JP2005100743A - メタルハライドランプおよび照明装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】
適量範囲のCsハロゲン化物を封入することで長時間点灯時に生じやすい石英ガラス製の気密容器の膨らみを抑制するとともに、発光効率を比較的高い値に維持する特に自動車前照灯用に好適なメタルハライドランプおよびこれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】
メタルハライドランプは、気密容器1と、その内部に離間対向して封装された一対の電極1b、1bと、Na、Scおよび希土類金属のグループから選択された少なくとも1種の金属のハロゲン化物、気密容器1の単位内容積当たり0.001〜0.015mg/mm3のCsハロゲン化物および25℃で8気圧以上の希ガスを含む放電媒体とを具備し、安定点灯時の放電空間の熱量が50W/cm2以上である。
【選択図】
図1
適量範囲のCsハロゲン化物を封入することで長時間点灯時に生じやすい石英ガラス製の気密容器の膨らみを抑制するとともに、発光効率を比較的高い値に維持する特に自動車前照灯用に好適なメタルハライドランプおよびこれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】
メタルハライドランプは、気密容器1と、その内部に離間対向して封装された一対の電極1b、1bと、Na、Scおよび希土類金属のグループから選択された少なくとも1種の金属のハロゲン化物、気密容器1の単位内容積当たり0.001〜0.015mg/mm3のCsハロゲン化物および25℃で8気圧以上の希ガスを含む放電媒体とを具備し、安定点灯時の放電空間の熱量が50W/cm2以上である。
【選択図】
図1
Description
本発明は、水銀を封入しないメタルハライドランプおよびこれを用いた照明装置に関する。
環境負荷の大きい水銀を封入しない代わりにZnI2などを封入したメタルハライドランプは既知である(特許文献1参照。)。特許文献1には、その請求項16および段落0392に、図6に示す移動体の前照灯に用いることができるようにしたメタルハライドランプとほぼ同様な構造およびサイズにおいて、第1のハロゲン化物としてScI30.14mgおよびNaI0.7mg、第2のハロゲン化物として表28に示すハロゲン化物、ならびにCsI0.1mgと、Xe5気圧とからなる放電媒体を封入した構成が開示されている。この構成により、演色性Raおよび色温度は殆ど変わらないが、アークの温度分布が平坦化されるために、熱損失が低下して発光効率が向上する旨開示されている。
また、少なくともDyおよびCaを含む第1のグループの金属ハロゲン化物と、In、Zn、HfおよびZrの少なくとも1種を含む第2のグループの金属ハロゲン化物との成分を所定量有するとともに水銀を含まないメタルハライドランプにおいて、アークの安定性を改善し、光効率を上昇させるために、Csの金属ハロゲン化物を所定量添加することが知られている(特許文献2参照。)。
特開平11−238488号公報
特開2001−76670号公報
ところが、水銀を封入しないメタルハライドランプ(以下、便宜上「水銀フリーランプ」という。)においては、水銀を封入したランプ(以下、便宜上「水銀入りランプ」という。)におけるような水銀による放射光を水銀原子が自己吸収することによりアークを太くする効果が得られない。このため、どうしてもアークが細く、自動車前照灯用メタルハライドランプの場合のように水平点灯する場合、アークが上方に湾曲するために、熱が放電空間の上部に集中する傾向がある。
また、水銀フリーランプは、点灯直後の光束立ち上がりが遅くなるので、これを早めるためにXe封入圧を高圧にする必要がある。したがって、点灯時の放電空間内の圧力が非常に高くなる。
加えて、水銀に代わってランプ電圧を形成するために、水銀フリーランプに第2のハロゲン化物を封入する場合には、これらのハロゲン化物によって気密容器の構成材料である石英ガラスがエッチングされてしまい、点灯時間が長くなると、温度の高くなる気密容器の上部の肉厚が小さくなる傾向がある。
また、水銀フリーランプは、水銀入りランプと比較してアークが浮きやすく、石英ガラス製の気密容器の上部がより一層高熱になる。
以上の結果として、水銀フリーランプにおいて、放電空間の熱量が50W/cm2以上になると、気密容器の内表面温度が非常に高温になり、また長時間、例えば2000時間を超えて点灯することでエッチングにより気密容器の上面が肉薄になっているために、石英ガラス製の気密容器の上部が膨らみやすくなる。そして、その膨らみが顕著になると、外管の内面に接触するなどにより気密容器が破裂するに至ることがある。
また、希ガス圧力を8気圧以上にすることにより、点灯直後の光束を所定値に保持することが可能になるが、このように希ガス圧力が高くなると、放電のアークが一層細くなってアークが気密容器の壁面に接近する。このため、気密容器の膨らみの問題が一層顕著になる。
