JP2005077245A - 有機電子素子形成用材料の組成選定方法 - Google Patents

有機電子素子形成用材料の組成選定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】信頼性に優れた有機電子素子を形成するための有機電子素子形成用材料の組成を選定する方法を提供する。
【解決手段】異なる組成からなる複数の有機電子素子形成用材料を準備するプロセスと、複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、経時的な変化を生じさせる外的要素を印加し又は印加しながら、当該有機電子素子形成用材料と光導波路との界面の状態変化をスペクトルとして測定するプロセスと、スペクトルを時間軸展開して、有機電子素子形成用材料に生じる変化を段階毎に前記異種分析手段で測定するプロセスと、スペクトルのデータと、各段階毎の異種分析データとを比較するプロセスと、複数の有機電子素子形成用材料それぞれから得られたスペクトルのデータと各段階毎の異種分析データとを対比して、最適な有機電子素子形成用材料の組成を選定するプロセスとからなる。
【選択図】図6

Description

本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子等に好ましく使用される有機電子素子形成用材料の組成選定方法に関し、更に詳しくは、スラブ型の光導波路を利用して測定するスペクトル測定手段を用い、その測定手段から得られる塗膜界面の経時的なスペクトルデータと、他の分析手段から得られる塗膜の経時的な分析データとから得られた新しい情報をもとにして最適な組成を選定する方法に関するものである。
有機物を発光体に用いた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、液晶ディスプレイとは異なり、励起された発光体からの蛍光発光又は燐光発光を利用した自発光型タイプのディスプレイである。そのため、膜構成がシンプルで、動画対応を可能とする高速応答性が期待できることから、次世代ディスプレイとして注目されている。
有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、有機ELディスプレイという。)を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という。)として、真空蒸着等で成膜された有機化合物薄膜を発光膜とする有機EL素子が盛んに研究され、一部実用化されている。しかし、真空蒸着等で成膜可能な有機化合物は低分子化合物であり、その低分子化合物を用いた有機EL素子においては、経時的に有機膜の結晶化や凝集が起こり素子が劣化し素子寿命が低下する等の問題があり、さらなる研究開発が継続されている。
一方、高分子材料や塗布型の低分子材料を発光材料として用いた有機EL素子が提案されている。それらの有機化合物は、溶媒中に溶解又は分散させて有機EL素子形成用の塗布溶液とすることができるので、その塗布溶液で大面積の有機EL素子を極めて効率的に製造できるという利点がある。そのため、近年においては、高発光効率と長寿命を達成できる塗布型の有機電子素子形成用材料の開発及びその有機電子素子形成用材料と共に配合する溶媒や添加物質の検討等が活発に研究されている。
しかしながら、上述した有機EL素子形成用の塗布溶液を用いて有機EL素子を形成する場合においては、その塗布溶液中の有機化合物材料、溶媒及び添加物質等の組成が、発光膜の形成にどのように関与しているか、また、形成された発光膜の発光効率や寿命にどのように関与しているかについて必ずしも明らかにされているとは言えなかった。その理由の一つとして、有機EL素子の発光効率や寿命等の特性は、発光膜のバルクのキャリア(電子・正孔)の移動度や安定性に影響されると共に、膜界面(例えば、発光膜と電極界面、発光膜と電荷輸送膜界面、など)におけるキャリアの移動度や安定性にも影響されることが考察されているが、膜界面での解析は、バルクの解析に比べて困難であるために十分に行われていないことが要因の一つに挙げられる。特に有機EL素子形成用材料は溶媒等各種の構成成分を含むので、塗布膜の乾燥過程における膜界面の現象変化や、形成された発光膜の劣化過程における膜界面の現象変化を塗布材料の組成に関連づけて解析することが困難であった。
上述した膜界面の界面現象を解析する手法としては、多重内部反射赤外分光法や、ケルビンプローブ接触電位差測定法等が提案されている。しかし、これらの手法は特定の界面のみの測定しかできないことから汎用性がなく、さらに再現性にも乏しいという難点があり、上述した膜界面の有効な解析手法とは言えなかった。
ところで、スラブ型光導波路を利用して界面、表面吸着物、薄膜、極微量の試料などの光吸収スペクトルを高感度に測定するための装置が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。この光吸収スペクトル測定装置は、ある一定の波長幅を持つ光、例えば白色光をレンズで集光して、レンズと所定間隔に設定したプリズムから光をスラブ光導波路の光導波路膜に入射し、光導波路膜内を全反射した光をプリズムを経てプリズムと所定間隔に設定したレンズで取り出し、分光器で出射光を分光し、検出器に送ることにより、極めて大きな反射回数が得られ、高感度の光吸収スペクトルの測定が可能である。
特開平8−75639号公報 特開2001−108611号公報
