているインク液の電気伝導度や光学濃度等の物性値を検出し、不足量を算出して、機械的または人力で成されることが好ましい。また、画像データを基に使用するインク組成物の量を算出し、機械的または人力で成されてもよい。
本発明においては、用途に応じて様々な被記録媒体を用いることができる。例えば、紙、プラスチックフィルム、金属、及び、プラスチックまたは金属がラミネートまたは蒸着された紙、金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルム等を用いれば、インクジェット記録することにより、直接印刷物を得ることができる。また、アルミなどの金属を粗面化した支持体等を用いれば、オフセット印刷版を得ることができる。さらに、プラスチック支持体等を用いれば、フレキソ印刷版や液晶画面用のカラーフィルターを得ることができる。被記録媒体の形状は、シート状のように平面的であっても、円筒形状のように立体的であってもよい。また、シリコンウエハーや配線基板を被記録媒体として用いれば、半導体やプリント配線基板の製造に適用できる。この時のオーバーコート層は必要に応じて画像部のみに敷設してもよい。
[ポリマー1]
セバシン酸(和光純薬製)70.8質量部、1,10−デカンジオール(和光純薬製)61質量部、キシレン(和光純薬製)161質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬製)0.67質量部を三口フラスコに投入し、オイルバス中でリフラックスさせ、共沸脱水法にて8時間反応させた。この後、反応液を室温まで冷却し、3Lのメタノール中に反応液を投入し、再沈精製し、真空乾燥することで、結晶性ポリエステルを約110g得た。得られたポリマーの重量平均分子量Mwは36000、融点Tmは80℃であった。
アジピン酸(和光純薬製)44.15質量部、1,6−ヘキサンジオール(和光純薬製)41.36質量部、キシレン(和光純薬製)105質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬製)0.67質量部を三口フラスコに投入し、オイルバス中でリフラックスさせ、共沸脱水法にて8時間反応させた。この後、反応液を室温まで冷却し、3Lのメタノール中に反応液を投入し、再沈精製し、真空乾燥することで、結晶性ポリエステルを約75g得た。得られたポリマーの重量平均分子量Mwは10000、融点Tmは63℃であった。
セバシン酸(和光純薬製)70.8質量部、1,4−シクロヘキサンジオール(和光純薬製)40.66質量部、キシレン(和光純薬製)137質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬製)0.67質量部三口フラスコに投入し、オイルバス中でリフラックスさせ、共沸脱水法にて8時間反応させた。この後、反応液を室温まで冷却し、3Lのメタノール中に反応液を投入し、再沈精製し、真空乾燥することで、結晶性ポリエステルを約100g得た。得られたポリマーの重量平均分子量Mwは19000、融点Tmは75℃であった。
<使用した材料>
本実施例1においては、下記に示す材料を使用した。
・被覆ポリマー エルバックスII−5720(エチレン/メタクリル酸=89/11質量比、三井・デユポンケミカル社製)
・分散剤 [BZ−2]
・荷電調整剤 [CT−1]
・分散媒 アイソパーG(イソパラフィン系、エクソン社製)
荷電調整剤[CT−1]は、1−オクタデセンと無水マレイン酸のコポリマーに、1−ヘキサデシルアミンを反応させることにより得た。重量平均分子量は、17,000であった。
シアン顔料10g、被覆ポリマー「エルバックスII−5720」20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒータ温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−2]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−1]を得た。