さらに、本発明者の研究の結果、Csハロゲン化物を封入することによってアークが太くなるものの、その封入量が多いと発光効率が低下する傾向があり、そのために所要量の光束が得られなくなるという問題があることが分かった。
これに対して、特許文献1および2のいずれにおいても、Csのハロゲン化物を封入しているものの、気密容器の膨らみの問題および発光効率低下の問題を解決するための手段ないし示唆は見当たらない。
本発明は、水銀を封入しないで、適量範囲のCsハロゲン化物を封入することで長時間点灯時に生じやすい石英ガラス製の気密容器の膨らみを抑制するとともに、発光効率を比較的高い値に維持する特に自動車前照灯用に好適なメタルハライドランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明のメタルハライドランプは、石英ガラス製の気密容器と;気密容器の内部に離間対向して封装された一対の電極と;Na、Scおよび希土類金属のグループから選択された少なくとも1種の金属のハロゲン化物、気密容器の単位内容積当たり0.001〜0.015mg/mm3のCsハロゲン化物および希ガスを含む放電媒体と;を具備し、安定点灯時の管壁負荷が50W/cm2以上であるとともに気密容器の内部圧力が50気圧以上になることを特徴としている。
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
<気密容器について> 気密容器は、石英ガラス製である。石英ガラス製の気密容器は、直線透過率が高いので、自動車前照灯用など高い集光効率が要求されるメタルハライドランプには好適である。なお、必要に応じて、石英ガラス製の気密容器の内面に耐ハロゲン性または耐ハロゲン化物性の透明性被膜を形成するか、気密容器の内面を改質することが許容される。
また、気密容器は、その内部に適当な内容積の放電空間が形成されている。放電空間は、自動車前照灯用のように小形のメタルハライドランプの場合は、内容積0.1cc以下(好ましくは0.05cc以下)で、内径1.5〜3.5mmのほぼ円柱状をなすとともに、軸方向に5〜9mmの長さを有する細長い形状をなしている。これにより、アークが水平点灯においては上方へ湾曲しようとするために、気密容器の上側の内面に接近するので、気密容器の上部の温度上昇が早くなる。
さらに、放電空間を包囲する部分の肉厚を比較的大きくすることができる。すなわち、電極間距離のほぼ中央部の肉厚をその両側の肉厚より大きくすることができる。これにより、気密容器の伝熱が良好になって気密容器の放電空間の下部および側部内面に付着している放電媒体の温度上昇が早まるために、光束立ち上がりが早くなる。
さらにまた、後述する電極を気密容器の内部に封装するために、気密容器の内部に形成される放電空間の軸方向の両端に棒状をなした一対の封止部を一体に形成して備えることができる。そして、この一対の封止部内に好適には減圧封止法により、または減圧封止法およびピンチシール法の併用により埋設される封着金属箔を介して電極と外部導入線とを接続することで、電極に電流を供給することができるとともに、包囲部をチップレスにして配光特性が排気チップ部により乱れるのを回避できる。
<一対の電極について> 一対の電極は、適当な電極間距離になるように離間対向して気密容器の内部に封装される。自動車前照灯用のメタルハライドランプの場合、電極間距離は、5mm以下、好適には4.2±0.1mmになるように設定される。また、電極は、その直径が長手方向に沿ってほぼ同一の直棒状をなした軸部を備えている。そして、軸部の直径は、自動車前照灯用のメタルハライドランプの場合、一般的には0.25〜0.45mm、好ましくは0.3〜0.4mmであり、軸部から直径が大きくなることなしに先端部に至り、かつ、先端部に平坦な端面を形成するか、アークの起点となる先端部が曲面を形成している。あるいは、軸部の先端部に軸部より径大の球状類似部分を形成することができる。なお、電極の軸部から直径が大きくなることなしに先端部に至り、かつ、アークの起点となる先端部に曲面を形成する場合、当該曲面は、ほぼ球形の一部を構成するような曲面であり、その半径が軸部の直径の1/2以下にすることにより、アークの起点の不所望な移動を抑制して、明るさのちらつきが生じるのを低減できる。なお、「電極のアークの起点となる先端部」とは、電極の先端側において、アークの起点となる部位を意味し、必ずしも電極の幾何学的な先端の全体を示すものではない。すなわち、電極の先端側であって、アークの起点になる部位が電極の軸部の直径に対して1/2以下の半径を有する曲面を形成していればよい。しかし、電極のアークの起点となる先端部の曲面は、好適にはその半径が軸部の半径の40%以上である。
