JP2005095085A - 豆乳由来の加工食品素材、及び当該加工食品素材の製造方法 - Google Patents

豆乳由来の加工食品素材、及び当該加工食品素材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、本発明は、栄養性、品質安定性に優れ、物性制御が可能な大豆由来加工食品素材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明の加工食品素材の製造方法は、豆乳を濃縮後、加熱処理することにより豆乳由来のゲルを作製することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、豆乳由来の加工食品素材の製造方法であって、特に、ゲル化させた豆乳由来の加工食品素材の製造方法に関する。
人は食品を口にする際、味・匂い・外観・食感など様々な感覚刺激情報を得ている。そしてそれらの情報を総合的に判断し、記憶として蓄積することで日々の食生活に役立てている。また、食品を選ぶにあたって判断材料が増えていることから、消費者のニーズは年々多様化し、生産者もそれに応えるべく様々なアイデアを起用し、常に新しい食品を提供している。特に近年では、新規な物性を付与することで消費者の感覚に訴える商品や、従来の加工食品に別の食品素材を添加することで、感覚だけではなく栄養面でのニーズをも同時に満足させるような商品が続々と市場に出回っている。
ところで、豆乳はわが国の伝統的な加工食品素材のうちの一つである。豆乳には良質のタンパク質をはじめとして、サポニン・レシチン・イソフラボンなどの生理活性物質が含まれており、また脂肪酸組成も優れている。しかし豆腐や湯葉に対して加工して食する場合が殆どであり、豆乳と同じくタンパク質を多く含む牛乳が様々な加工食品に利用されていることと比較すると、豆乳の利用範囲は限られている。
豆乳は、大別して生しぼり豆乳と、加熱しぼり豆乳とがある。生しぼり豆乳は丸大豆を一晩水で浸漬してから磨砕し、室温にて搾汁することにより得たものである。加熱しぼり豆乳は丸大豆を一晩水で浸漬してから、磨砕し、105℃にて搾汁することにより得たもので、湯葉や豆腐を加工するときに直接的な材料となる。
生しぼり豆乳は加熱処理を施していないことから、トリプシンインヒビターなどにより消化不良を起こす場合もある。また、におい物質ものこっているため特有の生臭みがある。このような理由から、従来では、生しぼり豆乳をそのまま使用することはなく、加熱処理した後、加熱しぼり豆乳と同様に湯葉や豆腐へと加工する。
一方、豆腐は、豆乳を凝固剤存在下にて加熱処理して、ゲル化させたものであるが、工程によって、絹ごし豆腐・木綿豆腐などに分類される。いずれの豆腐も根本的な物性は類似している。
食品の物性改変方法としては、塩析やpH変化・温度変化・圧力変化・酵素反応などの処理を施すことで食品中タンパク質を変性させる場合が多い。大豆もタンパク質を多く含むことから、タンパク質の変性によって物性を改変できると期待される。大豆タンパク質を素材とした新規物性発現の研究はすでにいくつか試みられている。
例えば、大豆タンパク質由来ペーストを冷蔵処理することでゲルを作製する方法が知られている(添田孝彦: New Food Industry, 42, 2, 1-8 (2000))。また、同じくペーストをトランスグルタミナーゼ(TGase)処理し、ゲル化させる方法が知られている(添田孝彦: New Food Industry, 38, 6, 65-71 (1996))。さらに、豆乳を凍結処理することでゲル化させる方法が知られている(Shimoyamada et. al. : J. Agric. Food Chem., 48,2775-2779 (2000))。これらのゲルのうち、温度変化を利用したゲル形成には疎水的相互作用・水素結合・ジスルフィド結合が関与すると考えられている。
添田孝彦: New Food Industry, 42, 2, 1-8 (2000)
添田孝彦: New Food Industry, 38, 6, 65-71 (1996)
Shimoyamada et. al. : J. Agric. Food Chem., 48,2775-2779 (2000)
