JP2005087177A - 海洋無脊椎動物幼生の変態促進剤及びその製造方法 - Google Patents

海洋無脊椎動物幼生の変態促進剤及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 陸上における大量培養により効率よく生産しうる無脊椎動物幼生に対する新規な変態促進剤を提供する。
【解決手段】 紅藻植物門(Rhodophyta)紅藻綱(Rhodophyceae)オゴノリ目(Gracilariales)、スギノリ目(Gigartinales)又はイギス目(Ceramiales)に属する直立着床可能な大型海藻の塩類水溶液抽出画分を有効成分とした無脊椎動物幼生の変態促進剤とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、サンゴ類のような海洋無脊椎動物幼生の変態を促進するのに有効な変態促進剤及びその製造方法に関するものである。
藻類とは、水生の光合成を行う植物群の総称であり、単細胞で直径約0.8μmの微小なものから長さ60〜90m又はそれ以上の大型のものまで含まれる。この藻類は、緑藻植物、藍藻植物、緑虫植物、黄金藻植物、クリプト藻植物、炎色藻植物、緑色鞭藻植物、褐藻植物及び紅藻植物の9門に分類されるが、これらは色素組成、貯蔵物質の化学成分、鞭毛の数と位置及び物理化学的性質などにより特徴づけられ、相互に区別されている。
例えば、すべての藻類はクロロフィルa、カロチン及びキサントフィルを含むが、緑藻植物と緑虫植物は、そのほかにクロロフィルbを、また褐藻植物と大部分の炎色藻植物及び黄金色植物は、クロロフィルcを、紅藻植物はクロロフィルdを含んでいる。
また、藍藻植物と紅藻植物はフィコピリン色素を含むが、その中のエキネノンとミクソキサントフィルは藍藻植物に特有であり、紅藻植物にはアミロペクチンに類似の紅藻デンプンを含んでいる。
また、これらの藻類に特有な成分の中には、特殊の生理活性を示す物質があり、これらを抽出して種々の用途に供することも行われている。
そして、紅藻植物については、これまでそれに由来する物質の中に海洋無脊椎動物浮遊幼生の着生促進又は変態促進の作用を有するものがあることが報告されている。
例えば、紅藻綱サンゴモ目(Corallinales)サンゴモ科(Corallinaceae)コブイシモ属(Hydrolithon)コブイシモ(Hydrolithon reinboldii)の粉末や紅藻綱大型海藻スギノリ目(Gigartinales)イワノカワ科(Peyssonneliaceae)イワノカワ属(Peyssonnelia sp.)海藻の粉末がイシサンゴ類(Scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)サンゴの幼生の着生あるいは変態を促進することが報告されている(非特許文献1参照)。
さらに、紅藻綱サンゴモ目(Corallinales)サンゴモ科(Corallinaceae)コブイシモ属(Hydrolithon)コブイシモ(Hydrolithon reinboldii)から精製した分子量5〜10キロダルトンの低分子量硫酸化グリコサミノグリカンが、イシサンゴ類(Scleractinians)ヒラフキサンゴ科(Agariciidae)アガリシア・フミリス属(Agaricia humilis)の幼生の着生促進あるいは変態促進活性があることも明らかになっている(非特許文献1参照)。
また、紅藻綱サンゴモ目(Corallinales)サンゴモ科(Corallinaceae)コブイシモ属(Hydrolithon)コブイシモ(Hydrolithon reinboldii)から精製した分子量14,000ダルトン以下の低分子量硫酸化グリコサミノグリカンが、イシサンゴ類(scleractinians)ヒラフキサンゴ科(Agariciidae)アガリシア・フミリス属(Agaricia humilis)の幼生の着生促進あるいは変態促進活性があることも明らかになっている(非特許文献2参照)。
ところで、コブイシモ属海藻のような紅藻綱サンゴモ目に属する海藻は、一般に紅藻植物の大型海藻よりも生長が遅く、陸上における大量培養で生産するのが困難であるため、これを用いてミドリイシ科(Acroporidae)サンゴやヒラフキサンゴ科(Agariciidae)アガリシア・フミリス属(Agaricia humilis)のようなイシサンゴ類(Scleractinians)の幼生の着生促進又は変態促進活性を有する変態促進剤を工業的に大量生産するのは不適当である。
また、同じように生長が遅く、大量陸上培養が困難であるという理由で、イシサンゴ類(Scleractinians)の幼生の着生促進あるいは変態促進活性を有する変態促進剤を紅藻綱サンゴモ目に属する海藻を用いて大量に生産させるのは不適当である。そのため、ミドリイシ科(Acroporidae)サンゴやヒラフキサンゴ科(Agariciidae)アガリシア・フミリス属(Agaricia humilis)などの変態促進剤の生産には直立着床可能な大型海藻を原料とするのが好ましいとされている。
紅藻綱スギノリ目(Gigartinales)イワノカワ科(Peyssonneliaceae)イワノカワ属(Peyssonnelia sp.)に属する海藻については前述したとおり、ある種のサンゴの幼生に対し変態又は着生促進作用を示すことが知られているが、これは扁平な紅藻であり、直立着床可能な海藻、すなわち直立して生長する海藻に比べて一般に生長が遅い上に、培養面積が広くとられるので陸上において大量に培養するには不利である。
したがって、イシサンゴ類(Scleractinians)の幼生の着生促進又は変態促進活性を有する変態促進剤を得るには、殻状紅藻である大型海藻スギノリ目(Gigartinales)イワノカワ科(Peyssonneliaceae)イワノカワ属(Peyssonnelia sp.)海藻は不適当である。
しかも、コブイシモ属海藻などの紅藻綱サンゴモ目に属する海藻やスギノリ目(Gigartinales)イワノカワ科(Peyssonneliaceae)イワノカワ属(Peyssonnelia sp.)に属する海藻などの殻状紅藻は、基質に付着して生長するため、これらの海藻を陸上培養すると、海藻が付着している基質が他の生物などで汚染されやすく、培養継続が困難になるという欠点も有している。