本発明は、スラブ型の光導波路を利用して測定するスペクトル測定手段を用い、その測定手段から得られる経時的なスペクトルデータと、他の分析手段から得られる分析データとから得られた情報をもとにして、信頼性に優れた有機電子素子を形成するための有機電子素子形成用材料の組成を選定する方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明の有機電子素子形成用材料の組成選定方法は、スラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定手段と、1又は2以上の異種分析手段とを用いた有機電子素子形成用材料の組成を選定する方法であって、異なる組成からなる複数の有機電子素子形成用材料を準備するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、経時的な変化を生じさせる外的要素を印加し又は印加しながら、当該有機電子素子形成用材料と前記光導波路との界面の状態変化をスペクトルとして測定するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、前記スペクトルを時間軸展開して、前記有機電子素子形成用材料に生じる変化を段階毎に前記異種分析手段で測定するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、前記スペクトルのデータと、前記各段階毎の異種分析データとを比較するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料それぞれから得られたスペクトルのデータと各段階毎の異種分析データとを対比して、最適な有機電子素子形成用材料の組成を選定するプロセスと、を有することを特徴とする。
この発明は、測定試料である有機電子素子用材料に外的要素を与えて塗膜を経時変化させながらスペクトル測定を行い、その経時的な測定結果に基づいて、変化した状態で1又は2以上の異種分析測定を行う。そして、両者の結果を比較する。そして、こうした比較を異なる組成の有機電子素子形成用材料同士で行うことにより、界面の状態変化に及ぼす組成の影響について比較できるので、その比較結果により、最適な有機電子素子形成用材料の組成を選定することができる。従って、この発明によれば、複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、外的要素を付加して塗膜状態を経時的に変化させた際における塗膜界面の状態分析データと、個々の場面における塗膜バルクの分析データとから、複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについての状態変化情報を捉えることができる。その結果、組成の異なる材料から得られた経時的な状態変化挙動を明らかにでき、組成を変化させた材料で作製した有機電子素子の経時的な特性変化を予測することができるので、最適な有機電子素子用材料を開発するための知見を得て、より望ましい有機電子素子の開発に利用できる。
上記本発明の有機電子素子形成用材料の組成選定方法において、(1)前記有機電子素子形成用材料に生じる変化が、有機電子素子形成用材料の塗布膜形成過程、又は、有機電子素子形成用材料から形成された有機電子素子の劣化過程、その熟成処理過程、そのエージング処理過程又はその光照射処理過程であることが好ましく、(2)前記スペクトルデータが、紫外可視吸収スペクトルデータであることが好ましく、(3)前記異種分析手段が、熱分析手段、質量分析手段及び分光分析手段から選ばれる1又は2以上の手段であることが好ましく、(4)前記有機電子素子形成用材料又は当該有機電子素子形成用材料から得られる有機電子素子の同一界面における測定結果の二次元情報と、当該測定結果の経時情報とを合わせて三次元データとし、当該三次元データを用いて前記有機電子素子形成用材料又は前記光導波路との界面の状態変化を解析する情報処理プロセスを、さらに備えることが好ましく、(5)前記外的要素は、一時的、断続的又は継続的に印加される熱、光、電流及び磁気から選ばれる1又は2以上の要素であることが好ましく、(6)前記有機電子素子形成用材料が、有機エレクトロルミネッセンス素子形成用材料であることが好ましい。
以上説明したように、本発明の組成選定方法によれば、組成の異なる材料から得られた経時的な状態変化挙動を明らかにでき、組成を変化させた材料で作製した有機電子素子の経時的な特性変化を予測することができるので、最適な有機電子素子用材料を開発するための知見を得て、より望ましい有機電子素子の開発に利用できる。
本発明によれば、従来、素子作製し、特性評価まで行わなければ最適な有機電子素子形成用材料の組成を選定できなかったが、本発明の組成選定方法によれば、異なる組成を有する複数の材料についてのスペクトルデータと異種分析手段で測定した分析データとを対比し、その化学状態を解析することができるので、従来のような素子作製・特性評価まで行わなわなくても、選定作業における方向性が明らかになるので、選定の大幅な簡略化が期待できる。さらに、界面紫外可視吸収スペクトルによる材料の電子状態、配向状態変化と、材料の化学構造、質量変化が何らかの相関を調べることもでき、経時変化、劣化の機構解明や、安定性向上のための対策検討への活用も期待できる。
以下、本発明の有機電子素子形成用材料の組成選定方法について具体的に説明する。
本発明の有機電子素子形成用材料の組成選定方法は、スラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定装置と、1又は2以上の異種分析装置とを用いた方法を利用して行われる。
(スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定)
最初に、スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置について説明する。スラブ型光導波路分光法は、分子や官能基の振動を捉える赤外分光法ではなく、電子状態やエネルギーバンドギャップに関わる短波長域の界面吸収特性を経時的に測定できる分光法である。そのため、化学結合や化学構造の変化を伴わない膜状態の微妙な変化や相違、ダイナミクスの分析に有効である。
図1は、スラブ型光導波路分光法の原理図である。スラブ型光導波路においては、光導波路基板1に光2を入れると、その光2が光導波路基板1の表面で全反射して進む。このとき、光導波路基板上に測定に供される塗布膜3を形成すると、基板内を全反射して進む光2の表面波が塗布膜中に僅かに染みこむ。この表面波は、エバネッセント波4と言われ、図1中に記載したように、塗布膜内に指数関数的に減衰しながら染みこむ。このときの染み込み深さ(dp)は、次式のように表される。下記式において、λは入射波波長、θは入射角度、n1は導波路基板の屈折率、n2は塗布膜もしくはサンプル膜周辺環境の屈折率である。
