JP2005090844A - 熱交換器の開口部形成方法、熱交換器、熱交換器の製造方法、およびスケール洗浄方法 - Google Patents
熱交換器の開口部形成方法、熱交換器、熱交換器の製造方法、およびスケール洗浄方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 熱交換器の胴部の内部に備えられる伝熱管を破損させることなく胴部に開口部を設ける開口部形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、胴部2と、グラスライニング層を有し且つ当該胴部の内部に配置されている伝熱管3とを備えている熱交換器1に開口部4を形成する熱交換器の開口部形成方法であって、胴部2の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、胴部2に開口部4を形成する開口部形成工程を含むことを特徴とする。胴部2の内部温度が、伝熱管の内部表面を覆うガラス製のグラスライニング層を破損しない範囲の温度に保たれているため、この開口部形成方法では、伝熱管3を破損することなく、胴部2に開口部4を設けることが出来る。したがって、開口部4を通じてスケールを除去した熱交換器1は、この開口部4に蓋5を設置すれば、再び熱交換の用途に供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、胴部2と、グラスライニング層を有し且つ当該胴部の内部に配置されている伝熱管3とを備えている熱交換器1に開口部4を形成する熱交換器の開口部形成方法であって、胴部2の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、胴部2に開口部4を形成する開口部形成工程を含むことを特徴とする。胴部2の内部温度が、伝熱管の内部表面を覆うガラス製のグラスライニング層を破損しない範囲の温度に保たれているため、この開口部形成方法では、伝熱管3を破損することなく、胴部2に開口部4を設けることが出来る。したがって、開口部4を通じてスケールを除去した熱交換器1は、この開口部4に蓋5を設置すれば、再び熱交換の用途に供することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、熱交換器の胴部の内部に備えられる伝熱管を破損させることなく胴部に開口部を設ける開口部形成方法に関するものである。
従来、一般に広く知られている熱交換器は、腐食性の流体に対しても熱交換を行うことを可能にするため、その胴部(シェル)の内部に、伝熱管を備えていることが多い。この伝熱管の内部表面には、ガラス製のグラスライニング層が形成されている場合がある。ガラス製のグラスライニング層は、大半の腐食性流体に対して耐性を有するために、グラスライニング層が形成されている伝熱管(以下、グラスライニング製伝熱管と称する場合がある)を備える熱交換器では、腐食性の流体、例えばホルマリン等の熱交換を行うことができる。また、このような熱交換器は、グラスライニング製伝熱管の外部で、かつ、胴部の内部に相当する空間に、いわゆる伝熱媒体を流すことにより、伝熱管の内部を流れる熱交換媒体と上記伝熱媒体との間で熱交換を行っている。このようにして、グラスライニング製伝熱管を隔てて温度の異なる2つの流体を接触させることにより、熱交換器では、グラスライニング製伝熱管の内部を流れる熱交換媒体と、伝熱管の外部を流れる伝熱媒体との間において、熱の交換が行われる。以上のような熱交換を行うための熱交換器としては、例えば、非特許文献1に、その詳細が開示されている。
しかし、上記非特許文献1にも開示されているように、一般的な熱交換器は、長年に渡って使用すると、胴部の内部に備えられている伝熱管の外部表面に、スケール(堆積物、スラッジともいう)と呼ばれるゴミが徐々に堆積されることとなる。このスケールは、伝熱媒体が熱交換される際に発生するものであり、例えば、伝熱媒体が水である場合には、水垢等がスケールとなって伝熱管の外部表面に堆積する。そして、このスケールが伝熱管の外部表面に堆積すると、伝熱管の内部を流れる熱交換媒体と伝熱媒体との間の熱交換が、速やかに行われなくなる。その結果、熱交換器の熱交換能力が、使用開始時に比べて、徐々に低下していくという問題が生じていた。
このような問題に対して、従来の熱交換器では、熱交換能力がある一定水準を下回ってしまった場合には、使用を中止し、新たな熱交換器と交換する必要がある。そして、熱交換能力が低下した熱交換器は廃棄されることとなる。
「グラスライニング製多管式熱交換器取扱説明書」、八光産業株式会社編、1993年発行、P1〜12
「グラスライニング製多管式熱交換器取扱説明書」、八光産業株式会社編、1993年発行、P1〜12
しかしながら、熱交換器は、大部分の化学プラントに、複数設置されているため、熱交換器を新しいものと交換するためには多大な費用がかかることになる。また、環境保護の観点からも、熱交換能力が低下してしまった従来の熱交換器に対して、何らかの処理を施して熱交換能力を回復させて、当該熱交換器を再利用する方法が求められている。具体的には、胴部の内部、かつ、伝熱管の外部表面に堆積したスケールを取り除くことにより、熱交換器を再利用する方法が求められている。
本発明者等は、上記の問題点について分析した結果、上記グラスライニング製伝熱管の外部表面に堆積したスケールを取り除く方法として、例えば、スケールを物理的に取り除くという方法を検討した。具体的には、例えば、熱交換器の胴部に開口部を設けて、その開口部を通じてスケールを除去する方法について検討した。