しかしながら、前述の加熱しぼり豆乳、生しぼり豆乳は、共に、日持ちが悪く、速やかに使用される必要があるという欠点を有していた。
また、豆腐は、いずれも共通して離水が多く崩れやすいという欠点を有し、それゆえに、これらの豆腐をさらに調味料と共に加熱処理するか、あるいは圧搾したとしても、その物性には大きな変化はない。加えて、上述の従来の豆乳と同様に、日持ちが悪いという欠点を有する。
このように、豆乳・豆腐は栄養性が高い食品ではあるが、物性が単純な上に、もろさや保存性の悪さなど流通上の問題から、新規な摂取形態を開発するのは困難であると考えられてきた。
そこで、本発明は、栄養性、品質安定性に優れ、物性制御が可能な大豆由来加工食品素材、及び当該加工食品素材の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、発明者らは、大豆タンパク質の存在状態や表面構造の違い、そして水分の存在状態によりゲル特性が左右されることに着目し、物性発現の違いについて鋭意研究した結果、本発明の豆乳由来の加工食品素材、及び当該加工食品素材の製造方法を見出すに至った。
本発明の加工食品素材の製造方法は、豆乳を濃縮後、加熱処理することにより豆乳由来のゲルを作製することを特徴とする。
また、本発明の加工食品素材の製造方法の好ましい実施態様において、濃縮を固形分濃度(Bx)13〜75の範囲において行なうことを特徴とする。
また、本発明の加工食品素材の製造方法の好ましい実施態様において、濃縮後、添加物を添加して加熱処理することを特徴とする。
また、本発明の加工食品素材の製造方法の好ましい実施態様において、前記添加物が、油脂、粉末、酵素からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の加工食品素材の製造方法の好ましい実施態様において、油脂が、牛脂、ラード、バター、大豆油、ヌカ油、コーン油、オリーブ油、ショートニング、マーガリン、ジアシルグリセロール、粉末化油脂、レシチン、リゾレシチン、各種脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の加工食品素材の製造方法の好ましい実施態様において、酵素が、トランスグルタミナーゼ、及び/又はタンパク質ジスルフィドイソメラーゼであることを特徴とする。
また、本発明の加工食品素材の製造方法の好ましい実施態様において、粉末が、大豆微粉末、豆乳パウダー、凍結乾燥豆乳、ソヤファイブ、コラーゲン粉末、キチン粉末、セルロース粉末からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の加工食品素材の製造方法の好ましい実施態様において、豆乳の濃縮を、豆乳作製の段階において加水量を調節することにより、行なうことを特徴とする。
本発明によれば、栄養性、及び品質安定性の高い食品加工素材を提供し得るという有利な効果を奏する。
また、本発明によれば、加工過程において、豆乳が必然的に濃縮されるので、ひいては、栄養性が高められており、栄養価の高い食品の効率的摂取を提供できるという有利な効果を奏する。
また、本発明によれば、濃度制御や添加物により多様な物性を付与することで、種々の食感を有する新規加工食品素材を提供し得るという有利な効果を奏する。
また、本発明によれば、品質安定性が高く、容積も少なく、保形性がよいゲルを形成できることから、流通性が格段に優れているという有利な効果を奏する。
また、本発明の方法によれば、凝固剤を使用しなくても食品加工素材を得ることができるので、作業工程の簡略化が可能であり、成形加工も容易であるという有利な効果を奏する。
本発明の加工食品素材の製造方法においては、豆乳を濃縮後、加熱処理することにより豆乳由来のゲルを作製する。ここで、豆乳の濃縮条件については特に限定されない。濃縮方法に関しても、常法により特に限定されるものではない。例えば、タンパク質の変性を防ぐという観点から、20℃〜70℃、好ましくは35度〜45℃程度に保温したエバポレータなどを用いることができる。