Figure 2005077245
このスラブ型光導波路においては、染み込み深さ(dp)が非常に浅く、調整により光導波路基板1の表面から1μm以内に存在する分子のみについての情報を選択的に且つ非破壊的に解析することができる。また、より薄い光導波路基板1を用いることにより、反射回数を増やすことができ、より高感度で測定することができる。このスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置としては、特開平8−75639号公報及び特開2001−108611号公報に開示されている測定装置を挙げることができ、より具体的には、システムインスツルメンツ社製のSIS−50型装置を挙げることができる。
図2は、特開平8−75639号公報に開示されているスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置の一例を示す構成図である。図2において、光源10としては、遠紫外から遠赤外までのうち任意の波長範囲を持つ光を発射する光源が使用され、例えば、Xeランプが使用される。光チョッパー30は、光源10からの光を一定の周期の断続光にするものであり、光源10と入射光側光ファイバー31の間に設けられる。試料測定部は、入射光側レンズ11、出射光側レンズ15、入射光側プリズム12、出射光側プリズム14、スラブ型光導波路13、位置制御機構16を有している。入射光側レンズ11は、入射光側光ファイバー31の出口側の先端に設けられ、出射光側レンズ15は、出射光側光ファイバー32の入口側の先端に設けられる。なお、特開2001−108611号公報に記載のように、プリズムを使用しない光結合法を適用することもできる。
図3と図4は、スラブ型光導波路の平面図と断面図であり、入射光側プリズム12と出射光側プリズム14は、スラブ型光導波路13上に配置される。各プリズム12,14は、試料54と参照部分53をプリズムを付け直すことなく測定可能にするため、細長いものが使用される。スラブ光導波路13は、光導波路層52を支持するための基板51と、光導波路層52とからなる。スラブ光導波路13の片側部分には帯状に試料54が乗り、その反対側、即ち試料54のない部分は参照部分53となる。
検出部は、図2に示すように、分光器41、光電子増倍管43、増幅器44、及びコンピュータ42を有している。光源10から発射された白色光は、光チョッパー30で一定の周期の断続光にされた後、入射光側光ファイバー31に導入される。入射光側光ファイバー31に導入された断続光は、入射光側光ファイバー31を通り、出光側の先端に設けられた入射光側レンズ11で集光され、適当な角度で入射光側プリズム12に導入される。入射光側レンズ11で集光された断続光は、入射光側プリズム12に導入された後、スラブ型光導波路13の光導波路層52内に入射し、その光導波路層52内に入射した断続光は、光導波路層52内で全反射を繰返した後、光導波路層52内から出射し、出射光側プリズム14に導入される。出射光側プリズム14に導入された断続光は、出射光側光ファイバー32の入光側の先端に設けられた出射光側レンズ15により取り出され、出射光側光ファイバー32によって、分光器41に送られる。分光器41によって分光された断続光は、光電子増倍管43、増幅器44を経て、コンピュータ42に送られ演算処理されることにより、スペクトルが得られる。
図5は、本発明に好ましく適用するスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置である。図5に示すスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置は、多重反射型紫外可視吸収スペクトル測定と、蛍光発光スペクトル測定とを同時に行うことができる装置である。この測定装置は、塗布膜3と光導波路基板1との間の多重反射型紫外可視吸収スペクトルを検出する紫外可視吸収用CCD分光器7を備えている。また、光導波路から取り出される蛍光発光9を検出する蛍光用PMT分光器8を備えている。なお、符号5はプリズムであり、符号6は反射ミラーである。
この多重反射型紫外可視吸収スペクトル測定は、界面の電子状態変化と、化学結合変化との相関関係が明らかとなり、塗布膜3の官能基や化学構造由来の情報である紫外可視吸収スペクトルデータを入手するのに有効であり、蛍光発光スペクトル測定は、界面の電子状態変化と発光分光特性との関係が明らかとなり、特に有機EL素子特性において重要な発光特性情報である蛍光発光スペクトルデータを入手するのに有効である。
このスペクトル測定装置は、上記の各分光器7,8から得られた経時的な分光情報を、解析装置101に出力する。図5に示す解析装置101は、得られた分光情報を解析可能に処理する機能を有するものであれば特に限定されず、パーソナルコンピュータ等の演算機能を内蔵した情報処理装置又は画像表示装置、又は演算素子を内蔵したプリンター装置等を挙げることができる。この解析装置101により、例えば図5に示すように、時間軸に対する分析情報を表示することができる。
(有機電子素子形成用材料の組成選定方法)
本発明の組成選定方法は、上述したスラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定手段と、1又は2以上の異種分析手段とを用いた組成選定方法であって、(i)異なる組成からなる複数の有機電子素子形成用材料を準備するプロセスと、(ii)前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、経時的な変化を生じさせる外的要素を印加し又は印加しながら、当該有機電子素子形成用材料と前記光導波路との界面の状態変化をスペクトルとして測定するプロセスと、(iii)前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、前記スペクトルを時間軸展開して、前記有機電子素子形成用材料に生じる変化を段階毎に前記異種分析手段で測定するプロセスと、(iv)前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、前記スペクトルのデータと、(v)前記各段階毎の異種分析データとを比較するプロセスと、(vi)前記複数の有機電子素子形成用材料それぞれから得られたスペクトルのデータと各段階毎の異種分析データとを対比して、最適な有機電子素子形成用材料の組成を選定するプロセスと、を有する。以下、(i)〜(vi)の各プロセスについて説明する。