しかしながら、グラスライニング製伝熱管を有する熱交換器は、まず胴部に鋼管などの伝熱管が設置されて、しかる後に、この伝熱管の内部表面に、ガラス製の脆いグラスライニング層がコーティングにより形成されるという一連のプロセスを経て製造されるものである。そのため、いったん伝熱管の内部表面にグラスライニング層が形成された熱交換器に開口部を形成して、スケールを除去することを試みようとしても、開口部を形成する際に生じる高熱や衝撃等が原因となってグラスライニング製伝熱管が破損する恐れがあるため、そのような試みは極めて困難であった。
また、たとえ開口部を形成し得たとしても、開口部を形成する際に発生する高熱によって、胴部に残留応力が残留したままとなる。かかる状態では、開口部に蓋をして熱交換器を再び使用しても、胴部の残留応力が伝熱管に伝わってしまう。そのため、この残留応力によりグラスライニング層が歪んで伝熱管が破損し、熱交換器が正常に使用可能な状態でなくなってしまうという懸念も生ずる。
そこで、本発明者等は、これら問題点を鑑みて、鋭意検討した結果、胴部の内部に設けられているグラスライニング製伝熱管を破損する要因を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、上記課題を解決するために、胴部と、グラスライニング層を有し且つ当該胴部の内部に配置されている伝熱管とを備えている熱交換器に開口部を形成する熱交換器の開口部形成方法であって、上記胴部の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、上記胴部に上記開口部を形成する開口部形成工程を含むことを特徴としている。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、さらに、上記開口部形成工程では、切削手段を用いて上記開口部を形成することが好ましい。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、さらに、上記開口部形成工程では、上記胴部の内部を掃除するための掃除用の開口部を形成することが好ましい。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、さらに、上記開口部形成工程では、さらに、上記胴部の内部を掃除した際に生じるゴミおよび洗浄液を排出する排出用の開口部を形成することが好ましい。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、さらに、上記開口部形成工程では、胴部の周方向の全長に対して25%以下の開口径となるように開口部を形成することが好ましい。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、さらに、上記開口部形成工程では、胴部の軸方向の長さに対して25%以下の開口径となるように開口部を形成することが好ましい。
また、本発明に係る熱交換器は、上記課題を解決するために、上記いずれかの開口部形成工程で形成された開口部を覆うように蓋を設置してなることを特徴としている。
また、本発明に係る熱交換器は、さらに、上記蓋は、上記胴部に対して着脱可能に設置されていることが好ましい。
また、本発明に係る熱交換器は、さらに、上記蓋と上記胴部との間に、隙間を埋めるように充填材が充填されていることが好ましい。
また、本発明に係る熱交換器の製造方法は、上記課題を解決するために、胴部と、グラスライニング層を有し且つ当該胴部の内部に配置される伝熱管とを備えている熱交換器を製造する製造方法であって、上記胴部の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、上記胴部に上記開口部を形成する開口部形成工程と、上記開口部形成工程で形成された開口部を覆うように蓋を設置する蓋設置工程とを有することを特徴としている。
また、本発明に係るスケールの洗浄方法は、上記課題を解決するために、上記いずれかの開口部形成工程によって形成された開口部から洗浄液を注入することによって熱交換器内のスケールを洗浄することを特徴としている。
本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、以上のように、上記胴部の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、上記胴部に上記開口部を形成する開口部形成工程を含む方法である。
上記の構成によれば、上記胴部の内部の温度(内部温度)を一定の範囲内に保ったまま開口部を形成している。つまり、上記の構成では、胴部内部に設けられているグラスライニング製伝熱管に膨張や伸縮等の熱的負荷がかからないように開口部を形成するようになっている。従って、熱交換器の内部に設けられているグラスライニング製伝熱管を破損させることなく開口部を形成することができる。そして、上記開口部を使って、例えば、熱交換器の内部の掃除や、熱交換器内部の点検等を行うことができる。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、以上のように、上記開口部形成工程では、切削手段を用いて上記開口部を形成するため、切削手段を用いることで、胴部内部の温度を一定の範囲内に保ったまま、より簡単に、開口部を形成することができる。つまり、上記切削手段を用いることにより、例えば、冷却などを実施しない、通常の溶断等と比べて、熱交換器内部のグラスライニング製伝熱管を破損させることなく、より簡単に開口部を形成することができる。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、以上のように、上記開口部形成工程では、上記胴部の内部を掃除するための掃除用の開口部を形成するため、伝熱管の外部表面に溜まったスケール(ゴミ)をより好適に除去することができる。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、以上のように、上記開口部形成工程では、さらに、上記胴部の内部を掃除した際に生じるゴミおよび洗浄液を排出する排出用の開口部を形成するため、掃除によって除去されたゴミおよび洗浄液をより好適に排出することができる。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、以上のように、上記開口部形成工程では、胴部の周方向の全長に対して25%以下の開口径となるように開口部を形成するため、熱交換器の胴部の強度を下げることなく、開口部を形成することができる。