なお、加熱しぼり豆乳は、豆乳作製時に既に恒温処理されており、タンパク質が濃縮時に更なる変形を受けるとは考えにくい。生しぼり豆乳のタンパク質の場合、濃縮前に未変性状態である。しかし、一般にタンパク質の変性には、70℃以上の温度が必要であるといわれており、今回のように40℃前後で数時間の濃縮操作を行なう場合、主たる大豆タンパク質は変性していないと考えられる。
また、油の酸化により濃縮後二次的な変性を受ける可能性も考えられるが、POV測定から濃縮豆乳や濃縮豆乳ゲルは酸化が進行しにくくなることが認められているので、そのような変性も起きないと考えられる。
また、濃縮を固形分濃度(Bx)13〜75の範囲で行なうことができる。係る範囲としたのは、適性な品質の確保、作業の利便性という観点からである。
さらに、本発明では、豆乳の濃縮を、豆乳作製の段階において加水量を調節することにより、行なうことができる。このような加水量を適宜低減させることにより、豆乳の作成時点において、予め濃度の高い豆乳を確保することができる。このような予め高濃度の豆乳を使用する場合には、高濃度の豆乳をそのまま次工程の加熱処理を施しもよい。このような高濃度豆乳であっても、容易にゲル化を達成することができるからである。
本発明では、このように濃縮後、添加物を添加して加熱処理することができる。このような添加物に関しても特に限定されず、例えば、油脂、粉末、酵素等を挙げることができる。これらの添加物からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
添加物について説明すると、まず、油脂は、動物性食用油脂と植物性食用油2分類される。油脂関連物質としてジアシルグリセロール、レシチン、リゾレシチン、各種脂肪酸などを挙げることができ、これらを添加することができる。
酵素は、トランスグルタミナーゼ、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼなど、タンパク質高次構造形成に関与する酵素の使用が可能である。
凝固剤としては、従来から豆腐作製に使用されているものが挙げられる。
粉末は、固形分濃度を上げるためと充填効果を目的とする場合とがある。固形分濃度を上げるため、豆乳パウダー、凍結乾燥豆乳、ソヤファイブなどを挙げることができる。充填効果とは、添加した粉末が原形をとどめたまま分散し、物性に影響を及ぼす場合を意味し、豆乳タンパク質との相互作用などは生じないことが前提となる。よって、具体例として、コラーゲン粉末、キチン粉末、セルロース粉末などを挙げることができる。
さらに、ゲル化剤の添加も考えられる。ゲル化剤にはタンパク質性と多糖類性とが考えられる。
まとめると以下のようになる。
油脂類として、牛脂、ラード、バター、大豆油、ヌカ油、コーン油、オリーブ油、ショートニング、マーガリン、ジアシルグリセロール、粉末化油脂、レシチン、リゾレシチン、各種脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。これらから、少なくとも1種を選択して使用することができる。
酵素として、トランスグルタミナーゼ、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼなどを挙げることができる。これらから少なくとも1種を使用して、添加物として使用することができる。
凝固剤として、にがりおよびそのうちの単一成分、グルコノデルタラクトンなどを挙げることができる。これらから少なくとも1種を使用して、添加物として使用することができる。
粉末類として、大豆微粉末、豆乳パウダー、凍結乾燥豆乳、ソヤファイブ、コラーゲン粉末、キチン粉末、セルロース粉末などを挙げることができる。これらから少なくとも1種を使用して、添加物として使用することができる。
ゲル化剤として、カードラン、ゼラチン、ガゼイン、寒天などを挙げることができる。これらから少なくとも1種を使用して、添加物として使用することができる。
また、ゲル物性の制御方法については、処理温度、時間、圧力、pHなどを変更することにより実行することが可能である。
処理温度、時間を調製する場合、ゲル化させるのに必要な処理温度、時間の条件を適宜変更するか、その後のゲルを熟成させる処理温度、時間の条件を変更することにより行なうことができる。また、加熱処理以外に、タンパク質は冷却処理によってもゲル化する例が知られており、このような常法を使用して、適宜冷蔵及び冷凍処理を施すことにより、物性を制御することができる。