図3〜5に示すインクジェット記録装置に、実施例1のインク組成物[EC−1]をインクタンクに充填した。ここでは吐出ヘッドとして図4に示すタイプの150dpi(チャンネル密度50dpiの3列千鳥配置)、833チャンネルヘッドを使用し、また定着手段として1kWのヒータを内蔵したシリコンゴム性ヒートローラを使用した。インク温度管理手段として投げ込みヒータと攪拌羽をインクタンク内に設け、インク温度は30℃に設定し、攪拌羽を30rpmで回転しながらサーモスタットで温度コントロールした。ここで攪拌羽は沈澱・凝集防止用の攪拌手段としても使用した。またインク流路を一部透明とし、それを挟んでLED発光素子と光検知素子を配置し、その出力シグナルによりインクの希釈液(アイソパーG)あるいは濃縮インク(上記インク組成物の固形分濃度を2倍に調整したもの)投入による濃度管理を行った。被記録媒体としてオフセット印刷用微コート紙を使用した。エアーポンプ吸引により被記録媒体表面の埃除去を行った後、吐出ヘッドを画像形成位置まで被記録媒体に近づけ、記録すべき画像データを画像データ演算制御部に伝送し、搬送ベルトの回転により被記録媒体を搬送させながら吐出ヘッドを逐次移動しながらインク組成物を吐出して2400dpiの描画解像力で画像を形成した。搬送ベルトとして、金属ベルトとポリイミドフィルムを張り合わせたものを使用し、このベルトの片端付近に搬送方向に沿ってライン状のマーカーを配置し、これを搬送ベルト位置検知手段で光学的に読みとり、位置制御手段を駆動して画像形成を行った。この際、光学的ギャップ検出装置による出力により吐出ヘッドと記録媒体の距離は0.5mmに保った。また吐出の際には被記録媒体の表面電位を−1.5kVとしておき、吐出をおこなう際には+500Vのパルス電圧を印加し(パルス巾50μsec)、15kHzの駆動周波数で画像形成を行った。
得られたグレースケール画像記録物(印刷物)は、筋ムラ、インクのにじみがなく極めて鮮明な画像であった。画像形成不良等は全く見られず、また外気温の変化、記録時間の増加によってもドット径変化等による画像劣化は全く見られず、良好な画像形成が可能であった。
ポリマー物性としての動的弾性率は、ポリマーの変形しやすさや流動性を示し、その挙動はレオロジーと呼ばれる学問体系に属している。
本発明者らの検討によれば、動的弾性率は、インク画像の定着性の指標となり、耐ブロッキング性及び耐摩擦性に深く関係することが見出された。つまり動的弾性率は、被覆ポリマーを含むインク組成物の熱的流動性、すなわちフロー性、上に重ねられた記録紙への画像の裏移りのしにくさ、すなわち耐ブロッキング性、そしてインク画像の熱定着時におけるヒートローラへ画像の一部が転移するオフセット等と深く関係する。
以下に、被覆ポリマーの動的弾性率の測定法を具体的に述べる。
試料の微粉砕物3gをUBM社製レオメーター「Rheosol−G1000型」の試料チャンバー内にセットし、所定の測定方法に則りまず200℃でこれを溶融させたのち、温度を降下させながらローターを周波数1Hzで振動させ自動的に「温度−動的弾性率曲線」を記録し、80、70、50℃における動的弾性率を読み取った。
さらに少なくとも40〜100℃の温度範囲内において「温度−動的弾性率曲線」に2箇所の変曲点を有することを確認した。
画像記録後すぐに、ヒートローラを用いて定着し、定着時のコート紙の温度を60〜100℃まで5℃刻みで変化させ定着をおこない、被覆ポリマーがフローする温度(フロー開始温度)とヒートローラへのオフセットが発生しない上限温度(耐上限オフセット温度)を定着性の評価基準とした。すなわち、フロー開始温度が低温で達成され、高温までオフセットが発生しないインクが望ましい。なお、ここでいう「フロー」とは、被覆剤が溶融し、流動した後に、被膜化した状態を意味する。
フロー開始温度:定着後の画像表面のSEM写真観察で目視評価した。
耐上限オフセット温度:ヒートローラへのオフセット発生は、オフセットした画像をヒートローラから紙へ再転写させ、紙上で目視評価した。
印刷画像のブロッキング性については、定着性を十分満足する温度で、定着した画像上に印刷用紙と同じ紙を重ね、約50g/cm2の重量をかけ、50℃で24時間放置し、重ねた紙への画像部の転写程度を目視評価した。
使用素材として、被覆ポリマーをバイロン920(ポリエステル、東洋紡社製)20gに変えた以外は、実施例1と同素材にて、実施例1と同様な方法にてインク[EC−2]を作成し、インクジェット描画、定着評価を実施した。