また、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、以上のように、上記開口部形成工程では、胴部の軸方向の長さに対して25%以下の開口径となるように開口部を形成するため、熱交換器の胴部の強度を下げることなく、開口部を形成することができる。
また、本発明に係る熱交換器は、以上のように、上記の開口部形成工程で形成された開口部を覆うように蓋を設置してなる熱交換器であるため、再利用可能とすることができる。
また、本発明に係る熱交換器は、以上のように、上記蓋は、上記胴部に対して着脱可能に設置されていることを特徴とするため、蓋を外すだけで簡単に開口部を再び形成することができる。したがって、この熱交換器を繰り返し再利用することができる。
また、本発明に係る熱交換器は、以上のように、上記蓋と上記胴部との間に、隙間を埋めるように充填材が充填されていることを特徴とするため、上記蓋と胴部との隙間を確実に塞ぐことができる。これにより、開口部を形成した熱交換器を再利用する際であっても、伝熱媒体が胴部から漏れ出すことをより一層防止することができる。
また、本発明に係る熱交換器の製造方法は、以上のように、上記胴部の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、上記胴部に上記開口部を形成する開口部形成工程と、上記開口部形成工程で形成された開口部を覆うように蓋を設置する蓋設置工程とを備えるため、再利用可能な熱交換器を製造することが出来る。
また、本発明に係るスケールの洗浄方法は、上記開口部形成工程によって形成された開口部から洗浄液を注入することによって熱交換器内のスケールを洗浄するため、従来は除去困難であった熱交換器内部のスケールを確実に洗浄除去できる。したがって、スケール洗浄後の熱交換器を再利用に供することが出来る。
本発明に係る熱交換器の開口部形成方法を実施するための一形態を、多管型固定管板型熱交換器を具体例にして、図1〜図4を用いて説明すれば以下の通りである。
本発明に係る熱交換器の開口部形成方法によって、開口部が形成される熱交換器1は、図1に示すように、胴部(シェル)2と、鋼管の内部表面にグラスライニング層が形成されている伝熱管3とを備えている。また、図示しないが、本発明に係る熱交換器1には、胴部2の一端と接合されている固定頭部と、胴部2の他端と接合されている後頭部とを備えている。より詳細には、本発明に係る熱交換器1は、固定頭部と後頭部との間に胴部が設けられており、胴部の内部には伝熱管3が固定管板(図示せず)によって固定されて配置されている。そして、本実施の形態に係る熱交換器1の胴部2には、開口部4と排出口8とが形成されている。そして、上記開口部4は、蓋5で覆われており、排出口8には、当該排出口8を覆うようにプラグ9が取り付けられている。また、開口部4と蓋5との隙間には、当該隙間を埋めるように充填材6が充填されている。上記開口部4、蓋5、充填材6、排出口8、プラグ9については後述する。
上記固定頭部と上記後頭部とには、上記伝熱管3に、熱交換媒体を流すための熱交換媒体入口または熱交換媒体出口がそれぞれに設けられている。さらに、頭部と後頭部とには、伝熱管3の外側であり、かつ、胴部2の内部に相当する空間に伝熱媒体を流すための、伝熱媒体入口または伝熱媒体出口がそれぞれに設けられている。そして、熱交換媒体は、伝熱管3の内部を流れるようになっているとともに、伝熱媒体は、伝熱管3の外側を流れるようになっている。そして、伝熱管3の内側と外側とを流れる2つの媒体(熱交換媒体、伝熱媒体)の間で熱交換が行われるようになっている。
また、上記熱交換器1には、必要に応じて、邪魔板(バッフル)7、フランジ、端室等が設けられていてもよい。なお、以下の説明では、熱交換器1に、邪魔板7が設けられている構成について説明する。
本実施の形態では、胴部2は鋼鉄で形成されており、円筒形をしている。また、図2に示すように、伝熱管3は、ガラス製のグラスライニング層11を内部表面に形成している鋼管10から構成されている。ここで、グラスライニング層の厚さは、通常では0.1〜5mm程度であり、好ましくは0.8〜1.5mm程度である。
また、本実施の形態では、複数の伝熱管3が胴部2の内部に設けられている。そして、複数の伝熱管3は、胴部2の内部に互いに平行になるように備えられている(図3参照)。具体的には、複数の伝熱管3は、胴部2の軸方向に延びた状態で設けられている。換言すると、上記複数の伝熱管3は、胴部2の内部において、当該胴部2の周方向に対して直交する方向に延びた状態で備えられている。なお、上記「胴部2の周方向」とは、胴部2の胴回りの方向を示す。この伝熱管3には、例えば、ホルマリン等の腐食性流体(熱交換媒体)が流される。
そして、邪魔板7は、図1に示すように、胴部2の周方向に対して平行、換言すると、胴部2の軸方向に対して垂直になるように、胴部2の内部に複数設けられている。さらに、複数の邪魔板7のそれぞれは、軸方向に沿って互いに等間隔に並んでいる。そして、本実施の形態では、邪魔板7の形状として、円筒形の胴部2の周方向の断面と基本的には相同(すなわち、円形)であるが、一部が欠損している、いわゆる欠円形の形状となっている。また、この邪魔板7は、伝熱管3の外側であって、胴部2の内部空間を流れる伝熱媒体の流れを調節する機能を有している。