そのほか、紅藻綱サンゴモ目(Corallinales)サンゴモ科(Corallinaceae)イシモ属(Lithothamnium sp.)の海藻、紅藻綱サンゴモ目(Corallinales)サンゴモ科(Corallinaceae)イシゴロモ属(Lithophyllum sp.)の海藻、ベニマダラ目(Hildenbrandiales)ベニマダラ科(Hildenbrandiaceae)ベニマダラ属(Hildenbrandia sp.)の海藻などの殻状紅藻由来の物質により、マキガイ綱(Gastropoda)アカネアワビ(Haliotis rufescens)幼生の着生又は変態が促進されることが報告されているし(非特許文献3参照)、紅藻綱大型海藻ウシケノリ目(Bangiales)ウシケノリ科(Bangiaceae)アマノリ属(Porphyra sp.)海藻から精製した可視部562nmに吸収をもつ成分が、マキガイ綱(Gastropoda)アカネアワビ(Haliotis rufescens)幼生の着生あるいは変態を促進することが知られている(非特許文献4参照)。
ところで、一般に基質に付着せずに、あるいは藻体のわずかな部分に相当する付着器でのみ基質に付着し、直立着床した状態で生長する海藻は、陸上培養において容器が汚染された場合に、直立部又は直立部先端部を別の容器に移し替えることにより、培養の継続が可能である。したがって、陸上培養により変態促進剤を生産させるには、紅藻綱サンゴモ目海藻や殻状紅藻は不向きであり、直立着床状態で生長する海藻、特に単藻培養株を用いるのが好ましい。
ここで単藻培養株とは、海洋藻類を処理し1種類の藻類にまで純化した藻類株であり、海洋藻類の室内培養などに利用されている。この単藻類培養株は、例えば成熟した藻類から胞子を単離し、人工海水や滅菌した海水や人工海水中で培養する方法により調製することができる。
また、一般に天然の海洋藻類は、表面の着生植物(epiphyte)や内部植物性寄生体(endophyte)を多く含んでいる。これら着生植物や内部植物性寄生体は、(1)海藻の陸上培養を継続的に行うことを困難にしたり、(2)海洋藻類由来の変態促進剤の精製工程において変態促進剤の高純度化を妨げる場合がある。そこで成熟した天然海洋藻類から胞子を単離し、人工海水や滅菌した海水中で培養して得た単藻培養株を調製することによって、天然の海洋藻類に含まれていた着生植物や内部植物性寄生体の量を効果的に減らすことができる。
このような理由により、生長の速い紅藻植物を用いて、陸上において大量培養することにより、効率よく変態促進剤特に無脊椎動物幼生に対する変態促進剤を製造する方法が望まれていたにもかかわらず、これまで、このような方法は知られていなかった。
「バイオロジカル・ブレタン(Biol.Bull.)」,1996年,第191巻,p.149−154 「バイオロジカル・ブレタン(Biol.Bull.)」,1991年,第181巻,p.104−122 「ジャーナル イクスペリメンタル マリン バイオロジー アンド エコロジー(J.Exp.Mar.Biol.Ecol.)」,1984年,第75巻,p.191−215 「ハイドロバイオロジア(Hydrobiologia)」,1984年,第116/117巻,p.155−158
本発明は、陸上における大量培養により効率よく生産しうる無脊椎動物幼生に対する新規な変態促進剤を提供するという課題を解決するためになされたものである。
本発明者らは、紅藻植物から抽出成分の生理的活性について種々研究を重ねた結果、紅藻植物に属する直立着床可能な大型海藻、換言すれば殻状紅藻以外の大型海藻から抽出される硫酸化多糖成分又は硫酸化グリコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分がイシサンゴ類のような無脊椎動物幼生に対し、変態促進作用及び着床促進作用を示すこと、これらの成分は該海藻からの抽出液の特定の画分に濃縮され、これから分離できることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、紅藻植物門(Rhodophyta)紅藻綱(Rhodophyceae)オゴノリ目(Gracilariales)、スギノリ目(Gigartinales)又はイギス目(Ceramiales)に属する直立着床可能な大型海藻の塩類水溶液抽出画分を有効成分としてなる無脊椎動物幼生の変態促進剤、及び紅藻植物門(Rhodophyta)紅藻綱(Rhodophyceae)オゴノリ目(Gracilariales)、スギノリ目(Gigartinales)又はイギス目(Ceramiales)に属する直立着床可能な大型海藻を塩類含有水溶液で抽出し、次いでこの抽出液に、先ず最終濃度30〜40質量%になるまで硫酸アンモニウムを加えて第1段目の塩析を行い、沈殿した夾雑物を除去したのち、さらにその抽出液に最終濃度70質量%程度になるまで硫酸アンモニウムを加えて第2段目の塩析を行い、沈殿として得られる粗活性成分画分を分取し、次いでゲルろ過クロマトグラフィーにより分子量20,000以上90,000以下の画分を分画するか、あるいはクロマトグラフィー処理して波長480〜570nmの領域に吸収極大を有する画分を分画し、無脊椎動物幼生に対する変態活性を示す画分を捕集することを特徴とする無脊椎動物幼生の変態促進剤の製造方法を提供するものである。
次に、本発明をさらに詳細に説明する。なお、海藻の分類は、[吉田忠生,「新日本海藻誌」,内田老鶴圃,1998年]によった。
本発明の変態促進剤は、紅藻植物門の紅藻綱オゴノリ目、スギノリ目又はイギス目に属する直立着床可能な大型海藻からの抽出物を有効成分とするものであるが、ここで直立着床可能とは、岩石のような固体に、付着器で着床し、直立状態を保ちながら生長しうることを意味し、また大型海藻とは、葉状部の長さが5mm以上の海藻を意味する。
本発明の原料としては、オゴノリ目(Gracilariales)、スギノリ目(Gigartinales)、又はイギス目(Ceramiales)に属する大型海藻が好ましい。