また、電極の気密容器内への突出長は、軸径とともに電極温度に影響するが、自動車前照灯用のメタルハライドランプの場合、小形のメタルハライドランプにおける通例にしたがえばよく、したがってたとえば1.4±0.1mm程度に設定することができる。さらに、電極は、交流および直流のいずれで作動するように構成してもよい。交流で作動する場合、一対の電極は同一構造とする。直流で作動する場合、一般に陽極は温度上昇が激しいから、陰極より軸径を大きくして放熱面積を大きくすることができるとともに、頻繁な点滅に対応することができる。
さらに、電極は、タングステン、ドープドタングステン、レニウムまたはレニウム−タングステン合金などにより構成することができる。また、電極を気密容器に封装する構造として、気密容器の一対の封止部に電極の中間部および基端部を埋設させて支持することができる。なお、電極の基端部は、封止部に気密に埋設されたMoなどからなる封着金属箔に溶接などの手段によって接続される。
<放電媒体について> 放電媒体は、Na、Scおよび希土類金属のグループから選択された少なくとも1種の金属ハロゲン化物、気密容器の単位内容積当たり0.001〜0.015mg/mm3のCsハロゲン化物および25℃で8気圧以上の希ガスを含み、水銀を本質的に含まない。また、所望により後述するように第2のハロゲン化物を封入することができる。
Na、Scおよび希土類金属のグループから選択された少なくとも1種の金属ハロゲン化物を第1のハロゲン化物と称すれば、第1のハロゲン化物は、主として発光金属のハロゲン化物である。これらの発光金属は、白色光を発光する。第1のハロゲン化物の好ましい選択例は、ScおよびNaのハロゲン化物であり、これらの金属は、白色光を効率よく発光する金属として知られている。しかし、上記金属のハロゲン化物に加えるかまたは代えて、例えばDyなどの希土類金属を所望により選択することができる。
Csハロゲン化物は、気密容器の単位内容積当たり0.001〜0.015mg/mm3封入される。この封入量範囲内であれば、気密容器の膨らみ抑制の効果が得られるとともに、比較的高い発光効率を維持することができる。なお、好適には0.001〜0.013mg/mm3である。しかし、封入量が0.001mg/mm3未満であると、気密容器の膨らみ抑制の効果が十分に得られない。反対に、0.015mg/mm3を超えて封入されると、発光効率が低下してしまい、実用的でなくなる。
第2のハロゲン化物は、主として水銀に代わるランプ電圧形成用媒体として用いられ、例えばIn、Zn、Mg、Co、Cr、Mn、Sb、Re、Ga、Sn、Fe、Al、Ti、ZrおよびHfのグループから選択された一種または複数種の金属のハロゲン化物を用いることができる。上記のグループの金属は、蒸気圧が高くて可視域に発光しないか、または発光が比較的少ない金属すなわち光束を稼ぐ発光金属としては期待されないが、主としてランプ電圧を形成するのに好適な金属である。また、上記のグループの中で、InおよびZnのハロゲン化物は、ランプ電圧形成媒体であるとともに、同時に青色系の発光を行うので、第1の金属ハロゲン化物を構成する主発光物質の白色発光の色度を補正する作用がある。なお、Inのハロゲン化物として具体的には、InI、InI3およびInBrが考えられる。そして、これらのいずれを用いてもよい。
そうして、第2のハロゲン化物を用いることにより、小形のメタルハライドランプにおいて、水銀を用いることなしに25〜70V程度のランプ電圧を得ることができる。このため、比較的少ないランプ電流で所要のランプ電力を投入することが可能になる。
次に、ハロゲン化物を構成するハロゲンについて説明する。すなわち、反応性については、ヨウ素が最も適当であり、少なくとも上記主発光金属は、主としてヨウ化物として封入される。しかし、要すれば、ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することができる。
希ガスは、25℃で8気圧以上、好ましくは9〜16気圧の範囲で封入されて始動ガスおよび緩衝ガスとして作用する。希ガスとしては、Ar、KrおよびXeなどの一種または複数種を用いることができる。また、自動車前照灯用のメタルハライドランプとしては、Xeを封入することにより、点灯直後の発光金属の蒸気圧が低いときに、立ち上がり時にXeの白色発光を所定光束として寄与させることができる。
さらに、水銀について言及しておく。本発明において、「本質的に水銀を含まない」とは、水銀を全く封入していないだけでなく、気密容器の内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容するという意味である。しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプのランプ電圧を所要に高くする場合、短アーク形においては気密容器の内容積1cm3当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、水銀量が実質的に頗る少ないといえる。