ここで、本実施の形態に係る熱交換器1の主たる特徴点である開口部について説明する。
上記開口部4は、図1に示すように、胴部2に形成されている。具体的には、上記開口部は、胴部の軸方向に沿って複数個設けられていることがより好ましい。そして、この開口部は、伝熱管3の外部表面および胴部2の内部を掃除する掃除用途に設けられている。そして、掃除用の開口部4の大きさとしては、掃除を行うために充分な大きさであり、かつ、当該開口部4が形成された熱交換器1が熱交換を行うために必要な強度を維持することができる程度であればよい。具体的には、上記開口部4の、胴部2の周方向に対応する開口の長さ(周開口経)としては、胴部2の周方向の全長の25%以内がより好ましく、12.5%以内がさらに好ましい。上記開口部4の周開口径が胴部2の周方向の全長の25%よりも大きい場合には、当該開口部4が形成された熱交換器1の胴部の強度を著しく低下させる場合がある。また、上記開口部4の、胴部の軸方向に対する開口の長さ(軸開口経)は、胴部2の軸方向の全長の25%以内がより好ましく、12.5%以内がさらに好ましい。上記開口部4の軸開口径が胴部2の軸方向の全長の25%よりも大きい場合には、当該開口部4が形成された熱交換器1の強度を著しく低下させる場合がある。なお、胴部2の軸方向とは、胴部2の周方向に直交する方向をいう。具体的には、胴部2の軸方向とは、固定頭部、胴部2および後頭部を備える熱交換器1の、固定頭部と胴部2の接合面と後頭部と胴部2の接合面と結ぶ方向を示している。この開口部4の形成方法について、後述する。また、説明の便宜上、図1には、胴部2に形成される複数の開口部4のうちの、2つを示している。
また、掃除用の開口部4の形状としては、胴部2の内部の掃除を行うことができる形状であればよく、例えば、円形や方形等であればよい。しかし、上記開口部4をより簡単に形成するためには、当該開口部4の形状としては、方形がより好ましい。
また、本実施の形態では、図1に示すように軸方向(管軸方向)に対して垂直に配置されている邪魔板7の延長線上に設けられている。つまり、軸方向に並んだ3つの邪魔板7のうちの両側の邪魔板7で区切られた1つの区間に1つの開口部4が形成されている。なお、上記開口部4は、邪魔板7と胴部2との接合面と接しないように形成されていることがより好ましい。
さらに、本実施の形態では、図1に示すように、熱交換器1の胴部2に形成されている掃除用の開口部4には、蓋5が取り付けられている。より具体的には、上記蓋5は、図1に示すように、胴部2に形成される開口部4を覆うように、胴部2の外面に形成されている。上記蓋5を構成している材料としては、具体的には、例えば、樹脂や金属等が挙げられるが、胴部2を構成している材料と同じ材料で構成されていることがより好ましい。上記蓋5を構成している材料と、胴部2を構成している材料とを同じ材料とすることで、蓋5と胴部2との間の電位差をなくすることができるので、一方が腐蝕することを防止することができる。なお、本実施の形態では、上記蓋5は、胴部2と同じように鋼鉄で構成されている。
また、蓋5の形状としては、開口部4を完全に覆うことができる形状であればよく、本実施の形態では、図4に示すように、正方形の形状をしている。そして、蓋5には、当該蓋5で開口部4を覆った状態において、蓋5と胴部2とが重なる部分に、複数のネジ穴12が形成されている。後述するように、このネジ穴12にネジを填めることにより、蓋5を胴部2に固定するようになっている。
また、本実施の形態では、上記蓋5と胴部2との間には、充填材6が充填されている。上記充填材6は、図1に示すように、胴部2と、蓋5との隙間を充填するものである。すなわち、充填材6は、伝熱管3の外部を流れる伝熱媒体が、熱交換器1の外部へ漏れないように、胴部2と蓋5との隙間に充填されている。本実施の形態では、ニトリルゴムからなる充填材6が用いられている。
さらに、本実施の形態では、上記胴部2の、複数の掃除用の開口部4が形成されている面に対して対向する位置に排出口(開口部)8が設けられている。上記排出口8は、上記掃除用の開口部4を用いて、胴部2の内部を掃除した際に発生する伝熱管3の外部表面から除去されたスケール(ゴミ)や洗浄液を排出するものである。
排出口8は、熱交換器1の底面に設けられていることがより好ましい。上記排出口8を底面に設けることにより、胴部2の内部を掃除(洗浄)することにより、伝熱管3から除去されたスケールや洗浄液を簡単に排除することができる。
そして、本実施の形態では、排出口8にプラグ9が取り付けられている。このプラグ9も、上述の蓋5と同様に、伝熱管3の外部を流れる伝熱媒体が、熱交換器1の外部へ流出しないように、排出口8に密接に設置されている。また、密接されればよいことから、プラグに代えて、ネジによって締め込んでもよい。
以上のように、本実施の形態にかかる熱交換器1は、上記のように掃除用の開口部4が形成されている。従って、当該開口部4を用いて、伝熱管3に堆積したスケールをより簡単に除去することができる。
ところで、上記掃除用の開口部4および排出口8は、伝熱管3が胴部2の内部に配置された後に、形成する必要がある。この理由について、以下に説明する。
上記伝熱管3を内部に備えている熱交換器1は、外部からの力(衝撃等)などにより、内部のグラスライニング製伝熱管のグラスライニング層が破損する場合がある。グラスライニング製伝熱管が破損した場合には、熱交換器1として使用することができない。従って、上記開口部4および排出口8は、熱交換器1が、装置に組み込まれた後で、形成する必要がある。しかしながら、上記の理由により、胴部2に開口部4を形成する際には、胴部2の内部に備えられているグラスライニング製伝熱管が破損しないように形成する必要がある。