このようなオゴノリ目(Gracilariales)海藻の例としては、オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria sp.)海藻、オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)オゴノリ(Gracilaria vermiculophylla)あるいはオゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)などが挙げられる。
また、スギノリ目(Gigartinales)に属する海藻の例としては、ツカサノリ科(Kallymeniaceae)トサカモドキ属(Callophyllis sp.)、ツカサノリ科(Kallymeniaceae)トサカモドキ属(Callophyllis)ホソバノトサカモドキ(Callophyllis japonica)、ナミノハナ科(Rhizophyllidaceae)ナミノハナ属(Portieria sp.)、ナミノハナ科(Rhizophyllidaceae)ナミノハナ属(Portieria)ナミノハナ(Portieria japonica)、ミリン科の海藻(Solieriaceae)などが挙げられる。
さらに、イギス目(Ceramiales)に属する海藻の例としては、フジマツモ科(Rhodomelaceae)ソゾ属(Laurencia sp.)海藻、フジマツモ科(Rhodomelaceae)ソゾ属(Laurencia)ハネソゾ(Laurencia pinnata)などが挙げられる。
本発明で用いる原料としては、天然に生育している海藻でもよいが、単藻培養株が好ましい。
本発明の変態促進剤は、例えば前記した紅藻綱に属する直立着床可能な大型海藻を塩類含有水溶液で抽出し、この抽出液に、先ず最終濃度30〜40質量%になるまで硫酸アンモニウムを加えて第1段目の塩析を行い、沈殿した夾雑物を除去したのち、さらにその抽出液に最終濃度70質量%程度になるまで硫酸アンモニウムを加えて第2段目の塩析を行い、沈殿として得られる粗活性成分画分を分取し、次いでゲルろ過クロマトグラフィーにより分子量20,000以上90,000以下の画分を分画するか、あるいはこの沈殿をクロマトグラフィー処理して波長480〜550nmの領域に吸収極大を有する画分を分画し、イシサンゴ類など無脊椎動物の幼生に対する変態促進の活性を示す画分を捕集することによって製造することができる。
この際用いる塩類を含む水溶液としては、例えば生理食塩水、リン酸塩緩衝液、トリス塩酸緩衝液などが好ましい。
この方法を好適に行うには、上記の原料に以下に示す(イ)水溶性画分の抽出工程、(ロ)粗活性成分画分の分取工程、及び(ハ)変態促進剤の精製工程を順次施せばよい。
この場合、(イ)工程においては、原料に塩類含有水溶液、例えば塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液を加えてホモゲナイズしたのち、遠心分離処理し、上澄である粗抽出液を得る。
次に(ロ)工程においては、前記(イ)工程で得られた抽出液に、まず最終濃度が30〜40質量%程度の飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて1段目の塩析を行い、生成した沈殿を遠心分離処理により除去する。この操作で色素などの夾雑物が沈殿画分として除去される。次いで、上澄液を遠心分離し、これに最終濃度70質量%程度の飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて2段目の塩析を行い、生成した沈殿を遠心分離により分別したのち、この沈殿画分を塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液などの緩衝液で再溶解して粗活性成分画分を得る。
次いで、(ハ)工程においては、前記(ロ)工程で得られた粗活性成分画分を、塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液などの緩衝液に対して透析後、ゲルろ過クロマトグラフィーにより分子量20,000以上90,000以下の画分を分画し、イシサンゴ類のような無脊椎動物の幼生に対する変態促進などの活性を示す画分を捕集する。必要であれば、さらにクロマトグラフィーにより成分を分離し、高純度化した精製品を得ることができる。この際、最終段階で使用するクロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー又はゲルろ過クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィー或いはそれらの組合せを用いるのが好ましい。
ここでいう、分子量20,000以上90,000以下の画分とは、ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて、球状タンパク質を標準分子量物質として用いて、溶出画分の分子量を算出した結果が20,000以上90,000以下の分子量に相当する画分をいう。
この(ハ)工程はまた、前記(ロ)工程で得られた粗活性成分画分を、塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液などの緩衝液に対して透析後、クロマトグラフィー処理して波長480〜570nmの可視部において吸収極大を示す画分を分画し、精製された赤色系色素を含む画分を捕集することによって行うこともできる。この場合も必要であれば、さらにクロマトグラフィーにより成分を分離し、高純度化した精製品を得ることができる。この際、最終段階で使用するクロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー又はゲルろ過クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィー或いはこれらの組合せで好ましい。