<放電空間の熱量について> 放電空間の熱量は、気密容器の内部に形成される放電空間に発生する熱量を意味するが、本発明においては、気密容器の単位内表面積(1cm2)当たりの投入ランプ電力すなわち管壁負荷をいう。そして、放電空間の熱量は、50W/cm2以上、好ましくは60W/cm2以上、100W/cm2以下である。この値は、前述のように気密容器の温度が高くなって膨れを生じる虞のあることを意味する。自動車前照灯用で水銀フリーランプの場合、放電空間の熱量は、50〜100W/cm2程度の範囲になるように構成される。
なお、投入するランプ電力は、自動車前照灯用のような小形のメタルハライドランプの場合、安定時に60W以下である。
<本発明の作用について> 本発明においては、上記の構成の中で0.001〜0.0015mg/mm3のCsハロゲン化物が封入されていることにより、アークが太くなるとともに浮きにくくなり、その結果気密容器の上部の温度上昇が低下して、長時間の点灯においても気密容器の膨らみ発生が抑制されることが分かった。また、上記の封入範囲内であれば、発光効率の低下が少なくて、実用上問題にならない程度になる。なお、アークの太さは、アークを光学系を用いて投射して、その最大輝度の20%の位置を輝度計で測定することにより計測することができる。
<本発明のその他の構成について> 本発明においては、必須構成要件ではないが、以下に示す構成を選択的に付加することにより、メタルハライドランプの性能が向上したり、機能が増加したりする。
1.(外管について) 外管は、その内部に気密容器を収納する。外管により、気密容器から外部へ放射される紫外線を遮断したり、気密容器を保温したり、機械的に保護したり、さらには配光特性を所要に整えるために所定形状の遮光膜を配設する場合に外管の表面に遮光膜を形成したりすることができる。また、外管の内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止してもよいし、外気と同程度または減圧された空気または不活性ガスが封入されていてもよい。さらに、要すれば、外気に連通していてもよい。
2.(口金について) 口金は、メタルハライドランプを点灯回路に接続したり、加えて灯器に機械的に支持したりするのに機能する。
3.(イグナイタについて) イグナイタは、高電圧パルス電圧を発生し、これをメタルハライドランプに印加して、その始動を促進する手段であり、口金の内部に収納するなどにより、メタルハライドランプと一体化することもできる。
4.(始動補助導体について) 始動補助導体は、電極近傍における電界強度を高くして、メタルハライドランプの始動を支援する手段であり、所要によりその一端を他方の電極と同電位個所に接続し、他端を一方の電極近傍における放電容器の外面に配設する。
請求項2の発明の照明装置は、照明装置本体と;照明装置本体に配設された請求項1記載のメタルハライドランプと;メタルハライドランプを点灯する点灯装置と;を具備していることを特徴としている。
本発明において、「照明装置」とは、メタルハライドランプを光源とする装置の全てを含む広い概念であり、例えば自動車前照灯、照明器具、信号灯、標識灯、光ファイバー照明装置、光化学反応装置などである。なお、「照明装置本体」とは、照明装置からメタルハライドランプおよび点灯回路を除いた残余の全ての部分を意味する。
点灯回路は、メタルハライドランプを点灯する手段であり、電子化されたものが好適であるが、要すればコイルおよび鉄心を主体とするものであってもよい。また、自動車前照灯用の点灯回路の場合、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍、好適には2.5〜4倍とすることにより、光束立ち上がりを自動車前照灯用として必要な範囲内に入るように早くすることができる。なお、希ガスとしてのXeの封入圧を5〜15気圧の範囲でX(気圧)とし、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力をAA(W)としたとき、AAが下式を満足するように構成することにより、点灯直後4秒までの光束立ち上がりを早めて自動車用前照灯に必要な前照灯前面の代表点での光度8000cdを得ることができる。
AA>−2.5X+102.5
上記のようにXe封入圧と最高入力電力とが直線的な関係になるのは、蒸気圧の低い放電媒体のみであるから、始動後4秒後の時点ではキセノンの発光が圧倒的になっているからである。Xeの発光量は、Xeの封入圧とその時の電力とで決まるので、Xe圧が低ければ、入力電力を多くすればよい。反対に、Xe圧が高ければ、入力電力を少なくすればよい。なお、本発明において、メタルハライドランプの点灯は、交流点灯および直流点灯のいずれであってもよい。