そこで、以下に、伝熱管3が胴部2の内部に設けられている状態で、上記開口部4および排出口8を形成する方法について説明する。
具体的には、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、胴部2の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、胴部2に対して開口部4を設ける構成である。ここで、一定の範囲内の温度とは、胴部2の内部に備えられる伝熱管3が破損しない範囲の温度を示している。さらに詳しく説明すると、上記一定の範囲内の温度とは、伝熱管3の内部を覆っている、ガラス製のグラスライニング層を破損しない範囲の温度をいう。より具体的には、上記温度の範囲としては、0℃〜500℃の範囲内がより好ましく、10〜250℃の範囲内がさらに好ましい。上記胴部2の内部温度が上記温度範囲内を逸脱した状態で開口部4(排出口8)を形成した場合には、グラスライニング製伝熱管が破損して、熱交換器1を再利用することが出来なくなる場合がある。換言すると、胴部2の内部温度がこの温度範囲内を保ったまま、開口部4を形成することにより、伝熱管3の内部のグラスライニング層が、熱的負荷によって収縮したり膨張したりしない。すなわち、グラスライニング層は、熱によって変成したり変形したり、あるいは割れたりしない。したがって、上記一定の温度範囲内を保った状態で開口部4を形成することにより、胴部2の内部に備えられる伝熱管3を破損することを防止することができる。
本実施の形態では、切削手段を用いて、胴部2に開口部4を形成している(開口部形成工程)。上記切削手段としては、具体的には、例えば、電気ドリル、サンダー、ルーター、トリマー、ジグゾー、電気のこぎり、グラインダー、チェーンソー、チップソー等が挙げられる。なお、本実施の形態では、上記切削手段としてカッターとして一般的な砥石を備えたグラインダーを使用している。なお、上記グラインダーに備えられているカッターとしては、切削する胴部2を切断することができる強度(硬度)を有するカッターであればよく、例えば、ダイヤモンドカッターを使用することも出来る。なお、胴部2の強度にもよるが、一般的な砥石を使用することが、カッターに必要な費用を安く出来るために好ましい。
このように、上記切削手段を用いて胴部2に開口部4を形成する場合、胴部2には、グラインダーのカッターと胴部との接触部分おいて、摩擦熱が発生することとなる。しかし、一般的に、上記切削方法を用いて開口部4を形成する際に発生する摩擦熱は、例えばガスバーナーによって胴部を溶断する際に発生する熱に比べると大幅に低い。したがって、通常の切削工程では、例えこの摩擦熱が胴部2の内部に伝わった場合でも、胴部2の内部温度が、伝熱管3が破損するほどの温度となることはない。従って、上記切削手段を用いることにより、伝熱管3をより破損させることなく、開口部4を設けることが出来る。
また、例えば、胴部2と、グラインダーのカッターとの間に、胴部2の内部に備えられる伝熱管3を破損するほどの摩擦熱、換言すると、上記一定の範囲温度内を逸脱するような熱が発生する場合には、例えば、切削している胴部2の表面を冷却すればよい。具体的には、胴部2の外部表面を冷却しながら、開口部4を形成するようにしてもよい。上記胴部2の外部表面、すなわち、切削している場所を冷却する方法としては、例えば、水や冷却ガス等を当該切削している場所に吹き付ければよい。
また、上記切削手段としてグラインダーを用いて、開口部4を形成する際には、形成する開口部4の形状としては、方形がより好ましい。開口部4の形状を方形とすることにより、切削作業を簡単に行うことができる。なお、上記開口部4の形状としては、当該開口部4の用途・目的に応じて適切な形状にすればよく、例えば、円形、長方形、正方形、六角形の形状等が挙げられる。
また、上述のように、本実施の形態に係る開口部形成方法では、胴部2の周方向に対応する開口部4開口の長さ(周開口経)が、胴部2の周方向の全長の25%以下、より好ましくは12.5%以内となるように開口部4を設けている。さらに、本実施の形態に係る開口部形成方法では、胴部の軸方向に対する開口部4の開口の長さ(軸開口経)は、胴部2の軸方向の全長の25%以下、より好ましくは12.5%以内となるように開口部4を設けている。上記範囲内の開口部4を形成することにより、胴部2の一部が切り取られるのみであるため、胴部2の全体的な強度を低下させることがない。そのため、後述するように、開口部4に蓋5を取り付けた熱交換器1を再利用することができる。
また、この開口部4を使用して、後述するように、例えば熱交換器1の内部の掃除(スケール除去)や、熱交換器1の内部の点検を行うことが出来る。
具体的には、上記開口部4は、胴部2の内部を掃除するための掃除用の開口部4として、胴部2に形成されている。すなわち、この開口部4を通じて本発明に係るスケール洗浄方法を使用することにより、伝熱管3の表面に堆積したスケール(スラッジ)と呼ばれる汚れを除去することが出来る。本実施の形態では、5MPa(50kgf/cm2)の水圧を有するジェット状の常温の水(水道水)をスケールに対して噴射して、スケールを除去する。そして、開口部4を通じてスケールに噴射した水や、あるいは噴射された水によって除去されたスケールは、この開口部4から例えば吸引して除去することが出来る。