(準備プロセス)
本発明の組成選定方法の対象となる有機電子素子用材料は、例えば有機EL素子形成用材料においては、正孔輸送層用材料として、ポリチオフェン又はその誘導体を有する水系材料や、ポリビニルカルバゾール又はその誘導体を有する非水系材料を例に挙げることができる。また、発光層用材料としては、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン又はそれらの誘導体を有する非水系材料を例に挙げることができる。なお、水分に弱い有機ELの性質状、水系材料で発光層を形成することは好ましくない。
水系の正孔輸送層用材料インキとしては、通常、ポリチオフェン又はその誘導体を1〜5重量%含有する水溶液若しくは水分散液が挙げられる。
また、非水系の正孔輸送層用材料インキとしては、通常、ポリビニルカルバゾール又はその誘導体を1〜5重量%含有する有機溶剤溶液が挙げられる。
また、非水系の発光層用インキとしては、通常、ポリフルオレン又はその誘導体を1〜5重量%含有する有機溶剤溶液が挙げられる。なお、有機溶剤としては、トルエンに代表される芳香族有機溶剤、ジクロロエタンに代表されるハロゲン系有機溶剤を用いることができる。
本発明の組成選定方法は、上述した有機電子素子形成用材料の構成成分の種類の選定、及び選定された構成成分の含有量の選定に好ましく適用される方法である。従って、本発明の組成選定方法の適用においては、先ず、異なる組成からなる複数の有機電子素子形成用材料(特に有機EL素子においてEL発光特性に大きな影響を与える発光層用材料)を準備する。
準備された有機電子素子形成用材料として、例えば、ポリフルオレン誘導体が1重量%のp−キシレン溶液(有機EL素子形成用材料A。以下、A材料という。)と、o−キシレン溶液(有機EL素子形成用材料B。以下、B材料という。)とを例にして以下説明する。
(測定プロセスI)
次に、準備されたA材料とB材料のそれぞれについて、経時的な変化を生じさせる外的要素を印加し又は印加しながら、各材料からなる塗布膜3と光導波路基板1との界面の状態変化をスペクトルとして測定する。
塗布膜3に経時的に外的要素を印加することにより、例えば、塗布膜3の乾燥過程等、塗布膜形成過程における経時的なスペクトルを測定することができると共に、有機EL素子の劣化過程、その熟成処理過程、そのエージング処理過程又はその光照射処理過程における経時的なスペクトルを測定することができる。
ここで、塗膜形成過程とは、例えば、有機EL素子形成用のA材料又はB材料を光導波路基板上に塗布した後、それぞれの材料中に含まれる溶媒等が除去したり、化合物が反応したりして、膜に形成される経時変化過程のことである。また、劣化過程とは、例えば、形成された膜が徐々にその機能が低下する経時変化過程のことである。また、熟成処理過程とは、熱又は光エネルギーの外的要素の印加を伴わない、常温保存における経時変化のことである。また、エージング処理過程とは、熱エネルギーの外的要素の印加を伴った場合の経時変化のことである。また、光照射処理過程とは、光エネルギーの外的要素を伴った場合の経時変化のことである。
塗布膜は、有機EL素子形成用のA材料又はB材料を塗布して形成される膜である。塗布膜を形成するための材料としては、例えば、上記のA材料やB材料のようんば有機EL素子形成用材料のほか、有機半導体用材料、太陽電池用材料等を挙げることができる。より詳細には、有機EL素子形成用材料は、上述したように、発光材料であるクマリン等の低分子発光材料や、ポリフェニレンビニレン等の共役高分子材料等の有機化合物、及びトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤や、ジクロロエタン等の含ハロゲン系溶剤等の有機溶剤が含まれる。なお、有機半導体形成用溶液や、有機太陽電池形成用溶液も有機EL素子形成用材料同様の有機溶剤が含まれる。
外的要素を「印加し」とは、外的要素を一時的に印加した後に測定することであり、外的要素を「印加しながら」とは、外的要素を断続的又は継続的に印加しつつ測定することである。従って、塗布膜3の経時変化は、外的要素を一時的、断続的又は継続的に印加することにより付与することができる。
上記の外的要素とは、一時的、断続的又は継続的に印加される熱、光、電流及び磁気から選ばれる1又は2以上の要素のことである。塗布膜にこれらの外的要素を印加することにより、塗布膜の塗布膜形成過程、劣化過程、熟成処理過程、エージング処理過程、光照射処理過程等の経時変化情報を測定することができる。
熱には、温熱と冷熱が含まれる。光には、レーザ(位相のそろった単色光)、紫外線、可視光線、赤外線等、波長の異なる光が含まれ、また、電子線、放射線が含まれ、また、X線、γ線等の放射も含まれる概念で定義する。電流は、直流でも交流でもよく、電流値も各種の値で印加可能である。磁気は、任意の磁場を与えた場合であり、磁石による磁場でも電磁石によるものでもよい。
熱を印加する装置としては、例えば、ホットプレート、熱線ヒーター等が挙げられ、光を照射する装置としては、例えば、紫外線露光装置、電子線露光装置等が挙げられ、電流を印加する装置としては、例えば、直流電源装置又は交流電源装置が挙げられ、磁気を印加する装置としては、例えば、電磁石、強力永久磁石等が挙げられる。
また、一時的にとは、上述した外的要素を一度印加することにより、塗布膜の化学情報が経時的に変化するような場合に適用される印加スタイルである。また、断続的にとは、上述した外的要素を一定時間毎に印加することにより、塗布膜の化学情報が経時的に変化するような場合に適用される印加スタイルである。また、連続的にとは、上述した外的要素を絶え間なく連続して印加することにより、塗布膜の化学情報が経時的に変化するような場合に適用される印加スタイルである。