また、点灯回路は、所要により無負荷出力電圧を200V以下に構成することができる。水銀フリーランプは、一般に水銀入りランプに比較して、ランプ電圧が低いので、点灯回路の無負荷出力電圧を200V以下にすることができる。これにより、点灯回路の小形化が可能になる。なお、水銀入りのメタルハライドランプおいては、400V程度の無負荷出力電圧を必要としている。
上記のようにXe封入圧と最高入力電力とが直線的な関係になるのは、蒸気圧の低い放電媒体のみであるから、始動後4秒後の時点ではキセノンの発光が圧倒的になっているからである。Xeの発光量は、Xeの封入圧とその時の電力とで決まるので、Xe圧が低ければ、入力電力を多くすればよい。反対に、Xe圧が高ければ、入力電力を少なくすればよい。なお、本発明において、メタルハライドランプの点灯は、交流点灯および直流点灯のいずれであってもよい。
また、点灯回路は、所要により無負荷出力電圧を200V以下に構成することができる。水銀フリーランプは、一般に水銀入りランプに比較して、ランプ電圧が低いので、点灯回路の無負荷出力電圧を200V以下にすることができる。これにより、点灯回路の小形化が可能になる。なお、水銀入りのメタルハライドランプおいては、400V程度の無負荷出力電圧を必要としている。
請求項1の発明によれば、放電媒体がNa、Scおよび希土類金属のグループから選択された少なくとも1種の金属のハロゲン化物、気密容器の単位内容積当たり0.001〜0.015mg/mm3のCsハロゲン化物および25℃において8気圧以上の希ガスを含むことにより、長時間点灯時に生じやすい石英ガラス製の気密容器の膨らみを抑制するとともに、発光効率を比較的高い値に維持する特に自動車前照灯用として好適なメタルハライドランプを提供することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1の効果を有する照明装置を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
図1および図2は、本発明のメタルハライドランプを実施するための一形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示し、図1は正面図、図2は要部拡大平面図である。図において、ITは放電容器すなわち発光管、2、2は一対の封着金属箔、3A、3Bは一対の電流導入導体、OTは外管、Tは絶縁チューブ、Bは口金である。
放電容器ITは、気密容器1および一対の電極1b、1bからなる。気密容器1は、外形が紡錘形状に成形された中空の包囲部1a、一対の封止部1a1および封止管1a2を備えている。包囲部1aは、その内部に細長いほぼ円柱状の放電空間1cを有している。左右一対の封止部1a1は、細長くて包囲部1aの管軸方向の両端からそれぞれ管軸方向に延在している。封止管1a2は、図1において左方の封止部1a1と一体に形成されていて、口金B内へ進入している。
一対の電極1b、1bは、それぞれの基端部が封止部1a1に埋設された後述する封着金属箔2の一端部にレーザ溶接されるとともに、中間部の一部が封止部1a1に埋設されて緩く支持されることによって所定の位置に配設されて、先端部および中間部の残余部が放電空間1c内へ両端から離間対向して突出している。
一対の封着金属箔2、2は、モリブデン箔からなり、気密容器1の封止部1a1内に気密に埋設されている。
一対の電流導入導体3A、3Bは、その先端が気密容器1の両端の封止部1a1内において封着金属箔2の他端部に溶接され、その基端側が封止部1a1の外部へ導出されている。図において、放電容器ITから右方へ導出された電流導入導体3Bは、その中間部が後述する外管OTに沿って折り返され、さらに後述する口金B内に導入されて、一方の口金端子5に接続している。図1において、放電容器ITからその管軸に沿って左方へ導出された電流導入導体3Aは、管軸に沿って延在して口金B内に導入されて図示されない他方の口金端子に接続している。
気密容器1a内には、放電媒体として第1および第2のハロゲン化物、Csハロゲン化物ならびに希ガスからなる放電媒体が封入されている。第1のハロゲン化物は、Scのハロゲン化物およびNaのハロゲン化物からなる。また、第2のハロゲン化物は、Znのハロゲン化物からなる。Csハロゲン化物は、気密容器の単位内容積当たり0.001〜0.0015mg/mm3が封入されている。希ガスは、Xeが25℃で8気圧以上封入されている。
外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に放電容器ITを収納していて、先端側の縮径部6が放電容器ITの封止部1a1の図に示す位置にガラス溶着している。また、他方の縮径部(図示しない。)は、封止管1a2にガラス溶着して支持されている。しかし、外管OTの内部は気密ではなく、外気に連通している。
絶縁チューブTは、電流導入導体3Bを被覆している。