しかし、本実施の形態では、胴部2の内部を洗浄する際に生じるゴミや洗浄水を排出する排出口8(排出用の開口部)を形成することにより、この排出口8を通じて、スケールに噴射した水や、あるいは噴射された水によって除去されたスケールを排出することができる。そして、この排出口8は、胴部2の底面に設けることがより好ましい。このように排出口8を設ければ、胴部2の内部にある洗浄水やスケールが、胴部2の内部にとどまることなく、重力によって効率的に排出される。なお、上記排出口8の形成方法は、上記開口部4を形成する方法と同様にして形成すればよい。すなわち、排出口8を形成する際に、胴部2の内部温度が上記一定の温度範囲内となるように形成すればよい。
上述のようにして、伝熱管3に堆積したスケールを除去した後には、熱交換器1を再利用可能な熱交換器とするために、開口部4に蓋5を取り付ける(蓋設置工程)。具体的には、本実施の形態では、材料が鋼鉄であり、大きさが開口部4を十分に覆い隠す正方形の蓋5を、開口部4を覆う様に、胴部2に対して設置する。また、本実施の形態では、図4に示ように、複数のネジ穴12が設けられた蓋5を胴部2に設置する。その際、胴部2の、ネジ穴12に対応する部分にも穴を開け、胴部2と蓋5に開けられた穴にネジを挿入し、蓋5を胴部2に固定する。さらに蓋5を胴部2に固定する際には、当該熱交換器1を再利用する際に、胴部2の内部に供給される伝熱媒体からの胴部2に対して負荷される圧力(例えば、0.1〜1MPa(1〜10kgf/cm2)の範囲内の圧力)が、上記蓋5にかかった場合でも、当該蓋5が外れないようにネジを締める。このように蓋5を開口部4を覆うように設置すれば、胴部2と蓋5との間に隙間が生じなくなるため、開口部4を設けた後の熱交換器1を、正常に使用することが出来る。
したがって、上記の開口部形成工程および蓋設置工程を備える熱交換器の製造方法を用いれば、グラスライニング製伝熱管を胴部の内部に備える熱交換器から、胴部に新しく開口部および蓋が設けられている、再利用可能な熱交換器を製造することが出来ることになる
また、上記蓋設置工程では、蓋5を胴部2に取り付ける際に、蓋5と胴部2との間の隙間を埋めるように充填材を充填することが好ましい。本実施の形態では、上記充填材としてシート状のニトリルゴムを用いている。このようにシート状の充填材を蓋5と胴部2との間に配置(充填)することにより、蓋5と胴部2との間の隙間を確実に塞ぐことができる。これにより、熱交換器1を再び使用する際、胴部2の内部を流れる伝熱媒体が、熱交換器1の外部に漏れることを防止することができる。したがって、開口部4を設けた後の熱交換器1を、確実に正常に再利用することが出来る。なお、設置した蓋5の周辺に、さらに、例えば、シリコンゴムなどのコーキング(充填)剤を塗布することにより、胴部2と蓋5との間に生ずる隙間を、さらに確実に密閉することができる。なお、上記充填材としては、液状でもよくシート状のものを用いてもよい。
また、上記蓋設置工程では、蓋5を胴部2に取り付ける際に、蓋5と胴部2との間の隙間を埋めるように充填材を充填することが好ましい。本実施の形態では、上記充填材としてシート状のニトリルゴムを用いている。このようにシート状の充填材を蓋5と胴部2との間に配置(充填)することにより、蓋5と胴部2との間の隙間を確実に塞ぐことができる。これにより、熱交換器1を再び使用する際、胴部2の内部を流れる伝熱媒体が、熱交換器1の外部に漏れることを防止することができる。したがって、開口部4を設けた後の熱交換器1を、確実に正常に再利用することが出来る。なお、設置した蓋5の周辺に、さらに、例えば、シリコンゴムなどのコーキング(充填)剤を塗布することにより、胴部2と蓋5との間に生ずる隙間を、さらに確実に密閉することができる。なお、上記充填材としては、液状でもよくシート状のものを用いてもよい。
さらに、本実施の形態では、排出口8に対して、蓋の役割を果たす、再開口可能なプラグ(蓋)9を取り付けている。このプラグ9は、排出口8にねじ込むようにして取り付ければよい。このように取り付ければ、排出口8を通じて伝熱媒体が漏れ出すことがないため、排出口8を設けた後の熱交換器1を、正常に使用することが出来る。
なお、本発明に係る開口部形成方法は、以上のように説明した本実施の形態のみならず、以下に説明する変形例においても、適用可能である。
まず、本実施の形態では、熱交換器として、伝熱管3の内部にホルマリンを流す熱交換器1を使用している例について説明している。しかし、この熱交換器は、どのような用途で使用される熱交換器も含まれる。例えば、冷却器、加熱器、凝縮器、蒸発器として使用される熱交換器も、本発明に係る開口部形成方法によって開口部を形成することができる。また、伝熱管3の内部を流れる流体(熱交換媒体)と、伝熱管3の外部を流れる伝熱媒体との間で熱の交換を行いつつ、伝熱管3の内部または外部において、何らかの化学反応を生じさせる、いわゆる熱交換器型の反応器であっても、本発明に係る開口部形成方法で開口部を形成することができる。
また、本実施の形態では、切削により胴部2に対して開口部4を設ける例について説明しており、特別に冷却しなくとも開口部を形成する手段であることから、最も好ましい手段であるが、切削でなくとも、胴部2の内部温度を、伝熱管3が破損しない範囲の温度、具体的には500℃以下、好ましくは250℃以下に保つことが出来る手段であればよい。例えば、冷却しながら溶断する手段、研磨する手段、ドリルなどで連続的に穴あけ加工する手段等により、開口部4を設けることも出来る。
また、本実施の形態では、胴部2を構成している材料として鋼鉄を用いている例について説明している。しかし、胴部2を構成する材料としては、胴部2の内部に負荷される圧力(つまり、熱交換を行う際に胴部2の内部に流される伝熱媒体による圧力)によって破損されない強度を有する材料であればよい。例えば、胴部2は、金属、合成樹脂、セラミックで出来ていてもよい。
また、本実施の形態では、開口部4を胴部2の内部を掃除する掃除用の開口部4として胴部2に設ける例について説明しているが、例えば他の熱交換器などの機器を接続する接続口として設けることも出来る。
