JP2005097530A - 蓄熱材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1種以上の金属元素と、ヘテロ元素を含む1種以上の有機配位子とで構成される配位高分子と、水及び/又は水酸基含有有機化合物とから形成される分子化合物を含む蓄熱材。配位高分子は、多孔性構造とすることができ、細孔内に他の化合物を充填して分子化合物を形成することが可能である。この分子化合物の中で、フレームワークを形成する配位高分子とフレームワークの細孔に取り込まれた化合物とは非共有結合を介して結合しており、大きなエネルギーを与えると各構成分子に解離し、エネルギーを除去すると再び分子化合物を形成する。この可逆的に進行する分子化合物の形成と解離の際に吸収、放出される非共有結合をエネルギーを蓄熱材の蓄熱、放熱に利用する。
【選択図】 図1
Description
即ち、一般に塩は常温で固体であるが、最近になって、常温で液体となる系が見出され、この常温溶融塩はイオン性液体と呼ばれている。イオン性液体は揮発性がなく、導電性を有することから、環境汚染の懸念が少ない有機合成の溶媒や電気化学電池の電解液として注目されている(例えば、特開2002−187893号公報)。
また、化学反応による蓄熱や増熱の検討も行われてきた。
(1) 冷蔵用途の−30〜0℃
(2) 冷房空調用途の0〜15℃
(3) 住宅の省エネルギー、快適用途の15〜30℃
(4) 暖房空調、廃熱回収用途の30〜100℃
(5) 廃熱回収用途の100〜200℃
がある。
従来の蓄熱材の最大の問題点は、融点などの熱利用温度が物質固有であり、これ以上新規化合物を見出すことが殆ど不可能な点にある。これに対して、吸着剤はワーキングペアとして吸着剤と吸着質との組み合わせを選択することにより、この温度範囲を広げる可能性もあるが、いずれも選択の幅が狭く、組み合わせは限られているために開発の余地は狭い。
誘導体等が知られているに過ぎない。また、その特殊な分子設計のために非常に高価であり、実用に使用するには多くの問題がある。
配位高分子は、金属元素と有機配位子の反応により得られる高分子で、その主鎖の繰り返し単位が配位結合によって結合しているものをいう(「理化学事典 第4版」、久保、長倉、井口、江沢編集、岩波書店、1987)。配位高分子に関する歴史は比較的浅く、1960年初頭にこの用語が用いられ始めたが、実質的に新しい物質群として注目され、1つの領域として認識されだしたのは、わずか10年ほど前であり、メタンの吸蔵、イオン交換、不均一触媒等の分野で研究が進められてきた(「集積型金属錯体の化学」、大川、伊藤編、化学同人、2003年:第15章「配位高分子によるナノ空間の機能化学」北川、北浦著)。
即ち、本発明者らは、金属元素と有機化合物との錯体形成現象に注目して鋭意検討した結果、金属元素と、ヘテロ元素を含む有機配位子との組み合わせにより多様な配位高分子が形成されること、このような配位高分子を蓄熱材として適用することにより広範な蓄熱温度を達成可能であることを見出し、これにより特に開発が望まれており、且つ、従来において有望な蓄熱材が提供されていない50〜100℃を含む幅広い温度範囲で利用可能な蓄熱材を開発し、本発明に到達した。
物が単独では実現できない高性能の蓄熱材の開発を目指して、配位高分子を蓄熱材として適用するものである。配位高分子は、有機化合物の優れた分子設計性と金属元素の多様性との両方の優れた特徴を併せ持ち、有機化合物や無機化合物の単独では達成不可能な空間、電子状態を実現できるので、従来にない高性能の蓄熱材の設計が可能となる。
あるが、水素結合、ファン・デル・ワールス力、電荷、双極子モーメント、イオン結合、空間的な位置関係などが相補的に作用するので、積算すれば大きなエネルギーになる。そして、この結合エネルギーより大きなエネルギーを分子化合物に与えると、各構成分子に解離し、エネルギーを除去すると再び分子化合物を形成する。即ち、分子化合物の形成と解離は可逆的に進行する。
このように、本発明は、配位高分子と相手分子との分子化合物における異種分子間の相互作用と、その可逆的な形成と解離に注目し、初めて配位高分子を蓄熱材として使用したものである。配位高分子と相手分子との分子化合物の形成と解離は可逆的であり、解離した分子は何回も繰り返し使用できるので、高蓄熱量の蓄熱材として使用できる。
まず、本発明における配位高分子について説明する。
配位高分子は、金属元素と有機配位子の反応により得られる高分子で、その主鎖の繰り返し単位が配位結合によって結合しているものをいう。
配位高分子を構成する金属元素としては有機配位子と錯体を形成し得る金属元素であれば特に制限はなく、s−ブロック、p−ブロックのNa、K、Rb、Cs、Li、Be、Mg、Al等も使用できるが、特にd−ブロック元素を使用することが好ましい。これは、配位高分子の形成には配位結合が重要な役割を担い、この配位結合の形成には、有機配位子が電子対を金属元素に供与し、この電子対を金属元素が受け入れるが、この電子対の受け入れにd軌道が適しているからである。
一方、有機配位子は非共有電子対を持つものが好ましく、配位高分子を形成させるには14族及び15族の元素を含んだ有機配位子が好ましい。特に、ヘテロ元素として、N、O、P、Sの1種又は2種以上を有する有機配位子が好ましい。
このようなヘテロ元素を有する有機配位子としては特に制限はないが、下記の化合物に由来するN、O、P、Sの1種又は2種以上を含有する構造を有するものが好ましい。
N含有構造としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、2−ピロリン、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、インドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、4H−キノリジン、プリン、1H−インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、フェナジン、インドリン、イソインドリン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラキス[(2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアゾ−6−イル)フェニル]メタン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(2−ピリジル)エタン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(2−ピリジル)グリコール、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジル)グリコール、テトラメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,4,6−トリ(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、2,2’−ビイミダゾールなどの含窒素芳香族複素環系化合物、ピロリジン、2−イミダゾリドン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、キヌクリジン、アジリジン、アゼピンなどの含窒素脂肪族環状化合物が挙げられる。