上記の480〜570nmの領域に吸収極大を示す画分の回収は、例えばクロマトグラフィーカラムからの溶出液を経時的に少量の、好ましくはカラム体積以下のフラクションとして分取し、各フラクションごとに480〜570nmまでの可視部領域での吸光度を測定して、この領域内で最大の吸収を示した画分を捕集することにより行うことができる。
このようにして得られる画分から回収される物質は、イシサンゴ類のような無脊椎動物の幼生に対する着生促進又は変態促進の生理活性を有することによって特徴づけられる文献未載の新規物質であり、これは硫酸化多糖成分又は硫酸化グリコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分或いは生理活性色素のいずれかを主体としているものと考えられる。
本発明の変態促進剤は、紅藻綱オゴノリ目、スギノリ目、又はイギス目に属する大型海藻由来の新規物質であって、イシサンゴ類など無脊椎動物の幼生に対する変態促進活性を有し、また同じ幼生に対し着生促進活性を有している。しかも、この物質は、直立着床可能な紅藻植物由来のものであるので、大量陸上培養することにより、大量に製造することができる。
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
なお、各例における「変態率」とはイシサンゴ幼生が基層に着生し、放射状の骨格形成を行うステージ(シングルポリプステージ)に達した状態のサンプルの数の全体数に対する割合(%)を意味する。
(イ)水溶性画分の抽出工程
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)を用い、これを0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、天日乾燥して乾燥物とした。次いで、この乾燥物100gに0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)700mlを加えてホモゲナイズしたのち、このホモゲナイズした液を4℃で6時間放置後、遠心分離し、上澄として粗抽出液を得た。
(ロ)粗活性成分画分の分別工程
次いで、この粗抽出液に、最終濃度35質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて1段目の塩析を行った。硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で1時間放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して除去した。この操作で色素などの夾雑物が沈殿画分として除去された。次に、遠心分離で得た上澄に、最終濃度70質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で一晩放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して分別した。分別した沈殿画分を、0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)で再溶解し、粗活性成分画分を得た。
(ハ)粗活性成分画分の精製工程
次に、このようにして得られた粗活性成分画分を、0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)に対して透析後、遠心分離し不溶性の夾雑タンパク質を除去後、ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量20,000以上90,000以下の画分を分画し、精製品を得た。得られた精製品中の糖質、硫酸基、タンパク質分析の結果、同質量の精製品中で比較した場合、ヘキソース含有量が約6mg(フェノール−硫酸法による)、硫酸基含有量が約1.5mg(rhodizonate法による)、タンパク質含有量は0.2mg(Lowry法による)以下であった。化学分析の結果から、この精製品は、硫酸化多糖成分あるいは硫酸化グリコサミノグリカン成分あるいは硫酸化プロテオグリカン成分と推定された。
この精製品についてイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定した。
クシハダミドリイシなどミドリイシ科サンゴの多くは雌雄同体・配偶子放出型の繁殖生態であるので、これらのサンゴは、精子と浮力をもつ複数の卵が一つに包み込まれたバンドル(egg−spermbundle)を一斉に放出する。イシサンゴのバンドル(egg−spermbundle)採取と受精は以下のように行った。
成熟したクシハダミドリイシ4群体を高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で採取した。実験室冷暗所に設置した水槽内でクシハダミドリイシが卵放出する直前まで保存した。
次いで、クシハダミドリイシを1群体ごとに個別のろ過滅菌海水の水槽に分けて収容した。ろ過滅菌海水としては、1μmのグラスフィルターで一次ろ過した海水を、0.22μmのミリポアフィルターで精密ろ過したものを用いた。放卵(バンドルの放出)開始後、1群体から放出された配偶子をそれぞれ回収し、ろ過滅菌海水中へ添加した。卵と精子をろ過滅菌海水を入れた容器に移し、他の群体から分別された卵又は精子で他家受精した。得られたクシハダミドリイシの幼生をろ過滅菌海水の入った容器内で25℃で保存した。
このクシハダミドリイシの幼生を8日間25℃で維持した後、10mlのろ過滅菌海水を入れた20ml容量のポリスチレン製カップに10個体の幼生を入れ静置し、72時間後のイシサンゴ幼生の変態率を求めた。この際のサンプルとしては、上記の精製品1mlとろ過滅菌海水9mlとの混合物を用い、またブランクとしてろ過滅菌海水10mlのものを用いた。その結果を表1に示す。
比較例1
原料として高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で採取した褐藻類アミジグサ目(Dictyotales)アミジグサ科(Dictyotaceae)ハイオオギ属(Lobophora)ハイオオギ(Lobophora variegata)を用い、これをろ過滅菌海水で3回洗浄し、ろ紙上で軽く水分を除いた。このハイオオギ湿質量1gをとり、ろ過滅菌海水10mlを加えて乳鉢と乳棒を用いて4℃で粉砕し、褐藻類懸濁液を調製した。これを用いて実施例1と同様にしてクシハダミドリイシの幼生に対する生理活性を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 2005087177