また、本実施の形態では、ジェット状の水道水によりスケールを除去しているが、このスケールを除去する方法としては、胴部2や伝熱管3、あるいは邪魔板7を破損させないスケール除去の方法であれば、他の方法を使用してもよい。また、本実施の形態においてスケールに噴射するジェット状の水の圧力は、胴部2や伝熱管3、あるいは邪魔板を破損させない圧力であればよい。例えば、0.2MPa〜10MPa(2〜100kgf/cm2)の範囲内であれば、伝熱管3の表面に堆積したスケールを、当該伝熱管3等を破損させることなく除去することができる。さらに、スケールに噴射する水は水道水に限らず、精製水、脱イオン等も使用することが出来る。なお、水道水を使用することが、スケール除去に必要な費用を低下させることが出来るため好ましい。また、スケールに噴射する水は、常温の水であってもよく、温水であってもよい。温水を使用することにより、伝熱管3を破損させることなく、常温の水に比べてより効率的にスケールを除去できるため好ましい。
また、本実施の形態では、鋼鉄製の蓋5を使用しているが、この蓋5の材料は、胴部2の内部に負荷される圧力によっても変形したり破損したりしない耐圧性の材料であればよい。例えば、蓋5の材料としては、金属、セラミックス、合成樹脂、耐圧ガラス等が挙げえられる。また、上記金属としては、鋼鉄以外にも、ステンレス鋼やアルミニウム合金、あるいはチタン鋼等を使用することが出来る。また、合成樹脂としては、MMAなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)熱硬化性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、硬質ポリ塩化ビニル等を使用することが出来る。上記蓋5を構成する材料のうち、胴部2の材料と同じ材料を用いた蓋5を用いることが、胴部2と蓋5との間の電位差を生じさせないため、胴部2や蓋5の腐食をより一層防止できるため好ましい。また、例えば、上記蓋5を構成する材料として、例えば、透明な耐圧ガラス、MMA、PC、硬質塩化ビニルを使用した場合には、胴部2の内部を観察することが出来るため、スケールの伝熱管3に対する堆積の状況を観察することが出来る。
また、本実施の形態では、伝熱管3を破損することなく蓋5を胴部2に隙間なく取り付ける方法として、ネジ止めによって蓋5を胴部2に取り付ける方法を用いている。しかしながら、蓋5を胴部2に固定する方法としては、例えば、胴部2と蓋5との間に接着剤を注入して、蓋5を胴部2に取り付けてもよい。また、上記蓋5を胴部2にねじ止めすることにより、当該蓋5を着脱可能に取り付けることができるので、繰り返し上記開口部4を用いて、胴部2の内部を洗浄することができる。
また、本実施の形態では、充填材6としてニトリルゴムを使用しているが、この充填材6は、負荷される圧力に応じて自在に変形する機械的強度を有しているとともに胴部2と蓋5の隙間を完全に埋めることのできる物理的性質を持ち、なおかつ、胴部2の内部を流れる伝熱媒体によって腐食されない化学的性質を有する充填材6であればよい。そのような充填材6として、例えば、水素添加ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等を使用することも出来る。
また、本実施の形態では、排出口8に設置する蓋として、再開口可能なプラグ9を用いている例について説明している。しかし、上記蓋は、排出口8を密閉することが出来る蓋であればよい。そのような蓋としては、例えば上述の蓋5のような蓋も使用することが出来る。なお、再開口可能なプラグを、排出口8を密閉する蓋として用いた場合には、再び開口部4を用いてスケールを除去する際に、新たに排出口を設けること無く、既存の排出口8をスケール排出用の開口部として使用することが出来る。
以下に、本発明に係る熱交換器の開口部形成方法に係る一実施例を説明する。
本実施例では、熱交換器(XT−4013,八光産業製)の胴部に開口部を四箇所設けて、伝熱管の外部表面に堆積しているスケールをジェット水流で洗浄した例について説明する。
上記熱交換器は、伝熱管の内部に高温蒸気のホルマリンを流入させる一方で、伝熱管の外部には伝熱媒体として常温の水道水を還流させ、ホルマリンと水との間で熱を交換して、蒸気ホルマリンを凝縮させる目的で使用していた。
そして、上記熱交換器を備えた装置を、連続して10年間使用した結果、この熱交換器は、ホルマリンの凝縮能力が使用当初に比較すると大幅に低下しており、熱交換能力が低下していることが示された。具体的には、この熱交換器にあらかじめ備わっている点検口から胴部の内部空間を観察したところ、グラスライニング製伝熱管を視認出来ないほどスケールが付着して堆積していた。
そこで、グラインダーを使用して胴部を切削して、寸法18cm×18cmの開口部を全部で四箇所設けた。その際、2つの邪魔板に囲まれる1区間に対して、一箇所の開口部を設けた。また、それぞれの開口部に対応した形で、スケール排出用の排出口(円形、直径20mm)を、胴部の下部に四箇所設けた。
開口部のそれぞれから胴部の内部を観察したところ、すべての開口部において、伝熱管の外部表面に対するスケールの付着を確認し、このスケールの堆積状況は、胴部の内部の伝熱管を視認出来ないほどであった(図5a参照)。また、切削により取り外した胴部にも、やはりスケールが付着して堆積していた(図5a参照)。そこで、開口部のそれぞれから、5MPa(50kgf/cm2)の水圧で、常温の水道水をジェット状にしてグラスライニング製伝熱管に対して噴射した。その結果、グラスライニング製伝熱管を完全に視認出来るほど、スケールを除去することが出来た(図5b参照)。そして、除去したスケールは、排出口から排出した。