これらのうち、特にピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアジン、トリアゾール、テトラキス[(2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアゾ−6−イル)フェニル]メタン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(2−ピリジル)エタン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(2−ピリジル)グリコール、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジル)グリコール、テトラメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,4,6−トリ(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、2,2’−ビイミダゾール、フェナジン等が好ましい。
カルボン酸の場合、1分子中にあるカルボキシル基の数に応じて、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸などと総称されるが、勿論、カルボキシル基の数には何ら限定されるものではなく、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸等のポ
リカルボン酸を用いても良い。カルボン酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ゼライン酸、セバシン酸、アクリル酸、プロピオル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸、エライジン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ショウノウ酸などの飽和または不飽和脂肪族のカルボン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、メリット酸、ナフトエ酸、トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、ケイ皮酸、フル酸、テン酸などの芳香族炭化水素または複素環化合物のカルボン酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸などの水酸基含有の飽和または不飽和脂肪族のカルボン酸、トロパ酸、ベンジル酸、サリチル酸、アニス酸、バニリン酸、ベラトル酸、ピペロニル酸、プロトカテキュ酸、没食子酸などの水酸基含有芳香族炭化水素系カルボン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、メソシュウ酸、オキサル酢酸、レブリン酸などのカルボニル基含有カルボン酸等が挙げられる。
オキソ化合物類としては、特に制限はないが、ベンゾキノン、スクエア酸、クロコン酸、ロジゾン酸等が挙げられる。
水酸基含有化合物類としては特に制限はないが、フェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログリシノール、チモール、カルバクロール、スチフニン酸、2−ナフトール、2−フェナントロール、1,2,4−ベンゼントリオール、p−ターフェニル−2’−オール、ヒドロキノン、9,10−ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)アントラセン、ビスフェノールA等のフェノール類が挙げられる。
ロキノン、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキノン、9,10−ビス(3,
5−ジヒドロキシフェニル)アントラセン、ビスフェノールA等である。
また、他のO含有構造としては特に制限はないが、ベンゾキノン、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキシレン、オキセテン、2,3−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフラン、2H−ピラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサインダン、4H−クロメン、クロマン、イソクロマン等も挙げられる。
P含有構造として、特に制限はないが、ホスファベンゼン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、リン酸及びリン酸エステル類、亜リン酸及び亜リン酸エステル類、次亜リン酸及び次亜リン酸エステル類等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいのは、トリフェニルホスフィン、リン酸、リン酸エステル類等である。
、2,3−ピラジンジカルボン酸等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいのは、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、モルホリン、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリンアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2,3−ピラジンジカルボン酸等である。
好ましいヘテロ原子はN及びOである。又、特に好ましい有機配位子は、カルボキシル基含有含N複素環系化合物、連結基によって2つ以上の含N複素環系化合物が連結された構造を有する化合物である。尚、連結される含N複素環系化合物は好ましくは4つ以下である。