表1より明らかなように、精製品(海藻由来硫酸化多糖成分又は硫酸化グリコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分)は、イシサンゴ幼生の変態を促進する活性を有している。また、ろ過滅菌海水及び褐藻類懸濁液はイシサンゴ幼生変態を促進する活性が認められなかった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、ナミノハナ(Portieria japonica)を用いて、実施例1の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。スギノリ目(Gigartinales)ナミノハナ科(Rhizophyllidaceae)ナミノハナ属(Portieria)ナミノハナ(Portieria japonica)は、高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で、クシハダミドリイシが生息しているのと同じ海域から採取して使用した。
この粗活性成分画分をゲルろ過クロマトグラフィーに通し、分子量20,000以上90,000以下の画分を集め、濃縮し、ナミノハナ由来硫酸化糖質(硫酸化多糖成分又は硫酸化グルコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分)画分を得た。ナミノハナ由来硫酸化糖質画分について実施例1と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定した。2回の実験での変態率は30%と30%で平均値は30%であった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、ホソバノトサカモドキ(Callophyllis japonica)を用いて、実施例1の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。スギノリ目(Gigartinales)ツカサノリ科(Kallymeniaceae)トサカモドキ属(Callophyllis)ホソバノトサカモドキ(Callophyllis japonica)は、高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で、クシハダミドリイシが生息しているのと同じ海域から採取して使用した。
この粗活性成分画分をゲルろ過クロマトグラフィーに通し、分子量20,000以上90,000以下の画分を集め、濃縮し、ホソバノトサカモドキ由来硫酸化糖質(硫酸化多糖成分又は硫酸化グルコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分)画分を得た。ホソバノトサカモドキ由来硫酸化糖質画分について実施例1と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定した。2回の実験での変態率は20%と30%で平均値は25%であった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、ハネソゾ(Laurencia pinnata)を用いて、実施例1の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。イギス目(Ceramiales)フジマツモ科(Rhodomelaceae)ソゾ属(Laurencia)ハネソゾ(Laurencia pinnata)は、高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で、クシハダミドリイシが生息しているのと同じ海域から採取して使用した。
この粗活性成分画分をゲルろ過クロマトグラフィーに通し、分子量20,000以上90,000以下の画分を集め、濃縮し、ハネソゾ由来硫酸化糖質(硫酸化多糖成分又は硫酸化グルコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分)画分を得た。ハネソゾ由来硫酸化糖質画分について実施例1と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定した。2回の実験での変態率は20%と20%で平均値は20%であった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、トゲキリンサイ(Eucheuma serra)を用いて、実施例1の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。スギノリ目(Gigartinales)ミリン科(Solieriaceae)キリンサイ属(Eucheuma)トゲキリンサイ(Eucheuma serra)は、徳島県日和佐沖の太平洋で水深5mないし10mの間で、採取したものを実験に使用した。
この粗活性成分画分をゲルろ過クロマトグラフィーに通し、分子量20,000以上90,000以下の画分を集め、濃縮し、トゲキリンサイ由来硫酸化糖質(硫酸化多糖成分又は硫酸化グルコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分)画分(分子量20,000以上)を得た。トゲキリンサイ由来硫酸化糖質画分について実施例1と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定した。2回の実験での変態率は20%と20%で平均値は20%であった。
比較例2