また、圧力を利用する場合、高圧処理により食品タンパク質をゲル化させることが可能である。このような制御も、常法により行なうことができる。
さらにまた、pHを利用する場合、酸やアルカリによる食品タンパク質のゲル化が知られている。上記のほかに湯葉状に乾燥させたり、ゲル化前に濃縮物をペースト状で用いることが可能である。
上述のように製造された本発明の加工食品素材は、以下の点で、従来の豆腐、湯葉、ゲルなどとは異なる。
豆腐、湯葉と構造的違いは、後述するが、3次元グラフの結果(図1,2)から分かるように、濃縮豆乳ゲルは多様な物性を発現できることが特徴である。また、豆腐は凝固剤が存在しないとゲル化できないが、濃縮豆乳ゲルは加熱処理のみでゲル化が可能である。さらに豆腐は再現性よくゲル化させるのが困難であり、崩れやすく成型加工も不可能である点、本発明の加工食品素材とは異なる。
製造面では湯葉も大量生産が困難であることから本発明の製造方法とは異なる。代表的なタンパク質ゲルと比較すると、濃縮豆乳ゲルは卵白豆乳ゲルよりも弾力が大きく、魚肉すり身ゲルよりは柔らかく弾力が小さい。そして、一般的にゲルとしては動物タンパク質由来のゲルが多く、濃縮豆乳ゲルのように植物由来で生理機能物質を含んだゲルは希少である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
実施例1
加熱しぼり豆乳と生しぼり豆乳を、それぞれ、40℃保温下にてロータリーエバポレータを用いて濃縮する。このように調整した濃縮豆乳をケーシングに充填し、100℃10分で加熱処理し、ゲル化させる。濃縮豆乳に、各種添加物を付与したものも同様にゲル化させる。添加物によっては添加物自身の至適温度を踏まえて加熱処理を施す。ゲル物性については、圧縮回復試験測定法を用い、固さ・弾力・もろさを総合的に評価した。
品質安定性については、過酸化物価(POV)測定により脂質の酸化抑制効果を評価した。
加熱しぼり豆乳は、濃縮前の固形分濃度(Bx)は12〜14であるが、濃縮後は
Bx35付近まで濃縮可能である。添加物を付与しない状態でゲル化させると、豆腐に近いが、より固くもろさが少ない物性になる。その微細組織構造は繊維が緩やかに凝集した形態のものであり、少しの力で大きくひずむ性質を持つ。濃縮加熱しぼり豆乳に凝固剤を添加した後に加熱してもゲル化し、特にグルコノデルタラクトン(GDL)は添加量が多いほど固くもろい物性を発現する。濃縮豆乳に大豆微粉末(丸大豆を脱脂微粉末状にしたもの)を添加すると、固さ・もろさ・弾力性のすべてが上昇する。噴霧乾燥豆乳を添加すると、固さ・弾力性が上昇する。凍結乾燥豆乳を添加すると、固さが上昇する。トランスグルミナーゼを添加した場合、固さと弾力性が上昇し、かまぼこに近い物性を発現させることが可能である。脂肪酸・リン脂質の添加はもろさを減少させ、弾力性に影響を及ぼす。
一方、生しぼり豆乳は、濃縮前のBxは13〜15であるが、Bx75付近にまで濃縮可能であり、濃縮操作の時期により粘度の異なる濃縮物を得ることができる。また、濃縮加熱しぼり豆乳の場合を越えたゲルはチーズに近い物性を発現する。Bx70付近の微細構造は緻密で、濃縮加熱しぼり豆乳のゲルと比較して、ひずませるためにはより大きな力を必要とする。濃縮生しぼり豆乳に凝固剤を添加すると、もろさが上昇し、特にGDLは添加量が多いほど固くもろい物性を発現する。油脂類を添加すると、若干のもろさを増減させることができる。大豆微粉末を添加することで、固さと弾力性が上昇する。また、凍結乾燥豆乳を添加することで、固さと弾力性を上昇させることが可能である。
具体的には、以下のように行なった。
<豆乳の濃縮>
加熱しぼり豆乳・生しぼり豆乳の2種類を用いた。加熱しぼり豆乳とは、丸大豆を一晩水で浸漬した後磨砕して、おからが存在した状態で105℃に加熱、搾ったものを指す。生しぼり豆乳とは、磨砕後加熱処理を加えずに搾ったものを指す。加熱しぼり豆乳は豆腐の材料として使用可能である。これら2種類の豆乳をそれぞれ40℃に保温した状態でロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。