本発明に係る配位高分子は、前述の金属元素を中心金属元素とし、この金属元素に上述の有機配位子分子が配位結合して錯体を形成したものであり、有機化合物と無機化合物の中間に位置し、これらの両方の特徴を兼備し、また、多孔性構造を形成し得る。この多孔性構造のフレームワークは安定で細孔内に多種多様な分子や化合物を取り込んで分子化合物を形成することが可能である。例えば、このような多孔性構造の配位高分子の合成では、配位高分子は多くの場合、反応溶媒等が細孔内に充填された安定構造として単離される。
相手分子としての水、水酸基含有有機化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
エネルギー量が小さいので好ましくなく、70重量%を超えると、分子化合物から相手分子である水及び/又は水酸基含有有機化合物を解離した後に、分子化合物の骨格構造を維持し得ず、不可逆な構造破壊が起こるので好ましくない。
なお、本発明に係る配位高分子の製造において、使用される金属元素と有機配位子の割合は、配位高分子によりそれぞれ異なり、また調製方法、調製条件により異なるので、特に制限されるものではない。
蓄熱材としての評価は、示差走査熱量測定による熱収支(吸熱又は放熱量)により行うことができ、蓄熱材として好ましいのは20J/g以上であり、より好ましくは100J/g以上、特に好ましいのは300J/g以上である。従って、本発明の蓄熱材は、このような熱収支を有することが好ましい。この熱収支の上限は特に限定はなく、高い程好ましいが、通常10,000J/g以下である。
図3はカプセル型蓄熱システムの説明図であり、(a)図はカプセルの斜視図、(b)図はカプセルの断面図、(c)図はシステムのフロー図である。
体、立方体、多面体、達磨形、亜鈴形、これらを組み合わせた形状など各種形状としうる。
カプセル1の殻部分の肉厚は、充分な強度を確保しうる範囲で薄い方が好ましい。合成樹脂製カプセルの場合、この肉厚は0.2〜5mm特に0.5〜3mm程度が好適である。
図4はアイスオンコイル型蓄熱システムの模式的な断面図である。蓄熱槽10内に伝熱チューブ11が配設されている。この伝熱チューブ11は、蓄熱槽10内に収納された配位高分子からなる分子化合物を含む収容物12と接している。
配位高分子からなる分子化合物が固体であり、解離すると液体あるいは固体あるいは液体と固体の混合物であれば、解離前後での蓄熱槽あるいは蓄熱カプセル内の圧力変化は小さく、従来の蓄熱材と同じように従来公知の各種蓄熱システムに使用することができる。
蓄熱槽20内に伝熱チューブ21が配設されている。この伝熱チューブ21は、蓄熱槽20内の分子化合物22に接している。この分子化合物22は、分子化合物を形成可能な配位高分子と他の化合物、即ち相手分子とからなる。この相手分子は、分子化合物から解離して気体となる。
この部屋は、例えばコンピューターサーバーの設置場所や電話交換所などであり、発熱源を有している。この部屋の温度が所定温度T℃(例えば50℃)以上となることを防止するために、解離温度t℃がT℃又はT℃よりも若干低い分子化合物22が用いられている。なお、T℃とt℃との差(T−t)は0〜50℃特に3〜40℃程度であることが好ましい。
深夜など部屋内の温度がT℃よりも低くなったときに、この凝縮した相手分子を蓄熱槽20に戻し、配位高分子と反応(吸着)させて配位高分子と相手分子とからなる分子化合物を形成させる。この際に発生する分子化合物形成熱(吸着熱)はファンコイル24を介して部屋内に放出される。
なお、このような用途に用いる本発明の蓄熱材料としての分子化合物を、配位高分子と相手分子とに解離するのに必要な温度は、分子化合物によって異なるが、30℃以上、好ましくは50℃、さらに好ましくは60℃以上である。
実施例1
[蓄熱材料(分子化合物)の調製]
硝酸銅(II)・三水和物0.3642g、イソニコチン酸0.1539g、及び水12.5gの混合物を180℃で24時間反応させた。反応液を濾過、風乾すると、緑色針状結晶0.2238gが得られた。
[XRD測定]
得られた分子化合物と配位高分子についてXRDを測定した。図1,2はCuとイソニコチン酸からなる配位高分子と水との分子化合物のXRD解析図であり、図2は水が除去された配位高分子のXRD解析図である。図2の配位高分子に水を吸着させると図1の分子化合物に戻る。
[示差走査熱量計測定]
得られた分子化合物の蓄熱材としての性能をDSC(示差走査熱量計)により評価した。装置としてはDSC220C(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、蓄熱材試料(分子化合物)5mg程度を開放アルミパンに秤量し、5℃/minの昇温速度で25〜200℃の範囲で測定した。吸熱ピークが表れた温度を解離温度とし、吸熱ピーク面積を蓄熱量とした。
3 熱源機
4,10,20 蓄熱槽
5 熱交換器
6 熱負荷
Claims (8)
- 1種以上の金属元素と、ヘテロ元素を含む1種以上の有機配位子とで構成される配位高分子を含むことを特徴とする蓄熱材。
- 請求項1において、前記金属元素がd−ブロック元素であることを特徴とする蓄熱材。
- 請求項2において、前記d−ブロック元素がCo、Cd、Cu、Fe、Ni、Ru、Zn及びRhよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄熱材。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ヘテロ元素がN、O、S、及びPよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄熱材。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記配位高分子と、水及び/又は水酸基含有有機化合物とから形成される分子化合物を含むことを特徴とする蓄熱材。
- 請求項5において、該分子化合物中の水及び/又は水酸基含有有機化合物の含有率が1〜70重量%であることを特徴とする蓄熱材。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、示差走査熱量測定による熱収支が20J/g以上であることを特徴とする蓄熱材。
- 請求項1ないし7のいずれか1項において、示差走査熱量測定による熱収支を含む温度範囲が−30〜+200℃の温度範囲にあることを特徴とする蓄熱材。
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