実施例1の(ロ)の粗活性成分画分の分別工程において、硫酸アンモニウム添加による2段階の塩析による分別処理の代わりに、50質量%エチルアルコールによる分別処理[「フィトケミストリー(Phytochemistry)」,1988年,第27巻,p.2063−2067参照]を行った以外は、実施例1と同様にして粗画分を得た。この粗画分をゲルろ過クロマトグラフィーに通し、分子量20,000以上90,000以下の画分を集め、濃縮し、エチルアルコール分別画分を得た。エチルアルコール分別画分について実施例1と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定した。その結果、エチルアルコール分別画分には、イシサンゴ幼生変態を促進する活性が検出されなかった。
参考例
標準分子量タンパク質としてアマシャムバイオサイエンス社より購入したチログロブリン(質量平均分子量669,000)、フェリチン(質量平均分子量440,000)、ウシ血清アルブミン(質量平均分子量67,000)、オボアルブミン(質量平均分子量43,000)、及びリボヌクレアーゼA(質量平均分子量13,700)を用い、ゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積と質量平均分子量との関係を求めた。
このようにして得た標準タンパク質とゲルろ過クロマトグラフィーにおける溶出体積については、チログロブリンの溶出体積が6.56ml、フェリチンの溶出体積が6.78ml、ウシ血清アルブミンの溶出体積が7.51ml、オボアルブミンの溶出体積が7.91ml、及びリボヌクレアーゼAの溶出体積が9.05mlであることが分った。
この結果より、質量平均分子量の常用対数Yとゲルろ過クロマトグラフィーでの溶出体積Xとは次式の関係を有することが分かる。
Y=10.24118407−0.691372064X (I)
なお、この式の相関係数は−0.971であった。
次に、変態促進活性をもつ紅藻植物の大型海藻由来の硫酸化糖質成分(硫酸化多糖成分又は硫酸化グリコサミノグリカン成分又は硫酸化プロテオグリカン成分)0.1mlをTSKgelG3000PWxlカラムに通し、ゲルろ過クロマトグラフィーカラムから0.1mlずつ溶出画分を集めた。カラムからの総溶出体積が0.05〜0.15mlまでのフラクションをフラクション番号1とした。(従ってフラクション番号50のフラクションには、カラムからの総溶出体積が4.95〜5.05mlまでが分画される。このフラクションの溶出体積は平均値を取って5.00mlとした)。集めた各溶出画分についてフェノール硫酸法による糖定量を行い、溶出体積及び(I)式に従って計算した。
この結果に基づき、ゲルろ過クロマトグラフィーでの溶出体積と各フラクションの糖含有量との関係のグラフを図1に示す。
その結果、変態促進活性をもつ海藻由来硫酸化糖質成分の溶出した画分を示すピークの頂点(溶出体積7.90ml)は分子量60,200に相当した。
また、(I)式より、分子量20,000以上90,000以下の成分の溶出体積範囲は7.647ml以上8.592ml以下となり、変態促進活性をもつ海藻由来硫酸化糖質成分のピークの頂点の溶出体積7.90mlは、その範囲に包含されることが分る。
(イ)水溶性画分の抽出工程
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)を用い、これを0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、天日乾燥して乾燥物とした。次いで、この乾燥物100gに0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)700mlを加えてホモゲナイズしたのち、このホモゲナイズした液を4℃で6時間放置後、遠心分離し、上澄として粗抽出液を得た。
(ロ)粗活性成分画分の分別工程
次いで、この粗抽出液に、最終濃度35質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて1段目の塩析を行った。硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で1時間放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して除去した。この操作で紫色色素などの夾雑物が沈殿画分として除去された。次に、遠心分離で得た上澄に、最終濃度70質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で一晩放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して分別した。分別した沈殿画分を、25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)で再溶解し、粗活性成分画分を得た。
(ハ)活性成分の精製工程
次に、このようにして得た粗活性成分画分を、25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)に対して透析したのち、遠心分離し、不溶性の夾雑物タンパク質を除去した再溶解活性成分画分を調製した。この再溶解活性成分画分120mlを充填剤(東ソー社製,商標名「DEAEトヨパール650S」)を詰めたゲルろ過用カラム(内径2.6cm、ゲル高さ21.0cm、ゲル体積約120ml)を用い、移動相中の塩化ナトリウムの濃度を0から0.21Mまで上昇させてイオン交換クロマトグラフィー処理を行った。この間、イオン交換クロマトグラフィーカラムから10mlずつ溶出画分を捕集し、10mmのセルで可視部540nmの吸光度を測定した。このようにして、可視部540nmの吸光度が0.01以上のフラクションNo174から272までを採取し、精製品を得た。図2にこのフラクションと吸光度との関係を示す。この精製品について吸収スペクトルを測定した結果、480〜570nmの間に可視部の吸収極大を有する成分であることが確認された。図3にフラクションNo220の吸収スペクトルを示す。溶出画分のフラクションNo220の吸収極大データは、480〜570nmまでの可視部領域では、497nm、541nm及び564nmであった。
この例におけるイオン交換クロマトグラフィーの移動相条件は以下のとおりである。