本発明においては、塗布膜の材料特性に応じて、または、印加する外的要素と塗布膜との間の関係に応じて、各種の外的要素から適当な外的要素を選択する。このとき、1種類の外的要素を印加してもよいし、2種類以上の外的要素を印加してもよい。2種類以上の外的要素を印加する場合には、各外的要素の印加スタイル(一時的、断続的、連続的)は同じにしてもよいし、異なる印加スタイルにしてもよい。例えば、一の外的要素は連続的に印加し、他の一の外的要素は断続的に印加することもできる。
本発明の組成選定方法の測定プロセスIでは、塗布膜と光導波路との界面状態の経時変化情報を得ることができる。こうして得られた情報は、乾燥過程、劣化過程、熱熟成過程、エージング処理過程又は光照射処理過程における膜界面の電子状態の解析において有効に利用される。
(測定プロセスII)
次に、準備されたA材料とB材料のそれぞれについて、上記のスラブ型光導波路を利用して得られたスペクトルを時間軸展開して、A材料とB材料のそれぞれに生じる変化を段階毎に異種分析手段で測定する。
異種分析手段としては、熱分析手段、質量分析手段及び分光分析手段から選ばれる1又は2以上の手段が好ましく挙げられるが、これら以外でもよく、例えば、核磁気共鳴分析(NMR)、顕微鏡観察等の異種分析手段が利用可能である。
熱分析手段としては、熱重量減少変化測定(TGA)、示差熱分析測定(DSC)、昇温脱離ガス分析測定(TDS)等を挙げることができる。これらのうち、熱重量減少変化測定(TGA)や示差熱分析測定(DSC)等の一般的な熱分析手段を連動させることによって、界面の重量変化やエネルギー変化に関する情報を入手することができ、界面の電子状態変化と膜の熱的挙動変化との関係が明らかとなる。また、質量分析測定装置としては、一般的な質量分析装置(MS)を連動させることにより、膜界面の熱的変化や経時的変化中に生じたガス成分に関する情報を入手することができ、アウトガス分析結果との間では、界面の電子状態変化と、変化の過程で膜より生じる分解物、アウトガス成分との関係が明らかとなる。また、分光分析装置としては、赤外分光測定(IR)、蛍光発光分光測定、ラマン分光測定、X線光電子分光測定(XPS)、和周波分光測定(SFG)、第2高調波分光測定(SHG)等を挙げることができる。これらのうち、赤外分光測定(IR)を連動させることにより、化学結合や、化学構造変化に関する情報を入手することができ、界面の電子状態と膜の化学構造変化、変質との関係が明らかとなる。
また、その他の異種分析手段について、核磁気共鳴分析装置としては、パルス核磁気共鳴分析測定や固体核磁気共鳴分析測定等を挙げることができる。これら一般的な核磁気共鳴分析を連動させることによって、緩和時間変化、化学構造変化との関係が明らかになる。また、電子顕微鏡や蛍光顕微鏡等による顕微鏡観察と連動させることにより、形状や形態変化との関係が明らかになる。
時間軸展開とは、時間軸展開とは、一定時間間隔で取り込んだデータを整理し、3次元的に時系列表示することであり、例えば、加熱処理時に乾燥するスペクトル変化を数秒毎に時系列表示することなどが挙げられる。
また、A材料とB材料のそれぞれに生じる変化を段階毎に異種分析手段で測定するとは、例えば、それぞれ段階的にTGAなどの熱分析測定や、MSなどの質量分析測定を測定し、データ解析することである。このとき、段階的にとは、A材料とB材料のそれぞれに生じる変化が複数の段階に分かれている場合において、それぞれの段階毎の状態を作り、その状態に維持した状態で異種分析データを測定することである。なお、A材料とB材料のそれぞれに生じる変化が複数の段階に分かれていない場合には、一定の時間を設定し、その間隔毎に測定を行うこととする。
本発明の組成選定方法の測定プロセスIIでは、スペクトルを時間軸展開して、A材料とB材料のそれぞれに生じる変化を段階毎に異種分析手段で測定する。この場合には、異種分析手段の測定条件を、塗布膜の段階毎の状態と同じ状態に保持して測定することが重要であり、その結果、得られた分析データは、例えば、材料の化学構造変化、物質の重量変化の解析において有効に利用される。
(比較プロセス)
次に、準備されたA材料とB材料のそれぞれについて、後述の図6にも示すように、上記のスラブ型光導波路を利用して得られたスペクトルデータと、上記の各段階毎の異種分析データとを比較する。
上述スペクトルデータと異種分析データとは、それぞれのデータを、段階毎、あるいは一定時間隔毎に多重表示することにより比較される。スラブ型光導波路より得られたスペクトルの時間軸展開において、特異的な変化が確認された場合、その段階における異種分析測定において対応するような特異的変化が起こっているか否かを確認する。この比較の結果、両データ変化に相関が得られた場合には、材料の電子状態、配向状態変化と、材料の化学構造、質量変化が何らかの相関をもって発生していることが予想される。場合によっては、スラブ型光導波路より得られたスペクトルデータの特異的変化のみ、あるいは、異種分析データの特異的変化のみが観測され、相関が確認されない場合もあるが、いずれも場合も最終的な製品性能に悪影響を与えることが懸念される。
(選定プロセス)
次に、準備されたA材料とB材料のそれぞれから得られたスペクトルデータと、各段階毎の異種分析データとを比較して、最適な有機電子素子形成用材料の組成を選定する。
この選定プロセスでは、上述の比較プロセスで得られた各材料毎のスペクトルデータと異種分析との比較結果をもとに、材料間の対比が行われる。すなわち、A材料の比較結果と、B材料の比較結果とを対比し、両者の対比から明らかになる結果に基づいて最適な材料が選定される。