口金Bは、自動車前照灯用として規格化されているもので、放電容器ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面に着脱可能に装着されるように構成されている。また、口金Bは、その前面から管軸方向に突出して外管OTの基端部を包持する支持バンド4を備えている。
図1および図2に示す一形態において、以下のとおりである。
放電容器IT
気密容器1a:石英ガラス製、包囲部最大内径2.4mm、最大外径6.0mm
放電空間最大球体長7.0mm、内容積0.025cc
電極 :電極間距離4.2mm、軸径0.35mm
放電媒体
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.8mg、CsI0.2mg
キセノンXe:10気圧
外管OT :外径9mm、内径7mm、内部雰囲気;大気圧(大気)
安定時ランプ電圧:38V
安定時ランプ電力:35W
気密容器の熱量 :80W/cm2
なお、上記において、「放電空間最大球体長」とは、図2において、包囲部1aと封止部1a1および1a2との間に形成された一対の縮径部1a3、1a3の間の距離をいう。
気密容器1a:石英ガラス製、包囲部最大内径2.4mm、最大外径6.0mm
放電空間最大球体長7.0mm、内容積0.025cc
電極 :電極間距離4.2mm、軸径0.35mm
放電媒体
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.8mg、CsI0.2mg
キセノンXe:10気圧
外管OT :外径9mm、内径7mm、内部雰囲気;大気圧(大気)
安定時ランプ電圧:38V
安定時ランプ電力:35W
気密容器の熱量 :80W/cm2
なお、上記において、「放電空間最大球体長」とは、図2において、包囲部1aと封止部1a1および1a2との間に形成された一対の縮径部1a3、1a3の間の距離をいう。
上記実施例のメタルハライドランプについてEUモード点灯を行った結果、寿命経過時間2000時間経過以降で生じていた気密容器の膨らみがなくなった。なお、EUモード点灯は、自動車前照灯用のHIDランプについての規格(IECおよびJEL)に規定されている。
図3および図4は、本発明の照明装置の一実施形態としての自動車前照灯を示し、図3は背面方向から見た斜視図、図4は点灯回路の回路図である。図4において、自動車用前照灯HLは、自動車用前照灯本体21、メタルハライドランプHPDLおよび2つの点灯回路OCにより構成されている。
自動車用前照灯本体21は、前面透過パネル21a、リフレクタ21b、21c、ランプソケット21dおよび取付部21eなどから構成されている。前面レンズ21aは、自動車の外面と合わせた形状をなし、所要の光学的手段たとえばプリズムを備えている。リフレクタ21b、21cは、各メタルハライドランプHPDLに配設されていて、それぞれに要求される配光特性を得るように構成されている。ランプソケット21dは、点灯回路OCの出力端に接続し、メタルハライドランプHPDLの口金21dに装着される。取付部21eは、自動車用前照灯本体21を自動車の所定の位置に取り付けるための手段である。
メタルハライドランプHPDLは、図1ないし図3に示す構造を備えている。ランプソケット21dは、口金に装着されて接続する。そうして、2灯のメタルハライドランプKPDLが自動車用前照灯本体21に装着されて、4灯式の自動車用前照灯が構成される。各メタルハライドランプHPDLの発光部は、自動車用前照灯体21のリフレクタ21b、21cの焦点にほぼ位置する。
2つの点灯回路OLは、それぞれ後述する回路構成を備えていて、金属製容器22内に収納されているとともに、メタルハライドランプHPDLを付勢して点灯させる。
点灯回路OLは、図9に示すように、直流電源11、チョッパ12、制御手段13、ランプ電流検出手段14、ランプ電圧検出手段15、イグナイタ16、メタルハライドランプHPDL、フルブリッジインバータ17により構成されていて、メタルハライドランプHPDLを点灯直後に直流点灯し、その後交流点灯する。
直流電源11は、後述するチョッパ12に対して直流電源を供給する手段であって、バッテリーまたは整流化直流電源が用いられる。自動車の場合には、一般的にバッテリーが用いられる。しかし、交流を整流する整流化直流電源であってもよい。必要に応じて電解コンデンサ11aを並列接続して平滑化を行う。
チョッパ12は、直流電圧を所要値の直流電圧に変換するDC−DC変換回路であって、後述するフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLを所要に制御する。直流電源電圧が低い場合には、昇圧チョッパを用い、反対に高い場合には降圧チョッパを用いる。