すなわち、再溶解活性成分画分をイオン交換カラムに添加終了後、カラム体積の約10倍量の25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)でカラムを洗浄したのち、緩衝液中の塩化ナトリウム濃度を0から0.21Mまで直線的に上昇させてカラムに吸着した赤色活性成分を採取した。この際の塩化ナトリウム濃度を0から0.21Mまで上昇させたときの移動相の合計体積はカラム体積の約13倍であった。
このようにして得た精製品についてイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定した。
クシハダミドリイシなどミドリイシ科サンゴの多くは雌雄同体・配偶子放出型の繁殖生態であるので、これらのサンゴは、精子と浮力をもつ複数の卵が一つに包み込まれたバンドル(egg−spermbundle)を一斉に放出する。この実験においては、イシサンゴのバンドル(egg−spermbundle)採取と受精を以下のように行った。
成熟したクシハダミドリイシ4群体を高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で採取し、実験室冷暗所に設置した水槽内でクシハダミドリイシが卵放出する直前まで保存した。次いで、クシハダミドリイシを1群体ごとに個別の水槽(ろ過滅菌海水が入ったもの)に分けて収容した。ろ過滅菌海水としては、1μmのグラスフィルターで一次ろ過した海水を、0.22μmのミリポアフィルターで精密ろ過したものを用いた。放卵(バンドルの放出)開始後、1群体から放出された配偶子をそれぞれ回収し、ろ過滅菌海水中へ添加した。卵と精子を別の容器(ろ過滅菌海水を収容)に移し、他の群体から分別された卵あるいは精子で他家受精した。得られたクシハダミドリイシの幼生をろ過滅菌海水の入った容器内で25℃で保存した。
このクシハダミドリイシの幼生を8日間25℃で維持した後、10mlのろ過滅菌海水を入れた20ml体積のポリスチレン製カップに10個体の幼生を入れ静置し、72時間後のイシサンゴ幼生の変態数を求めた。
試料としては、精製品1mlとろ過滅菌海水9mlとの混合物を用い、ブランクとしてはろ過滅菌海水のみ10mlを用いた。この結果を表2に示す。
比較例3
原料として、高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で採取した褐藻類アミジグサ目(Dictyotales)アミジグサ科(Dictyotaceae)ハイオオギ属(Lobophora)ハイオオギ(Lobophora variegata)を用い、これをろ過滅菌海水で3回洗浄し、ろ紙上で軽く水分を除いた。このハイオオギ湿質量1gをとり、ろ過滅菌海水10mlを加えて乳鉢と乳棒を用いて4℃で粉砕し、褐藻類懸濁液を調製した。これらの試料について実施例6と同様にして変態率を求め、その結果を表2に示す。
Figure 2005087177
表2より明らかなように、精製品(480〜570nmの間に可視部の吸収極大を有する成分)は、イシサンゴ幼生の変態を促進する活性を有している。また、ろ過滅菌海水及び褐藻類懸濁液についてはイシサンゴ幼生変態を促進する活性は全く認められなかった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、ナミノハナ(Portieria japonica)を用いて、実施例1の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。スギノリ目(Gigartinales)ナミノハナ科(Rhizophyllidaceae)ナミノハナ属(Portieria)ナミノハナ(Portieria japonica)は、高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で、クシハダミドリイシが生息しているのと同じ海域から採取して使用した。
この粗活性成分画分を実施例6と同様にイオン交換クロマトグラフィー処理し、可視部540nmの吸光度が0.01以上のフラクションを集めることにより、ナミノハナ由来変態促進成分として精製品を得た。この精製品について実施例6と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定したところ、2回の実験での変態率は20%と20%で平均値は20%であった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、ホソバノトサカモドキ(Callophyllis japonica)を用いて、実施例6の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。スギノリ目(Gigartinales)ツカサノリ科(Kallymeniaceae)トサカモドキ属(Callophyllis)ホソバノトサカモドキ(Callophyllis japonica)は、高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で、クシハダミドリイシが生息しているのと同じ海域から採取して使用した。
この粗活性成分画分を実施例6と同様にイオン交換クロマトグラフィー処理し、可視部540nmの吸光度が0.01以上のフラクションを集めることにより、ホソバノトサカモドキ由来活性成分として精製品を得た。この精製品について実施例6と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定したところ、2回の実験での変態率は20%と20%で平均値は20%であった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、ハネソゾ(Laurencia pinnata)を用いて、実施例1の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。イギス目(Ceramiales)フジマツモ科(Rhodomelaceae)ソゾ属(Laurencia)ハネソゾ(Laurencia pinnata)は、高知県横浪半島沖太平洋水深5mないし10mの間で、クシハダミドリイシが生息しているのと同じ海域から採取して実験に使用した。