特に、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として選定される場合には、熱熟成過程、エージング処理又は光照射処理過程において、スラブ型光導波路より得られたスペクトルデータの変化においても、異種分析データの変化においても、強度の急激な変化やピークシフト等の特異的な挙動が確認された場合は、通常、結晶化、凝集、材料の変質や分解等が生じ、結果として素子特性の低下を引き起こすため、不適当な材料組成であると判断される。従って、スラブ型光導波路より得られたスペクトルデータの変化においても特異な変化がなく、且つ、異種分析データの変化においても特異な変化のない材料組成が最適な材料組成として選定される。
例えば、A材料の各測定から、時間軸展開した際に、スラブ型光導波路より得られたスペクトルデータの変化においても特異な変化がなく、且つ、異種分析データの変化においても特異な変化のないという比較結果が得られ、B材料の各測定から、時間軸展開した際に、いずれかのデータの変化において特異的な変化が確認された場合は、A材料を、最適な材料組成と選定される。
なお、スラブ型光導波路より得られたスペクトルデータの変化においても異種分析データの変化においても特異な変化が確認された場合には、素子特性の低下や、製品性能ロットぶれの問題が危惧され、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料としては、特に避けるべき材料組成と判断される。
成膜する際に行う処理方法(熟成、エージング又は光照射処理等)中の時間軸展開で同様の選定を行い、最適な組成選択、不適な組成排除を行うことにより、効率的且つ高精度で、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料組成選定を行うことができる。
しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子以外で、結晶化やある特定の変質が好まれる材料用途があった場合には、上述の選定基準は逆になる。即ち、スラブ型光導波路より得られたスペクトルデータの変化においても異種分析データの変化においても特異な変化が確認されたB材料が、この別用途に関しては最適な材料組成と成り得る。
(情報処理プロセス)
本発明の組成選定方法には、準備されたA材料とB材料又はそれらの各材料から得られる有機電子素子の同一界面における測定結果の二次元情報と、その測定結果の経時情報とを合わせて三次元データとし、その三次元データを用いて上記のA材料及びB材料と光導波路との界面の状態変化を解析する情報処理プロセスを加えることができる。
二次元情報とは、平面に形成された塗布膜または素子の面情報(X軸−Y軸)のことであり、三次元データとは、その面内の膜又は素子の経時データの変化を時間軸としてZ軸で表した3次元の状態変化のデータである。本発明では、この三次元データで解析することにより、膜又は素子の面内分布での経時的な状態変化を追跡することができる。
また、上述したスペクトルデータ及び分析データ、さらにそれらの解析結果を、A材料とB材料で形成された有機電子素子の特性データと比較し、両者の関係をより解析することができる。有機電子素子の特性データとしては、例えば、エネルギー変換効率データ、寿命、安定性データ等を挙げることができる。例えば、有機EL素子においては、発光効率データ、発光輝度データ、発光寿命データ等が挙げられる。この特性データは、コンピュータに入力され、スラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置で測定されたスペクトルデータや異種分析手段により測定された分析データと対比される。対比した結果、特性データの特異的な結果が、スペクトルデータ及び分析データ、さらにそれらの解析結果に対応している場合に、そのスペクトルデータが示す界面挙動の状態変化が特性に影響していることが明らかになる。
図6は、本発明の組成選定方法についてまとめたものである。本発明の組成選定方法によれば、複数の有機電子素子形成用材料(A材料とB材料)のそれぞれについて、外的要素を付加して塗膜状態を経時的に変化させた際における、塗膜界面の状態分析データと、個々の場面における塗膜バルクの分析データとから、材料の状態変化情報を捉えることができる。その結果、A材料及びB材料が備える経時的な状態変化挙動を明らかにでき、A材料とB材料で作製した各有機電子素子の経時的な特性変化を予測することができるので、最適な有機電子素子を開発するための知見を得て、より望ましい有機電子素子の開発に利用できる。
なお、本発明の組成選定方法は、上述したA材料とB材料のような有機EL素子形成用材料等の有機電子素子形成用材料以外でも適用可能である。例えば、液相から固体膜、固体膜から液相へ、気相から固体膜(蒸着を含む)、固体膜から気相へ(昇華を含む)、液相から気相、気相から液相、結晶からアモルファス、アモルファスから結晶などの相転移を含む状態変化を伴うものの解析にも有効である。より具体的には、蒸着膜形成プロセス、接着剤接着プロセス、塗膜(有機溶剤を含む塗料、漆又は漆と同じメカニズムで固体膜に変化するもの)の乾燥工程、機能性材料(可塑剤、添加剤を含む)を添加した高分子樹脂整形プロセス、電位をかけた液晶の配向等を含む相の変化過程を化学状態で解析する解析プロセスとして、有効に利用可能である。
また、上記においては、有機EL素子形成用材料のA材料とB材料を例にして説明したが、必ずしもこれらに限られるものではなく、3種類以上の複数の材料を対比して最適な材料を選定することができる。
(組成選定方法に用いられる装置)
本発明の有機電子素子形成用材料の組成選定方法に用いられる装置51は、例えば、図7に示すようにスラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定手段52と、1又は2以上の異種分析手段56とを用いた装置であり、上述した本発明の組成選定方法を実現する装置である。この装置51には、経時的な変化を生じさせる外的要素を印加する手段(図示しない)が備えられる。また、スペクトルデータと、各段階毎の分析データ又は経時的な分析データとを比較する手段53,54,55が備えられる。その手段としては、データ解析用のコンピュータ53が使用され、解析データを表示又は出力する装置としては、ディスプレイ装置54又はプリンタ装置55等が使用される。