加熱しぼり豆乳の固形分濃度(Bx)は、濃縮前約13であったが、Bx30前後にまで濃縮することが可能であった。外観を比較すると、Bx13では液状であったが、Bx30ではマヨネーズ状に変化した。生しぼり豆乳のBxは、濃縮前約15であったが、濃縮操作により最大Bx76にまで濃縮することが可能であった。外観を比較すると、Bx15では液状であったが、Bx60ではとろみが出現し、Bx70を超えるとさらに粘稠に変化した。
2種類の豆乳とその濃縮物について粘弾性測定を行ったところ、Bx30の加熱しぼり濃縮豆乳は濃縮前に比べ粘度が大きく上昇した。Bx30の生しぼり濃縮豆乳では、粘度上昇は加熱しぼりの場合に比べわずかであった。Bx30の加熱しぼり濃縮豆乳は動的粘弾性測定をするとtanδが1付近で、マヨネーズに似たパターンを示した。Bx30の生しぼり濃縮豆乳は、tanδが1を上回り、牛乳の濃縮製品である練乳に似たパターンを示した。
<濃縮豆乳ゲルの物性制御>
濃縮操作により生じた濃縮豆乳を、ケーシングに充填し、加熱処理することで濃縮豆乳ゲルを作製した。加熱条件は100℃10分間を基本とした。濃縮豆乳ゲルは添加物を与えない無添加ゲルのほかに、各種添加物を含んだ添加物ゲルを作製した。添加物ゲルは、濃縮前・濃縮後のいずれかにおいて添加物を加えた後加熱処理することで作製した。添加物によっては、加熱条件を変えた。
濃縮豆乳ゲルの物性は、圧縮回復試験測定法を用いて評価した。圧縮回復試験から荷重変形曲線を得るとともに、それらの結果を因子分析に供した。因子分析結果から固さ・弾力・もろさを数値化し、サンプルの物性を3次元グラフ上に表示させた4,5)。この3次元グラフ上では、チーズ・カマボコ・魚肉ソーセージなどが食品別に特定の範囲に分布することが認められている6)。本研究では濃縮豆乳をゲル化させることにより、チーズ様物性に近づけることが可能か否か検討を行った。
図1は、加熱しぼりの濃縮豆乳ゲルの物性制御を示す。
<無添加ゲル>
濃縮豆乳を何も添加せずに加熱して作製したゲルは、保形性がよく、離水も少なかった。3次元グラフ上では豆腐に似た物性を示すことが認められた。
<凝固剤添加ゲル>
濃縮豆乳に、にがりを添加し、80℃2分加熱してゲル化させたところ、無添加ゲルに比べ、もろさが上昇した。次にグルコノデルタラクトン(GDL)を添加し70℃60分加熱した場合、固さとともにもろさが上昇した。この傾向はグルコノデルタラクトンの添加量が多いほど顕著であり、固さが不足しているものの弾力・もろさの点ではチーズに近い物性となった。
<酵素添加ゲル>
濃縮豆乳に、TGaseを添加し、55℃1時間反応させた。その後100℃2分間加熱しゲル化させた。3次元グラフ上では無添加ゲルより固く、もろさが少なく、弾力のあるゲルとなった。TGaseの添加量を多くすると固さ・弾力・もろさが上昇し、カマボコに似た物性を示した。
<油脂添加ゲル>
チーズ様物性を作り出せるかどうかということから、チーズに近い油脂含量を設定した。プロセスチーズの場合タンパク質と油脂の比率は約1対1.15であるので、濃縮豆乳中に存在する大豆油含量を算出し、チーズと比較して不足する分の油脂を添加した。濃縮前にブレンダーで油脂を混ぜ込んだゲルは、無添加ゲルに比べもろさが少し上昇する傾向にあった。一方、濃縮後に手作業で油脂を混ぜ込んだゲルは、無添加ゲルに比べもろさが減少した。油脂の種類による大きな差は認められなかった。油脂含量を調整してもチーズ様物性には近づかなかった。
<凝固剤・酵素・油脂混合物添加ゲル>
にがり・TGase・油脂を同時に添加したゲルは、単独に添加した場合のほぼ中間的な物性になることが認められた。
<粉末添加ゲル>
濃縮豆乳とチーズの成分の違いには、油脂含量だけではなく固形分濃度の違いが認められる。プロセスチーズは固形分濃度が55であり、加熱しぼり濃縮豆乳ゲルのBx30では固形分が不足している。加熱しぼり豆乳は濃縮操作により速やかに粘度が上昇し、Bxを55にまで上げるのは困難である。そこで、大豆由来の粉末を添加してBxを上げる試みを行った。丸大豆を脱脂微粉末状にしたものを添加すると、固さ・もろさ・弾力すべてが上昇し、にがり・油脂・TGaseでは達成できなかったチーズ様物性に近づいた。しかし、チーズに比べると弾力が大きかった。豆乳を噴霧乾燥して製造された豆乳パウダーは、無添加に比べ固さのみ上昇した。凍結乾燥した生しぼり豆乳の粉末を添加すると、硬さ・弾力が上昇した。凍結乾燥した加熱しぼり豆乳の粉末を添加すると、凍結乾燥生しぼり豆乳粉末添加時よりも大幅に硬さが増した。このように、各種粉末の添加による固形分濃度の調整はゲル物性の多様な変動を生じさせた。