この粗活性成分画分を実施例1と同様にイオン交換クロマトグラフィー処理し、可視部540nmの吸光度が0.01以上のフラクションを集めることにより、ハネソゾ由来活性成分として精製品を得た。ハネソゾ由来活性成分について実施例1と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定したところ、2回の実験での変態率は20%と20%で平均値は20%であった。
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、トゲキリンサイ(Eucheuma serra)を用いて、実施例6の(イ)、(ロ)工程を行い、粗活性成分画分を得た。スギノリ目(Gigartinales)ミリン科(Solieriaceae)キリンサイ属(Eucheuma)トゲキリンサイ(Eucheuma serra)は、徳島県日和佐沖の太平洋で水深5mないし10mの間で、採取したものを実験に使用した。
この粗活性成分画分を実施例6と同様にイオン交換クロマトグラフィー処理し、可視部540nmの吸光度が0.01以上のフラクションを集めることにより、トゲキリンサイ由来活性成分として精製品を得た。この精製品について実施例6と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定したところ、2回の実験での変態率は20%と20%で平均値は20%であった。
比較例4
実施例6の(ロ)の粗活性成分画分の分別工程において、硫酸アンモニウム添加の2段階の塩析による分別処理の代わりに、50質量%エチルアルコールによる分別処理[「フィトケミストリー(Phytochemistry)」,1988年,第27巻,p.2063−2067参照]を行った以外は、実施例6と同様にして粗画分を得た。この粗画分について実施例6と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定したところ、エチルアルコール分別画分には、イシサンゴ幼生変態を促進する活性が検出されなかった。
比較例5
原料としてオゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)ツルシラモ(Gracilaria chorda)(徳島県吉野川河口域産)の代わりに、紅藻綱大型海藻ウシケノリ目(Bangiales)ウシケノリ科(Bangiaceae)アマノリ属海藻(Porphyra sp.)を用いて、実施例6の(イ)、(ロ)工程を行い、粗赤色系色素画分を得た。
この粗赤色系色素画分を実施例6と同様にイオン交換クロマトグラフィー処理し、可視部540nmの吸光度が0.01以上のフラクションを集めることにより、アマノリ属海藻由来赤色系色素成分として精製品を得た。この精製品について実施例6と同様にイシサンゴ類(scleractinians)ミドリイシ科(Acroporidae)クシハダミドリイシ(Acropora hyacinthus)幼生に対する変態促進活性を測定したところ、2回の実験での変態率は0%と0%で平均値は0%であった。
本発明の変態促進剤は、水産業分野、医療分野、生化学工業分野などにおいて、例えばイシサンゴ類幼生着生促進剤、イシサンゴ類幼生変態促進剤、イシサンゴ類種保存剤、サンゴ礁保存剤や検査用試薬として有用である。
参考例におけるゲルろ過クロマトグラフィーでの溶出体積と各フラクションの糖含有量との関係を示すグラフ。 実施例6において得られた粗活性成分画分の溶出画分について長さ10mmのセルで測定した可視部540nmの吸光度を示すグラフ。 実施例6における粗活性成分の溶出画分のフラクション番号220の吸光スペクトルを示すグラフ。

Claims (5)

  1. 紅藻植物門(Rhodophyta)紅藻綱(Rhodophyceae)オゴノリ目(Gracilariales)、スギノリ目(Gigartinales)又はイギス目(Ceramiales)に属する直立着床可能な大型海藻の塩類水溶液抽出画分を有効成分としてなる無脊椎動物幼生の変態促進剤。
  2. 塩類水溶液抽出画分が分子量20,000以上90,000以下の画分である請求項1記載の無脊椎動物幼生の変態促進剤。
  3. 塩類水溶液抽出画分が波長480〜570nmの領域に吸収極大を有する画分である請求項1記載の無脊椎動物幼生の変態促進剤。
  4. 紅藻植物門(Rhodophyta)紅藻綱(Rhodophyceae)オゴノリ目(Gracilariales)、スギノリ目(Gigartinales)又はイギス目(Ceramiales)に属する直立着床可能な大型海藻を塩類含有水溶液で抽出し、次いでこの抽出液に、先ず最終濃度30〜40質量%になるまで硫酸アンモニウムを加えて第1段目の塩析を行い、沈殿した夾雑物を除去したのち、さらにその抽出液に最終濃度70質量%程度になるまで硫酸アンモニウムを加えて第2段目の塩析を行い、沈殿として得られる粗活性成分画分を分取し、次いでゲルろ過クロマトグラフィーにより分子量20,000以上90,000以下の画分を分画し、無脊椎動物幼生に対する変態促進活性を示す画分を捕集することを特徴とする請求項2記載の無脊椎動物幼生の変態促進剤の製造方法。
  5. 紅藻植物門(Rhodophyta)紅藻綱(Rhodophyceae)オゴノリ目(Gracilariales)、スギノリ目(Gigartinales)又はイギス目(Ceramiales)に属する直立着床可能な大型海藻を塩類含有水溶液で抽出し、得られた抽出液に、先ず最終濃度30〜40質量%になるまで硫酸アンモニウムを加えて第1段目の塩析を行い、沈殿した夾雑物を除去したのち、さらにその抽出液に最終濃度70質量%程度になるまで硫酸アンモニウムを加えて第2段目の塩析を行い、沈殿として得られる粗活性成分画分を分取し、次いでこれからクロマトグラフィー処理して波長480〜570nmの領域に吸収極大を有する画分を分画し、無脊椎動物幼生に対する変態活性を示す画分を捕集することを特徴とする請求項3記載の無脊椎動物幼生の変態促進剤の製造方法。
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