これらの態様の装置においては、(i)スペクトル測定手段が、紫外可視吸収スペクトル測定用の分光器であることが好ましく、(ii)異種分析手段が、熱分析装置、質量分析装置及び分光分析装置から選ばれる1又は2以上の装置であることが好ましく、(iii)外的要素の印加手段は、一時的、断続的又は継続的に印加可能な加熱装置、光照射装置、電流電源及び磁気装置から選ばれる1又は2以上の装置であることが好ましい。これらの詳細は、上述したとおりである。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
準備プロセス:
有機EL素子形成用材料として、同一のEL発光材料を異なる有機溶剤に溶解された溶液を用意した。具体的には、EL発光材料としてADS社製の高分子緑発光材料を用い、有機溶剤としては、有機溶媒としては、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、汎用キシレン(o−キシレン:25%、m−キシレン:43%、p−キシレン:18%、エチルベンゼン:14%)を用い、5種類の有機EL素子形成用材料を調製した。なお、高分子緑発光材料は、各溶媒中に1重量%となるように調製した。
測定プロセスI:
スラブ型光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光測定装置(システムインスツルメンツ社製、SIS−50型)を用いて、上述した有機EL素子形成用材料でスピンコーティング成膜した塗布膜の乾燥過程の経時的な界面紫外可視吸収スペクトルデータを測定した。測定は、溶媒種の異なる上述した溶液を、合成石英からなる光導波路基板(システムインスツルメンツ社製)の上に0.1mL滴下し、その後、室温で徐々に乾燥させて塗布膜中の溶媒種を揮発させ、乾燥過程における経時的なスペクトルデータを測定した。このとき、エバネッセント波の染み込み深さは約1μmであり、約2秒間隔で測定した。図9は、m-キシレン(A)とo-キシレン(B)についての乾燥過程における塗布膜の界面紫外可視吸収スペクトルである。図9中、1〜4の符号は、経時的な測定順を示している。図9の結果からわかるように、m-キシレン(A)とo-キシレン(B)とは、乾燥過程における界面紫外可視吸収スペクトルが異なっている。なお、p-キシレン及び汎用キシレンを溶媒種とした溶液を用いたものは、o-キシレン(B)と同じ結果であった。(A)の時間軸展開からは明らかな特異的な挙動(吸収強度変化、極大ピーク変化)が確認されたが、(B)の時間軸展開からはそのような大きな変化は確認されなかった。
測定プロセスII:
次に、異種分析手段として、(A)の系において特異的な挙動が確認された段階における熱重量減少(TGA)を測定した。乾燥過程の重量減少プロファイルを時間軸展開した結果、(B)の系においては、溶剤の揮発に伴う重量減少の度合いがほぼ一定で、徐々に芳香族溶剤が揮発していっていることが示されたが、(A)の系においては、重量減少プロファイルに、特異的な変化が確認された。一定の段階で、重量減少度(溶剤揮発度)が大きくなる点が存在した。
なお、質量分析によるアウトガス分析の結果、減少した重量部分(アウトガス)が、使用していた有機溶剤であることは確認された。
比較プロセス:
(A)の系においては、測定プロセスIにおいて、特異的な変化が確認された時点付近で、溶剤の揮発が著しくなっていることが分かり、ここで、材料の結晶化、配向変化が形成されたものと考えられる。材料の電子状態、配向状態変化と、材料の化学構造、質量変化が何らかの相関をもって特異的な変化を起こしたものと考えられる。一方、(B)においてはそのような減少は確認されなかった。
選定プロセス:
有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光材料の結晶化は材料の性能を低下させる致命的な問題である。従って、比較の結果、アモルファスな膜の形成がなされる、(B)の組成が最適な材料組成であると選定された。
(実施例2)
実施例1の準備プロセス同様の材料を用意し、室温乾燥ではなく、ドライヤー送熱風によるエージングプロセス過程において、実施例1の測定プロセスI、II同様にスラブ型光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光測定、異種分析手段である熱重量減少測定を行い、それぞれエージングプロセス中の、時間軸展開を行った。その結果、(A)の系においては、光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光スペクトル変化においても、熱重量減少挙動においても特異的な変化を示し、特異的な変化を示さなかった(B)とは明らかな相違を確認した。従って、エージングプロセスを伴うような有機エレクトロルミネッセンス素子形成法を採用する場合においても、やはり、最適組成として(B)が選定された。
(実施例3)
次に、実際に材料(A)及び(B)を用いて、有機EL素子を作成し、発光特性データを測定した。有機EL素子膜の特性データは、ガラス基板/ITO(陽極)/PEDOT・PPS(正孔輸送層)/有機EL素子膜(電子輸送層兼発光層)/Ca層/Ag(陰極)の層構成からなる有機EL素子の電圧−輝度特性(表1参照)、電圧−発光効率特性(表1参照)、発光寿命特性(表1参照)を測定することにより解析し、検討した。表1の結果から明らかなように、m-キシレンにおいては、他の溶媒種に比べ、輝度が1桁低く、効率も1/3であり、著しく短寿命であった。
実施例1で確認された光導波路分光法測定より得られたスペクトル変化の特異的な変化と、熱重量減少測定より得られた特異的な変化は、以下のように考察される。まず、熱重量減少測定の結果から、乾燥過程における溶媒種からなるπ電子層が塗布膜から一気に抜けることを示しているものと推察される。すなわち、乾燥過程の初期においては、光導波路基板面に並行なπ電子平面(高分子有機化合物)/並行なπ電子層(溶媒)/並行なπ電子平面(高分子有機化合物)の積層構造が一時的に形成されているものと考えられ、その後、乾燥が進むと、溶媒が一気に揮発し、上記の並行なπ電子層(溶媒)が抜け、図9(A)に示すように劇的な吸収強度の変化が生じると考えられる。その結果、光導波路基板面に並行なπ電子平面(高分子有機化合物)/並行なπ電子平面(高分子有機化合物)からなる積層構造がそのままの状態で安定化すると考えられる。そうしたことは、その後の乾燥過程において吸収強度に変化が生じないことからも説明できる。