図2は、生しぼりの濃縮豆乳ゲルの物性制御を示す。
<無添加ゲル>
Bx30から40付近では加熱しぼり濃縮豆乳ゲルとほぼ同じ物性であった。Bxが高くなるほど固さともろさが上昇し、Bx70付近ではチーズに近い物性になることが認められた。Bxが異なっても弾力は殆ど変化しなかった。
<油脂添加ゲル>
油脂の種類による違いは殆ど認められなかった。濃縮前の生しぼり豆乳は泡立ちやすいため、ブレンダーで油脂を添加することはできず、濃縮後手作業で添加した。しかし、ブレンダー処理がなくても油脂添加によりもろさが上昇した。
<粉末添加ゲル>
大豆微粉末を添加した結果、固さ・弾力が上昇した。もろさの変化は小さかった。大豆由来多糖であるソヤファイブ(SSPS)を添加したところ、固さが減少した。大豆油をSSPSでコーティングした粉末化油脂を添加したところ、固さの減少以外に、もろさが増し、油脂・SSPS単独では認められなかった弾力の減少が認められた。凍結乾燥した生しぼり豆乳粉末を添加すると、弾力が上昇し、無添加に比べチーズにより近い物性となった。
<濃縮豆乳を用いるゲルの物性制御>
加熱しぼり濃縮豆乳を使用する場合、チーズ様物性との根本的な差は固形分濃度に由来していると考えられた。そこで、大豆微粉末・凍結乾燥豆乳粉末を添加することで固形分濃度を上げ、ゲル物性への効果を調べたところ、固さ・もろさの上昇には有効であったが、それに付随して弾力の上昇が起きることが問題であった。なお、弾力を抑えるには生しぼり濃縮ゲルの結果からSSPSでコーティングした油脂が有効であったが、SSPSによる軟化作用によりゲルの固さが減少する可能性が考えられる。実際加熱しぼり濃縮豆乳ゲルにSSPSを加えてゲル化しない場合があった。
生しぼり濃縮豆乳を使用する場合、低Bxから高Bxに至るまで様々な濃縮物を容易に作製することができた。また加熱しぼり濃縮豆乳は水になじみにくいが、生しぼり濃縮豆乳は水によくなじむことから、濃縮後の固形分濃度の調整も容易であり、物性を制御する素材として多くの可能性が期待される。
図3は、濃縮豆乳ゲルの微細構造を示す。3次元グラフ上に示される物性と実際の微細構造との関係を考察するために、走査型電子顕微鏡によるゲル組織構造の観察を行った。プロセスチーズは5 μm付近の空洞が多く分布し、50000倍では空洞の周囲を繊維状の構造が埋めている様子が認められた。空洞は油脂が脱離した跡と考えられた。Bx72の生しぼり濃縮豆乳ゲル(無添加)では、200 nm付近の小さな空洞が分布し、空洞以外の部分は密なところが多かった。Bx30の加熱しぼり濃縮豆乳ゲル(無添加)では、10 μm付近の空洞が目立ったが、空洞の中心にタンパク質と推定される物質が入り込み、空洞は全体としてリング状を呈していた。空洞以外の部分はチーズよりは太い繊維が凝集した構造が見られた。
圧縮回復試験測定時に得た荷重変形曲線におけるチーズの破断点は、変形が小さく、荷重が大きかったことから、繊維状の構造が強固で変形しにくいものであることが示唆される。生しぼり濃縮豆乳ゲルは破断点の荷重および変形がともにチーズより高く、繊維状の構造物も認められなかった。3次元グラフ上の位置は微妙に異なり、物性に差異のあることが示唆された。加熱しぼり濃縮豆乳ゲルは荷重が生しぼり濃縮豆乳ゲルより低く、太い繊維が凝集しているものの少しの力で大きくひずむゆるやかな結合構造であり、組織内部の結着性はゆるやかであることが示唆された。
図3から豆腐、及び湯葉との違いについて検討すれば、本発明の加工食品素材では、濃縮直後の状態は液状であり、固形の豆腐とはこの点異なっている。また、濃縮物をゲル化させたものと豆腐との微細構造の違いについては、電子顕微鏡観察の結果から、豆腐の場合、タンパク質からなるユニットが多くの隙間を設けつつ網目構造を形成している。Bx30程度の濃縮豆乳ゲルでは、ユニット自体は豆腐のそれと類似しているが、隙間が減少し、密になる。さらに生しぼり豆乳の場合のようにBxが高いゲルの場合は、ユニットそのものが凝集した上でさらにユニット同士が密に凝集し塊状となる。