被覆ポリマーとして、AT−96(ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート、モル比75/25、アルドリッチ社製)を15g、ブレンド用のポリマー1を5g混合使用したこと以外は、実施例1と同様な方法にてインク[EC−3]を作成し、インクジェット描画、定着評価を実施した。
実施例3のインク組成物[EC−3]の作成において、ポリマー1を加えなかった以外は実施例3と同様にして、インク組成物[RC−1]を作成した。
結果を表1に示す。
(定着性)
○: フロー開始温度70℃以下かつ耐オフセット上限温度80℃以上
△: フロー開始温度75℃〜80℃未満かつ耐オフセット上限温度80℃以上
×: フロー開始温度80℃以上または耐オフセット上限温度80℃未満
耐ブロッキング性の評価は次のとおりである。
(耐ブロッキング性)
○: 転写物なし
△: 転写物若干あり
×: 転写物かなりあり
比較例1において、本発明の動的弾性率の規定値を満足しない被覆ポリマーのみでは、70℃における動的弾性率が本発明における規定値よりも大きかったために定着可能温度の低温化が難しく、このときの動的弾性率は70℃では規定値よりも小さく、50℃と80℃で規定値を超えてはいなかった。
実施例1のインク組成物[EC−1]の作成において、前記実施例及び比較例記載の被覆ポリマー種とブレンド用ポリマー種を下記表2のように組み合わせた以外は実施例1と同様にして、インク組成物[EC−4〜EC−11]を作成した。
b ひとつの変曲点を有する曲線
c 2箇所の変曲点を有する曲線(本発明)
d ブレンド用ポリマー単独の温度−弾性率曲線
G 飛翔したインク滴
P 被記録媒体
Q インク流
R 荷電粒子
1 インクジェット記録装置
2、2Y、2M、2C、2K 吐出ヘッド
3 インク循環系
4 ヘッドドライバ
5 位置制御手段
6A、6B、6C 搬送ベルト張架ローラ
7 搬送ベルト
8 搬送ベルト位置検知手段
9 静電吸着手段
10 除電手段
11 力学的手段
12 フィードローラ
13 ガイド
14 画像定着手段
15 ガイド
16 記録媒体位置検知手段
17 排出ファン
18 溶媒蒸気吸着材
38 インクガイド
40 支持棒部
42 インクメニスカス
44 絶縁層
46 第1吐出電極
48 絶縁層
50 ガード電極
52 絶縁層
56 第2吐出電極
58 絶縁層
62 浮遊導電板
64 被覆膜
66 絶縁部材
70 インクジェットヘッド
72 インク流路
74 基板
75、75A、75B 開口
76、76A、76B 吐出部
78 吐出部
Claims (4)
- 静電界を利用したインクジェット記録方式でインク組成物をインク滴として飛翔させるインクジェット記録方法において、使用するインク組成物が、分散媒、色材およびその被覆ポリマーを含む荷電粒子を含有し、かつ前記被覆ポリマーの動的弾性率が50℃で5×105Pa以上、70℃で2×105Pa以下、かつ80℃で1×103Pa以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 温度変化に対する前記被覆ポリマーの動的弾性率曲線が、40〜100℃の範囲内において2箇所の変曲点を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法。
- 前記被覆ポリマーが、アクリル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリスチレン系ポリマーまたはこれらの混合物であり、前記被覆ポリマーの重量平均分子量が、2,000〜300,000であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0〜15.0であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記被覆ポリマーが、結晶性ポリエステル類、結晶性ポリエチレン類、結晶性ポリエチレングリコール類またはこれらの混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
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