こうした界面紫外可視吸収スペクトルの結果は、有機EL素子膜の特性データをよく説明できる。すなわち、塗布型の有機EL素子膜においては、結晶性や規則性は要求されず、不均一性やアモルファス性が要求されており、そのため、m-キシレンを溶媒種とする溶液から形成された規則的な積層構造を有する膜が、輝度、発光効率、寿命等の特性に劣っているという、表1に示す結果は矛盾なく説明される。
従来、素子作製し、特性評価まで行わなければ最適な有機EL素子形成用材料を選定できなかったが、本発明の選定方法によれば、界面紫外可視吸収スペクトルと特性データとを対比して塗布膜界面の化学状態を解析することによって、乾燥過程での界面紫外可視吸収スペクトル変化が意味する現象を把握できる。その結果、この解析結果を援用することにより、他の有機EL素子形成用材料の選定について、素子作製し、特性評価まで行わなわなくても、選定作業における方向性が明らかになるので、選定の大幅な簡略化が期待できる。
Figure 2005077245
スラブ型光導波路分光法の原理図である。 特開平8−75639号公報に開示されているスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置の一例を示す構成図である。 スラブ型光導波路の平面図である。 スラブ型光導波路の断面図である。 本発明に好ましく適用するスラブ型光導波路を利用したスペクトル測定装置である。 本発明の解析方法についての説明図である。 本発明の解析装置の一例を示す構成図である。 m-キシレンとo-キシレンについての乾燥後の有機EL素子膜の紫外可視吸収スペクトルである。 m-キシレン(A)とo-キシレン(B)についての乾燥過程における塗布膜の界面紫外可視吸収スペクトルである。
符号の説明
1 光導波路基板
2 光
3 膜(塗布膜)
4 エバネッセント波
5 プリズム
6 反射ミラー
7 紫外可視吸収用CCD分光器
8 蛍光発光用PMT分光器
9 蛍光発光
10 光源
11 入射光側レンズ
12 入射光側プリズム
13 スラブ型光導波路
14 出射光側プリズム
15 出射光側レンズ
16 スラブ型光導波路の位置、角度の制御機構
30 光チョッパー
31 入射光側光ファイバー
32 光ファイバー
33、34 レンズ
41 分光器
42 コンピュータ
43 光電子増倍管
44 増幅器

Claims (7)

  1. スラブ型の光導波路を利用したスペクトル測定手段と、1又は2以上の異種分析手段とを用いた有機電子素子形成用材料の組成を選定する方法であって、異なる組成からなる複数の有機電子素子形成用材料を準備するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、経時的な変化を生じさせる外的要素を印加し又は印加しながら、当該有機電子素子形成用材料と前記光導波路との界面の状態変化をスペクトルとして測定するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、前記スペクトルを時間軸展開して、前記有機電子素子形成用材料に生じる変化を段階毎に前記異種分析手段で測定するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料のそれぞれについて、前記スペクトルのデータと、前記各段階毎の異種分析データとを比較するプロセスと、前記複数の有機電子素子形成用材料それぞれから得られたスペクトルのデータと各段階毎の異種分析データとを対比して、最適な有機電子素子形成用材料の組成を選定するプロセスと、を有することを特徴とする有機電子素子形成用材料の組成選定方法。
  2. 前記有機電子素子形成用材料に生じる変化が、有機電子素子形成用材料の塗布膜形成過程、又は、有機電子素子形成用材料から形成された有機電子素子の劣化過程、その熟成処理過程、そのエージング処理過程又はその光照射処理過程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電子素子形成用材料の組成選定方法。
  3. 前記スペクトルデータが、紫外可視吸収スペクトルデータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電子素子形成用材料の組成選定方法。
  4. 前記異種分析手段が、熱分析手段、質量分析手段及び分光分析手段から選ばれる1又は2以上の手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電子素子形成用材料の組成選定方法。
  5. 前記有機電子素子形成用材料又は当該有機電子素子形成用材料から得られる有機電子素子の同一界面における測定結果の二次元情報と、当該測定結果の経時情報とを合わせて三次元データとし、当該三次元データを用いて前記有機電子素子形成用材料又は前記光導波路との界面の状態変化を解析する情報処理プロセスを、さらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電子素子形成用材料の組成選定方法。
  6. 前記外的要素は、一時的、断続的又は継続的に印加される熱、光、電流及び磁気から選ばれる1又は2以上の要素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電子素子形成用材料の組成選定方法。
  7. 前記有機電子素子形成用材料が、有機エレクトロルミネッセンス素子形成用材料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電子素子形成用材料の組成選定方法。
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