スケールを除去した後、四箇所の開口部それぞれに、寸法24cm×24cm、厚さ6mmの鋼鉄製のカバー(蓋)を取り付けた。その際、カバーと胴部が重なる部分には、ニトリルゴム製のシール材を挟んだ。また、カバーの取り付けは、直径8mmのステンレス製ボルトを機械的に強く締め付けることにより行った。そして、カバーの周辺はコーキング材(シリコン樹脂)で密閉した。
さらに、胴部の底部に設けた排出口には、3/4ボールコック(径20mm)を備えた抜きプラグ(ステンレス製)を設けた。
このように加工した熱交換器を点検したところ、伝熱管のグラスライニング層に破損は全く観察されなかった。また、通気・通水性テスト、および圧力検査テストにおいても異常は発見されなかった。そこで、この加工後の熱交換器を使用して、加工前に行っていたホルマリンの凝縮プロセスを同一条件で行ったところ、同時系列反応釜での反応時の圧力が最大で2kPaにまで低下し、ブリーザ弁の吹出時間も約15分にまで低下した。また、ホルマリン臭もほとんど感知されなかった。さらに、ラインから十分なホルマリン液を確認でき、凝縮能力が回復していることがわかった。また、胴部に形成された開口部や排出口から水が漏れる等の異常は、熱交換器の使用を再開して1年が経過した時点で、全く観察されなかった。
本発明に係る熱交換器の開口部形成方法は、例えば、従来一般的に用いられている、内部がグラスライニング製の伝熱管を有する熱交換器について、その熱交換能力を回復させるために、洗浄用の開口部を形成させることができる。また、本発明の開口部形成方法によって生じた開口部を蓋することにより、耐圧性が実用上、問題とならない熱交換器として再生させることができる。さらに、蓋が透明材料であれば胴部に観察用の窓を有する熱交換器を得ることができる。
1 熱交換器
2 胴部
3 伝熱管
4 開口部
5 蓋
6 充填材
7 邪魔板
8 排出口(開口部)
9 プラグ
10 鋼管
11 グラスライニング層
12 ネジ穴
2 胴部
3 伝熱管
4 開口部
5 蓋
6 充填材
7 邪魔板
8 排出口(開口部)
9 プラグ
10 鋼管
11 グラスライニング層
12 ネジ穴
Claims (11)
- 胴部と、グラスライニング層を有し且つ当該胴部の内部に配置されている伝熱管とを備えている熱交換器に開口部を形成する熱交換器の開口部形成方法であって、
上記胴部の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、上記胴部に上記開口部を形成する開口部形成工程を含むことを特徴とする熱交換器の開口部形成方法。 - 上記開口部形成工程では、切削手段を用いて上記開口部を形成することを特徴とする請求項1記載の熱交換器の開口部形成方法。
- 上記開口部形成工程では、上記胴部の内部を掃除するための掃除用の開口部を形成することを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器の開口部形成方法。
- 上記開口部形成工程では、さらに、上記胴部の内部を掃除した際に生じるゴミおよび洗浄液を排出する排出用の開口部を形成することを特徴とする請求項3記載の熱交換器の開口部形成方法。
- 上記開口部形成工程では、胴部の周方向の全長に対して25%以下の開口径となるように開口部を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器の開口部形成方法。
- 上記開口部形成工程では、胴部の軸方向の長さに対して25%以下の開口径となるように開口部を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器の開口部形成方法。
- 請求項1〜6に記載の開口部形成工程で形成された開口部を覆うように蓋を設置してなることを特徴とする熱交換器。
- 上記蓋は、上記胴部に対して着脱可能に設置されていることを特徴とする請求項7に記載の熱交換器
- 上記蓋と上記胴部との間に、隙間を埋めるように充填材が充填されていることを特徴とする請求項8に記載の熱交換器。
- 胴部と、グラスライニング層を有し且つ当該胴部の内部に配置されている伝熱管とを備えている熱交換器を製造する製造方法であって、
上記胴部の内部温度を一定の範囲内に保ったまま、上記胴部に上記開口部を形成する開口部形成工程と、
上記開口部形成工程で形成された開口部を覆うように蓋を設置する蓋設置工程とを有することを特徴とする、熱交換器の製造方法。 - 請求項1〜6に記載の開口部形成工程によって形成された開口部から洗浄液を注入することによって熱交換器内のスケールを洗浄する洗浄方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003324070A JP2005090844A (ja) | 2003-09-17 | 2003-09-17 | 熱交換器の開口部形成方法、熱交換器、熱交換器の製造方法、およびスケール洗浄方法 |
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JP (1) | JP2005090844A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011021266A (ja) * | 2009-07-21 | 2011-02-03 | Hakko Sangyo Kk | Gl熱交換器用洗浄液とそれを用いたgl熱交換器の洗浄方法 |
-
2003
- 2003-09-17 JP JP2003324070A patent/JP2005090844A/ja active Pending
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