制御手段13は、チョッパ12を制御する。例えば、点灯直後にはメタルハライドランプHPDLに定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をチョッパ22からフルブリッジインバータ17を経由して流し、その後時間の経過とともに徐々にランプ電流を絞っていき、やがて定格ランプ電流にするように制御する。また、制御手段13は、ランプ電流とランプ電圧と相当するそれぞれの検出信号が後述するように帰還入力されることにより、定電力制御信号を発生して、チョッパ22を定電力制御する。さらに、制御手段13は、時間的な制御パターンが予め組み込まれたマイコンが内蔵されていて、点灯直後には定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をメタルハライドランプHPDLに流し、時間の経過とともにランプ電流を絞るようにチョッパ12を制御するように構成されている。
ランプ電流検出手段14は、フルブリッジインバータ17を介してランプと直列に挿入されていて、ランプ電流に相当する電流を検出して制御手段13に制御入力する。
ランプ電圧検出手段15は、同様にフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLと並列的に接続されていて、ランプ電圧に相当する電圧を検出して制御手段23に制御入力する。
イグナイタ16は、フルブリッジインバータ17とメタルハライドランプHPDLとの間に介在していて、始動時に約20kV程度の始動パルス電圧をメタルハライドランプHPDLに供給できるように構成されている。
フルブリッジインバータ17は、4つのMOSFETQ1、Q2、Q3およびQ4からなるブリッジ回路、ブリッジ回路17aのMOSFETQ1およびQ3と、Q2およびQ4とを交互にスイッチングさせるゲートドライブ回路28bおよび極性反転回路INVから構成されていて、チョッパ12からの直流電圧を上記スイッチングにより矩形波の低周波交流電圧に変換して、メタルハライドランプHPDLに印加して、メタルハライドランプHPDLを低周波交流点灯させる。なお、点灯直後の直流点灯時には、ブリッジ回路17aの例えばMOSFETQ1およびQ3を継続的にオンさせ、Q2およびQ4をオフさせる。
そうして、点灯回路OCを用いてメタルハライドランプHPDLを最初直流点灯し、その後矩形波の低周波交流で点灯すると、点灯直後から所要の光束を発生する。これにより、自動車用ヘッドライトとして必要な電源投入後1秒後に定格に対して光束25%、4秒後に光束80%の点灯を実現することができる。
1…気密容器、1a…包囲部、1a1…封止部、1a2…封止管部、1c…放電空間、2…封着金属箔、1b…電極、3A、3B…電流導入導体、B…口金、IT…放電容器、OT…外管、T…絶縁チューブ
Claims (2)
- 石英ガラス製の気密容器と;
気密容器の内部に離間対向して封装された一対の電極と;
Na、Scおよび希土類金属のグループから選択された少なくとも1種の金属のハロゲン化物、気密容器の単位内容積当たり0.001〜0.015mg/mm3のCsハロゲン化物および希ガスを含む放電媒体と;
を具備し、安定点灯時の放電空間の熱量が50W/cm2以上であることを特徴とするメタルハライドランプ。 - 照明装置本体と;
照明装置本体に配設された請求項1記載のメタルハライドランプと;
メタルハライドランプを点灯する点灯装置と;
を具備していることを特徴とする照明装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003331434A JP2005100743A (ja) | 2003-09-24 | 2003-09-24 | メタルハライドランプおよび照明装置 |
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JP2003331434A JP2005100743A (ja) | 2003-09-24 | 2003-09-24 | メタルハライドランプおよび照明装置 |
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ID=34460105
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JP2003331434A Withdrawn JP2005100743A (ja) | 2003-09-24 | 2003-09-24 | メタルハライドランプおよび照明装置 |
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-
2003
- 2003-09-24 JP JP2003331434A patent/JP2005100743A/ja not_active Withdrawn
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