湯葉は、豆乳表面に生じる皮膜があり、空気に接した面は乾燥により固体となるが、豆乳と接した面は、皮膜に付着する半固形状と半液状の豆乳から成るそうを形成しており、濃縮物、濃縮豆乳ゲルとは異なっている。
<濃縮豆乳およびゲルの品質安定性>
濃縮豆乳ゲルの品質安定性を評価するためにPOV測定を行った。加熱しぼり・生しぼりについて、豆乳・濃縮豆乳・濃縮豆乳ゲルそれぞれに魚油を添加し、アゾ化合物と共に37℃で反応させた。その結果、生しぼり豆乳は24時間でPOVがピークに達し、その後低下した。生しぼり濃縮豆乳、生しぼり濃縮豆乳ゲルはいずれもPOVが生しぼり豆乳を下回った。加熱しぼり豆乳では、72時間の反応中POVがゆるやかに上昇し続けた。加熱しぼり濃縮豆乳・加熱しぼり濃縮豆乳ゲルではいずれもPOVが加熱しぼり豆乳を下回った。以上のことから加熱しぼり豆乳は酸化促進因子の失活や、加熱処理による構造変化がおきている可能性が考えられる。加熱しぼり・生しぼりいずれの場合も濃縮操作により酸化抑制効果が認められ、品質安定性を高めることがわかった。
豆乳は凝固剤の助けなしにゲル化することができず、豆腐にならないが、濃縮豆乳は凝固剤を用いなくてもゲル化させることができた。このゲルは保形性がよく、加熱処理の際に、成型加工が可能である。濃縮豆乳の固形分濃度により、ゲル物性に違いが生じた。また、各種添加物を与えたゲルは豆腐と異なる新規な物性を示した。この濃縮豆乳自身にも新規加工食品素材としての可能性があるが、さらに物理化学的手法を組み合わせれば、より多様な物性を創出できると期待される。またこうして得られた新規な物性を、既存の食品に付与する可能性なども考えられる。濃縮状態の豆乳は品質安定性も良好であることが期待できることから、輸送コストを抑えた上で、計画的に流通させることが可能である。消費者のニーズに合った良質の植物性蛋白質を効率よく摂取できる新規な加工食品素材になるものと期待できる。
POV測定により品質安定性を評価した結果、加熱しぼり豆乳・生しぼり豆乳いずれの場合も濃縮豆乳や濃縮豆乳ゲルのほうが濃縮前の豆乳よりも酸化の進行速度が遅くなることが示され、濃縮により品質安定性が増した。
本発明によれば、栄養性、品質安定性に優れ、かつ、物性制御が可能な大豆由来加工食品素材を提供できることから、高品質・多機能性食品を開発しようとする食品製造、外食産業における利用が期待される。
図1は、加熱しぼり濃縮豆乳ゲルの3次元グラフ表示を示す。Bxは29〜31を示す。+は、油脂は手作業で濃縮物に添加した結果を示す。 図2は、生しぼり濃縮豆乳ゲルの3次元グラフ表示を示す。Bxのみ表示しているものは、無添加ゲルを表す。 図3は、走査型電子顕微鏡による観察像を示す。

Claims (8)

  1. 豆乳を濃縮後、加熱処理することにより豆乳由来のゲルを作製することを特徴とする加工食品素材の製造方法。
  2. 濃縮を固形分濃度(Bx)13〜75の範囲において行なう請求項1記載の方法。
  3. 濃縮後、添加物を添加して加熱処理する請求項1又は2項に記載の方法。
  4. 前記添加物が、油脂、粉末、酵素からなる群から選択される少なくとも1種である請求項3項記載の方法。
  5. 油脂が、牛脂、ラード、バター、大豆油、ヌカ油、コーン油、オリーブ油、ショートニング、マーガリン、ジアシルグリセロール、粉末化油脂、レシチン、リゾレシチン、各種脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項4記載の方法。
  6. 酵素が、トランスグルタミナーゼ、及び/又はタンパク質ジスルフィドイソメラーゼである請求項4記載の方法。
  7. 粉末が、大豆微粉末、豆乳パウダー、凍結乾燥豆乳、ソヤファイブ、コラーゲン粉末、キチン粉末、セルロース粉末からなる群から選択される少なくとも1種である請求項4記載の方法。
  8. 豆乳の濃縮を、豆乳作製の段階において加水量を調節することにより、行なう請求項1〜7項のいずれか1項に記載の方法。
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